JP2008080394A - 鋼材とアルミニウム材との異材接合体とその接合方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定板厚の鋼材1とアルミニウム材2とをスポット溶接にて接合した異材接合体3であって、これら接合される鋼材1 とアルミニウム材2 との互いの接合面間に、特定のZnまたはAlの金属皮膜と有機樹脂接着剤の皮膜との抑制層4 が予め設けられた状態でスポット溶接されており、スポット溶接後の溶接部における最適な厚さの界面反応層の厚さが特定の範囲に制御されて高い接合強度を得るとともに、スポット接合部以外の界面領域に存在する抑制層4 によって高い耐食性を得る。
【選択図】図1
Description
図1に本発明で規定する異種接合体を断面図で示す。図1において、3が鋼材( 鋼板) 1とアルミニウム材( アルミニウム合金板) 2とをスポット溶接にて接合した異材接合体である。5はスポット溶接における界面反応層6を有するナゲットで、図中に水平方向に矢印で示すナゲット径を有する。9 はナゲット周囲のコロナボンド部である。t1は鋼材の板厚、t2はアルミニウム材2の板厚、Δt はスポット溶接による接合後のアルミニウム材の最小残存板厚を示す。
本発明では、鋼材の板厚t1が0.3 〜3.0mm である接合体であることが必要である。鋼材の板厚t1が0.3mm 未満の場合、前記した構造部材や構造材料として必要な強度や剛性を確保できず不適正である。また、それに加えて、スポット溶接による加圧によって、鋼材の変形が大きく、酸化皮膜が容易に破壊されるため、アルミニウムとの反応が促進される。その結果、金属間化合物が形成しやすくなる。
本発明においては、使用する鋼材の形状や材料を特に限定するものではなく、構造部材に汎用される、あるいは構造部材用途から選択される、鋼板、鋼形材、鋼管などの適宜の形状、材料が使用可能である。ただ、自動車部材などの軽量な高強度構造部材(異材接合体)を得るためには、鋼材の引張強度が400MPa以上である通常の高張力鋼(ハイテン)であることが好ましい。
本発明で用いるアルミニウム材は、その合金の種類や形状を特に限定するものではなく、各構造用部材としての要求特性に応じて、汎用されている板材、形材、鍛造材、鋳造材などが適宜選択される。ただ、アルミニウム材の強度についても、上記鋼材の場合と同様に、スポット溶接時の加圧による変形を抑えるために高い方が望ましい。この点、アルミニウム合金の中でも強度が高く、この種構造用部材として汎用されている、A5000 系、A6000 系などの使用が最適である。
本発明では、より高い接合強度を得るために、スポット溶接における、鋼とアルミニウム材との間の界面反応層の形成面積や厚さ分布を制御する。そのために、本発明では、鋼とアルミニウム材との間に界面反応層が形成する時間を抑制制御する。そして、この界面反応層形成時間を抑制制御のために、鋼とアルミニウム材との間に (材料に) 予め抑制層を形成する。
抑制層のひとつとして、先ず特定範囲のZnまたはAlの金属皮膜について、以下に説明する。本発明では、接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、ZnまたはAlの金属皮膜を予め設けられた状態でスポット溶接するため、鋼材またはアルミニウム材の少なくとも接合面側の表面に、ZnまたはAlの金属皮膜を予め設ける。このZnまたはAlの金属皮膜は、後述する特定融点範囲の通り、接合するアルミニウム材と融点が近いために、スポット溶接時に、鋼とアルミの金属間化合物である界面反応層が形成する時間を制御し、界面反応層の厚さ範囲と分布を制御することができる。
次に、もうひとつの抑制層としての、有機樹脂接着剤の皮膜について、以下に説明する。
本発明では、異材接合体界面反応層の厚さが0.5 〜5 μm である部分の面積が、アルミニウム材の板厚t2との関係で、10×t2 0.5 mm2 以上であることとする。この最適厚さの界面反応層の面積規定は、界面反応層が薄い (無い) 程良いという従来の常識とは異なり、最適範囲に制御するものであり、指向する方向としてはむしろ積極的に存在させる方向でもある。そして、接合強度向上のために、最適厚さ範囲の界面反応層を大面積形成する、言い換えると広範囲に存在させるという技術思想に基づく。
異種接合体を得るためのスポット溶接方法の各要件を以下に説明する。図2に異種接合体を得るための、前提となるスポット溶接の一態様を例示する。本発明スポット溶接方法の基本的な態様は、通常のスポット溶接の態様と同じである。図2 において、1は鋼板、2はアルミニウム合金板、3は異種接合体、5はナゲット、7と8は電極である。
