JP2019188636A - サイドモールドおよび靴製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】甲被の上から爪先を被覆する被覆層を形成可能とするサイドモールドおよび当該サイドモールドを用いる靴製造装置を提供する。【解決手段】サイドモールド100は、インジェクションモールド方式により靴を製造するために用いられるサイドモールドであって、水平方向に開閉可能な第一サイド10と第二サイド20とを有し、第一サイド10および第二サイド20の少なくとも一方には、靴を構成する甲被の足指の上方を覆う天井部(第一天井部32、第二天井部34)が設けられており、天井部は内面側に凹部40を有し、凹部40と吊り込まれた甲被との間に、足指を被覆する被覆部を形成するための第一キャビティが形成されるとともに、天井部の少なくとも一部に、第一キャビティを開放可能に動作する開閉部50を備え、靴製造装置は、サイドモールド100と、ボトムモールドと、ラストモールドとを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、甲被上に爪先を覆う被覆層を備える靴を製造するために用いられるサイドモールドおよび靴製造装置に関する。
靴の製造方法として、インジェクションモールド方式が知られている。かかる方式は、靴の甲被を装着されたラストモールドに対し、側面側にサイドモールドを配置し、底面側にボトムモールドを配置して型締めし、これらの間に形成された空間(キャビティ)に樹脂を注入して靴底を形成する。
ところで、靴は、履き心地などが勘案された甲被により、足の甲が覆われる構成が一般的である。しかしながら、歩行する際の先端側に位置する爪先は、物に衝突する危険の多い部位であり、また重量物の落下によって爪先が損傷する恐れがあり、保護を必要とする部位であるため、当該爪先部を保護する機能を備える靴が求められる場合がある。安全靴がその一例である。
たとえば下記特許文献1には、重量物の落下などから足の爪先を保護するための爪先プロテクター(先芯)が設けられた安全靴が提案されている。具体的には、下記特許文献1には、甲被(特許文献1では表甲被と記載)の内側にライニング材(特許文献1では裏甲被と記載)が設けられてなる二重構造を有し、これらの間に爪先プロテクターが配置された安全靴が提案されている。かかる安全靴は、甲被とライニング材とを重ね合わせ、爪先部を除き縫合されているとともに、甲被の爪先部下周縁に糸で構成した多数のループと、当該ループ中に挿通された紐を備えている。かかる安全靴の製造方法は、ラストモールドに甲被が吊り込まれた状態において、甲被とライニング材との間に爪先プロテクターを装着し、その後、上記紐により爪先部下周縁を絞り込むことで、甲被をラストモールドに密着させる工程を備え、爪先プロテクターを有する安全靴でありながら、従来に比べて生産効率の向上が図られていると説明されている。
しかし特許文献1に開示される従来の安全靴は、甲被の内側において、当該甲被とライニング材との間に爪先プロテクターが挟まれた三層構造を有しているため、安全靴の洗浄時にライニング材から浸み込んだ水分を乾燥させる乾燥時間が長くなるという問題があった。また、安全靴の洗浄は、業者に回収されドラム式の洗濯槽で行われ、再度使用することがある。この際、洗濯槽における回転によって安全靴に遠心力がかかるため、爪先プロテクターが装着され前方と後方とで重量に大きく偏りのある安全靴は、相対的に重量が大きい爪先側が洗濯槽の内側面に繰り返し衝突する。その結果、安全靴の爪先側の甲被が破損し易いという問題があった。
また子供靴などの一般的なシューズも、爪先側の安全性を強化したいという要望があった。
特開平07−067702号公報
そこで、本発明者は、甲被の上側に爪先側を覆う樹脂製の被覆層が設けられた靴を製造することにより、爪先側の保護を図るという着想に至った。安全靴の場合には、甲被と上記被覆層との間に爪先プロテクターを配置すればよく、これにより甲被の内側に爪先プロテクターを配置した従来の安全靴のように、内側に水が溜まり易い構造を回避して乾燥時間を短縮させることが可能である。また、安全靴を洗浄する際も、洗濯槽に衝突し易い爪先側に被覆層を設けることで、甲被の破損を防止することができる。
ただし、被覆層を備える靴を製造するために、一般的なインジェクションモールド方式に用いられる靴製造装置を転用しようとした場合、以下の問題があることがわかった。当該問題について図5、図6を用いて説明する。
図5(a)は従来のサイドモールド400の閉状態を示す上面図であり、図5(b)は図5(a)に示すサイドモールド400の開状態を示す上面図である。図6(a)は第一天井部432および第二天井部434を備えた参考例のサイドモールド402の閉状態を示す上面図であり、図6(b)は図6(a)に示すサイドモールド402の開状態を示す上面図である。
