JP5134269B2 - 鋼材とアルミニウム材との異材接合体とそのスポット溶接方法 - Google Patents

鋼材とアルミニウム材との異材接合体とそのスポット溶接方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械部品、建築構造物等における鉄系材料とアルミニウム系材料との異種金属部材同士の異材接合体と、そのスポット溶接方法に関するものである。
スポット溶接は、一般には同種の金属部材同士を接合するが、例えば鉄系材料(以下、単に鋼材と言う)とアルミニウム系材料(純アルミニウムおよびアルミニウム合金を総称したもので、以下、単にアルミニウム材と言う)という異種の金属部材の接合( 異材接合体) に適用することができれば、軽量化等に著しく寄与することができる。
しかし、鋼材とアルミニウム材とを接合する場合、接合部に脆い金属間化合物が生成しやすいために信頼性のある高強度を有する接合部( 接合強度) を得ることは非常に困難であった。したがって、従来では、これら異種接合体(異種金属部材)の接合にはボルトやリベット等による接合がなされているが、接合継手の信頼性、気密性、コスト等の問題がある。
そこで、従来より、これら異種接合体のスポット溶接法について多くの検討がなされてきている。例えば、アルミニウム材と鋼材の間に、アルミニウム−鋼クラッド材をインサートする方法が提案されている(特許文献1、2参照)。また、鋼材側に融点の低い金属をめっきしたり、インサートしたりする方法が提案されている(特許文献3、4、5参照)。更に、アルミニウム材と鋼材の間に絶縁体粒子を挟む方法(特許文献6参照)や、部材に予め凹凸を付ける方法(特許文献7参照)なども提案されている。
しかしながら、これらいずれの方法も、単なるスポット溶接ではなく、多層でのスポット溶接やめっきや加工など別の工程が必要であり、現状の溶接ラインに新たな設備を組み入れなければならない問題があり、溶接コストも高くなる。また、これらいずれの方法も、溶接条件が著しく限定されるなど作業上の問題も多い。
それらとは別の手法でめっきなどの皮膜を鋼に施す方法として、特許文献8〜11などが提案されている。これらは、鋼またはアルミニウム材に予めめっきを施しておけば、直接溶接が可能であるため、汎用性が高く、また低融点である膜を鋼−アルミ材料間に形成することにより、界面反応層の低減や界面の凹凸形成をさせることを目的としており、それぞれ鋼とアルミ材料との直接接合よりも高い強度を得たとある。また、めっきの種類によっては、鋼とアルミニウム材との間で生じる異種金属接触腐食を抑制することができる。特許文献8ではMgを、特許文献9ではアルミ材より低融点の膜を、特許文献10では鋼より低融点の膜を、特許文献11ではアルミ材の融点より300℃低い温度以上であってかつアルミ材の融点よりも低い温度が融点となる膜を形成している。
しかしながら、特許文献8では、母材破断とは言え、80kgfと強度が不十分である。また特許文献9では十分なせん断引張強度が得られているが、ナゲットが形成していない。これら微視的な結合によるアンカー効果のみでは、せん断引張強度は確保できても、十字引張強度(剥離強度)が保持できず、用途はせん断引張しか生じない特殊なものに限定される。
特許文献10では、更に抵抗体をインサートする必要があるため、上記した現状の溶接ラインに新たな設備を組み入れなければならない問題があり、コストも高い。特許文献11では、十字引張強度にて母材破断が得られているが、界面反応層が形成しないことが高強度となる作用として記載されている。確かに、鋼とアルミの金属間化合物である界面反応層は脆弱ではあるが、発明者らの知見では、特許文献10のように界面反応層が全く無くては、相互拡散による密着層が無いため、接合強度としては低くなる。このため、特許文献9と同じく、微視的な結合のみでは、十分な十字引張強度が保持できず、更なる高強度接合体の要望には応えられない。
そこで、発明者らは、特許文献12〜15にて、めっき皮膜の厚さや融点、さらにナゲット径、界面反応層厚さを制御することにより、0.9kN/spot以上の剥離強度を得ることができる技術を提案した。
特開平6−63763号公報 特開平7−178563号公報 特開平4−251676号公報 特開平7−24581号公報 特開平4−14383号公報 特開平5−228643号公報 特開平9−174249号公報 特開平4−143083号公報 特開平4−251676号公報 特開平7−24581号公報 特開平7−178565号公報 特開2005−305504号公報 特開2005−152958号公報 特開2005−152959号公報 特開2006−167801号公報
しかしながら、特許文献12〜15にても、更に接合強度を高めるには限界がある。また、鋼とアルミニウム材との異種金属間では、特に、電食と呼ばれる接触腐食が発生しやすく、鋼材とアルミニウム材とをスポット溶接にて接合した異材接合体であっても例外ではない。自動車部材などとして異材接合体の使用中に、このような電食が生じた場合には、異材接合体の接合強度も低下する。
このため、鋼材とアルミニウム材とをスポット溶接にて接合した異材接合体を、自動車部材などとしての実用化するためには、このような接触腐食を抑制する必要がある。このような接触腐食を抑制するためには、有機樹脂皮膜などにより、鋼材とアルミニウム材とを絶縁することが有効ではある。しかし、鋼材とアルミニウム材とを有機樹脂皮膜などにより絶縁した場合には、接触腐食は抑制できるものの、これら両者間の通電により溶接する、スポット溶接自体が困難となる。このために、スポット溶接時の異材接合体の接合強度が低下するという問題が逆に生じる。
したがって、鋼材とアルミニウム材とをスポット溶接にて接合した異材接合体の接合強度を高めるとともに、接触腐食を抑制できるような有効な手段は、これまでなかなか提案されてこなかったのが実情である。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、鋼材とアルミニウム材とをスポット溶接にて接合する際の接合強度を高めるとともに接触腐食を抑制できる異材接合体及びそのスポット溶接方法を提供するものである。
上記目的を達成するための、本発明における鋼材とアルミニウム材との異材接合体の要旨は、板厚t1が0.3 〜3.0mm である鋼材と、板厚t2が0.5 〜4.0mm であるアルミニウム材とをスポット溶接にて接合した異材接合体であって、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、融点が350 〜1000℃、平均厚みが3 〜19μm のZnまたはZn合金皮膜と、更に平均厚みが0.1 〜5 μm であるリン酸塩皮膜とが予め設けられた状態でスポット溶接されており、スポット溶接後の溶接部における界面反応層の厚さが0.5 〜5μm の範囲である部分の面積が10×t2 0.5 mm2 以上であることとする。
ここで、異材接合体の接合強度を高めるためには、前記界面反応層の厚さが0.5 〜5μm の範囲である部分の面積は50×t2 0.5 mm2 以上であることが好ましい。
同様に、異材接合体の接合強度を高めるためには、前記Zn皮膜が、鋼材側の表面に施された88質量% 以上のZnを含むめっき皮膜であることが好ましい。
同様に、異材接合体の接合強度を高めるためには、前記リン酸塩皮膜が0.01〜10質量% のMgを含むことが好ましい。
