JP2019182971A - キラル固定相 - Google Patents

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亮太 西岡
修治 原田
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修治 原田
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一宏 梅原
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Abstract

【課題】光学活性体に対して、高い分離能を有するキラル固定相を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係るキラル固定相は、平均細孔径が20nm以上30nm未満、比表面積が30m2/g以上120m2/g未満の表面多孔性シリカに、キラル識別能を有する高分子化合物が物理的に吸着しているキラル固定相であって、上記高分子化合物は、一方向巻きのらせん構造を有する特定の構造のジフェニルアセチレン誘導体の重合体である。【選択図】図1

Description

本発明は、キラル固定相、当該キラル固定相を含むカラム、及び当該カラムを用いた光学異性体の分離方法に関する。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、混合物の分離及び分析によく用いられる方法である。高速液体クロマトグラフィーによる分離及び分析においては、固定相と移動相との組み合わせが重要で、特に固定相については、表面修飾されたシリカが使用されることが一般的である。更にシリカにキラル化合物を担持することにより、光学活性物質の分離及び分析が行われている。
例えば、特許文献1には、らせん構造を有するポリ(ジフェニルアセチレン)を用いたキラル固定相が記載されている。
また、表面多孔性シリカを使用することにより、全多孔性シリカを使用した場合に比して、分離及び分析に必要な時間が短縮されることも知られている。
特許文献2には、表面多孔性粒子(SPP)を含む支持体とキラル固定相とを含む固定相が記載されている。
特許文献3には、細孔直径30nm以上のコアシェル型粒子である担体と、担体の表面に物理的吸着により担持された光学活性ポリマー等のリガンドとを有する分離剤が記載されている。
特許文献4には、細孔直径が9nm以上のコア−シェル型粒子である担体と、担体の表面に化学結合により担持された光学活性ポリマー等のリガンドとを有する分離剤が記載されている。
国際公開第2014/125667号 特表2017−522579号公報 国際公開第2013/176215号 国際公開第2014/087937号
しかしながら、より高い分離能を有するキラル固定相の開発が求められている。
本発明の一態様は、光学活性体に対して、高い分離能を有するキラル固定相を提供することを目的とする。
本発明は、以下の〔1〕〜〔6〕に記載の発明を含む。
〔1〕平均細孔径が20nm以上30nm未満、比表面積が30m/g以上120m/g未満の表面多孔性シリカに、キラル識別能を有する高分子化合物が物理的に吸着しているキラル固定相であって、上記高分子化合物は、一方向巻きのらせん構造を有する下記式(1)で表される、ジフェニルアセチレン誘導体の重合体であり、
Figure 2019182971
上記Rは下記式(2)〜(5)からなる群より選択される1つの基を示す、キラル固定相。
Figure 2019182971
Figure 2019182971
(式(3)中、*は不斉炭素を示し、式(3)に示す基は、R体もしくはS体の何れか一方、又はその混合物である。)
Figure 2019182971
(式(4)中、*は不斉炭素を示し、式(4)に示す基は、R体もしくはS体の何れか一方、又はその混合物である。)
Figure 2019182971
〔2〕上記高分子化合物は、数平均分子量が10,000以上である、〔1〕に記載のキラル固定相。
〔3〕上記平均細孔径が27nm以上29nm未満、上記比表面積が30m/g以上50m/g未満である、〔1〕又は〔2〕に記載のキラル固定相。
〔4〕上記表面多孔性シリカの平均粒子径が3μm以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のキラル固定相。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のキラル固定相を含むカラム。
〔6〕〔5〕に記載のカラムを用いて、光学異性体を分離する、光学異性体の分離方法。
本発明の一態様は、光学活性体に対して、高い分離能を有するキラル固定相を提供することを目的とする。
図1の(a)は、本発明の実施例2においてカラム(A1)を用いて測定して得られたクロマトグラムを示す図であり、図1の(b)は、比較例2においてカラム(C)を用いて測定して得られたクロマトグラムを示す図である。
(定義)
本明細書中、「一方向巻きのらせん構造」とは、右巻き又は左巻きのいずれかに片寄ったらせん構造であればよく、好ましくは完全に右巻き又は左巻きのらせん構造である。「一方向巻きのらせん構造」を有する化合物は、光学活性な化合物である。
本明細書中、「光学活性な」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する状態を意味する。好ましくは、光学的に純粋な状態である。
本明細書中、「光学活性な低分子化合物」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する低分子化合物であり、分子量が1000以下の有機化合物を意味し、特に限定されるものではない。好ましくは、光学的に純粋な不斉炭素原子を1つ有する化合物であり、例えば、光学的に純粋な両エナンチオマーが市販品として入手可能な2−フェニルグリシノール、1−シクロヘキシルエチルアミン、1−(1−ナフチル)エチルアミン、1−(2−ナフチル)エチルアミン、sec−ブチルアミン、1−フェニル−2−(p−トリル)エチルアミン、1−(p−トリル)エチルアミン、1−(4−メトキシフェニル)エチルアミン、1−フェニルエチルアミン、β−メチルフェネチルアミン、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、1−アミノ−2−インダノール、2−アミノ−1−フェニル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1−プロパノール、ロイシノール、フェニルアラニノール、バリノール、ノルエフェドリン、メチオニノール、アミノ酸、カルボキシ基を保護したアミノ酸、3−アミノピロリジン、1−ベンジル−3−アミノピロリジン、1,2−ジフェニルエチレンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、2−(メトキシメチル)ピロリジン、1−メチル−2−(1−ピペリジノメチル)ピロリジン、1−(2−ピロリジノメチル)ピロリジン等のキラル化合物の光学活性体が挙げられる。