JP2019187216A - 筒型リニアモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】固定子の全長が製品毎にばらつかない筒型リニアモータの提供である。【解決手段】筒型リニアモータ1は、筒状の固定子Sと、筒状のコア3とコア3の外周に設けられたスロット4に装着される巻線5とを有して固定子Sの内周に軸方向移動可能に挿入される電機子2とを備え、固定子Sがアウターチューブ7と、アウターチューブ7内に収容されるとともに軸方向に積層される複数の永久磁石10a,10bを有して軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、アウターチューブ7に取付けられて界磁6の軸方向の一端に当接するストッパ20と、アウターチューブ7に螺着されて界磁6の軸方向の他端に当接するリテーナ21,31と、アウターチューブ7に連結されて固定子Sの全長を決するヘッドキャップ15,32とを備えている。【選択図】図1
Description
本発明は、筒型リニアモータに関する。
筒型リニアモータは、たとえば、可動軸に固定される複数の環状の永久磁石を軸方向に積層してなる界磁と、内周側に界磁が軸方向移動自在に挿入される筒状の電機子とを備えるものがある。
このように構成された筒型リニアモータでは、電機子のU相、V相およびW相の巻線へ適宜通電すると、電機子に永久磁石が吸引されて可動軸が軸方向へ駆動される。
このような筒型リニアモータでは、可動軸は、界磁内に挿入される第一軸と、この軸の両端にそれぞれ螺合される一対の第二軸とを備えており、界磁を第二軸で軸方向の両側から挟み込んで界磁を保持している(たとえば、特許文献1参照)。
このように従来の筒型リニアモータでは、界磁を挟持する必要があるので、界磁の寸法誤差によって、可動軸の全体の長さが製品毎に異なってしまう。界磁は、複数の永久磁石を積層して構成されるが、永久磁石の一つ一つについて寸法誤差がある。そのため、誤差がプラスの永久磁石のみで構成される場合と、誤差がマイナスの永久磁石のみで構成される場合とで、界磁の長さが大きく異なってしまい、可動軸の長さも同様に大きく異なってしまう場合がある。
前述した筒型リニアモータでは、界磁を可動子としているので可動子長が製品毎に変動するが、界磁を固定子としても界磁を挟持する構造を採用するのであれば同様に固定子長が製品毎に変動してしまう。
そこで、本発明は、固定子の全長が製品毎にばらつかない筒型リニアモータの提供を目的としている。
上記の目的を達成するため、筒型リニアモータは、筒状の固定子と、筒状のコアとコアの外周に設けられたスロットに装着される巻線とを有して固定子の内周に軸方向移動可能に挿入される電機子とを備え、固定子がアウターチューブと、アウターチューブ内に収容されるとともに軸方向に積層される複数の永久磁石を有して軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、アウターチューブに取付けられて界磁6の軸方向の一端に当接するストッパと、アウターチューブに螺着されて界磁6の軸方向の他端に当接するリテーナと、アウターチューブに連結されて固定子Sの全長を決するヘッドキャップとを備えている。
このように構成された筒型リニアモータでは、界磁がアウターチューブに取付けられるストッパとリテーナとによって挟持されるが、リテーナの軸方向位置によらず固定子Sの全長を決するのはヘッドキャップの軸方向位置となるので、固定子の全長に界磁の長さが影響するのを排除できる。
また、筒型リニアモータは、固定子が界磁の軸方向長さよりも長く界磁の内周と電機子の外周との間に挿入されて電機子の軸方向の移動を案内するインナーチューブを有し、リテーナがアウターチューブの外周に螺着される筒部と筒部から内周側に突出して界磁に当接するフランジ部とを有し、ヘッドキャップがリテーナの筒部の外周に螺着されてストッパとともにインナーチューブを挟持していてもよい。このように構成された筒型リニアモータでは、電機子の移動を案内するインナーチューブを利用してヘッドキャップの固定子に対する軸方向位置を一定にできるので、ヘッドキャップの固定位置の調節作業が不要となる。また、リテーナおよびヘッドキャップは、アウターチューブへの組付の際に、外周から回動操作が可能であるから組付作業も容易である。
さらに、筒型リニアモータは、固定子が界磁の軸方向長さよりも長く界磁の内周と電機子の外周との間に挿入されて電機子の軸方向の移動を案内するインナーチューブを有し、ヘッドキャップがアウターチューブの内周に設けた螺子部に螺着されてストッパとともにインナーチューブを挟持し、リテーナがアウターチューブの内周の螺子部に螺着されていてもよい。このように構成された筒型リニアモータでは、電機子の移動を案内するインナーチューブを利用してヘッドキャップの固定子に対する軸方向位置を一定にできるので、ヘッドキャップの固定位置の調節作業が不要となる。また、リテーナおよびヘッドキャップは、アウターチューブの内周の螺子部に螺着されるので、固定子の外径を小型化できる。