上記目的を達成するための、本発明における鋼材とアルミニウム材との異材接合体のスポット溶接方法の要旨は、板厚t1が0.3 〜3.0mm である鋼材と、板厚t2が0.5 〜4.0mm であるアルミニウム材との異材接合体のスポット溶接方法であって、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、融点が350 〜1000℃、平均厚みが3 〜19μm のZnまたはZn合金皮膜と、更に平均厚みが0.1 〜5 μm であるリン酸塩皮膜とを予め設けた状態でスポット溶接するとともに、このスポット溶接において、アルミニウム材側の電極チップの先端径を7mm φ以上として、電極チップによる加圧力を、先端曲率半径Rmm と加圧力WkN との関係が(R ×W )1/3 /R >0.05となるように印加し、かつ15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を有するとともに、この工程より高い電流を流す工程が存在しない電流パターンにてスポット溶接し、スポット溶接後の溶接部における界面反応層の厚さが0.5 〜5μm の範囲である部分の面積を10×t 2 0.5 mm 2 以上とすることである。
ここで、異材接合体の接合強度を高めるためには、前記15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程よりも後の工程で、1 ×t2 0.5 〜10×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を存在させた電流パターンにてスポット溶接することが好ましい。
鋼材同士やアルミニウム材同士など、同種の材料同士を、高い接合強度にてスポット溶接するには、一般的に、ナゲットの形成を促進すればよく、ナゲット面積が大きいほど剪断強度および十字引張強度ともに高くなることが知られている。
また、ナゲット面積(径)は入熱量と関係があり、電流量が高いほど、時間が長いほど大きくなるため、一般には、スポット溶接の際の入熱量にてナゲット径を制御することによって接合強度の高い接合体を得る。もちろんナゲット面積が大きくなりすぎると、被溶接材料の表面まで溶融が達してチリができるため、適正なナゲット面積を得ることが重要となる。
しかしながら、鋼材とアルミニウム材との異材同士を接合する場合、鋼材はアルミニウム材と比較して、融点、電気抵抗が高く、熱伝導率が小さいため、鋼側の発熱が大きくなり、まず低融点のアルミニウムが溶融する。次に鋼材の表面が溶融し、結果として界面にて、Al-Fe 系の脆い金属間化合物層が形成するため、高い接合強度は得られない。また、アルミニウム材料表面まで溶融が達してチリができると、アルミニウム材の減肉量が増大し、高い接合強度が得られない。
すなわち、鋼材とアルミニウム材との異材をスポット溶接にて接合する場合、高い接合強度を得るためには、ある程度のナゲット径を形成する高い入熱量を加えることは必要である。しかし、より高い接合強度を得るためには、ナゲット径の制御よりも、むしろ界面反応層の形成面積や厚さ分布を制御すること、少なくとも、この界面反応層の形成面積や厚さ分布の制御を損なわないことが必要である。
以上の高い接合強度の確保を前提にして、本発明では、この界面反応層の形成面積や厚さ分布の制御を損なわないだけではなく、異種金属接触腐食(電食)を抑制できる抑制層 (腐食抑制層) を選択したことを特徴とする。この異材接合体の使用中の異種金属接触腐食の抑制は、この腐食による異材接合体の接合強度の低下を抑制して、接合強度を維持することにつながる。そして、本発明では、このような抑制層として、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、特定範囲のZnまたはZn合金皮膜と、リン酸塩皮膜との二つを予め設けることを特徴とする。
界面反応層の形成面積や厚さ分布の制御を損なわず、異種金属接触腐食(電食)を抑制するには、各々の特性を有する二つの皮膜が必要となる。即ち、前者のためには溶融したアルミニウムと接触して、鋼材との中間層となるよう、アルミニウム材と融点が近い金属皮膜が必要である。後者のためには、鋼よりも卑で、かつアルミニウムよりも貴である自然電位を有し、鋼材−アルミニウム材の電位差を軽減する皮膜か、あるいは、アルミニウムよりも卑である自然電位を有し、犠牲防食効果を発揮する皮膜が必要である。
この点、本発明における特定範囲のZnまたはZn合金皮膜は、スポット溶接時に、リン酸塩皮膜が存在しても、鋼とアルミの金属間化合物である界面反応層が形成される時間制御や、界面反応層の厚さ範囲と分布制御を阻害させない特性がある。また、鋼よりも卑で、かつアルミニウムよりも貴である自然電位を有し、鋼材−アルミニウム材の電位差を軽減するだけでなく、環境によっては、酸化皮膜を形成するアルミニウム材よりも卑の自然電位となって、犠牲防食効果を発揮する。このため、本発明における特定範囲のZnまたはZn合金皮膜は、腐食環境下でも高い接合強度を得る機能を有する。
一方、異種金属接触腐食をより効果的に抑制するためには、抑制層は、スポット溶接後に、鋼材とアルミニウム材との間に広範にあるいは全面的に介在して、鋼材とアルミニウム材との間を水分や酸素などの腐食環境から遮断したり、犠牲防食作用により、基材を保護する腐食抑制層を形成する必要性がある。しかし一方で、スポット溶接を可能とし、スポット溶接部の高い接合強度を得るためには、この抑制層は、スポット溶接時には、鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させる特性を有する必要がある。
この点、リン酸塩皮膜は、本発明における特定範囲のZnまたはZn合金皮膜との共存下において、スポット溶接時には、スポット溶接部部分のみにおいて破壊され、このスポット溶接部で鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させる。リン酸塩皮膜自体は、いずれの側に存在させるにせよ、本発明におけるZnまたはZn合金の金属皮膜無しに、単独で、鋼材とアルミニウム材との間に介在させると、スポット溶接時に、スポット溶接部部分のみにおいてさえ破壊されにくくなり、スポット溶接性を阻害する。また、接合体の界面反応層の形成面積や厚さ分布制御を阻害する。このため、異材接合体の高い接合強度が得られない。これは同種の金属同士で、かつリン酸塩皮膜を介在させた際のスポット溶接時には生じない現象であり、鋼材とアルミニウム材との異材接合体特有の問題であると言える。
リン酸塩皮膜が適正な厚みであり、比較的薄い場合には、スポット溶接時に応力(加圧力)を加えた場合に、リン酸塩皮膜のピンホールを通じて、鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させることができる。また、本発明における特定範囲のZnまたはZn合金皮膜との共存下において、スポット溶接時の応力や電気抵抗によって、リン酸塩皮膜が破壊されて、溶融したアルミニウム材中に溶け出すことによっても、広範囲に、鋼材とアルミニウム材とを電気的に十分導通させることができる。
因みに、リン酸塩(亜鉛)皮膜の沸点は約1075℃と比較的高温である。しかし、スポット溶接時には、この沸点以下の温度でも、本発明における特定範囲のZnまたはZn合金皮膜との共存下において、上記リン酸塩皮膜の破壊が生じて、鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させることができる。
そして、スポット溶接後は、このリン酸塩皮膜は、皮膜が除去されたスポット溶接部を除いて、鋼材とアルミニウム材との間に、広範にあるいは全面的に介在して、鋼材とアルミニウム材との間を水分や酸素などの腐食環境から遮断したり、犠牲防食作用により基材を保護する腐食抑制層を形成し、異材接合体の異種金属接触腐食を抑制する。
ただ、リン酸塩皮膜には、前記したピンホールが存在するために、完全には、水分や酸素などの腐食要因を遮断できない。そのため、後述するアルミニウムよりも卑である自然電位を有するMg添加などで、皮膜成分組成を制御して、犠牲防食作用を強めることで、異種金属接触腐食を抑制する機能をより発揮できる。
