JP2019177407A - 接合構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミニウム材と鋼材とを直流インバータ方式の抵抗スポット溶接法により異材接合して形成される、耐食性に優れる接合構造体を提供する。【解決手段】接合構造体(1A)は、アルミニウム材(10)と溶融アルミニウム系めっき鋼板(30)との境界部に溶融Alナゲット(51)が形成されており、溶融Alナゲット(51)と、アルミニウム材(10)の電極押圧面(11)との間の最短距離が0.01mm以上である。【選択図】図6

Description

本発明は、抵抗スポット溶接により異材接合された接合構造体およびその製造方法に関する。
アルミニウム、アルミニウム合金等のアルミニウム系材料(以下、アルミニウム材と称する)は、軽量かつ耐食性に優れていることから、種々の分野で使用されている。例えば、自動車分野では、車体軽量化のためにアルミニウム材が車体の構造材として使用されることがある。
アルミニウム材は、製造コスト、生産性等の観点から、車体の一部のみに使用される場合があり、例えば強度があまり必要でない部分(ルーフ等)に使用される。この場合、車体の一部を構成するアルミニウム材と、他の部分を構成する鋼材とを互いに異材接合することを要する。
一般に、異材接合に用いられる各種の方法の中で、抵抗スポット溶接法は、機械的結合法に比べて、接合部の軽量化ができる、生産性が高い、等の利点を有している。しかし、通常、アルミニウム材と鋼材とを単純にスポット溶接すると、それらの接合界面に脆弱な金属間化合物が生成することにより継手強度が低下し得るという問題がある。
特許文献1には、板厚の異なる複数の鋼板の接合強度を高めるスポット溶接方法が記載されている。この方法では、互いに材質の異なる電極を用いてスポット溶接を行い、鋼板同士の界面付近にナゲットを形成することにより接合強度を高めている。
特開2013−173155号公報(2013年9月5日発行)
しかしながら、一般に、アルミニウム材は種々の理由から鋼に比べてスポット溶接することが難しい材料であるため、特許文献1に記載の方法をアルミニウム材と鋼材とのスポット溶接にそのまま適用することはできない。
ところで、スポット溶接の方式としては、単相交流方式が広く用いられている。一方で、アルミニウム材をスポット溶接する場合、大きな溶接電流を要することから、単相交流方式が用いられることは少ない。
スポット溶接の他の方式として、直流インバータ方式も知られている。直流インバータ方式は、発熱の脈動がないことから適正電流範囲が大きい。また、溶接トランスを小型化することができる。
直流インバータ方式のスポット溶接法により、溶接電流を単純に大きくしてスポット溶接を行うと、前述のようにアルミニウム材の溶融ナゲットが該アルミニウム材の表層に達することがある。この場合、接合構造体の耐食性が低下する。
本発明の一態様は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、アルミニウム材と鋼材とを直流インバータ方式の抵抗スポット溶接法により異材接合して形成される、耐食性に優れる接合構造体を提供することにある。
本発明の一態様における接合構造体は、アルミニウム材と溶融アルミニウム系めっき鋼板とをスポット溶接することにより接合された接合構造体であって、前記アルミニウム材と前記溶融アルミニウム系めっき鋼板との境界部にアルミニウムの溶融ナゲットが形成されており、前記アルミニウム材の、前記溶融アルミニウム系めっき鋼板と対向する側の面とは反対側の面を第1表面とし、前記溶融ナゲットの外縁部と、前記アルミニウム材の第1表面との間の最短距離が0.01mm以上であることを特徴としている。
前記アルミニウム材および前記溶融アルミニウム系めっき鋼板が、鋼材に対してこの順に積層されてスポット溶接されることにより、前記鋼材と前記溶融アルミニウム系めっき鋼板と前記アルミニウム材とが接合されており、前記溶融ナゲットを第1ナゲットとし、前記溶融アルミニウム系めっき鋼板と前記鋼材との境界部に形成されるナゲットを第2ナゲットとすると、前記第2ナゲットのナゲット径に対する前記第1ナゲットのナゲット径の比が1.1以上2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の接合構造体。
本発明の一態様における接合構造体の製造方法は、アルミニウム材と溶融アルミニウム系めっき鋼板とをスポット溶接するスポット溶接工程を含む接合構造体の製造方法であって、前記アルミニウム材がマイナス極側、前記溶融アルミニウム系めっき鋼板がプラス極側となるように配置し、前記アルミニウム材の、前記溶融アルミニウム系めっき鋼板と対向する側の面とは反対側の面を第1表面とし、前記スポット溶接工程では、前記マイナス極側に銅合金からなる電極、前記プラス極側にタングステンからなる芯材を先端に埋設した銅合金からなる電極を用いて、前記アルミニウム材と前記溶融アルミニウム系めっき鋼板との境界部に形成される溶融ナゲットの外縁部と、前記アルミニウム材の第1表面と、の間の最短距離が0.01mm以上となるように、直流インバータ方式にて前記アルミニウム材と前記溶融アルミニウム系めっき鋼板とをスポット溶接することを特徴としている。
また、本発明の一態様における接合構造体の製造方法は、前記スポット溶接工程では、前記電極の加圧力が1.4kN以上4.9kN以下であり、溶接電流と通電時間との積で表される値が45以上240以下の範囲内であることが好ましい。
また、本発明の一態様における接合構造体の製造方法は、前記スポット溶接工程にて形成される前記接合構造体の十字引張試験の測定結果として、接合強度が0.8kN以上であることが好ましい。
アルミニウム材と鋼材とが直流インバータ方式の抵抗スポット溶接法により異材接合された接合構造体であって、耐食性に優れる接合構造体を提供することができる。
本発明の実施形態1における接合構造体の製造に用いられる直流インバータ方式のスポット溶接機の構成を示す概略図である。 上記スポット溶接機が備える電極の形状を示す概略図であって、(a)は−極側電極、(b)は+極側電極をそれぞれ示す図である。 図1に示した断面図における溶融アルミニウム系めっき鋼板の基材鋼板とアルミめっき層との界面近傍を拡大して示す図である。 本発明の実施形態1における接合構造体の接合部を模式的に示す断面図である。 上記接合構造体をアルミニウム材の側から見た場合の、該アルミニウム材を省略して模式的に示す平面図である。 上記接合構造体における残存Al厚さを測定する方法について説明するための図である。 本発明の実施形態2における接合構造体の接合部を模式的に示す断面図である。 上記接合構造体における残存Al厚さを測定する方法について説明するための図である。 本発明の実施形態3における接合構造体の接合部を模式的に示す断面図である。 本発明の実施形態4における接合構造体の接合部を模式的に示す断面図である。 実施例における十字引張試験について説明するための模式図であって、(a)は接合構造体の平面図であり、(b)は接合構造体の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。本出願における各図面に記載した構成の形状および寸法(長さ、奥行き、幅等)は、実際の形状および寸法を必ずしも反映させたものではなく、図面の明瞭化および簡略化のために適宜変更している。
