最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施の形態に係る電波センサは、電波を送信する送信部と、電波を受信する受信部と、前記受信部により受信された電波に基づいて、物体を検知する検知部と、前記検知部の複数の検知結果に基づいて、前記電波センサの検知可能エリアを算出するエリア算出部と、前記電波センサが保持している検知エリアである基準エリアと前記エリア算出部により算出された前記検知可能エリアとのずれを算出するずれ算出部とを備える。
このように、物体の複数の検知結果に基づいて基準エリアと検知可能エリアとのずれを算出する構成により、電波センサの向きのずれを人手により測定することなく、算出結果から当該ずれを認識することができる。したがって、電波センサの向きのずれを容易に測定することができる。
(2)好ましくは、前記ずれ算出部は、前記基準エリアと前記検知可能エリアとの角度のずれに基づいて前記電波センサのパン角のずれを算出する。
このように、基準エリアに対する角度のずれを算出する構成により、簡易な演算処理で電波センサのパン角のずれを測定することができる。
(3)好ましくは、前記ずれ算出部は、前記電波センサに対する前記基準エリアおよび前記検知可能エリアの距離の差に基づいて前記電波センサのチルト角のずれを算出する。
このような構成により、たとえば、電波センサから基準エリアの端部までの距離と、電波センサから検知可能エリアの端部までの距離との差を算出する簡易な演算処理で電波センサのチルト角のずれを測定することができる。
(4)より好ましくは、前記ずれ算出部は、前記検知部によって検知された前記検知可能エリアにおける前記物体の進行方向、および前記基準エリアに基づいて、前記基準エリアと前記検知可能エリアとの前記角度のずれを算出する。
このような構成により、たとえば検知可能エリアが複雑な形状を有している場合であっても、当該検知可能エリアにおける物体の進行方向に基づいて、基準エリアと検知可能エリアとの角度のずれを算出することができる。
(5)好ましくは、前記送信部は、複数のアンテナ素子を含み、前記電波センサは、さらに、前記ずれ算出部により算出された前記ずれに基づいて、前記アンテナ素子から放射される電波間の位相差を調整することにより前記ずれを補正する補正部を備える。
このような構成により、人手を介することなく電波センサの向きのずれを補正して、物体の不検知または誤検知を防ぐことができる。
(6)本発明の実施の形態に係るずれ測定方法は、電波センサにおけるずれ測定方法であって、電波を送信するステップと、電波を受信するステップと、受信した電波に基づいて、物体を検知するステップと、複数の検知結果に基づいて、前記電波センサの検知可能エリアを算出するステップと、前記電波センサが保持している検知エリアである基準エリアと、算出した前記検知可能エリアとのずれを算出するステップとを含む。
このように、物体の複数の検知結果に基づいて基準エリアと検知可能エリアとのずれを算出する方法により、電波センサの向きのずれを人手により測定することなく、算出結果から当該ずれを認識することができる。したがって、電波センサの向きのずれを容易に測定することができる。
(7)本発明の実施の形態に係るずれ測定プログラムは、電波センサにおいて用いられるずれ測定プログラムであって、コンピュータを、電波を送信する送信部と、電波を受信する受信部と、前記受信部により受信された電波に基づいて、物体を検知する検知部と、前記検知部の複数の検知結果に基づいて、前記電波センサの検知可能エリアを算出するエリア算出部と、前記電波センサが保持している検知エリアである基準エリアと前記エリア算出部により算出された前記検知可能エリアとのずれを算出するずれ算出部、として機能させるためのプログラムである。
このように、物体の複数の検知結果に基づいて基準エリアと検知可能エリアとのずれを算出する構成により、電波センサの向きのずれを人手により測定することなく、算出結果から当該ずれを認識することができる。したがって、電波センサの向きのずれを容易に測定することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<構成および基本動作>
[電波センサの概要]
図1は、本発明の実施の形態に係る電波センサの設置例を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る電波センサの設置例において電波センサを上方から見た状態を示す図である。
図1および図2を参照して、電波センサ101は、たとえば、ミリ波等の電波を送信するレーダであり、交差点または直線道路の上方に設けられる。この例では、電波センサ101は、道路Rdから高さHrの位置に設けられ、直線道路である道路Rdの上流側へ電波を送信する。また、道路Rdは、一般道路である。なお、道路Rdは、高速道路等であってもよい。
電波センサ101は、送信した電波が、たとえば予め定められた検知エリアである基準エリアAsに到達するように、向きが初期設定されている。基準エリアAsは、電波センサ101の検知エリアの基準となるエリアであり、たとえば、道路Rdの一部を含み、電波センサ101に対して道路Rdの上流側に位置する。電波センサ101は、基準エリアAsを示す基準エリア情報を保持している。
ここで、センサ座標系を以下のように定義する。すなわち、センサ座標系は、たとえば、X、YおよびZを成分とする直交座標により表され、かつ電波センサ101が原点に位置する座標系である。Z軸の方向は、X軸およびY軸に垂直であり、かつ鉛直上方に向いている。
