JP2019183975A - 密封部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 密封性能を確保しつつ、低トルク化された状態を長期間に亘って維持することができ、シール寿命の長い密封部材を提供する。【解決手段】 相手部材のリップ当たり面と摺接するリップ先端を有する弾性部材を備えた密封部材であって、前記リップ先端の表面は粗面であり、前記弾性部材はゴムを含有するゴム組成物からなり、前記弾性部材の少なくとも前記リップ先端の表層には、カルボニル基及び/又はヒドロキシル基を有する表面改質層が設けられている密封部材。【選択図】 図1
Description
本発明は、密封部材に関する。
グリース封入軸受には、外輪に圧入され、内輪のリップ当たり面を摺動する軸受シールが装着されている。この軸受シールは、軸受の外部から液体や異物が軸受の内部に侵入したり、軸受の内部のグリースが軸受の外部に漏洩したりすることを防止する役割を担っている。特に、耐水性能及び耐防塵性能が求められる環境下では、高密封性の軸受シールを装着した軸受が求められている。また、近年の省エネルギー化の要請から、軸受においてはトルクの低減も求められている。
そのため、軸受シールは、密封性能の確保と低トルク化との両立が求められている。
そのため、軸受シールは、密封性能の確保と低トルク化との両立が求められている。
軸受シールの低トルク化を図る技術として、例えば、特許文献1には、軸受シールが備えるシールリップにおいて、内輪のリップ当たり面に対して接触するリップ先端の全体に微小な凹凸部を設ける技術が提案されている。
一方、高い耐水性が求められるなど比較的過酷な環境下で使用される軸受では、軸受シールのリップ先端と相手部材のリップ当たり面との摺接する部分のグリースが洗い流されやすく、上記グリースが洗い流されると上記摺接する部分の潤滑が不良になり、その結果、上記リップ先端の摩耗が促進されることがあった。そして、上記リップ先端の摩耗が促進されると、上記リップ先端に設けられた凹凸部が摩耗によって消失し、その結果、摺動摩擦の増加、更にはシールトルクの増加を引き起こすことがあった。このように、特許文献1で提案された技術では、長期間に亘って低トルクを維持することが困難なことがあった。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、低トルク化された状態を長期間に亘って維持することができる密封部材を提供することを目的とする。
本発明の密封部材は、相手部材のリップ当たり面と摺接するリップ先端を有する弾性部材を備えた密封部材であって、
上記リップ先端の表面は粗面であり、
上記弾性部材はゴムを含有するゴム組成物からなり、
上記弾性部材の少なくとも上記リップ先端の表層には、カルボニル基及び/又はヒドロキシル基を有する表面改質層が設けられていることを特徴とする。
上記リップ先端の表面は粗面であり、
上記弾性部材はゴムを含有するゴム組成物からなり、
上記弾性部材の少なくとも上記リップ先端の表層には、カルボニル基及び/又はヒドロキシル基を有する表面改質層が設けられていることを特徴とする。
本発明の密封部材は、弾性部材におけるリップ先端の表面が粗面であり、かつ上記リップ先端の表層に表面改質層が設けられている、上記表面改質層は、官能基として−C=O基(カルボニル基)及び/又は−OH基(ヒドロキシル基)を有する層であり、硬度が高く耐摩耗性に優れた層である。上記表面改質層は、例えば、後述するエポキシ化処理等を施すことによってゴムにカルボニル基やヒドロキシル基が導入されてなる層である。
従って、上記密封部材では、上記弾性部材における上記リップ先端の表面が、微小な凹凸を有する粗面であり、かつ摩耗しにくい上記表面改質層で構成されている。そのため、上記密封部材は、密封性能を確保しつつ、低トルク化された状態を長期間に亘って維持することができ、シール寿命の長い密封部材である。
従って、上記密封部材では、上記弾性部材における上記リップ先端の表面が、微小な凹凸を有する粗面であり、かつ摩耗しにくい上記表面改質層で構成されている。そのため、上記密封部材は、密封性能を確保しつつ、低トルク化された状態を長期間に亘って維持することができ、シール寿命の長い密封部材である。
上記密封部材において、上記粗面のRzは、3〜20μmであることが好ましい。
この場合、上記密封部材は、低トルク化を図りつつ、優れた密封性能を確保するのにより適している。
本発明の密封部材において、上記Rzとは、JIS B 0601:1994に準拠した十点平均粗さRzである。
この場合、上記密封部材は、低トルク化を図りつつ、優れた密封性能を確保するのにより適している。