本発明の実施の形態における接合構造体は、例えば、自動車分野における車体のルーフパネルとルーフサイド部とを接合して形成される車両用部品である。ただし、本発明の接合構造体としては必ずしもこれに限定されない。本発明は、直流インバータ方式の抵抗スポット溶接法によりアルミニウム材と鋼材とを異材接合することに需要がある用途の接合構造体に適宜適用することができる。
なお、以下では、説明の簡略化のために、接合構造体における、スポット溶接により形成される1つの接合部に着目して説明する。しかし、接合部を複数個備える接合構造体も本発明の範疇に含まれることは勿論である。
また、溶融アルミニウム系めっき鋼板は、基材鋼板の表面にめっき層が形成されたものであることから、本明細書において鋼材の一種として扱うことがある。
<本発明の知見>
従来、自動車分野では、前述のようにルーフ等へのアルミニウム材の使用が推進されている。一方で、アルミニウム材と鋼材とを単純にスポット溶接すると、接合界面に脆弱なFe−Al二元合金層が生じる。該Fe−Al二元合金層の部分での剥離が生じることにより、接合構造体の接合強度が低下するという問題がある。
これまで、アルミニウム材と溶融アルミニウムめっき鋼板とを接合した接合構造体に関する技術が報告されている(特許第4280671号公報等を参照)。この種の従来技術では、接合界面におけるFe−Al二元合金層の生成を抑制して接合構造体の接合強度を高めることを主な目的としている。そのため、スポット溶接の際に、溶接部への入熱が過大となって、アルミニウム材の溶融ナゲットが該アルミニウム材の表層に達することにより接合構造体の耐食性が低下する可能性がある。
本発明者らは、鋭意検討を行い、アルミニウム材と鋼材とを直流インバータ方式の抵抗スポット溶接法により異材接合するにあたって、耐食性を維持しつつ接合強度に優れる接合構造体を製造することを試みた。そして、接合構造体としてどのような構造となっていれば耐食性および接合強度に優れる接合構造体が得られるのかという条件を見出し、本発明を実現するに至った。
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
本実施形態では、本発明の接合構造体の一例としての、アルミニウム材と溶融アルミニウムめっき鋼板とを接合した接合構造体(以下、2枚組の接合構造体と称することがある)について説明する。
始めに、図1および図2を用いて、本実施形態の接合構造体の製造に用いられるスポット溶接機について説明する。図1は、本実施形態における接合構造体1A(図3参照)の製造に用いられる直流インバータ方式のスポット溶接機100の構成を示す概略図である。図2は、スポット溶接機100が備える電極を示す概略図であって、(a)は−極側電極120、(b)は+極側電極130をそれぞれ示す図である。
なお、スポット溶接機100が備える各部材は、以下に格別に記載することを除いて、公知の機器を使用することができる。そのため、図1および図2では、記載の冗長化を避けるために、スポット溶接機100、−極側電極120、および+極側電極130の各部の図示を適宜省略している。図示および説明を省略する部材は、公知のものと同様であると理解されてよい。
(スポット溶接機)
図1に示すように、スポット溶接機100は、溶接制御装置110、および該溶接制御装置110と通電可能に接続された−極側(マイナス極側)電極120および+極側(プラス極側)電極130を備えている。溶接制御装置110は、直流インバータ式電源111と制御部112とを備えている。
−極側電極120および+極側電極130の間に、溶融アルミニウム系めっき鋼板30およびアルミニウム材10を重ねて配置する。−極側電極120はアルミニウム材10側に、+極側電極130は溶融アルミニウム系めっき鋼板30側に配置される。−極側電極120および+極側電極130を用いてこれらの板材に通電して抵抗スポット溶接することにより接合構造体1A(図3参照)が形成される。
スポット溶接機100は、例えばアーム(図示省略)にて−極側電極120および+極側電極130が支持されており、−極側電極120溶融アルミニウム系めっき鋼板30またはアルミニウム材10に押圧するための電極加圧機構(図示省略)を備えている。
直流インバータ式電源111は、例えば商用の3相電源を入力として整流および平滑化した直流を、インバータにて高周波の交流に変換する。そして、変換した交流を溶接トランスに出力するようになっている。直流インバータ式電源111は、−極側電極120および+極側電極130に電力を供給する。
制御部112は、ユーザが設定した溶接条件に基づいて、スポット溶接機100の各部を統括的に制御する。制御部112は、例えば、電極の加圧力、加圧時間、電流、通電時間、等を制御することにより、溶融アルミニウム系めっき鋼板30とアルミニウム材10とのスポット溶接を制御する。
本実施形態のスポット溶接機100が備える−極側電極120および+極側電極130の形状について、図2の(a)および(b)を用いて概略的に説明する。図2の(a)は、−極側電極120の形状を示す概略図である。図2の(b)は、+極側電極130の形状を示す概略図である。
(−極側電極)
図2の(a)に示すように、−極側電極120は、DR(ドーム・ラジアス)形の電極チップである。DR形の電極チップとは、D形の電極チップ(電極先端が曲面であって該曲面の曲率半径が電極外径の1/2)の先端に、ラジアス形状(上記曲面よりも大きい曲率半径の曲面)が形成されたものである。DR形の電極チップは、チップドレッサ(電極研磨用工具)による整形性が良好であり、自動車産業で広く使用されている。
−極側電極120は、胴体部の外径D1が16mmである。−極側電極120の先端部は先端径D2が6mmであり、曲率半径が40mmの曲面となっている。また、−極側電極120の胴体部と上記先端部との間である肩部の表面は曲率半径が8mmの曲面となっている。
−極側電極120の材質は、銅合金であり、一例としては0.4質量%〜1.2質量%のCrを含有するクロム銅合金(Cr−Cu合金)である。上記クロム銅合金は、1質量%程度のCrを含有するものであってもよく、例えば0.8質量%〜1.1質量%のCrを含有するものであってもよい。このような−極側電極120を、以下では1%CrCu電極と称することがある。
なお、−極側電極120は、DR形の電極チップであれば、上記の寸法に限定されない。−極側電極120の外径D1は16mmに限定されず、先端部の形状に応じて適宜設計された外径となっていてもよい。−極側電極120の先端部の先端径D2は5mm〜7mmであることが好ましい。また、−極側電極120の先端部の曲率半径、および上記肩部の表面の曲率半径については特に限定されず、外径D1および先端部の先端径D2の値に応じて適宜設計された値となっていてよい。
(+極側電極130)
図2の(b)に示すように、+極側電極130は、銅からなるDR(ドーム・ラジアス)形の電極チップであって、被溶接物と接触する部分(先端)にW(タングステン)からなる芯材131が埋設されている。+極側電極130を、以下ではW/Cu電極と称することがある。
+極側電極130は、胴体部の外径D11が16mmである。+極側電極130の先端部は先端径D12が6mmであり、曲率半径が40mmの曲面となっている。また、+極側電極130の胴体部と上記先端部との間である肩部の表面は曲率半径が8mmの曲面となっている。