X軸の方向は、電波センサ101が物体の方位を検出した結果において、電波センサ101の基準エリアAs側の真正面から真後ろへの方向、すなわち車両181の進行方向である。Y軸の方向は、電波センサ101が物体の方位を検出した結果において、電波センサ101の真後ろから真正面を見て右側への方向である。
センサ座標系は、図2に示すように、測定対象距離Rおよび測定対象方位角θを成分とする極座標で表すことも可能である。
測定対象距離Rは、センサ座標系における原点から物体までの距離である。測定対象方位角θは、センサ座標系における物体の方位角である。具体的には、測定対象方位角θは、XY平面を上方から見た平面視における、原点から物体への方向とX軸の反対方向とがなす角度であり、上方から見て反時計回りに増加する。
すなわち、物体が、センサ座標系において電波センサ101の真後ろから真正面を見て右側に位置する場合、当該物体の測定対象方位角θはマイナスの値となる。また、物体が、センサ座標系において電波センサ101の真後ろから真正面を見て左側に位置する場合、当該物体の測定対象方位角θはプラスの値となる。
測定対象速度vmは、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った物体の移動速度である。すなわち、測定対象速度vmは、物体の電波センサ101に対する相対速度の成分のうち、電波センサ101に対して近づくかまたは遠ざかる方向に沿った成分である。
電波センサ101は、送信した電波が到達することのできるエリアである照射エリアA1における物体から反射波を受信して、受信した反射波に基づいて物体の測定対象距離R、測定対象方位角θおよび測定対象速度vmを検出する。
具体的には、図2に示すように、電波センサ101は、たとえば、照射エリアA1における道路Rdを速度vcで走行する車両181から反射波を受信して、受信した反射波に基づいて車両181についての測定対象距離R1、測定対象方位角θ1および測定対象速度vm1を検出する。
照射エリアA1および基準エリアAsは、図1および図2に示すように、電波センサ101の向きが初期設定の状態では互いに同じエリアであり、電波センサ101を設置した後に当該電波センサ101の向きがずれた状態では互いに異なるエリアとなる。
なお、基準エリアAsは、予め定められたエリアでなくてもよい。電波センサ101は、たとえば、自己の設置時に設定された照射エリアA1を基準エリアAsとして、当該基準エリアAsを示す基準エリア情報を保持してもよい。
[電波センサの構成]
(全体構成)
図3は、本発明の実施の形態に係る電波センサの構成を示す図である。
図3を参照して、電波センサ101は、送信部1と、受信部2と、差分信号生成部3と、制御部4と、信号処理部(検知部)5と、クロック生成回路6とを備える。
送信部1は、複数の送信アンテナ素子21と、複数のパワーアンプ22と、複数の可変位相器23と、分配器24と、スイッチ25と、方向性結合器26と、VCO(Voltage−Controlled Oscillator)27と、電圧発生部28とを含む。
差分信号生成部3は、ミキサ33と、IF(Intermediate Frequency)アンプ34と、ローパスフィルタ35と、A/Dコンバータ(ADC)36とを含む。
電波センサ101は、たとえば、非特許文献1(四分一 浩二、外2名、”拡大するミリ波技術の応用”、島田理化技報、2011年、第21号、P.37−48)および非特許文献2(稲葉 敬之、桐本 哲郎、”車載用ミリ波レーダ”、自動車技術、2010年2月、第64巻、第2号、P.74−79)に記載された、FM−CW方式を用いて物体を検知するレーダである。
(制御部およびクロック生成回路)
制御部4は、たとえば、自己の電波センサ101が物体の検知結果を1回出力する検知期間を設定する。検知期間には、たとえばSeq1〜SeqMのM個のシーケンスが含まれる。ここで、Mは、2以上の整数である。1つのシーケンスにおいて、1つのパターンの電波または1つのサブパターンの電波が送信部1から送信される。
クロック生成回路6は、たとえばクロック信号を生成し、生成したクロック信号CSを制御部4および差分信号生成部3へ出力する。
制御部4は、たとえば、クロック生成回路6から受けるクロック信号CSの立ち上がりエッジの個数をカウントし、当該エッジをNs個カウントするごとにトリガ信号Trを生成する。そして、制御部4は、生成したトリガ信号Trを、送信部1および信号処理部5へ出力する。Nsは、2以上の整数であり、固定値であってもよいし、可変であってもよい。
(送信部)
図4は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける送信部および差分信号生成部がそれぞれ生成する送信波および差分信号の各波形の一例を示す図である。なお、図4において、横軸は時間を示し、縦軸は、紙面の上側から順に、送信電波および受信電波の周波数Ft,Fr、差分信号の周波数Fb、ならびに差分信号の振幅Abを示す。また、送信電波の周波数Ftは実線で表され、受信電波の周波数Frは破線で表されている。図4では、送信電波に対する受信電波の遅延が示されている。
図3および図4を参照して、送信部1は、所定のパターンの電波を繰り返し送信する。具体的には、送信部1は、たとえば、FM−CW方式の変調方式を用いて生成した電波を照射エリアA1へ繰り返し送信する。より詳細には、送信部1は、たとえば、図4に示すように、周波数Ftが単位時間あたりで所定量増加するパターンPt1の電波を照射エリアA1へ繰り返し送信する。
制御部4は、FM−CW方式において用いる送信パラメータを送信部1および信号処理部5へたとえば検知期間ごとに出力する。ここで、送信パラメータには、掃引開始周波数F2、周波数掃引方向、周波数掃引幅Δf、1シーケンスの長さである周期Tt、掃引時間Ts、および検知期間の長さPmが含まれる。
