JP2019183097A - ポリ乳酸樹脂発泡体 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、山野、河川、或いは、海岸といった場所において不法に投棄された包装材で景観が損なわれるといった問題への対策が求められるようになってきている。
このようなことを背景として自然環境において生分解され得るポリ乳酸樹脂を使って成形品を作製することが検討されており、ポリ乳酸樹脂発泡体を種々の用途に展開することが検討されている(下記特許文献1参照)。
そこで、本発明は、ポリ乳酸樹脂発泡体の強度の向上を図ることを課題としている。
ポリ乳酸樹脂を含有し、該ポリ乳酸樹脂は、
190℃での伸長粘度測定において破断点での伸長粘度が0.5MPa・s以上で、且つ、
前記伸長粘度測定では、伸長速度の増大にともなって伸長粘度が増大し、横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフにピークが出現しないポリ乳酸樹脂であるポリ乳酸樹脂発泡体を提供する。
以下においては、ポリ乳酸樹脂発泡体が押出発泡シートである場合を主たる例として本発明について説明する。
即ち、本実施形態の発泡シートは、ポリ乳酸樹脂と該ポリ乳酸樹脂を発泡状態にさせるための成分とが押出機で溶融混練された後に押出機の先端に装着されたダイを通じて大気中に押出されることによって作製されたものである。
前記共重合体での他のモノマーとしては、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
前記モノマーは、例えば、多官能多糖類などであってもよい。
即ち、前記単独重合体であるポリ乳酸樹脂は、ポリ(L−乳酸)樹脂、ポリ(D−乳酸)樹脂、及び、ポリ(DL−乳酸)樹脂の内のいずれであってもよい。
脂肪族多価カルボン酸は、無水物であってもよい。
前記構造部分(L−体及びD−体)の含有量は、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
具体的には、ポリ乳酸樹脂は、190℃での溶融張力測定において5cN以上40cN以下の溶融張力を示す。
ポリ乳酸樹脂の前記溶融張力は、39cN以下であることが好ましく、37cN以下であることがより好ましく、35cN以下であることが特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂の前記溶融張力は、8cN以上であることが好ましく、10cN以上であることがより好ましい。
また、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、溶融張力が40cN以下であることにより、発泡時に気泡膜が良好な伸びを示して破泡を抑制することができる。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、発泡時の破泡が抑制されることで高い発泡倍率で発泡させても連続気泡率が高くなり難く、外観も良好なものとなり得る。
(溶融張力測定方法)
各試料は80℃、5時間真空乾燥後、測定直前まで密閉してデシケータに保存する。
試験温度190℃に加熱された径15mmのバレルに測定試料樹脂を充填後、5分間予熱したのち、上記測定装置のキャピラリーダイ(口径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル))からピストン降下速度(0.07730mm/s)を一定に保持して紐状に押出しながら、この紐状物を上記キャピラリーダイの下方27cmに位置する張力検出のプーリーに通過させた後、巻取りロールを用いて、その巻取り速度を初速4.0mm/s、加速度12mm/s2で徐々に増加させつつ巻き取っていき、紐状物が切断する直前の極大値と極小値の平均を試料の溶融張力とする。
なお、張力チャートに極大点が1個しかない場合はその極大値を溶融張力とする。
ポリ乳酸樹脂の前記伸長粘度は、0.55MPa・s以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。
ポリ乳酸樹脂の前記伸長粘度は、1MPa・s以下であることが好ましく、0.9MPa・s以下であることがより好ましい。
(レオテンスによる伸長粘度の測定)
本明細書中での「伸長粘度の測定」とは、伸長粘度を測定できる装置を用いた伸長粘度の測定をいい、以下に限定されるものではないが、例えば、ゴットフェルト(Gottfert)社のレオテンス(Rheotens71.97)を用いて測定ができる。
伸長粘度の測定は、各試料に合わせた最適な条件に調整して実施するが、例えば下記の条件にて実施できる。
(測定条件例)
試料を事前に80℃、5時間真空乾燥する。
キャピログラフ1D((株)東洋精機製作所製)にレオテンスを設置する。
レオテンスは、キャピログラフ1Dのダイ出口から測定部までが80mmとなるよう設置する。
尚、そのままでは干渉してしまい80mmまでレオテンスを接近させることができない場合は、干渉を回避する策を講じて所定の場所にレオテンスをセットする。
ダイス 直径 2.095mm、長さ 8mm、流入角度 90度(コニカル)
ピストン径 9.55mm
ピストンスピード 20mm/min
測定温度190℃
レオテンスの測定条件を下記のように設定する。
ホイール間 上 0.2mm、下 1.0mm
加速度 10mm/s2
引き取りスピード 初速 11.281mm/s
「横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフ」とは、上記測定結果から得られる伸長粘度を、伸長速度(引き取りスピードにより調整)によってグラフ化したものである。
