JP2019184810A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生を抑制する電子写真感光体の提供。【解決手段】導電性基体と、前記導電性基体上に設けられ、結着樹脂と電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有する単層型の感光層と、を有し、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面の測定値として、マルテンス硬度をa[N/mm2]、ヤング率をb[MPa]、及び弾性変形率をc[%]としたとき、式(1)(−4.1≦Y≦−3.1 Y=0.06×a−0.0018×b−0.19×c)の関係を満たす電子写真感光体。【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
特許文献1には、「支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、25℃、湿度50%の環境下でビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて電子写真感光体の硬度を試験した時、荷重6mNで押し込んだ時のユニバーサル硬さ値(HU)が150N/mm以上、かつ220N/mm以下であり、かつ、弾性変形率が50%以上、かつ65%以下であり、更に、支持体内部に挿入物を有することを特徴とする電子写真感光体。」が開示されている。
特許文献2には、「電子写真感光体の表面層に対する、一定環境(22.5℃/50%RH)での表面皮膜物性試験におけるユニバーサル硬さ値HU(D)が、該転写ベルトに対する、上記環境での表面皮膜物性試験におけるユニバーサル硬さ値HU(B)に対して、HU(D)≧HU(B)+100である電子写真感光体」が開示されている。
特開2007−187901号公報 特開2001−125295号公報
導電性基体上に単層型の感光層を有する電子写真感光体を用いて、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成した場合、点欠点(例えば、白点及び黒点)が発生することがあった。
本発明の課題は、単層型の感光層が設けられた電子写真感光体において、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面を測定したときのマルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率の測定値に基づく、式(1)で示される値として、Yが−4.1未満である場合、又はYが−3.1を超える場合に比べ、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生を抑制する電子写真感光体を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。
<1>
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられ、結着樹脂と電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有する単層型の感光層と、
を有し、
温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面の測定値として、マルテンス硬度をa[N/mm]、ヤング率をb[MPa]、及び弾性変形率をc[%]としたとき、下記式(1)の関係を満たす電子写真感光体。
式(1):−4.1≦Y≦−3.1 Y=0.06×a−0.0018×b−0.19×c
<2>
前記マルテンス硬度aが、185N/mm以上215N/mm以下、前記ヤング率bが、3900MPa以上4800MPa以下、前記弾性変形率cが、34%以上43%以下である<1>に記載の電子写真感光体。
<3>
前記マルテンス硬度aが、200N/mm以上205N/mm以下、前記ヤング率bが、4000MPa以上4300MPa以下、前記弾性変形率cが、38%以上40%以下である<2>に記載の電子写真感光体。
<4>
前記感光層が、さらに、ターフェニル構造を有する化合物を含有する<1>〜<3>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<5>
前記ターフェニル構造を有する化合物が、m−ターフェニルである<4>に記載の電子写真感光体。
<6>
<1>〜<5>のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<7>
<1>〜<5>のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
<8>
前記転写手段が、前記トナー像を前記記録媒体の表面に直接転写する直接転写方式の転写手段であり、
前記現像手段が、前記電子写真感光体と対向して設けられ、前記電子写真感光体の表面に現像剤を付着させ、転写後の前記電子写真感光体の表面に残留するトナーを、前記電子写真感光体から回収する現像剤保持体を有し、前記トナーを回収するときの前記現像剤保持体に印加する現像電位と帯電電位との差(帯電電位−現像電位)が280V以上380V以下である現像手段である<7>に記載の画像形成装置。
<9>
前記現像手段が、非磁性一成分現像方式の現像手段である<8>に記載の画像形成装置。
<10>
帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えない<8>又は<9>に記載の画像形成装置。
<1>、<2>、<3>に係る発明によれば、単層型の感光層が設けられた電子写真感光体において、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面を測定したときのマルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率の測定値に基づく、式(1)で示される値として、Yが−4.1未満である場合、又はYが−3.1を超える場合に比べ、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
<4>、<5>に係る発明によれば、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面を測定したときのマルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率の測定値に基づく、式(1)で示される値として、Yが−4.1未満である場合、又はYが−3.1を超える場合に比べ、感光層に、ターフェニル構造を有する化合物を含んでいても、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
<6>又は<7>に係る発明によれば、単層型の感光層が設けられた電子写真感光体において、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面を測定したときのマルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率の測定値に基づく、式(1)で示される値として、Yが−4.1未満である場合、又はYが−3.1を超える電子写真感光体を備える場合に比べ、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生が抑制される電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
