(光照射反応について)
まず、実施の形態を説明する前に、本発明の前提である、光照射反応について説明する。光照射反応とは、照射光を被照射物に照射することにより、照射光のエネルギーが引き起こす反応をいう。光照射反応には、(1)照射光のエネルギーによって被照射物または被照射物に含まれる反応物に化学反応が起きる化学的反応、(2)照射光のエネルギーによって被照射物の融解等が起き、被照射物の形状や体積が変化する物理的反応、(3)照射光のエネルギーによって被照射物と雰囲気(被照射物の周囲の気体や液体等の物質)との化学反応が起きる複合反応の、主に3つの反応が含まれる。
また、以下の実施の形態で登場する液状の被照射物について説明する。被照射物とは、照射光が照射される対象のことである。そして、液状の被照射物とは、照射光が照射される対象が液状であることを意味する。液状の被照射物に反応物を溶解または分散させた場合には、照射光が被照射物に照射されることによって、被照射物に含まれる反応物が照射光のエネルギーによって反応する。また、被照射物自体が照射光のエネルギーによって反応することもある。被照射物に、被照射物以外の物質が含まれていない場合もあり、この場合は、被照射物自体が反応する場合や、被照射物の雰囲気が反応する場合が含まれる。被照射物の例としては、ナノ粒子の原料となる粒子を分散させた液体(水)、光触媒を分散させた液体(水)、または、常温で液体である有機物質等が挙げられる。また、液状の被照射物は、液体に限定されるものではなく、流動性のある固体でもよい。
(実施の形態1)
<光照射反応装置について>
図1は、実施の形態1の光照射反応装置LR1の模式図である。図2は、図1のA1−A1線方向からみた矢視図である。図3は、図1のA2−A2線方向からみた矢視図である。図4は、図1のA3−A3線方向からみた矢視図である。図5は、図1のA4−A4線方向からみた矢視図である。図6は、図1のA1−A1線、A2−A2線およびA3−A3線に直交する方向からみた側面図である。図7は、図6のA5−A5線方向からみた矢視図である。
図1に示すように、実施の形態1の光照射反応装置LR1は、光源部LSと、液状の被照射物MLを供給する供給部SUと、供給部SUから供給された被照射物MLを誘導する誘導部LG1と、誘導部LG1内を流れる被照射物MLに光源部LSから照射光が照射される照射部IPと、生成物を含む被照射物PLを回収する回収部PCとを有している。
供給部SUは、分散した原料粒子を含む被照射物MLを貯留する貯留部STと、貯留部STから被照射物MLを吸い上げるポンプPUと、貯留部STから誘導部LG1へと被照射物MLを供給する導入部(ノズル)NZ1と、ポンプPUおよび導入部(第1導入部)NZ1を接続する管部TUと、からなる。
光源部LSは、例えば、Nd:YAGレーザーからなる。より具体的には、Nd:YAGレーザーの第二高調波(532nm)、繰り返し周波数30Hz、エネルギー密度250mJcm-2pulse-1である。なお、光源部LSはレーザーに限定されるものではなく、特定の波長の光(赤外線や紫外線等)や所定の強度を有する光(周囲よりも明るい白色光等)であってもよい。また、光源部LSにレーザーを採用する場合においても、レーザーの種類、波長、繰り返し周波数およびエネルギー密度は、これらに限定されるものではなく、反応物の種類等に応じて、任意に変更可能である。
貯留部STは、被照射物MLを貯留できる容器として形成されている。貯留部STは、反応物の種類に応じて、大気暴露しないようにすることもできる。
ポンプPUは、例えば、シリンジポンプ、ガス置換ポンプ、蠕動ポンプ、またはピエゾ式マイクロポンプ等種々のものを採用することができる。管部TUは、例えば、可撓性を有する合成樹脂製の管を採用することができる。
図1、図2および図4〜図7に示すように、実施の形態1において、導入部NZ1は、薄板直方体状に形成されている。導入部NZ1は、例えば、石英製である。導入部NZ1には、導入部NZ1の長さ方向に沿って、断面方形状の空洞部CV1が形成されている。空洞部CV1の長さ方向一端部は、接続孔部CHとして形成され、接続孔部CHには、管部TUが接続されている。
図1、図3〜図7に示すように、実施の形態1において、誘導部LG1は、薄板直方体状に形成されている。誘導部LG1は、例えば、石英製である。実施の形態1では、導入部NZ1と誘導部LG1とは、一体に形成されている。誘導部LG1は、誘導部LG1の厚さ方向(第1方向)に貫通するスリットSL1と、スリットSL1の幅方向においてスリットSL1を挟んで対向する一対の誘導面(側面)SWとを有している。
スリットSL1は、空洞部CVに連通して形成されている。すなわち、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅寸法)は、導入部NZ1の空洞部CVの幅と同じ寸法であり、空洞部CVの一対の側面と、誘導部LG1の一対の誘導面SWとは、面一である。そして、誘導部LG1の厚さ寸法(スリットSL1の厚さ寸法)は、導入部NZ1の空洞部CVの厚さと同じ寸法である。
また、スリットSL1は、誘導部LG1の長さ方向に沿って形成されている。従って、図1に示すように、被照射物MLは、一対の誘導面SWにそれぞれ接触することにより、流れを保持された状態で、スリットSL1内を流れる。特に、スリットSL1内を流れる被照射物MLは、一対の誘導面SWにのみ接触し、板状の液膜の状態でスリットSL1内を流れる。すなわち、スリットSL1内を流れる被照射物MLは、誘導部LG1の厚さ方向に沿って露出した表面を有している。スリットSL1内を流れる被照射物MLの露出した表面は、ほぼ平坦である。なお、誘導部LG1の長さ方向は、重力方向に一致している。すなわち、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流れ方向は、重力方向である。
また、図1および図5に示すように、誘導部LG1の誘導面SWは、誘導部LG1の厚さ方向中央に位置する第1領域R1と、第1領域R1よりもそれぞれ誘導部LG1の厚さ方向外方に位置する一対の第2領域R2とにより構成されている。第1領域R1の被照射物MLに対する接触角は、第2領域R2の被照射物MLに対する接触角よりも小さい。ここで、接触角とは、静止液体の自由表面が固体壁に接する場所で、液面と固定面とのなす角をいう。
従って、被照射物MLは誘導面SWの第1領域R1に接触するように流れるのに対して、被照射物MLは誘導面SWの第2領域R2には接触しないように流れる。その結果、被照射物MLは誘導面SWの第1領域R1の幅寸法とほぼ同じ厚さを有する液膜の状態で、スリットSL1内を流れる。
なお、被照射物MLが水または水溶液の場合には、第1領域R1を、親水性を有する材料により構成し、第2領域R2を、疎水性を有する材料により構成することで、第1領域R1の被照射物MLに対する接触角を、第2領域R2の被照射物MLに対する接触角よりも小さくすることができる。
図1および図6に示すように、照射光の照射部IPは、スリットSL1内の一部である。すなわち、図1に示すように、照射部IPにおいて、スリットSL1内を流れる被照射物MLの一部には、光源部LSから導入された照射光が照射される。そして、被照射物MLに照射された照射光は、被照射物MLを誘導部LG1の厚さ方向に貫通する。一方、光源部LSから導入された照射光は、被照射物MLにのみ照射され、誘導部LG1自体には照射されない。なお、誘導部LG1と照射光の光軸OAとの角度は、調整可能であるが、照射光の光軸OAが、スリットSL1の幅方向および長さ方向に直交するように、照射部IPに照射光を導入することが好ましい。
また、図1および図6に示すように、照射部IPにおいて、照射光のスポットの、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流れ方向に沿った長さは、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅寸法)よりも大きい。より具体的には、照射光のスポットは楕円形状であり、照射光のスポットの長軸方向は、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流れ方向と一致し、照射光のスポットの短軸方向は、スリットSL1の幅方向と一致している。
なお、被照射物MLに対する照射光の照射面積が大きくなり、目的物の生成効率(単位時間あたりの目的物の生成量)が高まるという観点から、照射光のスポット径(長軸)はできるだけ大きい方が好ましい。
一方、照射光のスポット径(短軸)に対して一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅寸法)が大きすぎると、被照射物MLに照射される照射光に対する被照射物MLに照射されない照射光の割合が大きくなり、被照射物PL中に未反応物が多く含まれるようになってしまう。一方、照射光のスポット径(短軸)に対して一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅寸法)が小さすぎると、被照射物PL中の未反応物は少なくなるが、被照射物MLに対する照射光の照射面積が小さくなり、目的物の生成効率が低下する。そのため、照射光のスポット径(短軸)と一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅寸法)とは、ほぼ同じ大きさであることが好ましい。
回収部PCは、生成物を含む被照射物PLを貯留できる容器として形成されている。回収部PCは、誘導部LG1の下方に配置され、スリットSL1の長さ方向他端部から流れ落ちた被照射物PLが回収される。なお、回収部PCの構成はこれに限定されるものではなく、例えば、回収部PCを別のタンク等に接続して、回収部PCに回収された被照射物PLを別のタンク等に随時送り出すこともできる。また、回収部PCは誘導部LG1の下方に配置するだけでなく、例えば、スリットSL1の長さ方向他端部と回収部PCとを管等により接続してもよい。
導入部NZ1の長さは、例えば25mmである。空洞部CV1の幅は、例えば2mmである。誘導部LG1の厚さは、例えば2mmであり、第1領域R1の厚さは、例えば1mmであり、第2領域の厚さは、それぞれ例えば0.5mmである。また、誘導部LG1の長さは、例えば30mmである。