なお、+極側電極130は、DR形の電極チップであれば、上記の寸法に限定されない。+極側電極130の外径D11は16mmに限定されず、先端部の形状に応じて適宜設計された外径となっていてもよい。+極側電極130の先端部の先端径D12は5mm〜7mmであることが好ましい。また、+極側電極130の先端部の曲率半径、および上記肩部の表面の曲率半径については特に限定されず、外径D11および先端部の先端径D12の値に応じて適宜設計された値となっていてよい。
(アルミニウム材)
本明細書において、アルミニウム材との用語は、純アルミニウム(但し不可避不純物を含有することを許容する)およびアルミニウム合金の両方を含む意味で用いる。
アルミニウム材10は、展伸材であればよく、材質は特に限定されない。アルミニウム材10として種々のアルミニウム合金を用いることができる。例えば、1000系、3000系、5000系、6000系、7000系の各種のアルミニウム合金を用いてよい。
アルミニウム材10は、耐食性、加工性、等を考慮してFe濃度が1.0質量%以下であることが好ましい。また、アルミニウム材10は、1.0質量%前後のSiおよび0.01〜1.5質量%のMgを添加するとともに時効処理等の熱処理によって微細なMgSiが析出していることが好ましい。この場合、アルミニウム材10の強度が向上する。この観点から、Si含有量の下限を0.1質量%に設定することが好ましい。また、1.5〜6.0質量%のMgを添加すると、固溶強化によって高い強度が得られる。
一方で、アルミニウム材10は、6.0質量%を超える過剰量のMgが含まれるとスポット溶接時に欠陥が発生しやすくなる。また、3.0質量%を超える過剰量のSiが含まれるとアルミニウム材10の内部に粗大な析出物または晶出物が生成して接合強度が低下する場合がある。よって、アルミニウム材10は、Mg濃度が0.01〜6.0質量%、Si濃度が3.0質量%以下となっていることが好ましい。
アルミニウム材10は、例えば、アルミニウム合金6022であってよい。アルミニウム合金6022は、質量%で、Si:0.90%以上1.20%以下、Fe:0.20%以下、Cu:0.05%以下、Mn:0.04%以上0.12%以下、Cr:0.05%以下、Zn:0.05%以下、Mg:0.45%以上0.70%以下、Ti:0.05%以下、を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成である。
また、アルミニウム材10は、例えば、アルミニウム合金5052であってよい。アルミニウム合金5052は、質量%で、Si:0.25%以下、Fe:0.4%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.1%以下、Cr:0.15%以上0.35%以下、Zn:0.1%以下、Mg:2.2%以上2.8%以下、を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成である。
アルミニウム材10の板厚は、アルミニウム材10として求められる強度に応じて適宜設定されてよく、特に限定されないが、例えば、0.6mm〜1.4mmであってよい。一般に、自動車のルーフパネルにアルミニウム材を使用する場合、この程度の板厚となる。また、アルミニウム材10の板厚は、0.8mm〜1.3mmであってもよく、1.0mm〜1.3mmであってもよい。
(溶融アルミニウム系めっき鋼板)
溶融アルミニウム系めっき鋼板30について、図1および図3を用いて説明する。図3は、図1に示した断面図の一部(A1)の拡大図である。
図1および図3に示すように、溶融アルミニウム系めっき鋼板30は、基材鋼板(下地鋼)31と、基材鋼板31の表面に形成されたアルミめっき層32と、を含む。また、アルミめっき層32は、基材鋼板31とアルミめっき層32との界面部に形成された、合金層33を含む。そして、合金層33は、該合金層33と基材鋼板31との界面に形成された、窒素濃縮層(以下、N濃縮層と称する)34を含む。
基材鋼板31としては、低炭素鋼、中炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼、等を用いることができる。用途に応じてSi、Mn、Cr、Ni、等を添加した鋼種が使用されてもよい。また、本実施形態における基材鋼板31は、25ppm以上200ppm以下のNが添加されている。これにより、めっき後に特定条件下で加熱処理を施すと、基材鋼板31と合金層33との界面部にN濃縮層34が生成する。この特定条件としては、例えば、520℃の温度にて6時間保持する熱処理が挙げられる。
N濃縮層34は、基材鋼板31の表面部に形成された厚みが非常に薄い層であって、例えば厚さ5nm程度の層である。N濃縮層34は、基材鋼板31よりもNが濃化しており(Nが濃縮されており)、例えば3.0原子%以上のNを含む。N濃縮層34は、AlおよびFeの相互拡散を抑制する。N濃縮層34によるFe−Alの相互拡散抑制作用は、めっき後の加熱処理条件を一定にすると、基材鋼板31のN含有量が多くなるほど向上する。しかし、基材鋼板31が200ppmを超える過剰量のNを含む場合、基材鋼板31自体の製造性が低下する。
また、溶融アルミニウム系めっき鋼板30は、以下のようにして製造される。すなわち、アルミニウムを主成分とする溶融アルミニウム系めっき浴に基材鋼板31を浸漬および通過させる。これにより、基材鋼板31の表面にアルミめっき層32を形成する。アルミめっき層32の厚みは、例えば、溶融アルミニウム系めっき浴から引上げ直後の鋼帯にワイピングガスを吹き付け、めっき付着量を制御することによって調整される。アルミめっき層32の厚さは、5μm以上70μm以下の範囲内にすることにより、溶融アルミニウム系めっき鋼板30の加工性を良好なものとすることができる。
また、アルミめっき層32の組成は、上記溶融アルミニウム系めっき浴の組成と同様となる。よって、上記溶融アルミニウム系めっき浴の組成を調整することにより、アルミめっき層32の組成を調整することができる。
本実施形態におけるアルミめっき層32は、3質量%以上12質量%以下のSi、および0.5質量%以上5質量%以下のFeを含有するアルミニウム層(なお、不可避的不純物を含有することを許容する)である。アルミめっき層32が過剰量のSiを含む場合、溶融アルミニウム系めっき鋼板30の加工性が損なわれ得る。そのため、Si濃度の上限を12質量%に規制している。
合金層33にFe−Al−Si三元合金層を生成させることにより、接合構造体1Aの接合強度が向上し得る。Fe−Al−Si三元合金層を十分に生成させるためには、アルミめっき浴浸漬時に、基材鋼板31から溶融Alに溶出するFe,Si量だけでは不足である。そのため、アルミめっき層32のFe,Si含有量を高めることにより、アルミめっき層32から接合界面にFe,Siを補給する。特に、拡散係数の大きなSiに関しては、アルミめっき層32のSi含有量を3質量%以上と高く設定する。これにより、Fe−Al−Si三元合金層の生成に必要なSi量を確保する。
上記のようにアルミめっき層32の組成を調整することによれば、Fe−Al−Si三元合金層の生成を促進させるばかりでなく、スポット溶接時に生じる溶融AlのFe,Si濃度を高くするという作用も生じる。Fe,Si濃度が高い溶融Alを急冷することにより形成されたナゲットは、Fe,Siの固溶強化の効果および急冷効果によって硬質化する。そのため、接合構造体1Aの継手強度を高めることができる。そして、脆弱なFe−Al二元合金層の生成が抑えられることにより、信頼性の高い継手強度をもつ接合構造体1Aが得られる。
