JP2019183539A - 堰堤および捕捉体 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、土砂災害による被害を抑えるため、捕捉体が設けられていない既存の堰堤についても水通し部に捕捉体を新たに設置する試みがなされている。図11に示すように、既存の堰堤100に対して捕捉体103を設けるには、水通し部104を確保するため、捕捉体103の周囲の袖部105を嵩上げする必要がある。捕捉体103の周囲を嵩上げすることにより、図12に示すように、捕捉体103で流木等106を捕捉しつつ、その上方に形成された空間を水通し部107として用いることができる。
また、図13に示すように、敷幅(河川の流れ方向に沿った幅)が短い既設の堰堤110に捕捉体111を設ける場合には、堰堤110の水通し部112における上流側または下流側に腹付部113を設け、水通し部112の底部および腹付部113を利用して捕捉体111を設ける。
また、捕捉体が設けられていない、いわゆる不透過型堰堤においては、水の流れを制御するために水通し部の幅が狭いため、水通し部に設けられる捕捉体も小さくなり、すぐに目詰まりして堰堤の袖部から越流しやすくなる。その結果、流木等の捕捉機能を十分に発揮できないだけでなく、越流に備えて堰堤下流側の改良工事が必要となり、コストや時間がかかってしまう。一方で、水通し部の拡幅工事も考えられるが、こちらもコストや時間がかかってしまう。
また、堰堤に腹付部を設ける場合であっても、その工事にコストや時間がかかってしまう。
また、既設の堰堤に新たに捕捉体を固定するために、水通し部のコンクリートをはつってから捕捉体用のコンクリートを打設することになるため、足場の架設等、コストや時間がかかってしまう。
<堰堤の構成>
図1乃至図4に示すように、堰堤1は、本体2と、捕捉体3とを備えている。堰堤1は、河川に設置された既存の本体2に捕捉体3を新たに設置して流木や岩石等(物体)の捕捉機能を高めたものである。
本体2は、その底部が地盤に埋設されており、河川を横切るように河川の幅方向に沿って延在するように構築されている。本体2は、例えば、コンクリートまたはソイルセメントによって構築されている。なお、本体2において、河川の上流側または下流側に面する壁面を、複数の鋼製セグメントを連結することにより形成された鋼板壁とし、その内部にコンクリートやソイルセメントを充填してもよい。
本体2における河川の幅方向に沿った中央近傍、つまり、堰堤1が構築される河川の両岸から河川中央に延在する袖部21の間の上端部には、周囲よりも上端面(天端面)が低くなるように切り欠かれた(凹んだ)水通し部22が形成されている。水通し部22は、上流から流れてくる流水を本体2の中央近傍に集約して下流に流すために形成されている。
本体2は、河川の両岸に接続した袖部21と、河川の上流側に面する上流壁部23と、河川の下流側に面する下流壁部24とを備えている。袖部21の上流側および下流側に面する壁面は、鉛直方向に延在している。上流壁部23は、袖部21または水通し部22の底面22aから下方に向かうにつれて上流側に向けて傾斜している。下流壁部24は、袖部21または水通し部22の底面22aから下方に向かうにつれて下流側に向けて傾斜している。
捕捉体3は、河川の上流から流れてくる物体を捕捉して流水を通すものであり、本体2の袖部21および上流壁部23に設けられている。捕捉体3は、本体2の延在方向、すなわち、河川の幅方向に沿って設けられている。
捕捉体3は、上方に向かうにつれて上流側に傾斜している。捕捉体3は、少なくとも一部が本体2の水通し部22の底面22aよりも上方に位置するように本体2に設けられている。捕捉体3は、本体2の幅方向(河川の幅方向)に沿って互いに所定の間隔をおいて設けられた複数の柱部31と、柱部31を互いに連結する連結梁部(第1の梁部)32と、柱部31と袖部21との間に設けられた側方梁部(第2の梁部)33と、を備えている。
捕捉体3は、幅方向の長さLが水通し部22の幅Wよりも長くなるように構築されている。捕捉体3の幅方向(河川の幅方向)における両端部に設けられた柱部31は、少なくとも本体2の袖部21と対向する位置に配置されている。
