以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本実施の形態におけるエンジン1の概略構成を示す図である。本実施の形態において、エンジン1は、たとえば、コモンレール式のディーゼルエンジンを一例として説明する。エンジン1は、たとえば、車両の駆動源として搭載される。
エンジン1は、エンジン本体10と、エアクリーナ20と、インタークーラ26と、吸気マニホールド28と、過給機30と、排気マニホールド50と、排気処理装置56と、排気再循環装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置と記載する)60と、制御装置200と、エンジン回転数センサ202と、エアフローメータ208と、燃料ポンプ210と、燃料フィルタ212と、燃料タンク214とを備える。
エンジン本体10は、複数の気筒12と、コモンレール14と、複数のインジェクタ16とを含む。本実施の形態においては、エンジン1は、直列4気筒エンジンを一例として説明するが、その他の気筒レイアウト(たとえば、V型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。
複数のインジェクタ16は、複数の気筒12の各々に設けられ、その各々がコモンレール14に接続されている燃料噴射装置である。燃料タンク214に貯留された燃料は、燃料フィルタ212を経由して燃料ポンプ210によって所定圧まで加圧されてコモンレール14へ供給される。コモンレール14に供給された燃料は複数のインジェクタ16の各々から所定のタイミングで噴射される。複数のインジェクタ16は、制御装置200からの制御信号IJ1〜IJ4に基づいて動作する。
エアクリーナ20は、エンジン1の外部から吸入される空気から異物を除去する。エアクリーナ20には、第1吸気管22の一方端が接続される。
第1吸気管22の他方端には、過給機30のコンプレッサ32の吸気流入口に接続される。コンプレッサ32の吸気流出口には、第2吸気管24の一方端が接続される。コンプレッサ32は、第1吸気管22から流通する空気を過給して第2吸気管24に供給する。コンプレッサ32の詳細な動作については後述する。
第2吸気管24の他方端には、インタークーラ26の一方端が接続される。インタークーラ26は、第2吸気管24を流通する空気を冷却する空冷式あるいは水冷式の熱交換器である。
インタークーラ26の他方端には、第3吸気管27の一方端が接続される。第3吸気管27の他方端には、吸気マニホールド28が接続される。吸気マニホールド28は、エンジン本体10の複数の気筒12の各々の吸気ポートに連結される。なお、吸気マニホールド28の上流には、たとえば、排気マニホールド50からEGR装置60を経由して還流する排気(以下、吸気通路に還流される排気をEGRガスとも記載する)を吸気マニホールドに流通させるための吸気絞り弁が設けられていてもよい。
排気マニホールド50は、エンジン本体10の複数の気筒12の各々の排気ポートに連結される。排気マニホールド50には、第1排気管52の一方端が接続される。第1排気管52の他方端は、過給機30のタービン36に接続される。そのため、各気筒の排気ポートから排出される排気は、排気マニホールド50に集められた後、第1排気管52を経由してタービン36に供給される。
タービン36には、第2排気管54の一方端が接続される。第2排気管54の他方端は、排気処理装置56の入口部分に接続される。排気処理装置56は、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)56aと、PM除去フィルタ56bと、燃料添加装置56cと、第1排気温度センサ70と、第2排気温度センサ72と、第3排気温度センサ74とを含む。
PM除去フィルタ56bは、酸化触媒56aよりも排気の流路(排気通路)における下流側に設けられる。燃料添加装置56cは、酸化触媒56aよりも排気の流路における上流側に設けられる。第1排気温度センサ70は、タービン36と、酸化触媒56aとの間の排気の流路に設けられる。第2排気温度センサ72は、酸化触媒56aとPM除去フィルタ56bとの間の排気の流路に設けられる。第3排気温度センサ74は、PM除去フィルタよりも排気の流路における下流側に設けられる。
PM除去フィルタ56bは、流通する排気に含まれる粒子状物質(以下、PM(Particulate Matter)と記載する。)を捕集する。PM除去フィルタ56bは、たとえば、セラミックやステンレス等によって形成される。捕集されたPMは、PM除去フィルタ56b内に堆積する。
