JP2019173610A - エンジン制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料カット前のトルク低減制御によるエンジン回転数の低下を防止して、確実に燃料カットを行う。【解決手段】エンジン制御装置1は、所定の燃料カット開始条件成立時にエンジンの燃料カットを実施するとともに、燃料カットに先立ってエンジン10の目標トルクを低減させるトルク低減制御を実施する。燃料カット開始条件には、エンジン10の実回転数Neが所定の燃料カット許可回転数以上であることが含まれている。開始前トルク演算部5の制限トルク補正部5cは、エンジン10の実回転数と、燃料カット許可回転数との差分に基づいて、トルク低減制御時における目標トルクの低減度合いを補正する。【選択図】図1
Description
本発明は、車両のエンジン制御装置に関する。
従来、車両の燃費向上や排気浄化を目的とした制御の一つとして、エンジンへの燃料供給を一時的に遮断する燃料カット制御が知られている。燃料カット制御とは、車両減速時の燃料噴射量をゼロにする(またはほぼゼロにする)制御であり、例えばアクセルペダルの踏み込みがなく、エンジンブレーキが作動しているとき(エンジンの回転抵抗によって駆動輪側が制動されているとき)に実施される。
一方、燃料カット制御の実施中にアクセルペダルが踏み込まれた場合や、エンジン回転数が比較的低回転域まで低下した場合には、燃料カット制御が終了する。このとき、エンジンへの燃料供給が再開され、アイドル回転数やアクセル操作量に応じたエンジン出力が確保される。
一方、燃料カット制御の実施中にアクセルペダルが踏み込まれた場合や、エンジン回転数が比較的低回転域まで低下した場合には、燃料カット制御が終了する。このとき、エンジンへの燃料供給が再開され、アイドル回転数やアクセル操作量に応じたエンジン出力が確保される。
上記の燃料カット制御は、エンジンの作動中に自動的に実施されるとともに、燃料がカットされたエンジンの惰性回転中に終了して自動的に復帰させる制御である。そのため、制御が開始される前後や終了する前後でエンジン出力が大きく変化し、ショックが発生する場合がある。
このような課題に対し、燃料カット制御の前後でのエンジンの燃焼トルクを減少させることで、ショックを抑制する技術が提案されている。
例えば、下記特許文献1では、所定条件の成立時に、エンジンの燃料カットを制御する燃料カット手段と、燃料カットの開始前にエンジンの目標トルクを減少させる減算手段とを設けている。また、減算手段が減少させた目標トルクについて、燃料カットの開始時点におけるその瞬間値を、燃料カットの終了時点まで保持する保持手段と、保持手段に保持された瞬間値を初期値として、燃料カットの終了後にエンジンの目標トルクを増加させる加算手段とを設けている。
これにより、燃料カットの開始前に目標トルクを減少させ、燃料カット突入時のトルク段差を小さくすることができる。また、燃料カット終了後の目標トルクの初期値が燃料カット開始時点と同一となり、エンジンの失火の可能性を低めることができ、エンジンの作動状態の安定性を向上させることができる。
例えば、下記特許文献1では、所定条件の成立時に、エンジンの燃料カットを制御する燃料カット手段と、燃料カットの開始前にエンジンの目標トルクを減少させる減算手段とを設けている。また、減算手段が減少させた目標トルクについて、燃料カットの開始時点におけるその瞬間値を、燃料カットの終了時点まで保持する保持手段と、保持手段に保持された瞬間値を初期値として、燃料カットの終了後にエンジンの目標トルクを増加させる加算手段とを設けている。
これにより、燃料カットの開始前に目標トルクを減少させ、燃料カット突入時のトルク段差を小さくすることができる。また、燃料カット終了後の目標トルクの初期値が燃料カット開始時点と同一となり、エンジンの失火の可能性を低めることができ、エンジンの作動状態の安定性を向上させることができる。
ここで、燃料カット突入時のエンジン回転数が低すぎると、そのままエンジンの回転数が低下し、燃料カットから通常運転に復帰することができなくなる。そのため、上述した従来技術では、燃料カットに先立つトルク低減制御中にエンジン回転数が所定値より低くなった場合には、燃料カットの実行を禁止していた。
しかしながら、上記のような制御態様とすると、燃料カットを行うためにトルク低減を行っているにも関わらず、エンジン回転数が所定値より低下した結果、燃料カットを実行できないという状況が生じるという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、燃料カット開始前のトルク低減制御によるエンジン回転数の低下を防止して、確実に燃料カットを行うことにある。
しかしながら、上記のような制御態様とすると、燃料カットを行うためにトルク低減を行っているにも関わらず、エンジン回転数が所定値より低下した結果、燃料カットを実行できないという状況が生じるという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、燃料カット開始前のトルク低減制御によるエンジン回転数の低下を防止して、確実に燃料カットを行うことにある。
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかるエンジン制御装置は、所定の燃料カット開始条件成立時にエンジンの燃料カットを実施するとともに、前記燃料カットの実施に先立って前記エンジンの目標トルクを低減させるトルク低減制御を実施するエンジン制御装置であって、前記燃料カット開始条件は、前記エンジンの実回転数が所定の燃料カット許可回転数以上であることを含んでおり、前記エンジンの実回転数と、前記燃料カット許可回転数との差分に基づいて、前記トルク低減制御時における前記目標トルクの低減度合いを補正するトルク補正手段を備える、ことを特徴とする。
請求項2の発明にかかるエンジン制御装置は、前記トルク補正手段は、前記エンジンの実回転数と、前記燃料カット許可回転数との差分が小さいほど、前記目標トルクの低減度合いを小さくする、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかるエンジン制御装置は、前記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御手段を更に備え、前記点火時期制御手段は、前記トルク低減制御の実施時には前記目標トルクの低減度合いに合わせて前記点火時期を遅延させることにより前記エンジンの出力トルクを低減させる、ことを特徴とする。
請求項2の発明にかかるエンジン制御装置は、前記トルク補正手段は、前記エンジンの実回転数と、前記燃料カット許可回転数との差分が小さいほど、前記目標トルクの低減度合いを小さくする、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかるエンジン制御装置は、前記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御手段を更に備え、前記点火時期制御手段は、前記トルク低減制御の実施時には前記目標トルクの低減度合いに合わせて前記点火時期を遅延させることにより前記エンジンの出力トルクを低減させる、ことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、エンジンの実回転数と燃料カット許可回転数との差分に基づいて、トルク低減制御時における目標トルクの低減度合いを補正するので、トルク低減制御時における目標トルクの値をより適切に決定する上で有利となる。