また、制御部4は、トリガ信号Trを生成してから掃引時間Ts経過したタイミングにおいて、送信部1から電波が送信されないガード期間の開始タイミングを示すガード信号GSを生成して送信部1へ出力する。
ガード信号GSは、クロック信号CSと同期している。ガード期間は、たとえば各シーケンスの後部に設けられ、ガード信号GSが出力されてから次のシーケンスの開始タイミングを示すトリガ信号Trが出力されるまで継続する。なお、ガード期間は、各シーケンスの前部に設けられてもよい。
送信部1における電圧発生部28は、制御部4からトリガ信号Trを受けて、送信パラメータとして予め制御部4から受けた掃引開始周波数F2、周波数掃引方向、周波数掃引幅Δfおよび掃引時間Tsを用いて、制御部4からガード信号GSを受けるまで、大きさが一定の割合で増加する電圧(以下、FM変調電圧とも称する。)を生成してVCO27へ出力する。
VCO27は、電圧発生部28から受けるFM変調電圧に応じて、周波数掃引幅がΔfである24GHz帯の送信波RFtを生成して方向性結合器26へ出力する。
方向性結合器26は、VCO27から受ける送信波RFtをスイッチ25および差分信号生成部3へ分配する。
スイッチ25は、方向性結合器26に接続された第1端と、分配器24に接続された第2端とを有する。スイッチ25は、制御部4からトリガ信号Trを受けて、オン状態へ遷移し、第1端および第2端を電気的に接続する。一方、スイッチ25は、制御部4からガード信号GSを受けて、オフ状態へ遷移し、第1端および第2端を電気的に絶縁する。これにより、VCO27が出力する送信波RFtは、ガード期間において分配器24へ伝送されず、かつガード期間と異なる期間において分配器24へ伝送される。
分配器24は、スイッチ25から送信波RFtを受けて、受けた送信波RFtを複数の可変位相器23へ分配する。
可変位相器23は、分配器24から分配された送信波RFtを受けて、制御部4の制御に従って、受けた送信波RFtの位相を移相し、移相後の送信波RFtを対応のパワーアンプ22へ出力する。
パワーアンプ22は、可変位相器23から受ける送信波RFtを増幅し、増幅後の送信波RFtを送信アンテナ素子21経由で照射エリアA1へ送信する。
(受信部および差分信号生成部)
受信部2は、照射エリアA1からの電波を受信する。より詳細には、受信部2は、たとえば水平方向に並んだQ個のアンテナ素子を含むアレイアンテナを有し、各アンテナ素子において受信した電波に相当する受信波RFrを差分信号生成部3へ出力する。Qは、2以上の整数である。
差分信号生成部3は、送信部1によって送信される電波の周波数成分と受信部2によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号Ba1を生成する。
より詳細には、差分信号生成部3におけるミキサ33は、送信部1から受ける送信波RFtと受信部2から受ける受信波RFrとの差の周波数成分を有するアナログの差分信号Ba1を生成する。
差分信号Ba1の周波数Fbおよび振幅Abの時間変化は、図4に示される。ミキサ33は、生成した差分信号Ba1をIFアンプ34へ出力する。
IFアンプ34は、ミキサ33から受ける差分信号Ba1を増幅し、ローパスフィルタ35へ出力する。
ローパスフィルタ35は、IFアンプ34において増幅された差分信号Ba1の周波数成分のうち、所定の周波数以上の成分を減衰させる。
A/Dコンバータ36は、たとえばクロック信号CSの周期Tcで差分信号Ba1のサンプリング処理を行う。より詳細には、A/Dコンバータ36は、クロック生成回路6から受けるクロック信号CSの立ち上がりエッジのタイミングに従って、ローパスフィルタ35を通過した差分信号Ba1をサンプリング周期Tcごとにqビット(qは2以上の整数)のデジタルの差分信号Bd1に変換する。
図4では、シーケンスSeq1,Seq2における各サンプリングタイミングが白丸で示されている。各シーケンスにおけるサンプリングタイミングには、たとえばサンプリング順を示す1〜12のサンプリング番号が割り当てられている。A/Dコンバータ36は、変換後の差分信号Bd1を信号処理部5へ出力する。
(信号処理部)
信号処理部5は、たとえば、受信部2によって受信された電波に基づいて、照射エリアA1における物体を検知する。詳細には、信号処理部5は、たとえば、受信部2によって受信された電波に基づいて、測定対象方位角θ、測定対象距離Rおよび測定対象速度vmを検出する。
より詳細には、信号処理部5は、制御部4からトリガ信号Trを受けて、掃引時間Tsの間、差分信号生成部3から受ける各差分信号を所定のサンプリング周期ごとにサンプリングすることで、アンテナ素子ごとの差分信号の時間スペクトルを生成する。
この結果、信号処理部5には、掃引時間Tsの満了時において、Q個のアンテナ素子にそれぞれ対応するQセットの時間スペクトルが蓄積される。
信号処理部5は、制御部4から新たなトリガ信号Trを受けるごとにQセットの時間スペクトルを蓄積する。
この結果、信号処理部5には、検知期間の満了時において、Qセットの時間スペクトルがMセット蓄積される。
以下、m番目の掃引時間Tsにおいて、q番目のアンテナ素子によって受信された受信信号に基づく差分信号の時間スペクトルを、時間スペクトルTS(m,q)と定義する。ここで、mは、1からMまでの整数である。qは、1からQまでの整数である。
信号処理部5は、たとえば、時間スペクトルTS(1,1)をFFT(Fast Fourier Transform)処理することにより、周波数スペクトルFS(1,1)を生成する。