なお、上述のアルミめっき層32の組成は、基材鋼板31とアルミめっき層32との界面に形成される合金層33を含まない領域の組成である。
接合構造体1Aのさらなる特性(スポット溶接に関する特性とは別の特性)の向上を要する場合、Fe−Alの相互拡散反応に大きな影響を及ぼさないTi,Sr,B,Cr,Mn,Zn等の元素をアルミめっき層32に適宜含ませることができる。
(接合構造体)
本実施形態の接合構造体1Aは、上述のように各板材が積層した状態にて、スポット溶接機100を用いてアルミニウム材10および溶融アルミニウム系めっき鋼板30をスポット溶接することにより形成される。接合構造体1Aの接合部2Aについて、図4および図5を用いて説明する。図4は、本実施形態における接合構造体1Aの接合部2Aを模式的に示す断面図である。図5は、接合構造体1Aをアルミニウム材10の側から見た場合の、アルミニウム材10を省略して模式的に示す平面図である。なお、図4では、基材鋼板31の一方の板面を省略して示している。
図4に示すように、接合構造体1Aの接合部2Aには、溶融Alナゲット51が形成されている。溶融Alナゲット51は、アルミニウム材10と溶融アルミニウム系めっき鋼板30とを接合する。図4に示す断面図において、溶融Alナゲット51は、アルミニウム材10と溶融アルミニウム系めっき鋼板30との境界の近傍に形成されたアルミニウムの溶融ナゲットであり、アルミニウム材10の内部に向かって盛り上がった(上に凸の)略扇状に形成されている。
また、アルミニウム材10は、加圧力によって−極側電極120がアルミニウム材10に食い込むことによって表面に窪みが生じている。アルミニウム材10の表面における窪みが生じている部分を電極押圧面(第1表面)11とする。換言すれば、電極押圧面11は、接合部2Aにおける、アルミニウム材10の溶融アルミニウム系めっき鋼板30と対向する側の面とは反対側の面である。
また、図4に示すように、接合構造体1Aは、溶融Alナゲット51と基材鋼板31との界面に強入熱領域(中央領域)70が形成されている。強入熱領域70は、図5に示すように、接合構造体1Aをアルミニウム材10の側から透視した場合に、溶融Alナゲット51の中央部に形成されている。図5に示す中心点51Aは、スポット溶接時における−極側電極120および+極側電極130の通電の中心部である。
そして、接合構造体1Aは、溶融Alナゲット51の外縁部と基材鋼板31との界面に弱入熱領域(外周領域)80が形成されており、弱入熱領域80と強入熱領域70との間に中間領域60が形成されている。
中心点51Aを基準として説明すれば、図5に示すように、溶融Alナゲット51は、中心点51Aから円状に拡がって形成されている。溶融Alナゲット51と基材鋼板31との界面において、中心点51Aを含む或る程度の範囲を有する領域が強入熱領域70であり、その外側に中間領域60および弱入熱領域80がこの順に存在している。
(溶融Alナゲット)
溶融Alナゲット51は、以下のようにして形成される。すなわち、−極側電極120および+極側電極130(図1参照)を用いて通電することにより、アルミニウム材10と溶融アルミニウム系めっき鋼板30との境界面が抵抗加熱される。それによりアルミニウムが溶融する。溶融したアルミニウムが凝固することにより、溶融Alナゲット51が形成する。それゆえ、溶融Alナゲット51は、主にアルミニウムからなり、アルミニウム材10およびアルミめっき層32の組成の影響を受ける。
また、溶融Alナゲット51のFe,Si濃度は、アルミめっき層32の厚さ,溶接電流,通電時間,電極形状の組合せに応じて変化し得る。溶融Alナゲット51へのFe,Si供給源となるアルミめっき層32が厚いほど、溶融Alナゲット51のFe,Si濃度が上昇する。
溶融Alナゲット51のナゲット径は、以下のように測定することができる。すなわち、接合構造体1Aにおける溶融Alナゲット51の大きさ(周囲の物質との境界)は、例えば、図4に示すような断面を撮像した電子顕微鏡写真を用いて視覚的に規定することができる。溶融Alナゲット51と合金層33との境界における一端から他端までの幅をAlナゲット径W1とする。
−極側電極120および+極側電極130(図1参照)の互いの中心軸の延長線を電極中心線とすると、スポット溶接時には、上記接合界面における、上記電極中心線との距離が近い位置ほど入熱が高い傾向にある。弱入熱領域80は、当該電極中心線から遠い位置であり、スポット溶接時の入熱が小さい箇所である。一方で、強入熱領域70は、スポット溶接時の入熱が大きい箇所である。中間領域60は、弱入熱領域80における入熱と強入熱領域70における入熱との間の量の入熱を受けた箇所である。
(強入熱領域)
強入熱領域70では、比較的高い温度にて加熱されることによってアルミニウム材10およびアルミめっき層32が溶融するとともに、合金層33のN濃縮層34も溶融して各種元素が相互拡散することにより、基材鋼板31が溶け込む。その結果、アルミニウム材10に比較してFe濃度が高くなった溶融Alナゲット51が形成される。
Feの濃化によって溶融Alナゲット51が硬質化するものの、継手強度を低下させる脆弱なFe−Al二元合金層が接合界面に生じやすくなる。すなわち、スポット溶接時に溶融Alが急冷され溶融Alナゲット51となるとき、強入熱領域70では、溶融AlからFeが接合界面に再析出し、脆弱なFe−Al二元合金層が生成する。
したがって、強入熱領域70は、主にFe−Al系金属間化合物が形成されている。ただし、アルミニウム材10および溶融アルミニウム系めっき鋼板30の組成から供給された各種の元素を含むこと、並びに、それら元素により形成された合金を含むことが許容される。本明細書において、「主にFe−Al系金属間化合物が形成されている」とは、例えば、ナノプローブ電子線解析およびエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて強入熱領域70を分析した場合に、Fe−Al系金属間化合物の存在割合が最も多いことを示すデータが得られることを意味する。
(弱入熱領域)
一方で、弱入熱領域80は、スポット溶接時に、強入熱領域70よりも比較的低温ではあるが加熱される領域である。これにより、弱入熱領域80では、合金層33(Fe−Al−Si三元合金層)からFeおよびSiが多少溶解するとともに、Fe−Al系金属間化合物が生成する。弱入熱領域80は、主にFe−Al−Si系金属間化合物が形成されている。本明細書において、「主にFe−Al−Si系金属間化合物が形成されている」とは、強入熱領域70について上述したことと同様に、Fe−Al−Si系金属間化合物の存在割合が最も多いことを示すデータが得られることを意味する。
弱入熱領域80は、溶融Alナゲット51の端部から0.2mm程度の幅の領域に形成される。この領域の幅は、溶融Alナゲット51のナゲット径W1が変化しても、あまり変動しない。
(中間領域)
中間領域60では、スポット溶接時に、合金層33(Fe−Al−Si三元合金層)は溶融する一方でN濃縮層34が残存する程度の入熱となっている。そのため、中間領域60は、Fe−Al−Si系金属間化合物とN濃縮層34とが混在している。本明細書において、「Fe−Al−Si系金属間化合物とN濃縮層34とが混在している」とは、中間領域60を分析した場合に、Fe−Al−Si系金属間化合物およびN濃縮層34の存在を示すデータ(例えば、Fe、Al、Si、およびNの存在を検出したデータ)が得られるとともに、以下のようなデータが得られることを意味している。すなわち、中間領域60において、溶融Alナゲット51側にFeがほぼ検出されず、Fe−Al系金属間化合物が生成していないことを示すデータが得られることを意味している。分析手段は、極微小領域の分析を行うことができればよく特に限定されないが、例えばナノプローブ電子線解析およびEDXを用いることができる。
