JP2019187218A - 筒型リニアモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】線占積率を向上できる筒型リニアモータの提供を目的としている。【解決手段】上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータ1は、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、界磁6に対して軸方向へ移動可能であって界磁6に対向する複数のティース3bを有する筒状のコア3とコア3におけるティース3b,3b間に設けられたスロット3cに装着される巻線5とを有する電機子2とを備え、ティース3bの側面に内周から外周にかけて溝3fが設けられている。【選択図】図2
Description
本発明は、筒型リニアモータに関する。
筒型リニアモータは、たとえば、筒状のヨークとヨークの外周に軸方向に並べて配置される複数のティースを備えたコアとティース間のスロットに装着されるU相、V相およびW相の巻線を有する電機子と、電機子の外周に設けられた円筒形のベースと軸方向にS極とN極とが交互に並ぶようにベースの内周に取付けられた複数の永久磁石とでなる可動子とを備えるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
このように構成された筒型リニアモータでは、電機子のU相、V相およびW相の巻線へ適宜通電すると、可動子の永久磁石が吸引されて可動子が電機子に対して軸方向へ駆動される。
前記筒型リニアモータの電機子では、環状のスロットがヨークの外周に設けられており、異なるスロットに装着された同相の複数の巻線は一本の電線で構成されている。よって、或るスロットへ電線を巻き回す場合、他のスロットの巻線から引き出された電線をこれから巻き回そうとするスロットの底部へ導入して電線を該当スロットへ巻き回す作業となる。
すると、どうしても他のスロットから引き出されてくる巻線に寄与しない電線がスロット内に収容されるために、スロット内での巻線の線占積率がその分低下してしまう問題がある。
そこで、本発明は、線占積率を向上できる筒型リニアモータの提供を目的としている。
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、界磁に対して軸方向へ移動可能であって界磁に対向する複数の環状のティースを有する筒状のコアとコアにおけるティース間に設けられたスロット3cに装着される巻線とを有する電機子とを備え、ティースの側面に内周から外周にかけて溝が設けられている。
このように構成された筒型リニアモータでは、巻線に寄与しない電線を溝に収容できるので、スロットにおける巻線の線占積率を向上でき、筒型リニアモータの推力を向上できる。
また、溝をティースの径方向に沿って設ける場合、溝の長さが最短となり、ティースの磁路断面積を確保しやすく、溝の設置によってティースの厚みを厚くする必要がない。よって、溝をコアの径方向へ向けて設けた筒型リニアモータによれば、電機子の質量増加を招かないので質量当たりの推力の向上に有利となる。
さらに、溝をティースの径方向に対して巻線の巻回方向に向けて傾斜して設けてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、巻線に寄与しない電線と巻線部分の電線との境の曲げ度合が小さくて済み、巻線の線占積率が向上するとともに、巻線をスロットに巻き回す作業が容易となるだけでなく巻回方向を誤ってしまう加工ミスも減じられる。
また、溝の深さが巻線を構成する電線の直径以上とした筒型リニアモータによれば、電線が溝内に完全に収容されるので、スロットの巻線の収容容積を減じずに済む。
さらに、溝の断面形状を半円形とした筒型リニアモータでは、溝に収容された電線を傷める恐れもなく、溝の加工も容易となる。
本発明の筒型リニアモータによれば、線占積率を向上できる。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、界磁6に対して軸方向へ移動可能であって界磁6に対向する複数の環状のティース3bを有する筒状のコア3とコア3におけるティース3b,3b間に設けられたスロット3cに装着される巻線5とを有する電機子2とを備えて構成されている。
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。電機子2は、筒状のコア3と巻線5とを備えて構成されている。コア3は、本実施の形態では、各部が一体不可分に形成されており、円筒状のヨーク3aと、環状であってヨーク3aの外周に軸方向に間隔を空けて設けられる複数のティース3bと、ティース3b,3b間に設けたスロット3cとを備えて構成されて可動子とされている。なお、本実施の形態では、前述のようにコア3の各部が一体不可分に形成されているが、一体不可分ではなく分割構造で形成されていてもよい。
ヨーク3aは、前述の通り円筒状であって、その横断面積は、コア3の軸線J(図2参照)を中心として円筒でティース3bの内周から外周までのどこを切っても、ティース3bを前記円筒で切断した際にできる断面の面積以上となるように肉厚が確保されている。