本発明の密封部材において、上記Rzとは、JIS B 0601:1994に準拠した十点平均粗さRzである。
上記密封部材において、上記表面改質層の厚さは、上記粗面のRzより大きく、50μm以下であることが好ましい。
この場合、上記密封部材は、達成された低トルク化を長期間に亘って維持しつつ、優れた密封性能を確保するのにさらに適している。
この場合、上記密封部材は、達成された低トルク化を長期間に亘って維持しつつ、優れた密封性能を確保するのにさらに適している。
上記密封部材において、上記ゴムは、ジエン系ゴム、又は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)であることが好ましい。
これらのゴムは、ジエン化合物をモノマー成分としており、主鎖に炭素−炭素二重結合を有している。そのため、エポキシ化処理によって、ゴムにカルボニル基やヒドロキシル基が導入された表面改質層を設けるのに特に適している。
これらのゴムは、ジエン化合物をモノマー成分としており、主鎖に炭素−炭素二重結合を有している。そのため、エポキシ化処理によって、ゴムにカルボニル基やヒドロキシル基が導入された表面改質層を設けるのに特に適している。
本発明の密封部材は、密封性能を確保しつつ、低トルク化された状態を長期間に亘って維持することができ、シール寿命の長い密封部材である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る密封部材を示す概略断面図である。図2は、図1に示した密封部材が装着された深溝玉軸受を示す概略断面図である。図3は、図1に示した密封部材における弾性部材のリップ先端近傍を模式的に示す断面図である。
本発明の実施形態に係る密封部材は、例えば、グリース封入軸受の深溝玉軸受100(図2参照)等の転がり軸受を密封するための密封部材(軸受シール)10として使用することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る密封部材を示す概略断面図である。図2は、図1に示した密封部材が装着された深溝玉軸受を示す概略断面図である。図3は、図1に示した密封部材における弾性部材のリップ先端近傍を模式的に示す断面図である。
本発明の実施形態に係る密封部材は、例えば、グリース封入軸受の深溝玉軸受100(図2参照)等の転がり軸受を密封するための密封部材(軸受シール)10として使用することができる。
深溝玉軸受100は、図2に示すように、外輪2と、内輪3と、複数の玉(転動体)4と、環状の保持器5と、環状の密封部材10とを備えている。
本実施形態では、軸方向に関して、軸受の内部から外部へ向かう側(又は方向)を軸方向外側(又は軸方向外方)といい、軸受の外部から内部へ向かう側(又は方向)を軸方向内側(又は軸方向内方)という。
本実施形態では、軸方向に関して、軸受の内部から外部へ向かう側(又は方向)を軸方向外側(又は軸方向外方)といい、軸受の外部から内部へ向かう側(又は方向)を軸方向内側(又は軸方向内方)という。
外輪2及び内輪3は、共に、軸受鋼や浸炭鋼などの軸受用鋼を用いて環状に形成された部材である。外輪2は、内周面の軸方向中央部に玉4が転動する外輪軌道面20が設けられている。また、外輪2の内周面の軸方向両側部のそれぞれには、環状段部21が設けられており、密封部材10は、この環状段部21に内嵌して固定されている。
内輪3は、外周面の軸方向中央部に玉4が転動する内輪軌道面30が設けられている。また、内輪3の外周面の軸方向両側部のそれぞれの周面31には、密封部材10のリップ部12c(図1参照)のリップ先端14が摺接可能に接触している。内輪3においては、上記周面31がリップ当たり面である。
内輪3は、外周面の軸方向中央部に玉4が転動する内輪軌道面30が設けられている。また、内輪3の外周面の軸方向両側部のそれぞれの周面31には、密封部材10のリップ部12c(図1参照)のリップ先端14が摺接可能に接触している。内輪3においては、上記周面31がリップ当たり面である。
複数の玉4は、外輪2と内輪3との間の環状空間6に設けられており、深溝玉軸受100が回転すると、これら玉4は、保持器5によって保持された状態で、外輪軌道面20及び内輪軌道面30を転動する。
保持器5は、外輪2及び内輪3間で玉4を保持しており、玉4を保持するためのポケット5aが周方向に沿って等間隔に設けられている。
保持器5は、外輪2及び内輪3間で玉4を保持しており、玉4を保持するためのポケット5aが周方向に沿って等間隔に設けられている。
密封部材10は、環状空間6の軸方向両側に設けられ、環状空間6を密封するための部材である。
密封部材10は、図1に示すように、金属環11と、この金属環11に固定されている環状の弾性部材12とを有している。
