JP2019180283A - ウロリチン類の製造方法 - Google Patents

ウロリチン類の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019180283A
JP2019180283A JP2018073984A JP2018073984A JP2019180283A JP 2019180283 A JP2019180283 A JP 2019180283A JP 2018073984 A JP2018073984 A JP 2018073984A JP 2018073984 A JP2018073984 A JP 2018073984A JP 2019180283 A JP2019180283 A JP 2019180283A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
urolithins
urolithin
microorganism
raw material
production
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018073984A
Other languages
English (en)
Inventor
山本 浩明
Hiroaki Yamamoto
浩明 山本
賢則 中島
Masanori Nakajima
賢則 中島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daicel Corp
Original Assignee
Daicel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daicel Corp filed Critical Daicel Corp
Priority to JP2018073984A priority Critical patent/JP2019180283A/ja
Publication of JP2019180283A publication Critical patent/JP2019180283A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】高いウロリチン類産生能を有する微生物を用いたウロリチン類の効率的な製造方法を提供する。【解決手段】ウロリチン類の製造方法であって、ウロリチン類の原料を含有する溶液において、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生する能力を有するゴルドニバクター・ファエシホミニス(Gordonibacter faecihominis)に属する微生物に、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生させる工程を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ウロリチン類の製造方法に関する。
ウロリチンAやウロリチンCに代表されるウロリチン類は、ザクロ、ラズベリー、ブラックベリー、クラウドベリー、イチゴ、クルミなどに含まれるエラジタンニン等に由来するエラグ酸の代謝物として知られている。
エラジタンニンは加水分解性タンニンに分類され、摂取されると体内で加水分解され、エラグ酸に変換されることが知られている。また、果実等にはエラグ酸としても存在している。このようなエラジタンニンやエラグ酸は体内の腸管吸収性は非常に低いが、これらが摂取された際、ヒト結腸微生物叢によって更に代謝されてウロリチン類に変換されることが知られている。
例えば、生体内におけるウロリチン類の産生については、ゲラニインなどのエラジタンニンをラットに摂取させた後、尿中のウロリチン類を分析することによって、ウロリチン類が生じることが報告されている(非特許文献1)。
また、ヒトにおいて、プニカラジンを主としたエラジタンニンを含むザクロ抽出物を摂取後、尿中においてウロリチン類が検出され、特にウロリチンA及びウロリチンCが主要なエラグ酸代謝物であることが報告されている(非特許文献2)。
さらに、ウロリチンAには抗酸化作用(非特許文献3)、抗炎症作用(非特許文献4)、抗糖化作用(非特許文献5)、マイトファジーの促進作用(非特許文献6)などの機能を有することが報告されており、抗老化機能を有する素材としての開発が期待されている。
これらのウロリチン類を合成する方法としては、2‐ブロモ‐5‐メトキシ安息香酸を出発原料として脱メチル化によって2‐ブロモ‐5‐ヒドロキシ安息香酸とし、レゾルシノールと反応させることによってウロリチンAを得る方法などが報告されている(非特許文献7)。しかし、ウロリチン類を機能性食品(飲料、サプリメントを含む。)の素材として利用する目的には、化学合成法は適さない。
近年、ウロリチン類の一種であるウロリチンCをエラグ酸から産生する腸内細菌としてGordonibacter urolithinfaciensが分離、同定され、この腸内細菌を用いてエラグ酸を発酵させることによってウロリチンCを産生させる方法が報告された(特許文献1、非特許文献8)。しかし、発酵液中のウロリチンCの蓄積濃度は2mg/L程度であり、斯かる目的には適さないものであった。また、Gordonibacter urolithinfaciensの近縁種であるGordonibacter pamelaeae DSM 19378株 もウロリチンCを産生することが報告されている。
しかし、Gordonibacter faecihominisに属する微生物がウロリチン類を産生することは知られていない。