この中間領域60は、例えば、接合構造体1Aにアルミニウム材10を引きはがすような力が加えられた場合に、溶融Alナゲット51の外周部である弱入熱領域80の方から進展する亀裂を停止させるように働く。これにより、アルミニウム材10に更なる力を加えた場合、接合構造体1Aは、シャー破断ではなくボタン破断となりやすい。つまり、中間領域60が接合強度を増大させるように働くことにより、溶融Alナゲット51は高い接合強度を有する。
(残存Al厚さ)
図6は、接合構造体1Aにおける残存Al厚さを測定する方法について説明するための図である。
図6に示すように、本実施形態の接合構造体1Aは、溶融Alナゲット51の上部にアルミニウム材10が残存している。溶融Alナゲット51の外縁部と、アルミニウム材10の電極押圧面11との間の最短距離を残存Al厚さL1とする。本実施形態の接合構造体1Aは、残存Al厚さL1が0.01mm以上である。
ここで、電極押圧面11の位置(接合構造体1Aの厚さ方向における位置)は、アルミニウム材10の表面から窪んだ深さに応じて変化し得る。この深さは、スポット溶接時の加圧力および入熱(溶接電流の大きさおよび通電時間等)の影響を受ける。また、スポット溶接時の加圧力は、アルミニウム材10と溶融アルミニウム系めっき鋼板30との密着性(ミクロな接触面積)に関わることから、通電の電流密度にも関わる。そのため、溶融Alナゲット51の高さも、スポット溶接時の加圧力および入熱の影響を受ける。そして、アルミニウム材10の板厚および種類、並びに溶融アルミニウム系めっき鋼板30の板厚および種類によっても、溶接条件と、電極押圧面11の位置および溶融Alナゲット51の高さと、の関係は変化する。
それゆえ、(i)接合部の接合強度を高くしつつ(例えば十字引張試験をした場合の接合強度が0.8kN以上)、(ii)残存Al厚さL1を0.01mm以上とする、という両者の条件を満たすことは容易ではない。
本実施形態の接合構造体1Aは、以下のような製造方法により実現される。
(接合構造体の製造方法)
本実施形態における接合構造体1Aの製造方法は、アルミニウム材10と溶融アルミニウム系めっき鋼板30とを、直流インバータ方式のスポット溶接機100を用いてスポット溶接するスポット溶接工程を含む。
(スポット溶接工程)
上記スポット溶接工程では、アルミニウム材10よりも高い電気抵抗を有する溶融アルミニウム系めっき鋼板30を+極側に配置し、アルミニウム材10を−極側に配置する。そして、+極側に抵抗値の高い+極側電極130(W/Cu電極)を用い、−極側に熱伝導性のよい−極側電極120(1%CrCu電極)を用いる。
これにより、溶融Alナゲット51のナゲット径W1が大きくなるような溶接条件でスポット溶接を行った場合に、アルミニウム材10側では、−極側電極120の発熱が抑制されるとともに、−極側電極120によって電極押圧面11の部分が効率的に冷却される。そのため、溶融Alナゲット51が電極押圧面11に達することが抑制され、残存Al厚さL1を0.01mm以上とすることができる。
また、スポット溶接における入熱は、溶接電流と通電時間との積によって調節することができる。ここで、スポット溶接における通電時間の1サイクルとは、スポット溶接機100に接続している商用電源の電源周波数から決まる時間となる。商用電源は、50Hzの電源周波数であってよく、60Hzの電源周波数であってもよい。また、その他の電源周波数であってもよい。電源周波数の違いに応じて溶接電流を調節することにより、入熱を制御することができる。
上記スポット溶接工程では、電極(−極側電極120および+極側電極130)の加圧力が1.4kN以上4.9kN以下であり、溶接電流と通電時間との積で表される値が45以上240以下の範囲内となるように制御される。そして、残存Al厚さL1が本発明の範囲内となるように、アルミニウム材10と溶融アルミニウム系めっき鋼板30とを直流インバータ方式にてスポット溶接する。
なお、スポット溶接時において、−極側電極120および+極側電極130には互いに等しい圧力にてアルミニウム材10に押圧される。そのため、本明細書において、−極側電極120または+極側電極130による加圧力は、単に電極の加圧力と表現する。
電極の加圧力および溶接電流と通電時間との積で表される値(すなわち入熱)は、残存Al厚さL1の値に複雑に作用する。例えば、残存Al厚さL1を0.01mm以上とするために適切な入熱の値は、各種の条件に応じて変化する。
電極の加圧力が1.4kN以上4.9kN以下の範囲内において、溶接電流と通電時間との積で表される値が45よりも小さい場合、残存Al厚さL1は大きくなる一方で、溶融Alナゲット51のナゲット径W1が小さくなりすぎ、充分な接合強度が得られない。また、溶接電流と通電時間との積で表される値が240よりも大きい場合、溶融Alナゲット51のナゲット径W1を大きくすることができる一方で、入熱が過大となり、溶融Alナゲット51が電極押圧面11に到達してしまう。
上記スポット溶接工程では、60Hzの電源周波数の商用電源を用いる場合、初期加圧は、例えば35サイクルであり、ホールドは24サイクルである。初期加圧は、10サイクル以上であってよく、ホールドは、5サイクル以上であってよい。ホールドとは、電極120に通電後に、電極120を冷却しつつ該電極120を用いて被溶接材を加圧する鍛造加圧のことを意味している。
また、本実施形態の製造方法では、電極として前述のような−極側電極120および+極側電極130を用いている。このような電極を用いるとともに、上述の条件にてスポット溶接を行う。上記製造方法によれば、アルミニウム材の板厚および材質、溶融アルミニウム系めっき鋼板の板厚、等が変化しても、残存Al厚さL1を0.01mm以上とすることができ、耐食性に優れた接合構造体1Aを製造することができる。そして、接合構造体1Aの接合強度を高くすることができ、例えば、十字引張試験の測定結果として0.8kN以上の接合強度を有する接合構造体を製造することができる。このような高い接合強度は、接合構造体1Aのナゲット径W1を大きくするとともに接合部2Aに特定の領域(中間領域60)が形成されることにより得られる効果である。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
前記実施形態1では、2枚組の接合構造体について説明した。これに対して、本実施形態では、上述のアルミニウム材10および溶融アルミニウム系めっき鋼板30に加えて鋼材を含む、3枚組の接合構造体について説明する。なお、3枚組の接合構造体に限定されず、4枚組以上の接合構造体についても本発明の範疇に含まれる。本明細書において、溶融アルミニウム系めっき鋼板30における基材鋼板の板厚と、複数枚の鋼材のそれぞれの板厚と、を合計して得られる値を接合構造体における鋼材総板厚と称する。本発明の一態様における接合構造体は、鋼材総板厚の上限が4.3mmである。接合構造体は、鋼材総板厚が4.3mm以下となる範囲内であれば鋼材の枚数は特に限定されない。なお、鋼材総板厚が4.3mmを超えると、溶融アルミニウム系めっき鋼板30とその下の鋼材との間のナゲットが生成され難くなる。この場合、十字引張試験をすると、溶融アルミニウム系めっき鋼板30と鋼材との界面部分で破断し易く、0.8kN以上の十字引張強度が得られなくなる傾向にある。