第1の脚部31aは、一端(下端)が本体2の上流壁部23にアンカーボルトおよびナットによって固定されている。第1の脚部31aは、他端部(上端部)近傍において連結梁部32に連結されている。これにより、各柱部31は連結梁部32によって互いに連結されることになる。第1の脚部31aは、上流壁部23に固定された一端から他端に向かうにつれて上流側に傾斜するように上流壁部23に設けられている。
堰堤1の高さ方向において第1の脚部31aは、その他端部が袖部21の上流側の壁面に少なくとも対向する位置にまで延在している。
ここで、第2の脚部31bは、上流側の川底の傾斜に沿うように配置されていると、土石流の力を第2の脚部31bの軸線方向に沿って受けることができ、第2の脚部31bが本体2の上流壁部23から引き剥がそうとする力を小さく抑えることができるので好ましい。これにより、柱部31の第1の脚部31aおよび第2の脚部31bは、側面視略λ字状に構築されており、第1の脚部31aは、第2の脚部31bよりも長くなっている。
隣接する柱部31の間隔Sは、河川を流れてくると想定される最大の流木の長さの半分の長さ、または、河川を流れてくると想定される最大の礫径に相当する長さであることが好ましい。
連結梁部32および側方梁部33は、堰堤1の高さ方向においてほぼ同じ高さ位置で第1の脚部31aに連結されている。具体的には、連結梁部32および側方梁部33は、想定される流水41の水面を含む高さ位置に設けられていることが好ましい。
換言すると、柱部31と柱部31との間隔Sを1スパンとした場合、捕捉体3は、2スパン分だけ本体2に対向するように構築されている。なお、本体2に対向する各2スパンのうち、水通し部22側における1スパンは、少なくとも一部が本体2に対向しているだけでもよい。
また、本体2に対向する捕捉体3の範囲は、例えば、河川を流れてくると想定される最大の流木の長さ、最大の礫径、または設置する堰堤1の規模等に応じて、1スパン分、3スパン分またはそれ以上のスパン分だけ本体2に対向するように、適宜、変更することができる。
連結梁部32および側方梁部33は、堰堤1において想定される越流水深h1の水面を含む高さ位置に設けられており、立設部31cおよび側方立設部33aは、水通し部22における余裕高h2に少なくとも達する位置にまで延在している。
「想定される越流水深h1」とは、水通し部22を流れる、つまり、堰堤1を越流すると想定される流水41の水面の高さから、ここでは、水通し部22の底面22aまでの距離である。また、「余裕高」とは、越流水深h1に基づいて設定した高さである。
側方立設部33aの他端(上端)は、立設部31cと同じ高さ位置にまで延びている。つまり、側方立設部33aは、その他端(上端)が側方梁部33から最短距離で余裕高h2(m)にまで達する長さ寸法を有する。
次に、既存の堰堤の本体2に捕捉体3を設けて堰堤1を構築する際の、捕捉体3の設置方法について説明する。
最初に、本体2の上流壁部23における捕捉体3の設置位置を削孔し、形成した孔にアンカーボルトを埋設し、モルタル等を孔に充填して固定する。
次に、アンカーボルトに第1の脚部31a、第2の脚部31bおよび側方梁部33の一端に設けられているフランジ部を通し、ナットで固定する。ここで、捕捉体3は、それぞれ鋼管からなる柱部31と連結梁部32および側方梁部33とを予め溶接等にて接合しておき、クレーン等で吊しながらナットで固定する。ここで、捕捉体3の幅方向の長さは、少なくとも本体2の水通し部22の幅よりも長くなるように構築することが好ましい。
なお、捕捉体3を本体2に設ける際には、捕捉体3の一部が本体2の水通し部22の底面22aよりも上方に位置するように本体2に取り付ける。
以上の工程をもって、既設の堰堤の本体2に捕捉体3を設置することができ、既設の堰堤の流木等の捕捉機能を強化した堰堤1が構築される。
また、台風や大雨による土石流の発生を想定して事前に捕捉体3を本体2に設けることができるので、土砂災害を未然に防止することができる。
また、本体2からの越流に備えて堰堤1の下流側の改良工事や、水通し部22の拡幅工事、腹付工事を行う必要がないので、施工コストの削減、工期の短縮を図ることができる。
また、本体2の嵩上げや捕捉体3の設置のために、水通し部22のコンクリートをはつってから捕捉体3の固定用のコンクリートを打設することもなく、既設の本体2を大幅に改良する必要がない。
よって、従来よりも簡単に捕捉体3を本体2に設置でき、施工コストの削減、工期の短縮を図ることができる。