中でも、(R)−(−)−2−フェニルグリシノール、(S)−(+)−2−フェニルグリシノール、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン又は(S)−(−)−1−フェニルエチルアミンが特に好ましい。該光学活性な低分子化合物としては、上記の通り、光学的に純粋な化合物を使用するのが好ましいが、後述するように、低い光学純度の化合物を用いた場合にも、正の非線形現象(いわゆる、「不斉増幅現象」)が確認され、光学的に純粋な化合物を用いた場合と同程度の光学純度でらせんのキラリティーを誘起することができる。従って、「光学活性な低分子化合物」には、光学的に純粋な化合物だけでなく、光学純度の低い化合物も包含される。該低分子化合物は、液体でも固体でもよく、好ましくは、液体である。
本明細書中、「ee」とは、鏡像体過剰率(enantiomeric excess)の略称であり、キラルな化合物の光学純度を表す。「ee」は、多い方の鏡像体の物質量から少ない方の鏡像体の物質量を引き、全体の物質量で割った値に100を掛けて算出され、「%ee」で表される。
本明細書中、「光学的に純粋な」とは、99%ee以上の光学純度を示す状態を表す。
本明細書中、「鏡像異性体」とは、光学活性な低分子化合物中の全ての不斉炭素原子の立体配置が異なっている光学的対掌体を意味し、光学活性な低分子化合物と互いに右手と左手との関係にある1対の光学異性体を構成している。具体的には、例えば、光学活性な低分子化合物が(R)−(−)−2−フェニルグリシノールである場合の鏡像異性体は(S)−(+)−2−フェニルグリシノールである。
本明細書中、「らせんの巻き方向を反転させる」とは、一方向巻きのらせんを、それとは逆方向巻きのらせんに反転させることを意味し、具体的には、例えば、右巻きのらせん構造を左巻きのらせん構造へと反転させることである。なお、らせんの巻き方向を完全に反転させることが望ましいが、「らせんの巻き方向を反転させる」とは、必ずしもらせんの巻き方向を完全に反転させる態様のみを意味するのではなく、逆方向巻きに片寄ったらせん構造(逆の符号の比旋光度を有する化合物へと変換されていればよい。)へと変換させる態様も含まれる。
本明細書中、「キラル化合物」とは、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ化合物を意味し、例えば、中心性キラリティー(不斉中心、すなわち、不斉炭素原子)を持つ化合物が挙げられる。
本明細書中、「ラセミ(体)」及び「ラセミ(化)」とは、それぞれ、「キラル化合物の2種類の鏡像異性体(エナンチオマー)が等量存在することにより旋光性を示さなくなった状態の化合物」、及び「そのような状態に変化すること」を意味する。
本明細書中、単に「高分子化合物」と記載されている場合、特に説明がない限り、該「高分子化合物」とは、後述する式(1)で表されるジフェニルアセチレン誘導体の重合体のことを意味する。
「物理的吸着によって担持させた」とは、ジフェニルアセチレン誘導体の重合体である高分子化合物と表面多孔性シリカとを接触させる方法等の物理的方法によって表面多孔性シリカによって担持されている状態を意図する。より具体的には、「物理的吸着によって担持させた」とは、いわゆるリンカーに由来する構造を介さずに、表面多孔性シリカの表面に担持させたことを意味する。ここで、リンカーとは、(i)ジフェニルアセチレン誘導体の重合体における末端に導入された官能基に共有結合することができる官能基と、(ii)表面多孔性シリカの表面に存在するシラノール基(−SiOH)と反応して共有結合を形成する官能基との両方の官能基を備えている。リンカーが有している、(i)の官能基は、ジフェニルアセチレン誘導体の重合体における末端に導入された官能基に共有結合することができる官能基であれば限定されない。また、(ii)表面多孔性シリカの表面に存在するシラノール基(−SiOH)と反応することができる官能基としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のオルガノシランにおいて、シラノール基と反応してシロキサン結合を形成することができる官能基等が挙げられる。
〔キラル固定相〕
本発明の一態様に係るキラル固定相は、平均細孔径が20nm以上30nm未満、比表面積が30m/g以上120m/g未満の表面多孔性シリカに、キラル識別能を有する高分子化合物を、物理的吸着によって担持させたものである。換言すれば、本発明の一態様に係るキラル固定相は、平均細孔径が20nm以上、30nm未満、比表面積が30m/g以上、120m/g未満の表面多孔性シリカに、キラル識別能を有する高分子化合物が物理的に吸着しているものである。
(高分子化合物)
上記高分子化合物は、一方向巻きのらせん構造を有する下記式(1)で表される、ジフェニルアセチレン誘導体の重合体(「ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体」)である。
Figure 2019182971
上記Rは下記式(2)〜(5)からなる群より選択される基を示す。
Figure 2019182971
Figure 2019182971
(式(3)中、*は不斉炭素を示し、式(3)に示す基は、R体もしくはS体の何れか一方、又はその混合物である。)
Figure 2019182971
(式(4)中、*は不斉炭素を示し、式(4)に示す基は、R体もしくはS体の何れか一方、又はその混合物である。)
Figure 2019182971
上記Rが下記式(2)〜(5)からなる群より選択される基であることにより、光学異性体を分離することができる。