酸化触媒56aと燃料添加装置56cとは、PM除去フィルタ56bに堆積したPMを燃焼させ、除去する(再生する)再生機構として機能する。酸化触媒56aは、排気が流通する場合に、流通する排気中の窒素酸化物(NOx)および炭素酸化物(COx)などを酸化するとともに、排気中に燃料添加装置56cから添加された燃料が含まれる場合には燃料を酸化する。燃料の酸化によって生じる反応熱により酸化触媒56aを通過する排気の温度が上昇する。高温の排気がPM除去フィルタ56bを通過することによってPM除去フィルタ56bの温度が上昇し、PM除去フィルタ56b内に堆積したPMが酸化除去される(燃焼させられる)。これにより、PM除去フィルタ56bが再生される。
排気処理装置56の出口部分には、第3排気管58の一方端が接続される。第3排気管58の他方端には、触媒などの排気から特定の成分を除去する追加の排気処理装置やマフラー等が接続される。そのため、タービン36から排出された排気は、第2排気管54、排気処理装置56、第3排気管58、各種触媒およびマフラー等を経由して車外に排出される。
第3吸気管27と排気マニホールド50とは、エンジン本体10を経由せずにEGR装置60によって接続される。EGR装置60は、EGRバルブ62と、EGRクーラ64と、EGR通路66とを含む。EGR通路66は、第3吸気管27と排気マニホールド50とを接続する。EGRバルブ62と、EGRクーラ64とは、EGR通路66の途中に設けられる。
EGRバルブ62は、制御装置200からの制御信号に応じて、EGR通路66を流通するEGRガスの流量を調整する。EGRクーラ64は、たとえば、EGR通路66を流通するEGRガスを冷却する水冷式あるいは空冷式の熱交換器である。排気マニホールド50内の排気がEGR装置60を経由してEGRガスとして吸気側に戻されることによって気筒内の燃焼温度が低下され、NOxの生成量が低減される。
過給機30は、コンプレッサ32と、タービン36とを含む。コンプレッサ32のハウジング内にはコンプレッサホイール34が収納され、タービン36のハウジング内にはタービンホイール38が収納される。コンプレッサホイール34とタービンホイール38とは、連結軸42によって連結され、一体的に回転する。そのため、コンプレッサホイール34は、タービンホイール38に供給される排気の排気エネルギーによって回転駆動される。
エンジン1の動作は、制御装置200によって制御される。制御装置200は、各種処理を行なうCPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよびデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびCPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むメモリと、外部との情報のやり取りを行なうための入・出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。入力ポートには、上述したセンサ類(たとえば、第1排気温度センサ70、第2排気温度センサ72、第3排気温度センサ74、エンジン回転数センサ202、エアフローメータ208等)が接続される。出力ポートには、制御対象となる機器(たとえば、複数のインジェクタ16、燃料添加装置56cおよび燃料ポンプ210等)が接続される。
制御装置200は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン1が所望の運転状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。また、制御装置200には、時間の計測を行うためのタイマー回路(図示せず)が内蔵されている。
第1排気温度センサ70は、タービン36の排気流出口から流出する排気の温度(以下、排気温度Tex1と記載する)を検出する。第1排気温度センサ70は、検出した排気温度Tex1を示す信号を制御装置200に送信する。
第2排気温度センサ72は、酸化触媒56aから流出する排気の温度(以下、排気温度Tex2と記載する)を検出する。第2排気温度センサ72は、検出した排気温度Tex2を示す信号を制御装置200に送信する。
第3排気温度センサ74は、PM除去フィルタ56bから流出する排気の温度(以下、排気温度Tex3と記載する)を検出する。第3排気温度センサ74は、検出した排気温度Tex3を示す信号を制御装置200に送信する。
エンジン回転数センサ202は、エンジン1のクランクシャフトの回転数をエンジン回転数NEとして検出する。エンジン回転数センサ202は、検出したエンジン回転数NEを示す信号を制御装置200に送信する。
エアフローメータ208は、第1吸気管22に導入される新気の流量(吸入空気量)Qinを検出する。エアフローメータ208は、検出した吸入空気量Qinを示す信号を制御装置200に送信する。