金属環11は、金属(例えば、SPCC等)製の環状部材であり、円筒部11aと、円筒部11aの軸方向外側端部から径方向内方に延びる環状板部11bと、環状板部11bの径方向内側端部から、径方向内方側で、かつ軸方向内方側に延びる環状の屈曲部11cとを有している。
密封部材10は、図1に示すように、金属環11と、この金属環11に固定されている環状の弾性部材12とを有している。
金属環11は、金属(例えば、SPCC等)製の環状部材であり、円筒部11aと、円筒部11aの軸方向外側端部から径方向内方に延びる環状板部11bと、環状板部11bの径方向内側端部から、径方向内方側で、かつ軸方向内方側に延びる環状の屈曲部11cとを有している。
弾性部材12は、ニトリルゴム(NBR)等のゴムを含有するゴム組成物からなり、金属環11に固定されている。
弾性部材12は、環状に形成されており、金属環11の円筒部11aの外周面を覆うように設けられた外周部12aと、金属環11の環状板部11b及び屈曲部11cの軸方向外側面を覆うように設けられた本体部12b、本体部12bの内周端から延び、金属環11よりも径方向内方に設けられた断面略くの字形状のリップ部12cとを有している。
弾性部材12は、環状に形成されており、金属環11の円筒部11aの外周面を覆うように設けられた外周部12aと、金属環11の環状板部11b及び屈曲部11cの軸方向外側面を覆うように設けられた本体部12b、本体部12bの内周端から延び、金属環11よりも径方向内方に設けられた断面略くの字形状のリップ部12cとを有している。
密封部材10は、金属環11の円筒部11aが弾性部材12の外周部12aを介して、外輪2に内嵌して固定されている。
また、密封部材10は、リップ部12cの内周面に備えるリップ先端14で締め代をもって内輪3におけるリップ当たり面である周面31と摺接可能に接触している。
また、密封部材10は、リップ部12cの内周面に備えるリップ先端14で締め代をもって内輪3におけるリップ当たり面である周面31と摺接可能に接触している。
密封部材10が有する弾性部材12は、リップ部12cの表層に表面改質層13が設けられている。このように、内輪3と摺接するリップ先端14に表面改質層13が設けられた密封部材10は、内輪3との摺動抵抗を低減し、深溝玉軸受100が回転した際のシールとしてのトルクを低く抑えることができる。
密封部材10において、表面改質層13は、少なくとも相手部材(内輪3)と摺接するリップ先端14に設けられていれば良く、弾性部材12の表層全体に設けられていても良い。
密封部材10において、表面改質層13は、少なくとも相手部材(内輪3)と摺接するリップ先端14に設けられていれば良く、弾性部材12の表層全体に設けられていても良い。
弾性部材12は、リップ先端14を、内輪3のリップ当たり面である周面31に摺接させることによって、深溝玉軸受100の内部に封入されたグリースが外部に漏洩することを防止するとともに、外部から塵埃、水、泥水などが深溝玉軸受100の内部に侵入することを防止している。
弾性部材12は、ゴムを含むゴム組成物からなる。
上記ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴムや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが好ましい。
これらのゴムは、ジエン化合物をモノマー成分とするため、主鎖に炭素−炭素二重結合を有しており、後述する過ギ酸等の過酸と反応させる処理によって、ゴムに−C=O基(カルボニル基)及び/又は−OH基(ヒドロキシル基)が導入された変性ゴムからなる表面改質層を設けるのに適している。
上記ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。NBRは、電子吸引性を持つ官能基を有しているので、ポリマー骨格の二重結合での求核反応が生じやすくなり、エポキシド生成反応が進行しやすいと考えられる。
上記ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴムや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが好ましい。
これらのゴムは、ジエン化合物をモノマー成分とするため、主鎖に炭素−炭素二重結合を有しており、後述する過ギ酸等の過酸と反応させる処理によって、ゴムに−C=O基(カルボニル基)及び/又は−OH基(ヒドロキシル基)が導入された変性ゴムからなる表面改質層を設けるのに適している。
上記ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。NBRは、電子吸引性を持つ官能基を有しているので、ポリマー骨格の二重結合での求核反応が生じやすくなり、エポキシド生成反応が進行しやすいと考えられる。