また、別の観点から、上記式(1)で表される、ジフェニルアセチレン誘導体の重合体は、数平均分子量が10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましい。上記高分子化合物の数平均分子量が10,000以上であることにより、上述のリンカーを介して表面多孔性シリカの表面に化学結合させずとも、当該表面多孔性シリカの表面及びその細孔内に好適に物理的吸着させることができ、これにより、高分子化合物自身に由来する分離能を高めることができる。上記高分子化合物の数平均分子量の上限は、特に限定されないが、50,000以下であることが好ましい。数平均分子量が大きくなりすぎると粘度が高くなることにより、分析試料とともに表面多孔性シリカに担持された高分子化合物が剥がれ易くため、適切な粘度の高分子化合物を用いることにより、分離能が低下することを防止することができる。
上記表面多孔性シリカ(「コアシェルシリカ」または「コアシェル型シリカ」という。)は、無孔性のコア(核)と多孔性のシェル(多孔質層)とから構成されるシリカである。表面多孔性シリカは、中心に無孔性のコアを備え、当該無孔性のコアの表面に多孔性のシェルを備えている。表面多孔性シリカを使用することにより、全多孔性シリカを使用した場合に比して、カラム内での溶質の拡散が少なくなるため、分離点を維持しつつ、分離及び分析時間を短縮することができる。
上記平均細孔径は、20nm以上30nm未満であればよいが、27nm以上29nm未満であることがより好ましい。上記比表面積は、30m/g以上120m/g未満であればよいが、30m/g以上50m/g未満であることがより好ましい。平均細孔径が上記範囲内であることにより、比表面積が小さくなりすぎず、上記範囲内の比表面積を確保することができる。上記平均細孔径および上記比表面積が上記範囲内であることにより、光学異性体の分離度を向上することができる。なお、表面多孔性シリカの平均細孔径、及び比表面積は、例えば、ガス吸着法によって測定することができる。
上記表面多孔性シリカの平均粒子径は、3μm以下であることが好ましく、2.6μm以下であることがより好ましい。上記多孔性シリカの平均粒子径下限値は、特に限定されないが、2μm以上であることが好ましい。表面多孔性シリカの平均粒子径の上限値が上記範囲内であることにより、高い理論段数が得られる。表面多孔性シリカの平均粒子径の下限値が上記範囲内であることにより、カラム圧の上昇を抑止できる。表面多孔性シリカの平均粒子径は、例えば、レーザ回析法又はコールターカウンター法等によって測定することができる。なお、平均粒子径とは、メディアン径(D50)を意味する。
上記表面多孔性シリカは、表面多孔性シリカの直径を1とした場合、表面多孔性シリカの直径と、該表面多孔性シリカに含まれる無孔性のコアの直径との比率は、1/10〜1/3の範囲内である。
本発明の式(1)で表される、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体の担持量としては、特に限定されるものではないが、表面多孔性シリカの重量に対して、通常1〜100重量%の範囲である。当該担持量が当該範囲内であることにより、表面多孔性シリカに高分子化合物を十分に担持することができるため、光学異性体を高い分離能で分離することができる。
上記キラル固定相には、〔キラル固定相の製造方法〕の項で後述する方法によって製造されたキラル固定相が含まれる。
〔キラル固定相の製造方法〕
本発明の一態様に係るキラル固定相の製造方法は、平均細孔径が20nm以上30nm未満、比表面積が30m/g以上120m/g未満の表面多孔性シリカに、キラル識別能を有する高分子化合物を、物理的吸着によって担持させる方法である。なお、多孔性シリカのより好ましい平均細孔径及び比表面積、並びに上記高分子化合物に関しては〔キラル固定相〕の項で説明したため、その説明を繰り返さない。
(高分子化合物の製造方法)
本発明の一態様に係るキラル固定相の製造方法は、上記高分子化合物を製造する、高分子化合物製造工程をさらに含んでいることが好ましい。上記高分子化合物は、例えば、以下の工程により製造することができる。
Figure 2019182971
[式中、Y及びY’は、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の脱離基を示し、R’及びR’’は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基を示し、Rは、前記と同義である。]
<工程1>
当該工程は、化合物1をエステル化して、化合物2を製造する工程である。
当該反応は、自体公知の方法(例えば、酸ハライドへと変換後、アルコール(R’OH)と反応させる方法、縮合剤及び塩基存在下でアルコール(R’OH)と反応させる方法等)により行われる。
酸ハライドへの変換に使用するハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル等が挙げられる。該ハロゲン化剤の使用量は、化合物1(1当量)に対して、通常1〜2当量である。
アルコールとしては、例えばn−ヘプタノール等が挙げられる。該アルコールの使用量は、化合物1(1当量)に対して、通常1〜5当量である。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類等あるいはそれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、通常−10℃〜30℃、好ましくは0℃〜20℃であり、反応時間は、通常1〜30時間である。
縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−エチル−N’−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)等が挙げられる。縮合剤の使用量は、化合物1(1当量)に対して、1〜10当量使用することができ、好ましくは1〜5モルである。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、トルエン、テトラヒドロフラン等が好ましい。
反応温度は、通常−10℃〜30℃、好ましくは0℃〜20℃であり、反応時間は、通常1〜30時間である。
<工程2>