燃料タンク214は、複数のインジェクタ16および燃料添加装置56cに供給するための燃料を貯留する。燃料ポンプ210は、制御装置200からの制御信号に応じて動作し、燃料タンク214に貯留される燃料をコモンレール14に圧送したり、燃料添加装置56cに供給したりする。燃料ポンプ210と燃料タンク214との間の燃料が流通する通路には燃料フィルタ212が設けられる。燃料フィルタ212は、流通する燃料に含まれる異物を捕集する。
以上のような構成を有するエンジン1においては、PM除去フィルタ56bにおけるPMの堆積量が多くなると、PM除去フィルタ56bのフィルタ部分が目詰まりを起こして機能が低下する場合がある。そのため、制御装置200は、PM除去フィルタ56bを再生するための再生処理を実行する。
より具体的には、制御装置200は、PM除去フィルタ56b内のPMの堆積量を取得する。制御装置200は、たとえば、所定の制御周期(たとえば、数秒)におけるエンジン1の運転条件(たとえば、エンジン回転数NEの平均値や燃料噴射量の指令値の平均値)から複数の気筒12からの所定の制御周期におけるPMの排出量の推定値を算出する。制御装置200は、算出された推定値を積算することによってPM堆積量を取得する。制御装置200は、取得したPM堆積量が再生判定値を超えると再生処理を実行する。
制御装置200は、再生処理の実行とともに、燃料添加装置56cから燃料添加を開始する。制御装置200は、たとえば、排気温度Tex2を、目標温度に昇温するための燃料添加量の指令値を設定し、設定された指令値に従って燃料添加装置56cを制御する。ここで、排気の目標温度は、PM除去フィルタ56bの温度をPM除去フィルタ56bの再生が可能な温度まで昇温することができる排気温度として設定される。
上述のような再生処理により、排気処理装置56では、燃料添加装置56cから排気に燃料が添加され、添加された燃料が酸化触媒56aで反応し、その反応熱によって排気が昇温する。そして、高温となった排気がPM除去フィルタ56bに流れることによって、PM除去フィルタ56bの温度が、PM除去フィルタ56bの再生が可能な温度範囲内の温度まで昇温し、PM除去フィルタ56b内のPMが燃焼される。制御装置200は、PM除去フィルタ56bの温度がPM除去フィルタ56bの再生が可能な温度範囲内の温度になった状態の経過時間をカウントし、カウントした経過時間の合計が所定の再生終了時間を超えた場合に、PM除去フィルタ56bの再生が完了したと判定する。
上述のような構成を有する排気処理装置56においては、制御装置200は、PM除去フィルタ56bに捕集されたPM堆積量が再生判定値よりも大きい場合、PM除去フィルタ56bに流入する排気の温度を目標温度に昇温するための燃料添加量の指令値を設定し、設定された指令値に基づいて燃料添加装置56cを制御する。
このとき、過剰な燃料添加量が指令値として設定されると、燃料添加装置56cから添加された燃料の一部が未燃状態となり白煙として排出されることになる。そのため、制御装置200は、白煙が排出されないように燃料添加量を調整する。
しかしながら、酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの昇温開始時における酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの温度分布と、酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの温度安定時における酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの温度分布とを比較した場合に温度勾配が異なる。
図2は、昇温開始時における酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの温度分布を示す図である。図2の上段においては、酸化触媒56aと、PM除去フィルタ56bとの位置関係と、第1排気温度センサ70、第2排気温度センサ72および第3排気温度センサ74による排気温度Tex1,Tex2,Tex3の検出位置が示される。図2の下段においては、上段の酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの排気の流通方向の位置に対する昇温開始時の温度の分布が示される。
図3は、温度安定時における酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの温度分布を示す図である。図3の上段においては、図2の上段の構成と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。図3の下段においては、上段の酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの排気の流通方向の位置に対する温度安定時の温度の分布が示される。