周波数スペクトルFS(1,1)の縦軸および横軸は、それぞれ振幅および周波数である。また、横軸は、たとえば、非特許文献3(Eugin Hyun、外2名、「A Pedestrian Detection Scheme Using a Coherent Phase Difference Method Based on 2D Range−Doppler FMCW Radar」、Sensros、2016年、第16巻、P.124)に記載の方法に従って、測定対象距離Rに換算することが可能である。
信号処理部5は、たとえば、照射エリアA1において物体が存在しない場合において検出された周波数スペクトルであるダークスペクトルを有している。より詳細には、信号処理部5は、たとえば、目標距離Dcとダークスペクトルとの対応関係を示すダーク情報を保持する。
信号処理部5は、目標情報を制御部4から受けて、受けた目標情報の示す目標距離Dcに対応するダークスペクトルをダーク情報から取得し、周波数スペクトルFS(1,1)から、取得したダークスペクトルを差し引くことにより、処理済周波数スペクトルFS(1,1)を生成する。
信号処理部5は、生成した処理済周波数スペクトルFS(1,1)において、所定のしきい値以上の振幅を有するピークを検出するピーク検出処理を行う。そして、信号処理部5は、検出したピークごとに、測定対象距離R、測定対象方位角θおよび測定対象速度vmを算出する。より詳細には、信号処理部5は、検出したピークの周波数を換算することにより測定対象距離Rを算出する。
また、信号処理部5は、たとえば、非特許文献4(菊間 信良著、「アレーアンテナによる適応信号処理」、初版、株式会社科学技術出版、1998年11月、p.181,p.194)に記載のMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法、Capon法またはビームフォーミング法に従って、時間スペクトルTS(1,1)〜(1,Q)に基づいて、検出したピークに対応する測定対象方位角θを算出する。
また、信号処理部5は、たとえば、非特許文献3に記載の方法に従って、時間スペクトルTS(1,1)〜(M,1)に基づいて、検出したピークに対応する測定対象速度vmを算出する。
信号処理部5は、検出したピークごとに測定対象距離R、測定対象方位角θおよび測定対象速度vmを示す検知結果情報を制御部4へ出力する。
図5は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける信号処理部による検知結果の一例を示す表である。
図5を参照して、信号処理部5は、ある検知期間において物体1、2、3、・・・を検知した場合、物体1、2、3、・・・の各々の測定対象距離R、測定対象方位角θおよび測定対象速度vmを示す検知結果情報を制御部4へ出力する。
なお、信号処理部5は、生成した周波数スペクトルに基づいてS/N比(Signal−to−Noise ratio)を算出する構成であってもよい。たとえば、信号処理部5は、検知した物体ごとにS/N比を算出し、各物体の測定対象距離R、測定対象方位角θ、測定対象速度vmおよびS/N比を示す検知結果情報を制御部4へ出力する。
[制御部の詳細な構成]
図6は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおける制御部の詳細な構成を示す図である。
図6を参照して、制御部4は、取得部51と、エリア算出部52と、ずれ算出部53と、ずれ補正部54と、通知部55と、記憶部56とを含む。
(検知可能エリアの算出)
取得部51は、信号処理部5から出力された検知結果情報を受けて、当該検知結果情報を記憶部56に保存する。
エリア算出部52は、記憶部56に保存されている複数の検知結果情報に基づいて、電波センサ101の検知可能エリアApを算出する。検知可能エリアApは、たとえば、照射エリアA1における道路Rdの領域である。
図7は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおけるエリア算出部により算出される検知可能エリアの一例を示す図である。
図7を参照して、エリア算出部52は、信号処理部5により検知された1または複数の各物体の位置を示す点Pをセンサ座標系上にプロットする。より詳細には、エリア算出部52は、たとえば、複数の検知期間を含む所定時間が経過するたびに、当該所定時間において検知された複数の物体の位置をそれぞれ示す複数の点Pをプロットする。なお、エリア算出部52は、所定時間において同一の物体が複数回検知された場合、当該物体の位置を示す複数の点Pをプロットする。
そして、エリア算出部52は、各点Pで規定される領域を検知可能エリアApとして算出し、算出した検知可能エリアApを示す検知可能エリア情報をずれ算出部53へ出力する。
たとえば、エリア算出部52は、単位面積当たりの点Pの数または密度が所定の閾値以上のエリアを検知可能エリアApとして算出する。図7に示す例では、電波センサ101からの距離が0m〜300mのエリアに検知可能エリアApが含まれている。
なお、エリア算出部52は、プロットした点Pが収まる最小のエリアを検知可能エリアApとして算出してもよい。
また、エリア算出部52は、記憶部56に保存された複数の検知結果情報に基づいて、たとえば検知された物体の数を車線ごとにカウントし、カウント数が所定値以上となった車線における各物体の位置を示す点Pをプロットし、各点Pで規定される領域を検知可能エリアApとして算出してもよい。この場合、エリア算出部52は、たとえば、検知可能エリアApを算出した後、カウント数をゼロにリセットして、新たに検知された物体の数をカウントする。