<8>に係る発明によれば、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面を測定したときのマルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率の測定値に基づく、式(1)で示される値として、Yが−4.1未満である場合、又はYが−3.1を超える電子写真感光体を備える場合に比べ、転写手段が、トナー像を前記記録媒体の表面に直接転写する直接転写方式の転写手段であり、前記現像手段が、前記電子写真感光体と対向して設けられ、前記電子写真感光体の表面に現像剤を付着させ、転写後の前記電子写真感光体の表面に残留するトナーを、前記電子写真感光体から回収する現像剤保持体を有し、前記トナーを回収するときの前記現像剤保持体に印加する現像電位と帯電電位との差(帯電電位−現像電位)が280V以上380V以下である現像手段であっても、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生が抑制される電子写真感光体を備える画像形成装置が提供される。
<9>に係る発明によれば、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面を測定したときのマルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率の測定値に基づく、式(1)で示される値として、Yが−4.1未満である場合、又はYが−3.1を超える電子写真感光体を備える場合に比べ、現像手段が、非磁性一成分現像方式の現像手段であっても、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生が抑制される電子写真感光体を備える画像形成装置が提供される。
<10>に係る発明によれば、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面を測定したときのマルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率の測定値に基づく、式(1)で示される値として、Yが−4.1未満である場合、又はYが−3.1を超える電子写真感光体を備える場合に比べ、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えていなくても、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生が抑制される電子写真感光体を備える画像形成装置が提供される。
本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。 本実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。 本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。 非磁性一成分現像方式の現像装置の一例を示す概略構成図である。 本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
[電子写真感光体]
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられ、結着樹脂と電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有する単層型の感光層と、を有する。そして、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面の測定値として、マルテンス硬度をa[N/mm]、ヤング率をb[MPa]、及び弾性変形率をc[%]としたとき、下記式(1)の関係を満たす。
式(1):−4.1≦Y≦−3.1 Y=0.06×a−0.0018×b−0.19×c
従来、電子写真感光体としては、製造コスト等の観点から単層型の感光層を有する感光体(単層型感光体)が望ましい。また、近年では、高画質化の要求に伴い、点欠点(例えば、白点及び黒点)の発生を更に抑制することが求められている。
感光層の摩耗量が進行し、感光層が適度な摩耗量である場合、紙粉、残留トナー等が付着しても剥がれやすくなるため、点欠点の発生数は減少する傾向にある。一方、摩耗量が過度になると、膜厚減少によって、感光層の電荷漏れ耐性(リーク耐性)が低下しやすくなる。そのため、形成された画像には、点欠点が発生しやすくなる。他方、摩耗量が少なすぎる場合は、感光層のリフレッシュ性(クリーニング性)が低い。感光層のリフレッシュ性が低いと、感光層に固着した残留トナーによって、露光不良などが生じることがあるため、点欠点が発生しやすくなる。
感光層の摩耗は、感光層表面のマルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率のそれぞれの物性と関係するが、これら一つ一つの物性値によって、感光層の摩耗量を予測することは難いことが分かってきた。そこで、感光層の摩耗量と、これら3つの物性に基づいて、重回帰分析を行ったところ、これら3物性と感光層の摩耗量との間に、相関性があることがわかり、式(1)(Y=0.06×a−0.0018×b−0.19×c)が導かれた。そして、式(1)のa、b、及びcのそれぞれに、マルテンス硬度、ヤング率、及び弾性変形率を代入して求められるYの値が、−4.1≦Y≦−3.1の関係を満たすとき、感光層の摩耗量が適度な範囲となるため、感光層は、良好なリフレッシュ性が得られると考えられる。その結果、本実施形態に係る電子写真感光体は、感光層に付着する紙粉、残留トナー等の付着が低減することにより、点欠点の発生が抑制されると推測される。
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る電子写真感光体を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体7の一部の断面を概略的に示している。図1に示す電子写真感光体7は、例えば、導電性基体3と、導電性基体3上に、下引層1と、単層型の感光層2が、この順で設けられている。
なお、下引層1は、必要に応じて設けられる層である。即ち、単層型の感光層2は、導電性基体3上に直接設けられていてもよく、下引層1を介して設けられてもよい。
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
(単層型の感光層)
本実施形態における単層型の感光層は、点欠点の発生を抑制する点で、温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面の測定値として、マルテンス硬度をa[N/mm]、ヤング率をb[MPa]、及び弾性変形率をc[%]としたとき、下記式(1)の関係を満たす。
式(1):−4.1≦Y≦−3.1 Y=0.06×a−0.0018×b−0.19×c
点欠点の発生を抑制する点で、Yの範囲は、−3.8≦Y≦−3.1の範囲が好ましく、−3.5≦Y≦−3.1の範囲がより好ましい。
本実施形態において、感光層表面のマルテンス硬度a、ヤング率b、及び弾性変形率cの各物性の測定方法は、以下のとおりである。
マルテンス硬度a、ヤング率b、及び弾性変形率cは、下記に示すように、感光体表面(感光層)に対して圧子を押し込んだときに測定される値である。