図2の下段の温度分布に示すように、昇温開始時においては、添加された燃料が酸化触媒56aにおいて酸化し、その反応熱によって温度が上昇する。これに対してPM除去フィルタ56bは、酸化触媒56aの昇温によって昇温された排気によって昇温することになるため、昇温開始時においては温度が低い状態が維持される。
これに対して、昇温が継続されて温度安定状態になると、図3の下段の温度分布に示すように、温度安定時においては、酸化触媒56aにおいて昇温された排気がPM除去フィルタ56bに流入し、PM除去フィルタ56bの温度が上昇する。さらに、PM除去フィルタ56bの温度が上昇することによって、適量の燃料が添加されている場合には、PM除去フィルタ56bにおいても添加された燃料を燃焼させることができる。この場合、PM除去フィルタ56bの温度は、酸化触媒56aよりも高くなり、かつ、PM除去フィルタ56bの後端に近づくほど温度が高くなる。
このように、昇温開始時と温度安定時とで温度勾配が異なる。そのため、たとえば、PM除去フィルタ56bに流入する排気の温度を用いて酸化触媒56aやPM除去フィルタ56bの温度を推定する場合には、PM除去フィルタ56bの温度勾配の変化を精度高く推定することができない。その結果、白煙が排出されないようにマージンを大きくとって燃料添加量を制限することになるため、適量の燃料を添加することができず、PM除去フィルタ56bを速やかに昇温させることができない場合がある。
そこで、本実施の形態においては、制御装置200は、以下のように動作するものとする。すなわち、制御装置200は、酸化触媒56aを排気の流通方向に複数の部分に区分けして、酸化触媒56aの部分の温度と排気流量とに基づいて燃料添加量の第1上限値を酸化触媒56aの部分毎に算出する。さらに、制御装置200は、PM除去フィルタ56bを排気の流通方向に複数の部分に区分けして、PM除去フィルタ56bの部分の温度と排気流量とに基づいて燃料添加量の第2上限値をPM除去フィルタ56bの部分毎に算出する。そして、制御装置200は、第1上限値の総和と第2上限値の総和との和を指令値の上限値として設定する。
このようにすると、燃料噴射量の指令値の上限値を精度高くすることができるため、燃料を過不足なく添加することができる。そのため、添加した燃料の一部が未燃状態となることを抑制して、白煙の排出を抑制することができるとともに、酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bを適切に昇温させることができる。
以下、図4を参照して、本実施の形態における制御装置200で実行される制御処理について説明する。図4は、制御装置200で実行される制御処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期(たとえば、数秒)毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御装置200は、PM堆積量を算出する。制御装置200は、たとえば、前回算出されたPM堆積量の前回値に所定の制御周期におけるPM排出量を加算することによってPM堆積量の今回値を算出する。制御装置200は、エンジン回転数と燃料噴射量と所定のマップとを用いて所定の制御周期におけるPM排出量を算出する。
S102にて、制御装置200は、算出されたPM堆積量が再生判定値よりも大きいか否かを判定する。PM堆積量が再生判定値よりも大きいと判定される場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。
S104にて、制御装置200は、ベース燃料添加量を算出する。具体的には、制御装置200は、目標温度、排気温度Tex1、排気流量に基づきベース燃料添加量を算出する。
制御装置200は、エンジン回転数センサ202からエンジン回転数NEを取得する。制御装置200は、たとえば、エンジン回転数NEの他に、アクセル操作量、冷却水温度、吸入空気量Qin、吸気温度等の運転状態に応じて燃料噴射量マップ等を用いて燃料噴射量を決定する。ベース添加燃料量は、酸化触媒56aに流入する排気温度が所定温度であって、かつ、排気流量が所定流量である場合を想定したときに排気温度を目標温度に上昇するために必要となる予め定められた燃料添加量である。
S106にて、制御装置200は、排気温度Tex2が目標温度であるか否かを判定する。制御装置200は、第2排気温度センサ72から排気温度Tex2を取得する。排気温度Tex2が目標温度であると判定される場合(S106にてYES)、処理はS110に移される。一方、排気温度Tex2が目標温度でないと判定される場合(S106にてNO)、処理はS108に移される。
S108にて、制御装置200は、目標温度が排気温度Tex2よりも大きいか否かを判定する。目標温度が排気温度Tex2よりも大きいと判定される場合(S108にてYES)、処理はS112に移される。