図5(a)に示すとおり、一般的なインジェクションモールド方式に用いられるサイドモールド400は、第一サイド410の分割面412と、第二サイド420の分割面422とが当接して型締めされ、製造予定の靴の外縁に沿って上下に貫通する開口430が形成される。図示省略するラストモールドとボトムモールドとの間に形成されたキャビティに樹脂が注入されて靴底が形成された後、図5(b)に示すとおり、第一サイド410の分割面412と第二サイド420の分割面422とが離間することで、図5(a)に示す開口430が広がり、図示省略するラストモールドが取り外される。このとき分割面412と分割面422との離間距離が10センチ前後に確保されれば、サイドモールド400は、ラストモールドを上方に移動させるに際し障害とならない。
ところが、インジェクションモールド方式で甲被の上から爪先を覆う被覆層を形成しようとすると以下の問題が発生する。
具体的には図6(a)に示すとおり、第一天井部432を備える第一サイド470および第二天井部434を備える第二サイド480とからなるサイドモールド402を準備する。第一天井部432および第二天井部434の内側には、図示省略するラストモールドとともに被覆層を形成するためのキャビティを構成する凹部440が形成されている。インジェクションモールド方式において、上記キャビティに樹脂を注入することで、ラストモールドに装着された甲被の爪先側を覆う樹脂製の被覆層を形成することができる。
上述のとおり被覆層が形成された後、ラストモールドを取り外す際、図6(b)に示すとおり、分割面412と分割面422との離間距離が第一天井部432および第二天井部434を有しないサイドモールド400と同様に10センチ前後しか確保できない場合、ラストモールドの爪先側に第一天井部432および第二天井部434が当たってしまい、当該ラストモールドを上方に移動させるに際に障害となる場合がある。
もちろん、サイドモールド402において、分割面412と分割面422との離間距離を充分に大きく確保できれば、ラストモールドの取り出しはスムーズである。しかしその場合、第一サイド470および第二サイド480が大きく移動するための空間を確保しなければならない。そのため、靴製造装置自体の変更あるいは靴製造装置の設置環境に拡張が要されるので、実際には分割面412と分割面422との離間距離を変更することはできないのが実情であった。また従来の靴製造装置を、被覆層を備える靴の製造に転用することが困難である場合があった。
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、従来のインジェクションモールド方式の靴製造装置の設置環境と同様の環境において、甲被の上から爪先を被覆する被覆層を形成可能とするサイドモールドおよび当該サイドモールドを用いる靴製造装置を提供するものである。
本発明のサイドモールドは、インジェクションモールド方式により靴を製造するために用いられるサイドモールドであって、水平方向に開閉可能な第一サイドと第二サイドとを有し、上記第一サイドおよび上記第二サイドの少なくとも一方には、靴を構成する甲被の足指の上方を覆う天井部が設けられており、上記天井部は内面側に凹部を有し、上記凹部と吊り込まれた甲被との間に、足指を被覆する被覆部を形成するための第一キャビティが形成されるとともに、上記天井部の少なくとも一部に、上記第一キャビティを開放可能に動作する開閉部を備えることを特徴とする。
また本発明の靴製造装置は、本発明のサイドモールドと、ボトムモールドと、ラストモールドとを備えることを特徴とする。
本発明のサイドモールドは、甲被の上側であって爪先を覆う被覆層を成形可能とし、かつ被覆層形成後、甲被を装着したラストモールドをスムーズに取り外すことが可能である。
また本発明の靴製造装置は、本発明のサイドモールドの効果を享受し、従来のインジェクションモールド方式の靴製造装置と同様の設置環境において、甲被の上から爪先を覆う被覆層を備えた靴を製造することができる。
(a)は本発明のサイドモールドの閉状態を示す上面図であり、(b)は(a)に示すサイドモールドの正面図である。 (a)は本発明のサイドモールドの開状態を示す上面図であり、(b)は(a)に示すサイドモールドの正面図である。 本発明のサイドモールドを備える本発明の靴製造装置の左足第5趾側から観察した側面図であり、紙面手前側の第一サイドを図示省略している。 本発明のサイドモールドを用いて製造した安全靴の縦断面図である。 (a)は従来のサイドモールドの閉状態を示す上面図であり、(b)は(a)に示すサイドモールドの開状態を示す上面図である。 (a)は天井部を備えた参考例のサイドモールドの閉状態を示す上面図であり、(b)は(a)に示すサイドモールドの開状態を示す上面図である。