まず、測定対象となる感光層を有する感光体を、温度23℃、30%RHの環境下において、フィッシャー・インストルメンツ社製の測定装置(PICODENTOR HM500)にセットする。そして、感光体表面(感光層)に対してビッカース圧子を用いて連続的に荷重を増加させ、0.5μm押し込んだときに測定される各物性(マルテンス硬度a、ヤング率b、及び弾性変形率c)について求める。測定箇所は、両端から40mmの位置、80mmの位置、及び中央部の5箇所とし、この5箇所における測定値の平均値をそれぞれの物性値とする。
−マルテンス硬度a−
マルテンス硬度aは、上記条件で圧子を押し込んだとき、試験荷重を圧子の表面積で除して求める。
−ヤング率b−
ヤング率bは、上記条件で圧子を押し込んだとき、押込み深さ−荷重曲線を測定し、負荷を最大押込み深さ500nmで与え、続いて除荷をした場合の除荷曲線の傾きをヤング率として求める。
−弾性変形率c−
弾性変形率cは、上記条件で圧子を押し込んだとき、荷重頂点までの変位量と、荷重を開放したのちの変位戻り量を測定し、その比を感光層の弾性変形率として求める。
マルテンス硬度a、ヤング率b、及び弾性変形率cの範囲は、式(1)を満足する範囲であれば、特に限定されるものではない。点欠点の発生を抑制する点で、これら物性の好ましい範囲としては、例えば、マルテンス硬度aが、185N/mm以上215N/mm以下、ヤング率bが、3900MPa以上4800MPa以下、弾性変形率cが、34%以上43%以下である範囲が挙げられる。より好ましくは、マルテンス硬度aが、200N/mm以上205N/mm以下、ヤング率bが、4000MPa以上4300MPa以下、弾性変形率cが、38%以上40%以下である範囲が挙げられる。
式(1)を満足させる方法としては、例えば、感光層に用いる結着樹脂の種類、分子量及び量、電子輸送材料及び正孔輸送材料の種類及び量、感光層の乾燥温度を調製する方法が挙げられる。
本実施形態における単層型の感光層は、結着樹脂と、電荷発生材料と、正孔輸送材料と、電子輸送材料と、必要に応じてその他添加剤と、を含む。以下、単層型の感光層に含まれる各成分について詳細に説明する。
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールTP等の単独重合型、又はこれらの共重合型等)、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
これら結着樹脂の中でも、感光層の機械的強度等の観点から、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。特に、前述の式(1)を満たしやすく、点欠点を抑制する点で、結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールTP等のビスフェノール骨格を有する単独重合型の他に、例えば、これらビスフェノール骨格とビフェニル骨格とを有するビフェニル共重合型のポリカーボネート樹脂が挙げられる。ビフェニル共重合型のポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビフェニル骨格とビスフェノールZ骨格とを有するビフェニル共重合型のポリカーボネート樹脂が挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、例えば、単独重合型のポリカーボネートを複数併用してもよく、単独重合型のポリカーボネートとビフェニル共重合型のポリカーボネート樹脂とを併用してもよい。
前述の式(1)を満たしやすくする点で、粘度平均分子量が50000以下のポリカーボネート樹脂であることが好ましく、粘度平均分子量が45000以下のポリカーボネート樹脂がより好ましく、40000以下のポリカーボネート樹脂がさらに好ましく粘度平均分子量が3000以下のポリカーボネート樹脂が特に好ましい。粘度平均分子量の下限値は、20000以上であることが好ましい。例えば、粘度平均分子量を増加させると、式(1)のYは−4.1に近づく。
ここで、結着樹脂の粘度平均分子量の測定は、以下の一点測定法が用いられる。
まず、感光体から測定対象となる感光層を露出させる。そして、その感光層の一部を切り出し測定用試料を準備する。
次に、測定試料から結着樹脂を抽出する。抽出した結着樹脂1g分をメチレンクロライド100cmに溶解し、25℃の測定環境下でウベローデ粘度計にて、その比粘度ηspを測定する。そして、ηsp/c=〔η〕+0.45〔η〕cの関係式(ただしcは濃度(g/cm)より極限粘度〔η〕(cm/g)を求め、H.Schnellによって与えられている式、〔η〕=1.23×10−4Mv0.83の関係式より粘度平均分子量Mvを求める。
前述の式(1)を満たしやすくする点で、ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールTP等のビスフェノール骨格を有する単独重合型を用いることがよい。式(1)をより満たしやすくする点で、粘度平均分子量が20000以上45000以下の単独重合型のポリカーボネート樹脂を用いることがより好ましく、粘度平均分子量が20000以上45000以下の単独重合型のポリカーボネート樹脂を用いることがさらに好ましい。
感光層の全固形分に対する結着樹脂の含有量は、例えば、35質量%以上60質量%以下であることがよい。前述の式(1)を満たしやすくする点で、感光層の全固形分に対する結着樹脂の含有量の下限は、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、同様の点で、結着樹脂の含有量の上限は、55質量%以下であることが好ましい。例えば、結着樹脂の含有量を増加させると、式(1)のYの値は−4.1に近づく。
−電荷発生材料−
電荷発生材料としては、例えば、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることがよい。具体的には、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン;クロロガリウムフタロシアニン;ジクロロスズフタロシアニン;チタニルフタロシアニンが挙げられる。
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;ビスアゾ顔料等を用いることがよい。
すなわち、電荷発生材料としては、例えば380nm以上500nm以下の露光波長の光源を用いる場合には無機顔料を用いることがよく、700nm以上800nm以下の露光波長の光源を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料を用いことがよい。
中でも、電荷発生材料としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料から選択される少なくとも1種を用いることが望ましい。これらの電荷発生材料としては、単独又は2種以上混合して用いてもよい。感光体の高感度化の点から、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
なお、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料を併用する場合には、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とクロロガリウムフタロシアニン顔料との比率は、質量比で、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料:クロロガリウムフタロシアニン顔料=9:1乃至3:7(好ましくは9:1乃至6:4)であることがよい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