請求項2の発明によれば、エンジンの実回転数と燃料カット許可回転数との差分が小さいほど、目標トルクの低減度合いを小さくするので、トルク低減制御に伴ってエンジン回転数が低下した場合でも燃料カット許可回転数を下回るのを防止して、確実に燃料カットを実施する上で有利となる。
請求項3の発明によれば、目標トルクの低減度合いに合わせて点火時期を遅延させることによりエンジンの出力トルクを低減させるのでの、応答性の高いトルク制御を行う上で有利となる。
請求項2の発明によれば、エンジンの実回転数と燃料カット許可回転数との差分が小さいほど、目標トルクの低減度合いを小さくするので、トルク低減制御に伴ってエンジン回転数が低下した場合でも燃料カット許可回転数を下回るのを防止して、確実に燃料カットを実施する上で有利となる。
請求項3の発明によれば、目標トルクの低減度合いに合わせて点火時期を遅延させることによりエンジンの出力トルクを低減させるのでの、応答性の高いトルク制御を行う上で有利となる。
以下に添付図面を参照して、車両に適用されたエンジン制御装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.装置構成]
[1−1.エンジン]
本実施形態のエンジン制御装置は、図1に示す車載のエンジン10に適用される。ここでは、多気筒のエンジン10に設けられた複数のシリンダーのうちの一つを示す。ピストン16は、中空円筒状に形成されたシリンダー19の内周面に沿って往復摺動自在に内装される。ピストン16の上面とシリンダー19の内周面および頂面に囲まれた空間は、エンジンの燃焼室26として機能する。
ピストン16の下部は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフト17の軸心から偏心した中心軸を持つクランクアームに連結される。これにより、ピストン16の往復動作がクランクアームに伝達され、クランクシャフト17の回転運動に変換される。
[1−1.エンジン]
本実施形態のエンジン制御装置は、図1に示す車載のエンジン10に適用される。ここでは、多気筒のエンジン10に設けられた複数のシリンダーのうちの一つを示す。ピストン16は、中空円筒状に形成されたシリンダー19の内周面に沿って往復摺動自在に内装される。ピストン16の上面とシリンダー19の内周面および頂面に囲まれた空間は、エンジンの燃焼室26として機能する。
ピストン16の下部は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフト17の軸心から偏心した中心軸を持つクランクアームに連結される。これにより、ピストン16の往復動作がクランクアームに伝達され、クランクシャフト17の回転運動に変換される。
シリンダー19の頂面には、吸気を燃焼室26内に供給するための吸気ポート11と、燃焼室26内で燃焼した後の排気を排出するための排気ポート12とが穿孔形成される。また、吸気ポート11,排気ポート12の燃焼室26側の端部には、吸気弁14および排気弁15が設けられる。これらの吸気弁14,排気弁15は、エンジン10の上部に設けられる図示しない動弁機構によって各々の動作を個別に制御される。また、シリンダー19の頂部には、点火プラグ13がその先端を燃焼室26側に突出させた状態で設けられる。点火プラグ13による点火時期は、後述するエンジン制御装置1で制御される。
シリンダー19の周囲には、その内部をエンジン冷却水が流通するウォータージャケット27が設けられる。エンジン冷却水はエンジン10を冷却するための冷媒であり、ウォータージャケット27とラジエータとの間を環状に接続する冷却水循環路内を流通している。
シリンダー19の周囲には、その内部をエンジン冷却水が流通するウォータージャケット27が設けられる。エンジン冷却水はエンジン10を冷却するための冷媒であり、ウォータージャケット27とラジエータとの間を環状に接続する冷却水循環路内を流通している。
[1−2.吸気系]
吸気ポート11内には、燃料を噴射するインジェクター18が設けられる。インジェクター18から噴射される燃料量は、後述するエンジン制御装置1によって制御される。また、インジェクター18よりも吸気流の上流側には、インテークマニホールド20(以下、インマニと呼ぶ)が設けられる。このインマニ20には、吸気ポート11側へと流れる空気を一時的に溜めるためのサージタンク21が設けられる。サージタンク21よりも下流側のインマニ20は、各シリンダー19の吸気ポート11に向かって分岐するように形成され、サージタンク21はその分岐点に位置する。サージタンク21は、各々のシリンダーで発生しうる吸気脈動や吸気干渉を緩和するように機能する。
吸気ポート11内には、燃料を噴射するインジェクター18が設けられる。インジェクター18から噴射される燃料量は、後述するエンジン制御装置1によって制御される。また、インジェクター18よりも吸気流の上流側には、インテークマニホールド20(以下、インマニと呼ぶ)が設けられる。このインマニ20には、吸気ポート11側へと流れる空気を一時的に溜めるためのサージタンク21が設けられる。サージタンク21よりも下流側のインマニ20は、各シリンダー19の吸気ポート11に向かって分岐するように形成され、サージタンク21はその分岐点に位置する。サージタンク21は、各々のシリンダーで発生しうる吸気脈動や吸気干渉を緩和するように機能する。
インマニ20の上流側には、スロットルボディ22が接続される。スロットルボディ22の内部には電子制御式のスロットルバルブ23が内蔵され、インマニ20側へと流れる空気量がスロットルバルブ23の開度(スロットル開度)に応じて調節される。このスロットル開度は、エンジン制御装置1によって制御される。
スロットルボディ22のさらに上流側には、吸気通路24が接続され、吸気通路24のさらに上流側にはエアフィルタ25が介装される。これにより、エアフィルタ25で濾過された新気が吸気通路24およびインマニ20を介してエンジン10の各シリンダー19に供給される。
スロットルボディ22のさらに上流側には、吸気通路24が接続され、吸気通路24のさらに上流側にはエアフィルタ25が介装される。これにより、エアフィルタ25で濾過された新気が吸気通路24およびインマニ20を介してエンジン10の各シリンダー19に供給される。
[1−3.検出系]
車両の任意の位置には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度APS)を検出するアクセル開度センサー31が設けられる。アクセル開度APSは、運転者の加速要求や発進意思に対応するパラメーターであり、言い換えるとエンジン10の負荷(エンジン10に対する出力要求)に相関するパラメーターである。アクセル開度センサー31で検出されたアクセル開度APSの情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