「横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフにピークが出現しない」とは、上記グラフにピークが現れないということである。
本実施形態のポリ乳酸樹脂は、伸長粘度の測定を行った際に、横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフにピークが出現しない。
そのことにより、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、高い引張強度を有する。
ポリ乳酸樹脂のMFRは、1.0g/10min以上であることがより好ましく、1.5g/10min以上であることがさらに好ましく、2.0g/10min以上であることが特に好ましい。
前記MFRは、20g/10min以下であることが好ましく、10g/10min以下であることがより好ましく、6.0g/10min以下であることが特に好ましい。
MFRは、JIS K7210−1:2014「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方−第1部」B法記載のピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定することができる。
測定条件は、原則的に以下の通りとする。
試料:3〜8g
尚、測定用の試料は80℃、5時間真空乾燥し、乾燥後は測定直前まで密閉してデシケータに保存する。
予熱:270秒
ロードホールド:30秒
試験温度:190℃
試験荷重:2.16kg(21.18N)。
そして、試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10min)の値とする。
前記ポリ乳酸樹脂は、質量平均分子量(Mw)が10万以上100万以下であることが好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量(Mw)は、15万以上であることがより好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
前記ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量(Mw)は、50万以下であることがより好ましく、40万以下であることがさらに好ましく、35万以下であることがとりわけ好ましい。
即ち、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、最大ピークTPよりも高分子量側でショルダーSLや別ピークSPを発揮させる成分(以下「高分子量成分」ともいう)と、最大ピークTPを示している成分(以下「主ピーク成分」ともいう)とを含んでいる。
前記高分子量成分は、ポリ乳酸樹脂を熱溶融させた時に主ピーク成分と溶け合って発泡に適した溶融粘弾性を発揮させるのに有効な成分である。
このような効果を発揮させる上において主ピーク成分と高分子量成分とは別ピークSPとなるよりもショルダーSLとなる関係を有していることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂のZ平均分子量(Mz)は、120万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、90万以下であることが特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂の前記比率(Mz/Mw)は、4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.0以下であることが特に好ましい。
具体的には、ポリ乳酸樹脂の平均分子量は、下記の手順で求めることができる。
試料20mgをクロロホルム6mLに溶解させ(浸漬時間:6±1.0h)、(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過した上で次の測定条件にてクロマトグラフを用いて測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の質量平均分子量を求める。
使用装置=東ソー(株)製 「HLC−8320GPC EcoSEC」 ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)
<GPC測定条件>
サンプル側
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL−H(6.0mm×4.0cm)×1本
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列
リファレンス側=抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列
カラム温度=40℃
移動相=クロロホルム
移動相流量
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min
サンプル側ポンプ=1.0mL/min
検出器=RI検出器
注入量=50μL
測定時間=26min
サンプリングピッチ=500msec
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM−105」および「STANDARD SH−75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを各々2〜10mg秤量後クロロホルム30mLに溶解し、Bも各々3〜10mg秤量後クロロホルム30mLに溶解する。