本発明の筒型リニアモータによれば、製品毎の固定子の全長のばらつきをなくせる。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、筒状の固定子Sと、固定子S内に軸方向移動可能に挿入される電機子2とを備えて構成されている。
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。電機子2は、コア3と巻線5とを備えて構成されている。コア3は、円筒状のヨーク3aと、環状であってヨーク3aの外周に軸方向に間隔を空けて設けられる複数のティース3bとを備えて構成されて可動子とされている。
本実施の形態では、図1に示すように、ヨーク3aの外周に10個のティース3bが、軸方向に等間隔に並べて設けられており、ティース3b,3b間に巻線5が装着される空隙でなるスロット4が形成されている。
また、各ティース3bは、環状であって、コア3の両端に配置されたティース3bを除いて、軸方向において内周端の幅より外周端の幅が狭い等脚台形状とされており、軸方向で両側の側面が外周端に対して等角度で傾斜するテーパ面とされている。なお、発明者らの研究によって、ティース3bの断面における側面と直交面とでなす内角θが6度から12度の範囲にあると、良好な質量推力密度が得られることが分かった。ここで、質量推力密度とは、前述の構成の筒型リニアモータ1の最大推力を質量で割った数値であり、質量推力密度が良化すれば、筒型リニアモータ1の質量当たりの推力が大きくなる。よって、ティース3bの断面における側面における直交面とでなす内角θが6度から12度の範囲にある筒型リニアモータ1では、大きな推力が得られる。
なお、末端のティース3bは、図1に示すように、末端のティース3b以外の他のティース3bをコア3の軸線に直交する面で半分に切り落とした断面形状とされている。このように、各ティース3bの断面形状は、内周端の幅より外周端の幅が狭い台形状とされている。
また、本実施の形態では、図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、空隙でなるスロット4が合計で9個設けられている。そして、このスロット4には、巻線5が巻き回されて装着されている。巻線5は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。9個のスロット4には、図1中左側から順に、W相とU相、U相、U相、U相とV相、V相、V相、V相とW相、W相、W相の巻線5が装着されている。
そして、このように構成された電機子2は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の外周に装着されている。具体的には、電機子2は、その図1中で左端と右端とがロッド11に固定される環状のスライダ12,13によって保持されて、ロッド11に固定されている。
他方、固定子Sは、本実施の形態では、円筒状の非磁性体で形成されるアウターチューブ7と、アウターチューブ7内に挿入されてアウターチューブ7との間に環状隙間を形成する円筒状の非磁性体のインナーチューブ9と、アウターチューブ7とインナーチューブ9との間の環状隙間に収容される界磁6と、アウターチューブ7の左端に設けたストッパ20と、アウターチューブ7に螺着されるリテーナ21と、アウターチューブ7に連結されるヘッドキャップ15とを備えている。
また、界磁6は、軸方向に交互に積層されてアウターチューブ7とインナーチューブ9との間の環状隙間に挿入される複数の環状の主磁極の永久磁石10aと環状の副磁極の永久磁石10bとを備えて構成されている。なお、図1中で主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石10aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石10bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁6の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