なお、導入部NZ1は、薄板直方体状に形成され、内部に空洞部CV1が形成されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。ただし、導入部NZ1内に厚さの薄い空洞部CV1が形成されることによって、空洞部CV1内の被照射物MLの流速を制御することができる。これにより、導入部NZ1から誘導部LG1に供給された被照射物MLが誘導部LG1において液膜を形成しやすくなる。
また、誘導部LG1は、薄板直方体状に形成されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。この場合、スリットSL1は誘導部LG1のある一方向(第1方向)に貫通するように形成される。ただし、誘導部LG1が薄板状に形成されることによって、スリットSL1の厚さが薄くなり、スリットSL1内を流れる被照射物MLをスリットSL1の長さ方向に確実に誘導することができる。
また、誘導部LG1の長さ方向が重力方向に一致している場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流れ方向は、重力方向に限定されない。ただし、誘導部LG1の長さ方向が水平方向に近いと、被照射物MLと誘導部LG1の誘導面との相互作用(吸着力)よりも被照射物MLの重力が大きくなり、被照射物MLがスリットSL1から流れ落ちてしまうおそれがある。そのため、誘導部LG1の長さ方向が重力方向に一致していることが好ましい。
なお、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流速は、照射光の条件(レーザーの繰り返し周波数や反応に必要な照射回数)によって適宜変更可能である。また、被照射物MLにグリセリン等の反応に寄与しない添加物(粘度調整剤、増粘剤)を加えることによって、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流速を調整することができる。さらに、反応物を溶媒に溶解させて被照射物MLとする場合、または、反応物を分散媒に分散させて被照射物MLとする場合には、溶媒(分散媒)を適宜選択することによって、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流速を調整することもできる。
<光照射反応装置を用いた光照射反応工程について>
以下、図1に示す実施の形態1の光照射反応装置LR1を用いて光照射反応を行う方法を説明する。
図1に示すように、被照射物MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ1の接続孔部CHに至る。その後、被照射物MLは、導入部NZ1に設けられた空洞部CV1を通り、誘導部LG1へと供給される(供給工程)。誘導部LG1に供給された被照射物MLは、スリットSL1の長さ方向一端部から長さ方向他端部に向かって流れる(誘導工程)。ここで、光源部LSから導入された照射光が照射部IPに照射される。前述したように、照射部IPは、スリットSL1内の一部であり、照射光は、スリットSL1内を流れる被照射物MLに照射される(照射工程)。この際、照射部IPにおいて、被照射物MLまたは被照射物MLに含まれる反応物が照射光のエネルギーを吸収し、反応が進行する。その後、この反応によって生成した生成物を含む被照射物PLは、スリットSL1の長さ方向他端部から回収部PCへと流れ落ち、回収部PCによって回収される(回収工程)。実施の形態1では、以上の工程によって、被照射物MLの供給、供給された被照射物MLへの照射光の照射および生成物を含む被照射物PLの回収を連続で行うことができる。
ここで、具体例として、実施の形態1の光照射反応装置を用いて、球状粒子を製造する方法について説明する。
この場合、図1に示す被照射物MLは、原料粒子を分散させた液体(以下、液体MLと称する)である。原料粒子の例としては、酸化鉄(Fe3O4)粒子が挙げられる。また、原料粒子を分散させる溶媒の例としては、超純水(電気抵抗率18MΩcm)が挙げられる。液体MLの濃度は、100〜1000ppm程度であり、100〜500ppmが好ましい。ここで、液体MLは、超音波処理して、原料粒子を液体ML中に分散させた状態で貯留部STに貯留する。
次に、図1に示すように、液体MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ1の接続孔部CHに至る。その後、液体MLは、導入部NZ1に設けられた空洞部CV1を通り、誘導部LG1へと供給される(供給工程)。誘導部LG1に供給された液体MLは、スリットSL1の長さ方向一端部から長さ方向他端部に向かって流れる(誘導工程)。ここで、光源部LSから導入された照射光が照射部IPに照射される。前述したように、照射部IPは、スリットSL1内の一部であり、照射光は、スリットSL1内を流れる液体MLに照射される(照射工程)。この際、照射部IPにおいて、液体MLに含まれる原料粒子が照射光(レーザー光)を吸収し、レーザー光が照射している時間(例えば、ナノ秒オーダー)に、粒子温度は数千度を超える。これにより、原料粒子が溶融し、球状になる。原料粒子を溶融させるのに必要なレーザー光のエネルギーは、1レーザーパルスあたり2.0J/cm2未満が好ましく、1レーザーパルスあたり0.5J/cm2以下がより好ましい。その後、溶融した原料粒子は、周囲の液体によって急冷される。これにより、球状ナノ粒子が生成される。生成された球状ナノ粒子を含む液体(被照射物)PLは、誘導部LG1から回収部PCへと回収される(回収工程)。
以上のように、実施の形態1の光照射反応装置を用いて、球状ナノ粒子を製造する場合には、溶融時間や到達温度等はレーザーの照射条件の制御により可能であり、急冷条件の制御もし易く、大がかりな装置を必要としないという利点がある。また、溶融した原料粒子は、周囲の分散溶媒によって均一に冷却されるため、真球に近い粒子が生成しやすい。また、パルスレーザー光を照射することにより、原料粒子に与えるエネルギーを均一化することができる。そのため、生成する球状ナノ粒子の粒径を容易に揃えることができる。
<検討の経緯について>
以下、検討例1および検討例2の光照射反応装置の構成と、本発明者が検討例1および検討例2について見出した課題とを説明する。
[検討例1]
図8は、検討例1の光照射反応装置LR101の模式図である。
図8に示すように、検討例1の光照射反応装置LR101は、光源部LSと、被照射物MLを供給する供給部SUと、被照射物MLに光源部LSから照射光が照射される照射部IPと、生成物を含む被照射物PLを回収する回収部PCとを有している。検討例1の光源部LSおよび回収部PCは、実施の形態1の光源部LSおよび回収部PCと同じである。一方、検討例1の供給部SUの構成は、実施の形態1の供給部SUの構成と異なっている。また、検討例1は実施の形態1のような誘導部を有していない。
検討例1の供給部SUは、被照射物MLを貯留する貯留部STと、貯留部STから被照射物MLを吸い上げるポンプPUと、貯留部STから照射部IPへと被照射物MLを供給する導入部(ノズル)NZ101と、ポンプPUおよび導入部NZ101を接続する管部TUと、からなる。
検討例1において、導入部NZ101は、先端部TPに吐出口EXを有するノズルとして形成されている。導入部NZ101は、例えば、金属製である。導入部NZ101は、円柱状の本体部BOと、本体部BOよりも小径に形成された円柱状または截頭円錐(円錐台)状の先端部TPと、本体部BOよりも小径に形成された円柱状の基端部BEとにより構成されている。また、吐出口EXは、例えば、円筒状または逆截頭円錐状の孔部として形成されている。吐出口EXは、導入部NZ101の先端部TPから基端部BEへと貫通する円筒状の空洞部CVと連通している。導入部NZ101の基端部BEには、円筒状に凹設された接続孔部CHが形成されている。接続孔部CHは、管部TUと接続されている。
検討例1において、導入部NZ101の先端部TPは重力方向下向き(鉛直下向き)に配置されている。すなわち、導入部NZ101の先端部TPにある吐出口EXから吐出された被照射物MLは、導入部NZ101の下方に配置された回収部PCに直接注ぎ込まれる。導入部NZ101の吐出口EXから一定以上の流速(流量)で被照射物MLを吐出することにより、吐出口EXから吐出された被照射物MLは、安定した柱状形状の流れ(層流)となる。この際、吐出口EXから連続して吐出された被照射物MLの形状は円柱状である。
また、被照射物MLを導入部NZ101の吐出口EXから連続して吐出しない場合は、導入部NZ101の吐出口EXに液滴MLdが生成される。液滴MLdに作用する表面張力による重力方向上向き(鉛直上向き)の力が、液滴MLdの重力よりも大きい間は、導入部NZ101の吐出口EXに液滴MLdが保持される。
なお、検討例1において、照射光の光軸OAは、導入部NZ101の軸方向に対して垂直である。そのため、照射光の光軸OAの高さを変えることによって、導入部NZ101から回収部PCに向かって流れる任意の位置の被照射物ML、導入部NZ101の吐出口EXに保持された液滴MLd、または、導入部NZ101から回収部PCに向かって滴り落ちる任意の位置の液滴MLdに対して、照射光を照射できる。すなわち、照射光の照射部IPは、導入部NZ101の吐出口EXから回収部PCまでの任意の空間である。
また、検討例1では、光源部LSにパルスレーザーを用いることで、液滴MLdの生成とパルスレーザーの照射とを同期させることができる。これにより、液滴MLdに対して照射光(パルス光)を確実に照射することができる。また、液滴MLdの生成とパルスレーザーの照射とを同期させることにより、液滴MLdごとの照射光(パルス光)の照射回数を一定に保つことができる。また、検討例1では、液滴MLdが生成されている間であれば、液滴MLdに対して照射光を複数回照射してもよい。
なお、被照射物MLの流速(流量)を大きくして、単位時間あたりの光照射反応による生成物の量を大きくできるという点で、被照射物MLを導入部NZ101の吐出口EXから連続して吐出した方が、導入部NZ101の吐出口EXに液滴MLdを生成するよりも有利である。一方、被照射物MLにレーザー光を確実に照射して反応効率を高めるという点で、導入部NZ101の吐出口EXに液滴MLdを生成した方が、被照射物MLを導入部NZ101の吐出口EXから連続して吐出するよりも有利である。
以下、図8に示す検討例1の光照射反応装置LR101を用いて光照射反応を行う方法を説明する。