標準ポリスチレン検量線は、作製した各AおよびB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得、その検量線を用いて質量平均分子量を算出する。
前記改質では、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせたり、ポリ乳酸樹脂を高分子量化させたりすることができる。
ポリ乳酸樹脂の高分子量化には、カルボジイミドなどの鎖伸長剤などが用いられ得る。
また、鎖伸長剤による改質は、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物など、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に存在する水酸基やカルボキシル基と縮合反応させることが可能な官能基を1又は複数有する化合物を用いて行うことができる。
即ち、前記改質は、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物などを反応によってポリ乳酸樹脂に結合させる方法で実施することができる。
架橋や長鎖分岐によるポリ乳酸樹脂の改質は、例えば、ラジカル開始剤によってポリ乳酸樹脂どうしを反応させる方法などによって行うことができる。
尚、適度な反応性を有するラジカル開始剤を使ってポリ乳酸樹脂どうしを反応させると、押出機内でのポリ乳酸樹脂の分解起点が前記ラジカル開始剤によって発生させたフリーラジカルによってアタックされ、当該箇所が架橋点(分岐点)となって安定化され得る。
ポリ乳酸樹脂は、このような改質がなされることで熱安定性が増して押出機を通過する際に低分子量化され難くなる。
これらの中では有機過酸化物が好ましい。
本実施形態で用いられる該有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、及び、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。
このような問題を生じさせるおそれを抑制でき、ポリ乳酸樹脂を発泡に適した状態に改質することが容易である点において、前記有機過酸化物は、パーオキシエステルであることが好ましい。
また、パーオキシエステルの中でもポリ乳酸樹脂の改質に用いられる有機過酸化物は、パーオキシモノカーボネートやパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート系有機過酸化物であることが好ましい。
本実施形態においてポリ乳酸樹脂の改質に用いられる有機過酸化物は、パーオキシカーボネート系有機過酸化物の中でもパーオキシモノカーボネート系有機過酸化物であることが好ましく、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートであることが特に好ましい。
有機過酸化物の使用量は、0.2質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましい。
有機過酸化物の使用量は、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが特に好ましい。
このような割合で有機過酸化物を用いてポリ乳酸樹脂を改質することで改質後のポリ乳酸樹脂を発泡に適したものにすることができる。
また、有機過酸化物は、その使用量が2.0質量部以下とされることで、改質後のポリ乳酸樹脂にゲルが混在することを抑制し得る。
前記揮発性発泡剤としては、例えば不活性ガス、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素等が採用可能である。
本実施形態においては、上記の中でも特にノルマルブタンやイソブタンが好ましく用いられ得る。
尚、前記分解型発泡剤は、揮発性発泡剤と併用することで発泡状態を調整することができ、気泡調整剤としても用いることができる。
従って、本実施形態の発泡シートは、通常、前記ポリ乳酸樹脂、前記発泡剤、及び、前記気泡調整剤を含む樹脂組成物(以下「ポリ乳酸樹脂組成物」ともいう)を押出発泡させることにより形成される。
該添加剤としては、ポリ乳酸樹脂以外の樹脂、無機フィラー、及び、各種薬剤などが挙げられる。
前記薬剤としては、例えば、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、抗菌剤等が挙げられる。
尚、これらの添加剤の割合は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して25質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
前記改質工程で用いる二軸押出機には、ストランドダイやTダイを装着し、前記改質工程では改質されたポリ乳酸樹脂によるストランドやシートを作製し、その後、ストランドやシートをカットして造粒する工程を別途実施してもよい。
尚、要すれば、タンデム押出機を用いて改質工程に連続して押出発泡工程を実施するようにしてもよい。
例えば、本実施形態での押出発泡工程は、図3に示したような装置を用いて実施することができる。
さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、該マンドレルMD通過後の発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置と、スリットされた発泡シート1を複数のローラ21を通過させた後に巻き取るための巻取りローラ22が備えられている。