以下、本発明の実施形態について、図1から図4を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。本発明に関し上下方向は、特段の断りがない場合には、安全靴を製造する状態における上下方向を意味する。また正面とは、製造される靴を基準として、靴の爪先側から観察した面を正面とする。
図1(a)は、本発明のサイドモールド100の閉状態を示す上面図である。図1(b)は、図1(a)に示すサイドモールド100の正面図である。上記閉状態とは、サイドモールド100が型締めされ、樹脂が注入可能な状態を意味する。
図2(a)は、本発明のサイドモールド100の開状態を示す上面図である。図2(b)は、図2(a)に示すサイドモールド100の正面図である。上記開状態とは、サイドモールド100を構成する第一サイド10の第一分割面36と第二サイド20の第二分割面38とが離間し、被覆層220と靴底240を備える甲被200を伴うラストモールドが他のモールドと接触することなく上方に移動可能となり取り出せる状態を意味する。
図3は、本発明のサイドモールド100を備える本発明の靴製造装置500の左足第5趾側から見た側面図であり、紙面手前側の第一サイド10を図示省略するとともにボトムモールド300を分割面22に沿った断面で示している。
図4は、本発明のサイドモールド100を用いて製造した安全靴250の縦断面図である。
以下の説明では、甲被200上に配置された爪先プロテクター210を覆う被覆層220を備える安全靴250の製造に用いられるサイドモールド100を例に本発明を説明する。しかしかかる説明は、本発明を何ら限定せず、本発明は、甲被上に直接に被覆層が設けられる態様の靴、あるいは、甲被と被覆層との間に爪先プロテクター以外の部材が挟まれる態様の靴を包含する。
即ち、本実施形態にかかるサイドモールド100は、靴を構成する甲被200の爪先側に足指を保護するための爪先プロテクター210が配置された安全靴250(図4参照)を製造するためのモールドである。具体的には、第一天井部32および第二天井部34の内面側に形成された凹部40と爪先プロテクター210の表面との間に第一キャビティ110(図3参照)が形成される。
本実施形態にかかる安全靴250は、図4に示すとおり甲被200上に爪先プロテクター210が配置され、その爪先プロテクター210の全部を覆う被覆層220を備える。また安全靴250は、甲被200と部分的に接合された中底230と中底230の下面側に形成された靴底であるアウトソール240を備える。本実施形態では、アウトソール240と被覆層220とは一連一体に形成されている。
まず本実施形態のサイドモールド100の概要について説明する。
本実施形態にかかるサイドモールド100は、インジェクションモールド方式により靴を製造するために用いられる。ここでインジェクションモールド方式とは、複数のモールドで形成された空間であるキャビティに外部から樹脂を注入して硬化させ、これによって靴の構成の一部を製造するとともに、製造された上記構成と甲被とを同工程において接合させる靴製造方式を意味する。
サイドモールド100は、図1に示すとおり、水平方向に開閉可能な第一サイド10と第二サイド20とを有している。第一サイド10および第二サイド20の少なくとも一方には、安全靴250を構成する甲被200の足指の上方を覆う天井部が設けられている。本実施形態では、第一サイド10および第二サイド20の両方に、それぞれ第一天井部32および第二天井部34が設けられている。天井部である第一天井部32および第二天井部34は、内面側に凹部40を有している。凹部40は、形成が予定される被覆層220(図4参照)の外周面に沿った形状をしている。図3に示すとおり、凹部40と吊り込まれた甲被200との間に、足指を被覆する被覆層220を形成するための第一キャビティ110が形成される。これによって、インジェクションモールド方式の靴製造において、サイドモールド100を用いることで、甲被の爪先側に足指を覆う樹脂製の被覆層を設けることができる。
また安全靴250の製造にサイドモールド100を用いることで、従来の安全靴の製造のように甲被の内側に爪先プロテクターを配置してライニング材で覆うという工程を要さず、一般的なインジェクションモールド方式の靴製造において、容易に安全靴250を製造することが可能である。またこれにより製造された安全靴250は、甲被200の上側に爪先プロテクター210が配置され、さらにその上に樹脂製の被覆層220が設けられているため、洗浄時、洗濯槽の内面に爪先側が接触した場合であっても甲被200の破損が回避される。さらに、甲被の内側に爪先プロテクターとライニング材が設けられた従来の安全靴の構造に比べ、靴の内部の乾燥時間が短縮される。