国際公開2014/147280号パンフレット
J. Agric. Food Chem., 56, 393-400 (2008) Mol. Nutr. Food Res., 58, 1199-1211 (2014) Biosci. Biotechnol. Biochem., 76, 395-399 (2012) J. Agric. Food Chem., 60, 8866-8876 (2012) Mol. Nutr. Food Res., 55, S35-S43 (2011) Planta Med., 77, 1110-1115 (2011) J. Agric. Food Chem., 56, 393-400 (2008) Food Func., 5, 8, 1779-1784 (2014)
本発明は、高いウロリチン類産生能を有する微生物を用いたウロリチン類の効率的な製造方法の提供を課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意探索したところ、ゴルドニバクター・ファエシホミニス(Gordonibacter faecihominis)に属する微生物が高いウロリチン類産生能を有することを見出し、本発明を完成させた。本発明は以下の通りである。
〔1〕下記工程(a)を含むウロリチン類の製造方法。
工程(a):ウロリチン類の原料を含有する溶液において、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生する能力を有するゴルドニバクター・ファエシホミニス(Gordonibacter faecihominis)に属する微生物に、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生させる工程。
〔2〕前記ウロリチン類の原料がエラグ酸である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕前記ウロリチン類が、ウロリチンM5、ウロリチンD、ウロリチンM6、又はウロリチンCである、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕気相及び/又はウロリチン類の原料を含有する溶液が水素を含む環境下で、工程(a)が行われる、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、高いウロリチン類産生能を有する微生物を用いたウロリチン類の効率的な製造方法が提供できる。
そして、該製造方法により得られるウロリチン類を、化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品、飲食品(サプリメントを含む。)等に用いることにより、抗酸化、抗炎症、抗糖化、マイトファジーの促進作用などの効果を得ることが期待できる。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明は、下記工程(a)を含むウロリチン類の製造方法である。
工程(a):ウロリチン類の原料を含有する溶液において、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生する能力を有するゴルドニバクター・ファエシホミニス(Gordonibacter faecihominis)に属する微生物に、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生させる工程。
以下、同微生物を「本微生物」などと記載することがある。
(本微生物)
本発明の製造方法では、ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生する能力を有するゴルドニバクター・ファエシホミニス(Gordonibacter faecihominis)に属する微生物を用いる。本微生物としては、ウロリチン類の原料を含有する溶液において、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生する能力を有する限り特に制限されないが、例えば、ゴルドニバクター・ファエシホミニスJCM 16058株が好ましい。
ゴルドニバクター・ファエシホミニスJCM 16058株は、Japan Collection of
Microorganisms(国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室、〒305-0074 茨城県つくば市高野台3-1-1)から入手することができる。
JCM 16058株は、それと実質的に同等の菌株であってもよい。実質的に同等の菌株とは、ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生する能力を有するゴルドニバクター・ファエシホミニス(Gordonibacter faecihominis)に属する微生物と同属又は同種の微生物であって、当該菌株と同程度の高いウロリチン類産生能を有する菌株をいう。また、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、当該菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98%以上、好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは当該菌株と同一の菌学的性質を有する。さらに、当該菌株は、当該菌株、又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