S110にて、制御装置200は、前回の計算における燃料添加量の補正量を今回の計算における燃料添加量の補正量として設定する。S112にて、制御装置200は、前回の計算における燃料添加量の補正量に変化分αを加算した値を今回の計算における燃料添加量の補正量として設定する。S114にて、制御装置200は、前回の計算における燃料添加量の補正量に変化分αを減算した値を今回の計算における燃料添加量の補正量として設定する。
S116にて、制御装置200は、ベース燃料添加量に今回の計算における燃料添加量の補正量を加算して要求燃料添加量を算出する。
S118にて、制御装置200は、各部の燃料添加量の部分上限値を算出する。具体的には、制御装置200は、酸化触媒56aを排気の流通方向に複数の部分に区分けして、酸化触媒56aの部分の温度と排気流量とに基づいて燃料添加量の第1部分上限値を酸化触媒56aの部分毎に算出する。さらに、制御装置200は、PM除去フィルタ56bを排気の流通方向に複数の部分に区分けして、PM除去フィルタ56bの部分の温度と排気流量とに基づいて燃料添加量の第2部分上限値をPM除去フィルタ56bの部分毎に算出する。
図5は、酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bにおける区分けされた部分を説明するための図である。図5に示すように、本実施の形態においては、制御装置200は、酸化触媒56aを排気の流通方向に3つの部分C1〜C3に区分けし、区分けした部分毎の温度を推定する。制御装置200は、たとえば、排気温度Tex2と排気流量と所定のマップ等を用いて温度分布(たとえば、排気温度Tex2との温度差の分布)を推定し、推定された温度分布に時間遅れ等を考慮して3つの部分C1〜C3の各々の温度を推定する。なお、温度分布の推定には、排気温度Tex2および排気流量に加えて排気温度Tex1を用いてもよい。
制御装置200は、酸化触媒56aにおいて、区分けした部分毎の温度の推定値と排気流量とを用いて部分毎の燃料添加量の第1部分上限値を算出する。燃料添加量の第1部分上限値とは、酸化触媒56aの区分けした部分における白煙が排出されない単位時間当たりの燃料添加量の範囲のうちの上限値を示す。制御装置200は、たとえば、酸化触媒56aにおける温度と排気流量と第1部分上限値との関係を示すマップを用いて区分けした部分毎の第1部分上限値を算出する。温度と排気流量と第1部分上限値との関係を示すマップは、たとえば、実験等によって適合され予め作成されて、制御装置200のメモリに記憶される。なお、制御装置200は、たとえば、吸入空気量Qinに基づいて排気流量を推定する。また、第1部分上限値の算出に用いられるマップとしては、酸化触媒56aの各部分において共通のマップが用いられてもよいし、位置に応じて個別に設定されたマップが用いられてもよい。
さらに、本実施の形態においては、制御装置200は、PM除去フィルタ56bを排気の流通方向に4つの部分D1〜D4に区分けし、区分けした部分毎の温度を推定する。制御装置200は、たとえば、排気温度Tex3と排気流量と所定のマップ等を用いて温度分布(たとえば、排気温度Tex3との温度差の分布)を推定し、推定された温度分布に時間遅れ等を考慮して4つの部分D1〜D4の各々の温度を推定する。なお、温度分布の推定には、排気温度Tex3および排気流量に加えて排気温度Tex2を用いてもよい。
制御装置200は、PM除去フィルタ56bにおいて、区分けした部分毎の温度の推定値と排気流量とを用いて部分毎の燃料添加量の第2部分上限値を算出する。燃料添加量の第2部分上限値とは、PM除去フィルタ56bの区分けした部分における白煙が排出されない単位時間当たりの燃料添加量の範囲のうちの上限値を示す。制御装置200は、たとえば、PM除去フィルタ56bにおける温度と排気流量と第2部分上限値との関係を示すマップを用いて区分けした部分毎の第2部分上限値を算出する。温度と排気流量と第2部分上限値との関係を示すマップは、たとえば、実験等によって適合され予め作成されて、制御装置200のメモリに記憶される。また、第2部分上限値の算出に用いられるマップとしては、PM除去フィルタ56bの各部分において共通のマップが用いられてもよいし、位置に応じて個別に設定されたマップが用いられてもよい。
S120にて、制御装置200は、第1部分上限値の総和と、第2部分上限値の総和との和を単位時間当たりの燃料添加量の指令値の上限値として設定する。
S122にて、制御装置200は、単位時間当たりの燃料添加量の指令値を設定する。制御装置200は、要求燃料添加量と燃料添加量の指令値の上限値とのうちのいずれか少ない方を燃料添加量の指令値として設定する。
S124にて、制御装置200は、燃料添加制御を実行する。制御装置200は、たとえば、エンジン1のクランクシャフトの回転角が1サイクル中の所定のクランク角になる場合に、設定された指令値に基づいて燃料添加制御を実行する。所定のクランク角とは、たとえば、特定の気筒が特定の行程(たとえば、排気行程)となるクランク角であってもよい。