図8に示すように、被照射物MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ101の接続孔部CHに至る。その後、被照射物MLは、導入部NZ101の基端部BEから先端部TPに向かって流れ、さらに、被照射物MLは、導入部NZ101の先端部TPにある吐出口EXから回収部PCに向かって流れ落ちる(供給工程)。その後、照射部IP、すなわち導入部NZ101の吐出口EXから回収部PCまで流れ落ちる被照射物MLの任意の箇所に照射光が照射される(照射工程)。この際、被照射物MLまたは被照射物MLに含まれる反応物が照射光のエネルギーを吸収し、反応が進行する。その後、この反応によって生成した生成物を含む被照射物PLは、導入部NZ101の下方に配置された回収部PCに直接滴り落ちる(回収工程)。
また、検討例1の光照射反応装置LR101を用いて光照射反応を行う方法において、被照射物MLを導入部NZ101の吐出口EXから連続して吐出せず、吐出口EXに、液滴MLdを生成する場合は、次のようになる。
図8に示すように、被照射物MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ101の接続孔部CHに至る。その後、被照射物MLは、導入部NZ101の基端部BEから先端部TPに向かって流れる。ここで、導入部NZ101の先端部TPにある吐出口EXには、液滴MLdが生成される(供給工程)。
検討例1において、導入部NZ101の先端部TPの吐出口EXに生成された液滴MLdは、被照射物MLが吐出されるに従って大きくなる。そして、液滴MLd自体の重力が液滴MLdの表面張力による重力方向上向き(鉛直上向き)の力を上回ったときに、液滴MLdが導入部NZ101の吐出口EXから落下する。その後、照射部IP、すなわち落下中の液滴MLdに照射光が照射される(照射工程)。この際、液滴MLdに含まれる反応物が照射光のエネルギーを吸収し、反応が進行する。その後、この反応によって生成した生成物を含む液滴PLdは、導入部NZ101の下方に配置された回収部PCに直接滴り落ちる(回収工程)。
また、検討例1では、吐出口EXに保持された液滴MLdに照射光を照射することもできる。この場合、吐出口EXに保持された液滴MLdに含まれる反応物が照射光のエネルギーを吸収し、反応が進行する。これにより、吐出口EXには、この反応によって生成した生成物を含む液滴PLdが保持された状態になる。そして、液滴PLd自体の重力が、液滴PLdの表面張力による重力方向上向き(鉛直上向き)の力を上回ったときに、液滴PLdが導入部NZ101の吐出口EXから落下する。その後、吐出口EXから吐出された液滴PLdは、導入部NZ101の下方に配置された回収部PCに直接滴り落ちる(回収工程)。
検討例1では、以上の工程によって、被照射物MLの供給、供給された被照射物MLへの照射光の照射および生成物を含む被照射物PLの回収を連続で行うことができる。
また、検討例1では、導入部NZ101内の空洞部CVや導入部NZ101の吐出口EXの形状または大きさ(断面積)を変化させることによって、生成される液滴MLdの大きさを変化させることができる。
また、検討例1では、光源部LSにパルスレーザーを用いることで、液滴MLdの生成とパルスレーザーの照射とを同期させることにより、液滴MLdごとに照射光(パルス光)を確実に照射することができる。その結果、生成物の生成効率を高めることができる。
特に、検討例1では、液滴MLdが導入部NZ101の吐出口EXに保持される時間内であれば、保持された液滴MLdに照射光を複数回照射することもできる。従って、導入部NZ101の吐出口EXに保持された液滴MLdに複数回照射光を照射した場合には、吐出口EXから落下している液滴MLdに照射光を照射した場合に比べて、反応物をより効率良く生成することができる。
[検討例2]
図9は、検討例2の光照射反応装置LR102の模式図である。
図9に示すように、検討例2の光照射反応装置LR102は、光源部LSと、被照射物MLを供給する供給部SUと、供給部SUから供給された被照射物MLを誘導する誘導部LG102と、誘導部LG102内を流れる被照射物MLに光源部LSから照射光が照射される照射部IPと、生成物を含む被照射物PLを回収する回収部PCとを有している。検討例2の光源部LSおよび回収部PCは、実施の形態1の光源部LSおよび回収部PCと同じである。一方、検討例2の供給部SUおよび誘導部LG102の構成は、実施の形態1の供給部SUおよび誘導部LG1の構成とそれぞれ異なっている。
検討例2の供給部SUは、被照射物MLを貯留する貯留部STと、貯留部STから被照射物MLを吸い上げるポンプPUと、貯留部STから照射部IPへと被照射物MLを供給する導入部NZ102と、ポンプPUおよび導入部NZ102を接続する管部TUと、からなる。
検討例2において、導入部NZ102は、管部TUをそのまま延長した形状に形成されている。また、誘導部LG102は、薄板直方体状に形成されている。誘導部LG102は、合成樹脂製であって、例えば、ポリ塩化ビニルまたは6−ナイロンからなる。誘導部LG102には、被照射物MLを誘導する溝部DIが長さ方向に沿って形成されている。溝部DIの長さ方向一端部には、導入部NZ102が接続されている。溝部DIは露出しており、溝部DIの一部(例えば、溝部DIの長さ方向中央)には、光源部LSから導入された照射光が照射される。すなわち、照射光の照射部IPは、溝部DIの一部である。なお、誘導部LG102と照射光の光軸OAとの角度は、調整可能である。また、被照射物MLに照射光を確実に照射するという観点から、溝部DIの幅寸法は、照射光のスポット径以下であることが好ましい。
以下、図9に示す検討例2の光照射反応装置LR102を用いて光照射反応を行う方法を説明する。
図9に示すように、被照射物MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ102に至る。そして、被照射物MLは、導入部NZ102から誘導部LG102へと供給される(供給工程)。供給された被照射物MLは、溝部DIの長さ方向一端部へと誘導され、被照射物MLは溝部DIの長さ方向一端部から長さ方向他端部に向かって流れる(誘導工程)。ここで、光源部LSから導入された照射光が照射部IP、すなわち溝部DIの長さ方向中央に照射される(照射工程)。この際、被照射物MLまたは被照射物MLに含まれる反応物が照射光のエネルギーを吸収し、反応が進行する。この反応によって生成された生成物を含む被照射物PLは、溝部DIの長さ方向他端部から回収部PCへと流れ落ち、回収部PCによって回収される(回収工程)。
検討例2では、以上の工程によって、被照射物MLの供給、供給された被照射物MLへの照射光の照射および生成物を含む被照射物PLの回収を連続で行うことができる。
また、検討例2では、誘導部LG102に溝部DIが形成されているので、誘導部LG102に供給された被照射物MLは、溝部DI内を溝部DIの両側面および底面に誘導されながら流れる。すなわち、被照射物MLが溝部DIの両側面および底面に接触しながら溝部DI内を流れるため、被照射物の流速を制御することができる。そのため、照射光(パルス光)を被照射物の流速に合わせて確実に照射することができる。
[検討例1および検討例2の課題について]
まず、検討例1について本発明者が見出した課題について説明する。検討例1は、前記実施の形態1と異なり、誘導部を有していない。そのため、検討例1では、供給部SUの導入部NZ101から、自由空間に液状の被照射物MLが吐出される。導入部NZ101から自由空間に被照射物MLが吐出されると、被照射物MLの表面張力により、被照射物MLの形状は円柱状になる(以下、導入部NZ101から吐出された円柱状の被照射物MLを、液柱とよぶ)。これは、導入部NZ101の吐出口EXの断面形状が円形以外の場合であっても同じである。すなわち、液状の被照射物が吐出口から吐出された後は、被照射物の表面張力によって、被照射物の形状は円柱状になる。
この液柱に照射光を照射する場合、液柱の表面が曲面であるため、液柱の表面で照射光が屈折し、液柱の内部に照射光が進入しない空間が生じる。これをレンズ効果という。特に、図8に示すように、導入部NZ101から被照射物MLを液滴MLdとして吐出した場合には、被照射物の形状は回転楕円体状になる。そのため、液滴表面の曲率が前述の液柱よりも大きくなり、液滴の方が液柱よりもレンズ効果が大きい。このように、液柱や液滴の内部には照射光が進入しない空間が存在するため、被照射物に含まれる反応物のうち、未反応のまま回収部PCに回収される反応物が一定の割合で存在することになる。その結果、液柱や液滴に含まれる反応物の反応効率を高めることができないという問題がある。
また、液柱や液滴のように、被照射物の表面が曲面である場合には、表面での照射光の反射も起こりやすい。そのため、もともとの照射光の強度に対して、液柱や液滴の内部に進入する照射光の強度が低くなってしまう。従って、このような理由によっても、液柱や液滴に含まれる反応物の反応効率を高めることができない。
そこで、液柱や液滴に含まれる反応物の反応効率を高めるため、反応物の濃度を大きくすると、消光が顕著になる。消光とは、ある反応物によって照射光が吸収または散乱されて、同じ光路に存在する反応物に対して、反応が起こるのに十分な強度を有する照射光が届かない現象をいう。消光の影響は、照射光の進入方向に存在する被照射物が厚くなるほど大きくなる。しかし、消光の影響を小さくするために液柱や液滴を薄くしようとすると、液柱や液滴の体積自体が少なくなってしまう。そのため、照射光が照射される被照射物の体積も少なくなり、少量の被照射物しか処理することができなくなる。すなわち、反応物の濃度を大きくすることと、照射光が照射される被照射物の体積を多くすることとを両立することができず、反応効率を高めることができない。
また、検討例1では、被照射物に照射光を確実に照射するために、導入部NZ101の吐出口EXから一定以上の流速(流量)で被照射物MLを吐出して、安定した柱状形状の流れ(層流)を作り出す必要がある。ここで、照射光として繰り返し周波数の高いレーザー(例えば100kHzのダイオード励起レーザー)を用いれば、流速の大きい被照射物にレーザー光(パルス)を照射することが可能である。しかし、ダイオード励起レーザー等の繰り返し周波数が高いレーザーの場合、1パルスあたりのエネルギーは数100μJと低いため、目的の反応自体が進行しないおそれがある。ここで、レーザー光を集光して被照射物に照射すればエネルギー密度を高めることは可能であるが、被照射物に対する実効的な照射面積(スポットサイズ)が小さくなり、結果的に反応効率を低下させてしまう。