天井部である第一天井部32および第二天井部34の少なくとも一部には、第一キャビティ110を開放可能に動作する開閉部50が設けられている。被覆層220を形成した後、ラストモールドを上方に取り外す際、開閉部50を開状態とすることで、第一サイド10の分割面12と第二サイド20の第二分割面22との離間距離を適度に抑えつつ、スムーズにラストモールドを取り出すことが可能である。
したがって、サイドモールド100が、従来のインジェクションモールド方式の靴製造装置に用いられることで、既存の靴製造装置の設置環境および装置の構造を大きく変更することなく、被覆層を備える靴を容易に製造することができる。
以下に本実施形態のサイドモールド100の詳細について説明する。
本実施形態におけるサイドモールド100を構成する第一サイド10および第二サイド20は、正面視において左右一対のモールドであり、適宜、併用されるボトムモールドおよびラストモールドとともに靴底を形成するためのキャビティ(図3の第二キャビティ120、参照)を構成し得る。図1に示すとおり、靴製造装置において型締めされたとき互いに対面する第一サイド10の第一分割面12と、第二サイド20の第二分割面22とが当接し閉状態となる。一方、図2に示すとおり、サイドモールド100は、第一サイド10の第一分割面12と、第二サイド20の第二分割面22とが離間することで開状態となり得る。
図示省略するが、型締めされたとき、第一サイド10および第二サイド20が、互いにずれなく閉状態が維持されるよう、互いに凹凸嵌合構造を備えるとよい。たとえば第二分割面22に図示省略する突起を設け、他方の第一分割面12であって、閉状態のときに上記突起に対応する領域に凹部を設け、型締め時に上記突起を上記凹部に嵌合させることで正確に第一サイド10と第二サイド20との位置合わせを行うことができる。
サイドモールド100は、足指を被覆する被覆層220を形成するための天井部を有している。天井部は、甲被200の上側であって足指を覆う被覆層を形成するためのキャビティを構成するための部位である。本実施形態では、天井部として、第一天井部32および第二天井部34が設けられている。図示省略する本実施形態の変形例として、天井部が、第一サイド10または第二サイド20のいずれか一方のサイドにのみ設けられ、他方のサイドまで延在していてもよい。
第一天井部32および第二天井部34の内側には凹部40が設けられている。本実施形態における凹部40は、甲被200の爪先側に配置された爪先プロテクター210を覆って形成される予定の被覆層220の外周面に沿った形状をしている。凹部40の形状を変更することによって、種々の形状の被覆層を形成することが可能であり、例えば爪先プロテクター210を有しない甲被が装着されたラストモールドと、所定形状の凹部40とを組合せて第一キャビティ110を構成することによって、非安全靴であって爪先側に足指を覆う樹脂製の被覆層220を備える靴を製造することができる。
本実施形態では、第一天井部32に開閉部50が設けられている。本実施形態では、第一サイド10に設けられた第一天井部32の少なくとも一部に開閉部50が設けられており、より具体的には、第一天井部32の全体が開閉部50を構成している。変形例として、第一天井部32だけではなく第二天井部34にも開閉部50が設けられ、第一天井部32および第二天井部34の両方に設けられた開閉部50を開くことで、第一キャビティ110をより大きく開放させることも可能である。
本実施形態は、図1に示すとおり、第一サイド10の第一分割面12および第二サイド20の第二分割面22が互いに当接してサイドモールド100が型締めされたとき、開閉部50が閉状態となる。これにより、図3に示すように第一キャビティ110が構成される。図示省略する樹脂注入孔から第一キャビティ110に注入された樹脂は、爪先プロテクター210を覆って第一キャビティ110を満たし、その状態で硬化する。これによって被覆層220が構成される。
一方、第一分割面12および第二分割面22が互いに離間するとともに、開閉部50が開かれることで、第一キャビティ110が開放される。これによって、図6に示すように単に第一分割面12および第二分割面22が離間した場合に比べ、ラストモールドを取り出しやすくすることができる。開閉部50の開閉量は、特に限定されるものではなく、第一分割面12および第二分割面22の離間距離、用いられるラストモールド(およびこれに装着される甲被等)の形状などを勘案して適宜設計することができる。尚、本実施形態の説明では、天井部とラストモールドとの間に樹脂が充填される前の空間だけでなく、当該空間に樹脂が充填された場合であっても、便宜的に第一キャビティ110と呼ぶ。