本実施の形態では、図1および図2に示すように、ヨーク3aの外周に10個のティース3bが、軸方向に等間隔に並べて設けられており、ティース3b,3b間に巻線5が装着される環状溝でなるスロット3cが形成されている。また、各ティース3bは、環状であって、コア3の両端に配置されたティース3bを除いて、軸方向において内周端の幅より外周端の幅が狭い等脚台形状とされており、軸方向で両側の側面が外周端に対して等角度で傾斜するテーパ面とされている。なお、末端のティース3bを除いた他のティース3bをコア3の軸線Jを含む面で切断した断面において、ティース3bの側面とコア3の軸線Jに直交する直交面Oとでなす内角θは、6度から12度の範囲となる角度に設定されている。なお、末端のティース3bは、図2に示すように、末端のティース3b以外の他のティース3bをコア3の軸線Jに直交する面で半分に切り落とした断面形状とされている。このように、各ティース3bの断面形状は、内周端の幅より外周端の幅が狭い台形状とされている。
また、本実施の形態では、図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、環状溝でなるスロット3cが合計で9個設けられている。スロット3cは、コア3の周方向に沿って複数設けられており、コア3の外周に軸方向に等ピッチで並べて設けられている。また、スロット3cの断面形状は、底に向かうほど先細りとなる台形となっている。そして、このスロット3cには、巻線5が巻き回されて装着されている。巻線5は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。9個のスロット3cには、図1中左側から順に、W相とU相、U相、U相、U相とV相、V相、V相、V相とW相、W相、W相の巻線5が装着されている。
各スロット3cの断面形状が台形となっているので、断面矩形のスロットに比して効率よく巻線5をスロット3cへ装着でき、筒型リニアモータ1の推力も向上できる。
また、ティース3bの外周面には、図1から図3に示すように、それぞれ切欠3eが三つ設けられている。前述したように、各スロット3cには、各相の巻線5が前述の順で装着されている。よって、異なるスロット3cに装着されている同相の巻線5同士を接続する渡り線5aが必要となる。また、後述する巻線5を外部電源に接続するコードCへ接続するために引出線5bも必要である。巻線5、渡り線5aおよび引出線5bは、一本の電線Eで構成されており、スロット3cに巻回されてコイルとなる部分が巻線5となり、異なるスロット3cの巻線5同士を接続する部分が渡り線5aとなり、巻線5をコードCとを接続する部分が引出線5bとなる。なお、本実施の形態では、巻線5、渡り線5aおよび引出線5bは一本の電線Eで構成されているが、各部をはんだ付けで接続して二本以上の電線で構成されていてもよい。渡り線5aは、ティース3bの外周面に設けた切欠3e内に収容されて異なるスロット3cに装着されている同相の巻線5同士を接続する。
そして、本実施の形態では、同じ切欠3eに異なる相の巻線5を接続する渡り線5aが混在して収容されないように、切欠3eを三つ設けている。よって、三相の渡り線5aは、それぞれ別々に切欠3eに収容されるので、異相の巻線5の渡り線5a同士を確実に絶縁できる。なお、切欠3eを各ティース3bに一つのみを設けて各相の巻線5の渡り線5aを一緒に収容する場合には、渡り線5a間に絶縁膜を設置すればよい。
このように、渡り線5aが切欠3e内に収容されるので、渡り線5aの界磁6への干渉が防止される。よって、渡り線5aの断線を防止でき、筒型リニアモータ1の信頼性および実用性が向上する。
そして、本実施の形態では、切欠3eに渡り線5aを収容した後に、接着剤を塗布して渡り線5aの切欠3eからの脱落を防止している。なお、接着剤は、渡り線5aを切欠3e内に定着できるものを使用すればよく、この接着剤を本実施の形態では渡り線5aを切欠3eからの脱落を抑制する止め部として機能する。
なお、ティース3bに切欠3e内へ突出する図示しない爪を設けて、爪を止め部として渡り線5aの切欠3eからの脱落を抑制してもよい。また、切欠3eの形状であるが、ティース3bの外周端における切欠3eの開口の幅を切欠3eの内部の幅よりも狭くして、切欠3eから渡り線5aを出難くしてもよい。このようにすると、渡り線5aの切欠3eからの脱落を抑制できる。
また、ティース3bに設けられる溝を切欠3eとしているので、コア3に複雑な加工を施す必要がなく、筒型リニアモータ1のコストを低減できるとともに、巻線5のコア3への装着作業も容易となる。このように、ティース3bに設ける切欠は、ティース3bの界磁6に対向する対向面に設けた溝とされているが、ティース3bを貫く孔とされてよく、この場合には、渡り線5aを挿通させると渡り線5aが切欠から脱落するのを阻止できる。
U相、V相およびW相の各巻線5は、渡り線5aによって直列に接続されて、一方の末端の巻線5から延びる渡り線5aがコア3の図1中右端側で結線されている。よって、U相、V相およびW相の各巻線5は、Y結線されており前記渡り線5aの結線箇所が中立点とされている。また、各相の巻線5の他方の末端の巻線5からは引出線5bがコア3外へ延びている。