一方、照射光として繰り返し周波数の低いレーザー(例えば30Hzのフラッシュランプ励起レーザー)を用いた場合、1パルスあたりのエネルギーは、一般的な光照射反応に十分(例えば1パルスあたり300mJ)であり、レーザー光を集光する必要がない。そのため、被照射物に対して十分大きな面積(スポットサイズ)でレーザー光を照射することができる。しかし、流速の大きい被照射物にレーザー光を照射する場合、単位時間あたりのパルス数が少ないため、レーザー光が照射される被照射物に対するレーザー光が照射されない被照射物の割合が大きくなってしまう。その結果、検討例1では、流速(流量)の大きい被照射物に対しては、繰り返し周波数の高いダイオード励起レーザーを使用したとしても、繰り返し周波数の低いフラッシュランプ励起レーザーを使用したとしても、反応効率を高めることができないという問題がある。
一方、導入部NZ101の吐出口EXから吐出される被照射物MLの流速(流量)を小さくすると、吐出された被照射物MLが安定した柱状形状の流れ(層流)とならず、液滴状となる。ここで、導入部NZ101の吐出口EXの大きさ(径寸法)を大きくすれば、吐出口EXから吐出される被照射物MLの流速をある程度遅くしつつ、被照射物MLの安定した柱状形状の流れ(層流)を作り出すことができる。しかしながら、この場合、導入部NZ101から吐出された円柱状の被照射物ML(液柱)の直径が大きくなり、液柱を貫通する照射光の光路長は長くなる。その結果、前述したように、消光の影響が大きくなり、反応効率は低下する。一方、吐出口EXの大きさを小さくすると、吐出口EXから吐出される被照射物の流速が速くなってしまい、照射光が照射されない被照射物の割合が大きくなってしまう。
以上より、検討例1のように、自由空間に吐出される液状の被照射物に照射光を照射する場合は、被照射物に含まれる反応物の反応効率を高めることが難しいという問題がある。
次に、本発明者が検討例2について見出した課題について説明する。検討例2の光照射反応装置LR102は、検討例1の光照射反応装置LR101と異なり、誘導部LG102を有している。すなわち、誘導部LG102には、被照射物MLを誘導する溝部DIが長さ方向に沿って形成されている。こうすることで、溝部、すなわち溝状の流路を用いて板状の流れを形成し、この被照射物に照射光を照射している。そのため、検討例2では、照射光の進入方向に存在する被照射物を薄くしつつも液膜の面積を大きくすることができるため、検討例1に比べて、消光の影響を小さくしつつ、照射光が照射される被照射物の体積を多くすることができる。また、消光の影響を小さくできるため、反応物の濃度を大きくすることもできる。
また、検討例2では、誘導部LG102に溝部DIが形成されているので、誘導部LG102に供給された被照射物MLは、溝部DI内を溝部DIの両側面および底面に誘導されながら流れる。すなわち、被照射物MLが溝部DIの両側面および底面に接触しながら溝部DI内を流れるため、被照射物MLの流速を制御することができる。そのため、照射光(パルス光)を被照射物の流速に合わせて確実に照射することができる。
しかし、検討例2において、照射部である溝部の底面には、常に照射光が照射されるため、溝部の底面が照射光により損傷するおそれがある。また、反応物や生成物が溝部の底面に焼き付くという事態が生じる可能性もある。さらに、反応効率を高めるため、反応物の濃度を大きくしてしまうと、反応物や生成物が溝部の底面に焼き付く可能性がさらに高まってしまう。
また、図示しないが、空洞部を有する誘導部を薄板状に形成し、照射光の進入方向に対して空洞部の厚さを薄くして、誘導部の照射光が照射される部分に照射光の透過が可能な窓部を空洞部に面するように設けた光照射反応装置が考えられる。空洞部に液状の被照射物を流すと、被照射物は、平坦な板状の液膜の状態で空洞部内を流れる。そのため、この光照射反応装置においては、照射光の進入方向に存在する被照射物を薄くしつつも液膜の面積を大きくすることができるため、検討例2と同様に、検討例1に比べて、消光の影響を小さくしつつ、照射光が照射される被照射物の体積を多くすることができる。また、この光照射反応装置においては、検討例2と同様に、液状の被照射物が空洞部を構成する誘導部の内側面に接触しながら空洞部を流れるため、検討例1のように被照射物を自由空間に吐出する場合に比べて、被照射物の流速を制御することができる。
しかし、この光照射反応装置においても、窓部および照射光の進行方向にある誘導部の内側面には、常に照射光が照射されるため、窓部および照射光の進行方向にある誘導部の内側面が照射光により損傷するおそれがある。また、反応物や生成物が窓部および照射光の進行方向にある誘導部の内側面に焼き付くという事態が生じる可能性もある。
以上より、検討例2を一例として、誘導部により被照射物の流れを制御し、この被照射物に照射光を照射する場合は、誘導部の照射光が照射される部分に損傷や生成物等の焼き付きが生じ、光照射反応装置の耐久性等の問題が生じる。被照射物または被照射物に含まれる反応物の反応効率を高めることが難しいという問題がある。
<実施の形態の主要な特徴と効果>
図1、図3〜図7に示すように、実施の形態1の主要な特徴のうちの一つは、誘導部LG1は、誘導部LG1の厚さ方向(第1方向)に貫通するスリットSL1と、スリットSL1の幅方向においてスリットSL1を挟んで対向する一対の誘導面(側面)SWとを有していることである。そして、誘導部LG1のスリットSL1内を流れる被照射物MLに対して、被照射物MLを誘導部LG1の厚さ方向に貫通するように、照射光を照射している。
実施の形態1では、このような構成を採用したことにより、反応効率の高い光照射反応装置を提供することができる。以下、その理由について具体的に説明する。
図1に示すように、実施の形態1では、誘導部LG1に供給された被照射物MLは、スリットSL1の長さ方向一端部から長さ方向他端部に向かって流れる。ここで、被照射物MLは、一対の誘導面SWにそれぞれ接触することにより、板状の液膜の状態でスリットSL1内を流れる。そして、光源部LSから導入された照射光が、スリットSL1内を流れる被照射物MLに照射される。こうすることで、実施の形態1では、検討例2と同様に、照射光の進入方向に存在する被照射物を薄くしつつも液膜の面積を大きくすることができるため、検討例1に比べて、消光の影響を小さくしつつ、照射光が照射される被照射物の体積を多くすることができる。また、消光の影響を小さくできるため、反応物の濃度を大きくすることもできる。すなわち、反応物の濃度を大きくすることと、照射光が照射される被照射物の体積を多くすることとを両立することができ、反応効率を高めることができる。
また、検討例1では、被照射物に照射光を確実に照射するために、導入部NZ101の吐出口EXから一定以上の流速(流量)で被照射物MLを吐出して、安定した流れ(層流)を作り出す必要があった。しかし、こうすると被照射物の流速が大きいため、反応効率が低下してしまうという問題があった。それに対して、実施の形態1では、誘導部LG1に供給された被照射物MLは、スリットSL1内を誘導面SWに誘導されながら流れる。すなわち、被照射物MLがスリットSL1の誘導面SWに接触しながらスリットSL1内を流れるため、被照射物の流速を制御(遅く)しつつ、被照射物MLの安定した流れ(層流)を作り出すことができる。その結果、照射光(パルス光)を被照射物の流速に合わせて確実に照射することができる。
また、実施の形態1では、スリットSL1が誘導部LG1の厚さ方向に貫通している。そのため、検討例2と異なり、照射光の進入方向(光路上)には、被照射物MLしか存在せず、誘導部LG1に照射光が照射される部分が存在しない。こうすることで、実施の形態1では、検討例2と異なり、誘導部LG1の一部が照射光によって損傷するおそれがない。そして、照射光の進入方向(光路上)には、誘導部LG1と被照射物MLとが接触する部分が存在しない。そのため、反応物や生成物が照射部の一部に焼き付くという事態を防止することができる。
また、実施の形態1では、導入部NZ1に空洞部CVを設け、スリットSL1を空洞部CVに連通するように構成している。すなわち、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅寸法)は、導入部NZ1の空洞部CVの幅と同じ寸法であり、空洞部CVの一対の側面と、誘導部LG1の一対の誘導面SWとは、面一である。そして、誘導部LG1の厚さ寸法(スリットSL1の厚さ寸法)は、導入部NZ1の空洞部CVの厚さと同じ寸法である。こうすることで、空洞部CV1によって、被照射物MLは、板状の液膜の状態にされ、この液膜の状態が維持されながら、スリットSL1の長さ方向位置端部から長さ方向他端部に向かって流れる。その結果、導入部NZ1の空洞部CVから誘導部LG1のスリットSL1へと、被照射物MLを安定して供給できると共に、板状の液膜を、スリットSL1内に安定して作り出すことができる。
また、図1および図5に示すように、実施の形態1の他の主要な特徴のうちの一つは、誘導部LG1の誘導面SWは、誘導部LG1の厚さ方向中央に位置する第1領域R1と、第1領域R1よりもそれぞれ誘導部LG1の厚さ方向外方に位置する一対の第2領域R2とにより構成されていることである。そして、第1領域R1の被照射物MLに対する接触角は、第2領域R2の被照射物MLに対する接触角よりも小さい。そのため、被照射物MLは誘導面SWの第1領域R1に接触するように流れるのに対して、被照射物MLは誘導面SWの第2領域R2には接触しないように流れる。その結果、被照射物MLは誘導面SWの第1領域R1の幅寸法とほぼ同じ厚さを有する液膜の状態で、スリットSL1内を流れる。こうすることで、誘導面SWの第1領域R1の幅寸法を適切に設定することで、誘導部LG1の形状や厚さ寸法にかかわらず、被照射物MLを板状の液膜の状態にすることができる。
また、図1および図6に示すように、実施の形態1では、照射部IPにおいて、照射光のスポットの、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流れ方向に沿った長さは、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅寸法)よりも大きい。こうすることで、スリットSL1内を流れる被照射物MLに対する照射光の照射面積が大きくなり、目的物の生成効率を高めることができる。