当該工程は、化合物2の脱離基Y(好ましくは、ヨウ素)を薗頭カップリング条件下でトリシリルメチルアセチレン(TMSA)とカップリング反応を行い、さらに、トリメチルシリル基を脱保護して、化合物3へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下、金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(Pd(PPhCl)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)((CHCN)PdCl)等のパラジウム化合物が挙げられ、中でも、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が好ましい。該金属触媒の使用量は、化合物2(1当量)に対して、通常0.001〜1当量である。
塩基としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン(DBU)、トリエチルアミン等の有機塩基やアンモニア等の無機塩基が挙げられ、中でも1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン、トリエチルアミンが好ましい。該塩基は、溶媒として使用することもでき、該塩基の使用量は、化合物2(1当量)に対して、通常10〜1000当量である。
当該工程においては、必要に応じてヨウ化銅や臭化銅等の銅化合物、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル等のホスフィン化合物等の添加物を添加してもよい。
溶媒は、水と有機溶媒の混合溶媒である。混合溶媒に含まれる有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)や1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリルやジメチルホルムアミド等の極性溶媒、又はベンゼン等の炭化水素溶媒が挙げられ、中でも、テトラヒドロフランが好ましい。
反応温度は、通常−10℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃である。反応時間は、通常0.5〜24時間である。
<工程3>
当該工程は、化合物3を重合させることにより、化合物4へと変換する工程である。当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、窒素雰囲気下、金属触媒を用いて行われる。
金属触媒としては、塩化タングステン(VI)及びテトラフェニルすず(IV)の混合触媒が好ましい。該金属触媒の使用量は、化合物3(1当量)に対して、通常0.0001〜0.2当量、好ましくは、0.001〜0.1当量である。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、トルエン等が好ましい。当該工程で使用される溶媒の量は、例えば、化合物3が0.001〜1M程度の濃度となる量が好ましい。特に0.1〜0.5M程度の濃度となる量が好ましい。
反応温度は、通常−10℃〜200℃、好ましくは10℃〜120℃である。反応時間は、通常0.5〜30時間である。
<工程4>
当該工程は、化合物4のエステルを加水分解して、化合物(II)に変換する工程である。当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基を用いて行われる。
塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられ、中でも、水酸化カリウムが好ましい。該塩基の使用量は、化合物4(1当量)に対して、通常1〜100当量である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコール−ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム(diglyme))等のエーテル系溶媒と水の混合溶媒等が挙げられ、中でもテトラヒドロフランと水の混合溶媒が好ましい。
反応温度は、通常0℃〜100℃、好ましくは50℃〜90℃である。反応時間は、通常0.5〜30時間である。
<工程5>
当該工程は、光学不活性な化合物(II)に対し、一方向巻きのらせんキラリティーを誘起する工程(工程5−1)、続く光学活性な低分子化合物の除去により一方向巻きのらせんキラリティーを記憶させる工程(工程5−2)により光学活性な化合物(I−1)(X=X’=COH)に変換する工程である。
工程5−1は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、光学活性な低分子化合物と混合することにより行われる。光学活性な低分子化合物としては、前記例示した化合物が挙げられ、中でも、(R)−(−)−2−フェニルグリシノール、(S)−(+)−2−フェニルグリシノール、(R)−(−)−1−フェニルエチルアルコール、(S)−(+)−1−フェニルエチルアルコール等が好適に使用される。当該光学活性な低分子化合物としては、光学的に純粋な化合物(99%ee以上)を使用するのが好ましいが、後述するように、低い光学純度(80%ee以上)の化合物を用いても、正の非線形現象(いわゆる、「不斉増幅現象」)が確認され、光学的に純粋な化合物を用いた場合と同程度の光学純度でらせんのキラリティーを誘起することができるので、光学純度の低い化合物を使用することもできる。当該低分子化合物は、液体でも固体でもよく、好ましくは、液体である。光学活性な低分子化合物の使用量は、化合物(II)(1当量)に対して、通常1〜10当量である。
溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられ、中でも水が好ましい。
反応温度は、通常0℃〜120℃、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは80℃〜100℃である。反応時間は、通常0.5〜30時間である。
工程5−2は、一方向巻きのらせんキラリティーが誘起された(光学活性な)化合物(I)を含む混合液から光学活性な低分子化合物を除去することにより、一方向巻きのらせん構造が記憶された化合物(I)を得る工程である。具体的には、工程5−1の反応液に塩基を加え、有機溶媒により光学活性な低分子化合物を洗浄除去後、水相を減圧濃縮し、沈殿物を水に溶解させて、酸の添加により生じた沈殿物を水洗することにより光学活性な化合物(I−1)を得る工程である。
塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられ、中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。該塩基の使用量は、化合物(II)(1当量)に対して、通常1〜3当量である。