以上のような構造およびフローチャートに基づく制御装置200の動作について図6〜図9を参照しつつ説明する。
たとえば、PM堆積量が再生判定値を超える場合を想定する。エンジン1の作動時においては、エンジン回転数NEおよび燃料噴射量を用いてPM堆積量が算出され(S100)、算出されたPM堆積量が再生判定を超えると判定される場合(S102にてYES)、ベース燃料添加量が算出され(S104)、排気温度Tex2が目標温度でなく(S106にてNO)、目標温度よりも低い場合には(S108にてYES)、前回の計算における補正量に変化分αを加算した値が今回の計算における補正量として設定され(S112)、ベース燃料添加量に今回の計算における補正量が加算された値が要求燃料添加量として設定される(S116)。
酸化触媒56aの区分けされた各部分の燃料添加量の第1部分上限値およびPM除去フィルタ56bの区分けされた各部分の燃料添加量の第2部分上限値が算出され(S118)、算出された第1部分上限値の総和と第2部分上限値の総和との和が燃料添加量の指令値の上限値として設定される(S120)。
要求燃料添加量と燃料添加量の指令値の上限値とのうちのいずれか小さい方が燃料添加量の指令値として設定され(S122)、燃料添加制御が実行される(S124)。
<昇温開始時の燃料添加制御について>
図6は、昇温開始時の酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの各部分の温度分布を示す図である。図6の上段においては、区分けされた部分を有する酸化触媒56aと、区分けされた部分を有するPM除去フィルタ56bの位置関係と、第1排気温度センサ70、第2排気温度センサ72および第3排気温度センサ74による排気温度Tex1,Tex2,Tex3の検出位置が示される。図6の下段においては、上端の酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの排気の流通方向の位置C1〜C3,D1〜D4における昇温開始時の温度分布が示される。
図6に示すように、昇温開始時においては、酸化触媒56aの部分C1〜C3においては、添加された燃料の反応熱によって温度が上昇しており、特に部分C1が最も温度が高い状態となる。これに対して、燃料の反応熱が酸化触媒56aの温度上昇に用いられることから、PM除去フィルタ56bの部分D1〜D4において、温度が低い状態が維持されることとなる。
図7は、昇温開始時の酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの各部分の部分上限値分布を示す図である。図7には、酸化触媒56aの各部分C1〜C3における燃料添加量の第1部分上限値、PM除去フィルタ56bの各部分D1〜D4における燃料添加量の第2部分上限値、排気温度Tex2に基づいて設定される燃料添加量、および、排気温度Tex2に基づいて設定される燃料添加量の上限値と部分上限値の総和と要求燃料添加量との比較結果が示される。
図7に示すように、昇温開始時においては、酸化触媒56aにおいては、燃料の反応熱によって温度が上昇していることから上昇した温度に対応する分だけ第1部分上限値が設定されることになる。一方、PM除去フィルタ56bにおいては、温度が低い状態が維持されることになるため、燃料の燃焼に寄与しないため、第2部分上限値がいずれもゼロとなる。
この場合において、排気温度Tex2に基づいて設定される燃料添加量の上限値と同程度の酸化触媒56aの部分上限値の総和が燃料添加量の指令値の上限値として設定されることとなる。なお、要求燃料添加量は、燃料添加量の指令値の上限値よりも大きいため、燃料添加量の指令値の上限値が燃料添加量の指令値として設定され、燃料添加制御が実行される。
<温度安定時の燃料添加制御について>
図8は、温度安定時の酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの各部分の温度分布を示す図である。図8の上段と下段とに示される図は、温度分布が異なる以外は図6の上段と下段とに示される図の構成と同じ構成である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
図8に示すように、温度安定時においては、酸化触媒56aの部分C1〜C3においては、添加された燃料の反応熱によって温度が高い状態が維持されており、特に部分C3が最も温度が高い状態となる。これに対して、燃料の反応熱によって温度が上昇した排気がPM除去フィルタ56bに供給され、PM除去フィルタ56bの温度が高い状態になるとともに、適量の燃料が添加されることによって、添加された燃料が酸化触媒56aだけでなく、PM除去フィルタ56bにおいても燃焼することになるため、PM除去フィルタ56bの温度が酸化触媒56aの温度よりも高い状態で維持される。特に、PM除去フィルタ56bの後端側の部分D4が最も温度が高い状態となる。