弾性部材12は、内輪3と摺接するリップ先端14(リップ部12cの内周面)に微小な凹凸が設けられている。即ち、弾性部材12では、相手部材と摺接するリップ先端14の表面が粗面である。この場合、弾性部材12と内輪3との摩擦力を小さくすることができるため、深溝玉軸受100が回転した際における密封部材10のシールとしてのトルクを小さくすることができる。
本発明の実施形態に係る密封部材において、上記粗面は、上記弾性部材における少なくとも相手部材と摺接するリップ先端14に設けられていれば良い。
本発明の実施形態に係る密封部材において、上記粗面は、上記弾性部材における少なくとも相手部材と摺接するリップ先端14に設けられていれば良い。
上記粗面のRzは、3〜20μmが好ましい。
上記Rzが3μm未満では、密封部材10の低トルク化を図ることが難しい場合がある。一方、上記Rzが20μmを超えると、弾性部材12(リップ部12cの内周面)と内輪3との間に隙間が生じてしまい、密封部材10による密封性能が低下してしまうことがある。
上記Rzが3μm未満では、密封部材10の低トルク化を図ることが難しい場合がある。一方、上記Rzが20μmを超えると、弾性部材12(リップ部12cの内周面)と内輪3との間に隙間が生じてしまい、密封部材10による密封性能が低下してしまうことがある。
弾性部材12におけるリップ部12cの表層には、上述した通り、表面改質層13が設けられている。
表面改質層13は、表面改質層13より内側の内層部分112(図3参照)を構成するゴムが変性されてなる層であり、官能基として−C=O基(カルボニル基)及び/又は−OH基(ヒドロキシル基)を有している。表面改質層13は官能基としてエポキシ基を有していても良い。
このような表面改質層13は、耐摩耗性に極めて優れた層である。
表面改質層13は、表面改質層13より内側の内層部分112(図3参照)を構成するゴムが変性されてなる層であり、官能基として−C=O基(カルボニル基)及び/又は−OH基(ヒドロキシル基)を有している。表面改質層13は官能基としてエポキシ基を有していても良い。
このような表面改質層13は、耐摩耗性に極めて優れた層である。
表面改質層13を形成する方法としては、例えば、未改質の弾性部材を過ギ酸溶液と接触させる方法等が挙げられる。
上記ゴムがニトリルゴム等の主鎖に炭素−炭素二重結合を有するゴムである場合、未改質の弾性部材が過ギ酸溶液と接触すると、下記式(1a)及び(1b)、で示される反応が進行することによって、ニトリルゴム等の主鎖にエポキシ基が導入され、更にはヒドロキシル基、カルボニル基が導入される。
以下、本明細書では、このような処理を「エポキシ化処理」ともいう。
上記ゴムがニトリルゴム等の主鎖に炭素−炭素二重結合を有するゴムである場合、未改質の弾性部材が過ギ酸溶液と接触すると、下記式(1a)及び(1b)、で示される反応が進行することによって、ニトリルゴム等の主鎖にエポキシ基が導入され、更にはヒドロキシル基、カルボニル基が導入される。
以下、本明細書では、このような処理を「エポキシ化処理」ともいう。
上記過ギ酸溶液は、ギ酸と過酸化水素とを混合して調製した溶液である。両者を混合すると、下記式(2)に示す通り、過ギ酸溶液を得ることができる。
表面改質層13の厚さTは特に限定されないが、好ましい上限は50μmである。
表面改質層13の厚さTが50μmを超えると、弾性部材12におけるリップ先端付近の硬さが硬くなりすぎて、使用時に相手部材に対する追従性が低下し、密封性能が不充分になることがある。
一方、表面改質層13の厚さTの下限は、上記Rzより大きいことが好ましい。
表面改質層13の厚さTが上記Rz以下の場合には、耐摩耗性に劣るため微小な凹凸が消失しやすく、上記リップ先端の表面を粗面にして達成した低トルク状態を長期間に亘って維持することが困難な場合がある。
本発明において、表面改質層13の厚さTとは、表面改質層13とその内側の内層部分112との境界から、表面改質層13の表面における上記Rzを算出する際の基準線までの距離をいう。
表面改質層13の厚さTが50μmを超えると、弾性部材12におけるリップ先端付近の硬さが硬くなりすぎて、使用時に相手部材に対する追従性が低下し、密封性能が不充分になることがある。
一方、表面改質層13の厚さTの下限は、上記Rzより大きいことが好ましい。
表面改質層13の厚さTが上記Rz以下の場合には、耐摩耗性に劣るため微小な凹凸が消失しやすく、上記リップ先端の表面を粗面にして達成した低トルク状態を長期間に亘って維持することが困難な場合がある。