このようなスポット溶接において、アルミニウム材2側の電極チップ8の先端径を7mm φ以上として、電極チップ7、8による加圧力を、先端曲率半径Rmm と加圧力WkN との関係が(R ×W )1/3 /R >0.05となるように印加する。この加圧力も大きい方がより接着剤を押し出せるため望ましいが、スポット溶接の能力限界からすると、現実的には10kNまでである。
前記した最適範囲厚さの界面反応層を広範囲に形成するためには、特にアルミニウム材側については先端径は7mmφ以上で先端曲率半径R の大きいドーム型などのR型形状のチップとする。また、鋼材側も同様に曲率半径R の大きい方が望ましいが、スポット溶接の能力限界からすると、現実的にはR は250mm までである。
スポット溶接時の電流については、比較的大きなナゲット面積と、上記最適界面反応層の必要面積を得るためには、前記アルミニウム材の板厚t2との関係で、15×t2 0.5 〜30×t2 0.5 kAの電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を有し、この工程より高い電流の工程が存在しない電流パターンであることが必要である。
接合面側に溶融純Znめっきを平均厚み10μm で施した上記鋼板と上記アルミニウム板とを、接合面間にエポキシ系熱硬化型接着剤を塗布した上で重ね合わせたウエルドボンド材として、スポット溶接し、異材接合体を製作した結果を表1 、2 に示す。
また、スポット溶接における電極条件や電流条件は一定とし、鋼板やアルミニウム合金板の接合面側のめっき条件や熱硬化型接着剤条件を種々変えた、鋼板とアルミニウム板とのウエルドボンド材で異材接合体を製作した結果も表3 に示す。表3で接着剤を塗布した場合の各例は、共通して、エポキシ系あるいはポリウレタン系の接着剤を、接合面間に、厚みが0.5〜1 μm 程度になるよう、刷毛にて均一に薄く塗布した。
素材として、鋼板は板厚1mm で0.07質量%C-1.8質量%Mn を含む組成のもの、A6061 アルミニウム合金板は板厚1mm と2mm のものを各々準備し、これら鋼板、アルミニウム合金板とも、JIS A 3137記載の十字引張試験片形状に加工し、スポット溶接を行った。
エポキシ系は、市販のエポキシ系熱硬化型構造用接着剤 (サンスター技研製ペンギン#1086) を使用した。ポリウレタン系は、市販のポリウレタン系熱硬化型構造用接着剤 (サンスター技研製ペンギンシール980)を使用した。
鋼材にめっきを施す場合は、共通して、10% 硫酸にて5 分の酸洗・活性化する前処理を行った後、各種めっきを行った。Zn電気めっきでは、硫酸亜鉛400g/l、硫酸アルミニウム30g/l、塩化ナトリウム15g/l、ホウ酸30g/lに硫酸を加えてpHを3とした浴にて20A/dm2 の電流を流すことにより、純Znめっきを10μm施した。これをZn-10%Ni合金めっきとする場合には、純Znめっきの亜鉛めっき浴に、硫酸ニッケル、塩化ニッケルを添加した浴にて10A/dm2 の電流を流すことにより、Zn-10%Niめっきを10μm施した。
めっき皮膜の膜厚は、めっき後のサンプルを切断し、樹脂に埋め込み、研磨をし、スポット溶接前の状態の接合界面のSEM観察を行った。2000倍の視野にて3点厚さを測定し、平均して求めた。
スポット溶接は、直流抵抗溶接試験機を用い、Cu-Cr 合金からなるドーム型の電極を用い、陽極をアルミニウム、陰極を鋼として接合した。表1、2 では、表1、2 に示す電極チップ条件[ 先端径、先端曲率半径R 、加圧力W と(R ×W )1/3 /R]、電流パターン [溶接工程1 と2 の溶接電流、溶接時間] にて溶接を行い、異材接合体の十字引張試験体を作製した。
界面反応層の厚さ測定は、スポット溶接後のサンプルを、溶接部の中央にて切断し、樹脂に埋め込み、研磨をし、SEM観察を行った。層の厚さが1μm以上の場合は2000倍の視野にて、1 μm 未満の場合は10000 倍の視野にて計測した。また、ここでの界面反応層とは、FeとAlを両方含む化合物層を指し、EDXにより、FeとAlがともに1wt%以上検出される層をいう。すなわち、FeとAlがともに1wt%以上検出されない層はめっき層や残留接着剤として界面反応層としなかった。
強度の評価には、スポット接合の強度を測定するために、接着剤硬化前の状態で、各条件について5体の十字引張試験を実施し、平均化した。接合強度が1.5kN 以上または破断形態がアルミ母材破断であれば◎、接合強度が1.0 〜1.5kN であれば○、接合強度が0.5 〜1.0kN であれば△、接合強度が0.5kN 未満であれば×とした。ここで、接合強度が1.0 〜1.5kN(○) 以上なければ、自動車などの構造材用として使用できない。