さらに、本実施の形態では、図2に示すように、渡り線5aの存在によってスロット3cへの巻線5の線占積率を損なわないように各ティース3bの側面両面に切欠3eからティース3bの径方向へ向けて設けられてスロット3cの底まで延びる溝3fを設けている。このように溝3fを設けると、電線Eをスロット3cへ巻き回して巻線5を形作る工程の際に電線Eが溝3f内に収容されるので、スロット3cの巻線5が装着される容積を巻線5に寄与しない電線Eで減じてしまうことがない。よって、スロット3cの巻線5の収容容積が確保されるので、巻線5に寄与しない電線Eの影響を排除して線占積率を向上できる。このように、各スロット3cの巻線5の線占積率を向上できるので、筒型リニアモータ1の推力を向上できる。
なお、溝3fの深さは、渡り線5aの電線Eの径以上に設定されると電線Eが溝3f内に完全に収容されるので、スロット3cの巻線5の収容容積を減じずに済む。また、溝3fは、図3に示すように、切欠3eからスロット3cの底へ向けてコア3の径方向へ向けて設置してもよいが、図4に示すようにコア3の径方向に対して当該スロット3cの巻線5の巻回方向へ向けて傾斜するように設けてもよい。
溝3fがコア3の径方向に対して巻線5の巻線方向に傾斜して設けられると、溝3fがコア3の径方向に向けて設けられる場合と比較して、巻線5に寄与しない電線Eと巻線5部分の電線Eとの境の曲げ度合が小さくて済み、巻線5の線占積率がより効果的に向上する。また、溝3fがコア3の径方向に対して巻線5の巻線方向に傾斜して設けられると、巻線5をスロット3cに巻き回す作業が容易となるだけでなく巻線5の巻回方向を誤認しにくくなるので、巻回方向を誤ってしまう組立ミスも減じられる。
なお、溝3fをコア3の径方向へ向けて設ける場合、溝3fの長さが最短となるので、ティース3bの磁路断面積を確保しやすいので、溝3fの設置によってティース3bの厚みを厚くする必要がない。よって、溝3fをコア3の径方向へ向けて設ける場合、電機子2の質量増加を招かないので筒型リニアモータ1の質量当たりの推力向上の点で有利となる。
また、溝3fの断面形状は、図4に示すように、半円形とされているので、収容された電線Eを傷める恐れもなく、溝3fの加工も容易となる。なお、このことは、溝3fの断面形状を半円形以外の形状とするのを妨げない。
そして、このように構成された電機子2は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の外周に装着されている。具体的には、電機子2は、その図1中で左端と右端とがロッド11に固定される環状のスライダ12,13によって保持されて、ロッド11に固定されている。
他方、界磁6は、本実施の形態では、円筒状の非磁性体で形成されるアウターチューブ7と、アウターチューブ7内に挿入される円筒状の軟磁性体で形成されるバックヨーク8と、バックヨーク8内に挿入されてバックヨーク8との間に環状隙間を形成する円筒状の非磁性体のインナーチューブ9と、バックヨーク8とインナーチューブ9との間の環状隙間に軸方向に交互に積層されて挿入される環状の主磁極の永久磁石10aと環状の副磁極の永久磁石10bとを備えて構成されている。なお、図1中で主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石10aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石10bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁6の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
また、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1は、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くなっており、本実施の形態では、0.2≦L2/L1≦0.5を満たすように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が設定されている。主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を長くすればコア3との間の主磁極の永久磁石10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3へ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータ1の推力を向上できる。
また、本発明の筒型リニアモータ1では、永久磁石10a,10bの外周にバックヨーク8を設けている。バックヨーク8を設けない場合、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が短くなると主磁極の永久磁石10aの軸方向中央部分における磁石外部の磁気抵抗が増大し、界磁磁束が小さくなるため、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を長くする際の筒型リニアモータ1の推力向上度合が小さくなる。これに対して、永久磁石10a,10bの外周にバックヨーク8を設けると、磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2の短縮に起因する磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くするとともに永久磁石10a,10bの外周に筒状のバックヨーク8を設けると筒型リニアモータ1の推力を大きく向上させ得る。バックヨーク8の肉厚は、主磁極の永久磁石10aの外部磁気抵抗の増大を抑制に適する肉厚に設定されればよい。