車両の任意の位置には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度APS)を検出するアクセル開度センサー31が設けられる。アクセル開度APSは、運転者の加速要求や発進意思に対応するパラメーターであり、言い換えるとエンジン10の負荷(エンジン10に対する出力要求)に相関するパラメーターである。アクセル開度センサー31で検出されたアクセル開度APSの情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
吸気通路24内には、吸気流量QINを検出するエアフローセンサー32が設けられる。吸気流量QINは、スロットルバルブ23を通過する実際の空気の流量に対応するパラメーターである。スロットルバルブ23からシリンダー19への吸気流には、いわゆる吸気遅れ(流通抵抗や吸気慣性によって生じる遅れ)が生じるため、ある時刻にシリンダー19に導入される空気の流量は、その時点でスロットルバルブ23を通過する空気の流量とは必ずしも一致しない。一方、本実施形態のエンジン制御装置1では、このような吸気遅れを考慮した吸気量の制御が実施される。エアフローセンサー32で検出された吸気流量QINの情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
クランクシャフト17には、その回転角θCRを検出するエンジン回転数センサー33が設けられる。回転角θCRの単位時間あたりの変化量(角速度ω)はエンジン10の単位時間あたりの実回転数Ne(実回転速度)に比例する。したがって、エンジン回転数センサー33は、エンジン10の実回転数Neを取得する機能を持つ。また、エンジン10が直列四気筒の場合の一点火は回転角θCRの半回転に対応する。したがって、エンジン回転数センサー33は、エンジン10の点火回数IGを取得する機能を併せ持つ。ここで取得された実回転数Neおよび点火回数IGの情報は、エンジン制御装置1に伝達される。なお、エンジン回転数センサー33で検出された回転角θCRに基づき、エンジン制御装置1の内部で実回転数Neおよび点火回数IGを演算する構成としてもよい。
ウォータージャケット27、または冷却水循環路上の任意の位置には、エンジン冷却水の温度(冷却水水温WT)を検出する冷却水温センサー34が設けられる。また、エンジン10のオイルパン、またはエンジンオイルの循環経路上の任意の位置には、エンジンオイルの温度(油温OT)を検出する油温センサー35が設けられる。これらの冷却水水温WTおよび油温OTの情報はエンジン制御装置1に伝達され、エンジン10自体の機械的な損失分のトルク等を推定する際に用いられる。
[1−4.制御系]
この車両には電子制御装置として、エンジン制御装置1(Engine Electronic Control Unit,制御装置)が設けられる。このエンジン制御装置1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、車載ネットワーク上には、例えばブレーキ制御装置,変速機制御装置,車両安定制御装置,空調制御装置,電装品制御装置といったさまざまな公知の電子制御装置が、互いに通信可能に接続される。以下、エンジン制御装置1以外の電子制御装置のことを外部制御システムと呼び、外部制御システムによって制御される装置のことを外部負荷装置と呼ぶ。
この車両には電子制御装置として、エンジン制御装置1(Engine Electronic Control Unit,制御装置)が設けられる。このエンジン制御装置1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、車載ネットワーク上には、例えばブレーキ制御装置,変速機制御装置,車両安定制御装置,空調制御装置,電装品制御装置といったさまざまな公知の電子制御装置が、互いに通信可能に接続される。以下、エンジン制御装置1以外の電子制御装置のことを外部制御システムと呼び、外部制御システムによって制御される装置のことを外部負荷装置と呼ぶ。
エンジン制御装置1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系および動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン10の各シリンダー19に対して供給される空気量や燃料噴射量、各シリンダー19の点火時期を制御するものである。
ここでは、エンジン10に要求されるトルクの大きさを基準としたトルクベース制御が実施される。エンジン制御装置1の具体的な制御対象としては、インジェクター18から噴射される燃料量や噴射時期,点火プラグ13での点火時期,スロットルバルブ23の開度などが挙げられる。
ここでは、エンジン10に要求されるトルクの大きさを基準としたトルクベース制御が実施される。エンジン制御装置1の具体的な制御対象としては、インジェクター18から噴射される燃料量や噴射時期,点火プラグ13での点火時期,スロットルバルブ23の開度などが挙げられる。
エンジン制御装置1で実施されるトルクベース制御では、制御操作に対する応答性が異なる2種類の制御、すなわち、低応答トルク制御と高応答トルク制御とがともに実施される。
前者の低応答トルク制御は、例えばスロットルバルブ23の開度操作に代表される吸入空気量操作によってトルクを制御するものである。
また、後者の高応答トルク制御は、例えば点火時期操作によってトルクを制御するものである。これらの各制御は応答性だけでなくトルクの調整幅も相違するため、車両の走行状態やエンジン10の運転状態に応じて適宜実施され、あるいは各制御による操作量が協調的に調整される。
前者の低応答トルク制御は、例えばスロットルバルブ23の開度操作に代表される吸入空気量操作によってトルクを制御するものである。
また、後者の高応答トルク制御は、例えば点火時期操作によってトルクを制御するものである。これらの各制御は応答性だけでなくトルクの調整幅も相違するため、車両の走行状態やエンジン10の運転状態に応じて適宜実施され、あるいは各制御による操作量が協調的に調整される。
また、本実施形態のトルクベース制御では、エンジン10に要求されるトルクとして、3種類の要求トルクを想定する。
第1の要求トルクは運転者の加速要求に対応するものであり、第2の要求トルクは外部負荷装置からの要求に対応するものである。これらの要求トルクはともに、エンジン10に作用する負荷に基づいて算出されるトルクといえる。
一方、第3の要求トルクは、エンジン10の実回転数Neを目標アイドル回転数に維持するアイドルフィードバック制御(アイドル制御)のためのものであり、エンジン10に外的な負荷が作用していないいわゆる無負荷状態であっても考慮される要求トルクである。
第1の要求トルクは運転者の加速要求に対応するものであり、第2の要求トルクは外部負荷装置からの要求に対応するものである。これらの要求トルクはともに、エンジン10に作用する負荷に基づいて算出されるトルクといえる。