図9は、温度安定時の酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの各部分の部分上限値分布を示す図である。図9に示される図は、燃料添加量の程度が異なる以外は、図7に示される図の構成と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
図9に示すように、温度安定時においては、酸化触媒56aにおいては、高い温度で維持されていることから温度に対応した第1部分上限値が設定されることになる。さらに、PM除去フィルタ56bにおいては、高い温度で維持されていることから温度に対応した第2部分上限値が設定されることになる。このとき、PM除去フィルタ56bのうちの酸化触媒56aよりも比較的高い温度になる部分D2〜D4においては、第1部分上限値よりも高い値が第2部分上限値として設定されることになる。
この場合において、第1部分上限値の総和と第2部分上限値の総和との和が燃料添加量の指令値の上限値として設定される。設定された燃料添加量の指令値の上限値は、要求燃料添加量よりも大きいため、要求燃料添加量が燃料添加量の指令値として設定される。そのため、要求どおりの燃料が添加されることになるため、PM除去フィルタ56bの温度を適切な温度で維持することができる。
なお、排気温度Tex2に基づいて設定される燃料添加量の上限値を燃料添加量の指令値の上限値として設定される場合には、燃料添加量の指令値の上限値が要求燃料添加量よりも小さい値になる。そのため、燃料添加量の指令値の上限値が燃料添加量の指令値として設定されることになる。そのため、要求どおりの燃料が添加されないため、PM除去フィルタ56bの温度維持に必要な燃料が添加されず、PM除去フィルタ56bの温度を適切な温度に昇温させたり、適切な温度で維持できなかったりする場合がある。
以上のようにして、本実施の形態に係る排気処理システムによると、酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの各部分で燃料の燃焼が可能な燃料添加量の第1部分上限値および第2部分上限値が算出されることになるため、第1部分上限値の総和と第2部分上限値の総和との和が指令値の上限値として設定される。これにより、指令値の上限値を精度高くすることができるため、燃料を過不足なく添加することができる。そのため、添加した燃料の一部が未燃状態となることを抑制して、白煙の排出を抑制することができるとともに、PM除去フィルタ56bを適切に昇温させることができる。したがって、昇温開始時から温度安定時まで昇温に用いられる燃料添加量を適切に調整する排気処理システムを提供することができる。
さらに、このように燃料添加量の適切な調整が可能となることによって、排気処理装置の小型化や排気処理装置に含まれる貴金属等の量の低減が可能となる。その結果、排気処理装置の生産コストの低減が図れる。
以下、変形例について説明する。
上述の実施の形態では、排気処理装置56として酸化触媒56aとPM除去フィルタ56bとを含む構成を一例とし、酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bの各々を複数の部分に区分けし、区分けした部分毎に燃料添加量の上限値を算出するものとして説明したが、排気処理装置56は、たとえば、酸化触媒56aとPM除去フィルタ56bとその他触媒とのうちのいずれかを含む構成であってもよいし、酸化触媒56aおよびPM除去フィルタ56bに加えてその他の触媒を含む構成であってもよい。
さらに上述の実施の形態では、酸化触媒56aを3つの部分C1〜C3に区分けする場合を一例として説明したが、酸化触媒56aを2つの部分に区分けしてもよいし、4つ以上の部分に区分けしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、PM除去フィルタ56bを4つの部分D1〜D4に区分けする場合を一例として説明したが、PM除去フィルタ56bを2つあるいは3つに区分けしてもよいし、5つ以上の部分に区分けしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、排気温度Tex2,Tex3を用いて部分C1〜C3および部分D1〜D4の温度を推定するものとして説明したが、各部分に温度センサを設けるようにしてもよいし、複数の部分のうちのいずれかに温度センサを設け、設けられた温度センサの検出結果を用いて他の部分の温度を推定するようにしてもよい。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。