本微生物のウロリチン類産生能は、例えば、実施例に記載した方法で測定することができる。
(ウロリチン類)
ウロリチン類は、その構造が下記一般式(1)で表される既知の物質である。例えば、表1に示すように、ウロリチン類は化学式におけるR1〜R6の違いによる、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、ウロリチンD、ウロリチンE、ウロリチンM3、ウロリチンM4、ウロリチンM5、ウロリチンM6、ウロリチンM7、及びイソウロリチンAなどが知られている。
本発明では、本微生物によるその産生効率が高いことから、好ましくは、ウロリチンM5、ウロリチンD、ウロリチンM6、又はウロリチンCである。
Figure 2019180283
Figure 2019180283
(本微生物の培養条件)
本微生物は、例えば、培養することにより容易に増殖できる。その方法は、本微生物が増殖できる限り特に限定されず、本微生物の増殖に通常用いられる方法を必要により適宜変更して用いることができる。以下にその例を記載するが、後述する「本微生物によるウロリチン類の産生」欄に記載した各態様で培養することもできる。
本微生物の培養温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、一方で、好ましくは42℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは37℃以下である。
培養培地としては、特に限定されず、通常用いられる培地を必要により適宜変更して用いることができる。例えば、OXIO社製のANAEROBE BASAL BROTH(ABB)培地、Oxoid社製のWilkins-Chalgren Anaerobe Broth(CM0643)、日水製薬株式会社製のGAM培地、変法GAM
培地等を使用することができる。
さらに、例えば、水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、以下の化合物を挙げることができる。例えば、ソルボース、フラクトース、グルコース、ブドウ糖などの糖類;メタノールなどのアルコール類;吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸など有機酸類などである。
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、効率的に発育させるために適宜調節することができる。通常、0.1〜10wt/vol%の範囲で選択できる。
上記の炭素源に加えて、培地には、窒素源が加えられる。窒素源としては、通常の培養や発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。
好ましい無機窒素源は、アンモニウム塩、及び硝酸塩である。より好ましくは、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、クエン酸トリアンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダである。
一方、好ましい有機窒素源は、アミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類(例えば、ポリペプトンNなど)、肉エキス(例えば、ラブ‐レムコ末、ブイヨンなど)、肝臓エキス、消化血清末などである。より好ましい有機窒素源は、アルギニン、システイン、シトルリン、リジン、酵母エキス、ペプトン類(例えば、ポリペプトンNなど)である。
さらに、炭素源や窒素源に加えて、他の有機物あるいは無機物を培地に加えることもできる。例えば、ビタミンなどの補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、増殖や活性を増強できる場合もある。例えば、無機化合物、ビタミン類など、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオオクト酸
モリブデン酸ソーダ p‐アミノ安息香酸
塩化カリウム
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
酢酸ナトリウム三水和物
硫酸マグネシウム七水和物
硫酸マンガン四水和物
これらの無機化合物やビタミン類など、動植物由来の増殖補助因子を添加して培養液を製造する方法は公知である。培地は、液体、半固体、あるいは固体とすることができる。好ましい培地の形態は、液体培地である。
(本微生物の静止菌体)
本微生物はその静止菌体を含む。静止菌体とは、培養した微生物から遠心分離等の操作により培地成分を取り除き、水や生理食塩水等の塩溶液、あるいは緩衝液で洗浄し、洗浄液等に懸濁した菌体であって、本発明においては、少なくとも、ウロリチン類を産生する代謝系を有している菌体をいう。緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス‐塩酸緩衝液、クエン酸‐リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MOPS緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン緩衝液等などが好ましい。緩衝液のpHや濃度は、常法に従い適宜調製したものを使用できる。
(ウロリチン類の原料を含有する溶液)