特に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、例えば、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がより優れた分散性が得られる観点から望ましい。
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより好ましい。一方、BET比表面積は45m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましく、55m/g以上120m/g以下であることがさらに好ましい。平均粒径は、体積平均粒径であり、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所LA−700)にて測定した値である。BET比表面積は、流動式比表面積自動測定装置(島津製作所フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒径の最大値)は、1.2μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が0.2μm以下であり、且つ、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、BET比表面積が45m/g以上であることが好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜に回折ピークを有するV型であることが好ましい。
一方、クロロガリウムフタロシアニン顔料としては、感光層の感度の点から、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.4°、16.6°、25.5°、28.3°に回折ピークを有する化合物が好ましい。クロロガリウムフタロシアニン顔料の最大ピーク波長、平均粒径、最大粒径、及びBET比表面積の好ましい範囲は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と同様である。
電荷発生材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
単層型の感光層の全固形分に対する電荷発生材料の含有量は、前述の式(1)を満たしやすくし、点欠点を抑制する点で、0.5質量%以上5質量%以下がよく、1質量%以上5質量%以下が好ましく、1.2質量%以上4.5質量%以下であることがより好ましい。例えば、電荷発生材料の含有量を増加させると、式(1)のYの値は−3.1に近づく。
−正孔輸送材料−
正孔輸送材料としては、特に制限はないが、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体;1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体;トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物;N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体;4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体;2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体;6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体;p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体;エナミン誘導体;N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等;上記した化合物で構成される基を主鎖又は側鎖に有する重合体;などが挙げられる。これらの正孔輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正孔輸送材料の具体例としては、例えば、下記一般式(B−1)で示される化合物及び下記一般式(B−2)で示される化合物が挙げられる。
一般式(B−1)中、RB1は、水素原子またはメチル基を示す。n11は1または2を示す。ArB1およびArB2は各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(RB3)=C(RB4)(RB5)、または−C−CH=CH−CH=C(RB6)(RB7)を示し、RB3乃至RB7はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、または置換若しくは未置換のアリール基を表す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、または炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。
一般式(B−2)中、RB8およびRB8’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。RB9、RB9’、RB10、およびRB10’は同一でも異なってもよく、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(RB11)=C(RB12)(RB13)、または−CH=CH−CH=C(RB14)(RB15)を示し、RB11乃至RB15は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、または置換若しくは未置換のアリール基を表す。m12、m13、n12およびn13は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
ここで、一般式(B−1)で示される化合物及び一般式(B−2)で示される化合物のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(RB6)(RB7)」を有する一般式(B−1)で示される化合物、及び「−CH=CH−CH=C(RB14)(RB15)」を有する一般式(B−2)で示される化合物が好ましい。
以下、一般式(B−1)で示される化合物及び一般式(B−2)で示される化合物の具体例として、下記構造式(HT−1)〜(HT−10)を挙げるが、正孔輸送材料は、これらに限られるものではない。
感光層の全固形分に対する全正孔輸送材料の含有量は、前述の式(1)を満たしやすくし、点欠点を抑制する点で、20質量%以上45質量%以下がよく、好ましくは25質量%以上42質量%以下、より好ましくは28質量%以上40質量%以下である。なお、この正孔輸送材料の含有量は、2種以上の電子輸送材料を併用した場合、それらの電子輸送材料全体の含有量である。例えば、正孔輸送材料の含有量を増加させると、式(1)のYの値は−3.1に近づく。
−電子輸送材料−