本発明において、表面改質層13の厚さTとは、表面改質層13とその内側の内層部分112との境界から、表面改質層13の表面における上記Rzを算出する際の基準線までの距離をいう。
表面改質層13の厚さTは、過ギ酸溶液との接触時間や、過ギ酸溶液におけるギ酸と過酸化水素とのモル比等によって調整することができる。
なお、上記表面改質層を形成する場合には、酢酸と過酸化水素との混合液など、過ギ酸溶液以外の過酸溶液を用いても良い。
なお、上記表面改質層を形成する場合には、酢酸と過酸化水素との混合液など、過ギ酸溶液以外の過酸溶液を用いても良い。
上記ゴム組成物は、上記ゴム以外に、必要に応じて、例えば、充填剤、老化防止剤、補強剤、可塑剤、カップリング剤、加工助剤、導電性付与剤、摩耗改良剤などの添加剤を本発明の目的が阻害されない範囲内で、適量を含有していても良い。
本発明の実施形態に係る密封部材は、例えば、下記の工程(1)〜(4)を経る方法で製造することができる。
(1)未加硫ゴム、架橋剤、更には必要に応じて配合する充填剤などの任意成分を均一な組成となるように混練して、原料組成物を調製する。
(1)未加硫ゴム、架橋剤、更には必要に応じて配合する充填剤などの任意成分を均一な組成となるように混練して、原料組成物を調製する。
(2)上記工程(1)とは別に、密封部材の形状に対応した形状を有する成形金型を用意し、この成型金型の内壁面のうち、弾性部材において微小な凹凸(粗面)を形成する部分に相当する壁面をショット加工等によって粗化面とする。ここで、成型金型の内壁面に設けた粗化面の粗さに関する寸法は、上記弾性部材に設ける粗面の上記Rzを考慮して適宜選択すれば良い。
(3)上記工程(2)で用意した成形金型内に金属環を設置し、その後、上記工程(1)で調製した原料組成物を充填し、加硫圧縮成形することによって、金属環とこの金属環に固定された弾性部材とを一体成形する。
(3)上記工程(2)で用意した成形金型内に金属環を設置し、その後、上記工程(1)で調製した原料組成物を充填し、加硫圧縮成形することによって、金属環とこの金属環に固定された弾性部材とを一体成形する。
(4)その後、上記工程(3)で成形した弾性部材を過ギ酸溶液等の過酸溶液(以下、エポキシ化処理液ともいう)と接触させることにより、弾性部材の表面の一部に、上記表面改質層を形成する。
図4は、表面改質層を形成する方法を説明するための断面図である。
本工程(4)では、例えば、図4に示すように、未処理の密封部材110を容器(図示せず)内に載置し、弾性部材のリップ部付近のみがエポキシ化処理液21と接触するように、供給ノズル22を介してエポキシ化処理液21を供給する。
また、本工程(4)では、エポキシ化処理液21と接触した後の弾性部材に必要に応じて加熱処理を施しても良い。
このような工程を経ることにより、本発明の実施形態に係る密封部材を製造することができる。
図4は、表面改質層を形成する方法を説明するための断面図である。
本工程(4)では、例えば、図4に示すように、未処理の密封部材110を容器(図示せず)内に載置し、弾性部材のリップ部付近のみがエポキシ化処理液21と接触するように、供給ノズル22を介してエポキシ化処理液21を供給する。
また、本工程(4)では、エポキシ化処理液21と接触した後の弾性部材に必要に応じて加熱処理を施しても良い。
このような工程を経ることにより、本発明の実施形態に係る密封部材を製造することができる。
本発明の実施形態に係る密封部材は、軸受シールに限定されず、弾性部材のリップ先端が相手部材のリップ当たり面と摺接して所定の領域を密封するものであれば良い。従って、上記密封部材は、接触シール全般において使用することができる。
また、上記密封部材は、グリース等の潤滑剤の存在下で使用するものであることが好ましいが、潤滑剤の非存在下で使用するものであっても良い。
また、上記密封部材は、グリース等の潤滑剤の存在下で使用するものであることが好ましいが、潤滑剤の非存在下で使用するものであっても良い。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、図1に示した形状の密封部材10を作成した。
(1)成型金型の内壁面であって、弾性部材12のリップ部12cの内周面を成形する領域の壁面にショット加工を施して粗化面を形成した。
ここで、上記成型金型に形成した粗化面の粗さは、後述する工程を経て弾性部材のリップ部を成形した際に、金型内壁の粗化面が転写されることによって設けられた上記リップ部の粗面のRzが約14μmとなるように設定した。なお、上記リップ部の粗面のRzは、成形後、レーザ顕微鏡を用いた計測によって確認した。
本実施例では、図1に示した形状の密封部材10を作成した。