本発明における、ウロリチン類の原料を含有する溶液とは、該溶液において、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生する能力を有する本微生物に、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生させることができるものであれば特に制限されない。好ましくは培地であり、上記「本微生物の培養条件」欄の態様とすることができる。
尚、本明細書に記載されている「培地」とは、いずれも、最少培地を含む、本微生物が増殖できる溶液をいい、本微生物が増殖できない溶液、例えば、前述した塩溶液や緩衝液などを含まないものとする。
本微生物が静止菌体である場合のウロリチン類の原料を含有する溶液としては、前述した塩溶液や緩衝液が好ましい。
(ウロリチン類の原料)
本発明におけるウロリチン類の原料は、該原料を用いて本微生物によりウロリチン類が産生されれば特に制限されないが、例えば、エラグ酸;該エラグ酸の前駆体である、プニカラジン、ゲラニインなどのエラジタンニンなどが挙げられる。このうち、本微生物によるウロリチン類の産生効率が他の原料に比べて多いことからエラグ酸が好ましい。このとき、植物からプニカラジン、ゲラニインなどのエラジタンニンを抽出し、これを加水分解してエラグ酸としてもよいし、エラグ酸自体を抽出してもよい。
ウロリチン類の原料は、ウロリチン類の産生前に、ウロリチン類の原料を含有する溶液となる溶液や溶媒に添加されてもよく、また、ウロリチン類の産生の途中で溶液に追加で添加されてもよい。このとき、該原料は、一括添加、逐次添加、連続添加でもよい。
ウロリチン類の原料を含有する溶液中の該原料の含有量は、通常0.01g/L以上、好ましくは0.1g/L以上、より好ましくは1.0g/L以上である。一方、通常100g/L以下、好ましくは20g/L以下、より好ましくは10g/L以下である。
エラグ酸及び/又はエラジタンニンを生産する植物としては特に制限はないが、例えば、ザクロ、ラズベリー、ブラックベリー、クラウドベリー、ボイセンベリー、イチゴ、クルミ、ゲンノショウコ等が挙げられる。このうち、エラグ酸及び/又はエラジタンニンを高含有していることから、ザクロ、ボイセンベリー、ゲンノショウコが好ましく、ザクロがより好ましい。
これらの植物は、いずれか1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、該植物からのエラグ酸及び/又はエラジタンニンの抽出方法及び抽出条件は特段限定されず、常法に従えばよい。例えば、水抽出、熱水抽出、温水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の公知の抽出方法を用いることができる。
溶媒抽出を行う場合、溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等の低級アルコールや、プロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない);アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、キシレン等が挙げられ、好ましくは水、エタノール等である。これらの溶媒は、いずれか1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
抽出したプニカラジンなどのエラジタンニンをエラグ酸に加水分解する方法としては特段限定されないが、酸、酵素、微生物によって加水分解する方法が挙げられる。
得られたエラグ酸及び/又はエラジタンニンをそのままの状態で使用することもできるが、乾燥させて粉末状にする工程を経てもよい。また、必要に応じて、得られたエラグ酸及び/又はエラジタンニンに精製、濃縮処理等を施してもよい。精製処理としては、濾過又はイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理を行うことができる。また、濃縮処理としては、エバポレーター等の常法を利用できる。また、得られたエラグ酸及び/又はエラジタンニン(又は、これらの精製処理物若しくは濃縮物)を、凍結乾燥処理に供して粉末化する方法、デキストリン、コーンスターチ、アラビアゴム等の賦形剤を添加してスプレードライ処理により粉末化する方法等の公知の方法に従って粉末化する工程を経てもよい。さらにその後に、必要に応じて純水、エタノール等に溶解して用いてもよい。
エラグ酸及び/又はエラジタンニンが含まれているものであれば、市販されている飲食品等を用いることもできる。例えば、ザクロ抽出物、ザクロ濃縮果汁、ザクロジュースなどを用いることができるが、これらに限定されない。
(本微生物によるウロリチン類の産生)
本微生物は、ウロリチン類の原料を含有する溶液においてウロリチン類の産生に適した方法で培養されることにより、ウロリチン類を産生する。
該溶液は、好ましくは培地(培養液)であり、その例として前述の「本微生物の培養条件」に記載した態様が挙げられる。
また、ウロリチン類の産生に適した方法とは、本微生物の増殖に通常用いられる方法を必要により適宜変更して用いることができることを言う。
工業的な製造においては、培地や基質ガスを連続的に供給することができ、かつ培養物を回収するための機構を備えた連続培養システム(continuous fermentation system)を用いることも可能である。
培養器としては、通常用いられる培養槽がそのまま利用できる。本微生物の培養にも利用することができる培養タンクが市販されている。培養槽内に混入する酸素を、窒素などの不活性気体あるいは基質ガスなどで置換することにより、嫌気的な雰囲気を作ることもできる。