また、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1は、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くなっており、本実施の形態では、0.2≦L2/L1≦0.5を満たすように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が設定されている。主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を長くすればコア3との間の主磁極の永久磁石10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3へ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータ1の推力を向上できる。
なお、副磁極の永久磁石10bは、主磁極の永久磁石10aより高い保磁力を有する永久磁石とされている。永久磁石における残留磁束密度と保磁力は、互いに密接に関係しており、一般的に残留磁束密度を高めると保磁力は低くなり、保磁力を高めると残留磁束密度が低くなるという、互いに背反する関係にある。ハルバッハ配列では、副磁極の永久磁石10bには減磁方向に大きな磁界が印加されるため、副磁極の永久磁石10bの保磁力を高くして減磁を抑制し、大きな磁界をコア3に作用させ得るようにしている。対して、コア3に対して作用する磁界の強さは、主磁極の永久磁石10aの磁力線数に左右される。そのため、主磁極の永久磁石10aに高い残留磁束密度の永久磁石を使用して大きな磁界をコア3に作用させるようにしている。本実施の形態では、副磁極の永久磁石10bを主磁極の永久磁石10aよりも保磁力を高くするのに際して、副磁極の永久磁石10bの材料を主磁極の永久磁石10aの材料よりも保磁力が高い材料としている。よって、材料の選定によって、主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bの組合せを簡単に実現できる。なお、本実施の形態では、主磁極の永久磁石10aは、ネオジム、鉄、ボロンを主成分とする残留磁束密度が高い材料で構成され、副磁極の永久磁石10bは、前記材料にジスプロシウムやテリビウム等の重希土類元素の添加量を増やした減磁しにくい磁石で構成されている。
アウターチューブ7は、界磁6より軸方向長さが短く、筒型リニアモータ1の外殻として機能しており、図1中左端に内周側に突出するストッパ20を備えており、左端に取付けられたボトムキャップ14によって左端が閉塞されている。なお、ボトムキャップ14は、図1に示すように、箱状の本体14aと、本体14aの右端から軸方向へ突出してアウターチューブ7の内周側に挿入されるソケット14bを備えており、ソケット14bはインナーチューブ9の左端に嵌合される。よって、ボトムキャップ14をアウターチューブ7の下端に取付けると、ボトムキャップ14の本体14aの肩がアウターチューブ7およびインナーチューブ9の左端に突き当たる。よって、ボトムキャップ14をストッパ20として機能させれば、ストッパ20を省略できる。
そして、アウターチューブ7の内周にアウターチューブ7の図1中で右方から界磁6がインナーチューブ9とともに挿入される。界磁6およびインナーチューブ9は、このように、アウターチューブ7内に挿入されると軸方向の一端である左端がストッパ20に当接して、それ以上アウターチューブ7に対して相対的に左方への移動が規制される。なお、インナーチューブ9の軸方向長さは、界磁6およびアウターチューブ7の軸方向長さより長い。よって、図1に示すように、アウターチューブ7の右端から界磁6の右端が右方へ突出し、さらに界磁6の右端からインナーチューブ9の右端が右方へ突出している。
また、アウターチューブ7の図1中右端の外周には、螺子部7aが設けられており、リテーナ21が螺着されている。リテーナ21は、内周に螺子部7aに螺着される螺子部21bと外周に螺子部21cを備えた筒部21aと、筒部21aの図1中右端内周から内方へ突出する環状のフランジ部21dとを備えている。フランジ部21dの内径は、界磁6の内径よりも大径であって外径よりも小径となっている。そして、アウターチューブ7の外周の螺子部7aにリテーナ21の筒部21aを螺着して、フランジ部21dを界磁6の軸方向の他端である図1中右端に当接させると、界磁6がストッパ20とリテーナ21とで挟持されてアウターチューブ7に固定される。
ヘッドキャップ15は、キャップ状であって頂部にロッド11の挿通を許容する孔15aと、内周にリテーナ21の外周の螺子部21cに螺合する螺子部15bを備えている。孔15aの内径は、ロッド11の外径よりも大径であるがインナーチューブ9の内径よりも小径となっている。また、ヘッドキャップ15は、孔15aの内周にロッド11の外周に摺接するダストシール15cを備えており、ロッド11の外周をシールして固定子S内を封止している。