(実施の形態2)
<光照射反応装置について>
図10は、実施の形態2の光照射反応装置LR2の模式図である。図11は、図10のB1−B1線方向からみた矢視図である。図12は、図10のB2−B2線方向からみた矢視図である。図13は、図10のB3−B3線方向からみた矢視図である。
図示しないが、実施の形態2の光照射反応装置LR2は、光源部LSと、液状の被照射物(液体)MLを供給する供給部SUと、供給部SUから供給された被照射物MLを誘導する誘導部LG2と、誘導部LG2内を流れる被照射物MLに光源部LSから照射光が照射される照射部IPと、生成物を含む被照射物PLを回収する回収部PCとを有している。実施の形態2の光源部LSおよび回収部PCは、実施の形態1の光源部LSおよび回収部PCと同じである。一方、実施の形態2の供給部SUおよび誘導部LG2の構成は、実施の形態1の供給部SUおよび誘導部LG1の構成とそれぞれ異なっている。
図示しないが、実施の形態2の供給部SUは、被照射物MLを貯留する貯留部STと、貯留部STから被照射物MLを吸い上げるポンプPUと、貯留部STから照射部IPへと被照射物MLを供給する導入部(第2導入部)NZ2と、ポンプPUおよび導入部NZ2を接続する管部TUと、からなる。
図10〜図13に示すように、実施の形態2において、導入部NZ2は、薄板直方体状に形成されている。導入部NZ2は、例えば、石英製である。導入部NZ2には、導入部NZ2の長さ方向に沿って、断面円形状の空洞部(第1空洞部)CV2aと、液溜部SPと、断面方形状の空洞部(第2空洞部)CV2bとが形成されている。液溜部SPは円筒状の空洞として形成されている。液溜部SPの長さ(円筒状の空洞の高さに相当)は、空洞部CV2aの幅よりも大きい。空洞部CV2bの幅は、空洞部CV2aの幅よりも大きい。液溜部SPの長さと空洞部CV2bの幅とは同じ寸法である。また、空洞部CV2bの厚さは、空洞部CV2aの厚さよりも薄い。そして、液溜部SPの直径(円筒状の空洞の直径に相当)は、空洞部CV2aの厚さおよび空洞部CV2bの厚さよりも大きい。空洞部CV2aの長さ方向一端部は、接続孔部CHとして形成され、接続孔部CHには、管部TUが接続されている。
また、実施の形態2において、誘導部LG2は、薄板直方体状に形成されている。誘導部LG2は、例えば、石英製である。導入部NZ2と誘導部LG2とは、一体に形成されている。誘導部LG2は、誘導部LG2の厚さ方向(第1方向)に貫通するスリットSL2と、スリットSL2の幅方向においてスリットSL2を挟んで対向する一対の誘導面(側面)SWとを有している。スリットSL2は、誘導部LG2の長さ方向に沿って形成されている。なお、誘導部LG2の長さ方向は、重力方向に一致している。一対の誘導面SW間の距離(スリットSL2の幅寸法)は、導入部NZ2の空洞部CV2bの幅と同じ寸法である。なお、実施の形態1と同様に、誘導部LG2の長さ方向は、重力方向に一致している。すなわち、スリットSL2内を流れる被照射物MLの流れ方向は、重力方向である。
また、図10に示すように、照射光の照射部IPは、スリットSL2内の一部である。照射部IPにおいて、照射光のスポットの、スリットSL2内を流れる被照射物ML(図示せず)の流れ方向に沿った長さは、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL2の幅寸法)よりも大きい。より具体的には、照射光のスポットは楕円形状であり、照射光のスポットの長軸方向は、スリットSL2内を流れる被照射物ML(図示せず)の流れ方向と一致し、照射光のスポットの短軸方向は、スリットSL2の幅方向と一致している。
導入部NZ2の長さは、例えば25mmである。空洞部CV2aの幅は、例えば2mmであり、空洞部CV2bの幅および液溜部SPの長さは、例えば9mmである。液溜部SPの直径は、例えば3mmである。空洞部CV2aの厚さは、例えば2mmであり、空洞部CV2bの厚さは、例えば1mmである。誘導部LG2の厚さは、例えば2mmである。また、誘導部LG2の長さは、例えば30mmである。
<光照射反応装置を用いた光照射反応工程について>
以下、図10〜図13に示す実施の形態2の光照射反応装置LR2を用いて光照射反応を行う方法を説明する。
図示しないが、液状の被照射物MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ2の接続孔部CHに至る。その後、被照射物MLは、導入部NZ2に設けられた空洞部CV2aを通り、液溜部SPに至る。被照射物MLは、液溜部にある程度蓄えられた後に、空洞部CV2bを通り、誘導部LG2へと供給される(供給工程)。誘導部LG2に供給された被照射物MLは、スリットSL2の長さ方向一端部から長さ方向他端部に向かって流れる(誘導工程)。ここで、光源部LSから導入された照射光が照射部IPに照射される。前述したように、照射部IPは、スリットSL2内の一部であり、照射光は、スリットSL2内を流れる被照射物MLに照射される(照射工程)。この際、照射部IPにおいて、被照射物MLまたは被照射物MLに含まれる反応物が照射光のエネルギーを吸収し、反応が進行する。その後、この反応によって生成した生成物を含む被照射物PLは、スリットSL2の長さ方向他端部から回収部PCへと流れ落ち、回収部PCによって回収される(回収工程)。実施の形態2では、実施の形態1と同様に、以上の工程によって、被照射物MLの供給、供給された被照射物MLへの照射光の照射および生成物を含む被照射物PLの回収を連続で行うことができる。
<実施の形態の主要な特徴と効果>
図10〜図13に示すように、実施の形態2の主要な特徴のうちの一つは、導入部NZ2の長さ方向に沿って、空洞部CV2aと、液溜部SPと、空洞部CV2bとが導入部NZ2に形成されていることである。そして、空洞部CV2bの幅は、空洞部CV2aの幅よりも大きく、液溜部SPの長さと空洞部CV2bの幅とは同じ寸法である。また、空洞部CV2bの厚さは、空洞部CV2aの厚さよりも薄い。
実施の形態2では、このような構成を採用したことにより、反応効率の高い光照射反応装置を提供することができる。以下、その理由について具体的に説明する。
前述したように、照射光のスポット径(短軸)と一対の誘導面SW間の距離(スリットSL2の幅寸法)とは、ほぼ同じ大きさであることが好ましい。そのため、被照射物MLに対する照射光の照射面積を大きくして、目的物の生成効率を高めるためには、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL2の幅寸法)を実施の形態1よりも大きくして、スリットSL2を流れる液膜の幅を大きくすることが望まれる。ただし、例えば図1および図6に示す空洞部CVの幅およびスリットSL1の幅をそのまま大きくすると、空洞部CVおよびスリットSL1を流れる被照射物MLの流速(流量)が大きくなる。この場合、被照射物MLが、一対の誘導面SWに接触せず、スリットSL1に板状の液膜が形成されないおそれがある。
そこで、実施の形態2では、導入部NZ2の内部に、実施の形態1と同じ幅および厚さを有する空洞部CV2aと、空洞部CV2aよりも幅が大きく、かつ、厚さが小さい空洞部CV2bとを設けている。そして、空洞部CV2aと空洞部CV2bとの間に、液溜部SPを有している。そのため、空洞部CV2aを通った被照射物MLは、一旦液溜部SPに蓄積され、被照射物MLの流速が制御される。その後、空洞部CV2bによって、被照射物MLは、板状の液膜の状態にされる。そして、この液膜の状態が維持されながら、スリットSL2の長さ方向位置端部から長さ方向他端部に向かって流れる。こうすることで、実施の形態2では、実施の形態1よりも幅広の液膜を安定して形成することができ、被照射物MLに対する照射光の照射面積を大きくして、目的物の生成効率を高めることができる。
なお、実施の形態2の導入部NZ2の構造に比べて、実施の形態1の導入部NZ1の構造は簡便である。そのため、導入部自体の製造コストやメンテナンスの容易さの観点からは、実施の形態1の光照射反応装置の方が実施の形態2の光照射反応装置に比べて有利である。
また、図示しないが、実施の形態1と同様に、誘導部LG2の誘導面SWが、誘導部LG2の厚さ方向中央に位置する第1領域R1と、第1領域R1よりもそれぞれ誘導部LG2の厚さ方向外方に位置する一対の第2領域R2とにより構成されており、第1領域R1の被照射物MLに対する接触角は、第2領域R2の被照射物MLに対する接触角よりも小さくなるように構成してもよい。この場合には、被照射物MLは誘導面SWの第1領域R1に接触するように流れるのに対して、被照射物MLは誘導面SWの第2領域R2には接触しないように流れる。その結果、被照射物MLは誘導面SWの第1領域R1の幅寸法とほぼ同じ厚さを有する液膜の状態で、スリットSL2内を流れる。
(実施の形態3)
<光照射反応装置について>
図14は、実施の形態3の光照射反応装置LR3の模式図である。図15は、図14のC1−C1線方向からみた矢視図である。図16は、図14のC2−C2線方向からみた矢視図である。図17は、図14のC3−C3線方向からみた矢視図である。
図示しないが、実施の形態3の光照射反応装置LR3は、光源部LSと、液状の被照射物(液体)MLを供給する供給部SUと、供給部SUから供給された被照射物MLを誘導する誘導部LG3と、誘導部LG3内を流れる被照射物MLに光源部LSから照射光が照射される照射部IPと、生成物を含む被照射物PLを回収する回収部PCとを有している。実施の形態3の光源部LSおよび回収部PCは、実施の形態1の光源部LSおよび回収部PCと同じである。一方、実施の形態3の供給部SUおよび誘導部LG3の構成は、実施の形態1の供給部SUおよび誘導部LG1の構成とそれぞれ異なっている。
図示しないが、実施の形態3の供給部SUは、被照射物MLを貯留する貯留部STと、貯留部STから被照射物MLを吸い上げるポンプPUと、貯留部STから照射部IPへと被照射物MLを供給する導入部(第3導入部)NZ3と、ポンプPUおよび導入部NZ3を接続する管部TUと、からなる。
図14〜図17に示すように、実施の形態3において、導入部NZ3は、薄板直方体状に形成されている。便宜上、導入部NZ3の長さ方向は、誘導部LG3と接続され、被照射物MLが流れる方向と一致する方向をいい、導入部NZ3の幅方向は、導入部NZ3の長さ方向に直交する方向をいう。