本微生物の培養においては、培養槽に付加的な機能を与えることができる。例えば、通常使用される撹拌混合槽のほか、気泡塔型、ドラフトチューブ型の培養槽も利用できる。液体培地に吹き込まれる混合気体によって本微生物は遊離分散され、本微生物と培地を十分に接触させることができる。また、バイオトリックリングフィルター(biotrickling filter)のように通気性の高いスラグ、その他セラミック系の無機充てん物、あるいはポ
リプロピレン等の有機合成物質の充てん層に、水分を滴らせながら本微生物を生息させ、そこにガスを通気しながら培養することもできる。さらに、使用する本微生物は常法によりカラギーナンゲル、アルギン酸ゲル、アクリルアミドゲル、キチン、セルロース、寒天などに固定化して用いることもできる。
培養槽の形状によっては、培地を十分に撹拌するため、撹拌機等を利用することもできる。培養槽内の培養物を撹拌することによって、培地成分や基質ガスを本微生物に接触させる機会を増やして、ウロリチン類の産生効率を最適化することができる。また基質ガスをナノバブルとして供給することもできる。
本微生物の十分な生育のため、培養物のpHは、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは6.8以上であり、一方で、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.5以下である。
また、培養槽の温度は特に制限されないが、ウロリチン類の産生効率を増加させるため、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、一方で、好ましくは42℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは37℃以下である。
培養時間は、ウロリチン類の産生量、原料の残存量等に応じて適宜設定できる。通常8時間以上、好ましくは12時間以上、より好ましくは16時間以上であり、一方で、通常340時間以下、好ましくは240時間以下、より好ましくは170時間以下であるが、これらに限定されない。
また、効率よくウロリチン類を産生させるために、培地を連続的に供給することもできる。培養槽に供給される新鮮な培地の量は、培養槽内の培養物における希釈率が、好ましくは0.04/hr以上、より好ましくは0.08/hr以上であり、一方で、好ましくは2/hr以下、より好ましくは1/hr以下である。
培養液の気相、水相(ウロリチン類の原料を含有する溶液)としては、空気又は酸素を含まないことが好ましく、例えば、窒素及び/又は水素を任意の比率で含むことや、窒素及び/又は二酸化炭素を任意の比率で含むことが挙げられ、水素を含む、気相や水相であ
ることが好ましい。
気相における水素の割合は、ウロリチン類の産生が促進されることから、通常0.1%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上であり、一方、通常100%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは20%以下である。
気相や水相をこのような環境にする方法は特に制限されないが、例えば、培養前に上記ガスで気相を置換する、培養中も培養器の底部から供給する、培養器の気相部に供給する、培養前に上記ガスで水相をバブリングするなどの方法をとることが出来る。通気量としては、通常0.005vvm以上、好ましくは0.05vvm以上であり、一方で、通常2vvm以下、好ましくは0.5vvm以下である。また、混合ガスはナノバブルとして供給することもできる。尚、「vvm」とは、1分間で液容量の何倍の通気をするかを示すものであり、例えば、10Lの水相に対して、2vvmの通気を行ったとは、毎分20Lの通気を行ったことを意味する。
また、前記水素は、水素ガスをそのまま用いてもよいが、水相にギ酸又はその塩などの水素の前駆体が添加されてもよい。
本微生物を培養する際の加圧条件は、生育できる条件であれば特に限定されるものではない。好ましい加圧条件としては、0.02〜0.2MPaの範囲を挙げることができるがこれに限定されない。
また、水相に界面活性剤、吸着剤、包摂化合物などを添加することにより、ウロリチン類の産生を促進できる場合がある。
界面活性剤としては、例えば、Tween 80等が挙げられ、0.001g/L以上10g/L以下程度添加することが出来る。
吸着剤としては、例えば、セルロース及びその誘導体;デキストリン;三菱ケミカル株式会社製の疎水吸着剤であるダイアイオンHPシリーズやセパビーズシリーズ;オルガノ株式会社製のアンバーライトXADシリーズなどを挙げることができる。
包摂化合物としては、例えば、α‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリン、γ‐シクロデキストリン、クラスターデキストリン(高度分岐環状デキストリン)、及び、これらの誘導体などを挙げることができる。また、2種以上の包摂化合物を共存させることにより、ウロリチン類の産生を更に促進できる場合がある。
包摂化合物の添加量としては、ウロリチン類の原料に対し、モル比の総量で、通常0.2当量以上、好ましくは1.0当量以上、より好ましくは2.0当量以上であり、一方、通常10.0当量以下、好ましくは5.0当量以下、より好ましくは4.0当量以下である。
(本微生物の静止菌体によるウロリチン類の産生)
本微生物が静止菌体である場合のウロリチン類の原料を含有する溶液は、前記培地の代わりに、上記「本微生物の静止菌体」欄に記載した塩溶液や緩衝液が好ましい。その他の条件については、上記「本微生物によるウロリチン類の産生」欄の記載が援用される。
(その他の工程)
本発明は、上記工程の他に、産生したウロリチン類の量を測定する工程や、産生したウロリチン類を回収する工程、その他の必要な工程を含んでもよい。