電子輸送材料としては、特に制限はないが、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、9−ジシアノメチレン−9−フルオレノン−4−カルボン酸オクチル等のフルオレノン系化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン系化合物;3,3’−ジ−tert−ペンチル−ジナフトキノン等のジナフトキノン系化合物;3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルジフェノキノン、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン等のジフェノキノン系化合物;上記した化合物で構成される基を主鎖又は側鎖に有する重合体;などが挙げられる。これらの電子輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、前述の式(1)を満たしやすくし、点欠点を抑制する点で、下記一般式(C−1)で示されるジフェノキノン系電子輸送材料が好ましい。
一般式(C−1)中、RC11、RC12、RC13、及びRC14は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はフェニル基を示す。
一般式(C−1)中、RC11〜RC14が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上6以下のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
C11〜RC14が示すアルキル基は、置換アルキル基であってもよい。置換アルキル基の置換基としては、シクロアルキル基、フッ素置換アルキル基等が挙げられる。
一般式(C−1)中、RC11〜RC14が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上6以下のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
一般式(C−1)中、RC11〜RC14が示すハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。
一般式(C−1)中、RC11〜RC14が示すフェニル基は、置換フェニル基であってもよい。置換フェニル基の置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1以上6以下のアルキル基)、アルコキシ基(例えば炭素数1以上6以下のアルコキシ基)、ビフェニル基等が挙げられる。
一般式(C−1)で示されるジフェノキノン系電子輸送材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
以下、一般式(C−1)で示されるジフェノキノン系電子輸送材料の例示化合物として、下記構造式(C−1−1)〜(C−1−3)を示すが、これに限定されるわけではない。
感光層の全固形分に対する全電子輸送材料の含有量は、前述の式(1)を満たしやすくし、点欠点を抑制する点で、4質量%以上30質量%以下がよく、好ましくは6質量%以上25質量%以下、より好ましくは8質量%以上20質量%以下である。なお、この電子輸送材料の含有量は、2種以上の電子輸送材料を併用した場合、それらの電子輸送材料全体の含有量である。例えば、電子輸送材料の含有量を増加させると、式(1)のYの値は−3.1に近づく。
−正孔輸送材料と電子輸送材料との質量比−
正孔輸送材料と電子輸送材料との比率は、質量比(正孔輸送材料/電子輸送材料)で、50/50以上90/10以下が望ましく、より望ましくは60/40以上80/20以下である。
−その他添加剤−
単層型の感光層には、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の周知のその他添加剤を含んでいてもよい。例えば、フッ素樹脂粒子、シリコーンオイル等を含んでいてもよい。
さらに、感光層には、ターフェニル構造を有する化合物を含有していてもよい。感光層に、ターフェニル構造を有する化合物を含有していることで、感光層の割れが抑制されやすくなる、また、式(1)を満足させやすくなる。ターフェニル構造を有する化合物としては、o−ターフェニル、m−ターフェニル、及びp−ターフェニルが挙げられる。これらのターフェニル構造を有する化合物は、ターフェニル構造を構成するそれぞれのベンゼン環が、置換基で置換されていてもよく、無置換であってもよい。ターフェニル構造を有する化合物が置換基で置換されている場合、少なくとも一つのベンゼン環が、それぞれ独立で、ハロゲン原子(塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子)、及びアルキル基(直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上6以下のアルキル基)の少なくとも一方で置換されていてもよい。
これらの中でも、式(1)を満足させやすくなり、点欠点の発生を抑制する点で、ターフェニル構造を有する化合物は、下記構造式(D−1)で表される無置換のm−ターフェニルであることが好ましい。
ターフェニル構造を有する化合物を含む場合、感光層の全固形分に対するターフェニル構造を有する化合物の含有量は、前述の式(1)を満たしやすくし、点欠点を抑制する点で、3質量%以上15質量%以下がよく、5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。例えば、ターフェニル構造を有する化合物の含有量を増加させると、式(1)のYの値は−3.1に近づく。
前述の式(1)を満たしやすくする点で、感光層は、粘度平均分子量が20000以上45000以下の単独重合型のビスフェノールZ型ポリカーボネートである結着樹脂と、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料の少なくとも一方である電荷発生材料と、一般式(B−1)で表される正孔輸送材料及び一般式(B−1)で表される正孔輸送材料の少なくとも一方である正孔輸送材料と、一般式(C−1)で表される電子輸送材料と、必要に応じて、ターフェニル構造を有する化合物(好ましくはm−ターフェニル)とを含有することが好ましい。これらの量については、前述した感光層の全固形分に対する含有量の範囲で、式(1)を満足するように決定される。
(単層型の感光層の形成)
単層型の感光層は、上記成分を溶剤に加えた感光層形成用塗布液を用いて形成される。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は単独又は2種以上混合して用いる。
感光層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
感光層形成用塗布液を塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
感光層形成用塗布液を塗布した後の乾燥は、前述の式(1)を満たしやすくし、点欠点を抑制する点で、従来の乾燥温度よりも高温側で乾燥することがよい。例えば、乾燥温度は、140℃以上165℃以下であることがよく、145℃以上150℃以下であることが好ましい。例えば、乾燥温度を増加させると、式(1)のYの値は−3.1に近づく。
単層型の感光層の膜厚は、好ましくは5μm以上60μm以下、より好ましくは5μm以上50μm以下、さらに好ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
また、画像形成装置100は、画像形成装置100の各装置及び各部材と接続され、各装置及び各部材の動作を制御する制御装置62も備えている。
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
なお、図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
−帯電装置−