また、捕捉体3は、水通し部22との対向部分が水通し部22から離間して設けられているので、水通し部22に流木等が流れ込む前で流木等を捕捉することができる。
また、第2の脚部31bは、堰堤1が設置される地盤(川底)の傾斜に沿って配置されているので、第1の脚部31aから伝わる流木等の衝突エネルギーを軸線方向に沿って受けることができるので、第2の脚部31bが本体2から剥がれようとする力を最小限に抑えることができる。
例えば、立設部31cがない場合、第1の脚部31aを少なくとも余裕高h2までに延ばす必要がある。第1の脚部を余裕高h2まで延ばした場合、第1の脚部31aは斜めに延在しているので、捕捉体3と上流壁部23との間の間隔が大きくなる。捕捉体3と本体2との間の間隔が広がることは、例えば、流れてくる流木や土砂等が捕捉体の側方に廻り込む領域の拡大に繋がる。
さらに、例えば、捕捉体3により捕捉された流木や巨礫が堆積してせり上がろうとした場合であっても、立設部31cの存在により流木や巨礫が捕捉体3を乗り越えることを防ぐことができる。かくして、流れてきた流木や巨礫は、第1の脚部31aに沿って堰堤1の下方に向かうように案内されると共に、立設部31cにより押し戻されて流木等の越流の防止効果をより高めることができる。
さらに、側方梁部33には側方立設部33aが設けられているので、例えば、流水41が想定外の量となり、側方梁部33を上回ったとしても、側方立設部33aにおいて流木等は捕捉されるので、捕捉体3の側方からの流木等の越流をより効果的に防止することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、捕捉体の構造は、流木や巨礫を捕捉できる機能を有していれば自由に変更可能である。上記実施の形態においては、捕捉体3は、側方梁部33および側方立設部33aを備えていた。しかし、例えば、図8に示すように、捕捉体は、少なくとも、複数の柱部31(第1の脚部31a、第2の脚部31bおよび立設部31c)と、連結梁部32と、を備えた捕捉体5であってもよい。このような構成は、捕捉体5の正面における捕捉機能を特に向上させたものであり、例えば、河川の両岸がそれぞれ捕捉体5の近傍にあるような場合には、捕捉する対象を正面からの流木や巨礫にしてもよい。
なお、捕捉体6に、図示しないが、立設部31cまたは側方立設部33aが設けられていてもよい。側方立設部33aが設けられている場合、側方から廻り込んでくる流木や巨礫をより確実に捕捉することができる。
捕捉体7は、柱部31と、連結梁部32と、側方梁部33とを有する。捕捉体7の側方梁部33には、上方に向かって延在している側方立設部33aと、側方梁部33から下方に向かって延在して立設された側方立設部33b(第2の立設部)が設けられている。側方立設部33bは、側方立設部33aに対向する位置に設けられている。
側方立設部33bは、例えば、側方梁部33と、第2の脚部31bとの間に延在していればよく、側方立設部33bの延在長さは、特に限定されない。
連結梁部32は、その端部が複数の立設部31cのうち幅方向の両端に設けられた立設部31cの上端部近傍であって、堰堤1において想定される越流水深h1の水面付近にそれぞれ連結されている。
また、立設部31cが、水通し部22の底面22a付近から延在していることにより、第1の脚部31aが本体2から離れる方向に延在することを抑えることができ、捕捉体7と上流壁部23との間の間隔の拡大を抑制することができる。
なお、側方立設部33bは、捕捉体3,6においても適用することができる。
また、捕捉体3,5,6,7は、既存の堰堤に取り付ける場合に限らず、堰堤の施工時に本体2と共に構築してもよい。
2 本体
21 袖部
22 水通し部
23 上流壁部
24 下流壁部
3,5,6,7 捕捉体
31 柱部
31a 第1の脚部
31b 第2の脚部
31c 立設部
32 連結梁部(第1の梁部)
33 側方梁部(第2の梁部)
33a 側方立設部(第3の立設部)
33b 側方立設部(第2の立設部)
Claims (17)
- 水通し部を有する堰堤であって、
少なくとも前記水通し部に対向して上流側の壁面に設けられ、上流から流れてくる物体を捕捉して流水を通す捕捉体を備え、
前記捕捉体は、