勿論、各抑制層がこのような機能を発揮するためには、後述する通り、金属皮膜とリン酸塩皮膜とには、最適の組成や、皮膜厚みの範囲などの条件があり、また、スポット溶接には、加圧力や電流パターンなどの最適条件がある。
以上のように、本発明は、スポット溶接による異材接合の際に、接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、ZnまたはZn合金の金属皮膜と、リン酸塩皮膜との二つを予め設けることを特徴とする。
これによって、鋼とアルミニウム材との間の界面反応層の形成面積や厚さ分布の制御を損なわずに、更に、異材接合体の使用中の異種金属接触腐食を抑制し、高い接合強度を維持できる。言い換えると、異種金属接触腐食による接合強度の低下を抑制する。
この結果、鋼材とアルミニウム材との異種接合体において、前記従来技術のような、他の材料を新たに用いることなく、また、新たな別工程を必要とすることなく、接合強度の高い、スポット溶接による異材接合体を得る効果を有する。そして、スポット溶接後には、異種金属接触腐食を抑制し、接合強度の低下を抑制した異材接合体を得る効果を有する。
以下に、本発明の各要件の限定理由と、その作用について説明する。
(異種接合体)
図1に本発明で規定する異種接合体を断面図で示す。図1において、3が鋼材( 鋼板) 1とアルミニウム材( アルミニウム合金板) 2とをスポット溶接にて接合した異材接合体である。5はスポット溶接における界面反応層6を有するナゲットで、図中に水平方向に矢印で示すナゲット径を有する。9 はナゲット周囲のコロナボンド部である。t1は鋼材の板厚、t2はアルミニウム材2の板厚、Δt はスポット溶接による接合後のアルミニウム材の最小残存板厚を示す。
ここにおいて、4は抑制層 (腐食抑制層) で、これら接合される鋼材1 とアルミニウム材2 との互いの接合面間に予め設けられた、Zn (純Znの意味) またはZn合金の金属皮膜とリン酸塩皮膜との積層体である。図1 ではZnまたはZn合金皮膜とリン酸塩皮膜とを各々区分けせずに一体に示しているが、鋼材1 の接合側表面にめっきなどによってZnまたはZn合金皮膜を設け、その上にリン酸亜鉛皮膜を施して、抑制層4 (腐食抑制層) としている態様を示す。
そして、図1は、スポット溶接後の異種接合体の接合部では、スポット溶接前に予め設けられていた、ZnまたはZn合金皮膜とリン酸亜鉛皮膜との積層体である抑制層 (腐食抑制層)4が除去され、鋼材1 とアルミニウム材2 とが直接接合している、異種接合体の良好な接合状態を示している。更に、図1では、異種接合体の接合部以外の界面領域には、予め形成した、これら抑制層 (腐食抑制層)4が、そのまま存在していることを示している。
(鋼材の板厚)
本発明では、鋼材の板厚t1が0.3 〜3.0mm である接合体であることが必要である。鋼材の板厚t1が0.3mm 未満の場合、前記した構造部材や構造材料として必要な強度や剛性を確保できず不適正である。また、それに加えて、スポット溶接による加圧によって、鋼材の変形が大きく、酸化皮膜が容易に破壊されるため、アルミニウムとの反応が促進される。その結果、金属間化合物が形成しやすくなる。
一方、3.0mm を越える場合は、前記した構造部材や構造材料としては、他の接合手段が採用されるため、スポット溶接を行って接合する必要性が少ない。このため、鋼材の板厚t1を3.0mm を超えて厚くする必要性はない。
(鋼材)
本発明においては、使用する鋼材の形状や材料を特に限定するものではなく、構造部材に汎用される、あるいは構造部材用途から選択される、鋼板、鋼形材、鋼管などの適宜の形状、材料が使用可能である。ただ、自動車部材などの軽量な高強度構造部材(異材接合体)を得るためには、鋼材の引張強度が400MPa以上である通常の高張力鋼(ハイテン)であることが好ましい。
引張強度が400MPa未満の低強度鋼では一般に低合金鋼が多く、酸化皮膜が鉄酸化物からなるため、FeとAlの拡散が容易となり、脆い金属間化合物が形成しやすい。このためにも引張強度が400MPa以上、望ましくは500MPa以上の高張力鋼(ハイテン)であることが好ましい。
(アルミニウム材)
本発明で用いるアルミニウム材は、その合金の種類や形状を特に限定するものではなく、各構造用部材としての要求特性に応じて、汎用されている板材、形材、鍛造材、鋳造材などが適宜選択される。ただ、アルミニウム材の強度についても、上記鋼材の場合と同様に、スポット溶接時の加圧による変形を抑えるために高い方が望ましい。この点、アルミニウム合金の中でも強度が高く、この種構造用部材として汎用されている、A5000 系、A6000 系などの使用が最適である。
ただ、本発明で使用するこれらアルミニウム材の板厚t2は0.5 〜4.0mm の範囲とする。アルミニウム材の板厚t2が0.5mm 未満の場合、構造材料としての強度が不 足して不適切であるのに加え、ナゲット径が得られず、アルミニウム材料表面まで溶融が達しやすくチリができやすいため、高い接合強度が得られない。一方、アルミニウム材の板厚t2が4.0mm を越える場合は、前記した鋼材の板厚の場合と同様に、構造部材や構造材料としては他の接合手段が採用されるため、スポット溶接を行って接合する必要性が少ない。このため、アルミニウム材の板厚t2を4.0mm を超えて厚くする必要性はない。
(抑制層)
本発明では、より高い接合強度を得るために、異種金属接触腐食を抑制し、接合強度の低下を防止するために、鋼とアルミニウム材との間に (材料に) 予め抑制層 (腐食抑制層) を形成する。この抑制層は、また、スポット溶接における、鋼とアルミニウム材との間の界面反応層の形成面積や厚さ分布の制御を損なわないことが必要である。
本発明では、このような機能を有する抑制層 (腐食抑制層) として、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、ZnまたはZn合金の金属皮膜と、リン酸亜鉛皮膜との二つを予め設ける。このために、後述する通り、鋼材側あるいはアルミニウム材側のいずれかの接合面側に、金属皮膜とリン酸塩皮膜とを積層して設ける。設ける (積層する) 順序はいずれでもよいが、金属皮膜を先に設けた方が、リン酸亜鉛皮膜を設けやすい。
(ZnまたはZn合金皮膜)
抑制層 (腐食抑制層) のひとつとして、先ずZn (純Zn) またはZn合金の金属皮膜について、以下に説明する。本発明では、接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、ZnまたはZn合金の金属皮膜を予め設けられた状態でスポット溶接するため、鋼材またはアルミニウム材の少なくとも接合面側の表面に、ZnまたはZn合金の金属皮膜を予め設ける。このZnまたはZn合金皮膜は、アルミニウム材と融点が近く、スポット溶接時に、リン酸塩皮膜が存在しても、鋼とアルミの金属間化合物である界面反応層が形成される時間制御や、界面反応層の厚さ範囲と分布制御を阻害させない特性がある。
裸の、あるいはZnまたはZn合金皮膜が無いような、鋼材とアルミニウム材とを用いた、従来のスポット溶接では、接合界面にリン酸塩の皮膜が存在すると、スポット溶接自体や界面反応層形成制御が困難となり、高い接合強度を得ることができなかった。
