JP2019183026A - 樹脂組成物、成形体、車両用部材及び車両用ランプカバー - Google Patents

樹脂組成物、成形体、車両用部材及び車両用ランプカバー Download PDF

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晃和 松本
Akikazu Matsumoto
晃和 松本
春樹 岡田
Haruki Okada
春樹 岡田
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Abstract

【課題】透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性に優れる樹脂組成物を提供する。【解決手段】コロイダルシリカ(S)にアクリル樹脂(A)が吸着したアクリル−シリカ複合体(X)と、アクリル樹脂(B)とを含む樹脂組成物であって、アクリル樹脂(B)が、メチルメタクリレートの単独重合体、又は、該アクリル樹脂(B)の総質量に対して、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の含有割合が、該アクリル樹脂(B)の総質量に対して、95質量%以上100質量%未満であるメチルメタクリレート共重合体である樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物、成形体、車両用部材及び車両用ランプカバーに関する。
アクリル樹脂は、その優れた透明性や寸法安定性から、光学材料、車両用部品、照明用材料、建築用材料等、様々な分野で幅広く用いられている。最近では、車両の内外装材料等の車両用部材の用途で、特に車両ランプカバーに用いられつつある。
上記の用途では、意匠性の面で、透明で存在感の低いことが求められるため、透明性に優れたアクリル樹脂が要求されている。
また、車両用部材や建築用材料の用途では、人や物との接触により製品に傷が付くことがあるため、耐傷付性に優れたアクリル樹脂が要求されている。
さらに近年は、車両用部材の用途、特にテールランプやヘッドランプ等のランプカバーの用途では、高温環境下や屋外でアクリル樹脂を使用する検討が進められており、耐熱性、耐候性に優れたアクリル樹脂が要求されている。
アクリル樹脂の透明性を維持しつつ、得られた成形体の耐傷付性を向上するために、例えば、特許文献1には、アクリル樹脂粒子の水分散液とコロイダルシリカ粒子の水分散液を混合後に、塩析凝固を行って粉末状のコロイダルシリカ−アクリル樹脂複合体を得る技術が開示されている。
特許文献2には、特定の乳化剤を用いて乳化重合して得られた重合体粒子の水分散液と、コロイダルシリカ粒子の水分散液を混合後に、特定の表面改質剤を添加して、コロイダルシリカ−アクリル樹脂複合体を得る技術が開示されている。
特許文献3には、カップリング剤により表面改質されたナノ無機粒子に、ラジカル重合性モノマーからなる有機重合物を結合させた有機無機複合組成物が開示されている。
特許文献4には、アクリル樹脂粒子の水分散液とコロイダルシリカ粒子の水分散液を混合後に、凍結、融解させることでコロイダルシリカ−アクリル樹脂複合体を得る技術が開示されている。
WO96/034036号公報 特開平10−182841号公報 特開2011−137082号公報 特開2015−193833号公報
特許文献1、2に開示されているコロイダルシリカ−アクリル樹脂複合体は、耐傷付性と耐熱性に優れる複合体においては耐候性に劣り、耐候性に優れる複合体は耐傷付性と耐熱性に劣っていた。すなわち、耐傷付性・耐熱性と耐候性とを両立できなかった。
特許文献3に開示されている方法では、有機無機複合組成物を得るために多くの工程、時間を要するため工業的な手法として不適であった。さらに、得られた成形体では、有機無機複合組成物(コロイダルシリカ)が凝集しやすい傾向にあり、成形体の透明性が不十分であった。
特許文献4に開示されているコロイダルシリカ−アクリル樹脂複合体は、アクリル樹脂中で、コロイダルシリカが凝集しているため、得られた成形体の透明性が不十分であった。さらに、十分な量のコロイダルシリカをアクリル樹脂中に導入できないため、得られた成形体の耐傷付性は不十分であった。
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性に優れる樹脂組成物を提供することにある。
本発明の樹脂組成物は、透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性に優れており、光学材料、車両用部品、照明用材料、建築用材料の用途、特に車両用部材のテールランプやヘッドランプ等のランプカバーとして好適である。
本発明は、以下の構成を有する。
本発明の第1の要旨は、コロイダルシリカ(S)に重量平均分子量Waが10,000〜40,000であるアクリル樹脂(A)が吸着したアクリル−シリカ複合体(X)と、アクリル樹脂(B)とを含む樹脂組成物であって、アクリル樹脂(B)が、メチルメタクリレートの単独重合体、又は、該アクリル樹脂(B)の総質量に対して、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の含有割合が、該アクリル樹脂(B)の総質量に対して、95質量%以上100質量%未満であるメチルメタクリレート共重合体である樹脂組成物にある。
本発明の第2の要旨は、前記樹脂組成物を含む成形体にある。
本発明の第3の要旨は、前記樹脂組成物を含む車両用部材にある。
本発明の第4の要旨は、前記樹脂組成物を含む車両ランプカバーにある。
本発明により、透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性に優れた樹脂組成物を得ることができ、かつ、高い透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性を有する成形体、車両用部材及び車両ランプカバーを安定に提供することができる。
本発明において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種を意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」から選ばれる少なくとも1種を意味する。
本発明において、「単量体」は未重合の化合物を意味し、「繰り返し単位」は単量体が重合することによって形成された前記単量体に由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
特に断らない限り、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる特定の成分の含有率を示す。
特に断らない限り、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A〜B」は、A以上B以下であることを意味する。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、後述するコロイダルシリカ(S)に後述するアクリル樹脂(A)が吸着したアクリル−シリカ複合体(X)と、後述するアクリル樹脂(B)とを含む樹脂組成物である。
アクリル−シリカ複合体(X)とアクリル樹脂(B)を含むことにより、樹脂組成物の透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性が良好となり、さらに、得られた成形体の透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性は良好となる。
本発明の樹脂組成物は、該樹脂組成物の総質量100質量部に対して、アクリル−シリカ複合体(X)10質量部以上50質量部以下とアクリル樹脂(B)50質量部以上90質量部以下を含むことができる。
前記樹脂組成物のアクリル樹脂(B)の含有量の下限は、樹脂組成物が透明性、耐熱性及び耐候性に優れる観点から、該樹脂組成物の総質量100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、55質量部以上がより好ましく、60質量部以上がさらに好ましく、70質量部以上が特に好ましい。前記樹脂組成物のアクリル樹脂(B)の含有量の上限は、樹脂組成物から得られた成形体の耐傷付性が優れる観点から、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