一端が前記上流側の前記壁面に固定されていて、前記壁面から上方に向かうにつれて上流側に傾斜する脚部と、前記脚部の他端から当該脚部の延在方向に対して前記壁面側に鈍角をなして立設された立設部とを有する複数の柱部を備える
ことを特徴とする堰堤。 - 前記立設部は、少なくとも想定越流水深における水面からの余裕高まで延在していることを特徴とする請求項1に記載の堰堤。
- 前記立設部は、前記脚部から最短距離で少なくとも余裕高まで延在していることを特徴とする請求項1または2に記載の堰堤。
- 前記捕捉体は、
前記複数の柱部を互いに連結する第1の梁部と、
前記複数の柱部のうち幅方向における両端の前記柱部に一端が取り付けられ、他端が前記水通し部の側方における前記上流側の前記壁面に取り付けられた第2の梁部と、
を備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の堰堤。 - 前記第1の梁部および第2の梁部は、前記水通し部の底面から、想定越流水深における水面までの高さ位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の堰堤。
- 前記捕捉体は、前記第2の梁部に、下方に向かって延在する第2の立設部を有することを特徴とする請求項4または5に記載の堰堤。
- 前記捕捉体は、前記複数の柱部のうち幅方向における両端の前記柱部と、前記上流側の前記壁面との間で、上方に向かって延在する第3の立設部を有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の堰堤。
- 前記第3の立設部は、少なくとも想定越流水深における水面からの余裕高まで延在していることを特徴とする請求項7に記載の堰堤。
- 水通し部を有する堰堤であって、
少なくとも前記水通し部に対向して前記堰堤の上流側の壁面に設けられ、上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通す捕捉体を備え、
前記捕捉体は、
一端が前記上流側の前記壁面に固定されていて、前記壁面から上方に向かうにつれて上流側に傾斜する複数の柱部と、
前記複数の柱部のうち幅方向における両端の前記柱部と、前記水通し部の側方における前記上流側の前記壁面との間に設けられた梁部と、
を備える、
ことを特徴とする堰堤。 - 前記捕捉体は、前記梁部に対して上方に向かって延在する立設部を有することを特徴とする請求項9に記載の堰堤。
- 前記捕捉体は、前記梁部から下方に向かって延在する立設部を有することを特徴とする請求項9または10に記載の堰堤。
- 堰堤が有する水通し部に対向して前記堰堤の上流側の壁面に設けられ、上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通す捕捉体であって、
一端が前記上流側の前記壁面に固定され、前記壁面から上方に向かうにつれて上流側に傾斜する脚部と、前記脚部の他端から当該脚部の延在方向に対して前記壁面側に鈍角をなすようにして立設された立設部とを有する複数の柱部を備える
ことを特徴とする捕捉体。 - 堰堤が有する水通し部に対向して前記堰堤の上流側の壁面に設けられ、上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通す捕捉体であって、
一端が前記上流側の前記壁面に固定され、前記壁面から上方に向かうにつれて上流側に傾斜する複数の柱部と、
前記複数の柱部のうち幅方向における両端の前記柱部と、前記水通し部の側方における前記上流側の前記壁面との間に設けられる梁部と、
を備える
ことを特徴とする捕捉体。 - 前記柱部は、該柱部の他端から当該柱部の延在方向に対して前記壁面側に鈍角をなすようにして立設された立設部を有することを特徴とする請求項13に記載の捕捉体。
- 前記梁部は、該梁部に対して上方に向かって延在する立設部を有することを特徴とする請求項13または14に記載の捕捉体。
- 前記梁部は、該梁部から下方に向かって延在する立設部を有することを特徴とする請求項13から15までのいずれか一項に記載の捕捉体。
- 前記複数の柱部を互いに連結する梁部を有することを特徴とする請求項12から16までのいずれか一項に記載の捕捉体。
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