これに対して、接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、抑制層としてZnまたはZn合金皮膜を予め設けた場合には、接合面間に抑制層としてもうひとつ、リン酸塩皮膜が介在していても、スポット溶接自体や界面反応層形成制御が困難とならずに、リン酸塩皮膜の上記機能を発揮させる。これは、ZnまたはZn合金皮膜の存在(介在)によって、スポット溶接時の抵抗発熱量が増し、鋼材とアルミニウム材との界面温度、特に鋼材の温度が、アルミニウムの溶融温度を越えて著しく高くなるためと推考される。この抵抗発熱量の増加によって、リン酸塩皮膜が破壊されて、溶融したアルミニウム材に溶出されやすくなって、鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させることができる。
言い換えると、もうひとつの存在であるリン酸塩皮膜は、このZnまたはZn合金皮膜との共存下において、スポット溶接時には、スポット溶接部分のみにおいて破壊され、このスポット溶接部で鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させることができる。いずれの側に存在させるにせよ、本発明における特定範囲のZnまたはZn合金皮膜無しに、単独で、リン酸塩皮膜を鋼材とアルミニウム材との間に介在させると、前記した通り、接合体の界面反応層の形成面積や厚さ分布制御が阻害される。
また、前記した通り、ZnまたはZn合金皮膜の存在(介在)によって、スポット溶接時の抵抗発熱量が増すと、アルミニウムの鋼との界面での拡散速度が著しく速くなり、鋼側にアルミニウムが拡散して、良好な接合状態がいち早く確保される。また、亜鉛めっき鋼板の場合には、融点の差により亜鉛めっき層が先行して溶融するが、その結果、界面における熱分布を均一化する効果もあると推考される。これらZnまたはZn合金皮膜の複合効果により、リン酸塩皮膜が介在しても、スポット溶接性が損なわれないものと推考される。
これらの効果を発揮するために、ZnまたはZn合金属皮膜の融点は350 〜1000℃、好ましくは400 〜950 ℃の狭い温度範囲とする。また、更には、アルミニウム材の融点以上900 ℃以下のより狭い温度範囲とすることが好ましい。純Alの融点は660 ℃程度、純Znの融点は420 ℃程度であり、前記した、接合するアルミニウム材と融点が近いとは、例えば、純Alの融点660 ℃に対して、上記ある程度の幅を持つことを許容する、という意味である。
また、ZnまたはZn合金皮膜の厚みは、3 〜19μm の膜厚 (平均膜厚) 、更に好ましくは5 〜15μm の膜厚範囲とする。これらZnまたはZn合金皮膜の厚みは、これら皮膜形成後の鋼材あるいはアルミニウム材の試料を切断し、樹脂に埋め込み、研磨をし、金属皮膜の板厚方向のSEM 観察を行う。このSEM 観察は2000倍の視野にて3点厚さを測定し、金属皮膜の厚みは、部位の違う5カ所程度の観察結果の平均で求める。
ZnまたはZn合金皮膜の厚みが薄すぎる、あるいは、その融点が低すぎる場合は、ZnまたはZn合金皮膜が、スポット溶接時の接合初期に、接合部から溶融排出してしまい、界面反応層の形成を抑制できない。また、抵抗発熱量の増加が少なくなり、リン酸塩皮膜を破壊しにくくなり、スポット溶接部で鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させることができにくくなる。
一方、異材接合体の接合強度を上げるためには、接合される鋼材とアルミニウム材とが、互いの接合面同士で直接接触する必要があり、スポット溶接時には、接合部に予め介在しているZnまたはZn合金皮膜が、接合部から溶融排出する必要がある。これに対して、ZnまたはZn合金皮膜の厚みが厚すぎる、あるいは融点が高すぎる場合は、接合部からのZnまたはZn合金皮膜の溶融排出のために、大きな入熱量が必要となる。この入熱量が大きくなると、アルミニウム材の溶融量が増加し、チリの発生によりアルミニウム材の減肉量が大きくなるため、異材接合体を構造部材として使用できなくなる。
ZnまたはZn合金皮膜は、上記融点範囲の純Zn、Zn合金などが適宜選択できる。また、鋼材またはアルミニウム材の少なくとも接合面側の表面への金属皮膜の被覆乃至形成方法も、めっき、塗布などの汎用される公知の手段が適宜使用できる。なお、この鋼材またはアルミニウム材表面への被覆乃至形成は、少なくとも接合面側の表面とするが、勿論、防食などのために、接合面でない鋼材またはアルミニウム材表面側に、ZnまたはZn合金皮膜を被覆乃至形成してもよい。
ただ、実用性や効率を考慮すると、ZnまたはZn合金皮膜は、ZnまたはZn合金のめっきが汎用されている鋼材側にめっきとして被覆乃至形成することが好ましい。鋼材は通常、塗装を施して使用されるが、塗装に傷が入ってもZnまたはZn合金が優先腐食されるために、鋼材を保護することができる。さらに、鋼とアルミ材との電位差を小さくすることから、異種接合体での課題の一つである異種金属接触腐食をも抑制することができる。ZnまたはZn合金めっきとした場合には、鋼材の耐食性を確保し、また鋼にもアルミにも容易にめっきが可能である。
めっきを前提として、上記界面反応層形成抑制機能を発揮し、リン酸塩皮膜が介在しても溶接を可能ならしめる機能を発揮するためには、ZnまたはZn合金のめっき皮膜は、純Znが好ましい。また、Zn合金とするにしても、Al-Zn 、Zn-Fe などの合金において、各々Znを各々80質量% 以上含む、Znを主成分とすることが好ましい。ZnまたはZn合金のめっき皮膜を合金化する場合には、添加合金元素やその含有量によって、上記融点範囲から外れないよう、また耐食性が劣らないようにする。
これらのめっき皮膜の内でも、特に88質量% 以上のZnを含む、純Zn、あるいはZn合金めっき皮膜が推奨される。88質量% 以上のZnを含むZn合金めっき皮膜が鋼材表面に施されると、特に鋼材の耐食性が高くなり、また、このZnめっき皮膜は、融点を上記350 〜1000℃の範囲に制御しやすい。更に、耐食性も高く、異種金属接触腐食も抑制することができる。この異種金属接触腐食防止の観点から最も良いのは純Znめっき皮膜である。
めっき方法については、本発明では制限するものではないが、既存の湿式、乾式めっきを用いることが可能である。特に亜鉛めっきにおいては、電気めっきや溶融めっき、溶融めっき後合金化処理を行う方法などが推奨される。
(リン酸塩皮膜)
次に、もうひとつの抑制層としての、リン酸塩皮膜について、以下に説明する。前記した通り、リン酸塩皮膜は、ピンホールを通じて、あるいは、本発明における特定範囲のZnまたはZn合金皮膜との共存下において、電気抵抗により皮膜破壊されて、鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させ、スポット溶接時に、接合体の界面反応層の形成面積や厚さ分布を制御できる。但し、スポット溶接の接合部において、鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させるためには、接合部からリン酸塩皮膜を完全に無くす必要はない。言い換えると、鋼材とアルミニウム材とが電気的に導通すれば、スポット溶接の接合部において、リン酸塩皮膜が残留していても良い。
また、リン酸塩皮膜は、更に、前記した通り、スポット溶接後は、皮膜破壊されたスポット溶接部の部分のみを除いて、鋼材とアルミニウム材との間に、広範にあるいは全面的に介在して、腐食環境を遮断し、異種金属接触腐食を抑制する機能を有する。