(1)成型金型の内壁面であって、弾性部材12のリップ部12cの内周面を成形する領域の壁面にショット加工を施して粗化面を形成した。
ここで、上記成型金型に形成した粗化面の粗さは、後述する工程を経て弾性部材のリップ部を成形した際に、金型内壁の粗化面が転写されることによって設けられた上記リップ部の粗面のRzが約14μmとなるように設定した。なお、上記リップ部の粗面のRzは、成形後、レーザ顕微鏡を用いた計測によって確認した。
(2)未加硫のNBR、加硫剤(硫黄)及びカーボンブラックを含有する原料組成物を、図1に示した金属環11とともに上記工程(1)で用意した成形金型内で加熱しながら加硫圧縮成形し、図1に示した外観形状を有する密封部材(エポキシ処理前)を作製した。
(3)次に、上記工程(2)で作製した密封部材のリップ先端周辺を、液温25℃のエポキシ化処理液と30分間接触させた(図4参照)。その後、80℃×60minの加熱処理を行い、リップ先端の表面を含むリップ部の表面に表面改質層を形成した。
本工程で使用したエポキシ化処理液は、ギ酸(88wt%水溶液)と過酸化水素水(35wt%水溶液)と純水とを、重量比で、ギ酸:過酸化水素水:純水=30:65:5とになるように混合した溶液である。
また、上記の条件で表面改質層を形成した場合、上記表面改質層の厚さは40〜50μmとなる。このことは、上記の条件と同条件で作製した表面改質層を備えたゴム片の断面観察によって確認している。
このような工程(1)〜(3)を経て密封部材を作製した。
本工程で使用したエポキシ化処理液は、ギ酸(88wt%水溶液)と過酸化水素水(35wt%水溶液)と純水とを、重量比で、ギ酸:過酸化水素水:純水=30:65:5とになるように混合した溶液である。
また、上記の条件で表面改質層を形成した場合、上記表面改質層の厚さは40〜50μmとなる。このことは、上記の条件と同条件で作製した表面改質層を備えたゴム片の断面観察によって確認している。
このような工程(1)〜(3)を経て密封部材を作製した。
また、上記工程(3)のエポキシ化処理によって上記表面改質層が形成されていることは、上記工程(2)で作製したエポキシ化処理前の密封部材のリップ部、及び、上記工程(3)を経たエポキシ化処理後の密封部材のリップ部のそれぞれに相当するIR測定用サンプルを作製し、このサンプルに含まれる官能基をIR(赤外分光法)によって検出し、確認した。
ここで、IR測定用サンプルは、カーボンブラックを配合しなかった以外は上記工程(2)で調製した原料組成物と同じ組成の組成物を調製した後、上記工程(2)及び工程(3)と同条件で処理することによって作製した。また、IR測定は、IR測定用サンプルをクライオミクロトームで薄片化した後、顕微鏡透過法によって行った。
図5(a)はエポキシ化処理前の密封部材に相当するサンプルのIR測定結果であり、(b)はエポキシ化処理後の密封部材に相当するサンプルのIR測定結果である。
図5(a)、(b)に示したように、上記エポキシ化処理を施すことによって、ゴムにカルボニル基(1600cm−1付近)及びヒドロキシル基(3200〜3400cm−1付近)が導入された表面改質層が形成されていることが確認できた。
ここで、IR測定用サンプルは、カーボンブラックを配合しなかった以外は上記工程(2)で調製した原料組成物と同じ組成の組成物を調製した後、上記工程(2)及び工程(3)と同条件で処理することによって作製した。また、IR測定は、IR測定用サンプルをクライオミクロトームで薄片化した後、顕微鏡透過法によって行った。
図5(a)はエポキシ化処理前の密封部材に相当するサンプルのIR測定結果であり、(b)はエポキシ化処理後の密封部材に相当するサンプルのIR測定結果である。
図5(a)、(b)に示したように、上記エポキシ化処理を施すことによって、ゴムにカルボニル基(1600cm−1付近)及びヒドロキシル基(3200〜3400cm−1付近)が導入された表面改質層が形成されていることが確認できた。
(比較例1)
下記(a)及び(b)の点を変更した以外は実施例1と同様にして、密封部材を作製した。
(a)実施例1の工程(1)は行わず、金型としては内壁面の平滑な金型を使用した。
(b)実施例1の工程(3)は行なわなかった。
従って、比較例1で作製した密封部材は、リップ先端の表面が平滑であり、かつリップ先端に表面改質層が設けられていない。
下記(a)及び(b)の点を変更した以外は実施例1と同様にして、密封部材を作製した。
(a)実施例1の工程(1)は行わず、金型としては内壁面の平滑な金型を使用した。
(b)実施例1の工程(3)は行なわなかった。
従って、比較例1で作製した密封部材は、リップ先端の表面が平滑であり、かつリップ先端に表面改質層が設けられていない。
(比較例2)
下記(a)の点を変更した以外は実施例1と同様にして、密封部材を作製した。