(産生したウロリチン類の量を測定する工程)
産生したウロリチン類の量は、産生条件によって異なるが、ウロリチン類産生後の溶液1.0L当たり、総量で、通常0.005g以上、好ましくは0.1g以上、より好ましくは1g以上である。一方で、上限は特に制限されないが、通常20g以下、好ましくは
15g以下、より好ましくは10g以下である。
ウロリチン類が産生したことは、ウロリチン類産生後の溶液中の原料やウロリチン類を定量することにより確認できる。その一例を以下に示す。
例えば、ウロリチン類産生後の溶液に、必要に応じてギ酸などの酸を添加した酢酸エチルを加えて、激しく撹拌した後遠心し、酢酸エチル層を取り出す。必要に応じて同溶液に同様の操作を数回行い、それら酢酸エチル層を合わせてウロリチン類抽出液を得ることができる。この抽出液を、エバポレーターなどを用いて減圧下に濃縮、乾固し、メタノールに溶解させる。これをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜などの膜を使用して濾過し、不溶物を除去したものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のサンプルとすることができる。高速液体クロマトグラフィーの条件としては、例えば以下が挙げられるが、これに限定されない。
[高速液体クロマトグラフィー条件]
カラム:Inertsil ODS−3(250×4.6mm)(GL Science社製)
溶離液:水/アセトニトリル/酢酸 = 74/25/1
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:305nm
(産生したウロリチン類を回収する工程)
産生したウロリチン類を回収する工程を経てもよい。また、当該回収工程は、精製、濃縮工程であってよい。精製工程では、濾過又はイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理を行うことができる。また、濃縮工程では、エバポレーターを用いた方法等の常法を利用できる。また、得られたウロリチン類(又は、この精製処理物若しくは濃縮物)を、凍結乾燥処理に供して粉末化する方法、デキストリン、コーンスターチ、アラビアゴム等の賦形剤を添加してスプレードライ処理により粉末化する方法等の公知の方法に従って粉末化する工程を経てもよい。さらにその後に、必要に応じて純水、エタノール等に溶解して用いてもよい。
このような方法によって得られる加熱乾燥処理、噴霧乾燥処理、又は凍結乾燥処理等されたウロリチン類は、乾燥粉末中、ウロリチン類の総量で、通常1〜50質量%含む。また、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%から選択される2点の質量パーセント濃度を下限(〜以上、又は、〜より高い)及び上限(〜以下、又は、〜より低い)とする濃度範囲で示される質量%であることが好ましい。
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1:ウロリチン類の産生(発酵)]
ABB培地(Oxoid社製)に、最終濃度1g/Lのエラグ酸を添加した後、加熱滅菌し、気相をN:CO:H(80%/10%/10%)ガスで置換したものを基本培地として使用した。基本培地に、Gordonibacter faecihominis JCM 16058株を植菌し、37℃で嫌気的に14日間培養した。
培養後の培養液中のウロリチン類の定量は以下の方法により行った。
培養液5mLに対して等量の酢酸エチルでウロリチン類を抽出し、得られた酢酸エチル
相を減圧濃縮し、乾固した。このようにして得た乾固物をメタノール0.5mLに再溶解し、HPLCによりウロリチン類の定量分析を行った。
HPLCは以下に記載の条件で行った。
HPLC分析条件:
カラム:Inertsil ODS−3(250×4.6mm)(GL Science社製)
溶離液:水/アセトニトリル/酢酸=74/25/1
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:305nm
標品として、DALTON PHARMA社製のウロリチン類をDMSOに溶解して用いた。その結果、ウロリチンM5が450μM、ウロリチンDが3μM、ウロリチンM6が60μM、ウロリチンCが12μM得られた。
上記の通り、Gordonibacter faecihominis JCM 16058株は、エラグ酸を原料として、ウロリチン類の中でもウロリチンM5を有意に産生することがわかった。これはラクトン環の開環によるものである。
尚、Gordonibacter faecihominis JCM 16058株は、ウロリチン類の4位の水酸基及び10位の水酸基の一方または両方を脱離する能力がある。このことは、ウロリチン類の種類に拘らず普遍的である。尚、ウロリチン類の4位の水酸基とは、表1においては、R2が水酸基である場合の該水酸基に相当する。また、ウロリチン類の10位の水酸基とは、表1においては、R5が水酸基である場合の該水酸基に相当する。
本発明であるウロリチン類の製造方法では、効率的にウロリチン類を製造することができる。本発明の製造方法で製造されたウロリチン類は、化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品、飲食品(サプリメントを含む。)として、抗酸化、抗炎症、抗糖化等のために用いられる。
本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。