このリン酸塩皮膜は、上記作用効果だけでなく、実用性の点からも選択意義がある。例えば、薄膜でさえあれば、リン酸塩皮膜に限らず、リン酸塩以外の皮膜でも、そのピンホールを通じて、あるいは、電気抵抗により皮膜破壊されて、鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させることができそうである。しかし、本発明が対象とするスポット溶接による異材接合体は、パネルなどとして、代表的には現行の自動車の車体製造ラインで使用(製造)され、また、鋼材かアルミニウム材に施されるリン酸塩処理も、この自動車の車体塗装の下地処理として、前記自動車の車体製造ラインで使用されている実績がある。この点、リン酸塩皮膜は、鋼材とアルミニウム材との間に、広範にあるいは全面的に介在しても、加工性や塗装性などの、異材接合体に要求される他の諸特性を阻害しない、他の皮膜には無い利点がある。更に、リン酸塩処理は、スポット溶接も含めて、前記した自動車の車体製造ラインなど、現行の設備や装置、条件内で実施できる、他の皮膜には無い利点がある。更に、リン酸塩皮膜(処理)は、上記塗装の下地処理として、異材接合体の塗膜密着性など塗装性を向上させることができる。
(リン酸塩皮膜を形成する側)
本発明では、鋼材とアルミニウム材の互いの接合面間(いずれかの接合面表面)に、リン酸塩皮膜を形成後に、スポット接合を実施する。異材接合体の接合強度を高めるためには、鋼材側表面にリン酸塩皮膜を形成し、更に鋼材側表面に設けた前記ZnまたはZn合金皮膜の表面にリン酸塩皮膜を形成することが好ましい。
ただ、アルミニウム材は、鋼材に比してリン酸塩処理性が低いという問題があり、異材接合体をリン酸塩処理した場合にも、アルミニウム材側にこの問題が生じる。しかし、本発明のように、異材接合体の少なくともアルミニウム材側に、予めリン酸塩処理を施して、リン酸塩皮膜を形成しておけば、アルミニウム材側も、鋼材側と同様に、塗装の下地処理としてリン酸塩処理性を向上できる利点もある。この際、異材接合体のアルミニウム材側だけでなく、鋼材側にも予めリン酸塩処理を施して、リン酸塩皮膜を形成しておけば、自動車の車体製造ラインでの、塗装の下地処理としてリン酸塩処理を省略できる利点もある。
(リン酸塩皮膜の厚み)
形成するリン酸塩皮膜の平均厚みは、好ましくは0.1 〜5 μm の範囲とする。この範囲で、上記リン酸塩皮膜の作用を良好に発揮できる。リン酸塩皮膜の厚みが0.1 μm 未満と薄すぎると、マクロな皮膜欠陥が多く発生し、腐食環境を十分に遮断できず、異種金属接触腐食を抑制できないなど、前記したリン酸塩皮膜の効果が発揮できなくなる。一方、リン酸塩皮膜の厚みを5 μm を超えて厚くする必要はない。これ以上リン酸塩皮膜の厚みを厚くすると、スポット溶接時の電気抵抗が過大となって、チリの発生が激しくなり、特に、アルミニウム材接合部の板厚減少が大きくなり、接合強度が却って低下する。また、リン酸塩皮膜を破壊しにくくなり、スポット溶接部で鋼材とアルミニウム材とを電気的に導通させることができにくくなる。
リン酸塩皮膜の平均厚さは、リン酸塩処理して皮膜形成後に、自然乾燥させた鋼材とアルミニウム材から採取した試料断面を樹脂に埋め込み、研磨した試料を、そのリン酸塩皮膜断面の板厚方向の2000倍、または10000 倍の視野にて、SEM(走査型電子顕微鏡) 観察により、3 点厚さを測定し、部位の違う5カ所程度の観察結果の平均で求める。
(リン酸塩の種類)
リン酸塩の種類は、自動車用亜鉛めっき鋼板などの塗装 (塗膜) 下地処理として、最も汎用されている、リン酸亜鉛など、亜鉛を主成分とするリン酸亜鉛皮膜であることが、皮膜形成 (処理) のしやすさなどから好ましい。このリン酸亜鉛皮膜の結晶性や配向性などを制御するために、亜鉛(Zn)以外に、Fe、Ni、Mn、Caなどを含有させても良く、その目的によりNiを添加することが推奨される。なお、リン酸亜鉛の皮膜構造は、ホパイトでもホスホフィライトでも、これらの混合構造でも良い。リン酸塩皮膜としては、このリン酸亜鉛以外にも、公知のリン酸塩処理である、リン酸カルシウム、リン酸鉄、リン酸マンガンなどが、これら単独、あるいは混合、複合して用いることができる。
(リン酸塩皮膜の形成方法)
リン酸塩皮膜の形成方法としては、前記した塗装下地処理のような公知の方法が採用できる。即ち、亜鉛、カルシウム、鉄、マンガンなどの塩となる金属や、Mgなどを添加したリン酸水溶液に、鋼材あるいはアルミニウム材を浸漬処理する。リン酸水溶液の濃度や温度、浸漬時間などの浸漬条件は、前記したリン酸塩皮膜の平均厚みとなるように調整する。
(リン酸塩皮膜の犠牲防食作用)
リン酸塩皮膜は、前記した通り、腐食環境を遮断し、異種金属接触腐食を抑制する機能を有するが、ピンホールが存在するために、完全には、水分や酸素などの腐食環境を遮断できない。これに対して、接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、抑制層としてもうひとつ、ZnまたはZn合金皮膜を予め設けた場合には、上記ピンホールを介してアルミニウム材が優先的に腐食するのを軽減する。したがって、このような電位差を小さくする、ZnまたはZn合金皮膜の効果によって、異種金属接触腐食が抑制される。
リン酸塩皮膜の異種金属接触腐食抑制効果は、リン酸塩皮膜中にMgを含むなどの、リン酸塩皮膜自体の犠牲防食作用を強めることによって、一層高くなる。このリン酸塩皮膜の犠牲防食作用を強めるためには、リン酸塩皮膜中に0.01〜10質量% のMgを含むことが好ましい。皮膜中のMg含有量が0.01質量% 未満と少なすぎる場合には、Mgの効果が発揮できない。一方、皮膜中のMg含有量を10質量% を超えて含有させるのは困難である。したがって、リン酸塩皮膜中に選択的に含む場合のMg含有量は0.01〜10質量% の範囲とする。
リン酸塩皮膜中のMg含有量は、前記リン酸塩皮膜の厚み測定と同様に、リン酸塩処理して皮膜形成後に、自然乾燥させた鋼材とアルミニウム材から採取した試料断面を樹脂に埋め込み、研磨した試料を、蛍光X 線にてリン酸塩皮膜中のMg強度を求め、質量% に換算する。そして、部位の違う5カ所程度の測定結果の平均で求める。
(界面反応層)
本発明では、異材接合体界面反応層の厚さが0.5 〜5 μm である部分の面積が、アルミニウム材の板厚t2との関係で、10×t2 0.5 mm2 以上であることとする。この最適厚さの界面反応層の面積規定は、界面反応層が薄い (無い) 程良いという従来の常識とは異なり、最適範囲に制御するものであり、指向する方向としてはむしろ積極的に存在させる方向でもある。そして、接合強度向上のために、最適厚さ範囲の界面反応層を大面積形成する、言い換えると広範囲に存在させるという技術思想に基づく。
したがって、この界面反応層の厚さが0.5 〜5 μm である部分の面積が、アルミニウム材の板厚t2との関係で、10×t2 0.5 mm2 未満、より厳しくは、50×t2 0.5 mm2 未満では、最適厚さ範囲の界面反応層が広範囲とならず、却って接合強度が低下する。界面反応層の厚さが0.5 μm 未満の部分では、鋼−アルミの拡散が不十分となり、接合強度が低くなる。逆に界面反応層の厚さが厚いほど脆弱となり、特に界面反応層の厚さが5 μm を超える部分では脆弱となり、接合強度が低くなる。このため、このような界面反応層の面積が大きくなるほど、接合部全体としての接合強度が低くなる。
よって、接合部全体としての接合強度を高めるためには、界面反応層の厚さが0.5 〜5 μm である部分の面積が、アルミニウム材の板厚t2との関係で、10×t2 0.5 mm2 以上、好ましくは50×t2 0.5 mm2 以上必要である。
なお、電極チップに一般的に用いられるドーム型のチップを用いた場合、中心部が最も厚い界面反応層となり、中心から離れるほど界面反応層の厚さが低減する。したがって、この中心部の界面反応層の厚さは5 μm を超えても構わない。この界面反応層の厚さは、鋼材−アルミニウム材が接合している界面の面積の、アルミニウム材側の、2000倍の画像解析やSEM 観察によって測定できる。
(スポット溶接)