前記樹脂組成物のアクリル−シリカ複合体(X)の含有量の下限は、樹脂組成物から得られた成形体の耐傷付性が優れる観点から、該樹脂組成物の総質量100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。前記樹脂組成物のアクリル−シリカ複合体(X)の含有量の上限は、樹脂組成物の透明性、耐熱性及び耐候性に優れる観点から、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
樹脂組成物中のコロイダルシリカ(S)の含有量(単位:質量部)は樹脂組成物の総質量を100質量%として、後述するシリカ含有率(単位:質量%)を測定することで算出した。樹脂組成物中のコロイダルシリカ(S)の含有量は該樹脂組成物の総質量100質量部に対して、2質量部以上35質量部以下が好ましい。
前記樹脂組成物のコロイダルシリカ(S)の含有量の下限は、樹脂組成物が耐傷付性に優れる観点から、該樹脂組成物の総質量100質量部に対して、2質量部以上が好ましい。10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。前記樹脂組成物のコロイダルシリカ(S)の含有量の上限は、樹脂組成物から得られた成形体の透明性、耐候性、溶融流動性が優れる観点から、35質量部以下が好ましい。30質量部以下がより好ましく、25質量部以下がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、アクリル樹脂(B)、アクリル−シリカ複合体(X)以外に、他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、光拡散剤、艶消剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、顔料等の着色剤等が挙げられる。これらの他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<アクリル樹脂(B)>
アクリル樹脂(B)は、本発明の樹脂組成物の構成成分の1つである。
本発明におけるアクリル樹脂(B)は、メチルメタクリレート(MMA)の単独重合体であるか、又は、MMA由来の繰り返し単位(MMA単位)の含有率が、該アクリル樹脂(B)の総質量100質量%に対して、95質量%以上100質量%未満であるメチルメタクリレート共重合体(以下、「重合体(B1)」ともいう。)を挙げることができる。
<重合体(B1)>
重合体(B1)は、MMA単位95質量%以上100質量%未満と、後述する他の単量体由来の繰り返し単位(他の単量体単位)0質量%を超え5質量%以下とを含有するMMA共重合体である。
前記重合体(B1)において、MMA単位の含有率の下限は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくいことから、該重合体(B1)の総質量に対して、95質量%以上が好ましく、96質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。MMA単位の含有率の上限は、コロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性及び透明性に優れる観点から、99.9質量%以下が好ましい。
重合体(B1)中の、他の単量体単位の含有率の上限は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくい観点から、該重合体(B1)の総質量に対して、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。一方、重合体(A1)中の他の単量体単位の含有率の下限は、コロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性及び透明性に優れる観点から、0.1質量%以上好ましい。
<他の単量体>
他の単量体は、MMAと共重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、例えば、以下のa)〜f)が挙げられる。
a) (メタ)アクリル酸エステル単量体としては、具体的には、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、(シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレートなどのメチルメタクリレート以外の(メタ)アクリル酸エステル化合物。
b)スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−メトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、α−ビニルナフタレン、2−ビニルフルオレンなどの芳香族ビニル化合物。
c)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどの不飽和ニトリル化合物。
d)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテルなどのエチレン性不飽和エーテル化合物。
e)塩化ビニル、塩化ビニリデン、1,2−ジクロロエチレン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、1,2−ジブロモエチレンなどのハロゲン化ビニル化合物。
f)1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,2ジクロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖および側鎖共役ヘキサジエンなどの脂肪族共役ジエン系化合物。
これらの他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの他の単量体の中でも、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくく、成形体の耐熱分解性に優れる傾向にあることから、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレートがより好ましい。
<アクリル樹脂(B)の製造方法>
本発明におけるアクリル樹脂(B)は、前記MMAを含む単量体原料(1)を、公知の重合方法を用いて重合することで得られる。
前記単量体原料(1)中に含まれるMMAの含有率の下限は、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性と透明性に優れる観点から、該単量体原料(1)の総質量100質量%に対して、95質量%以上が好ましく、96質量%以上がより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。一方、単量体原料(1)中のMMA単位の含有率の上限は、特に制限されるものではなく、該単量体原料(1)の総質量に対して、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
また、本発明におけるアクリル樹脂(B)が、前記重合体(B1)のときは、MMAを95質量%以上100質量%未満と、前記他の単量体を0質量%を超え5質量%以下を含む単量体原料(2)を、公知の重合方法を用いて重合することで得られる。
前記単量体原料(2)中に含まれるMMAの含有率の下限は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくいことから、該単量体原料(2)の総質量に対して、95質量%以上が好ましく、96質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい、MMAの含有率の上限は、コロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性及び透明性に優れる観点から、99.9質量%以下が好ましい。