光学活性な低分子化合物の洗浄除去に使用する有機溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、トルエン、ベンゼン等が挙げられるが、中でも、クロロホルムが特に好ましい。
酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸等が挙げられ、中でも、塩酸が好ましい。
化合物(I)に一方向巻きのらせんキラリティーが誘起されたか否か、及び当該キラリティーが記憶されたか否かは、CD及びUVスペクトルを測定することにより確認することができる。化合物(I)にどの程度の光学純度で一方向巻きのらせんキラリティーが誘起されたかどうか(らせんキラリティーの片寄りの程度)は、CDスペクトルのピーク強度(Δε)を測定することにより確認することができる。すなわち、ピーク強度が大きいほど、らせんの巻き方向が一方向に片寄っていることを示す。
<工程6>
当該工程は、工程5で得られる光学活性な化合物(I−1)のアミド化により化合物(I−2)へと変換する工程である。当該アミド化反応は、自体公知の方法(例えば、縮合剤存在下でアミンと反応させる方法等)により行われる。当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、必要に応じて縮合添加剤存在下、縮合剤を用いて行われる。
アミンは、化合物(I−2)のRが式(2)で表される場合はフェニルメチルアミンを用い、化合物(I−2)のRが式(3)で表される場合は(R)−フェニルエチルアミンを用い、化合物(I−2)のRが式(4)で表される場合は(R)−ナフチルエチルアミンを用い、化合物(I−2)のRが式(5)で表される場合はアザシクロヘプタンを用いる。アミンの使用量は、光学活性な化合物(I−1)に含まれるカルボキシル基1当量に対して、好ましくは1〜10当量である。
縮合添加剤としては、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−1H−1,2,3−トリアゾール−5−カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)等が挙げられる。縮合添加剤の使用量は、光学活性な化合物(I−1)1当量に対して、好ましくは0.05〜1.5当量である。
縮合剤としては、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−エチル−N’−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)等が挙げられるが、水系溶媒中でも使用可能なDMT−MMが特に好適である。縮合剤の使用量は、光学活性な化合物(I−1)1当量に対して、1〜10当量使用することができ、好ましくは1〜5当量である。
溶媒としては、例えば、水;ジメチルスルホキシド(DMSO);トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、水とDMSOの混合溶媒等が好ましい。
反応温度は、通常0℃〜40℃、好ましくは0℃〜室温である。反応時間は、通常1〜30時間である。
工程6のアミド化は、らせんキラリティーを誘起する前、すなわち、工程5の前、に行うことも可能である。しかし、化合物(I)のらせんキラリティー誘起後の側鎖の官能基変換の際にラセミ化しないことが確認できたことから、分離対象化合物に適した所望のキラル固定相を効率良く製造するという意味においては、工程5の後に行うことが好ましい。
光学活性な化合物(I)のらせんの巻き方向を反転させることも可能である。具体的には、前記一方向巻きのらせんキラリティーの誘起方法における光学不活性な化合物(II)に換えて、光学活性な化合物(I−1)を用い、また、光学活性な低分子化合物に換えて、該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体又は該光学活性な低分子化合物とは異なる種類の光学活性な低分子化合物(好ましくは、該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体)を用いて行うことにより、逆の符号の比旋光度を示す光学活性な化合物(I−1)へと変換することができる。
らせんの巻き方向の反転の際に使用する該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体、又は該光学活性な低分子化合物とは異なる種類の光学活性な低分子化合物としては、光学的に純粋な化合物(99%ee以上)を使用するのが好ましいが、上記と同様に、低い光学純度の化合物を用いても、正の非線形現象(いわゆる、「不斉増幅現象」)が確認され、光学的に純粋な化合物を用いた場合と同程度の光学純度でらせんの巻き方向を反転させることも可能である。従って、該光学活性な低分子化合物の鏡像異性体、又は該光学活性な低分子化合物として、光学純度の低い化合物を使用することもできる。
本発明の化合物(I)のらせんの巻き方向が反転されたか否かは、CDスペクトルを測定することにより確認することができる。
光学活性な化合物(I)のらせんの巻き方向の反転の程度(光学純度)は、反転処理後の化合物(I)のCDスペクトルのピーク強度(Δε)を測定することにより確認することができる。すなわち、ピーク強度が大きいほど、らせんの巻き方向の反転の程度(逆方向巻きのらせんへのシフト率)が高いことを示す。
(高分子化合物を表面多孔性シリカに担持させる方法)
本発明の一態様に係るキラル固定相の製造方法は、平均細孔径が20nm以上、30nm未満、比表面積が30m/g以上、120m/g未満の表面多孔性シリカに、高分子化合物製造工程で得られた高分子化合物を、物理的吸着によって担持させる方法である。
本発明の式(1)で表される、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体は、物理的方法によって、表面多孔性シリカに担持させる。物理的方法としては、式(1)で表される、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体と表面多孔性シリカとを接触させる方法が例示される。本発明の一態様に係るキラル固定相の製造方法は、式(1)で表される、ポリ(ジフェニルアセチレン)の誘導体の製造時にそのポリマーの末端に官能基を付与し、表面多孔性シリカの表面上の官能基と化学的に結合させる化学的方法による製造方法とは異なる。物理的方法によって本発明の一態様に係るキラル固定相を製造することにより、官能基を付与させる必要が無く化学的方法よりも容易に製造することができる。また、付与する官能基によるキラル固定相の物性への影響がないため、安定的な性能を有するキラル固定相を製造することができる。