異種接合体を得るためのスポット溶接方法の各要件を以下に説明する。図2に異種接合体を得るための、前提となるスポット溶接の一態様を例示する。本発明スポット溶接方法の基本的な態様は、通常のスポット溶接の態様と同じである。図2 において、1は鋼板、2はアルミニウム合金板、3は異種接合体、5はナゲット、7と8は電極である。
本発明スポット溶接方法では、前記した板厚t1の鋼材と板厚t2のアルミニウム材との異材接合体をスポット溶接により得るに際して、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、ZnまたはZn合金皮膜とリン酸塩皮膜とを予め設けた状態でスポット溶接する。
(加圧力)
このようなスポット溶接において、アルミニウム材2側の電極チップ8の先端径を7mm φ以上として、電極チップ7、8による加圧力を、先端曲率半径Rmm と加圧力WkN との関係が(R ×W )1/3 /R >0.05となるように印加する。この加圧力も大きい方がより接着剤を押し出せるため望ましいが、スポット溶接の能力限界からすると、現実的には10kNまでである。
点接触での接触面圧は(R ×W )1/3 /R にほぼ比例するが、接合部にかかる接触面圧が過小では接着剤の残存が大きく、界面反応層の成長を妨げるため、接着剤を外部に押し出すだけの接触面圧が必要となる。(R ×W )1/3 /R が0.05以下では、リン酸塩皮膜が層として残存し、界面反応層が成長しない。
また、このような比較的大きな加圧力を印加することで、電極チップなどの形状によらず、異種材料間、電極と材料間の電気的接触を安定化し、ナゲット内の溶融金属をナゲット周辺の未溶融部で支え、上記比較的大きなナゲット必要面積と、上記最適界面反応層の必要面積を得ることができる。また、チリの発生を抑制することができる。加圧力が小さすぎると、このような効果を得られない。
(電極チップ)
前記した最適範囲厚さの界面反応層を広範囲に形成するためには、特にアルミニウム材側については先端径は7mmφ以上で先端曲率半径R の大きいドーム型などのR型形状のチップとする。また、鋼材側も同様に曲率半径R の大きい方が望ましいが、スポット溶接の能力限界からすると、現実的にはR は250mm までである。
また、電極形状については規定するものではないが、電極が、通電初期の電流効率を上げるために望ましい。また、極性についても規定するものではないが、直流スポットを用いる場合は、アルミニウムを陽極とし、鋼を陰極とする方が望ましい。
(電流)
スポット溶接時の電流については、比較的大きなナゲット面積と、上記最適界面反応層の必要面積を得るためには、前記アルミニウム材の板厚t2との関係で、15×t2 0.5 〜30×t2 0.5 kAの電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec の時間流す工程を有し、この工程より高い電流の工程が存在しない電流パターンであることが必要である。
このような電流パターンとすることで、予め本発明の抑制層を形成した際に、大きな入熱量が得られ、前記した通り、鋼とアルミニウム材との接合面における界面反応層を制御して、高い接合強度を得ることが可能となる。また、異種材料間と、電極と材料間との電気的接触を安定化し、ナゲット内の溶融金属をナゲット周辺の未溶融部で支え、上記比較的大きなナゲット必要面積と、上記最適界面反応層の必要面積を得ることができる。また、チリの発生を抑制することができる。
電流パターンの上記工程において、15×t2 0.5 kA未満、または100 ×t2 0.5msec 未満では、表面処理層及びアルミニウム材の溶融が広範囲に行われず、最適範囲厚さの界面反応層の面積が小さい。一方、30×t20.5 kAを超える、あるいは1000×t20.5msec を超えては、界面反応層が厚く成長するため、最適範囲厚さの界面反応層の面積が小さくなる。
この電流範囲の工程は複数あっても良いが、それらの合計時間が上記100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec の範囲であることが重要である。なお、同種金属接合では、入熱量が同一であれば近い接合構造が得られるが、鋼とアルミニウム材との接合では、例えば30×t2 0.5kA 超えで100×t2 0.5msec 未満の電流パターンや、15×t2 0.5 kA未満で1000×t2 0.5msec 超えの電流パターンでは、最適範囲厚さの界面反応層の面積が広範囲に得られない。この電流条件の前後の工程に、別の電流パターンを加えて、複数段階の電流パターンとしても良いが、界面反応層が厚く成長してしまうため、この工程より高い電流の工程が存在しないことが必要である。
更に、望ましい電流パターンとして、1 ×t2 0.5 〜10×t2 0.5kA の電流を100×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を加えて、ナゲットの割れを抑制することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより、下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
鋼材として市販の590MPa級の高張力鋼板と、アルミニウム材として市販のA6061 (6000 系) アルミニウム合金板とを重ね合わせた上で、スポット溶接を行い、異材接合体を製作し、接合強度、耐食性を評価した。結果を表1 、2 に示す。
上記高張力鋼板の接合面側には予め、溶融純Znめっきを平均厚み10μm で施し、更に、その上にMgを1.0 質量% 含有させたリン酸塩皮膜を平均厚み2 μm で施した。
表1 はアルミニウム板の板厚が1mm 、表 2はアルミニウム板の板厚が2mm の場合を示す。表1 、2 では、鋼板の接合面側のめっき条件やリン酸塩皮膜条件は一定とし、スポット溶接における、電極条件や電流条件を種々変えて異材接合体を製作している。
また、スポット溶接における電極条件や電流条件は一定とし、鋼板やアルミニウム合金板の接合面側のめっき条件やリン酸塩皮膜条件を種々変えた、鋼板とアルミニウム板との異材接合体を製作した結果も表3 に示す。
(使用素材)
素材として、高張力鋼板は板厚1mm で0.07質量%C-1.8質量%Mn を含む組成のもの、A6061 アルミニウム合金板は板厚1mm と2mm のものを各々準備し、これら鋼板、アルミニウム合金板とも、JIS A 3137記載の十字引張試験片形状に加工し、スポット溶接を行った。
(ZnまたはZn合金皮膜: めっき皮膜)
鋼材に電気めっきを施す場合は、共通して、10% 硫酸にて5 分の酸洗・活性化する前処理を行った後、各種電気めっきを行った。Zn電気めっきでは、硫酸亜鉛400g/l、硫酸アルミニウム30g/l 、塩化ナトリウム15g/l 、ホウ酸30g/l に硫酸を加えてpHを3 とした浴にて20A/dm2 の電流を流すことにより、純Znめっきを10μm 施した。これをZn-10 質量%Ni 合金めっきとする場合には、純Znめっきの亜鉛めっき浴に、硫酸ニッケル、塩化ニッケルを添加した浴にて10A/dm2 の電流を流すことにより、Zn-10 質量%Ni めっきを10μm 施した。また、比較例としての純Niめっきは、ワット浴を用いて10A/dm2 の電流を流すことにより、10μm施した。
溶融めっきは鋼材のみに行い、各種溶融金属を用いてZnめっき、Zn-Fe めっき(Fe量5 、10、12、16の各質量% )をそれぞれ10μm 施した。溶融Znめっきでは、温度、引き上げ温度を変化させることにより、膜厚を1 、3 、10、15、19、20μm に調整した。比較例として溶融Al-10%Si合金めっきも鋼材に施した。