前記単量体原料(2)中に含まれる他の単量体の含有率の上限は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくい観点から、該単量体原料(2)の総質量に対して、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。一方、他の単量体の含有率の下限は、コロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性及び透明性に優れる観点から、0.1質量%以上が好ましい
前記他の単量体は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくく、成形体が耐熱分解性に優れる傾向にあることから、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレートがより好ましい。
単量体の重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等が挙げられる。これらの重合方法の中でも、後述するアクリル樹脂(B)とアクリル−シリカ複合体(X)との複合化が容易となる観点から、塊状重合、懸濁重合、乳化重合が好ましい。
アクリル樹脂(B)の質量平均分子量を調整するために、前記単量体原料を重合する際に、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、公知のメルカプタン化合物、α−メチルスチレンダイマー、公知のテルピノレン系化合物等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の使用量は、前記単量体原料100質量部に対して、0.05質量部以上2質量部以下が好ましく、0.07質量部以上1.5質量部以下がより好ましい。連鎖移動剤の使用量が0.05質量部以上であると、樹脂組成物の溶融流動性に優れる。また、連鎖移動剤の使用量が2質量部以下であると、樹脂組成物及び得られた成形体の力学強度に優れる。
<アクリル−シリカ複合体(X)>
アクリル−シリカ複合体(X)は、本発明の樹脂組成物の構成成分の1つである。
本発明におけるアクリル−シリカ複合体(X)は、後述するコロイダルシリカ(S)に後述するアクリル樹脂(A)が吸着したアクリル−シリカ複合体である。
本明細書において、「吸着」とは、ファンデルワールス力等によって弱く表面に束縛されている状態(物理吸着)、または、吸着した分子(原子)と表面の間で電子の交換が行われ、分子と表面の間に強い結合(共有結合、イオン結合、金属結合、配位結合)が生じている状態(化学吸着)のことをいう。
アクリル−シリカ複合体(X)中のコロイダルシリカ(S)の含有率の下限は、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性と透明性に優れる観点から、該アクリル−シリカ複合体(X)の総質量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。一方、アクリル−シリカ複合体(X)中のコロイダルシリカ(S)の含有率の上限は、アクリル−シリカ複合体(X)又は樹脂組成物の溶融流動性の観点から、アクリル−シリカ複合体(X)の総質量100質量%に対して、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
アクリル−シリカ複合体(X)中のアクリル樹脂(A)の含有率の下限は、アクリル−シリカ複合体(X)又は樹脂組成物の溶融流動性の観点から、該樹脂組成物の総質量に対して、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。一方、アクリル−シリカ複合体(X)中のアクリル樹脂(A)の含有率の上限は、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性と透明性に優れる観点から、アクリル−シリカ複合体(X)の総質量100質量%に対して、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
<コロイダルシリカ(S)>
コロイダルシリカ(S)は、アクリル−シリカ複合体(X)の構成成分の1つである。
本発明の樹脂組成物がコロイダルシリカ(S)を含むことにより、樹脂組成物を成形した成形体の耐傷付性は優れたものになる。
本発明に用いるコロイダルシリカ(S)としては、水を分散媒としたコロイダルシリカを使用でき、市販のコロイダルシリカ水分散液を使用できる。具体的には、スノーテックスO(商品名、日産化学工業(株)製、コロイダルシリカの平均粒子径15nm、シリカ含量20質量%)や、スノーテックスO−40(商品名、日産化学工業(株)製、コロイダルシリカの平均粒子径25nm、シリカ含量40質量%)、スノーテックスOL(商品名、日産化学工業(株)製、コロイダルシリカの平均粒子径50nm、シリカ含量20質量%)を用いることができる。
本発明で好ましく用いられるコロイダルシリカは、樹脂組成物及び成形体の耐傷付性と透明性が良好となる観点から、平均粒子径が30nm以下のものが好ましく、20nm以下のものがより好ましい。
本発明の樹脂組成物及び前記樹脂組成物を成形して得られる成形体に含まれるコロイダルシリカ(S)の粒子(以下、適宜「シリカ粒子」と略する。)の平均一次粒子径は1nm以上30nm以下が好ましい。シリカ粒子の平均一次粒子径が1nm以上であると樹脂組成物の溶融流動性に優れる。シリカ粒子の平均一次粒子径が30nm以下であると、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性と透明性に優れる。シリカ粒子の平均一次粒子径は5nm以上30nm以下であることがより好ましく、10nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、「平均一次粒子径」とは、ミクロトーム等を用いて成形体から切り出した小片の任意の断面において、透過型電子顕微鏡の観察像上において観察された任意のシリカ粒子30個について、シリカ粒子の一次粒子径の最大粒径を測定し、平均した値である。なお、凝集粒子とは、シリカ粒子の一次粒子が接触して形成された二次粒子のことをいう。
シリカ粒子は、表面処理されていないものを用いても良いが、本発明においては、樹脂組成物中におけるシリカ粒子の分散状態が良好となる観点から、シリカ粒子の表面が有機ケイ素化合物により表面処理されているものを用いてもよい。表面修飾剤を使用する際には、必要に応じて、公知の反応触媒を用いることができる。
前記表面修飾剤としては、例えば、公知のシリル化剤や公知のシランカップリング剤等の有機ケイ素化合物が挙げられる。
前記表面修飾剤としては、具体的には下記のi)又はii)が挙げられる。
i)メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン(TMES)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、シラノール基やアルコキシシリル基を有するポリジメチルシロキサン化合物
ii)γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(γMPTMS)、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(γMPMDMS)等のメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物
前記表面修飾剤は、ポリジメチルシロキサン化合物及びメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物の少なくとも1種を含むことができる。
前記表面修飾剤の中でも、メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物は、アクリル樹脂(A)を重合する際に前記連鎖移動剤と併用して用いる、又は、単独で連鎖移動剤として用いることで、アクリル樹脂(A)中にアルコキシシリル基を導入できるので、樹脂組成物中のコロイダルシリカ(S)の分散状態を良好なものとし、成形体の耐傷付性と透明性をより向上することができる。
上記のメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば下記一般式(I)で示される化合物が挙げられる。