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
−露光装置−
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
−現像装置−
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
また、現像装置11は、点欠点の発生を抑制する点で、電子写真感光体7と対向して設けられ、電子写真感光体7の表面に現像剤を付着させ、転写後の電子写真感光体7の表面に残留するトナーを、電子写真感光体7から回収する現像剤保持体を有する現像装置であり、トナーを回収するときの現像剤保持体に印加する現像電位と帯電電位との差(帯電電位−現像電位)が280V以上380V以下であることが好ましい。
さらに、現像装置11としては、点欠点の発生を抑制する点で、非磁性一成分現像方式の現像装置であることがより好ましい。このような非磁性一成分現像方式の現像装置の一例として、図4を参照して説明する。図4は、非磁性一成分現像方式の現像装置の一例を示す概略構成図である。図4に示す現像装置11Aは、非磁性一成分現像方式の現像装置であり、現像剤収容室111、現像剤供給ローラ112、現像ローラ113(現像剤保持体の一例)、トナー層規制部材114、及び現像ローラ112に電圧を印加するための電源116(電圧印加装置の一例)を備えている。
現像剤収容室111は、非磁性一成分現像剤Tを収容する。現像剤収容室111には、現像剤Tを攪拌する攪拌部材115が設けられていてもよい。
現像剤供給ローラ112は、現像剤収容室111に収容された現像剤Tと接触し、且つ、現像ローラ113に近接又は接触するように設けられており、現像剤収容室111中の現像剤Tを現像ローラ113の表面に供給する。
現像ローラ113は、現像剤供給ローラ112から供給された現像剤Tを保持し、現像剤Tを電子写真感光体7へと運び、電子写真感光体7の表面に形成された静電潜像を現像(顕像化)してトナー像を形成する。トナー層規制部材114は、現像ローラ113上のトナー層の厚さを規制する。そして、転写後の前記電子写真感光体の表面に残留するトナーは、現像ローラ113によって、電子写真感光体から回収される。そして、現像装置11Aでは、現像ローラ112に電圧を印加するための電源116によって現像ローラ112に電圧が印加され、図2に示す制御装置62において、トナーを回収するときの現像ローラ112に印加する現像電位と帯電電位との差(帯電電位−現像電位)が280V以上380V以下となるように制御されている。
−クリーニング装置−
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
−転写装置−
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
−中間転写体−
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
−制御装置−
制御装置62は、画像形成装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。具体的には、制御装置62は、例えば、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)、各種プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、プログラムの実行時にワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)、各種情報を記憶する不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース(I/O)を備えている。CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、及びI/Oの各々は、バスを介して接続されている。そして、I/Oには、電子写真感光体7、帯電装置8、露光装置9、現像装置11、転写装置40、クリーニング装置13等の画像形成装置100の各部が接続されている。
なお、CPUは、例えば、ROMや不揮発性メモリに記憶されているプログラム(例えば、画像形成シーケンスや回復シーケンス等)の制御プログラム)実行し、画像形成装置100の各部の動作を制御する。RAMは、ワークメモリとして使用される。ROMや不揮発性メモリには、例えば、CPUが実行するプログラムやCPUの処理に必要なデータ等が記憶されている。なお、制御プログラムや各種データは、記憶部等の他の記憶装置に記憶されていてもよいし、通信部を介して外部から取得されてもよい。
また、制御装置62には、各種ドライブが接続されていてもよい。各種ドライブとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどのコンピュータ読み取り可能な可搬性の記録媒体Pからデータを読み込んだり、記録媒体Pに対してデータを書き込んだりする装置が挙げられる。各種ドライブを備える場合には、可搬性の記録媒体Pに制御プログラムを記録しておいて、これを対応するドライブで読み込んで実行してもよい。
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、転写手段が、トナー像を記録媒体の表面に直接転写する直接転写方式の転写手段であり、現像手段が、電子写真感光体と対向して設けられ、電子写真感光体の表面に現像剤を付着させ、転写後の電子写真感光体の表面に残留するトナーを、電子写真感光体から回収する現像剤保持体を有し、トナーを回収するときの現像剤保持体に印加する現像電位と帯電電位との差(帯電電位−現像電位)が280V以上380V以下である現像手段でもよい。さらに、現像手段は、非磁性一成分現像方式の現像手段でもよい。また、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えなくてもよい。
特に、本実施形態に係る画像形成装置が、本実施形態に係る電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する非磁性一成分現像方式の現像手段であり、前記電子写真感光体と対向して設けられ、前記電子写真感光体の表面に現像剤を付着させ、転写後の前記電子写真感光体の表面に残留するトナーを、前記電子写真感光体から回収する現像剤保持体を有し、前記トナーを回収するときの前記現像剤保持体に印加する現像電位と帯電電位との差(帯電電位−現像電位)が280V以上380V以下である現像手段と、前記トナー像を記録媒体の表面に直接転写する直接転写方式の転写手段と、を備え、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えない画像形成装置であるとき、前述の式(1)で示される値として、Yが−4.1未満である場合、又はYが−3.1を超える電子写真感光体を備える場合に比べ、高温高湿環境下で繰り返し画像を形成したときの点欠点の発生が抑制される効果がより発揮されやすい。