第一キャビティ110を開放可能な範囲において、開閉部50が開く方向は特に限定されない。例えば、開閉部50は、略水平方向に動作することで開状態となる態様であってもよいし、上下方向に扉上に開くことで開状態となる態様であってもよいし、あるいは、開閉部50は、サイドモールド100に対し着脱式であって、サイドモールド100から取り外されることで開状態となる態様であってもよい。また水平方向に動作する開閉部50は、全体が一方方向にスライドするスライド動作、または任意の箇所に固定軸を有し、当該固定軸を中心として回転する回転動作のいずれを示してもよい。
図示する本実施形態における開閉部50の開閉の機構の詳細について説明する。
図1(b)に示すとおり、本実施形態における第一サイド10は、開閉部50の開閉動作を可能とするための回転構造60を備える。回転構造60は、回転動作により開閉部50の開閉動作を誘導する回転部材64と、回転部材64の回転を誘導するボタン部66とを備える。
回転部材64は、第一天井部32の開閉部50が連結された第一端部61、力点を有する第二端部62、および第一端部61と第二端部62との間に設けられた支点63を備える。第二端部62に力が付加されることで支点63を介して第一端部61が作用を受け、支点63を中心として回転部材64が回転動作する。これによって第一端部61に連結された開閉部50を動作させることができる。
ボタン部66は、第一分割面12から外方向に突出した露出端67を有し、露出端67が非突出方向に押されることで当該非突出方向に移動するとともに力点(第二端部62)に力を加える。本実施形態では、ボタン部66の露出端67とは反対側の端部が力点である第二端部62に連結されており、ボタン部66の移動に連動して回転部材64が回転方向に動作する。
かかる回転構造60を備えるサイドモールド100は、図2の状態から図1の状態となるよう型締めされることで、第一分割面12から突出するボタン部66の露出端67が、第二分割面22に当接して非突出方向に押されて移動する。これによって力点(第二端部62)に力が加わることで回転部材64が回転するとともに開閉部50が閉状態となるよう動作する。即ち、回転構造60を備えるサイドモールド100は、第一サイド10および第二サイド20が型締めされることで自動的に回転構造60が動作するとともに開閉部50が閉まる方向に動作し、これによって第一天井部32と第二天井部34とが閉状態となる。かかる回転構造60を備えるサイドモールド100を用いた靴製造装置では、第一サイド10および第二サイド20を型締めして樹脂を注入する際、天井部を閉状態にするための手動の作業を要さず、確実に第一キャビティ110を構成することができる。
尚、本実施形態では、開閉部50である第一天井部32は、第一サイド10の本体に対し、軸部42で軸支されており、回転部材64の回転に連動して動作する開閉部50が、軸部42を回転軸として回転動作を行うよう構成されている。これにより、閉状態および開状態における開閉部50の位置を安定させるとともに、所望の方向にて開閉部50の開閉動作を実現させることができる。
例えば、回転構造60における回転部材64は、一片の板状体であって、当該板状体の下端部である第二端部62とボタン部66の端部とは連結され固定されている。一方、回転部材64の上端部である第一端部61は、厚み方向に貫通する貫通孔416が形成されており、貫通孔416に挿通された連結部材419により開閉部50に連結されている。連結部材419は、軸部414と、軸部414の一端に設けられた拡径部418を備える。軸部414は、相対的に径の大きい貫通孔416に挿通されており、挿通方向以外にも動作の自由度が与えられている。そのため、開閉時における第一天井部32の開閉動作にあそびが設けられている。
軸部414の拡径部418とは反対側の端部は、開閉部50に連結され固定されている。一方、拡径部418は、貫通孔418より外側に位置し、かつ拡径部418の径が、貫通孔416の径よりも大きく構成されているため、連結部材419が挿通孔416から抜け出ることが防止されている。
第一天井部32と第二天井部34とは、互いに対向する面(第一閉止面36、第二閉止面38)を有しており、第一閉止面36と第二閉止面38とが当接することで閉状態となる。第一閉止面36と第二閉止面38とが当接する位置は、上面視において、たとえば、靴の幅方向中間部である。また本実施形態のサイドモールド100は、閉状態において、第一閉止面36と第二閉止面38とが当接する位置と、第一サイド10の分割面12と第二サイド20の分割面22とが当接する位置が、上面視において略等しい。