HS(CHSiR (OR3−n (I)
[式(I)中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、Rは水素原子又はエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基、nは0〜2の整数、pは1〜10の整数を表す。]
前記一般式(I)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物の中でも、樹脂組成物中でのシリカ粒子の分散状態を良好にでき、得られる成形体の耐傷付性と透明性をより向上できる観点から、γMPTMS、γMPMDMSが好ましい。
或いは又、コロイダルシリカの表面が、シリル化剤やシランカップリング剤等の表面修飾剤で予め表面処理されて、有機溶剤中に分散されたコロイダルシリカの有機溶剤分散液を使用できる。具体的には市販のMEK−ST−40(商品名、日産化学工業株式会社製、一次粒子径が15nmの表面有機修飾コロイダルシリカ粒子がMEK中に分散しており、該シリカ粒子の濃度が40重量%であるコロイダルシリカ分散MEK溶液)、EAc−ST(商品名、日産化学工業株式会社製、一次粒子径が20nmのシリカ粒子が酢酸エチル中に分散しており、該シリカ粒子の濃度が30重量%であるコロイダルシリカ分散酢酸エチル溶液)などを用いることが出来る。
<アクリル樹脂(A)>
アクリル樹脂(A)は、アクリル−シリカ複合体(X)の構成成分の1つである。
本発明におけるアクリル樹脂(A)は、メチル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位(以下、「メチル(メタ)アクリレート単位」と略する。)を、該アクリル樹脂(A)の総質量100質量%に対して、50質量%以上含む重合体である。
アクリル樹脂(A)中のメチル(メタ)アクリレート単位の含有率の下限は、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性と透明性に優れる観点から、該アクリル樹脂(A)の総質量に対して、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。一方、アクリル樹脂(A)中のメチル(メタ)アクリレート単位の含有率の上限は、特に制限されるものではなく、該アクリル樹脂(A)の総質量に対して、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
また、本発明におけるアクリル樹脂(A)の別の一実施形態としては、メチルメタクリレート(MMA)の単独重合体であるか、又は、MMA由来の繰り返し単位(MMA単位)の含有率が、該アクリル樹脂(A)の総質量に対して、70質量%以上100質量%未満であるメチルメタクリレート共重合体(以下、「重合体(A1)」とも言う。)を挙げることができる。
<重合体(A1)>
重合体(A1)は、MMA単位70質量%以上100質量%未満と、後述する他の単量体由来の繰り返し単位(他の単量体単位)0質量%を超え30質量%以下とを含有するMMA共重合体である。
前記重合体(A1)において、MMA単位の含有率の下限は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくいことから、該重合体(A1)の総質量に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。MMA単位の含有率の上限は、コロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性及び透明性に優れる観点から、99.5質量%以下が好ましく、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
重合体(A1)中の、他の単量体単位の含有率の上限は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくい観点から、該重合体(A1)の総質量に対して、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。一方、重合体(A1)中の他の単量体単位の含有率の下限は、コロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性及び透明性に優れる観点から、0.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。
他の単量体としては、上記のアクリル樹脂(B)の重合体(B1)に用いられる単量体と同様の単量体を、適宜選択して用いることが出来る。これらの他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の他の単量体の中でも、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくく、成形体の耐熱分解性に優れる傾向にあることから、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレートがより好ましい。
<アクリル樹脂(A)の製造方法>
本発明におけるアクリル樹脂(A)は、前記メチル(メタ)アクリレートを含む単量体原料(3)を、公知の重合方法を用いて重合することで得られる。具体的には、上述した、アクリル樹脂(B)の製造方法と同様の方法を用いることができる。
前記単量体原料(3)中に含まれるメチル(メタ)アクリレートの含有率の下限は、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性と透明性に優れる観点から、該単量体原料(3)の総質量100質量%に対して、70質量%以上が好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。一方、単量体原料(3)中のメチル(メタ)アクリレート単位の含有率の上限は、特に制限されるものではなく、該単量体原料(3)の総質量に対して、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。
また、本発明におけるアクリル樹脂(A)が、前記重合体(A1)のときは、MMAを70質量%以上100質量%未満と、前記他の単量体を0質量%を超え30質量%以下を含む単量体原料(4)を、公知の重合方法を用いて重合することで得られる。具体的には、上述した、アクリル樹脂(B)の製造方法と同様の方法を用いることができる。
前記単量体原料(4)中に含まれるMMAの含有率の下限は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくいことから、該単量体原料(4)の総質量に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。MMAの含有率の上限は、コロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性及び透明性に優れる観点から、99.5質量%以下が好ましく、98質量%以下が好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
前記単量体原料(4)中に含まれる他の単量体の含有率の上限は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくい観点から、該単量体原料(4)の総質量に対して、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。一方、他の単量体の含有率の下限は、コロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、樹脂組成物及び得られた成形体の耐傷付性及び透明性に優れる観点から、0.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。
前記他の単量体は、(メタ)アクリル樹脂本来の性能を損ないにくく、成形体が耐熱分解性に優れる傾向にあることから、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレートがより好ましい。