(a)実施例1の工程(1)は行わず、金型としては内壁面の平滑な金型を使用した。
従って、比較例2で作製した密封部材は、リップ先端の表面が平滑であり、かつリップ先端には表面改質層が形成されている。
下記(a)の点を変更した以外は実施例1と同様にして、密封部材を作製した。
(a)実施例1の工程(1)は行わず、金型としては内壁面の平滑な金型を使用した。
従って、比較例2で作製した密封部材は、リップ先端の表面が平滑であり、かつリップ先端には表面改質層が形成されている。
(比較例3)
下記(b)の点を変更した以外は実施例1と同様にして、密封部材を作製した。
(b)実施例1の工程(3)は行なわなかった。
従って、比較例3で作製した密封部材は、リップ先端の表面に設けられた粗面のRzが約14μmであり、かつリップ先端に表面改質層が設けられていない。
下記(b)の点を変更した以外は実施例1と同様にして、密封部材を作製した。
(b)実施例1の工程(3)は行なわなかった。
従って、比較例3で作製した密封部材は、リップ先端の表面に設けられた粗面のRzが約14μmであり、かつリップ先端に表面改質層が設けられていない。
(密封部材の摩耗試験)
実施例1及び比較例1〜3で作製した密封部材を、深溝玉軸受(型番:6302)に装着し、回転速度8000min−1で200時間駆動した。200時間経過後、試験品及び新品(未試験品)のリップ先端の断面形状を比較し、摩耗面積に基づいて試験品の摩耗量(mg)を算出した。
結果を図6に示した。図6は、実施例及び比較例で作製した密封部材の摩耗試験の結果を示すグラフである。
また、図7には、摩耗試験後の密封部材におけるリップ先端の顕微鏡観察画像を示した。
図7(a)は比較例3で作製した密封部材の摩耗試験後の観察画像であり、(b)は実施例1で作製した密封部材の摩耗試験後の観察画像である。
実施例1及び比較例1〜3で作製した密封部材を、深溝玉軸受(型番:6302)に装着し、回転速度8000min−1で200時間駆動した。200時間経過後、試験品及び新品(未試験品)のリップ先端の断面形状を比較し、摩耗面積に基づいて試験品の摩耗量(mg)を算出した。
結果を図6に示した。図6は、実施例及び比較例で作製した密封部材の摩耗試験の結果を示すグラフである。
また、図7には、摩耗試験後の密封部材におけるリップ先端の顕微鏡観察画像を示した。
図7(a)は比較例3で作製した密封部材の摩耗試験後の観察画像であり、(b)は実施例1で作製した密封部材の摩耗試験後の観察画像である。
(密封部材のトルク試験)
実施例1及び比較例1〜3で作製した密封部材について、新品(未試験品)、及び、上述した摩耗試験において200時間使用した後の試験品のそれぞれを対象に、下記の手法にて軸受シールとしてのトルクを測定した。
結果を図8に示した。図8は、実施例及び比較例で作製した密封部材のトルク試験の結果を示すグラフである。
[試験方法]
密封部材を深溝玉軸受(型番:6302)に装着し、回転速度1800min−1(密封部材のリップ先端の周速2.4m/s)、温度は室温(自然昇温)の条件で駆動した。ここで、上記密封部材は、リップ部の周辺にウレア系グリースを塗布して深溝玉軸受に装着した。
本試験では、深溝玉軸受を10分間駆動させて密封部材の挙動が安定した状態でトルクを測定した。
上記軸受シールとしてのトルクの算出は、密封部材を装着した状態で測定した上記軸受のトルクから、上記密封部材を取り外して測定した上記軸受のトルクを差し引くことにより行った。
図8に示したように、実施例1で作製した密封部材は、初期状態から低トルクで駆動し、その状態を長期間に亘って維持することできることが明らかとなった。
実施例1及び比較例1〜3で作製した密封部材について、新品(未試験品)、及び、上述した摩耗試験において200時間使用した後の試験品のそれぞれを対象に、下記の手法にて軸受シールとしてのトルクを測定した。
結果を図8に示した。図8は、実施例及び比較例で作製した密封部材のトルク試験の結果を示すグラフである。
[試験方法]
密封部材を深溝玉軸受(型番:6302)に装着し、回転速度1800min−1(密封部材のリップ先端の周速2.4m/s)、温度は室温(自然昇温)の条件で駆動した。ここで、上記密封部材は、リップ部の周辺にウレア系グリースを塗布して深溝玉軸受に装着した。
本試験では、深溝玉軸受を10分間駆動させて密封部材の挙動が安定した状態でトルクを測定した。
上記軸受シールとしてのトルクの算出は、密封部材を装着した状態で測定した上記軸受のトルクから、上記密封部材を取り外して測定した上記軸受のトルクを差し引くことにより行った。
図8に示したように、実施例1で作製した密封部材は、初期状態から低トルクで駆動し、その状態を長期間に亘って維持することできることが明らかとなった。