本実施形態では、上面視において、開閉部50の開閉動作が、第一サイド10の面内で行われるよう、開閉部50の外縁形状が規定されている。これによって、開閉部50が動作することで、第一天井部32が、他の構造物や作業者の人体に接触することが防止される。たとえば、上面視において、第一天井部32における第一閉止面36と対向する対向辺39は、図1(a)に示す閉状態において第一サイド10の面内において第一サイド10の側面に対し傾斜しており、図2(a)に示す開状態において第一サイド10の側面に沿った位置、または当該側面よりも第一サイド10の面内側に位置するよう構成されている。
上述する回転部材64は、第一サイド10の外側面に取り付けられてもよいが、図1、図2に示すとおり、第一サイド10の外側面の一部に切り欠き部450を形成し、切り欠き部450の内部に回転部材64を設けるとよい。これにより、回転部材64と他の物体とが接触して回転部材64が破損し、あるいは回転部材64と作業者が接触して、負傷するなどの事態を回避しやすい。切り欠き部450の内部に配置された回転部材64の第二端部62に連続するボタン部66は、切り欠き部450の内面から第一分割面12まで連通するよう設けられた孔に移動可能に挿通されている。
本実施形態における回転構造60において、力点(第二端部62)に力が付加されない状態において、回転部材64が開状態となるよう付勢されていることが好ましい。即ち、自然状態において、図2(b)に示すように、開閉部50を開いた状態とする方向に回転部材64が位置する状態が初期状態であることが好ましい。付勢手段は特に限定されないが、たとえば、支点63における図示省略する軸部をバネなどで所望方向に付勢する手段、あるいは、回転部材64を直接にバネにより所望方向に付勢する手段などが例示される。かかる付勢手段を備えることによって、図1の状態から図2の状態となるよう、第一分割面12と第二分割面22とが離間し、露出端67およびこれに連結する第二端部62にかかっていた力が除去されたとき、人為的な操作を要さず、付勢手段によって回転部材64を初期状態に戻すとともに開閉部50を開状態に戻すことができる。
上述するとおり、本実施形態のサイドモールド100は、開閉部50を備えることによって、被覆層を有しない通常の靴製造装置のサイドモールドの開き幅(即ち、第一サイドと第二サイドの最大開き幅)と同程度の開き幅でも、安全靴250のサイズに寄らず、十分にラストモールド100を取り出すことが可能である。
図6に示すとおり、被覆層を備える安全靴を製造するため、第一天井部432および第二天井部434を備えるサイドモールド402を用いた場合、通常の靴製造装置のサイドモールドの開き幅程度では、図6において図示省略するラストモールドと第一天井部432、第二天井部434とが当たる虞があった。そのため、サイドモールド402の開き幅を拡張する必要があった。しかしサイドモールド402の開き幅を変更するということは、靴製造装置自体を変更することを意味し、装置変更による費用が発生する。これに対し、サイドモールド100は、第一天井部32、第二天井部34の少なくとも一方に開閉部50を備えるため、通常の靴製造装置のサイドモールドの開き幅と同程度の開き幅でも、ラストモールドを取り出し易い。第一分割面12と第二分割面22との開き幅は、特に限定されず、サイドモールド100を備える靴製造装置の構成を鑑み決定されるが、たとえば第一分割面12と第二分割面22との開き幅(最大距離D)を、12cm以下とすることができ、さらには10cm以下とすることができる。
即ち、既存のインジェクションモールド方式の靴製造装置にサイドモールド100を適用することで、靴製造装置自体および靴製造装置の設置環境を変更することなく、充分に安全靴250を製造することが可能である。
本実施形態における第二サイドモールド20には、押さえ部52が設けられている。押さえ部52は、第二天井部34の上面に配置され固定されており、その一端が第二閉止面38を跨いで第一天井部32側まで延在している。即ち、押さえ部52は、第二閉止面38を超えて第一天井部32側に突出している。突出した部分の下面は、閉状態において、第一天井部32の上面に沿う形状に構成されている。具体的には、本実施形態における上記突出した部分の下面は、略平坦であって、同様に略平坦である第一天井部32の上面と略同高さである。押さえ部52が設けられることによって、閉状態となったときに上記突出した部分で第一天井部32を押さえ、第一キャビティ110(図3参照)に樹脂が射出された際、第一天井部32が上方へ浮き上がることを防止する。