一方、第3の要求トルクは、エンジン10の実回転数Neを目標アイドル回転数に維持するアイドルフィードバック制御(アイドル制御)のためのものであり、エンジン10に外的な負荷が作用していないいわゆる無負荷状態であっても考慮される要求トルクである。
エンジン制御装置1は、低応答トルク制御と高応答トルク制御とのそれぞれについて、上記の3種類の要求トルクをエンジン10の運転条件に応じて自動的に切り換えながら、エンジン10が出力すべきトルクの目標値である目標トルクを演算し、その目標トルクが得られるように、燃料量や噴射時期,吸気量,点火時期等を制御する。
さらに、エンジン制御装置1は、車両の走行状態に応じて自動的に各シリンダー19への燃料供給を一時的にカットする燃料カット制御を実施する。ここでいう燃料カット制御とは、エンジン10の作動中に所定の燃料カット条件が成立したときに、少なくとも一つ以上の気筒においてインジェクター18から噴射される燃料の噴射量を減少させ、所定の復帰条件が成立したときに燃料供給を再開する制御である。
燃料噴射量の減少率は、例えばエアフローセンサー32で検出された吸気流量QINに応じた燃料噴射量を基準として、0〜100%の範囲内で設定されうる。なお、燃料噴射量をゼロにした場合には、燃料カット制御の実施中におけるエンジンの燃焼トルクがゼロとなる。
燃料噴射量の減少率は、例えばエアフローセンサー32で検出された吸気流量QINに応じた燃料噴射量を基準として、0〜100%の範囲内で設定されうる。なお、燃料噴射量をゼロにした場合には、燃料カット制御の実施中におけるエンジンの燃焼トルクがゼロとなる。
以下、エンジン制御装置1で実施されるトルクベース制御のうち、燃料カット制御の前後に実施される高応答トルク制御の目標トルク(点火時期の演算に用いられる目標トルク)の算出手法について詳述する。
また、本実施形態では、図示平均有効圧Pi(エンジン10の指圧線図に基づいて算出される仕事を行程容積で割った圧力値)を用いてトルクの大きさを表現する。つまり、本実施形態では、エンジン10で生じる力のモーメントのことだけでなく、エンジン10のピストン16の頂面に作用する平均有効圧(例えば、図示平均有効圧Piや正味平均有効圧Pe)で表現されたトルク相当量(トルクに対応する圧力)のことも便宜的に「トルク」と呼ぶ。
また、本実施形態では、図示平均有効圧Pi(エンジン10の指圧線図に基づいて算出される仕事を行程容積で割った圧力値)を用いてトルクの大きさを表現する。つまり、本実施形態では、エンジン10で生じる力のモーメントのことだけでなく、エンジン10のピストン16の頂面に作用する平均有効圧(例えば、図示平均有効圧Piや正味平均有効圧Pe)で表現されたトルク相当量(トルクに対応する圧力)のことも便宜的に「トルク」と呼ぶ。
[2.制御構成]
図1に示すように、エンジン制御装置1の入力側には、アクセル開度センサー31,エアフローセンサー32,エンジン回転数センサー33,冷却水温センサー34,油温センサー35が接続される。また、エンジン制御装置1の出力側には、トルクベース制御の制御対象である点火プラグ13,インジェクター18,スロットルバルブ23等が接続される。
図1に示すように、エンジン制御装置1の入力側には、アクセル開度センサー31,エアフローセンサー32,エンジン回転数センサー33,冷却水温センサー34,油温センサー35が接続される。また、エンジン制御装置1の出力側には、トルクベース制御の制御対象である点火プラグ13,インジェクター18,スロットルバルブ23等が接続される。
このエンジン制御装置1には、要求トルク演算部2,目標トルク演算部3,燃料カット制御部4,開始前トルク演算部5,終了後トルク演算部6および点火時期演算部7が設けられる。これらの要素の各機能は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
[2−1.要求トルク演算部]
要求トルク演算部2(要求トルク演算手段)は、運転者から要求されるトルクと外部制御システムから要求されるトルクとを集約して、エンジン10への要求トルクを設定するものである。
ここでは、四種類の要求トルク、すなわち、アクセル要求トルクPiAPS,アイドル目標トルクPiNeFB,点火制御用要求トルクPiEXT_SA,吸気制御用要求トルクPiEXTが演算される。
要求トルク演算部2(要求トルク演算手段)は、運転者から要求されるトルクと外部制御システムから要求されるトルクとを集約して、エンジン10への要求トルクを設定するものである。
ここでは、四種類の要求トルク、すなわち、アクセル要求トルクPiAPS,アイドル目標トルクPiNeFB,点火制御用要求トルクPiEXT_SA,吸気制御用要求トルクPiEXTが演算される。
アイドル目標トルクPiNeFBは、エンジン10の実回転数Neを目標アイドル回転数NeOBJに維持するのに要求されるトルクである。また、アクセル要求トルクPiAPSは、運転者から要求されているトルク(アクセルペダルの踏み込み操作量に応じたトルク)である。ここでは、アイドル目標トルクPiNeFBおよびアクセル要求トルクPiAPSに基づいて、点火制御用要求トルクPiEXT_SAと吸気制御用要求トルクPiEXTとが演算される。
点火制御用要求トルクPiEXT_SAは、点火プラグ13の点火時期制御で用いられるトルクである。点火時期制御は、実際に制御を実施してからエンジン10でトルクが発生するまでのタイムラグが短く、応答性の高い制御である。ただし、点火時期制御によって調整可能なトルクの幅は比較的小さい。
一方、吸気制御用要求トルクPiEXTは、スロットルバルブ23の吸気量制御で用いられるトルクである。吸気量制御は、実際に制御を実施してからエンジン10でトルクが発生するまでのタイムラグが長く、点火時期制御と比較して応答性にやや劣る制御である。ただし、吸気量制御によって調整可能なトルクの幅は、点火時期制御によるものよりも大きい。
一方、吸気制御用要求トルクPiEXTは、スロットルバルブ23の吸気量制御で用いられるトルクである。吸気量制御は、実際に制御を実施してからエンジン10でトルクが発生するまでのタイムラグが長く、点火時期制御と比較して応答性にやや劣る制御である。ただし、吸気量制御によって調整可能なトルクの幅は、点火時期制御によるものよりも大きい。
要求トルク演算部2での演算プロセスを図2に例示する。この要求トルク演算部2には、アクセル要求トルク演算部2a,目標アイドル回転数設定部2b,アイドル目標トルク演算部2cおよび外部要求トルク演算部2dが設けられる。
アクセル要求トルク演算部2aは、運転者の運転操作によってエンジン10に要求されているトルクをアクセル要求トルクPiAPSとして演算するものである。ここではまず、実回転数Neとアクセル開度APSとに基づいて、アクセル要求トルク瞬時値PiAPS0が演算される。このアクセル要求トルク瞬時値PiAPS0は、アクセルペダルの踏み込み操作に対して即時的に対応する大きさを持つトルクである。アクセル要求トルク演算部2aは、例えば予め設定された実回転数Neおよびアクセル開度APSとアクセル要求トルク瞬時値PiAPS0との対応マップ,数式,関係式等に基づき、アクセル要求トルク瞬時値PiAPS0を演算する。