〔カラム〕
本発明のキラル固定相は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、超臨界クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動などのクロマトグラフィー法及び膜分離による光学異性体分離に用いるのが一般的であるが、特に液体クロマトグラフィー法に応用するのが好ましい。本発明のキラル固定相を、例えば、高速液体クロマトグラフィー用のカラムのキラル固定相として使用する場合、溶離液としては、本発明の分離剤を溶解又はこれと反応する液体を除いて特に限定するものではなく、ヘキサン−2−プロパノール等を用いる順相系、アルコール−水等を用いる逆相系のいずれにおいても応用可能である。
更に本発明のキラル固定相は、主として光学純度測定を目的に使用される高速液体クロマトグラフィーの分析用カラム、数mg〜数kgの光学活性体取得を目的とする単カラム方式の液体クロマトグラフィーの分取用カラム、擬似移動床方式に代表される連続式液体クロマトグラフィーの分取用カラム等に好ましく使用される。
本発明の一態様に係るカラムは、上述したキラル固定相を含んでいる。カラムの材質は特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル、ステンレス等が挙げられ、好ましくは、ステンレスが使用される。
キラル固定相のカラムへの充填は、当分野における通常の知識に基づいて行われ、例えば湿式スラリー法により、キラル固定相がカラムへ充填される。
本発明のカラムと組み合わせて使用される移動相は、分離する光学異性体の種類によって適宜選択されるが、例えば、アルコール、アルカン等を含む溶液が挙げられる。アルコールとしては、例えば、2−プロパノール、エタノール、及びそれらの組み合わせ等が挙げられる。アルカンとしては、例えば、n−ヘキサン、n−ペプタン、及びそれらの組み合わせ等が挙げられる。
〔光学異性体の分離方法〕
本発明の一態様に係る光学異性体の分離方法は、上述したカラムを用いて、光学異性体を分離する方法である。ここで、分離の対象である光学異性体は、特に限定されないが、分子量が1,000以下の広範な低分子化合物の光学異性体分離に好適に使用することができる。該低分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、trans−スチルベンオキシド、トレガー塩基(Troeger’s base)、2−フェニルシクロヘキサノン、置換されていてもよいビナフトール、ビナフトールのアルキルエーテル、置換シクロプロパン類、金属アセチルアセトナート錯体(コバルト、クロム、ルテニウム等)、モノ置換[2.2]パラシクロファン、キラルアルコール化合物等が挙げられる。
本発明の一態様に係るカラムは、光学異性体の中でも、キラルアルコール化合物を高分離能で分離することができ、特に芳香族キラルアルコール化合物を高分離能で分離することができる。上記芳香族キラルアルコール化合物としては、例えば、1−フェニルエチルアルコール、2−フェニル−1−プロパノール、1−ヒドロキシインダン、2−フェニル−2−ブタノール、1−フェニル−2−プロパノール、4−フェニル−2−ブタノール、1−(パラトリル)エタノール、2−フェニル−2−ペンタノール、1−(4−クロロフェニル)エタノール、1−(1−ナフチル)エタノール、2−フェニル−4−ペンテン−2−オール、2−フェノキシプロパノール、1−(3−クロロフェニル)エタノール、1−フェニルエタノール、1−(2−ナフチル)エタノール、1−(2−クロロフェニル)エタノール、1−フェニル−1−プロパノール、1−フェニル−1−ペンタノール、1−フェニル−1−ブタノール、α−シクロプロピルベンジルアルコール、トランス−1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール、シクロヘキシルフェニルメタノール、4−(1−ヒドロキシエチル)ビフェニル等が挙げられる。
分離に用いるカラムの温度は、分離する光学異性体の種類によって適宜設定することができ、例えば室温であってもよい。
移動相の流速は、例えば、0.1〜1.0mL/分であることが好ましく、0.2〜0.5mL/分であることがより好ましい。移動相の流速が当該範囲内であることにより、光学異性体を短時間で分離することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるべきではない。
〔実施例1〕
<ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体の合成>
特許文献1の実施例の方法に準拠して、光学活性なポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体を合成した。
<中間体化合物(2a)の合成>
Figure 2019182971
窒素気流下、4−ヨード安息香酸(1a)(50g,201.6mmol)を脱水ジクロロメタン(600mL)に溶解し、脱水N,N−ジメチルホルムアミドを数滴加えた。その後、0℃で塩化オキサリル(28.1mL,221.76mmol)を加え室温で10時間撹拌した。溶媒除去した後、脱水ピリジン(100mL)とn−ヘプタノール(34.3mL,241.92mmol)を加え、70℃で5時間撹拌した。反応溶媒を除去した後、酢酸エチルで希釈し、蒸留水と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を減圧除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:19)で精製することにより、4−ヨード安息香酸ヘプチル(2a)(66.74g、収率95%)を油状液体として得た。
<中間体化合物(3a)の合成>
Figure 2019182971