連鎖移動剤の使用量は、前記単量体原料100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.3質量部以上8質量部以下がより好ましい。連鎖移動剤の使用量が0.1質量部以上であると、樹脂組成物の溶融流動性に優れる。また、連鎖移動剤の使用量が10質量部以下であると、樹脂組成物及び得られた成形体の力学強度に優れる。
また、アクリル樹脂(A)を重合する際に、前記連鎖移動剤に、メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物を併用、あるいは単独で用いることにより、アクリル樹脂(A)中にアルコキシシリル基を導入できるので、樹脂組成物中のコロイダルシリカ(S)の分散状態が良好となり、成形体の耐傷付性と透明性をより向上することができる。
前記メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物としては、上記一般式(I)で示される化合物が挙げられる。
<アクリル−シリカ複合体(X)の製造方法>
本発明のアクリル−シリカ複合体(X)は、アクリル樹脂(A)とコロイダルシリカ(S)を複合して得ることができる。アクリル樹脂(A)とコロイダルシリカ(S)を複合する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂(A)の粒子の水分散液(以下、「アクリル樹脂(A)の水分散液」と略する。)とコロイダルシリカ(S)の粒子の水分散液(以下、「コロイダルシリカ(S)の水分散液」と略する。)とを、乳化重合法又は懸濁重合法を用いて混合した後に、凍結、融解させてアクリル樹脂(A)とコロイダルシリカ(S)を複合した後、水を分離して、アクリル−シリカ複合体(X)の粒子を得る方法が挙げられる。
<アクリル−シリカ複合体(X)を乳化重合法で得る場合>
本発明のアクリル−シリカ複合体(X)を乳化重合法で得る場合には、乳化重合後のアクリル樹脂(A)の水分散液に、表面修飾されていないコロイダルシリカ(S)の水分散液を混合し、ヘテロ凝集を発生させ、その後に水を分離して、アクリル−シリカ複合体(X)の粒子を得る方法を用いることができる。以下、乳化重合法について説明する。
乳化重合を行う際に用いるラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば第三ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化剤と、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方、含糖ピロリン酸鉄処方/スルホキシレート処方の混合処方等の還元剤との組み合わせによるレドックス系の開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物等を挙げることができるが、好ましくはレドックス系の開始剤である。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、周知技術にしたがって適宜設定すればよい。
乳化重合に用いる乳化剤としては、公知の乳化剤が使用でき、例えば、下記a)〜c)の乳化剤が挙げられる
a)ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェートナトリウム塩やポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルフォスフェートナトリウム塩、モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸ナトリウム塩等のリン酸塩系乳化剤
b)オレイン酸カリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルサルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸カリウム等のカルボン酸塩系乳化剤
c)ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のノニオン系乳化剤
前記乳化剤のなかでも、リン酸塩系乳化剤及びカルボン酸塩系乳化剤がより好ましく、リン酸塩系乳化剤がさらに好ましい。リン酸塩系乳化剤を用いると、アクリル樹脂(A)の乳化重合ラテックス中にコロイダルシリカ(S)を添加したときに本発明のアクリル−シリカ複合体(X)中に最も効率的にコロイダルシリカ(S)を導入できる利点を有する。
前記リン酸塩系乳化剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェートやポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルフォスフェート等に代表されるリン酸系乳化剤や、前記リン酸塩系乳化剤のリン酸基を一部含有して界面活性能を有するポリマーも含むものとする。
また、スルホン酸塩系乳化剤を上記の乳化剤と併用できる。併用するスルホン酸塩系乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、周知技術にしたがって適宜設定すればよい。
また、必要に応じて各種電解質、pH調節剤等を併用することができる。
乳化重合は、重合温度5〜100℃、好ましくは40〜95℃、重合時間0.1〜24時間程度の条件で行われる。単量体を反応器に添加する方法は、一括でも分割でも連続的添加でもよく、また、それらの併用でもよい。
本発明においては負に荷電したアクリル樹脂(A)の粒子の水分散液を用いることが好ましい。もし正に荷電したアクリル樹脂(A)の水分散液を用いて後述するコロイダルシリカ(S)の水分散液との混合を行うと、アクリル樹脂(A)の粒子(正に荷電)とコロイダルシリカ(S)の粒子(負に荷電)が逆符号の荷電を有することとなるため、電気的引力による凝集が急激すぎて不均一な凝集が起こる。そうなると混合系が不安定となって、重合容器内の成分の固化や凝集物(カレット)の生成などが起こり、工程上好ましくない。また、コロイダルシリカ(S)の粒子がアクリル樹脂(A)の粒子の回りに一次粒子の状態を保ったまま均一に付着した構造を有するアクリル−シリカ複合体(X)が生成しないので、本発明で目的とする、コロイダルシリカ(S)が一次粒子の状態でアクリル−シリカ複合体(X)中に分散することによって得られる性能である成形体の耐傷付性や透明性が発現しなくなる。
アクリル樹脂(A)の水分散液とコロイダルシリカ(S)の水分散液を混合する方法は、前述したようにして得られたアクリル樹脂(A)の水分散液にコロイダルシリカ(S)の水分散液を添加し、室温〜100℃の温度で任意の時間撹拌すればよい。この撹拌によりアクリル−シリカ複合体(X)の水分散液が得られる。
アクリル樹脂(A)の水分散液とコロイダルシリカ(S)の水分散液を混合する際には、アクリル−シリカ複合体(X)中におけるシリカ粒子の分散状態が良好となる観点から、コロイダルシリカ(S)の粒子を表面処理するために、公知のシリル化剤や公知のシランカップリング剤等の有機ケイ素化合物を表面修飾剤として添加しても良い。
本発明の製造方法において、乳化重合を用いる場合、前記表面修飾剤を添加するために、下記の工程1及び工程2の少なくとも一方を含むことができる。
工程1)表面修飾剤の存在下でアクリル樹脂(A)の水分散液を製造した後、コロイダルシリカ(S)の水分散液を混合する。
工程2)アクリル樹脂(A)の水分散液とコロイダルシリカ(S)の水分散液を混合する際に、表面修飾剤を添加する。
工程1及び工程2の少なくとも一方の工程を含むことにより、アクリル−シリカ複合体(X)中におけるシリカ粒子の分散状態が良好となる。
表面修飾剤としては、上述したコロイダルシリカ(S)の項に記載した表面修飾剤と同じものを使用できる。具体的には、表面修飾剤は、前記ポリジメチルシロキサン化合物及び前記メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。また、前記メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物は、前記一般式(I)で示される化合物が好ましい。