そして、リテーナ21の筒部21aの外周に設けられた螺子部21cにヘッドキャップ15の螺子部15bを螺着して、ヘッドキャップ15の頂部をインナーチューブ9の図1中右端に当接させると、インナーチューブ9がストッパ20とヘッドキャップ15とで挟持されてアウターチューブ7に固定される。ヘッドキャップ15は、本実施の形態では、リテーナ21を介してアウターチューブ7に連結されている。ヘッドキャップ15は、アウターチューブ7に直接的ではなく他部品を介して間接的に連結されてもよい。
このように、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、ヘッドキャップ15とストッパ20とでインナーチューブ9を挟持しているのでヘッドキャップ15の軸方向位置は、インナーチューブ9の長さによって決まり、ヘッドキャップ15は筒型リニアモータ1の固定子Sの全長を決している。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、固定子Sの全長が界磁6の長さの影響を受けない。つまり、界磁6は、アウターチューブ7に取付けられるストッパ20とリテーナ21とによって挟持されるが、リテーナ21の軸方向位置によらず固定子Sの全長を決するのはヘッドキャップ15の軸方向位置となるので、固定子Sの全長に界磁6の長さが影響するのを排除できる。
なお、本実施の形態では、インナーチューブ9を設けており、インナーチューブ9の長さによってヘッドキャップ15の固定位置が変化するようになっているが、インナーチューブ9を廃止する場合、リテーナ21に対してヘッドキャップ15の相対位置を調節すれば、固定子Sの全長を一定にできる。その場合、リテーナ21の螺子部21cに図示しないナットを螺着してダブルナットの要領でヘッドキャップ15をリテーナ21に弛み止めしつつ固定すればよい。
また、図2に示した一実施の形態の第一変形例の筒型リニアモータ30のように、アウターチューブ7の右端の外周ではなく内周に螺子部7bを設けておき、リテーナ31を外周に螺子部を持つ外周ナットとして、界磁6をリテーナ31とストッパ20とで挟持し、螺子部7bにヘッドキャップ32を螺着するようにしてもよい。ヘッドキャップ32は、キャップ状であって頂部にロッド11の挿通を許容する孔32aを備える他、左端にアウターチューブ7内に挿入されて螺子部7bに螺合する筒状の螺子部32bを備えている。孔32aの内径は、ロッド11の外径よりも大径であるがインナーチューブ9の内径よりも小径となっている。また、ヘッドキャップ32は、孔32aの内周にロッド11の外周に摺接するダストシール32cを備えており、ロッド11の外周をシールして固定子S内を封止している。
なお、界磁6の軸方向長さは、アウターチューブ7の軸方向長さよりも短く、インナーチューブ9の軸方向長さは、界磁6の軸方向長さより長い。図2に示すように、本実施の形態では、界磁6およびインナーチューブ9はアウターチューブ7内に完全に収容されている。
そして、ヘッドキャップ32をリテーナ31が螺着される螺子部7bに螺着して、ヘッドキャップ32の頂部をインナーチューブ9の図2中右端に当接させると、インナーチューブ9がストッパ20とヘッドキャップ32とで挟持されてアウターチューブ7に固定される。このように、第一変形例の筒型リニアモータ30では、ヘッドキャップ32とストッパ20とでインナーチューブ9を挟持しているのでヘッドキャップ32の軸方向位置は、インナーチューブ9の長さによって決まる。
よって、本実施の形態の筒型リニアモータ30では、界磁6がアウターチューブ7に取付けられるストッパ20とリテーナ31とによって挟持されるが、リテーナ31の軸方向位置によらず固定子Sの全長を決するのはヘッドキャップ32の軸方向位置となるので、固定子Sの全長に界磁6の長さが影響するのを排除できる。このように、固定子Sの全長は、インナーチューブ9を基準として決定され、界磁6の長さの影響を受けない。インナーチューブ9にヘッドキャップ32を突き当てられるようになっていればよいので、インナーチューブ9の右端がアウターチューブ7の右端から外方へ突出するようになっていてもよい。
なお、この第一変形例の筒型リニアモータ30においても、インナーチューブ9を設けており、インナーチューブ9の長さによってヘッドキャップ32の固定位置が変化するようになっているが、インナーチューブ9を廃止する場合、ヘッドキャップ32の外周であって螺子部32bより図2中左方側に段部を設けてアウターチューブ7の左端に段部を突き当ててヘッドキャップ32の軸方向位置を位置決めしてもよい。この場合、ヘッドキャップ32の軸方向位置はアウターチューブ7を基準として決定され、界磁6の長さの影響を受けないので、固定子Sの全長に界磁6の長さが影響するのを排除できる。