アクセル要求トルク演算部2aは、運転者の運転操作によってエンジン10に要求されているトルクをアクセル要求トルクPiAPSとして演算するものである。ここではまず、実回転数Neとアクセル開度APSとに基づいて、アクセル要求トルク瞬時値PiAPS0が演算される。このアクセル要求トルク瞬時値PiAPS0は、アクセルペダルの踏み込み操作に対して即時的に対応する大きさを持つトルクである。アクセル要求トルク演算部2aは、例えば予め設定された実回転数Neおよびアクセル開度APSとアクセル要求トルク瞬時値PiAPS0との対応マップ,数式,関係式等に基づき、アクセル要求トルク瞬時値PiAPS0を演算する。
また、アクセル要求トルク瞬時値PiAPS0に時間遅れのフィルタ処理を施したものが、最終的なアクセル要求トルクPiAPSとして演算される。このフィルタ処理は、例えば一次遅れ処理や二次遅れ処理である。なお、外部負荷装置の作動状態に応じて、アクセル要求トルクPiAPSの大きさを変更する構成としてもよい。ここで演算されたアクセル要求トルク瞬時値PiAPS0およびアクセル要求トルクPiAPSの情報は、外部要求トルク演算部2d,目標トルク演算部3,開始前トルク演算部5および終了後トルク演算部6に伝達される。
目標アイドル回転数設定部2bは、エンジン10がアイドル運転状態のときの目標値となる回転数を目標アイドル回転数NeOBJ(いわゆるアイドル回転数)として設定するものである。アイドル運転状態は、例えば車両の走行速度やアクセル開度APS,冷却水水温WT等に応じて判定される。また、目標アイドル回転数NeOBJの値は、冷却水水温WTや油温OTや他の運転条件等に応じて設定される。なお、外部負荷装置の作動状態に応じて目標アイドル回転数NeOBJの大きさを変更する構成としてもよい。ここで演算された目標アイドル回転数NeOBJの情報は、アイドル目標トルク演算部2c,目標トルク演算部3および開始前トルク演算部5に伝達される。
アイドル目標トルク演算部2cは、目標アイドル回転数設定部2bで設定された目標アイドル回転数NeOBJに対応するトルク(実回転数Neを目標アイドル回転数NeOBJに維持するために要するトルク)をアイドル目標トルクPiNeFBとして演算するものである。ここで演算されたアイドル目標トルクPiNeFBは、外部要求トルク演算部2dおよび目標トルク演算部3に伝達される。
外部要求トルク演算部2dは、アイドル目標トルク演算部2cで演算されたアイドル目標トルクPiNeFBとアクセル要求トルク演算部2aで演算されたアクセル要求トルクPiAPSとをベースとして、外部制御システムから伝達される外部負荷装置からのトルク要求を加味した2種類の要求トルクを演算するものである。
第1の要求トルクは点火制御用要求トルクPiEXT_SAであり、第2の要求トルクは吸気制御用要求トルクPiEXTである。これらの点火制御用要求トルクPiEXT_SAおよび吸気制御用要求トルクPiEXTは、互いに独立して外部要求トルク演算部2d内で演算される。
前者の要求トルクは高応答トルク制御用の要求トルクであり、後者の要求トルクは低応答トルク制御用の要求トルクである。ここで演算された各要求トルクは、ともに目標トルク演算部3に伝達される。
第1の要求トルクは点火制御用要求トルクPiEXT_SAであり、第2の要求トルクは吸気制御用要求トルクPiEXTである。これらの点火制御用要求トルクPiEXT_SAおよび吸気制御用要求トルクPiEXTは、互いに独立して外部要求トルク演算部2d内で演算される。
前者の要求トルクは高応答トルク制御用の要求トルクであり、後者の要求トルクは低応答トルク制御用の要求トルクである。ここで演算された各要求トルクは、ともに目標トルク演算部3に伝達される。
[2−2.目標トルク演算部]
目標トルク演算部3は、要求トルク演算部2で演算された各種要求トルクに基づき、2種類の制御目標としての目標トルクを演算するものである。ここでは、点火制御用目標トルクPiTGTと、吸気制御用目標トルクPiETV_STDとが演算される。スロットルバルブ23のスロットル開度や燃料噴射量は、ここで演算された吸気制御用目標トルクPiETV_STDに基づいて制御される。また、点火制御用目標トルクPiTGTは、開始前トルク演算部5および終了後トルク演算部6で演算される制限トルクPiFCRと併せて、点火時期制御に用いられる。
目標トルク演算部3は、要求トルク演算部2で演算された各種要求トルクに基づき、2種類の制御目標としての目標トルクを演算するものである。ここでは、点火制御用目標トルクPiTGTと、吸気制御用目標トルクPiETV_STDとが演算される。スロットルバルブ23のスロットル開度や燃料噴射量は、ここで演算された吸気制御用目標トルクPiETV_STDに基づいて制御される。また、点火制御用目標トルクPiTGTは、開始前トルク演算部5および終了後トルク演算部6で演算される制限トルクPiFCRと併せて、点火時期制御に用いられる。
目標トルク演算部3での演算プロセスを図3に例示する。目標トルク演算部3には、要求トルク演算部2で演算されたアイドル目標トルクPiNeFB,アクセル要求トルクPiAPS,点火制御用要求トルクPiEXT_SAおよび吸気制御用要求トルクPiEXTが入力される。この目標トルク演算部3には、第1選択部3a,第2選択部3bおよび吸気遅れ補正部3cが設けられる。
第1選択部3aは、点火制御用要求トルクPiEXT_SA,アクセル要求トルクPiAPSおよびアイドル目標トルクPiNeFBのうちの何れか一つを点火制御用のトルクの目標値として選択するものである。また、第2選択部3bは、吸気制御用要求トルクPiEXT,アクセル要求トルクPiAPSおよびアイドル目標トルクPiNeFBのうちの何れか一つを吸気制御用のトルクの目標値として選択するものである。これらの第1選択部3a,第2選択部3bは、例えば外部制御システムからのトルク要求の有無やエンジン10のアイドル運転の要否等といった情報に基づいて、点火時期制御,吸気量制御のそれぞれで目標とすべきトルク値を選択する。第1選択部3aで選択されたトルク値は点火制御用目標トルクPiTGTとして点火時期演算部7に伝達され、第2選択部3bで選択されたトルク値は吸気遅れ補正部3cに伝達される。
吸気遅れ補正部3cは、吸気量制御で用いられる目標トルクの算出に際し、スロットルバルブ23からシリンダー19までの吸気遅れに応じた補正演算を行うものである。ここでは、第2選択部3bで選択されたトルク値に対して時間遅れのフィルタ処理を施したものが、吸気制御用目標トルクPiETV_STDとして演算される。このフィルタ処理は、例えば一次遅れ処理や二次遅れ処理である。
ここで演算された吸気制御用目標トルクPiETV_STDの値は、図示しない吸気量制御部に伝達され、これに基づいて吸気量制御が実施される。例えば、吸気制御用目標トルクPiETV_STDに対応する空気量の目標値が演算されるとともに、その空気量をシリンダー19内に導入するためのスロットル開度やバルブリフト量,バルブタイミング等が演算され、スロットルバルブ23,吸気弁14,排気弁15等が制御される。