導入部NZ3は、例えば、石英製である。導入部NZ3には、平面三角形状の空洞部CV3が形成されている。空洞部CV3の一端部(頂部、被照射物MLの入口)は導入部NZ3の幅方向中央にあり、他端部(底辺部、被照射物MLの出口)に向かって徐々に幅が拡がるテーパー状に形成されている。空洞部CV3の一端部(被照射物MLの入口)には、導入部NZ3の厚さ方向一端部に開口する接続孔部CHが形成されている。図示しないが、接続孔部CHには、管部TUが接続されている。
また、導入部NZ3には、平面三角形板状の突出部BKが、導入部NZ3の厚さ方向に沿って空洞部CV3内に突出して形成されている。突出部BKの厚さは、空洞部CV3の厚さよりも薄い。突出部BKの平面寸法は、空洞部CV3の平面寸法よりも小さく、突出部BKの周縁部は、空洞部CV3の周縁部からそれぞれ所定寸法内方へ離間している。そのため、空洞部CV3に存在する空間(被照射物MLが流れる部分)の厚さは、空洞部CV3の周縁部では厚いが、それよりも内側の部分では、突出部BKによって狭められているため、薄くなっている。
また、実施の形態3において、誘導部LG3は、薄板直方体状に形成されている。誘導部LG3は、例えば、石英製である。導入部NZ3と誘導部LG3とは、一体に形成されている。誘導部LG3は、誘導部LG3の厚さ方向(第1方向)に貫通するスリットSL3と、スリットSL3の幅方向においてスリットSL3を挟んで対向する一対の誘導面(側面)SWとを有している。スリットSL3は、誘導部LG3の長さ方向に沿って形成されている。なお、誘導部LG3の長さ方向は、重力方向に一致している。一対の誘導面SW間の距離(スリットSL3の幅寸法)は、導入部NZ3の空洞部CV3の他端部(底辺部、被照射物MLの出口)の幅と同じ寸法である。なお、実施の形態1と同様に、誘導部LG3の長さ方向は、重力方向に一致している。すなわち、スリットSL3内を流れる被照射物MLの流れ方向は、重力方向である。
また、図14に示すように、照射光の照射部IPは、スリットSL3内の一部である。照射部IPにおいて、照射光のスポットの、スリットSL3内を流れる被照射物ML(図示せず)の流れ方向に沿った長さは、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL3の幅寸法)よりも大きい。より具体的には、照射光のスポットは楕円形状であり、照射光のスポットの長軸方向は、スリットSL3内を流れる被照射物ML(図示せず)の流れ方向と一致し、照射光のスポットの短軸方向は、スリットSL3の幅方向と一致している。
導入部NZ3の長さ(被照射物MLの流れ方向の長さ)は、例えば20mmである。空洞部CV3の厚さは、例えば2mmである。突出部BKの厚さは、例えば1mmである。誘導部LG3の厚さは、例えば2mmである。また、誘導部LG2の長さは、例えば30mmである。
<光照射反応装置を用いた光照射反応工程について>
以下、図14〜図17に示す実施の形態3の光照射反応装置LR3を用いて光照射反応を行う方法を説明する。
図示しないが、液状の被照射物MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ3の接続孔部CHに至る。その後、被照射物MLは、導入部NZ3に設けられた空洞部CV3を通り、誘導部LG3へ供給される(供給工程)。この際、被照射物MLは、空洞部CV3内の突出部BKによって狭められた空間を通過して流速が制御される。また、それと同時に、空洞部CV3を通る被照射物MLは、その幅が徐々に広げられながら、空洞部CV3によって、板状の液膜の状態にされる。その後、被照射物MLは、誘導部LG3において液膜の状態が維持されながら、スリットSL3の長さ方向一端部から長さ方向他端部に向かって流れる(誘導工程)。ここで、光源部LSから導入された照射光が照射部IPに照射される。前述したように、照射部IPは、スリットSL3内の一部であり、照射光は、スリットSL3内を流れる被照射物MLに照射される(照射工程)。この際、照射部IPにおいて、被照射物MLまたは被照射物MLに含まれる反応物が照射光のエネルギーを吸収し、反応が進行する。その後、この反応によって生成した生成物を含む被照射物PLは、スリットSL3の長さ方向他端部から回収部PCへと流れ落ち、回収部PCによって回収される(回収工程)。実施の形態3では、実施の形態1と同様に、以上の工程によって、被照射物MLの供給、供給された被照射物MLへの照射光の照射および生成物を含む被照射物PLの回収を連続で行うことができる。
<実施の形態の主要な特徴と効果>
図14〜図17に示すように、実施の形態3の主要な特徴のうちの一つは、導入部NZ3には、平面三角形状の空洞部CV3が形成され、空洞部CV3の一端部(頂部、被照射物MLの入口)は導入部NZ3の幅方向中央にあり、他端部(底辺部、被照射物MLの出口)に向かって徐々に幅が拡がるテーパー状に形成されていることである。そして、導入部NZ3には、平面三角形板状の突出部BKが、導入部NZ3の厚さ方向に沿って空洞部CV3内に突出して形成され、空洞部CV3に存在する空間(被照射物MLが流れる部分)の厚さは、空洞部CV3の周縁部では厚いが、それよりも内側の部分では、突出部BKによって狭められているため、薄くなっている。
実施の形態3では、このような構成を採用したことにより、反応効率の高い光照射反応装置を提供することができる。以下、その理由について具体的に説明する。
前述したように、照射光のスポット径(短軸)と一対の誘導面SW間の距離(スリットSL3の幅寸法)とは、ほぼ同じ大きさであることが好ましい。そのため、実施の形態2で説明したのと同様に、被照射物MLに対する照射光の照射面積を大きくして、目的物の生成効率を高めるためには、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL3の幅寸法)を実施の形態1よりも大きくして、スリットSL3を流れる液膜の幅を大きくすることが望まれる。
そこで、実施の形態3では、導入部NZ3には、平面三角形状の空洞部CV3が形成され、空洞部CV3の一端部(頂部、被照射物MLの入口)は導入部NZ3の幅方向中央にあり、他端部(底辺部、被照射物MLの出口)に向かって徐々に幅が拡がるテーパー状に形成されている。そして、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL3の幅寸法)は、導入部NZ3の空洞部CV3の他端部(底辺部、被照射物MLの出口)の幅と同じ寸法である。こうすることで、空洞部CV3を流れる被照射物MLの幅を広げることができる。ただし、空洞部CV3を流れる被照射物MLの流速は、導入部NZ3の幅方向中央が最も早く、それよりも外側にいくに従って遅くなっていく。この状態のまま、被照射物MLが導入部NZ3から誘導部LG3に供給されると、誘導部LG3のスリットSL3において、液膜状の流れを安定して作り出すことが難しくなる。
そのため、実施の形態3では、導入部NZ3の厚さ方向に沿って空洞部CV3内に突出する突出部BKを設け、空洞部CV3に存在する空間の厚さは、空洞部CV3の周縁部では厚く、それよりも内側の部分では薄くしている。こうすることで、空洞部CV3を流れる被照射物MLの流速を、導入部NZ3の幅方向に沿って均一化することができる。その結果、この導入部NZ3から誘導部LG3に被照射物MLを供給することで、スリットSL3において、液膜を安定して作り出すことができる。こうすることで、実施の形態3では、実施の形態1よりも幅広の液膜を形成することができ、被照射物MLに対する照射光の照射面積を大きくして、目的物の生成効率を高めることができる。
なお、実施の形態3の導入部NZ3の構造に比べて、実施の形態1の導入部NZ1の構造は簡便である。そのため、導入部自体の製造コストやメンテナンスの容易さの観点からは、実施の形態1の光照射反応装置の方が実施の形態3の光照射反応装置に比べて有利である。
また、図示しないが、実施の形態1と同様に、誘導部LG3の誘導面SWが、誘導部LG3の厚さ方向中央に位置する第1領域R1と、第1領域R1よりもそれぞれ誘導部LG3の厚さ方向外方に位置する一対の第2領域R2とにより構成されており、第1領域R1の被照射物MLに対する接触角は、第2領域R2の被照射物MLに対する接触角よりも小さくなるように構成してもよい。この場合には、被照射物MLは誘導面SWの第1領域R1に接触するように流れるのに対して、被照射物MLは誘導面SWの第2領域R2には接触しないように流れる。その結果、被照射物MLは誘導面SWの第1領域R1の幅寸法とほぼ同じ厚さを有する液膜の状態で、スリットSL3内を流れる。
<<実施例>>
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1および比較例1)
以下、実施例1および比較例1について説明する。実施例1は、前記実施の形態1の光照射反応装置によって生成された球状ナノ粒子に、比較例1は、検討例1の光照射反応装置によって生成された球状ナノ粒子にそれぞれ対応する。
図18は、実施例1および比較例1の球状ナノ粒子の走査電子顕微鏡像である。図18の領域aは、実施例1および比較例1の反応前の原料粒子の走査電子顕微鏡像、図18の領域bは、実施例1の反応後の球状ナノ粒子の走査電子顕微鏡像、図18の領域cは、比較例1の反応後の球状ナノ粒子の走査電子顕微鏡像である。
<球状ナノ粒子の製造方法>
まず、実施例1の球状ナノ粒子の製造方法について、詳細に説明する。前述したように、実施例1の球状ナノ粒子は、図1に示す前記実施の形態1の光照射反応装置を用いて生成する。この場合、図1に示す被照射物MLは、原料粒子を分散させた液体(以下、液体MLと称する)である。実施例1の原料粒子は、ホウ素(B)粒子である。また、原料粒子を分散させる溶媒は、超純水(電気抵抗率18MΩcm)である。被照射物MLにおける原料粒子の濃度は、200ppmである。ここで、液体MLは、超音波処理して、原料粒子を液体ML中に分散させた状態で貯留部STに貯留する。