例えば、車両用部品を製造する場合、アルミニウム材と複数枚の鋼材とを溶接することを要する場合がある。アルミニウム材は、固有抵抗が低く熱伝導率が高いことから、比較的大きな溶接電流にて短時間に溶接することを要する。
本実施形態の接合構造体は、アルミニウム材と溶融アルミニウム系めっき鋼板とにさらに加えて鋼材を積層して、それらを直流インバータ方式にてスポット溶接することにより異材接合された接合構造体である。直流インバータ方式のスポット溶接機を用いて、このような接合構造体を製造することについては、過去の実績がなく何ら知見が無かった。ましてや、鋼材が複数枚である場合については全く未知であった。
(接合構造体)
本実施形態の接合構造体1Bおよび接合部2Bについて、図7および図8を用いて説明する。図7は、本発明の実施形態2における接合構造体1Bの接合部2Bを模式的に示す断面図である。図8は、接合構造体1Bにおける残存Al厚さL1を測定する方法について説明するための図である。
本実施形態における接合構造体1Bは、鋼材20に対して、溶融アルミニウム系めっき鋼板30およびアルミニウム材10がこの順に積層されてスポット溶接されることにより製造される。
(鋼材)
例えば自動車分野では、適材適所に材料の強度を変更して車体が組み立てられており、一般的な材料強度を有するSPC270級よりも高い強度のSPC440級やSPC590級が使用されていることがある。鋼材20の鋼種および板厚は、鋼材20として求められる強度に応じて適宜設定されてよく、特に限定されない。
鋼材20は、一般冷延鋼板、特殊冷延鋼板、高強度鋼板、熱延鋼板、等であってよく、めっき鋼板であってもよい。鋼材20は、例えば、SPC270C、SPC270D、SPC440、SPC590、合金化亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)、等であってもよい。鋼材20の板厚は、例えば、0.8mm〜1.4mmの範囲内である。
(接合部)
図7に示すように、接合構造体1Bの接合部2Bには、溶融Alナゲット(第1ナゲット)51と、溶融アルミニウム系めっき鋼板30と鋼材20とを接合する下部ナゲット(第2ナゲット)52とが形成されている。図7に示す断面図において、下部ナゲット52は、溶融アルミニウム系めっき鋼板30および鋼材20との境界部に形成されており、それらの両方に拡がる楕円状に形成されている。
下部ナゲット52は、通電によって溶融アルミニウム系めっき鋼板30と鋼材20との境界面が抵抗加熱され、Feの融点まで昇温することにより溶融した鉄が凝固することにより形成される。
3枚組の接合構造体1Bについて、溶融Alナゲット51および下部ナゲット52の両方を所望の接合強度を満たすように形成することは容易ではない。これは、鉄とアルミニウムとの融点の違いに起因して、スポット溶接時における2つのナゲットの挙動が異なるためである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、3枚組の接合構造体1Bが高い接合強度を有するために、接合部2Bに求められる以下の要件を見出した。
すなわち、本実施形態の接合構造体1Bは、下部ナゲット52のナゲット径W2に対する溶融Alナゲット51のナゲット径W1の比(W1/W2の比)が、1.1以上2.0以下となっている。ここで、下部ナゲット52の楕円形状における長軸の長さを下部ナゲット径W2とする。
下部ナゲット52のナゲット径W2は、前述の溶融Alナゲット51のナゲット径W1と同様に測定することができる。すなわち、接合構造体1Bにおける下部ナゲット52の大きさ(周囲の物質との境界)は、例えば、図7に示すような断面を撮像した電子顕微鏡写真を用いて視覚的に規定することができる。
なお、下部ナゲット52は、図7に示すような楕円形状であるとは限らない。そのため、下部ナゲット52の下部ナゲット径W2は、より詳細には以下のように定義される。すなわち、下部ナゲット径W2は、溶融アルミニウム系めっき鋼板30と鋼材20とが当接する界面上における、下部ナゲット52と溶融アルミニウム系めっき鋼板30の表面との境界の一方から他方までの長さである。
上記W1/W2の比が1.1未満の場合、スポット溶接時の入熱が大きいことによって溶融Alナゲット51のナゲット径W1が大きくなりすぎ、アルミニウム材10が大きく減肉する。そのため、十字引張試験の測定結果として0.8kN未満の接合強度を有する接合構造体となり得る。つまり、スポット溶接時の入熱を大きくすると、ナゲット径W1が大きくなる一方でアルミニウム材10が減肉することにより、電極押圧面11の部分にてアルミニウム材10が破断し易くなる。
他方、上記比が2.0を超える場合、スポット溶接時の入熱が小さく、下部ナゲット52のナゲット径が十分に大きくならない。そのため、接合構造体は、十字引張試験において下部ナゲット52の部分で破断しやすく接合強度が0.8kN未満となり得る。
また、図8に示すように、本実施形態の接合構造体1Bは、溶融Alナゲット51の上部にアルミニウム材10が残存している。溶融Alナゲット51の外縁部と、アルミニウム材10の電極押圧面11との間の最短距離を残存Al厚さL1とする。本実施形態の接合構造体1Aは、残存Al厚さL1が0.01mm以上である。
(接合構造体の製造方法)
本実施形態における接合構造体1Bの製造方法は、鋼材20に対して、溶融アルミニウム系めっき鋼板30およびアルミニウム材10がこの順に積層して、直流インバータ方式のスポット溶接機100を用いてスポット溶接するスポット溶接工程を含む。
本実施形態では、−極側電極120がアルミニウム材10に当接し、+極側電極130が鋼材20に当接するように配置される。
そして、上記スポット溶接工程では、電極の加圧力が1.4kN以上4.9kN以下であり、溶接電流と通電時間との積で表される値が45以上240以下の範囲内となるように制御される。そして、残存Al厚さL1が本発明の範囲内となるように、アルミニウム材10と溶融アルミニウム系めっき鋼板30とを直流インバータ方式にてスポット溶接する。
これにより、3枚組の接合構造体1Bにおいても、残存Al厚さL1を0.01mm以上とすることができ、耐食性に優れた接合構造体を製造することができる。そして、接合構造体1Bの接合強度を高くすることができ、例えば、十字引張試験の測定結果として0.8kN以上の接合強度を有する接合構造体を製造することができる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図9を用いて以下に説明する。なお、本実施形態にて説明すること以外の構成は、前記実施形態1および実施形態2と同じである。図9は、本実施形態における接合構造体1Cの接合部2Cを模式的に示す断面図である。
前記実施形態2では、3枚組の接合構造体1Bについて説明した。これに対して、本実施形態の接合構造体1Cは、鋼材20に加えて鋼材21を含む、4枚組の接合構造体となっている。
図9に示すように、本実施形態の接合構造体1Cは、鋼材21と鋼材20と溶融アルミニウム系めっき鋼板30とアルミニウム材10とが、この順に重ね合わせて積層され、各板材が積層した状態にて直流インバータ方式のスポット溶接機100を用いてスポット溶接することにより形成される。本実施形態では、−極側電極120がアルミニウム材10に当接し、+極側電極130が鋼材21に当接するように配置される。