アクリル−シリカ複合体(X)の水分散液から水を分離する方法としては、塩凝固法、酸凝固法等の凝固法や、噴霧乾燥法(スプレードライ法)等が挙げられる。
凝固法の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、酢酸カルシウム等の塩、又は硫酸等の酸の水溶液に、得られたアクリル−シリカ複合体(X)の水分散液を添加し、必要に応じて加熱して凝析させる方法が例示される。また、塩又は酸の水溶液の代わりに、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール等の水に可溶で、アクリル樹脂の重合体を溶解しない溶剤を用い、これに得られたアクリル−シリカ複合体(X)の水分散液を添加し、加熱することによっても凝固は可能である。
アクリル−シリカ複合体(X)の水分散液から水を分離して得られた粉末状生成物は、水洗した後、蒸気式乾燥機等の公知の手段を用いて乾燥され、アクリル−シリカ複合体(X)の粒子を得ることができる。
<アクリル−シリカ複合体(X)を懸濁重合法で得る場合>
アクリル樹脂(A)とコロイダルシリカ(S)の複合方法として、アクリル樹脂(A)を懸濁重合法で得る場合には、シリル化剤やシランカップリング剤等の表面修飾剤で表面処理されたコロイダルシリカの有機溶剤分散液について、有機溶剤をメチル(メタ)アクリレート単量体で置換することで得られる、表面修飾コロイダルシリカ(S)のメチル(メタ)アクリレート分散液を水中で激しく撹拌しながら重合し、その後に、公知の手段を用いて水を分離して、アクリル−シリカ複合体(X)の粒子を得ることができる。
懸濁重合は、重合温度5〜100℃、好ましくは40〜95℃、重合時間0.1〜24時間程度の条件で行われる。単量体を反応器に添加する方法は、一括でも分割でも連続的添加でもよく、また、それらの併用でもよい。
上記の乳化重合法又は懸濁重合法等の方法で得られたアクリル−シリカ複合体(X)の粒子の平均粒径は、特に限定されるものではなく、20nm以上500nm以下とすることができる。アクリル−シリカ複合体(X)粒子の平均粒径の下限が20nm以上であるとアクリル−シリカ複合体(X)の粉体の取扱い性に優れている。アクリル−シリカ複合体(X)粒子の平均粒径の上限が500nm以下であると、アクリル−シリカ複合体(X)中でのコロイダルシリカの一次粒子の分散状態が良好となる。アクリル−シリカ複合体(X)粒子の平均粒径は、40nm以上300nm以下がより好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上記の方法等で得られたアクリル−シリカ複合体(X)と、アクリル樹脂(B)の混合物を、押出機又は混練機により加熱し溶融混練することで、ペレット状に加工される。
本発明の製造方法においては、前記混合物を溶融混練する際に計測される樹脂組成物の温度は、200℃以上280℃以下とする必要がある。溶融混練時の樹脂組成物の温度の下限が200℃以上であると、溶融混練中の樹脂組成物の流動性が良好となり、溶融混練中の樹脂組成物の溶融粘度を低くできるので、コロイダルシリカ(S)の一次粒子を均一に分散することができ、得られる樹脂組成物及び得られた成形体は耐傷付性と透明性に優れる。また、溶融混練時の樹脂組成物の温度の上限が280℃以下であると、溶融混練中に樹脂組成物の溶融粘度が低下しすぎて、コロイダルシリカ(S)の一次粒子が凝集することを抑制できるので、得られる樹脂組成物及び得られた成形体は耐傷付性と透明性に優れる。
本発明の樹脂組成物をペレット状に加工する際には、要求される性能に応じて、樹脂組成物と、公知の熱可塑性樹脂または公知の重合体とを任意の割合でブレンドして用いることもできる。また、重合体に熱硬化性樹脂が用いられている場合には、熱可塑性の重合体とブレンドすることにより、熱可塑性樹脂組成物として用いることができる。
<樹脂組成物>
上記の製造方法で得られたアクリル樹脂(A)の重量平均分子量Waの上限は、10,000以上である。また、樹脂組成物の力学物性に優れる観点から15,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましい。また、アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Waの下限は、40,000以下である。また樹脂組成物の溶融流動性に優れ、得られた樹脂成形体の透明性に優れる観点から35,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましい。
上記の製造方法で得られたアクリル樹脂(B)の質量平均分子量Wbは、25,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましく、35,000以上が更に好ましい。また400,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、200,000以下が更に好ましい。アクリル樹脂(B)の質量平均分子量Wbが25,000以上であると、樹脂組成物の力学物性に優れる。また、アクリル樹脂(B)の質量平均分子量Wbが400,000以下であると、樹脂組成物の溶融流動性に優れる。
なお、本明細書において、質量平均分子量は、標準試料として標準ポリメチルメタクリレートを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値とする。
本発明の樹脂組成物において、アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Waを、アクリル樹脂(B)の重量平均分子量Wbで除した値(Wa/Wb)は、下記式(1)を満たしてもよい。
0.1≦Wa/Wb≦0.4 (1)
Wa/Wbの下限は、特に限定されるものではないが、得られる樹脂成形体の耐傷付性に加え、力学特性が良好となる観点から、0.1以上が好ましい。0.15以上がより好ましく、0.18以上がさらに好ましい。一方、Wa/Wbの上限は、特に限定されるものではないが、得られる樹脂成形体の透明性及び耐候性が良好となる観点から、0.4以下が好ましい。0.3以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましい。
<成形体、車両用部材、車両用ランプカバー>
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形して得られる。
本発明の成形体を得るための成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、加圧成形(プレス成形)、圧空成形や真空成形等が挙げられる。
成形温度は、200℃以上280℃以下が好ましく、210℃以上270℃以下がより好ましい。成形温度が200℃以上であると、樹脂組成物の溶融流動性に優れ、特に成形方法として射出成形または押出成形を用いるときに、成形体の生産性に優れる。また、成形温度が280℃以下であると、樹脂組成物の粘度が必要以上に低下することを防止し、樹脂組成物中でのコロイダルシリカの一次粒子の凝集を阻害することができ、得られる成形体は耐傷付性と透明性に優れる。
また、得られた成形体を、さらに圧空成形法や真空成形法等の公知の成形方法を用いて二次成形してもよい。成形温度、成形圧力等の成形条件は、適宜設定すればよい。
本発明の成形体は、シリカ粒子同士が凝集せず、シリカ微粒子が一次粒子の状態で分散しており、且つ、成形体の表面近傍にシリカ微粒子が十分な濃度で存在しているので、成形体の透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性に優れ、光学材料、車両用部品、照明用材料、建築用材料等に用いることができる。
特に、車両用部品の中でも車両用ランプカバー、さらにその中で車両用ヘッドランプカバーの用途では、得られた成形体に高い透明性、耐傷付性、耐熱性及び耐候性が要求されているので、本発明の樹脂組成物及び成形体は、当該用途に初めて好適に用いることができるようになった。
その他の車両用部品としては、例えば、リアランプ内部の光学部材、ヘッドライト用のインナーレンズ(プロジェクターレンズやPESレンズと称される場合がある)、メーターカバー、ドアミラーハウジング、ピラーカバー(サッシュカバー)、ライセンスガーニッシュ、フロントグリル、フォグガーニッシュ、エンブレム等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<測定方法>