次に、図1に示すように、液体MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ1の接続孔部CHに至る。その後、液体MLは、導入部NZ1に設けられた空洞部CV1を通り、誘導部LG1へと供給される(供給工程)。誘導部LG1に供給された液体MLは、スリットSL1の長さ方向一端部から長さ方向他端部に向かって流れる(誘導工程)。ここで、光源部LSから導入された照射光が照射部IPに照射される。前述したように、照射部IPは、スリットSL1内の一部であり、照射光は、スリットSL1内を流れる液体MLに照射される(照射工程)。この際、照射部IPにおいて、液体MLに含まれる原料粒子が照射光(レーザー光)を吸収し、レーザー光が照射している時間(例えば、ナノ秒オーダー)に、粒子温度は数千度を超える。これにより、原料粒子が溶融し、球状になる。その後、溶融した原料粒子は、周囲の液体によって急冷される。これにより、球状ナノ粒子が生成される。生成された球状ナノ粒子を含む液体(被照射物)PLは、誘導部LG1から回収部PCへと回収される(回収工程)。
次に、比較例1の球状ナノ粒子の製造方法について、詳細に説明する。前述したように、比較例1の球状ナノ粒子は、図8に示す検討例1の光照射反応装置を用いて生成する。図8に示す被照射物MLは、原料粒子を分散させた液体MLであり、液体MLの構成、すなわち、原料粒子および分散溶媒は、前述の実施例1と同様である。
図8に示すように、液体MLは、貯留部STからポンプPUにより吸い上げられ、管部TUを介して導入部NZ101の接続孔部CHに至る。その後、被照射物MLは、導入部NZ101の基端部BEから先端部TPに向かって流れる。ここで、導入部NZ101の先端部TPにある吐出口EXには、液滴MLdが生成される(供給工程)。導入部NZ101の先端部TPの吐出口EXに生成された液滴MLdは、液体MLが吐出されるに従って大きくなる。
その後、照射部IP、すなわち吐出口EXに保持された液滴MLdに照射光が照射される(照射工程)。この際、吐出口EXに保持された液滴MLdに含まれる反応物が照射光のエネルギーを吸収し、反応が進行する。これにより、吐出口EXに保持された液滴MLdに含まれる原料粒子がレーザー光により一旦溶融する。その後、溶融した原料粒子は、周囲の液体によって急冷される。これにより、球状ナノ粒子が生成され、吐出口EXには、球状ナノ粒子を含む液滴PLdが保持された状態になる。そして、液滴PLd自体の重力が、液滴PLdの表面張力による鉛直上向きの力を上回ったときに、液滴PLdが導入部NZ101の吐出口EXから落下する。その後、吐出口EXから吐出された液滴PLdは、導入部NZ101の下方に配置された回収部PCに直接滴り落ちる(回収工程)。
以下、実施条件の詳細について説明する。
まず、液体MLに含まれる原料粒子について説明する。液体MLの濃度は、200ppm程度である。光源部LSは、フラッシュランプ励起のNd:YAGレーザーの第二高調波(532nm)を用いた(繰り返し周波数:30Hz、エネルギー密度:300mJcm-2pulse-1)。
実施例1において、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅)は1mm、誘導部LG1の厚さは1mm、誘導部LG1の長さは30mmである。また、スリットSL1を流れる液体MLの流量は、0.29mL/sである。照射部IPは、スリットSL1内を流れる液体ML全体である。すなわち、レーザー光のスポットを幅1mm、長さ30mmの長方形状として、スリットSL1内を流れる液体ML全体にレーザー光が照射されるようにしている。
また、比較例1において、導入部NZ101の吐出口EXの口径(内径)は1.4mmである。液体MLの流量(吐出量)は、実施例1と同じ0.29mL/sとした。この場合、導入部NZ101の吐出口EXに生成される液滴MLdの長さ(長軸の長さ、液滴MLdを回転楕円体としたときの極直径)が5.0mm程度、幅(短軸の長さ、液滴MLdを回転楕円体としたときの赤道直径)が3.4mm程度となり、液滴MLdは平均0.33秒の間隔で生成と落下とを繰り返した。照射部IPは、吐出口EXに保持された液滴MLd全体である。すなわち、レーザー光のスポットを直径8mmの円形状として、吐出口EXに保持された液滴MLd全体にレーザー光が照射されるようにしている。
<生成された粒子の評価結果>
以下、実施例1および比較例1の評価結果について説明する。球状ナノ粒子の評価は、SEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)により測定した反射電子像により行った。より詳細には、本実施の形態において、FE−SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope:電界放出型走査電子顕微鏡「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧15.0kVおよび測定倍率25000倍の条件で、観察用試料の反射電子像を測定した。ここで、観察用試料は、液体MLまたは液体PLをシリコンからなる板状部材に滴下し乾燥させたものを用いた。
図18の領域aは、原料粒子のSEM像、図18の領域bは、実施例1で生成された粒子のSEM像、図18の領域cは、比較例1で生成された粒子のSEM像である。
まず、液体MLに含まれる原料粒子について説明する。図18の領域aに示すように、原料粒子であるホウ素粒子は、様々な形状を有する粒状であって、原料粒子同士が凝集している。原料粒子の大きさ(辺寸法)は50〜400nmである。
次に、実施例1の粒子の評価結果について説明する。図18の領域bに示すように、実施例1の球状化率(照射後の全粒子に対する生成された球状ナノ粒子の面積)が90%以上である。また、実施例1の粒子の大きさ(粒径)は100〜400nmである。
続いて、比較例1の粒子は、ほとんどが原料粒子と同じような様々な形状を有する粒状であり、粒子同士が凝集している。比較例1の球状化率は30%未満である。粒子の大きさは50〜400nmである。
以上より、実施例1では原料粒子のほとんどが反応し、球状粒子に変化しているのに対して、比較例1では原料粒子のほとんどが未反応のままである。この理由として、比較例1の液滴MLdは、回転楕円体状であるため、レンズ効果により、液滴MLdの内部に照射光が進入しない空間が生じる。その結果、比較例1では未反応の原料粒子が多く残存したものと考えられる。一方、実施例1のスリットSL1内を流れる液体MLは、板状の液膜の状態である。そのため、レンズ効果はほとんど起こらなかったものと考えられる。
また、本発明者の検討により、200ppmのホウ素粒子を含む液体の場合、ホウ素粒子による消光により、照射光は、光路長が1mm長くなるごとに89%ずつ減衰することがわかった。比較例1では、液滴MLdの幅方向に貫通するように照射光を照射している。比較例1の液滴MLdの幅(短軸の長さ、液滴MLdを回転楕円体としたときの赤道直径)は3.4mm程度であるため、液滴MLdの光路長は3.4mm程度である。一方、実施例1では、液体MLを誘導部LG1の厚さ方向に貫通するように、照射光を照射している。実施例1の誘導部LG1の厚さは1mmであるため、液体MLの光路長は1mmである。そのため、比較例1は実施例1に比べて、反応が起こるのに十分な強度の照射光が届く原料粒子の割合が少ないと考えられる。
なお、本発明者の検討では、実施例1において、スリットSL1内の液体MLの流速は0.25〜0.70m/sであり、液体MLに含まれる原料粒子には1.8〜3.1回のレーザーパルスが照射されていると考えられる。一方、比較例1において、液滴MLdは吐出口EXに最大0.33秒間保持されることから、液滴MLdに含まれる原料粒子には最大で10回のレーザーパルスが照射されていると考えられる。従って、実施例1は、原料粒子に対するレーザーパルスの照射回数が比較例1よりも少ないにもかかわらず効率よく反応していることがわかる。
以上より、液状の被照射物に照射光を照射する場合には、レーザーパルスの照射回数よりも照射部における被照射物の形状の方が大きく影響することが実証された。すなわち、実施例1と比較例1との比較により、実施の形態1の光照射反応装置においては、被照射物を液滴のような回転楕円体ではなく、板状の液膜の状態にして照射光を照射することにより、被照射物に対するレンズ効果および消光の影響を小さくして、反応効率を高くすることができることがわかった。
なお、比較例1において、生成された粒子の球状化率を高めるために、光照射反応装置LR101の回収部PCに回収された液体PLを貯留部STに貯留し、照射光を照射する工程を繰り返すという方法が考えられる。特に、球状ナノ粒子は、一定のサイズを超えると照射光が照射されても溶融しないという性質があるため、このような方法は、光照射反応装置において球状ナノ粒子を生成する場合には効果的である。本発明者は、比較例1において、前述の照射工程を複数回繰り返すことによって、生成した粒子の球状化率を高めることができることを確認している。
一方、前述したように、実施例1では、スリットSL1内を流れる液体MLに照射光を照射する工程を1回行うだけで、高い球状化率を達成している。すなわち、実施例1は、比較例1よりも工程数が少なく、短時間で高い球状化率を有する球状ナノ粒子を生成できることがわかった。
(その他の実施例)
以下では、前記実施例1および前記比較例1以外の実施例について説明する。
<実施例2および比較例2>
以下、実施例2および比較例2について説明する。まず、比較例2について説明する。
前記比較例1では、検討例1の光照射反応装置を用いて、導入部NZ101の先端部TPの吐出口EXに生成された液滴MLdに照射光を照射したが、比較例2では、導入部NZ101から自由空間に円柱状の被照射物ML(液柱)が吐出し、この液柱に照射光を照射した。
比較例2において、導入部NZ101の吐出口EXの口径(内径)は1.4mmである。液体MLの流量(吐出量)は、0.73mL/sとした。この場合、導入部NZ101の吐出口EXから、長さ33mmの液柱が形成された。照射部IPは、液柱全体である。すなわち、レーザー光のスポットを幅2.5mm、長さ30mmの長方形状として、液柱状の液体ML全体にレーザー光が照射されるようにしている。
また、実施例2では、前記実施例1と同様に実施の形態1の光照射反応装置を用いているが、前記実施例1から液体MLの流量とスリットの寸法とを変化させた。すなわち、実施例2において、一対の誘導面SW間の距離(スリットSL1の幅)は1.5mm、誘導部LG1の厚さは2mm、誘導部LG1の長さは30mmである。また、スリットSL1を流れる液体MLの流量は、比較例2と同じ0.73mL/sである。照射部IPは、スリットSL1内を流れる液体ML全体である。すなわち、レーザー光のスポットを幅2.5mm、長さ30mmの長方形状として、スリットSL1内を流れる液体ML全体にレーザー光が照射されるようにしている。