また、エリア算出部52は、記憶部56に保存されている検知結果情報が各物体に対応するS/N比を示す場合、たとえば、検知された複数の物体のうち、対応するS/N比が所定のしきい値以上である1または複数の各物体の位置を示す点Pをセンサ座標系上にプロットすることにより、検知可能エリアApを算出してもよい。
また、エリア算出部52は、検知された各物体の走行軌跡Paに基づいて検知可能エリアApを算出してもよい。より詳細には、エリア算出部52は、たとえば、記憶部56に保存されている複数の検知結果情報に基づいて、検知された物体ごとに、測定対象距離R、測定対象方位角θおよび測定対象速度vmの組を複数取得し、取得した複数の組に基づいて走行軌跡Paを算出する。
そして、エリア算出部52は、算出した各物体の走行軌跡Paの延びる方向を確認することにより、たとえば、照射エリアA1のうち、自己の電波センサ101から離れる方向へ走行する物体が存在する領域を除いた領域を検知可能エリアApとして算出する。
(ずれの算出)
(a)パン角の算出
再び図6を参照して、記憶部56には、基準エリアAsを示す基準エリア情報が保存されている。
ずれ算出部53は、記憶部56に保存されている基準エリア情報、およびエリア算出部52から受けた検知可能エリア情報に基づいて、基準エリアAsと検知可能エリアApとの角度のずれを算出する。そして、ずれ算出部53は、算出した角度のずれに基づいて、電波センサ101のパン角のずれを算出し、算出したパン角のずれを示すパン角情報をずれ補正部54へ出力する。なお、ずれ算出部53は、算出した角度のずれを電波センサ101のパン角のずれとして算出してもよいし、算出した角度のずれと異なる値を電波センサ101のパン角のずれとして算出してもよい。
図8は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおけるずれ算出部によるパン角のずれの算出方法を説明するための図(例1)である。
図8を参照して、ここでは、図8の上側に示すように、照射エリアA1が基準エリアAsに対して右斜め方向に傾いているとする。この場合、照射エリアA1に含まれ、かつ検知対象の物体が検知されたエリアである検知可能エリアApは、図8においてハッチングが付されたエリアとなる。
検知可能エリアApと、照射エリアA1における検知可能エリアAp以外のエリアとの境界線BL1は、図8の下側に示すように、基準エリアAsの縦方向に延びる境界線、すなわちX軸に沿って延びる境界線BL2に対して左斜め方向に傾く。
ずれ算出部53は、たとえば、基準エリアAsと検知可能エリアApとの角度のずれ、すなわち境界線BL1と境界線BL2とのなす角度αを算出することにより、電波センサ101のパン角のずれである角度αを算出する。
図9は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおけるずれ算出部によるパン角のずれの算出方法を説明するための図(例2)である。
図9を参照して、ここでは、図9の上側に示すように、照射エリアA1が基準エリアAsに対して左斜め方向に傾いているとする。この場合、照射エリアA1に含まれ、かつ検知対象の物体が検知されたエリアである検知可能エリアApは、図9においてハッチングが付されたエリアとなる。
検知可能エリアApと、照射エリアA1における検知可能エリアAp以外のエリアとの境界線BL1は、図9の下側に示すように、基準エリアAsの縦方向に延びる境界線、すなわちX軸に沿って延びる境界線BL2に対して右斜め方向に傾く。
ずれ算出部53は、たとえば、基準エリアAsと検知可能エリアApとの角度のずれ、すなわち境界線BL1と境界線BL2とのなす角度βを算出することにより、電波センサ101のパン角のずれである角度βを算出する。
ずれ算出部53により算出される角度は、照射エリアA1が基準エリアAsに対して右斜め方向に傾いている場合にはプラスの値となり、照射エリアA1が基準エリアAsに対して左斜め方向に傾いている場合にはマイナスの値となる。
なお、ずれ算出部53は、検知可能エリアApにおける物体の進行方向および基準エリアAsに基づいて、電波センサ101のパン角のずれを算出してもよい。
たとえば、ずれ算出部53は、記憶部56に保存されている複数の検知結果に基づいて、ある物体の測定対象距離R、測定対象方位角θおよび測定対象速度vmの組を複数取得し、取得した複数の組に基づいて、図8または図9に示す当該物体の走行軌跡Paを算出する。
また、ずれ算出部53は、たとえば、算出した物体の走行軌跡Paの延びる方向である当該物体の進行方向と、基準エリアAsの縦方向に延びる境界線BL2に対して平行な直線BL3とのなす角度αまたは角度βを算出する。そして、ずれ算出部53は、算出した角度αまたは角度βに基づいて電波センサ101のパン角のずれを算出する。
(b)チルト角の算出
また、ずれ算出部53は、電波センサ101に対する基準エリアAsおよび検知可能エリアApの距離の差Lを算出し、算出した差Lに基づいて電波センサ101のチルト角のずれを算出する。そして、ずれ算出部53は、算出したチルト角のずれを示すチルト角情報をずれ補正部54へ出力する。
図10は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおけるずれ算出部によるチルト角の算出方法を説明するための、電波センサの設置例において電波センサの側方から見た図である。
図11は、本発明の実施の形態に係る電波センサにおけるずれ算出部によるチルト角のずれの算出方法を説明するための、検知可能エリアを示す図である。
図10および図11を参照して、ここでは、電波センサ101が、設置時と比較して下向きにずれているとする。この場合、照射エリアA1は、基準エリアAsに対して、電波センサ101へ近い側にずれている。