ここで演算された吸気制御用目標トルクPiETV_STDの値は、図示しない吸気量制御部に伝達され、これに基づいて吸気量制御が実施される。例えば、吸気制御用目標トルクPiETV_STDに対応する空気量の目標値が演算されるとともに、その空気量をシリンダー19内に導入するためのスロットル開度やバルブリフト量,バルブタイミング等が演算され、スロットルバルブ23,吸気弁14,排気弁15等が制御される。
[2−3.燃料カット制御部]
燃料カット制御部4(燃料カット制御手段)は、エンジン10の燃料カットを実施するものである。ここでは、燃料カットに伴う燃焼トルクの変動を抑制するために、一般的な燃料カット制御に加えて、漸減制御(トルク低減制御)と漸増制御とが併せて実施される。
燃料カット制御部4(燃料カット制御手段)は、エンジン10の燃料カットを実施するものである。ここでは、燃料カットに伴う燃焼トルクの変動を抑制するために、一般的な燃料カット制御に加えて、漸減制御(トルク低減制御)と漸増制御とが併せて実施される。
漸減制御とは、エンジン10の点火時期を変化させたときの可燃限界に対応する下限トルクPiMINに向かって、点火制御用目標トルクPiTGTを徐々に減少させる制御であり、燃料カット制御の開始前に実施される。
一方、漸増制御とは、点火制御用目標トルクPiTGTをアクセル要求トルクPiAPSに向かって徐々に漸増させる制御であり、燃料カット制御の終了後に実施される。
これらの制御では、点火制御用目標トルクPiTGTの上限値を設定して点火制御用目標トルクPiTGTを減少させることにより、エンジン10の燃焼トルクを抑制する制御が実施される。以下、点火制御用目標トルクPiTGTの上限値として機能する値のことを「制限トルクPiFCR」と呼ぶ。
一方、漸増制御とは、点火制御用目標トルクPiTGTをアクセル要求トルクPiAPSに向かって徐々に漸増させる制御であり、燃料カット制御の終了後に実施される。
これらの制御では、点火制御用目標トルクPiTGTの上限値を設定して点火制御用目標トルクPiTGTを減少させることにより、エンジン10の燃焼トルクを抑制する制御が実施される。以下、点火制御用目標トルクPiTGTの上限値として機能する値のことを「制限トルクPiFCR」と呼ぶ。
燃料カット制御部4では、漸減制御,燃料カット制御および漸増制御の開始条件および終了条件が判定される。
漸減制御の開始条件は、例えば以下の条件1,条件2がともに成立し、かつ、条件3が成立することである。
条件1:エンジン10の実回転数Neが第1の所定数Ne1以上である
条件2:アクセル開度APSがゼロである
条件3:条件1および2の成立時から所定時間T1経過した
漸減制御の開始条件は、例えば以下の条件1,条件2がともに成立し、かつ、条件3が成立することである。
条件1:エンジン10の実回転数Neが第1の所定数Ne1以上である
条件2:アクセル開度APSがゼロである
条件3:条件1および2の成立時から所定時間T1経過した
条件1は、燃料カットを実施したときにエンジン10の回転安定性が維持される程度の実回転数Neであるかを判断するための条件である。第1の所定数Ne1は、少なくともアイドル回転数NeOBJよりも高い回転数とされる。
また、条件2は、アクセルペダルの踏み込み操作が解除されたことを判断するための条件である。なお、アクセル開度APSを判定する代わりに、アイドルスイッチがオン状態であることを判定してもよい。
また、条件3の所定時間T1とは、本実施の形態では点火回数IGが所定点火回数IG1以上となる時間である。
また、条件2は、アクセルペダルの踏み込み操作が解除されたことを判断するための条件である。なお、アクセル開度APSを判定する代わりに、アイドルスイッチがオン状態であることを判定してもよい。
また、条件3の所定時間T1とは、本実施の形態では点火回数IGが所定点火回数IG1以上となる時間である。
条件1および条件2は、従来の一般的な燃料カット制御の開始条件に相当する。
一方、本実施形態では、これらの条件が成立してから所定点火回数IG1に対応する時間(上記所定時間T1)が経過した時点から、漸減制御が開始される。所定点火回数IG1は、予め設定された定数としてもよいし、車速Vや実回転数Ne等に応じて設定される変数としてもよい。
なお、漸減制御中に条件1および条件2が成立しなくなった場合(下記条件5または6が成立した場合)には、漸減制御を終了し、通常の走行状態に復帰する。
一方、本実施形態では、これらの条件が成立してから所定点火回数IG1に対応する時間(上記所定時間T1)が経過した時点から、漸減制御が開始される。所定点火回数IG1は、予め設定された定数としてもよいし、車速Vや実回転数Ne等に応じて設定される変数としてもよい。
なお、漸減制御中に条件1および条件2が成立しなくなった場合(下記条件5または6が成立した場合)には、漸減制御を終了し、通常の走行状態に復帰する。
また、漸減制御の終了条件は、以下の条件4が成立することである。
条件4:条件1および2の成立時から所定時間T2経過した
この条件4は、燃料カット制御の開始条件(燃料カット開始条件)でもある。なお、燃料カット開始条件には、当然に上記条件1および2の成立が継続していることが含まれる。すなわち、燃料カット開始条件には、エンジン10の実回転数Neが第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1以上であることが含まれる。
本実施の形態では、条件4の所定時間T2とは、点火回数IGが第2所定点火回数IG2(IG1≦IG2)以上となる時間である。第2所定点火回数IG2は、所定点火回数IG1と同様に、予め設定された定数としてもよいし、車速Vや実回転数Ne等に応じて設定される変数としてもよい。
なお、二つの所定点火回数IG1,IG2が同一値であるとき(所定時間T1,T2が同一値であるとき)、実質的に漸減制御が実施されないことになるため、これらの大小関係をIG1<IG2とすることが好ましい。
また、漸減制御の開始条件ではなく、燃料カット制御の開始条件として上記条件1(エンジン10の回転数)を判定してもよい。
条件4:条件1および2の成立時から所定時間T2経過した
この条件4は、燃料カット制御の開始条件(燃料カット開始条件)でもある。なお、燃料カット開始条件には、当然に上記条件1および2の成立が継続していることが含まれる。すなわち、燃料カット開始条件には、エンジン10の実回転数Neが第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1以上であることが含まれる。
本実施の形態では、条件4の所定時間T2とは、点火回数IGが第2所定点火回数IG2(IG1≦IG2)以上となる時間である。第2所定点火回数IG2は、所定点火回数IG1と同様に、予め設定された定数としてもよいし、車速Vや実回転数Ne等に応じて設定される変数としてもよい。
なお、二つの所定点火回数IG1,IG2が同一値であるとき(所定時間T1,T2が同一値であるとき)、実質的に漸減制御が実施されないことになるため、これらの大小関係をIG1<IG2とすることが好ましい。