Claims (4)

  1. 下記工程(a)を含むウロリチン類の製造方法。
    工程(a):ウロリチン類の原料を含有する溶液において、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生する能力を有するゴルドニバクター・ファエシホミニス(Gordonibacter faecihominis)に属する微生物に、該ウロリチン類の原料からウロリチン類を産生させる工程。
  2. 前記ウロリチン類の原料がエラグ酸である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ウロリチン類が、ウロリチンM5、ウロリチンD、ウロリチンM6、又はウロリチンCである、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 気相及び/又はウロリチン類の原料を含有する溶液が水素を含む環境下で、工程(a)が行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
JP2018073984A 2018-04-06 2018-04-06 ウロリチン類の製造方法 Pending JP2019180283A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018073984A JP2019180283A (ja) 2018-04-06 2018-04-06 ウロリチン類の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018073984A JP2019180283A (ja) 2018-04-06 2018-04-06 ウロリチン類の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019180283A true JP2019180283A (ja) 2019-10-24

Family

ID=68337520

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018073984A Pending JP2019180283A (ja) 2018-04-06 2018-04-06 ウロリチン類の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019180283A (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014147280A1 (es) * 2013-03-20 2014-09-25 Consejo Superior De Investigaciones Científicas (Csic) Microorganismo capaz de convertir ácido elágico y elagitaninos en urolitinas y uso del mismo
JP2017192331A (ja) * 2016-04-19 2017-10-26 株式会社ダイセル ウロリチン類の製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014147280A1 (es) * 2013-03-20 2014-09-25 Consejo Superior De Investigaciones Científicas (Csic) Microorganismo capaz de convertir ácido elágico y elagitaninos en urolitinas y uso del mismo
JP2017192331A (ja) * 2016-04-19 2017-10-26 株式会社ダイセル ウロリチン類の製造方法

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
ANTONIE VAN LEEUWENHOEK, 2014, VOL.106, PP.439-447, JPN6021052680, ISSN: 0004942093 *
FOOD FUNCT., 2014, VOL.5, PP.1779-1784, JPN6021052685, ISSN: 0004942091 *
INT J SYST EVOL MICROBIOL, 2014, VOL.64, PP.2346-2352, JPN6022024015, ISSN: 0004797872 *
INT J SYST EVOL MICROBIOL, 2019, VOL.69, PP.2527-2532, JPN6021052683, ISSN: 0004942092 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN110225978B (zh) 尿石素类的制造方法
WO2020177390A1 (zh) 一种猴头菌发酵制备含麦角硫因的化妆品原液的方法
JP7373402B2 (ja) ウロリチン類の製造方法
US11168300B2 (en) Microorganism and production method for urolithins using same
JP5851686B2 (ja) エクオールの製造法、エクオール産生組成物、食品、食品添加物及び医薬品
JP5851685B2 (ja) エクオールの製造方法、エクオール産生組成物、食品、食品添加物及び医薬品
JP5916132B2 (ja) エクオールの製造方法
JP2024056920A (ja) 6-ヒドロキシダイゼインの製造方法
JP6005453B2 (ja) オルニチンとエクオールを含む組成物
JP7389031B2 (ja) 8-プレニルナリンゲニンの製造方法
JP5996187B2 (ja) エクオールの製造方法
JP2014233259A (ja) エクオール以外のイソフラボン類の含有量が低いエクオール含有組成物
JP2012135219A (ja) エクオールの製造方法、エクオール産生組成物、食品、食品添加物及び医薬品
JP2019180283A (ja) ウロリチン類の製造方法
JP7211721B2 (ja) 新規微生物及び該微生物を用いたウロリチン類の製造方法
JP2014083020A (ja) エクオールの精製方法
JP2006314248A (ja) トリテルペン誘導体の製造方法
KR20070041450A (ko) 스테롤의 5-엔-3-온체 또는 3,6-디온체의 제조방법,지질대사 개선제, 음식품 및 동물용 사료의 제조방법, 및분석방법
WO2023199929A1 (ja) エクオールの製造方法
JP2023179735A (ja) 微生物を用いた5‐ヒドロキシエクオールの製造方法
JP2009201369A (ja) 新規アスタキサンチンジラムノシドとその製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210215

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20211223

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220105

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220307

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220614

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220812

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20221213