実施例及び比較例における評価は以下の方法により実施した。
<質量平均分子量>
実施例、比較例で得られたアクリル樹脂(A)又はアクリル樹脂(B)10mgを、10mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過して、試料溶液を得た。得られた試料溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(機種名「HLC−8320 GPC Eco SEC」、東ソー(株)製)を用い、質量平均分子量を測定した。分離カラムとして「TSKgel SuperHZM−H」(商品名、東ソー(株)製、内径4.6mm×長さ15cm)を2本直列にしたもの、溶媒としてテトラヒドロフラン、検出器として示差屈折計、標準試料として標準ポリメチルメタクリレートを用い、流量0.6ml/min、測定温度40℃、注入量0.1mlの条件とした。
<シリカ含有率>
実施例、比較例で得られた樹脂組成物を、JIS K7250のA法に準拠し、燃焼試験に供することで灰分の量を算出し、これを樹脂組成物のシリカ含有率とした。
<試験片の作製>
実施例、比較例で得られた樹脂組成物を、射出成形機(機種名:IS−100、東芝機械(株)製)に供給し、成形温度を240℃として射出成形し、板状の成形体(幅50mm、長さ100mm、厚さ3mm)及び棒状の成形体(幅8mm、長さ80mm、厚さ4mm)を得た。これらの成形体を評価用の試験片として用いた。
<コロイダルシリカの平均一次粒子径>
板状の試験片の任意の箇所を、試験片表面に対して垂直方向に切断した。次いで、該切断面からダイヤモンドナイフを用いて薄切片を切り出し、得られた薄切片を電子顕微鏡用のエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームを用いて約80nmの厚さの切片を切り出した。次いで、得られた切片について、透過型電子顕微鏡(機種名:H−7600、(株)日立ハイテクノロジーズ製、加速電圧:80kV、観察倍率:150000倍)で、任意の位置の観察像を撮影した。透過型電子顕微鏡の観察像上に観察された、コロイダルシリカの粒子を任意に30個選択して、コロイダルシリカの粒子の一次粒子径の最大粒径を測定し、その平均値をコロイダルシリカの平均一次粒子径とした。
<透明性>
樹脂組成物の透明性は、該樹脂組成物を成形してなる板状の成形体の全光線透過率、ヘイズ値より評価することができる。本実施例においては、前記試験片について、後述する方法で全光線透過率及びヘイズ値を評価した。
<全光線透過率>
樹脂組成物の透明性の指標として、ヘイズメーター(機種名「NDH−2000」、日本電色工業(株)製)を用い、ISO13468−1に準拠して、試験片の全光線透過率を測定した。試験片3点を用いて、各試験片につき1回測定を行い、その平均値を全光線透過率とした。さらに、以下の基準を用いて判定した。
(判定基準)
AA:全光線透過率が85%以上
A :全光線透過率が80%を超えて85%未満
B :全光線透過率が80%未満
<ヘイズ値>
樹脂組成物の透明性の指標として、ヘイズメーター(機種名「NDH−2000」、日本電色工業(株)製)を用い、ISO14782に準拠して、試験片のヘイズ値を測定した。試験片3点を用いて、各試験片につき1回測定を行い、その平均値をヘイズ値とした。さらに、以下の基準を用いて判定した。
(判定基準)
AA:ヘイズ値が3%以下
A :ヘイズ値が3%を超えて5%以下
B :ヘイズ値が5%を超えた
<耐傷付性試験>
本発明の成形体の耐傷付性を下記の方法に従って評価した。
ベンコット擦傷試験機(機種名:HEIDON TYPE30、新東科学(株)製)に板状の試験片をセットし、1cmに対して14kPaの圧力がかかるように錘をセットし、#0000スチールウールを、荷重14kPa/cmの条件で試験片の表面中央部を通過するように、掃引距離30mmを掃引速度3000mm/minで11回往復させることで擦傷処理を施し、試験片の表面に摩擦摩耗処理部を形成した。擦傷処理後の試験片の摩擦摩耗処理部について、ヘイズ値を測定した。試験片3点を用いて、各試験片につき1回測定を行い、その平均値を擦傷処理後のヘイズ値とした。さらに、以下の基準を用いて判定した。
(判定基準)
AA:擦傷処理後のヘイズ値が18%以下
A :擦傷処理後のヘイズ値が18%を超えて20%以下
B :擦傷処理後のヘイズ値が20%を超えた
<耐熱性評価>
樹脂組成物の耐熱性の指標として、HDT/VICAT試験機(機種名「No.148−HAD ヒートデストーションテスター」、(株)安田精機製作所製)を用い、ISO306のA50法に準拠し、ビカット軟化温度試験を行い、ビカット軟化温度を測定した。
尚、棒状の試験片3点を用いて、各試験片につき1回ビカット軟化温度試験を行い、その平均値をビカット軟化温度とした。さらに、以下の基準を用いて判定した。
(判定基準)
AA:ビカット軟化点温度が120℃以上
A :ビカット軟化点温度が110℃以上120℃未満
B :ビカット軟化点温度が110℃未満
<耐候性評価>
樹脂組成物の耐候性の指標として、メタルウェザー試験機(機種名「ダイプラ・メタルウェザー」ダイプラ・ウィンテス(株)製)を、用い、ISO4892−3に準拠して成形体の耐候性を評価した。
光源にはメタルハイドロランプを使用し、照度は60W/cmとした。暴露サイクルは以下に記載したものとした。
L・・・温度63℃、湿度50%、時間4時間
D・・・温度30℃、湿度98%、時間1時間、前後に30秒間雨あり
R・・・温度63℃、湿度50%、時間0.01時間
上記条件下で、板状の試験片1点について、1000時間暴露試験を実施し、以下の基準を用いて判定した。
(判定基準)
A:試験後の成形片に目視でクラックが観察されない
B:試験後の成形片に目視でクラックが観察される。
(原料)
MMA:メチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
γMPTMS:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
EDTA:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム
TBH:第三ブチルハイドロパーオキサイド
AMBN:2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(商品名:V−59、和光純薬工業(株)製)
nOcSH:n−オクチルメルカプタン
(S−1):コロイダルシリカ水分散液(コロイダルシリカの平均粒子径15nm、シリカ含量20質量%、日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスO)
(S−2):コロイダルシリカ水分散液(コロイダルシリカの平均粒子径50nm、シリカ含量20質量%、日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスOL)
(A−1)製造例2で作製した共重合体
(A−2)製造例3で作製した共重合体
(A−3)製造例4で作製した共重合体
(A−4)製造例5で作製した共重合体
(A−5)製造例6で作製した共重合体
(A−6)製造例7で作製した共重合体
(B−1)製造例8で作製した共重合体
(B−2)製造例9で作製した共重合体
(B−3)製造例10で作製した共重合体
[製造例1:分散剤]
脱イオン水900質量部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60質量部、メタクリル酸カリウム10質量部及びMMA12質量部を、撹拌機、温度計及び冷却管を備えたフラスコに供給し、窒素を放流しながら、フラスコの内温が50℃になるよう加熱した。その後、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08質量部を供給し、フラスコの内温が60℃になるよう加熱した。その後、滴下ポンプを用いて、MMAを0.24質量部/分の速度で75分間滴下した。その後、6時間保持し、分散剤(固形分10質量%)を得た。