また、漸減制御の開始条件ではなく、燃料カット制御の開始条件として上記条件1(エンジン10の回転数)を判定してもよい。
燃料カット制御の終了条件は、例えば以下の条件5または条件6が成立することである。これらの何れかの条件が成立したときに燃料カット制御が終了するとともに、漸増制御が開始される。
条件5:エンジン10の実回転数Neが第2の所定数Ne2(Ne2<Ne1)未満である
条件6:アクセル開度APSがゼロでない
条件5:エンジン10の実回転数Neが第2の所定数Ne2(Ne2<Ne1)未満である
条件6:アクセル開度APSがゼロでない
条件5は、条件1と同様に、エンジン10の回転安定性を考慮して設定される条件である。また、条件6は、条件2に対応するものであり、アクセルペダルが踏み込まれたことを判断するための条件である。アクセル開度APSを判定する代わりに、アイドルスイッチがオフ状態であることを判定してもよい。なお、漸増制御は制限トルクPiFCRがアクセル要求トルクPiAPSに一致するまで継続される。これらの値が一致した時点で漸増制御が終了し、通常の走行状態となる。
燃料カット制御部4は、漸減制御の開始条件が成立すると、開始前トルク演算部5に制御信号を出力して制限トルクPiFCRを演算させる。
また、漸減制御の終了条件(燃料カット制御の開始条件)が成立すると、インジェクター18からの燃料噴射量を削減する(カットする)ための制御信号を出力する。
さらに、燃料カット制御の終了条件(漸増制御の開始条件)が成立すると、インジェクター18からの燃料噴射を再開させるための制御信号を出力するとともに、終了後トルク演算部6に制御信号を出力して、制限トルクPiFCRを演算させる。
また、漸減制御の終了条件(燃料カット制御の開始条件)が成立すると、インジェクター18からの燃料噴射量を削減する(カットする)ための制御信号を出力する。
さらに、燃料カット制御の終了条件(漸増制御の開始条件)が成立すると、インジェクター18からの燃料噴射を再開させるための制御信号を出力するとともに、終了後トルク演算部6に制御信号を出力して、制限トルクPiFCRを演算させる。
このような制御により、燃料カット制御の開始前には、開始前トルク演算部5で制限トルクPiFCRが演算され、これに基づいて点火プラグ13での点火時期が制御される。
また、燃料カット制御の実施中は、燃料噴射量がカットされる。
さらに、燃料カット制御の終了後には、燃料噴射が再開されるとともに終了後トルク演算部6で制限トルクPiFCRが演算され、これに基づいて点火時期が制御される。
また、燃料カット制御の実施中は、燃料噴射量がカットされる。
さらに、燃料カット制御の終了後には、燃料噴射が再開されるとともに終了後トルク演算部6で制限トルクPiFCRが演算され、これに基づいて点火時期が制御される。
[2−4.開始前トルク演算部]
開始前トルク演算部5は、燃料カット制御開始前のトルク低減制御(漸減制御)における制限トルクPiFCRを演算するものである。
制限トルクPiFCRは、燃料カット制御の突入時における点火制御用目標トルクPiTGTの上限値となるトルクであり、エンジン10の燃焼トルクを減少させて燃料カット開始時のトルク段差を小さくするように作用する。
漸減制御では、基本的には制限トルクPiFCRの値が点火制御用目標トルクPiTGTよりも小さい値として演算されるため、制限トルクPiFCRに応じて点火時期の遅角量(リタード量)が制御されることになる。すなわち、トルク低減制御(漸減制御)の実施時には、後述する点火時期演算部7において、目標トルクの低減度合いに合わせて点火時期を遅延(リタード)させることによりエンジン10の出力トルクを低減させる。
開始前トルク演算部5は、燃料カット制御開始前のトルク低減制御(漸減制御)における制限トルクPiFCRを演算するものである。
制限トルクPiFCRは、燃料カット制御の突入時における点火制御用目標トルクPiTGTの上限値となるトルクであり、エンジン10の燃焼トルクを減少させて燃料カット開始時のトルク段差を小さくするように作用する。
漸減制御では、基本的には制限トルクPiFCRの値が点火制御用目標トルクPiTGTよりも小さい値として演算されるため、制限トルクPiFCRに応じて点火時期の遅角量(リタード量)が制御されることになる。すなわち、トルク低減制御(漸減制御)の実施時には、後述する点火時期演算部7において、目標トルクの低減度合いに合わせて点火時期を遅延(リタード)させることによりエンジン10の出力トルクを低減させる。
点火時期の遅角量は、エンジン10が失火しない範囲内で設定される。一方、エンジン10の可燃限界に対応する点火時期は、その時点でのエンジン10の運転条件によって変化する。そこで、開始前トルク演算部5では、可燃限界に対応する下限トルクPiMINを演算し、制限トルクPiFCRをこの下限トルクPiMIN以上の範囲で、下限トルクPiMINに漸近させる制御を実施する。このとき、制限トルクPiFCRの値を必ずしも下限トルクPiMINに完全に一致させる必要はない。
図4に示すように、開始前トルク演算部5には、下限トルク演算部5a、制限トルク演算部5bおよび制限トルク補正部5cが設けられる。
下限トルク演算部5aは、その時点でのエンジン10の運転状態に基づき、下限トルクPiMINを演算するものである。ここでは、可燃限界に相当する運転状態におけるエンジン回転数,吸気量,点火時期,燃料噴射量等に基づいて、下限トルクPiMINの値が設定される。冷却水水温WTや油温OTや他の運転条件等に応じて下限トルクPiMINの値を補正してもよい。ここで演算された下限トルクPiMINの値は、制限トルク演算部5bに伝達される。
下限トルク演算部5aは、その時点でのエンジン10の運転状態に基づき、下限トルクPiMINを演算するものである。ここでは、可燃限界に相当する運転状態におけるエンジン回転数,吸気量,点火時期,燃料噴射量等に基づいて、下限トルクPiMINの値が設定される。冷却水水温WTや油温OTや他の運転条件等に応じて下限トルクPiMINの値を補正してもよい。ここで演算された下限トルクPiMINの値は、制限トルク演算部5bに伝達される。
制限トルク演算部5bは、漸減制御の開始時点で実際にエンジン10が出力しているトルクと下限トルクPiMINとに基づき、制限トルクPiFCRを演算するものである。まず、制限トルクPiFCRの初期値は、漸減制御が開始された時点でのアクセル要求トルクPiAPSと同一値に設定される。あるいは、その時点の点火制御用目標トルクPiTGTや後述する実目標トルクPiACT,またはこれらに相関する値を制限トルクPiFCRの初期値としてもよい。
続いて、制限トルク演算部5bは、制限トルクPiFCRが徐々に下限トルクPiMINに向かって漸減するように時間遅れのフィルタ処理を施して、制限トルクPiFCRの値を変化させる。このフィルタ処理は、例えば下限トルクPiMINに対する一次遅れ処理や二次遅れ処理であり、制限トルクPiFCRに乗じられるゲインを減少させつつ下限トルクPiMINに乗じられるゲインを増加させ、これらの加算値をフィルタ処理後の制限トルクPiFCRの値とする。ここで演算された制限トルクPiFCRの値は、点火時期演算部7に伝達される。