実施例2および比較例2の被照射物MLは、前記実施例1および前記比較例1と同様に、200ppmのホウ素粒子を超純水に分散させた液体である。
以下、実施例2および比較例2の評価結果について説明する。球状ナノ粒子の評価は、前記実施例1および比較例1と同様の方法で行った。図19の領域dは、実施例2で生成された粒子のSEM像、図19の領域eは、比較例2で生成された粒子のSEM像である。
図19の領域dに示すように、実施例2で生成された粒子は、前記実施例1と同様に、粒子の大きさ(粒径)は100〜400nmであり、球状化率は85%程度であった。一方、図19の領域eに示すように、比較例2で生成された粒子は、前記比較例1と同様に、ほとんどが原料粒子と同じような不定形に近い立方体形状であり、粒子同士が凝集していた。粒子の大きさは50〜400nmである。比較例2の球状化率は50%程度であった。
以上より、実施例2では原料粒子のほとんどが反応し、球状粒子に変化しているのに対して、比較例2では原料粒子のほとんどが未反応のままである。この理由として、比較例2の液柱は、円柱状であるため、レンズ効果により、液柱の内部に照射光が進入しない空間が生じる。その結果、比較例2では未反応の原料粒子が多く残存したものと考えられる。一方、実施例2のスリットSL1内を流れる液体MLは、板状の液膜の状態である。そのため、レンズ効果はほとんど起こらなかったものと考えられる。
すなわち、実施例2と比較例2との比較により、実施の形態1の光照射反応装置においては、被照射物を液柱のような円柱状ではなく、板状の液膜の状態にして照射光を照射することにより、被照射物に対するレンズ効果および消光の影響を小さくして、反応効率を高くすることができることがわかった。
<原料粒子の濃度について>
検討例1の光照射反応装置LR101と実施の形態1の光照射反応装置LR1とのそれぞれにおいて、反応物の濃度について考察した。
検討例1の光照射反応装置LR101を用いて、原料粒子である酸化鉄(Fe3O4)粒子を超純水に分散させた液体MLから球状ナノ粒子を生成する場合、原料粒子の濃度が10ppmを越えると、生成される球状ナノ粒子に対する未反応の原料粒子の割合が大きくなり、球状化率が50%未満となることがわかった。この原因として、前述の消光の影響が大きいと考えられる。そのため、検討例1では、生成される球状ナノ粒子に対する未反応の原料粒子の割合を小さくするために、原料粒子の濃度を10ppm以下と低くせざるを得ず、反応効率が低下してしまう。
一方、実施の形態1の光照射反応装置を用いて、被照射物MLを酸化鉄(Fe3O4)の原料粒子を分散させた水として、球状ナノ粒子を生成する場合、原料粒子の濃度が100〜1000ppmの範囲で、生成される球状ナノ粒子に対する未反応の原料粒子の割合が小さく、球状化率が80%以上となり、原料粒子の濃度が100〜500ppmの範囲で、球状化率が90%以上となることがわかった。より具体的には、原料粒子の濃度が100ppmのときに球状化率は97%、原料粒子の濃度が500ppmのときに球状化率は90%、原料粒子の濃度が1000ppmのときに球状化率は84%である。
以上より、実施の形態1では、照射光の進入方向に存在する被照射物を薄くしつつも液膜の面積を大きくすることができるため、検討例1に比べて、消光の影響を小さくしつつ、照射光が照射される被照射物の体積を多くすることができる。また、実施の形態1では、消光の影響を小さくできるため、反応物の濃度を大きくすることもできる。すなわち、実施の形態1では、反応物の濃度を大きくすることと、照射光が照射される被照射物の体積を多くすることとを両立することができ、反応効率を高めることができることが実証された。
<被照射物の流速について>
検討例1の光照射反応装置LR101と実施の形態1の光照射反応装置LR1とのそれぞれにおいて、照射部における被照射物の流速について考察した。検討例1の実施条件は前記比較例2に、実施の形態1の実施条件は前記実施例2に、それぞれ相当する。
まず、図8に示すように、検討例1の光照射反応装置において、被照射物MLを導入部NZ101の吐出口EX(口径(内径):1.4mm)から連続して吐出する場合、吐出口EXから吐出される被照射物MLの流量は0.73mL/sである。この際、被照射物MLの流速は、吐出口EX付近で0.66m/s、吐出口EXから30mm下方で0.89m/sと算出された。
次に、図1に示すように、実施の形態1の光照射反応装置において、誘導部LG1のスリットSL1内を流れる被照射物MLの流速を求めるため、スリットSL1内を流れる粒子を高速度カメラ(Vision Research, Phamtom V2512)で撮影し、一定時間内にスリットSL1内を流れる粒子の流れ方向に沿った移動距離を計測した。誘導部LG1のスリットSL1(幅:1.5mm、厚さ:2mm、長さ:30mm)内に、被照射物MLを流量0.73mL/sで流した場合の、被照射物MLの流速の計測結果を、次に示す。
スリットSL1の長さ方向上端(導入部NZ1と誘導部LG1との接続位置)において、誘導面SWから幅方向0.10mm内側(幅方向端部)の流速は、0.17m/s、誘導面SWから幅方向0.30mm内側の流速は、0.80m/s、誘導面SWから幅方向0.50mm内側の流速は、0.90m/s、誘導面SWから幅方向0.75mm内側(幅方向中央)の流速は、0.80m/sである。
スリットSL1の長さ方向中央(スリットSL1の長さ方向上端から15mm)において、誘導面SWから幅方向0.10mm内側(幅方向端部)の流速は、0.60m/s、誘導面SWから幅方向0.30mm内側の流速は、0.85m/s、誘導面SWから幅方向0.50mm内側の流速は、0.87m/s、誘導面SWから幅方向0.75mm内側(幅方向中央)の流速は、0.90m/sである。
スリットSL1の長さ方向下端付近(スリットSL1の長さ方向上端から25mm)において、誘導面SWから幅方向0.10mm内側(幅方向端部)の流速は、0.20m/s、誘導面SWから幅方向0.30mm内側の流速は、0.50m/s、誘導面SWから幅方向0.50mm内側の流速は、0.60m/s、誘導面SWから幅方向0.75mm内側(幅方向中央)の流速は、0.70m/sである。
以上の結果から、検討例1と実施の形態1とで、被照射物MLを同じ流量で流した場合であっても、スリットSL1の誘導面SW付近では、被照射物MLの流速が小さくなっている。すなわち、被照射物MLがスリットSL1の誘導面SWに接触しながらスリットSL1内を流れるため、被照射物の流速を制御(遅く)しつつ、被照射物MLの安定した流れ(層流)を作り出すことができる。その結果、実施の形態1では、照射光(パルス光)を被照射物の流速に合わせて確実に照射して、反応効率を高めることができるということが実証された。
なお、実施の形態1では、スリットSL1の幅方向端部から幅方向中央に向かうに従って、スリットSL1内を流れる被照射物MLの流速が大きくなり、検討例1の導入部NZ101の吐出口EXから吐出される被照射物MLの流速と同程度になる。それにもかかわらず、実施の形態1では高い球状化率が得られている。これは、スリットSL1内を流れる被照射物MLのうちのほとんどが、誘導面SW付近を流れており、流速が制御された状態で照射光が照射されているということを示している。この結果は、ベルヌーイの定理に矛盾するものではない。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
その他、実施の形態に記載された内容に対応するもの或いはその一部を以下に記載する。
[付記1]
液状の被照射物を供給する供給部と、
前記供給部から供給された前記被照射物を誘導する誘導部と、
前記誘導部内を流れる前記被照射物に照射光が照射される照射部と、
を有し、
前記誘導部は、前記誘導部の第1方向に貫通するスリットと、前記スリットの幅方向において前記スリットを挟んで対向する一対の誘導面とを有し、
前記被照射物は、前記一対の誘導面にそれぞれ接触することにより、板状の液膜の状態で前記スリット内を流れ、
前記照射光が前記被照射物を前記誘導部の前記第1方向に貫通するように、前記照射部において、前記スリット内を流れる前記被照射物に対して、前記照射光を照射し、前記被照射物または前記被照射物に含まれる反応物を、前記照射光のエネルギーによって反応させる、光照射反応装置。
[付記2](実施の形態1)
付記1記載の光照射反応装置において、
前記供給部は、薄板直方体状の空洞部が設けられた第1導入部を有し、
前記空洞部の幅寸法は、前記一対の誘導面間の距離と同じであり、
前記被照射物は、前記空洞部内において流速が制御され、板状の液膜の状態となった後に、前記第1導入部から前記誘導部に供給される、光照射反応装置。
[付記3](実施の形態2)
付記1記載の光照射反応装置において、
前記供給部は、薄板直方体状の第1空洞部および第2空洞部と、前記第1空洞部および前記第2空洞部を接続する液溜部とが設けられた第2導入部を有し、
前記第2空洞部の幅寸法は、前記第1空洞部の幅寸法よりも大きく、
前記液溜部の体積は、前記第1空洞部および前記第2空洞部の体積よりも大きく、
前記液溜部の幅寸法は、前記第2空洞部の幅寸法と同じであり、
前記一対の誘導面間の距離は、前記第2空洞部の幅寸法と同じであり、
前記被照射物は、前記第1空洞部から前記液溜部に至る際に流速が制御され、前記液溜部から前記第2空洞部に至る際に板状の液膜の状態となり、この状態で前記第2導入部から前記誘導部に供給される、光照射反応装置。
[付記4](実施の形態3)
付記1記載の光照射反応装置において、
前記供給部は、薄板かつ平面三角形状の空洞部が設けられた第3導入部を有し、
前記空洞部の幅寸法は、頂部から底辺部に至るに従って大きくなっており、
前記空洞部の前記底辺部の幅寸法は、前記一対の誘導面間の距離と同じであり、
前記被照射物は、前記空洞部内の前記頂部から前記底辺部へと流れ、板状の液膜の状態となった後に、前記第3導入部から前記誘導部に供給される、光照射反応装置。
[付記5](実施の形態3)
付記4記載の光照射反応装置において、
前記第3導入部には、前記第3導入部の厚さ方向に沿って前記空洞部内に突出する突出部が形成され、
前記被照射物は、前記空洞部内において、前記突出部によって流速が制御される、光照射反応装置。