図3にサイドモールド100が用いられた靴製造装置500の一例を示す。靴製造装置500は、上述するサイドモールド100(第二サイド20)と、ボトムモールド300と、ラストモールド320を備える。図3では、第一サイド10が図示省略され、第二天井部34を備える第二サイド20の側面が図示されている。靴製造装置500には、爪先プロテクター210が装着された甲被200が装着されたラストモールド100が、吊り込まれている。この状態において、爪先プロテクター210の表面と第二天井部34の凹部40との間には、空間が形成されている。当該空間が、被覆層220形成用の樹脂を注入するための第一キャビティ110である。第一キャビティ110は、爪先プロテクター210の甲被200上の外縁212を覆って甲被200まで到達している。
靴製造装置500は、一般的なインジェクション方式の靴製造装置と基本構造を同じくしつつ、被覆層220を備える靴(安全靴250)を製造することができる。靴製造装置500は、従来の靴製造装置に対し、サイドモールド100の変更、および適宜に行われる他のモールドの変更を行うことによって、従来の靴製造装置の設置環境を変更せずに構成することが可能である。
本実施形態の靴製造装置500は、ボトムモールド300とラストモールド320との間に靴底形成用の第二キャビティ120が構成される。本実施形態における第一キャビティ110と第二キャビティ120とは、樹脂が流通可能に連通している。
そのため任意の箇所に設けられた樹脂注入孔130から注入された樹脂は、第一キャビティおよび第二キャビティを流動し、これらの空間を満たした状態で硬化される。例えば、図3に示すとおり、サイドモールド100を通じて第二キャビティ120に通じる樹脂注入孔130が設けられた態様では、第二キャビティ120に注入した樹脂を第一キャビティ110にまで流動させることができる。
このように連通する第一キャビティ110と第二キャビティ120を備える態様では、一度の樹脂注入工程にて被覆層220と靴底240とを形成することができ、製造工程数を少なくすることができる。また製造された靴(安全靴250)は、被覆層220と靴底240とが一連一体に形成されているため、被覆層220と靴底240との境界でめくれや破損が生じることが防止される。
上述に本発明の一実施態様を説明したが、かかる説明は本発明を何ら制限するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜、態様の一部を変更することができる。たとえば、上記態様では第一サイド10のみに開閉部50を設けた例を示したが、第二サイド20にも同様に開閉部10を設けてもよい。これによって、第一サイド10自体の開閉量および第二サイド20自体の開閉量をより小さくしても、スムーズにラストモールドを取り出すことが可能である。
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)インジェクションモールド方式により靴を製造するために用いられるサイドモールドであって、
上記サイドモールドは、水平方向に開閉可能な第一サイドと第二サイドとを有し、
上記第一サイドおよび上記第二サイドの少なくとも一方には、靴を構成する甲被の足指部の上方を覆う天井部が設けられており、
上記天井部は内面側に凹部を有し、
上記凹部と吊り込まれた甲被との間に、足指部を被覆する被覆部を形成するための第一キャビティが形成されるとともに、上記天井部の少なくとも一部に、上記第一キャビティを開放可能に動作する開閉部を備えることを特徴とするサイドモールド。
(2)上記第一サイドの第一分割面および上記第二サイドの第二分割面が互いに当接して上記サイドモールドが型締めされたとき、
上記開閉部が閉状態となる上記(1)に記載のサイドモールド。
(3)少なくとも上記第一サイドは、上記天井部の上記開閉部が連結された第一端部、力点を有する第二端部、および上記第一端部と上記第二端部との間に設けられた支点を備える回転部材と、
上記第一分割面から外方向に突出した露出端を有し、上記露出端が非突出方向に押されることで当該非突出方向に移動するとともに上記力点に力を加えるボタン部と、
を有する回転構造を備え、
上記サイドモールドが型締めされることで、上記第一分割面から突出する上記ボタン部の上記露出端が、上記第二分割面に当接して非突出方向に押されて移動し、これによって上記力点に力が加わることで上記回転部材が回転するとともに上記開閉部が閉状態となるよう動作する上記(2)に記載のサイドモールド。
(4)上記サイドモールドが、靴を構成する甲被の爪先側に足指を保護するための爪先用プロテクターが配置された安全靴を製造するためのモールドであって、