また、界磁6の内周側には、コア3が挿入されており、界磁6は、コア3に磁界を作用させている。なお、界磁6は、コア3の可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、コア3の可動範囲に応じて永久磁石10a,10bの設置範囲を決定すればよい。したがって、アウターチューブ7とインナーチューブ9との環状隙間のうち、コア3に対向し得ない範囲には、永久磁石10a,10bを設置しなくともよい。
また、インナーチューブ9の内周には、スライダ12,13が摺接しており、スライダ12,13によって電機子2はロッド11とともに界磁6に対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できる。インナーチューブ9は、コア3の外周と各永久磁石10a,10bの内周との間のギャップを形成するとともに、スライダ12,13と協働してコア3の軸方向移動を案内する役割を果たしている。なお、インナーチューブ9は、非磁性体で形成されればよいが、合成樹脂で形成されると筒型リニアモータ1の推力密度向上効果が高くなる。インナーチューブ9を非磁性体の金属で製造すると、電機子2が軸方向へ移動する際にインナーチューブ9の内部に渦電流が生じて、電機子2の移動を妨げる力が発生してしまう。これに対して、インナーチューブ9を合成樹脂とすれば渦電流が生じないので筒型リニアモータ1の推力をより効果的に向上できるとともに、筒型リニアモータ1の質量を低減できる。なお、インナーチューブ9を合成樹脂とする場合、フッ素樹脂で製造すればスライダ12,13との間の摩擦および摩耗を低減できる。また、インナーチューブ9を他の合成樹脂で形成してもよく、また、摩擦および摩耗を低減するべく他の合成樹脂で形成されたインナーチューブ9の内周をフッ素樹脂でコーティングしてもよい。
さらに、界磁6の内周に非磁性体のインナーチューブ9を備えているので、筒型リニアモータ1の界磁6内に電機子2を挿入する際に電機子2が永久磁石10a,10bに吸引されて貼り付いてしまうのを防止できる。よって、インナーチューブ9を設けると、電機子2が永久磁石10a,10bに吸引されて貼り付いてしまって筒型リニアモータ1の組立が不能となってしまう事態が回避され、筒型リニアモータ1の組立作業も容易となる。
なお、ボトムキャップ14には、巻線5に接続されるケーブルCを外部の図示しない電源に接続するコネクタ14cを備えており、外部電源から巻線5へ通電できるようになっている。また、アウターチューブ7およびインナーチューブ9の軸方向長さは、コア3の軸方向長さよりも長く、コア3は、界磁6内の軸方向長さの範囲で図1中左右へストロークできる。
そして、たとえば、巻線5の界磁6に対する電気角をセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線5の電流量を制御すれば、筒型リニアモータ1における推力と電機子2の移動方向とを制御できる。なお、前述の制御方法は、一例でありこれに限られない。このように、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、電機子2が可動子であり、界磁6は固定子として振る舞う。また、電機子2と界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線5への通電、あるいは、巻線5に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
そして、筒型リニアモータ1は、筒状の固定子Sと、筒状のコア3とコア3の外周に設けられたスロット4に装着される巻線5とを有して固定子Sの内周に軸方向移動可能に挿入される電機子2とを備え、固定子Sがアウターチューブ7と、アウターチューブ7内に収容されるとともに軸方向に積層される複数の永久磁石10a,10bを有して軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、アウターチューブ7に取付けられて界磁6の軸方向の一端に当接するストッパ20と、アウターチューブ7に螺着されて界磁6の軸方向の他端に当接するリテーナ21,31と、アウターチューブ7に連結されて固定子Sの全長を決するヘッドキャップ15,32とを備えている。
このように構成された筒型リニアモータ1,30では、界磁6がアウターチューブ7に取付けられるストッパ20とリテーナ21,31とによって挟持されるが、リテーナ21,31の軸方向位置によらず固定子Sの全長を決するのはヘッドキャップ15,32の軸方向位置となるので、固定子Sの全長に界磁6の長さが影響するのを排除できる。以上より、本発明の筒型リニアモータ1,30によれば、固定子Sの全長が製品毎にばらつかずに済むのである。