[製造例2:アクリル樹脂(A−1)]
脱イオン水200質量部、乳化剤としてモノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製、商品名:RS−610NA)1.25質量部、EDTA0.0003質量部、ソディウムホルムアルデヒドスルホキシレート(以下、SFSと略す)0.2質量部及び硫酸第一鉄0.0001質量部を、攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに供給し、撹拌しながら75℃に昇温した。そこに、単量体原料としてMMA90質量部とMA10質量部、表面修飾剤としてγMPTMS1.5質量部、及び、重合開始剤としてTBH0.125質量部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後75℃で2時間保持して、アクリル樹脂(A−1)の粒子の水分散液(以下、「アクリル樹脂(A−1)水分散液」と略する。)を得た。
[製造例3:アクリル樹脂(A−2)]
用いるγMPTMSの量を2質量部とした以外は製造例2と同様にしてアクリル樹脂(A−2)水分散液を得た。
[製造例4:アクリル樹脂(A−3)]
用いるγMPTMSの量を4質量部とした以外は製造例2と同様にしてアクリル樹脂(A−3)水分散液を得た。
[製造例5:アクリル樹脂(A−4)]
用いるγMPTMSの量を8質量部とした以外は製造例2と同様にしてアクリル樹脂(A−4)水分散液を得た。
[製造例6:アクリル樹脂(A−5)]
用いるγMPTMSの量を1質量部とした以外は製造例2と同様にしてアクリル樹脂(A−5)水分散液を得た。
[製造例7:アクリル樹脂(A−6)]
用いるγMPTMSの量を0.5質量部とした以外は製造例2と同様にしてアクリル樹脂(A−6)水分散液を得た。
[製造例8:アクリル樹脂(B−1)]
脱イオン水200質量部及び硫酸ナトリウム0.42質量部を、攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに供給し、320rpmの撹拌速度で15分間撹拌した。その後、単量体原料としてMMA99質量部とMA1質量部、重合開始剤としてAMBN0.28質量部、及び、連鎖移動剤としてnOcSH 0.3質量部をセパラブルフラスコに供給し、5分間撹拌した。その後、製造例1で製造した分散剤0.672質量部をセパラブルフラスコに供給し、撹拌し、セパラブルフラスコ中の単量体混合物を水中に分散させた。その後、窒素ガスを15分間放流した。
その後、セパラブルフラスコの内温が75℃になるよう加熱し、重合発熱ピークが観測されるまでその温度を保持した。重合発熱ピークが観測された後、セパラブルフラスコの内温が90℃になるよう加熱し、60分間保持し、重合を完了させた。その後、セパラブルフラスコ内の混合物を濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、80℃で16時間乾燥し、アクリル樹脂(B−1)を得た。
[製造例9:アクリル樹脂(B−2)]
単量体原料としてMMA96質量部とMA4質量部を用いた以外は製造例8と同様にしてアクリル樹脂(B−2)を得た。
[製造例10:アクリル樹脂(B−3)]
単量体原料としてMMA90質量部とMA10質量部を用いた以外は製造例8と同様にしてアクリル樹脂(B−3)を得た。
製造例2〜10で製造したアクリル樹脂(A)及びアクリル樹脂(B)の、MMA単位及びMA単位の含有割合、及び、質量平均分子量(Mw)を、表1に示す。
[実施例1]
(工程1)
製造例2で得られたアクリル樹脂(A−1)水分散液に、コロイダルシリカ水分散液(S−1)333質量部(シリカ分67質量部)を撹拌しながら加え、75℃で1時間保持して、アクリル−シリカ複合体(X)粒子の水分散液を得た。
(工程2)
反応系を冷却後、温水800質量部に酢酸カルシウム8質量部を溶解した温水溶液中に、工程1で得られたアクリル−シリカ複合体(X)粒子の水分散液を投入し、塩析凝固して、粉末状のアクリル−シリカ複合体(X)を分離した。得られた粉末状のアクリル−シリカ複合体(X)を十分に水洗した後に、蒸気乾燥機を用いて90℃で24時間乾燥して、粉末状のアクリル−シリカ複合体(X)の粒子を得た。
(工程3)
工程2で得られた粉末状のアクリル−シリカ複合体(X)の粒子50質量部とアクリル樹脂(B−1)50質量部を混合した後、二軸混練押出機(Werner&Pfleiderer社製、30mmφ)を用いて、溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を取得した。
得られた樹脂組成物、及び成形体の評価結果を表3に示す。
[比較例1]
樹脂組成物の製造において、アクリル−シリカ複合体(X)を不使用とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物、及び成形体の評価結果を表3に示す。
[実施例2〜5、比較例2〜5]
樹脂組成物の製造において、表2に示す配合とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物、及び成形体の評価結果を表3に示す。
比較例1の樹脂組成物は、コロイダルシリカ(S)を含有しないので、成形体の耐傷付性及び耐候性が劣っていた。
比較例2の樹脂組成物は、アクリル樹脂(B)を使用していないため、成形体の耐傷付性及び耐熱性が劣っていた。
比較例3の樹脂組成物は、アクリル樹脂(A)の質量平均分子量が大きいため、成形体の透明性、耐傷付性及び耐候性が劣っていた。
比較例4の樹脂組成物は、アクリル樹脂(B)におけるMMA単位の含有率が低く、アクリル樹脂(A)の質量平均分子量が低いため、成形体の耐傷付性、耐熱性及び耐候性が劣っていた。
比較例5の樹脂組成物は、コロイダルシリカ(S)の粒子径が大きいものを使用し、さらにアクリル樹脂(B)におけるMMA単位の含有率が低いため、成形体の透明性、耐傷付性及び耐熱性が劣っていた。
本発明で得られる樹脂組成物は優れた透明性と耐傷付性、耐熱性、耐候性を有しており、光学材料、車両用部品、照明用材料、建築用材料等に用いることができ、特に、車両用部品に好適であり、その中でも車両ランプカバー、さらにその中で車両ヘッドランプカバーに特に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. コロイダルシリカ(S)に重量平均分子量Waが10,000〜40,000であるアクリル樹脂(A)が吸着したアクリル−シリカ複合体(X)と、アクリル樹脂(B)とを含む樹脂組成物であって、
    アクリル樹脂(B)が、メチルメタクリレートの単独重合体、又は、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位の含有割合が、該アクリル樹脂(B)の総質量に対して、95質量%以上100質量%未満であるメチルメタクリレート共重合体である樹脂組成物。
  2. アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Wa、アクリル樹脂(B)の重量平均分子量Wbが、下記式(1)を満たす、請求項1に記載の樹脂組成物。
    0.1≦Wa/Wb≦0.4 (1)
  3. アクリル樹脂(A)の末端がメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物で修飾されている請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. コロイダルシリカ(S)の平均一次粒子径が1〜30nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 該樹脂組成物の総質量100質量部に対して、アクリル−シリカ複合体(X)10質量部以上50質量部以下と、アクリル樹脂(B)50質量部以上90質量部以下を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む車両用部材。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む車両用ランプカバー。
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