前記タンデム押出機10の上流側の押出機(以下「第1押出機10a」ともいう)には、発泡シートの原材料となるポリ乳酸樹脂を投入するためのホッパー11と、炭化水素などの発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部12が設けられている。
この第1側押出機10aの下流側には、発泡剤を含んだポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練するための押出機(以下「第2押出機10b」ともいう)が備えられている。
このような装置にて押出発泡工程を実施する場合、第1押出機10aでポリ乳酸樹脂の改質を実施し、第1押出機10aの末端部又は第2押出機10bの基端部において発泡剤などを混合して発泡シートの原材料となるポリ乳酸樹脂組成物を調製し、前記サーキュラーダイCDから押出発泡を行うようにしてもよい。
前記押出発泡工程では、サーキュラーダイCDから吐出される直前に溶融混練物中に発泡剤による微小気泡が発生し、溶融混練物がサーキュラーダイCDから吐出されて圧力が解放された瞬間に前記微小気泡が一気に拡大するとともに溶融混練物中に溶存していた発泡剤によって新たな気泡が発生する。
そして、押出された発泡シートは、マンドレルMDでの拡径によって周方向に延伸を受けるとともに巻取りローラ22での巻取りによって押出方向にも延伸を受ける。
即ち、本実施形態の発泡シートでは、前記のようなポリ乳酸樹脂を含む気泡膜が発泡剤による発泡力で延伸される際に一定以上の抵抗力を発揮する。
また、本実施形態の発泡シートでは、気泡膜の中央部が薄く周縁部が厚い状態になり易い。
そのため、本実施形態の発泡シートは、この厚い気泡膜が3次元的にシート全体にわたって連結された状態になることで優れた機械的特性を発揮する。
尚、本実施形態の発泡シートは、発泡時において破泡が生じ、気泡膜に穴が開いてしまった場合においても、穴を取り囲む気泡膜がそのままの状態になるのではなく、縮んで強度の発揮に有効な形で厚みを増すため、ある程度の割合で連続気泡を有していても優れた強度が発揮され得る。
発泡シートの連続気泡率は、15%以上であることがより好ましい。
発泡シートの連続気泡率は、発泡シートに優れた強度を発揮させる上において、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが特に好ましい。
発泡シートの発泡倍率は、優れた強度を発揮させる上において、15倍以下であることが好ましく、12倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることが特に好ましい。
(連続気泡率)
発泡シートから、縦25mm、横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出し、切り出したサンプルを隙間があかないようにして重ね合わせて厚み25mmの測定用試料とし、この測定用試料の外寸を(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」を使用して1/100mmまで測定し、見掛けの体積(cm3)を求める。
次に空気比較式比重計1000型(東京サイエンス(株)製)を使用して、1−1/2−1気圧法により測定用試料の体積(cm3)を求める。
これらの求めた値と下記式とにより連続気泡率(%)を計算し、試験数5個の平均値を求める。
なお、測定は、測定用試料をJIS K7100−1999 記号23/50、2級の環境下で16時間状態調節した後、JIS K7100−1999 記号23/50、2級の環境下で行う。
また、空気比較式比重計は、標準球(大28.9cc 小8.5cc)にて補正を行う。
連続気泡率(%)=100×(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積
即ち、発泡倍率は、下記の式を計算して求めることができる。
発泡倍率=真密度(ρ0)/見掛け密度(ρ1)
発泡シートから、100cm3以上の試料を元のセル構造を変えないように切断し、この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、密度を下記式により算出する。
見掛け密度(g/cm3)=試料の質量(g)/試料の体積(cm3)
なお、試料の寸法測定には、例えば、(株)ミツトヨ社製「DIGIMATIC」CD−15タイプを用いることができる。
具体的には、発泡シートは、長手方向が押出方向となるように採取した試料に対して引張試験を実施した際に、引張強さが5.5MPa以上であることが好ましく、6MPa以上であることがより好ましく、6.5MPa以上であることが特に好ましい。
発泡シートの引張強さの上限は特に定められる必要はないが、発泡シートの引張強さは、通常、25MPa以下の値となる。
すなわち、(株)オリエンテック製「テンシロンUCT−10T」万能試験機、ソフトブレーン(株)製「UTPS−458X」万能試験機データ処理を用いて、引張速度500mm/min、つかみ具間隔は100mm、試験片はダンベル形タイプ1(ISO1798規定)、厚み1.0〜1.5mmで前記引張強さを測定する。
但し伸びはつかみ具間の試験前と切断時の距離から算出する。
試験片の数は5個とし、試験片をJIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定を行う。
引張強さは次式により算出する。