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、固定子Sが界磁6の内周と電機子2の外周との間に挿入されて電機子2の軸方向の移動を案内するインナーチューブ9を有し、リテーナ21がアウターチューブ7の外周に螺着される筒部21aと筒部21aから内周側に突出して界磁6に当接するフランジ部21dとを有し、ヘッドキャップ15がリテーナ21の筒部21aの外周に螺着されてストッパ20とともにインナーチューブ9を挟持している。このように構成された筒型リニアモータ1では、電機子2の移動を案内するインナーチューブ9を利用してヘッドキャップ15の固定子Sに対する軸方向位置を一定にできるので、ヘッドキャップ15の固定位置の調節作業が不要となる。また、リテーナ21およびヘッドキャップ15は、アウターチューブ7への組付の際に、外周から回動操作が可能であるから組付作業も容易である。
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ30では、固定子Sが界磁6の内周と電機子2の外周との間に挿入されて電機子2の軸方向の移動を案内するインナーチューブ9を有し、ヘッドキャップ32がアウターチューブ7の内周に設けた螺子部7bに螺着されてストッパ20とともにインナーチューブ9を挟持し、リテーナ31がアウターチューブ7の内周の螺子部7bに螺着されている。このように構成された筒型リニアモータ30では、電機子2の移動を案内するインナーチューブ9を利用してヘッドキャップ32の固定子Sに対する軸方向位置を一定にできるので、ヘッドキャップ32の固定位置の調節作業が不要となる。また、リテーナ31およびヘッドキャップ32は、アウターチューブ7の内周の螺子部7bに螺着されるので、固定子Sの外径を小型化できる。
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、界磁6がハルバッハ配列にて軸方向に交互に並べられる径方向に着磁された主磁極の永久磁石10aと軸方向に着磁された副磁極の永久磁石10bとを有し、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1は副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長い。
このように筒型リニアモータ1が構成されると、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を長くして、主磁極の永久磁石10aとコア3との間の磁気抵抗を小さくでき推力を向上できる。
なお、副磁極の永久磁石10bが主磁極の永久磁石10aよりも高い保磁力を有していれば、大きな磁界が印加される副磁極の永久磁石10bの減磁を抑制しつつも主磁極の永久磁石10aに高い残留磁束密度の永久磁石を利用できる。
また、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くすれば、界磁6はコア3に大きな磁界を作用させ得るが、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2に最適な関係がある。図3に主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1で副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2を割った値と筒型リニアモータ1の推力との関係を示す。発明者らは、鋭意研究した結果、図3に示すように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が0.15≦L2/L1≦0.6を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して95%以上の推力を確保できることを知見した。
よって、筒型リニアモータ1における主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2を0.15≦L2/L1≦0.6を満たすように設定すれば、推力を一層向上できる。さらに、図3から理解できるように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が0.2≦L2/L1≦0.5を満たすように設定されれば、L2/L1の値を理想的な値に設定した際の推力に対して98%以上の推力を確保できるので筒型リニアモータ1の推力をより効果的に向上できる。
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1にあっては、ティース3bの断面形状は、内周端の幅より外周端の幅が狭い台形状とされているので、ティース3bの断面形状を矩形とする場合に比較して、内周端における磁路断面積が広くなる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1では、大きな磁路断面積を確保しやすくなり、巻線5を通電した際の磁気飽和を抑制でき、より大きな磁場を発生できるからより大きな推力を発生できる。なお、推力の向上のためには、ティース3bの断面形状を台形とするとよいが、断面形状を矩形としてもよいし、他の形状としてもよい。