基準エリアAsの電波センサ101から離れた側の第1端部Se1と電波センサ101との距離をDfとし、基準エリアAsの電波センサ101側の第2端部Se2と電波センサ101との距離をDnとする。また、第1端部Se1および第2端部Se2の中間位置Pcと電波センサ101との距離、すなわち上述の目標距離Dcは、Dc=(Df+Dn)/2となる。
また、電波センサ101の向きが初期設定された状態における、電波センサ101から中間位置PcへのベクトルとXY平面とのなす角度を仰角φとする。
ずれ算出部53は、エリア算出部52から受けた検知可能エリア情報に基づいて、検知可能エリアApの電波センサ101から離れた側の端部と電波センサ101との距離Dpを取得する。また、ずれ算出部53は、取得した距離Dpと距離Dfとの差である距離Lを算出する。
また、ずれ算出部53は、算出した距離Lに基づいて、中間位置Pcから電波センサ101側へ距離Lだけ近づいた点Pxの位置を特定する。
そして、ずれ算出部53は、既知の値である電波センサ101の道路Rdからの高さHr、仰角φ、および距離Dc、ならびに算出した距離Lに基づいて、電波センサ101のチルト角のずれとして、電波センサ101から中間位置Pcへのベクトルと、電波センサ101から点Pxへのベクトルとのなす角度γを算出する。
なお、電波センサ101における制御部4は、電波センサ101の重力加速度を検知する図示しない加速度センサをさらに含む構成であってもよい。この場合、ずれ算出部53は、加速度センサによる検知結果に基づいて、電波センサ101のチルト角のずれを算出してもよい。
このような構成では、電波センサ101のパン角およびチルト角の両方がずれている場合であっても、加速度センサによる検知結果に基づいて、電波センサ101のチルト角のずれを補正することが可能である。このため、チルト角が補正された後の電波センサ101における信号処理部5による検知結果に基づいて、電波センサ101のパン角のずれを補正することができる。
(ずれの補正および異常の通知)
再び図6を参照して、ずれ補正部54は、ずれ算出部53からパン角情報およびチルト角情報を受けて、当該パン角情報および当該チルト角情報に基づいて電波センサ101のパン角のずれおよびチルト角のずれをそれぞれ補正する。
より詳細には、ずれ補正部54は、たとえば、所定値Th1より大きいパン角のずれを示すパン角情報を受けた場合、電波センサ101の左右方向のずれを補正する。また、ずれ補正部54は、たとえば、所定値Th2より大きいチルト角のずれを示すチルト角情報を受けた場合、電波センサ101の上下方向のずれを補正する。
なお、ずれ補正部54は、電波センサ101の異常を示す異常情報の送信指示を通知部55へ出力してもよい。
より詳細には、ずれ補正部54は、所定値Th1より大きいパン角のずれを示すパン角情報、または所定値Th2より大きいチルト角のずれを示すチルト角情報を受けた回数をカウントし、カウント値を記憶部56において保持する。
また、ずれ補正部54は、記憶部56におけるカウント値Nを確認し、カウント値Nが所定値Ntより大きい場合、異常情報の送信指示を通知部55へ出力する。
通知部55は、ずれ補正部54から異常情報の送信指示を受けて、異常情報を中継装置161経由で外部サーバ121へ送信する。
なお、通知部55は、異常情報とともに、記憶部56に保存されている複数の検知結果情報を中継装置161経由で外部サーバ121へ送信してもよい。
(ずれの補正の具体例)
(a)例1
たとえば、ずれ補正部54は、電波センサ101の左右方向の向きを変更可能なギア等を回転させるための制御情報を、図示しない駆動部へ送信する。これにより、ずれ補正部54は、電波センサ101の左右方向のずれを機械的に補正する。
また、たとえば、ずれ補正部54は、電波センサ101の上下方向における向きを変更可能なギア等を回転させるための制御情報を、図示しない駆動部へ送信する。これにより、ずれ補正部54は、電波センサ101の上下方向のずれを機械的に補正する。
(b)例2
ずれ補正部54は、たとえば、図3に示す送信部1における複数の送信アンテナ素子21が水平方向に沿って配列されている場合、複数の送信アンテナ素子21からそれぞれ放射される電波間の位相差を調整することにより、電波センサ101の左右方向のずれを補正してもよい。
より詳細には、ずれ補正部54は、たとえば、パン角情報の示すパン角のずれに基づいて、送信部1における複数の可変位相器23にそれぞれ与えるべき複数の移相量を算出する。そして、ずれ補正部54は、算出した複数の移相量をそれぞれ示す複数の移相情報の各々を対応の可変位相器23へ出力する。
各可変位相器23は、制御部4から移相情報を受けて、分配器24から受ける電波の位相を、移相情報の示す移相量だけ移相し、移相後の電波を対応のパワーアンプ22へ出力する。これにより、複数の送信アンテナ素子21からそれぞれ放射される電波間の位相差が調整され、照射エリアA1が補正される。
なお、ずれ補正部54は、送信部1における複数の送信アンテナ素子21が鉛直方向に沿って配列されている場合、同様の方法により、複数の送信アンテナ素子21からそれぞれ放射される電波間の位相差を調整して電波センサ101の上下方向のずれを補正してもよい。
(c)例3
ずれ補正部54は、パン角情報およびチルト角情報に基づいて、信号処理部5による検知結果を補正する構成であってもよい。
たとえば、パン角情報が、電波センサ101が右方向へ角度αだけずれていることを示すとする。この場合、ずれ補正部54は、たとえば、記憶部56に保存されている検知結果に含まれる各物体の測定対象方位角θを、角度αだけ差し引いた値に変更して上書きする。