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。図5に示すように、画像形成装置110は、本実施形態に係る電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ330と、露光装置9と、直接転写方式の転写装置40と、用紙搬送ベルト55と、制御装置62とを備える。なお、画像形成装置110において、露光装置9はプロセスカートリッジ330の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は用紙搬送ベルト55を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、用紙搬送ベルト55はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。また、図5におけるプロセスカートリッジ330は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8、現像装置11Aを一体に支持している。なお、図5に示す帯電装置8、露光装置9、及び転写装置40、及び制御装置62は、図2で説明したものと同様である。また、現像装置11Aとしては、例えば、図4に示す非磁性一成分現像方式の現像装置11Aを備えている。図5におけるプロセスカートリッジ330では、図2に示すクリーニング装置13、及び繊維状部材133は備えていない。以下、用紙搬送ベルトについて説明する。
−用紙搬送ベルト−
転写手段が直接転写方式である場合は、感光体上に形成されたトナー像は、電子写真感光体と転写装置とが、用紙搬送ベルトを介して接する箇所にて、用紙搬送ベルト上を搬送される記録用紙へ転写される。記録媒体搬送ベルトとしては、例えば、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のものが使用される。
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
なお、画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300に代えて、プロセスカートリッジ330を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置としてもよい。
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
<実施例1>
−感光体(1)の作製−
まず、電荷発生材料として、表1に示すクロロガリウムフタロシアニン顔料(CG−1)を1質量部と、表1に示す電子輸送材料(ET−A)を8質量部と、表1に示す正孔輸送材料(HT−A)を32質量部と、結着樹脂として、表1に示すビスフェノールZポリカーボネート樹脂(PCZ200)を結着樹脂59質量部と、溶剤としてテトラヒドロフランを250質量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散処理を行い、感光層形成用塗布液を得た。
得られた感光層形成用塗布液を、浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mm、肉厚1mmのアルミニウム基体上に塗布し、145℃、25分の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成した。
<実施例2〜10>
表1にしたがって、結着樹脂の種類と量、電荷発生材料の種類と量、電子輸送材料の種類と量、及び正孔輸送材料の種類と量を変更した以外は、実施例1と同様にして、各例の電子写真感光体を作製した。なお、表1及び表2中の量は質量部である。
<比較例1〜9>
表2にしたがって、結着樹脂の種類と量、電荷発生材料の種類と量、電子輸送材料の種類と量、及び正孔輸送材料の種類と量を変更し、実施例1と同様にして、感光層形成用塗布液を得た。そして、得られた感光層形成用塗布液を、浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mm、肉厚1mmのアルミニウム基体上に塗布し、115℃、20分の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成した。
<比較例10>
電荷発生材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(CG−2)を1質量部と、表2に示す電子輸送材料(ET−F)を13質量部と、表2に示す正孔輸送材料(HT−F)を36質量部と、結着樹脂として、表2に示すビフェニル骨格とビスフェノールZ骨格とを有するビフェニル共重合型のポリカーボネート樹脂(BPZ)結着樹脂50質量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン250質量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散処理を行い、感光層形成用塗布液を得た。
得られた感光層形成用塗布液を、浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mm、肉厚1mmのアルミニウム基体上に塗布し、135℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成した。
<比較例11>
電荷発生材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(CG−2)を2質量部と、表2に示す電子輸送材料(ET−F)を13質量部と、表2に示す正孔輸送材料(HT−F)を34質量部と、結着樹脂として、表2に示すビフェニル骨格とビスフェノールZ骨格とを有するビフェニル共重合型のポリカーボネート樹脂(BPZ800;分子量80000)結着樹脂40質量部と、添加剤として、m−ターフェニルを11質量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン250質量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散処理を行い、感光層形成用塗布液を得た。
得られた感光層形成用塗布液を、浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mm、肉厚1mmのアルミニウム基体上に塗布し、145℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成した。
[評価]
(マルテンス硬度a、ヤング率b、弾性変形率c、式(1)のY値の評価)
各例で得られた感光体の感光層について、既述の方法によりマルテンス硬度a、ヤング率b、弾性変形率cを求めた。そして、式(1)に代入し、Y値を求めた。
[寿命予測摩耗量]
重回帰分析を行った結果から、下記式(2)を求めた。そして、各例の感光層表面を測定して得られたマルテンス硬度a、ヤング率b、及び弾性変形率cの結果を式(2)に代入し、Zの値を求めた。Zは、感光層の摩耗量を表す。Zの値が1μm以上2μm以下の範囲であれば、点欠点の発生が抑制される。
式(2) Z=0.06×a−0.0018×b−0.19×c+5.37
(点欠点(黒点及び白点)の評価)
点欠点の評価は、温度33℃、湿度80%の環境下において、画像形成装置として、Brother社製HL−2360DNを使用し、現像ローラを取り除いた状態(現像器レス)で1kpv(k Print Volume;使用した用紙の枚数を千枚単位で表す。)耐久印字させて、感光体表面に紙粉を付着させた。その後、現像装置と、実施例及び比較例で得られた電子写真感光体を、感光ユニットに取り付け、3kpv耐久印字(印字率4%)させた。その後、3kpv耐久印字後に白ベタに画像を形成し、感光体ピッチで発生している点欠陥(黒点)の個数をカウントした。なお、現像装置は、帯電電位と、残留するトナーを回収するときの現像ローラに印加する現像電位との電位差(帯電電位−現像電位;表1及び表2中、Vclnと表記)を280V、又は380Vとした。