鋼材21と鋼材20とは、互いに同じ鋼種であってもよく、互いに異なる鋼種であってもよい。また、互いに同じ板厚であってもよく、互いに異なる板厚であってもよい。鋼材21の板厚は、例えば、0.8mm〜1.4mmの範囲内である。
接合構造体1Cの接合部2Cは、鋼材21、鋼材20、および溶融アルミニウム系めっき鋼板30に拡がる下部ナゲット55が形成されている。
この場合、溶融アルミニウム系めっき鋼板30と鋼材20とが当接する界面上における、下部ナゲット55と溶融アルミニウム系めっき鋼板30の表面との境界の一方から他方までの長さをナゲット径(第1鋼ナゲット径)W2とする。また、鋼材20と鋼材21とが当接する界面上における、下部ナゲット55と鋼材20(または鋼材21)の表面との境界の一方から他方までの長さを第2鋼ナゲット径W3とする。
接合構造体1Cは、W1/W2の比が1.1〜2.0となっている。第2鋼ナゲット径W3の長さは、接合構造体1Cの接合強度に対する影響が小さい。また、接合構造体1Cは、溶融Alナゲット51と基材鋼板31との接合界面に中間領域60が形成されている。
残存Al厚さL1が本発明の範囲内となるように、鋼材21と鋼材20と溶融アルミニウム系めっき鋼板30とアルミニウム材10とを直流インバータ方式にてスポット溶接する。
これにより、4枚組の接合構造体1Cにおいても、残存Al厚さL1を0.01mm以上とすることができ、耐食性に優れた接合構造体を製造することができる。そして、例えば、十字引張試験の測定結果として0.8kN以上の接合強度を有する接合構造体1Cを製造することができる。
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図10を用いて以下に説明する。なお、本実施形態にて説明すること以外の構成は、前記実施形態1〜3と同じである。図10は、本実施形態における接合構造体1Dの接合部2Dを模式的に示す断面図である。
前記実施形態3では、4枚組の接合構造体1Cについて説明した。これに対して、本実施形態の接合構造体1Dは、鋼材20および鋼材21に加えて鋼材22を含む、5枚組の接合構造体となっている。
図10に示すように、接合構造体1Dは、鋼材22、鋼材21、鋼材20、溶融アルミニウム系めっき鋼板30、およびアルミニウム材10が、この順に重ね合わせて積層され、各板材が積層した状態にて直流インバータ方式のスポット溶接機100を用いてスポット溶接することにより形成される。本実施形態では、−極側電極120がアルミニウム材10に当接し、+極側電極130が鋼材22に当接するように配置される。
鋼材22、鋼材21、および鋼材20は、それぞれが同じ鋼種であってもよく、それぞれ異なる鋼種であってもよい。また、それぞれが同じ板厚であってもよく、それぞれ異なる板厚であってもよい。鋼材22の板厚は、例えば、0.8mm〜1.4mmの範囲内である。
接合構造体1Dの接合部2Dは、鋼材22、鋼材21、鋼材20、および溶融アルミニウム系めっき鋼板30に拡がる下部ナゲット58が形成されている。鋼材21と鋼材22とが当接する界面上における、下部ナゲット58と鋼材21(または鋼材22)の表面との境界の一方から他方までの長さを第3鋼ナゲット径W4とする。
接合構造体1Dは、W1/W2の比が1.1〜2.0となっている。第2鋼ナゲット径W3および第3鋼ナゲット径W4の長さは、接合構造体1Dの接合強度に対する影響が小さい。また、接合構造体1Dは、溶融Alナゲット51と基材鋼板31との接合界面に中間領域60が形成されている。
残存Al厚さL1が本発明の範囲内となるように、鋼材22と鋼材21と鋼材20と溶融アルミニウム系めっき鋼板30とアルミニウム材10とを直流インバータ方式にてスポット溶接する。
これにより、5枚組の接合構造体1Dにおいても、残存Al厚さL1を0.01mm以上とすることができ、耐食性に優れた接合構造体を製造することができる。そして、例えば、十字引張試験の測定結果として0.8kN以上の接合強度を有する接合構造体1Dを製造することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例および比較例により、本発明の接合構造体についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
〔スポット溶接機〕
以下に示す例では、前述のスポット溶接機100を用いてスポット溶接を行った。初期加圧は35サイクル、ホールドは24サイクルとした。商用電源として、60Hzの電源周波数のものを用いた。電極として、図2を用いて前述した−極側電極120および+極側電極130を用いた。
〔十字引張試験〕
図11は、十字引張試験について説明するための模式図であって、(a)は接合構造体の平面図であり、(b)は接合構造体の断面図である。ここでは、4枚組の接合構造体について示している。
図11の(a)および(b)に示すように、鋼材21および鋼材20を積層するとともに、その上に溶融アルミニウム系めっき鋼板30およびアルミニウム材10をこの順に積層する。アルミニウム材10として、幅W10が50mm、長さL10が150mmのものを用いている。また、溶融アルミニウム系めっき鋼板30、鋼材20、および鋼材21も同様に、50mm×150mmのものを用いている。
溶融アルミニウム系めっき鋼板30とアルミニウム材10とは互いに十字になるように積層する。そして、溶接点3に電極をあててスポット溶接する。これにより、接合構造体を形成する。
接合構造体のアルミニウム材10に上方向の力を与えるとともに、溶融アルミニウム系めっき鋼板30に下方向の力を与えることにより、十字引張試験を行う。これにより、十字引張強度(kN)を評価した。十字引張強度が0.8kN以上を合格と判定し、○評価とした。十字引張試験は、JIS Z 3137に準拠して行った。
〔断面観察〕
製造した接合構造体のそれぞれを、溶接部の中心が観察できるようエポキシ樹脂に埋め込み、研磨処理を行った。研磨処理後、3%NaOH水溶液でエッチングを行い、次いで3%の硝酸を溶かしたエタノールで更にエッチングを行った。これにより、溶接部におけるナゲット径の測定を可能にした。光学顕微鏡を用いて断面観察することにより、アルミニウム溶融ナゲットおよび鋼材溶融ナゲットのナゲット径、並びに残存Al厚さL1を測定した。
〔耐食性〕
製造した接合構造体のそれぞれについて、JIS Z2371:2000に規定される、塩水噴霧試験(SST)を行い、白錆発生時間を測定した。以下の基準で接合構造体の耐食性を評価し、○評価を合格と判定した。
○:10時間で白錆発生無し
×:10時間で白錆発生有り。
(実施例1:2枚組)
板厚1.0mmのアルミニウム合金6022または板厚1.0mm若しくは3.0mmのアルミニウム合金5052(アルミニウム材)と、板厚0.5mm、1.0mm、または1.6mmの溶融アルミニウム系めっき鋼板と、を積層して、下記表1または表2に示す条件にてスポット溶接した。そして、各試料について、断面観察、十字引張試験、および塩水噴霧試験を行った。
溶融アルミニウム系めっき鋼板として、前述の溶融アルミニウム系めっき鋼板30を用いた。そのため、基材鋼板中に所定量のNを含有しており、溶融アルミニウム系めっき鋼板は、N濃縮層を含む。このことは、以下の他の実施例の説明においても同様である。