なお、本発明の実施の形態に係る電波センサ101では、ずれ算出部53は、電波センサ101のパン角のずれおよびチルト角のずれの両方を算出するが、このような構成に限定されず、パン角のずれおよびチルト角のずれのいずれか一方を算出する構成であってもよい。
<動作の流れ>
電波センサ101は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリからそれぞれ読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
図12は、本発明の実施の形態に係る電波センサが自己のずれの算出および補正を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図12を参照して、まず、送信部1は、照射エリアA1へ電波を送信する(ステップS11)。
次に、受信部2は、照射エリアA1からの電波を受信し、受信した電波に相当する受信信号を差分信号生成部3へ出力する(ステップS12)。
次に、差分信号生成部3は、送信部1によって送信される電波の周波数成分と受信部2によって受信される電波の周波数成分との差の周波数成分を有する差分信号を生成し、生成した差分信号を信号処理部5へ出力する(ステップS13)。
次に、信号処理部5は、差分信号生成部3から受けた各差分信号に基づいて時間スペクトルを生成し、生成した時間スペクトルをFFT処理することにより周波数スペクトルを生成する。そして、信号処理部5は、生成した周波数スペクトルに基づいて、照射エリアA1における物体の測定対象距離R、測定対象方位角θおよび測定対象速度vmを検出する検知処理を行う(ステップS14)。
次に、信号処理部5は、検知結果を示す検知結果情報を記憶部56に保存する(ステップS15)。
次に、エリア算出部52は、たとえば、検知可能エリアApを前回算出したタイミングから所定時間が経過したか否かを確認する(ステップS16)。
そして、エリア算出部52は、上記タイミングから所定時間が経過していない場合(ステップS16において「NO」)、検知可能エリアApの算出を行わず、所定時間が経過するまでの間、電波センサ101においてステップS11〜ステップS15の動作が繰り返し行われる。
一方、エリア算出部52は、上記タイミングから所定時間が経過した場合(ステップS16において「YES」)、記憶部56に保存されている複数の検知結果情報に基づいて、センサ座標系に複数の点Pをプロットして、検知可能エリアApを算出する。そして、エリア算出部52は、算出した検知可能エリアApを示す検知可能エリア情報をずれ算出部53へ出力する(ステップS17)。
次に、ずれ算出部53は、エリア算出部52から受けた検知可能エリア情報、および記憶部56に保存されている基準エリア情報に基づいて、電波センサ101のパン角のずれ、および電波センサ101のチルト角のずれを算出する。そして、ずれ算出部53は、算出したパン角のずれを示すパン角情報、および算出したチルト角のずれを示すチルト角情報をずれ補正部54へ出力する(ステップS18)。
次に、ずれ補正部54は、ずれ算出部53から受けたパン角情報の示すパン角のずれが所定値Th1より大きいか否かを確認する。また、ずれ補正部54は、ずれ算出部53から受けたチルト角情報の示すチルト角のずれが所定値Th2より大きいか否かを確認する(ステップS19)。
次に、ずれ補正部54は、パン角のずれが所定値Th1以下であり、かつチルト角のずれが所定値Th2以下である場合(ステップS19において「YES」)、電波センサ101のずれの補正を行わずに待機する。そして、ステップS11以降の動作が再び行われる。
一方、ずれ補正部54は、パン角のずれが所定値Th1より大きい場合、チルト角のずれが所定値Th2より大きい場合、またはパン角のずれが所定値Th1より大きく、かつチルト角のずれが所定値Th2より大きい場合(ステップS19において「NO」)、カウント値Nをインクリメントする(ステップS20)。
次に、ずれ補正部54は、カウント値Nが所定値Ntより大きいか否かを確認する(ステップS21)。
ずれ補正部54は、カウント値Nが所定値Ntより大きい場合(ステップS21において「YES」)、電波センサ101の異常を示す異常情報の送信指示を通知部55へ出力する。そして、通知部55は、ずれ補正部54から出力された異常情報の送信指示を受けて、異常情報を中継装置161経由で外部サーバ121へ送信することにより、電波センサ101の異常を通知する(ステップS22)。
一方、ずれ補正部54は、カウント値Nが所定値Nt以下である場合(ステップS21において「NO」)、異常情報の送信を行わず、パン角情報およびチルト角情報に基づいて、電波センサ101のずれを補正する。
たとえば、ずれ補正部54は、複数の送信アンテナ素子21が水平方向に沿って配列されており、パン角のずれが所定値Th1より大きい場合、これら複数の送信アンテナ素子21からそれぞれ放射される電波間の位相差を調整することにより、電波センサ101の左右方向のずれを補正する。
また、ずれ補正部54は、たとえば、複数の送信アンテナ素子21が鉛直方向に沿って配列されており、チルト角のずれが所定値Th2より大きい場合、これら複数の送信アンテナ素子21からそれぞれ放射される電波間の位相差を調整することにより、電波センサ101の上下方向のずれを補正する。
また、ずれ補正部54は、たとえば、複数の送信アンテナ素子21が水平方向および鉛直方向の両方向に沿って配列されており、パン角のずれが所定値Th1より大きく、かつチルト角のずれが所定値Th2より大きいとする。この場合、これら複数の送信アンテナ素子21からそれぞれ放射される電波間の位相差を調整することにより、電波センサ101の左右方向および上下方向の両方向のずれを補正する(ステップS23)。