また、3kpv耐久印字後に、黒ベタ画像を印刷し、感光体ピッチで発生している点欠陥(白点)の個数をカウントした。
−評価基準−
5:大変良い(点欠陥がほとんどなく問題なし)
4:良い(点欠陥が少しあるが問題ない範囲)
3:普通(点欠陥があるが、問題になる可能性がある範囲)
2:悪い(点欠陥があり問題になる範囲)
1:大変悪い(点欠陥が多くあり問題になる範囲)
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、点欠点の評価結果が良好であることがわかる。
以下、表1及び表2中の略称の詳細について示す。
−結着樹脂−
PCZ200:ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZの単独重合型ポリカーボネート樹脂;Mv20000)
PCZ300:ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZの単独重合型ポリカーボネート樹脂;Mv30000)
PCZ400:ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZの単独重合型ポリカーボネート樹脂;Mv40000)
BP/PCE/PCZ:ビフェニル骨格と、ビスフェノールEポリカーボネート骨格と、ビスフェノールZポリカーボネート骨格とを有する3元共重合型のポリカーボネート樹脂
BPZ:ビフェニル骨格とビスフェノールZ骨格とを有するビフェニル共重合型のポリカーボネート樹脂(ビフェニル骨格/ビスフェノールZ骨格比率(質量比)=25/75、Mv45000)
PCZ800:ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZの単独重合型ポリカーボネート樹脂;Mv80000)
−電荷発生材料−
・CG−1:クロロガリウムフタロシアニン顔料。CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4°、16.6°、25.5°、28.3°の位置に回折ピークを有する(600nmから900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長780nm、平均粒径0.15μm、最大粒径0.2μm、BET比表面積56m/g)。
・CG−2:ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)顔料。CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3°、16.0°、24.9°、28.0°の位置に回折ピークを有する(600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長=820nm、平均粒径=0.12μm、最大粒径=0.2μm、比表面積値=60m/g)
・CG−3:Y型のチタニルフタロシアニン顔料。CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも9.6°、27.3°の位置に回折ピークを有する。
−電子輸送材料−
・ET−A: 下記構造の電子輸送材料ET−A
・ET−B: 下記構造の電子輸送材料ET−B
・ET−C: 下記構造の電子輸送材料ET−C
・ET−D: 下記構造の電子輸送材料ET−D
・ET−E: 下記構造の電子輸送材料ET−E
・ET−F: 下記構造の電子輸送材料ET−F
−正孔輸送材料−
・HT−A: 下記構造の正孔輸送材料HT−A
・HT−B: 下記構造の正孔輸送材料HT−B
・HT−C: 下記構造の正孔輸送材料HT−C
・HT−D: 下記構造の正孔輸送材料HT−D
・HT−E: 下記構造の正孔輸送材料HT−E
・HT−F: 下記構造の正孔輸送材料HT−F
−添加剤−
・D−1:既述の構造式(D−1)で示されるm−ターフェニル
1 下引層、2 感光層、3 導電性基体、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、10 電子写真感光体、11 11A 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑材、40 転写装置、50 中間転写体、55用紙搬送ベルト、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材、133 繊維状部材、300 330 プロセスカートリッジ

Claims (10)

  1. 導電性基体と、
    前記導電性基体上に設けられ、結着樹脂と電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有する単層型の感光層と、
    を有し、
    温度23℃、30%RHの環境下における前記感光層の表面の測定値として、マルテンス硬度をa[N/mm]、ヤング率をb[MPa]、及び弾性変形率をc[%]としたとき、下記式(1)の関係を満たす電子写真感光体。
    式(1):−4.1≦Y≦−3.1 Y=0.06×a−0.0018×b−0.19×c
  2. 前記マルテンス硬度aが、185N/mm以上215N/mm以下、前記ヤング率bが、3900MPa以上4800MPa以下、前記弾性変形率cが、34%以上43%以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. マルテンス硬度aが、200N/mm以上205N/mm以下、前記ヤング率bが、4000MPa以上4300MPa以下、前記弾性変形率cが、38%以上40%以下である請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記感光層が、さらに、ターフェニル構造を有する化合物を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記ターフェニル構造を有する化合物が、m−ターフェニルである請求項4に記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
    画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
  7. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
    帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
    を備える画像形成装置。
  8. 前記転写手段が、前記トナー像を前記記録媒体の表面に直接転写する直接転写方式の転写手段であり、
    前記現像手段が、前記電子写真感光体と対向して設けられ、前記電子写真感光体の表面に現像剤を付着させ、転写後の前記電子写真感光体の表面に残留するトナーを、前記電子写真感光体から回収する現像剤保持体を有し、前記トナーを回収するときの前記現像剤保持体に印加する現像電位と帯電電位との差(帯電電位−現像電位)が280V以上380V以下である現像手段である請求項7に記載の画像形成装置。
  9. 前記現像手段が、非磁性一成分現像方式の現像手段である請求項8に記載の画像形成装置。
  10. 帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えない請求項8又は請求項9に記載の画像形成装置。
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