また、各種条件で接合した接合体について、アルカリ脱脂を行い、水洗後、日本ペイント社製のサーフファイン5N-10の0.1%水溶液を用いて30秒表面調整処理を行った。その後、亜鉛イオン1.0g/l、ニッケルイオン1.0g/l、マンガンイオン0.8g/l、リン酸イオン15.0g/l、硝酸イオン6.0g/l、亜硝酸イオン0.12g/l、トーナー値2.5pt、全酸度22pt、遊離酸度0.3〜0.5pt、50℃の浴にて、2分リン酸亜鉛処理を行った。その後、カチオン電着塗料(日本ペイント社製パワートップV50グレー)により塗装し、170℃25分焼き付けし、30μmの皮膜を形成した。
表1 、2 から分かる通り、好適な範囲でスポット接合された発明例I 〜P の異材接合体は、非常に高い耐食性が得られていることが分かる。これは接合面間に設けられた溶融亜鉛めっきと熱硬化型接着剤の効果である。但し、好適な範囲を外れてスポット接合された比較例A 〜H でも、発明例と同じく、接合面間に亜鉛めっきと熱硬化型接着剤が設けられており、同様に耐食性は高い。
表3より分かる通り、樹脂接着剤が無い比較例1 、10、14は、耐食性が劣る。また、めっきが無い比較例2 、めっき条件 (融点) が範囲から外れる比較例3 、4 、5 は、十字引張試験結果に劣り、接合強度が低い。なお、この条件では、めっきが無く、接着剤がある比較例2 も、却って十字引張試験結果も劣る結果であった。めっき厚みが厚すぎる比較例21も、純亜鉛めっきでありながら、却って十字引張試験結果が劣る結果であった。
5:ナゲット、6:界面反応層、7、8:電極
Claims (5)
- 板厚t1が0.3 〜3.0mm である鋼材と、板厚t2が0.5 〜4.0mm であるアルミニウム材とをスポット溶接にて接合した異材接合体であって、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、融点が350 〜1000℃、平均厚みが3 〜19μm のZnまたはAlの金属皮膜と、有機樹脂接着剤の皮膜とが予め設けられた状態でスポット溶接されており、スポット溶接後の溶接部における界面反応層の厚さが0.5 〜5μm の範囲である部分の面積が10×t2 0.5 mm2 以上であることを特徴とする鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
- 前記界面反応層の厚さが0.5 〜5μm の範囲である部分の面積が50×t2 0.5 mm2 以上である請求項1に記載の鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
- 前記Zn皮膜が、鋼材側の表面に施された88質量% 以上のZnを含むめっき皮膜である請求項1または2に記載の鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
- 板厚t1が0.3 〜3.0mm である鋼材と、板厚t2が0.5 〜4.0mm であるアルミニウム材との異材接合体のスポット溶接方法であって、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、融点が350 〜1000℃、平均厚みが3 〜19μm のZnまたはAlの金属皮膜と、有機樹脂接着剤の皮膜とを予め設けた状態でスポット溶接するとともに、このスポット溶接において、アルミニウム材側の電極チップの先端径を7mm φ以上として、電極チップによる加圧力を、先端曲率半径Rmm と加圧力WkN との関係が(R ×W )1/3 /R >0.05となるように印加し、かつ15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を有するとともに、この工程より高い電流を流す工程が存在しない電流パターンにてスポット溶接することを特徴とする異材接合体のスポット溶接方法。
- 前記15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程よりも後の工程で、1 ×t2 0.5 〜10×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を存在させた電流パターンにてスポット溶接する請求項4に記載の異材接合体のスポット溶接方法。
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