T=F/(W × t)
T:引張強さ(MPa)
F:切断にいたるまでの最大荷重(N)
W:試験片の幅(mm)
t:試験片の厚さ(mm)
発泡シートの前記伸長粘度は、0.08MPa・s以上であることが好ましく、0.1MPa・s以上であることがより好ましい。
発泡シートの前記伸長粘度は、0.2MPa・s以下であることが好ましく、0.15MPa・s以下であることがより好ましい。
発泡シートの前記伸長粘度は、ポリ乳酸樹脂の伸長粘度と同様にレオテンス装置で測定することができる。
一般的に発泡シートは、単位面積当たりの質量が同じ(同じ坪量)であれば気泡が細かく、気泡膜の薄い独立気泡を数多く有する方が、厚さ方向の圧縮などに対して優れた強度を発揮し得る。
一方で、発泡シートに優れた引張強さを発揮させる上においては、厚い気泡膜を有することが有利となる。
平均気泡膜厚は、発泡シートを厚さ方向に切断した際に現れる断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を使って撮影した画像をもとに測定することができる。
この点に関し、発泡シートの断面の様子を模式的に示した図4を参照しつつ説明すると、発泡シートの厚さ方向中央部を通るような直線L1をSEMで撮影した画像に対して描き、該直線L1が通過する箇所において気泡膜MBの厚さ(t1,t2,・・・tn)をそれぞれ測定し、測定された個々の気泡膜MBの厚さを元に算術平均値を算出し、得られた算術平均値を平均気泡膜厚さとすることができる。
算術平均値を正確に算出するためには、10箇所以上において気泡膜MBの厚さを求めることが好ましい。
発泡シートは、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形、プレス成形、マッチモールド成形などの熱成形によって3次元的な形状を付与して容器などの発泡成形品(例えば、トレー、丼、カップなど)とすることができる。
また、発泡シートは、平板状のまま、折箱などの発泡成形品の形成材料とすることもできる。
即ち、発泡シートは、図5に示すように折箱100の底板101、側壁枠102、蓋板103、などの形成材料とすることができる。
そこで、本実施形態で発泡シートの原材料として用いるポリ乳酸樹脂は、初期状態で測定されるMFR(190℃、2.16kg)を「MFR0(g/10min)」とし、190℃で1度溶融混練された後に測定される前記MFRを「MFR1(g/10min)」とし、この溶融混練された後に190℃で再び溶融混練された後に測定される前記MFRを「MFR2(g/10min)」とし、3度190℃で溶融混練された後に測定される前記MFRを「MFR3(g/10min)」としたときに、下記式(A1)で表される「MFR一次変化率」の値が25%以下であることが好ましい。
また、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、下記式(A2)で表される「MFR二次変化率」の値が40%以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、下記式(A3)で表される「MFR三次変化率」の値が55%以下であることが好ましい。
MFR一次変化率=(MFR1−MFR0)/MFR0×100[%]・・・(A1)
MFR二次変化率=(MFR2−MFR0)/MFR0×100[%]・・・(A2)
MFR三次変化率=(MFR3−MFR0)/MFR0×100[%]・・・(A3)
前記MFR二次変化率は、35%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
前記MFR三次変化率は、52%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、下記式(B2)で表される「溶融張力二次変化率」の値が70%以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、下記式(B3)で表される「溶融張力三次変化率」の値が80%以下であることが好ましい。
溶融張力一次変化率=(MT0−MT1)/MT0×100[%]・・・(B1)
溶融張力二次変化率=(MT0−MT2)/MT0×100[%]・・・(B2)
溶融張力三次変化率=(MT0−MT3)/MT0×100[%]・・・(B3)
前記溶融張力二次変化率は、65%以下であることがより好ましく、55%以下であることがさらに好ましい。
前記溶融張力三次変化率は、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
また、溶融張力一次変化率、溶融張力二次変化率、及び、溶融張力三次変化率のそれぞれの値の下限値は、通常、0%である。
また、溶融張力二次変化率や溶融張力三次変化率が上記のような範囲にあることで、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、リサイクル材の利用をさらに拡大させ得る。
即ち、本実施形態のポリ乳酸樹脂は、熱履歴による特性変化が少ないためバージン材(改質前の市販ペレット)に添加してもその特性を大きく低下させるおそれが低い。
また、発泡シートを製造する際の原料の一部にリサイクル材を用いても、押出条件などを大きく変更することなく良質な発泡シートを作製することができる。
このようなことから本実施形態のポリ乳酸樹脂や発泡シートは、より環境に優しい製品づくりを可能にさせ得る。