ところで、たとえば、特許文献1に記載の車載用の電波センサでは、当該電波センサを基準とした相対的な角度および距離に基づいて対象物の検知対象エリアが設定される。
また、道路の上方に設けられ、道路を走行する車両等の物体を検知するための電波センサが知られている。このような電波センサは、対象エリアにおける物体を検知することができるように、向きを調整して設置される。
しかしながら、道路もしくは電波センサを支持する支柱の振動、または強風などの影響により、電波センサの向きがずれて、対象エリアにおける物体の不検知または誤検知が生じる可能性がある。
これに対して、本発明の実施の形態に係る電波センサ101では、送信部1が、電波を送信する。受信部2が、電波を受信する。信号処理部5が、受信部2により受信された電波に基づいて、物体を検知する。エリア算出部52が、信号処理部5の複数の検知結果に基づいて、電波センサ101の検知可能エリアApを算出する。そして、ずれ算出部53が、電波センサ101が保持している検知エリアである基準エリアAsとエリア算出部52により算出された検知可能エリアApとのずれを算出する。
このように、物体の複数の検知結果に基づいて基準エリアAsと検知可能エリアApとのずれを算出する構成により、電波センサ101の向きのずれを人手により測定することなく、算出結果から当該ずれを認識することができる。
したがって、本発明の実施の形態に係る電波センサ101では、電波センサ101の向きのずれを容易に測定することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサ101では、ずれ算出部53は、基準エリアAsと検知可能エリアApとの角度のずれに基づいて電波センサ101のパン角のずれを算出する。
このように、基準エリアAsに対する角度のずれを算出する構成により、簡易な演算処理で電波センサ101のパン角のずれを測定することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサ101では、ずれ算出部53は、電波センサ101に対する基準エリアAsおよび検知可能エリアApの距離の差Lに基づいて電波センサ101のチルト角を算出する。
このような構成により、たとえば、電波センサ101から基準エリアAsの端部までの距離Dfと、電波センサ101から検知可能エリアApの端部までの距離Dpとの差Lを算出する簡易な演算処理で電波センサ101のチルト角のずれを測定することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサ101では、ずれ算出部53は、信号処理部5によって検知された検知可能エリアApにおける物体の進行方向、および基準エリアAsに基づいて、基準エリアAsと検知可能エリアApとの角度のずれを算出する。
このような構成により、たとえば検知可能エリアApが複雑な形状を有している場合であっても、当該検知可能エリアApにおける物体の進行方向に基づいて、基準エリアAsと検知可能エリアApとの角度のずれを算出することができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサ101では、送信部1は、複数の送信アンテナ素子21を含む。そして、ずれ補正部54は、ずれ算出部53により算出された、基準エリアAsと検知可能エリアApとのずれに基づいて、送信アンテナ素子21から放射される電波間の位相差を調整することにより、上記ずれを補
正する。
このような構成により、人手を介することなく電波センサ101の向きのずれを補正して、物体の不検知または誤検知を防ぐことができる。
また、本発明の実施の形態に係る電波センサ101におけるずれ測定方法では、まず、送信部1が、電波を送信する。次に、受信部2が、電波を受信する。次に、信号処理部5が、受信部2が受信した電波に基づいて、物体を検知する。次に、エリア算出部52が、信号処理部5の複数の検知結果に基づいて、電波センサ101の検知可能エリアApを算出する。次に、ずれ算出部53が、電波センサ101が保持している検知エリアである基準エリアAsと、エリア算出部52により算出された検知可能エリアApとのずれを算出する。
このように、物体の複数の検知結果に基づいて基準エリアAsと検知可能エリアApとのずれを算出する方法により、電波センサ101の向きのずれを人手により測定することなく、算出結果から当該ずれを認識することができる。
したがって、本発明の実施の形態に係る電波センサ101におけるずれ測定方法では、電波センサ101の向きのずれを容易に測定することができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
電波センサであって、
電波を送信する送信部と、
電波を受信する受信部と、
前記受信部により受信された電波に基づいて、物体を検知する検知部と、
前記検知部の複数の検知結果に基づいて、前記電波センサの検知可能エリアを算出するエリア算出部と、
前記電波センサが保持している検知エリアである基準エリアと前記エリア算出部により算出された前記検知可能エリアとのずれを算出するずれ算出部とを備え、
前記電波センサは、道路に位置する車両を検知するミリ波レーダであり、
前記検知部は、前記車両の、前記電波センサからの距離、前記電波センサへの方位角、および前記電波センサに対する移動速度を検出し、
前記エリア算出部は、前記複数の検知結果に基づいて、複数の前記車両の各々の位置を示す点をセンサ座標系上にプロットし、プロットした各前記点により規定されるエリアを前記検知可能エリアとして算出する、電波センサ。