なお、副磁極の永久磁石10bは、主磁極の永久磁石10aより高い保磁力を有する永久磁石とされている。永久磁石における残留磁束密度と保磁力は、互いに密接に関係しており、一般的に残留磁束密度を高めると保磁力は低くなり、保磁力を高めると残留磁束密度が低くなるという、互いに背反する関係にある。ハルバッハ配列では、副磁極の永久磁石10bには減磁方向に大きな磁界が印加されるため、副磁極の永久磁石10bの保磁力を高くして減磁を抑制し、大きな磁界をコア3に作用させ得るようにしている。対して、コア3に対して作用する磁界の強さは、主磁極の永久磁石10aの磁力線数に左右される。そのため、主磁極の永久磁石10aに高い残留磁束密度の永久磁石を使用して大きな磁界をコア3に作用させるようにしている。本実施の形態では、副磁極の永久磁石10bを主磁極の永久磁石10aよりも保磁力を高くするのに際して、副磁極の永久磁石10bの材料を主磁極の永久磁石10aの材料よりも保磁力が高い材料としている。よって、材料の選定によって、主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bの組合せを簡単に実現できる。なお、本実施の形態では、主磁極の永久磁石10aは、ネオジム、鉄、ボロンを主成分とする残留磁束密度が高い材料で構成され、副磁極の永久磁石10bは、前記材料にジスプロシウムやテリビウム等の重希土類元素の添加量を増やした減磁しにくい磁石で構成されている。
また、界磁6の内周側には、電機子2が挿入されており、界磁6は、コア3に磁界を作用させている。なお、界磁6は、コア3の可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、コア3の可動範囲に応じて永久磁石10a,10bの設置範囲を決定すればよい。したがって、アウターチューブ7とインナーチューブ9との環状隙間のうち、コア3に対向し得ない範囲には、永久磁石10a,10bを設置しなくともよい。なお、バックヨーク8の長さは、永久磁石10a,10bを積層した長さと等しい長さとされており、永久磁石10a,10bがコア3のストローク範囲外に磁界を作用させて推力低下を招かないように配慮されている。
また、アウターチューブ7、バックヨーク8およびインナーチューブ9の図1中左端はキャップ14によって閉塞されており、アウターチューブ7、バックヨーク8およびインナーチューブ9の図1中右端は環状のヘッドキャップ15によって閉塞されている。また、インナーチューブ9の内周には、スライダ12,13が摺接しており、スライダ12,13によって電機子2はロッド11とともに界磁6に対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できる。
このように電機子2が界磁6内に挿入されると各コア3が界磁6における8つ磁極に対向するので、筒型リニアモータ1は、8極9スロットのリニアモータとされている。よって、本実施の形態では、界磁6における磁極ピッチを9で割り切れる値とすれば、コア3における巻線ピッチの値において小数点以下が循環小数とならないので設計が容易となる。巻線ピッチが循環小数を持つ値とならないためには、コア3が対向する磁極数とコア3のスロット数によって決定され、磁極ピッチが磁極数とスロット数の最大公約数でスロット数を割った値の倍数となっていればよい。
戻って、インナーチューブ9は、コア3の外周と各永久磁石10a,10bの内周との間のギャップを形成するとともに、スライダ12,13と協働してコア3の軸方向移動を案内する役割を果たしている。なお、インナーチューブ9は、非磁性体で形成されればよいが、合成樹脂で形成されると筒型リニアモータ1の推力密度向上効果が高くなる。インナーチューブ9を非磁性体の金属で製造すると、電機子2が軸方向へ移動する際にインナーチューブ9の内部に渦電流が生じて、電機子2の移動を妨げる力が発生してしまう。これに対して、インナーチューブ9を合成樹脂とすれば渦電流が生じないので筒型リニアモータ1の推力をより効果的に向上できるとともに、筒型リニアモータ1の質量を低減できる。なお、インナーチューブ9を合成樹脂とする場合、フッ素樹脂で製造すればスライダ12,13との間の摩擦および摩耗を低減できる。また、インナーチューブ9を他の合成樹脂で形成してもよく、また、摩擦および摩耗を低減するべく他の合成樹脂で形成されたインナーチューブ9の内周をフッ素樹脂でコーティングしてもよい。
なお、アウターチューブ7、バックヨーク8およびインナーチューブ9の軸方向長さは、コア3の軸方向長さよりも長く、コア3は、界磁6内の軸方向長さの範囲で図1中左右へストロークできる。