上記凹部と上記爪先用プロテクターの表面との間に上記第一キャビティが形成される上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のサイドモールド。
(5)上記サイドモールドが開状態において、上記第一分割面と上記第二分割面との最大距離Dが、12cm以下である上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のサイドモールド。
(6)上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の上記サイドモールドと、ボトムモールドと、ラストモールドとを備えることを特徴とする靴製造装置。
(7)上記ボトムモールドと上記ラストモールドとの間に形成された靴底形成用の第二キャビティと、上記第一キャビティとが、樹脂が流通可能に連通している上記(6)に記載の靴製造装置。
10、410、470・・・第一サイド
12、412・・・第一分割面
20、420、480・・・第二サイド
22、422・・・第二分割面
32、432・・・第一天井部
34、434・・・第二天井部
36・・・第一閉止面
38・・・第二閉止面
39・・・対向辺
40、440・・・凹部
42・・・軸部
50・・・開閉部
52・・・押さえ部
60・・・回転構造
61・・・第一端部
62・・・第二端部
63・・・支点
64・・・回転部材
66・・・ボタン部
67・・・露出端
100、400、402・・・サイドモールド
110・・・第一キャビティ
120・・・第二キャビティ
130・・・樹脂注入孔
200・・・甲被
210・・・爪先プロテクター
212・・・外縁
220・・・被覆層
230・・・中底
240・・・アウトソール
250・・・安全靴
300・・・ボトムモールド
320・・・ラストモールド
414・・・軸部
416・・・貫通孔
418・・・拡径部
419・・・連結部材
430・・・開口
450・・・切り欠き部
500・・・靴製造装置
D・・・最大距離

Claims (6)

  1. インジェクションモールド方式により靴を製造するために用いられるサイドモールドであって、
    水平方向に開閉可能な第一サイドと第二サイドとを有し、
    前記第一サイドおよび前記第二サイドの少なくとも一方には、靴を構成する甲被の足指の上方を覆う天井部が設けられており、
    前記天井部は内面側に凹部を有し、
    前記凹部と吊り込まれた甲被との間に、足指を被覆する被覆部を形成するための第一キャビティが形成されるとともに、前記天井部の少なくとも一部に、前記第一キャビティを開放可能に動作する開閉部を備えることを特徴とするサイドモールド。
  2. 前記第一サイドの第一分割面および前記第二サイドの第二分割面が互いに当接して前記サイドモールドが型締めされたとき、
    前記開閉部が閉状態となる請求項1に記載のサイドモールド。
  3. 少なくとも前記第一サイドは、前記天井部の前記開閉部が連結された第一端部、力点を有する第二端部、および前記第一端部と前記第二端部との間に設けられた支点を備える回転部材と、
    前記第一分割面から外方向に突出した露出端を有し、前記露出端が非突出方向に押されることで当該非突出方向に移動するとともに前記力点に力を加えるボタン部と、
    を有する回転構造を備え、
    前記サイドモールドが型締めされることで、前記第一分割面から突出する前記ボタン部の前記露出端が、前記第二分割面に当接して非突出方向に押されて移動し、これによって前記力点に力が加わることで前記回転部材が回転するとともに前記開閉部が閉状態となるよう動作する請求項2に記載のサイドモールド。
  4. 前記サイドモールドが、靴を構成する甲被の爪先側に足指を保護するための爪先用プロテクターが配置された安全靴を製造するためのモールドであって、
    前記凹部と前記爪先用プロテクターの表面との間に前記第一キャビティが形成される請求項1から3のいずれか一項に記載のサイドモールド。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の前記サイドモールドと、ボトムモールドと、ラストモールドとを備えることを特徴とする靴製造装置。
  6. 前記ボトムモールドと前記ラストモールドとの間に形成された靴底形成用の第二キャビティと、前記第一キャビティとが、樹脂が流通可能に連通している請求項5に記載の靴製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH10174601A (ja) * 1996-12-16 1998-06-30 Achilles Corp 射出成形靴

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