窒素雰囲気下、4−ヨード安息香酸ヘプチル(2a)(49.47g,142.8mmol)を脱水テトラヒドロフラン(700mL)に溶解し、Pd(PPhCl(1.00g,1.42mmol)、トリフェニルホスフィン(1.87g,7.14mmol)、ヨウ化銅(I)(1.63g,8.57mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン(128mL,857.3mmol)、トリメチルシリルアセチレン(TMSA)(12.11mL,85.73mmol)、水(12.11mL,85.73mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応溶液にテトラヒドロフラン、ヘキサンを加えてセライトろ過した。ろ液を水、1N塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)で精製した。続いてメタノール/トルエン(1:5,v/v)で再結晶を行い、ビス[4−(へプチロキシカルボニル)フェニル]アセチレン(3a)(25.1g、収率75%)を白色固体として得た。
<中間体化合物(4a)の合成>
Figure 2019182971
窒素雰囲気下、シュレンク管にビス[4−(へプチロキシカルボニル)フェニル]アセチレン(3a)(6.48g,14.0mmol)、塩化タングステン(VI)(555mg,1.40mmol)、テトラフェニルすず(IV)(597mg,1.40mmol)を入れ、脱酸素トルエン(14mL)を加えた。その後、100℃で20時間撹拌した。室温まで冷却後、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離により黄土色固体を得た。続いて、少量のトルエンに溶解させ、大量のメタノールに再沈殿させ、遠心分離によりポリ(ジフェニルアセチレン)へプチルエステル(化合物(4a))(4.91g、収率75%)を黄土色固体として回収した。ゲル浸透クロマトグラフィー測定により求めた化合物(4a)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.67×10であり、分散度Mw/Mnは、2.33であった。
<中間体化合物(5a)の合成>
Figure 2019182971
化合物(4a)(8.98g)をテトラヒドロフラン(190mL)に溶解し、4N水酸化カリウム水溶液(770mL)を加え、85℃で2時間撹拌した。その後、テトラヒドロフランを留去し、85℃で24時間撹拌した。室温に冷却後、ジエチルエーテル、クロロホルムで洗浄した。水層に1N塩酸を加えて酸性にし、析出した固体を遠心分離により回収し、その後、蒸留水で洗浄することによりポリ(ジフェニルアセチレン)カルボン酸(光学不活性体)(化合物(5a))(4.98g、収率96%)を褐色固体として得た。
<中間体化合物(6a)の合成>
Figure 2019182971
化合物(5a)(1.5g,5.59mmol)を水(560mL)に溶解し、光学的に純粋な(S)−(+)−2−フェニルグリシノール(6.13g,44.7mmol)を加え、95℃で2時間撹拌後、室温で24時間静置した。不溶物をろ過後、1N塩酸水溶液60mLを加えて室温で2時間攪拌し、析出した固体を遠心分離により回収した。その後、1N塩酸水溶液、蒸留水で洗浄し、光学活性なポリ(ジフェニルアセチレン)カルボン酸(化合物(6a))(1.14g、収率76%)を褐色固体として得た。
<光学活性ポリマー(7a)の合成>
Figure 2019182971
光学活性な化合物(6a)(1.88g,7.00mmol)をジメチルスルホキシド/水(5:1,v/v)(380mL)に溶解し、(R)−ナフチルエチルアミン(4.5mL,28.0mmol)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)(11.61g,42.0mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。析出した固体を遠心分離により回収した後、蒸留水、メタノールで洗浄することにより化合物(7a)(3.52g、収率87%)を黄褐色固体として得た。
<カラム作製>
表面多孔性シリカゲル(株式会社クロマニックテクノロジーズより入手。粒子径2.6μm、平均細孔径28.5nm、比表面積39.2m/g。以下、表面多孔性シリカゲルのことを「コアシェルシリカゲル」という。)に、光学活性ポリマー(7a)を、以下の方法で物理的に吸着させた。まず、光学活性ポリマー(7a)0.25gをテトラヒドロフラン7mLに溶解させた。この液をコアシェルシリカゲル2gに数滴(計100μL)滴下し、激しく振り混ぜた。この操作を4回繰り返し、エバポレーターにてテトラヒドロフランを留去した。この滴下、振り混ぜ、留去の操作を繰り返し、先に調整したテトラヒドロフラン溶液を全量コーティングした。これを乾燥して、本発明のキラル固定相(A1)約2.1gを得た。これを、内径3.0mm長さ150mmのステンレス管に湿式スラリー法により充填し、本発明のカラム(A1)を得た。再現性の確認のため、同じ方法で2本目のカラムを作製し、カラム(A2)を得た。
<鏡像異性体分離性能の評価>
作製されたカラムを用い、高速液体クロマトグラフィー法により、以下に示す22個の化合物を用いて、鏡像異性体の分離性能の評価を行った。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は以下のように設定した。
移動相:n−ヘキサン/2−プロパノール(99/1)
カラム温度:室温
流速:0.2mL/分
検出:紫外吸光光度検出器 検出波長254nm
試料化合物:2−フェニル−1−プロパノール、1−ヒドロキシインダン、2−フェニル−2−ブタノール、1−フェニル−2−プロパノール、4−フェニル−2−ブタノール、1−(パラトリル)エタノール、2−フェニル−2−ペンタノール、1−(4−クロロフェニル)エタノール、1−(1−ナフチル)エタノール、2−フェニル−4−ペンテン−2−オール、2−フェノキシプロパノール、1−(3−クロロフェニル)エタノール、1−フェニルエタノール、1−(2−ナフチル)エタノール、1−(2−クロロフェニル)エタノール、1−フェニル−1−プロパノール、1−フェニル−1−ペンタノール、1−フェニル−1−ブタノール、α−シクロプロピルベンジルアルコール、トランス−1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール、シクロヘキシルフェニルメタノール、4−(1−ヒドロキシエチル)ビフェニル、試料化合物はすべてラセミ体を使用した。