また、キャップ14には、巻線5に接続されるコードCを外部の図示しない電源に接続するカプラ14aを備えており、外部電源から巻線5へ通電できるようになっている。具体的には、コードCは、三相の巻線5にそれぞれ通電可能なように、三つのコードを収容しており、各コードの終端がそれぞれ対応する巻線5における引出線5bにコネクタ20を介して接続されている。コネクタ20はロッド11に装着されており、電機子2が駆動しても巻線5の引出線5bには負荷がかからないように配慮されている。
そして、たとえば、電機子2の界磁6に対する位置をセンサでセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線5の電流量を制御すれば、筒型リニアモータ1における推力と電機子2の移動方向とを制御できる。なお、電機子2の界磁6に対する位置をセンシングするセンサは、たとえば、界磁6に取付けられて電機子2との相対変位をセンシングする変位センサや線形可変差動変圧器、さらには、ホールセンサ等を利用すればよい。
なお、前述の制御方法は、一例でありこれに限られない。このように、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、電機子2が可動子であり、固定子は界磁6を備えている。また、電機子2と界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線5への通電、あるいは、巻線5に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
以上のように、本発明の筒型リニアモータ1は、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、界磁6に対して軸方向へ移動可能であって界磁6に対向する複数のティース3bを有する筒状のコア3とコア3におけるティース3b,3b間に設けられたスロット3cに装着される巻線5とを有する電機子2とを備え、ティース3bの側面に内周から外周にかけて溝3fが設けられている。
このように構成された筒型リニアモータ1では、巻線5に寄与しない電線Eを溝3fに収容できるので、スロット3cにおける巻線5の線占積率を向上でき、筒型リニアモータ1の推力を向上できる。
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1にあっては、図1に示すように、界磁6および電機子2がともに筒状であって、界磁6の内周に電機子2が軸方向に移動可能に挿入されている。このように電機子2が界磁6に対してストロークするようにすると、ストローク全長に亘って電機子2を設ける必要がなく筒型リニアモータ1を軽量化できる。これに対して、逆に、電機子におけるコアの内周にスロットを設けて界磁を電機子内に移動自在に挿入して電機子を固定子として界磁を可動子とするようにしてもよい。この場合、電機子におけるコアの内周にティースとスロットが設けられるので、ティースの内周から外周へかけて電線Eを収容する溝を設ければよい。
そして、本実施の形態の筒型リニアモータ1にあっては、溝3fがティース3bの径方向に沿って設けられているので、溝3fの長さが最短となり、ティース3bの磁路断面積を確保しやすく、溝3fの設置によってティース3bの厚みを厚くする必要がない。よって、溝3fをコア3の径方向へ向けて設ける場合、電機子2の質量増加を招かないので筒型リニアモータ1の質量当たりの推力向上の点で有利となる。
なお、溝3fをティース3bの径方向に対して巻線5の巻回方向に向けて傾斜して設けてもよい。この場合には、巻線5に寄与しない電線Eと巻線5部分の電線Eとの境の曲げ度合が小さくて済み、巻線5の線占積率が向上する。また、溝3fがコア3の径方向に対して巻線5の巻線方向に傾斜して設けられると、巻線5をスロット3cに巻き回す作業が容易となるだけでなく巻線5の巻回方向を誤認しにくくなるので、巻回方向を誤ってしまう組立ミスも減じられる。
また、溝3fの深さが巻線5を構成する電線Eの直径以上とされる場合、電線Eが溝3f内に完全に収容されるので、スロット3cの巻線5の収容容積を減じずに済む。
さらに、溝3fの断面形状を半円形とした筒型リニアモータ1では、溝3fに収容された電線Eを傷める恐れもなく、溝3fの加工も容易となる。
なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、界磁6がハルバッハ配列にて軸方向に交互に並べられる径方向に着磁された主磁極の永久磁石10aと軸方向に着磁された副磁極の永久磁石10bと、永久磁石10a,10bの外周に配置される筒状のバックヨーク8とを有し、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1は副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長い。
このように筒型リニアモータ1が構成されると、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を長くして、主磁極の永久磁石10aとコア3との間の磁気抵抗を小さくできるとともに、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2を短くしてもバックヨーク8を設けているので磁気抵抗の増大を抑制でき、コア3へ作用させる磁界を大きくできる。
よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、副磁極の永久磁石10bの減磁を抑制しつつも主磁極の永久磁石10aとコア3との間の磁気抵抗を小さくでき効果的に推力を向上できる。
なお、副磁極の永久磁石10bが主磁極の永久磁石10aよりも高い保磁力を有していれば、大きな磁界が印加される副磁極の永久磁石10bの減磁を抑制しつつも主磁極の永久磁石10aに高い残留磁束密度の永久磁石を利用できる。
また、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くすれば、界磁6はコア3に大きな磁界を作用させ得るが、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2に最適な関係がある。図5に主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1で副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2を割った値と筒型リニアモータ1の推力との関係を示す。発明者らは、鋭意研究した結果、図5に示すように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が0.15≦L2/L1≦0.6を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して95%以上の推力を確保できることを知見した。
よって、筒型リニアモータ1における主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2を0.15≦L2/L1≦0.6を満たすように設定すれば、推力を一層向上できる。さらに、図5から理解できるように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が0.2≦L2/L1≦0.5を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して98%以上の推力を確保できるので筒型リニアモータ1の推力をより効果的に向上できる。
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1にあっては、ティース3bの断面形状は、内周端の幅より外周端の幅が狭い台形状とされているので、ティース3bの断面形状を矩形とする場合に比較して、内周端における磁路断面積が広くなる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1では、大きな磁路断面積を確保しやすくなり、巻線5を通電した際の磁気飽和を抑制でき、より大きな磁場を発生できるからより大きな推力を発生できる。なお、推力の向上のためには、ティース3bの断面形状を台形とするとよいが、断面形状を矩形としてもよいし、他の形状としてもよい。
なお、発明者らの研究によって、ティース3bの断面における側面と直交面Oとでなす内角θが6度から12度の範囲にあると、良好な質量推力密度が得られることが分かった。ここで、質量推力密度とは、前述の構成の筒型リニアモータ1の最大推力を質量で割った数値であり、質量推力密度が良化すれば、筒型リニアモータ1の質量当たりの推力が大きくなる。よって、ティース3bの断面における側面と直交面Oとでなす内角θが6度から12度の範囲にある筒型リニアモータ1では、大きな質量推力密度が得られる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
1・・・筒型リニアモータ、2・・・電機子2・・・コア、3b・・・ティース3b・・・スロット、3e・・・溝(切欠)、3g・・・爪(止め部)、5・・・巻線、5a・・・渡り線、6・・・界磁
Claims (5)
- 軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、
前記界磁に対して軸方向へ移動可能であって、前記界磁に対向する複数の環状のティースを有する筒状のコアと前記コアにおけるティース間に設けられたスロットに装着される巻線とを有する電機子とを備え、
前記ティースの側面に内周から外周にかけて溝が設けられている
ことを特徴とする筒型リニアモータ。 - 前記溝は、前記ティースの径方向に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。 - 前記溝は、前記ティースの径方向に対して前記巻線の巻回方向に向けて傾斜して設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。 - 前記溝の深さは、前記巻線を構成する電線の直径以上である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。 - 前記溝の断面形状は、半円形である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2018-04-17 JP JP2018079350A patent/JP2019187218A/ja active Pending
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