より詳しくは、口径が30mmの二軸押出機(L/D=42)を用い、二軸押出機の温度設定を、押出方向上流側から下流側に向かって、順に160℃、200℃、それ以降の温度を190℃に設定し、回転数140rpmの条件にて二軸押出機中で、溶融混練させ、押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数2個のダイから、10kg/hの吐出量で、この「二軸押出機」を通過させた後の状態を本明細書では「190℃で『溶融混練』がされた後の状態」として定めている。
なお、MFRや溶融張力の測定は、上記のように設定された「二軸押出機」にポリ乳酸樹脂を供給してストランド状に押出させ、このストランド状の試料を20℃の水を入れた1.5mの水槽中を通過させて冷却し、冷却された試料を切断してペレットを作製して求めることができる。
より詳しくは、このペレットのMFRや溶融張力を測定することで、ポリ乳酸樹脂の190℃で溶融混練がされた後のMFRや溶融張力の値を測定することができる。
即ち、発泡シートの原材料には、押出機を1回以上通過したポリ乳酸樹脂組成物を含有させてもよい。
ポリ乳酸樹脂発泡シート、ポリ乳酸樹脂発泡シートが熱成形されてなる発泡成形品、及び、該発泡成形品を製造する際に生じた端材の内の少なくとも1つを含むリサイクル材は、発泡シートを環境に優しい製品とする上において、発泡シートの原材料中に含まれる全てのポリ乳酸樹脂に占める質量割合が1%以上となるように発泡シートに含有させることが好ましく、5%以上となるように発泡シートに含有させることがより好ましい。
但し、リサイクル材は、発泡シートの物性を良好なものとする上において、前記質量割合が25%以下となるように発泡シートに含有させることが好ましく、20%以下となるように発泡シートに含有させることがより好ましい。
リサイクル材は、そのままの状態で発泡シートの原材料としても、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートなどによって改質を行ってから発泡シートの原材料としてもよい。
リサイクル材に改質を行う場合、リサイクル材とバージン材とを混合して二軸押出機などの溶融混練装置に供給し、該溶融混練装置でバージン材とともに改質することが好ましい。
前記改質工程で、改質するポリ乳酸樹脂の一部をリサイクル材とすると改質されたポリ乳酸樹脂に前記のような熱溶融特性を付与することが容易になるという利点を有する。
本発明のポリ乳酸樹脂発泡体は、射出成形品であってもビーズ発泡成形品等であってもよい。
即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
(試験例1−1)
(1)改質されたポリ乳酸樹脂の作製
ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo 8052D」、MFR=7.4g/10min、密度=1.24g/cm3)100質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬アクゾ社製「カヤカルボンBIC−75」、1分間半減期温度T1:158.8℃)0.5質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が57mmの二軸押出機(L/D=31.5)に供給した。
フィード部の設定温度を170℃、それ以降の温度を230℃に設定し、回転数150rpmの条件にて二軸押出機中で、前記混合物を溶融混練させ、押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数18個のダイから、50kg/hの吐出量で、混練物をストランド状に押し出した。
次いで、押し出されたストランド状の混練物を、30℃の水を収容した長さ2mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、改質されたポリ乳酸樹脂のペレットを得た。
試験例1−2〜1−7についてはポリ乳酸樹脂の種類や有機過酸化物の添加量(ポリ乳酸樹脂100質量部に対する添加量(phr))をそれぞれ変更した以外は試験例1−1と同様の方法で改質されたポリ乳酸樹脂を作製した。
試験例2−1〜2−4についてはt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートとは異なる有機過酸化物を用いて改質を行ったこと以外は、試験例1−1〜1−7と同様の方法で改質されたポリ乳酸樹脂を作製した。
尚、一部の例では、有機過酸化物ではなく鎖伸長剤による改質を行っている。
試験例1−1で得られたポリ乳酸樹脂100質量部と、気泡調整剤(松村産業(株)製「クラウンタルク」)1.0質量部とをドライブレンドして、混合物を作製した。
口径φ50mmの第1押出機(上流側)及び口径φ65mmの第2押出機(下流側)を備えたタンデム押出機において、口径φ50mmの第1の押出機に、得られた混合物をホッパーを通じて供給し、加熱溶融させた。
その後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)を第1押出機に圧入し、前記混合物とともに溶融混合させた。
次いで、この溶融混合物を口径65mmの第2の押出機に移送して押出発泡に適した温度に均一に冷却した後、口径70mmのサーキュラーダイから吐出量30kg/hで押出発泡させて、円筒状発泡体を得た。
得られた円筒状発泡体を内部が約20℃の水で冷却されているφ206mmのマンドレル上を沿わせ、またその外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、帯状の発泡シートを得た。