アルミニウム材としてアルミニウム合金6022を用いた場合の結果を表1に示す。なお、下表1に記載のAl溶融ナゲット径は、図4を用いて上述した溶融Alナゲット51のナゲット径W1に対応し、溶融Alナゲット最上部からアルミニウム合金の表層までの距離は、残存Al厚さL1に対応している。このことは以下の他の実施例の説明においても同様である。
Figure 2019177407
表1のNo.1〜6に示すように、残存Al厚さL1が本発明の範囲内の実施例の接合構造体は、優れた耐食性を示すとともに、優れた十字引張強度を示した。
これに対し、アルミニウム材の溶融ナゲットが該アルミニウム材の表層に達している比較例No.7〜9では、十字引張強度に優れているが、耐食性に劣る。
また、アルミニウム材としてアルミニウム合金5052を用いた場合の結果を表2に示す。
Figure 2019177407
表2のNo.11〜14に示すように、残存Al厚さL1が本発明の範囲内の実施例の接合構造体は、優れた耐食性を示すとともに、優れた十字引張強度を示した。
これに対し、アルミニウム材の溶融ナゲットが該アルミニウム材の表層に達している比較例No.15、16では、十字引張強度に優れているが、耐食性に劣る。
また、実施例No.14および比較例No.16から、以下のことがわかる。すなわち、アルミニウム材の板厚が3mmと厚い場合であっても、スポット溶接時の入熱が特定の値よりも高くなると、アルミニウム材の溶融ナゲットが該アルミニウム材の表層に達し、耐食性が低下し得る。
(実施例2:3枚組)
板厚1.2mmのアルミニウム合金(アルミニウム材)と、板厚0.5mmの溶融アルミニウム系めっき鋼板と、板厚0.8mm〜1.4mmの各種の鋼種の鋼材とを積層して、下記表3に示す条件にてスポット溶接した。鋼板総板厚は1.3mm〜1.9mmとした。なお、下表3に記載の鋼材溶融ナゲット径は、下部ナゲット52のナゲット径W2に対応している。アルミニウム材としてアルミニウム合金6022を用いた。
Figure 2019177407
表3のNo.21〜34に示すように、残存Al厚さL1が本発明の範囲内の実施例の接合構造体は、優れた耐食性を示すとともに、優れた十字引張強度を示した。
これに対し、アルミニウム材の溶融ナゲットが該アルミニウム材の表層に達している比較例No.35、36では、十字引張強度に優れているが、耐食性に劣る。
(実施例3:4枚組)
板厚1.2mmのアルミニウム合金(アルミニウム材)と、板厚0.5mmの溶融アルミニウム系めっき鋼板と、板厚0.8mmのGA鋼板(第1の鋼材)と、板厚1.0mmの各種の鋼種の第2の鋼材とを積層して、下記表4に示す条件にてスポット溶接した。鋼板総板厚は2.3mmとした。アルミニウム材としてアルミニウム合金6022を用いた。
4枚組の接合構造体では、(i)溶融Alナゲットの径と、(ii)溶融アルミニウム系めっき鋼板と該鋼板に隣接する鋼材との間における鋼材溶融ナゲットの径(前述のナゲット径W2に相当)と、を用いてナゲット径の比を算出した。
Figure 2019177407
表4のNo.41〜44に示すように、残存Al厚さL1およびナゲット径の比が本発明の範囲内の実施例の接合構造体は、優れた耐食性を示すとともに、優れた十字引張強度を示した。
(実施例4:5枚組)
板厚1.2mmのアルミニウム合金(アルミニウム材)と、板厚0.5mmの溶融アルミニウム系めっき鋼板と、3枚の鋼材とを積層して、下記表5に示す条件にてスポット溶接した。上記3枚の鋼材は、板厚0.8mmまたは1.4mmの各種の鋼種の第1の鋼材、板厚1.0mmの各種の鋼種の第2の鋼材、および板厚1.0mmまたは1.4mmの各種の鋼種の第3の鋼材である。鋼板総板厚は3.3mmまたは4.3mmとした。アルミニウム材としてアルミニウム合金6022を用いた。
5枚組の接合構造体の場合も、4枚組の場合と同様に、(i)溶融Alナゲットの径と、(ii)溶融アルミニウム系めっき鋼板と該鋼板に隣接する鋼材との間に形成される鋼材溶融ナゲットの径(前述のナゲット径W2に相当)と、を用いてナゲット径の比を算出した。
Figure 2019177407
表5のNo.51〜56に示すように、残存Al厚さL1およびナゲット径の比が本発明の範囲内の実施例の接合構造体は、優れた耐食性を示すとともに、優れた十字引張強度を示した。
1A〜1D 接合構造体
2A〜2D 接合部
10 アルミニウム材
11 電極押圧面(第1表面)
20 鋼材
30 溶融アルミニウム系めっき鋼板
31 基材鋼板(下地鋼)
34 N濃縮層
51 溶融Alナゲット(第1ナゲット)
52 下部ナゲット(第2ナゲット)
120 −極側電極
130 +極側電極
131 芯材(タングステンからなる芯材)

Claims (5)

  1. アルミニウム材と溶融アルミニウム系めっき鋼板とをスポット溶接することにより接合された接合構造体であって、
    前記アルミニウム材と前記溶融アルミニウム系めっき鋼板との境界部にアルミニウムの溶融ナゲットが形成されており、
    前記アルミニウム材の、前記溶融アルミニウム系めっき鋼板と対向する側の面とは反対側の面を第1表面とし、
    前記溶融ナゲットの外縁部と、前記アルミニウム材の第1表面との間の最短距離が0.01mm以上であることを特徴とする接合構造体。
  2. 前記アルミニウム材および前記溶融アルミニウム系めっき鋼板が、鋼材に対してこの順に積層されてスポット溶接されることにより、前記鋼材と前記溶融アルミニウム系めっき鋼板と前記アルミニウム材とが接合されており、
    前記溶融ナゲットを第1ナゲットとし、前記溶融アルミニウム系めっき鋼板と前記鋼材との境界部に形成されるナゲットを第2ナゲットとすると、
    前記第2ナゲットのナゲット径に対する前記第1ナゲットのナゲット径の比が1.1以上2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の接合構造体。
  3. アルミニウム材と溶融アルミニウム系めっき鋼板とをスポット溶接するスポット溶接工程を含む接合構造体の製造方法であって、
    前記アルミニウム材がマイナス極側、前記溶融アルミニウム系めっき鋼板がプラス極側となるように配置し、
    前記アルミニウム材の、前記溶融アルミニウム系めっき鋼板と対向する側の面とは反対側の面を第1表面とし、
    前記スポット溶接工程では、
    前記マイナス極側に銅合金からなる電極、前記プラス極側にタングステンからなる芯材を先端に埋設した銅合金からなる電極を用いて、
    前記アルミニウム材と前記溶融アルミニウム系めっき鋼板との境界部に形成される溶融ナゲットの外縁部と、前記アルミニウム材の第1表面と、の間の最短距離が0.01mm以上となるように、直流インバータ方式にて前記アルミニウム材と前記溶融アルミニウム系めっき鋼板とをスポット溶接することを特徴とする接合構造体の製造方法。
  4. 前記スポット溶接工程では、前記電極の加圧力が1.4kN以上4.9kN以下であり、溶接電流と通電時間との積で表される値が45以上240以下の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の接合構造体の製造方法。
  5. 前記スポット溶接工程にて形成される前記接合構造体の十字引張試験の測定結果として、接合強度が0.8kN以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の接合構造体の製造方法。
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