アルミニウム材にめっきを施す場合は、10% 硝酸にて30秒酸洗し、水酸化ナトリウム500g/l、酸化亜鉛100g/l、塩化第二鉄1g/l、ロッセル塩10g/l の処理液中にて30秒亜鉛置換処理あるいは電気めっきを行った。また、その亜鉛めっき浴に硫酸ニッケル、塩化ニッケルを添加した浴にて10A/dm2 の電流を流すことにより、Zn-10%Niめっきを10μm 施した。
めっき皮膜の膜厚は、前記した通り、めっき後自然乾燥させたサンプルを切断し、樹脂に埋め込み、研磨をし、スポット溶接前のめっき界面のSEM観察を行った。SEM観察は2000倍の視野にて3点厚さを測定し、部位の違う5カ所程度の観察結果の平均で求めた。
(リン酸塩皮膜)
リン酸塩皮膜は、Znイオン1g/l、リン酸イオン15g/l 、Niイオン2g/l、F イオン0.2g/l、Mgイオン0 〜30g/l 、の各濃度の40℃の水溶液に、鋼材あるいはアルミニウム材を浸漬処理して形成した。リン酸塩皮膜中のMg含有量は、前記水溶液中のMgイオン量で調整し、リン酸塩皮膜厚みは浸漬時間を1 〜300 秒の間で変えて調整した。
リン酸塩皮膜の平均厚さは、前記した通り、リン酸塩処理後自然乾燥させたサンプルを切断し、樹脂に埋め込み、研磨した試料を、スポット溶接前のリン酸塩皮膜断面(界面)の板厚方向の2000倍の視野にて、SEM観察により、3 点厚さを測定し、部位の違う5カ所程度の観察結果の平均で求めた。
リン酸塩皮膜中のMg含有量は、上記リン酸塩皮膜の平均厚さ測定用の研磨試料を、蛍光X 線分析して、リン酸塩皮膜中のMg強度を求め、質量% に換算した。そして、部位の違う5カ所程度の測定結果の平均で求めた。
(スポット溶接)
スポット溶接は、直流抵抗溶接試験機を用い、Cu-Cr 合金からなるドーム型の電極を用い、陽極をアルミニウム、陰極を鋼として接合した。表1、2 では、表1、2 に示す電極チップ条件[ 先端径、先端曲率半径R 、加圧力W と(R ×W )1/3 /R]、電流パターン [溶接工程1 と2 の溶接電流、溶接時間] にて溶接を行い、異材接合体の十字引張試験体を作製した。
この際、表1、2 の各発明例は、アルミニウム材側の電極チップの先端径を7mm φ以上として、電極チップによる加圧力を、先端曲率半径Rmm と加圧力WkN との関係が(R ×W )1/3 /R >0.05となるように印加し、かつ15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を有する電流パターンにてスポット溶接した。本試験では、電極チップは鋼側、アルミニウム材側で同一形状のものを用いた。
また、表3 では、各例とも共通して、表1のN で示す発明例のスポット溶接条件を一定にして、溶接を行い、十字引張試験体を作製した。
これら各条件について、接合強度評価用に10体、接合界面評価用に3体作製した。
(界面反応層の厚さ測定)
界面反応層の厚さ測定は、スポット溶接後のサンプルを、溶接部の中央にて切断し、樹脂に埋め込み、研磨をし、SEM観察を行った。層の厚さが1μm以上の場合は2000倍の視野にて、1 μm 未満の場合は10000 倍の視野にて計測した。また、ここでの界面反応層とは、FeとAlを両方含む化合物層を指し、EDXにより、FeとAlがともに1wt%以上検出される層をいう。すなわち、FeとAlがともに1wt%以上検出されない層はめっき層や残留接着剤として界面反応層としなかった。
なお、本試験では、中心部が最も界面反応層が厚く、端部 (周縁部) ほど界面反応層が薄くなっていたため、10μm を超える厚さの界面反応層の径、0.5 μm 以上の厚さの界面反応層の径を求め、面積に換算した。測定は、3体の接合体について行い、直交した2方向のナゲット径を測定し、平均化した。
(異種金属接触腐食製評価)
また、各種条件で接合した各異材接合体について、塗装した上で、異種金属接触腐食製評価試験を行った。各異材接合体は、採取した試験片のアルカリ脱脂を行い、水洗後、日本ペイント社製のサーフファイン5N-10 の0.1%水溶液を用いて30秒表面調整処理を行った。その後、亜鉛イオン1.0g/l、ニッケルイオン1.0g/l、マンガンイオン0.8g/l、リン酸イオン15.0g/l 、硝酸イオン6.0g/l、亜硝酸イオン0.12g/l 、トーナー値2.5pt 、全酸度22pt、遊離酸度0.3 〜0.5pt 、50℃の浴にて、2 分リン酸亜鉛処理を行った。その後、カチオン電着塗料(日本ペイント社製パワートップV50 グレー)により塗装し、170 ℃25分焼き付けし、30μm の塗装皮膜を形成した。
その後、これら塗装異材接合体試験片の複合腐食試験を行い、異種金属接触腐食防止性の評価を行った。腐食試験は、A:塩水噴霧(35℃、5%NaCl)2hr 、B:乾燥(60℃、20-30%RH)4hr 、C:湿潤(50℃、95%RH 以上)2hr を1サイクルとする試験を所定サイクル数行なった。5 体の塗装異材接合体試験片は45サイクルとし、もう5 体の塗装異材接合体試験片は90サイクルとした。
(接合強度評価)
塗装異材接合体試験片の接合強度の評価は、上記複合腐食試験後のスポット接合の強度を測定するために、上記45サイクルと90サイクルとの複合腐食試験後の各5体の十字引張試験を各々実施し、平均化した。
十字引張試験の結果、接合強度が1.5kN 以上または破断形態がアルミ母材破断であれば◎、接合強度が0.8 〜1.0kN であれば○、接合強度が0.5 〜0.8kN であれば△、接合強度が0.5kN 未満であれば×とした。ここで、上記腐食試験後の接合強度が0.8kN(○) 以上でなければ、自動車などの構造材用としては使用できない。
(表1、2の結果)
表1 、2 から分かる通り、好適な範囲でスポット接合された発明例I 〜P の異材接合体は、耐食性が非常に高く、上記複合腐食試験後のスポット接合の強度が高いことが分かる。これは接合面間に設けられた溶融亜鉛めっきとリン酸塩皮膜の効果である。
これに対して、好適な範囲を外れてスポット接合された比較例A 〜H では、元々のスポット溶接時の接合強度が低いために、上記複合腐食試験後の接合強度も低い。比較例A 〜C では電極チップの先端径が小さい、先端曲率半径との関係で加圧力が低いなど、好適なスポット接合条件範囲を外れている。また、比較例D 〜H は、電流条件も本発明の範囲を満たさない。
比較例A 〜G は、溶接工程2 をしている比較例H を除き、溶接工程1 のみで、溶接工程2 をせずにスポット接合している。このうち、比較例A は電極チップの先端径が小さすぎる。比較例B 、比較例C は、先端曲率半径との関係で加圧力が低すぎる。
また、比較例D は溶接工程1 の溶接電流がアルミニウム材の板厚との関係で低すぎる。比較例E は溶接工程1 の溶接時間がアルミニウム材の板厚との関係で短かすぎる。比較例F は溶接工程1 の溶接電流がアルミニウム材の板厚との関係で高すぎる。比較例G は溶接工程1 の溶接時間がアルミニウム材の板厚との関係で長すぎる。比較例H は、15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す溶接工程1 よりも、著しく高い電流を流す溶接工程2 が存在する。
即ち、発明例I 〜P は、スポット溶接において、アルミニウム材側の電極チップの先端径を7mm φ以上として、電極チップによる加圧力を、先端曲率半径Rmm と加圧力WkN との関係が(R ×W )1/3 /R >0.05となるように印加し、かつ15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す、好ましい溶接条件を、溶接工程1 または2 として、スポット溶接している。また、これとともに、発明例I 〜P は、この溶接工程よりも高い電流を流す溶接工程が存在しない。このため、各発明例は最適厚さの界面反応層を制御できており、接合強度が高い。