なお、発明者らの研究によって、ティース3bの断面における側面と直交面とでなす内角θが6度から12度の範囲にあると、良好な質量推力密度が得られることが分かった。ここで、質量推力密度とは、前述の構成の筒型リニアモータ1の最大推力を質量で割った数値であり、質量推力密度が良化すれば、筒型リニアモータ1の質量当たりの推力が大きくなる。よって、ティース3bの断面における側面と直交面とでなす内角θが6度から12度の範囲にある筒型リニアモータ1では、大きな質量推力密度が得られる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
1,30・・・筒型リニアモータ、2・・・電機子、3・・・コア、4・・・スロット、5・・・巻線、6・・・界磁、7・・・アウターチューブ、7b・・・螺子部、9・・・インナーチューブ、10a,10b・・・永久磁石、15,32・・・ヘッドキャップ、20・・・ストッパ、21,31・・・リテーナ、21a・・・筒部、21d・・・フランジ部、S・・・固定子
Claims (3)
- 筒状の固定子と、
筒状のコアと前記コアの外周に設けられたスロットに装着される巻線とを有して、前記固定子の内周に軸方向移動可能に挿入される電機子とを備え、
前記固定子は、
アウターチューブと、
前記アウターチューブ内に収容されるとともに軸方向に積層される複数の永久磁石を有して軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、
前記アウターチューブに取付けられて前記界磁の軸方向の一端に当接するストッパと、
前記アウターチューブに螺着されて前記界磁の軸方向の他端に当接するリテーナと、
前記アウターチューブに連結されて前記固定子の全長を決するヘッドキャップとを備えた
ことを特徴とする筒型リニアモータ。 - 前記固定子は、軸方向長さが前記界磁の軸方向長さよりも長く、前記界磁の内周と前記電機子の外周との間に挿入されて前記電機子の軸方向の移動を案内するインナーチューブを有し、
前記リテーナは、前記アウターチューブの外周に螺着される筒部と、前記筒部から内周側に突出して前記界磁に当接するフランジ部とを有し、
前記ヘッドキャップは、前記リテーナの前記筒部の外周に螺着されて、前記ストッパとともに前記インナーチューブを挟持している
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。 - 前記固定子は、軸方向長さが前記界磁の軸方向長さよりも長く、前記界磁の内周と前記電機子の外周との間に挿入されて前記電機子の軸方向の移動を案内するインナーチューブを有し、
前記ヘッドキャップは、前記アウターチューブの内周に設けた螺子部に螺着されて前記ストッパとともに前記インナーチューブを挟持し、
前記リテーナは、前記アウターチューブの内周の前記螺子部に螺着されている
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018079348A JP2019187216A (ja) | 2018-04-17 | 2018-04-17 | 筒型リニアモータ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018079348A JP2019187216A (ja) | 2018-04-17 | 2018-04-17 | 筒型リニアモータ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2019187216A true JP2019187216A (ja) | 2019-10-24 |
Family
ID=68337426
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018079348A Pending JP2019187216A (ja) | 2018-04-17 | 2018-04-17 | 筒型リニアモータ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2019187216A (ja) |
-
2018
- 2018-04-17 JP JP2018079348A patent/JP2019187216A/ja active Pending
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