試料溶液:上記化合物を、それぞれ、2−プロパノールに溶解して、約1〜10mg/mLの濃度の試料溶液とし、その約1μLを液体クロマトグラフに注入した。
分離度(R)は、JIS K0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)に従い、次式により算出した。
R=2×(Rt1―Rt2)/(W1+W2)
Rt1は保持時間が短い異性体のピークの保持時間、W1は、保持時間が短い異性体のピーク幅、Rt2は保持時間が長い異性体のピークの保持時間、W2は、保持時間が長い異性体のピーク幅を表す。
〔比較例1〕
<カラム作製>
コアシェルシリカゲル(株式会社クロマニックテクノロジーズより入手。粒子径2.6μm、平均細孔径102nm、比表面積24.2m/g)に、実施例1で合成した光学活性ポリマー(7a)を、以下の方法で物理的に吸着させた。まず、光学活性ポリマー(7a)0.25gをテトラヒドロフラン7mLに溶解させた。この液をコアシェルシリカゲル2gに数滴(計100μL)滴下し、激しく振り混ぜた。この操作を4回繰り返し、エバポレーターにてテトラヒドロフランを留去した。この滴下、振り混ぜ、留去の操作を繰り返し、先に調整したテトラヒドロフラン溶液を全量コーティングした。これを乾燥して、比較例のキラル固定相(B)約2.1gを得た。これを、内径3.0mm長さ150mmのステンレス管に湿式スラリー法により充填し、比較例のカラム(B1)を得た。再現性の確認のため、同じ方法で2本目のカラムを作製し、カラム(B2)を得た。
<鏡像異性体分離性能の比較>
実施例1と同じ試料、同じ条件で、高速液体クロマトグラフィーによる測定を実施した。
<結果>
実施例1及び比較例1の結果を表1に示す。
Figure 2019182971
実施例1で用いたカラム(A1)及び(A2)は、試料として用いた22種類の芳香族アルコール化合物のすべてで、その鏡像異性体が分離した。そのうち18化合物で、ベースライン分離の指標とされる分離度1.5以上が得られた。この結果は、本発明のキラル固定相が、芳香族アルコール化合物のキラル分離に、顕著に優れた性能を有することを示している。
本発明の実施例1と比較例1とを比較すると、本発明の方が、22化合物の分離度の平均値が約15%向上した。実施例1と比較例1との比較の結果から、平均細孔径を大きくしすぎると、比表面積が小さくなるため、逆に、分離度が低下すると推察される。平均細孔径を20〜30nmとし、担体の比表面積を一定以上とすることで、キラル分離における分離度が向上することを見出した。
〔実施例2〕
試料1−フェニル−2−プロパノールを2−プロパノールに溶解し、試料濃度約10mg/mLの溶液とした。得られた溶液を、実施例1で得られたカラム(A1)及び、内径4.6mm、長さ150mm、粒子径3μmの東京化成株式会社社製カラム(商品名TCIChiral MB−3、以下カラム(C))を用いて、下記の条件で測定し、クロマトグラムを得た。
移動相:n−ヘキサン/2−プロパノール(95/5)
カラム温度:室温
流速:0.2mL/分
検出:紫外吸光光度検出器 検出波長254nm
試料注入量:1μL
〔比較例2〕
カラム(A1)の代わりにカラム(C)を用いた以外は実施例2と同様にして測定し、クロマトグラムを得た。
<結果>
実施例2及び比較例2で得られたクロマトグラムを図1の(a)及び(b)に示す。
図1の(a)は、実施例2においてカラム(A1)を用いて測定して得られたクロマトグラムを示す図である。横軸は保持時間を表し、ピークの上の数字は、1−フェニル−2−プロパノールの鏡像異性体それぞれの保持時間(分)を表す。鏡像異性体のピークがベースラインで分離していることを示している。
図1の(b)は、比較例2においてカラム(C)を用いて測定して得られたクロマトグラムを示す図である。横軸は保持時間を表し、ピークの上の数字は、1−フェニル−2−プロパノールのラセミ体の保持時間(分)を表す。鏡像異性体のピークが全く分離していないことを示している。
カラム(C)は、光学活性ポリマレイミドを用いたキラル固定相であり、本発明の固定相とは、構造が異なるものの光学活性ポリマーを用いるという点で共通している。カラム(A1)で測定すると、1−フェニル−2−プロパノールの鏡像異性体のピークがベースラインで分離しているが、カラム(C)では、鏡像異性体のピークは全く分離していない。本発明のキラル固定相が、キラルアルコール化合物のキラル分離に顕著に優れた性能を有することを示す一例である。
本発明は、光学異性体の分離に利用することができる。よって、本発明は、光学異性体を扱う広範な分野(例えば、医薬品製造分野など)に利用可能である。

Claims (6)

  1. 平均細孔径が20nm以上〜30nm未満、比表面積が30m/g以上〜120m/g未満の表面多孔性シリカに、キラル識別能を有する高分子化合物を、物理的に吸着しているキラル固定相であって、
    上記高分子化合物は、一方向巻きのらせん構造を有する下記式(1)で表される、ジフェニルアセチレン誘導体の重合体であり、
    Figure 2019182971
    上記Rは下記式(2)〜(5)からなる群より選択される1つの基を示す、キラル固定相。
    Figure 2019182971
    Figure 2019182971
    (式(3)中、*は不斉炭素を示し、式(3)に示す基は、R体もしくはS体の何れか一方、又はその混合物である。)
    Figure 2019182971
    (式(4)中、*は不斉炭素を示し、式(4)に示す基は、R体もしくはS体の何れか一方、又はその混合物である。)
    Figure 2019182971
  2. 上記高分子化合物は、数平均分子量が10,000以上である、請求項1に記載のキラル固定相。
  3. 上記平均細孔径が27nm以上29nm未満、上記比表面積が30m/g以上50m/g未満である、請求項1又は2に記載のキラル固定相。
  4. 上記表面多孔性シリカの平均粒子径が3μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキラル固定相。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のキラル固定相を含むカラム。
  6. 請求項5に記載のカラムを用いて、光学異性体を分離する、光学異性体の分離方法。
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