これら発明例のうち、15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す溶接工程よりも後の、溶接工程2 が、1 ×t2 0.5 〜10×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す好ましい条件である発明例N 、O 、P は、最も接合強度が高い。
これに対して、15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す溶接工程の後に、溶接工程が無い電流パターンの発明例I 、K 、L 、M や、15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す溶接工程よりも後の、溶接工程2 が、10×t2 0.5kA よりも大きな電流パターンである発明例J は、上記発明例N 、O 、P よりも接合強度が低い。
(表3の結果)
表3より分かる通り、めっきが無い比較例1 、2 、リン酸塩皮膜が無い比較例1 、8 、12は、スポット溶接時に最適厚さの界面反応層が形成されているにもかかわらず、耐食性が劣るため、上記複合腐食試験後の接合強度が低くなっている。
金属皮膜条件 (種類と融点) が範囲から外れる比較例3 、4 、14は、最適厚さの界面反応層がほとんど形成されていない。したがって、元々のスポット溶接時の接合強度が低いために、上記複合腐食試験後の接合強度も低い。
ZnまたはZn合金皮膜では無い、Al-10%Si合金めっきの比較例7 は、適当な厚さの界面反応層が形成されているにもかかわらず、耐食性が劣るため、上記複合腐食試験後の接合強度がいずれも低くなっている。
一方、ZnまたはZn合金皮膜であっても、めっき厚みが薄すぎる比較例15、厚すぎる比較例19も、純亜鉛めっきでありながら、最適厚さの界面反応層が形成されていない。したがって、元々のスポット溶接時の接合強度が低いために、上記複合腐食試験後の接合強度も低い。したがって、元々のスポット溶接時の接合強度が低いために、上記複合腐食試験後の接合強度も低い。
これに対して、リン酸塩皮膜を有し、めっき条件 (融点、成分) が範囲内である発明例5 、6 、9 、10、11、13、16〜18、20〜27は、最適厚さの界面反応層を制御できているのに加え、耐食性が非常に高いため、上記複合腐食試験後のスポット接合の強度が高いことが分かる。これは接合面間に設けられた溶融亜鉛めっきとリン酸塩皮膜の効果である。但し、発明例20、23はリン酸塩皮膜の平均厚みが0.1 〜5 μmの範囲から外れる参考例である。
純亜鉛めっきを施した発明例の内、5 、6 、9 、17、20、21、24〜27は、最適厚さの界面反応層厚さを50×t2 0.5以上と大変広い面積に制御できていることがわかる。さらに、純亜鉛めっきの膜厚が好ましい5 〜15μm の範囲内で、かつリン酸塩皮膜のMg含有量が0.1 質量%以上、膜厚が1 μm 以上である発明例5 、6 、9 、17、22、26、27は、耐食性も非常に高いため、上記複合腐食試験後のスポット接合の強度が高いことが分かる。
この結果から、めっきを本発明の成分、融点、膜厚に制御することによって、最適厚さの界面反応層を制御でき、高い接合強度と耐食性が得られることが分かる。
また、以上の実施例の結果から、異材接合体の接合強度を高めるとともに接触腐食とそれによる接合強度の低下とを抑制できる本発明で規定する各要件の臨界的な意義が分かる。
Figure 0005134269
Figure 0005134269
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本発明によれば、鋼材とアルミニウム材とをスポット溶接にて接合する際の接合強度を高めるとともに、接触腐食とそれによる接合強度の低下とを抑制できる異材接合体及びそのスポット溶接法を提供できる。このような異材接合体は、接合強度とともに耐食性を高めたために、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械部品、建築構造物等における各種構造部材として大変有用に適用できる。したがって、本発明は鋼材とアルミニウムとの異種接合体の用途を大きく拡大するものである。
本発明の異種接合体を示す断面図である。 異種接合体を得るためのスポット溶接の態様を示す説明図である。
符号の説明
1:鋼板、2:アルミニウム合金板、3:異種接合体、4:抑制層、
5:ナゲット、6:界面反応層、7、8:電極

Claims (6)

  1. 板厚t1が0.3 〜3.0mm である鋼材と、板厚t2が0.5 〜4.0mm であるアルミニウム材とをスポット溶接にて接合した異材接合体であって、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、融点が350 〜1000℃、平均厚みが3 〜19μm のZnまたはZn合金皮膜と、更に平均厚みが0.1 〜5 μm であるリン酸塩皮膜とが予め設けられた状態でスポット溶接されており、スポット溶接後の溶接部における界面反応層の厚さが0.5 〜5μm の範囲である部分の面積が10×t2 0.5 mm2 以上であることを特徴とする鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
  2. 前記界面反応層の厚さが0.5 〜5μm の範囲である部分の面積が50×t2 0.5 mm2 以上である請求項1に記載の鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
  3. 前記ZnまたはZn合金皮膜が鋼材側の表面に施された88質量% 以上のZnを含むめっき皮膜である請求項1または2に記載の鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
  4. 前記リン酸塩皮膜が0.01〜10質量% のMgを含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鋼材とアルミニウム材との異材接合体。
  5. 板厚t1が0.3 〜3.0mm である鋼材と、板厚t2が0.5 〜4.0mm であるアルミニウム材との異材接合体のスポット溶接方法であって、これら接合される鋼材とアルミニウム材との互いの接合面間に、融点が350 〜1000℃、平均厚みが3 〜19μm のZnまたはZn合金皮膜と、更に平均厚みが0.1 〜5 μm であるリン酸塩皮膜とを予め設けた状態でスポット溶接するとともに、このスポット溶接において、アルミニウム材側の電極チップの先端径を7mm φ以上として、電極チップによる加圧力を、先端曲率半径Rmm と加圧力WkN との関係が(R ×W )1/3 /R >0.05となるように印加し、かつ15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を有するとともに、この工程より高い電流を流す工程が存在しない電流パターンにてスポット溶接し、スポット溶接後の溶接部における界面反応層の厚さが0.5 〜5μm の範囲である部分の面積を10×t 2 0.5 mm 2 以上とすることを特徴とする異材接合体のスポット溶接方法。
  6. 前記15×t2 0.5 〜30×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程よりも後の工程で、1 ×t2 0.5 〜10×t2 0.5kA の電流を100 ×t2 0.5 〜1000×t2 0.5msec 流す工程を存在させた電流パターンにてスポット溶接する請求項5に記載の異材接合体のスポット溶接方法。
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