しかし、試験例2−2、2−3については、樹脂の溶融張力がなく安定したシートの引き取りができなかったため、発泡シートが得られなかった。
また、これらの改質された後のポリ乳酸樹脂の分子量分布曲線において、最大ピークTPよりも高分子量側にショルダーSL又は別ピークSPが存在しているかを確認した。
さらに、改質された後のポリ乳酸樹脂のMFR(190℃、2.16kg)、及び、溶融張力(at190℃)を測定した。
そして、作製された発泡シートについては見掛け密度、及び、連続気泡率を測定した。
さらに、発泡シートについては、目視にて外観を観察し、以下の基準で判定した。
(発泡体の外観)
○:発泡が均一で外観美麗。
△:発泡は均一だがシート表面に一部ブツが見られる。
×:気泡が不均一で顕著な破泡が見られる。又はシート表面に多数のブツが見られる。
以上の評価結果を表4に示す。
(試験例3−1)
第1の評価検討での試験例1−4と同じく、Nature Works社製のポリ乳酸樹脂(商品名「Biopolymer Ingeo 4032D」)とt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートとを100:0.5の割合で用いて改質されたポリ乳酸樹脂を作製した。
その結果、伸長粘度測定では、伸長速度の増大にともなって伸長粘度が増大し、横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフには、上向きに凸となるピークが出現しないことがわかった。
さらに、発泡シートに対し、長手方向が押出方向となるようにダンベル状試験片を採取して、該ダンベル状試験片により引張強さの測定を実施した。
発泡用としてユニチカ社から市販されているポリ乳酸樹脂(商品名「テラマック HV−6250H」、MFR:1〜3g/10min、引張強さ:69MPa(メーカー公表値))を用意した(改質せず)。
なお、試験例4−1のポリ乳酸樹脂では、伸長粘度測定の結果を横軸が伸長速度、縦軸が伸長粘度となったグラフで表したところピークが見られた。
試験例4−1のポリ乳酸樹脂についても発泡シートを作製し、試験例3−1と同様に評価した。
結果を、下記表5に示す。
尚、写真は、押出方向(MD)に沿って切断した際の断面と、押出方向と直交する方向(TD)に沿って切断した際の断面とをそれぞれ撮影した。
この写真から、試験例3−1では、気泡膜が厚く、高い引張強度を発揮させるのに有利な発泡シートが得られていることがわかる。
(試験例5−1)
ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo 4032D」、MFR=4.4g/10min、密度=1.24g/cm3)100質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬アクゾ社製「カヤカルボンBIC−75」、1分間半減期温度T1:158.8℃)0.5質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が30mmの二軸押出機(L/D=42)に供給した。
二軸押出機の温度設定を、フィード部の設定温度を160℃、それ以降の温度を220℃に設定し、回転数180rpmの条件にて二軸押出機中で、前記混合物を溶融混練させ、押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数2個のダイから、10kg/hの吐出量で、混練物をストランド状に押出した。
次いで、押出されたストランド状の混練物を、20℃の水を収容した長さ1.5mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、改質されたポリ乳酸樹脂のペレットを得た。
そして、試験例5−1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂に対し、190℃での溶融混練を合計3度実施し、都度、MFRと溶融張力とを測定することにより、MFR一次変化率、MFR二次変化率、MFR三次変化率、溶融張力一次変化率、溶融張力二次変化率及び、溶融張力三次変化率を測定した。
ポリ乳酸樹脂とt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートとの比率を、それぞれ100:0.3(試験例5−2)、100:0.7(試験例5−3)とした以外は試験例5−1と同様の評価を実施した。
Nature Works社製のポリ乳酸樹脂(商品名「Biopolymer Ingeo 8052D」)に対し、改質を行うことなく試験例5−1〜5−3と同様の評価を実施した。
ユニチカ社から市販されているポリ乳酸樹脂(商品名「テラマック HV−6250H」)に対し、改質を行うことなく試験例5−1〜5−3と同様の評価を実施した。
これらの結果を下記表6に示す。
Claims (3)
- ポリ乳酸樹脂を含有し、
該ポリ乳酸樹脂は、
190℃での伸長粘度測定において破断点での伸長粘度が0.5MPa・s以上で、且つ、
前記伸長粘度測定では、伸長速度の増大にともなって伸長粘度が増大し、横軸を伸長速度、縦軸を伸長粘度としたグラフにピークが出現しないポリ乳酸樹脂発泡体。 - 押出発泡シートであり、
押出方向における引張強さが6MPa以上である請求項1記載のポリ乳酸樹脂発泡体。 - 押出発泡シートであり、
190℃での伸長粘度測定において破断点での伸長粘度が0.05MPa・s以上である請求項1記載のポリ乳酸樹脂発泡体。
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