また、実施例及び比較例の評価結果から、本発明の実施形態に係る密封部材は、平滑な表面を有するリップ先端に表面改質層を形成した密封部材(比較例2)と比べて、リップ先端が顕著に摩耗しにくく、達成された低トルク状態を長期間に亘って維持するのに特に適していることが明らかとなった。
ここで、本発明の実施形態に係る密封部材のリップ先端が顕著に摩耗しにくい理由については、下記のように考えている。
ここで、本発明の実施形態に係る密封部材のリップ先端が顕著に摩耗しにくい理由については、下記のように考えている。
上記密封部材において、弾性部材のリップ先端と相手部材のリップ当たり面との間にグリース等の潤滑剤が供給され、油膜が形成された場合、この部分の潤滑状態は「ストライベック曲線」における混合潤滑領域と想定される。
ここで、比較例2のようにリップ先端の表面に表面改質層が設けられているものの、当該表面が平滑である場合には、上記油膜の厚さが薄いため、リップ先端と相手部材のリップ当たり面との真実接触部が上記リップ先端の表面が粗面である場合に比べて多くなる。
そのため、この場合には、摺動発熱が大きくなって表面粘着性が増加することになる。従って、比較例2のような密封部材では、表面改質層を設けることによって表面粘着性の増加をある程度は抑制することができるものの、その効果は上記リップ先端の表面が粗面である場合に比べて乏しく、使用時におけるリップ先端の摩耗量は大きくなってしまうと考えられる。
ここで、比較例2のようにリップ先端の表面に表面改質層が設けられているものの、当該表面が平滑である場合には、上記油膜の厚さが薄いため、リップ先端と相手部材のリップ当たり面との真実接触部が上記リップ先端の表面が粗面である場合に比べて多くなる。
そのため、この場合には、摺動発熱が大きくなって表面粘着性が増加することになる。従って、比較例2のような密封部材では、表面改質層を設けることによって表面粘着性の増加をある程度は抑制することができるものの、その効果は上記リップ先端の表面が粗面である場合に比べて乏しく、使用時におけるリップ先端の摩耗量は大きくなってしまうと考えられる。
一方、実施例1のようにリップ先端の表面が粗面であり、当該表面に表面改質層が設けられている場合には、粗面を構成する微小な凹凸による動圧効果で上記油膜の厚さが増大し、それに伴ってリップ先端と相手部材のリップ当たり面との真実接触部は少なくなる。
そのため、この場合には、摺動発熱が小さくなり、表面粘着性の増大を著しく抑制することができる。その結果、使用時におけるリップ先端の摩耗量を予想外に小さくすることができていると考えている。
そのため、この場合には、摺動発熱が小さくなり、表面粘着性の増大を著しく抑制することができる。その結果、使用時におけるリップ先端の摩耗量を予想外に小さくすることができていると考えている。
2:外輪、3:内輪、4:転動体、5:保持器5、10:密封部材、11:金属環、12:弾性部材、12c:リップ部、13:表面改質層、14:リップ先端、21:エポキシ化処理液
Claims (4)
- 相手部材のリップ当たり面と摺接するリップ先端を有する弾性部材を備えた密封部材であって、
前記リップ先端の表面は粗面であり、
前記弾性部材はゴムを含有するゴム組成物からなり、
前記弾性部材の少なくとも前記リップ先端の表層には、カルボニル基及び/又はヒドロキシル基を有する表面改質層が設けられていることを特徴とする密封部材。 - 前記粗面のRzは、3〜20μmである請求項1に記載の密封部材。
- 前記表面改質層の厚さは、前記粗面のRzより大きく、50μm以下である請求項1又は2に記載の密封部材。
- 前記ゴムは、ジエン系ゴム、又は、EPDMである請求項1〜3のいずれかに記載の密封部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018076067A JP2019183975A (ja) | 2018-04-11 | 2018-04-11 | 密封部材 |
Applications Claiming Priority (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7469065B2 (ja) | 2020-02-18 | 2024-04-16 | 株式会社ジェイテクトシーリングテクノ | 密封装置及び密封構造 |
-
2018
- 2018-04-11 JP JP2018076067A patent/JP2019183975A/ja active Pending
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