制限トルク補正部5c(トルク補正手段)は、エンジン10の実回転数Neと、第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1との差分ΔNeに基づいて、トルク低減制御時における目標トルク、すなわち制限トルクPiFCRの低減度合いを補正する。
制限トルク補正部5cは、エンジン10の実回転数Neと、第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1との差分ΔNeが小さいほど、目標トルク(制限トルクPiFCR)の低減度合いを小さくする。
これは、漸減制御(目標トルクの低減)によりエンジン10の実回転数Neが低下し多結果、燃料カットの開始前に実回転数Neが燃料カット許可回転数Ne1を下回るのを避けるため、制限トルクPiFCRを調整するためである。
制限トルク補正部5cは、例えばトルク低減制御開始直前(所定時間前)におけるエンジン10の実回転数Nを取得して制限トルクPiFCRの低減度合いの補正量を決定する。上記所定時間は、予め設定された定数としてもよいし、車速Vなどのパラメーターに応じて設定される変数としてもよい。また、制限トルク補正部5cは、トルク低減制御開始後も、適宜その時点における実回転数Neを取得して補正量を修正してもよい。
制限トルク補正部5cは、エンジン10の実回転数Neと、第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1との差分ΔNeが小さいほど、目標トルク(制限トルクPiFCR)の低減度合いを小さくする。
これは、漸減制御(目標トルクの低減)によりエンジン10の実回転数Neが低下し多結果、燃料カットの開始前に実回転数Neが燃料カット許可回転数Ne1を下回るのを避けるため、制限トルクPiFCRを調整するためである。
制限トルク補正部5cは、例えばトルク低減制御開始直前(所定時間前)におけるエンジン10の実回転数Nを取得して制限トルクPiFCRの低減度合いの補正量を決定する。上記所定時間は、予め設定された定数としてもよいし、車速Vなどのパラメーターに応じて設定される変数としてもよい。また、制限トルク補正部5cは、トルク低減制御開始後も、適宜その時点における実回転数Neを取得して補正量を修正してもよい。
図5は、制限トルク補正部5cによる制限トルクPiFCRの補正を模式的に示すグラフである。
図5において、横軸は実回転数Neと第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1との差分ΔNeであり、縦軸は制限トルクPiFCRに加算するトルク補正値である。
制限トルク補正部5cは、図5のグラフから実回転数Neと第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1との差分に対応するトルク補正値を読み出し、制限トルク演算部5bで算出された制限トルクPiFCRにトルク補正値を加算することにより目標トルクの補正を行う。
図5に例示した補正値のグラフは、上記差分が0以上所定値D1未満までの範囲ではトルク補正値がC1で一定(定数)であり、上記差分が所定値D1以上D2未満の範囲ではトルク補正値がC1から0に向かって直線的に小さくなり、上記差分が所定値D2以上の範囲ではトルク補正値が0になっている。
すなわち、トルク補正値は、上記差分が小さいほど大きく、差分が大きいほど小さい値となっている。これは、差分が小さい場合には、トルク低減制御によりエンジン回転数が低下した結果、第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1を下回る可能性が高い状態であり、目標トルクを大きく(目標トルクの低減度合いを小さく)するのが好ましい状態であるためである。また、差分が大きい場合には、トルク低減制御によりエンジン回転数が低下しても、第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1を下回る可能性が低い状態であり、目標トルクを比較的小さく(目標トルクの低減度合いを大きく)しても問題ないためである。
なお、図5に例示した補正値のグラフは一例であり、例えば定数部分をなくして差分が大きくなるほど直線的(または指数関数的)に補正値が小さくなるようにしてもよい。
また、上述した例では、制限トルクPiFCRに補正値を加算することにより目標トルクの補正を行ったが、これに限らず、例えば制限トルク演算部5bにおけるフィルタ処理時のゲインを調整することにより補正を行うなど、制限トルク補正部5cによる補正方法には、従来公知の様々な方法が適用可能である。
図5において、横軸は実回転数Neと第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1との差分ΔNeであり、縦軸は制限トルクPiFCRに加算するトルク補正値である。
制限トルク補正部5cは、図5のグラフから実回転数Neと第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1との差分に対応するトルク補正値を読み出し、制限トルク演算部5bで算出された制限トルクPiFCRにトルク補正値を加算することにより目標トルクの補正を行う。
図5に例示した補正値のグラフは、上記差分が0以上所定値D1未満までの範囲ではトルク補正値がC1で一定(定数)であり、上記差分が所定値D1以上D2未満の範囲ではトルク補正値がC1から0に向かって直線的に小さくなり、上記差分が所定値D2以上の範囲ではトルク補正値が0になっている。
すなわち、トルク補正値は、上記差分が小さいほど大きく、差分が大きいほど小さい値となっている。これは、差分が小さい場合には、トルク低減制御によりエンジン回転数が低下した結果、第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1を下回る可能性が高い状態であり、目標トルクを大きく(目標トルクの低減度合いを小さく)するのが好ましい状態であるためである。また、差分が大きい場合には、トルク低減制御によりエンジン回転数が低下しても、第1の所定数(燃料カット許可回転数)Ne1を下回る可能性が低い状態であり、目標トルクを比較的小さく(目標トルクの低減度合いを大きく)しても問題ないためである。
なお、図5に例示した補正値のグラフは一例であり、例えば定数部分をなくして差分が大きくなるほど直線的(または指数関数的)に補正値が小さくなるようにしてもよい。
また、上述した例では、制限トルクPiFCRに補正値を加算することにより目標トルクの補正を行ったが、これに限らず、例えば制限トルク演算部5bにおけるフィルタ処理時のゲインを調整することにより補正を行うなど、制限トルク補正部5cによる補正方法には、従来公知の様々な方法が適用可能である。
[2−5.終了後トルク演算部]
終了後トルク演算部6(加算手段)は、燃料カット制御の終了後(漸増制御)における制限トルクPiFCRを演算するものである。ここで演算される制限トルクPiFCRは、点火制御用目標トルクPiTGTの増加勾配に制限をかけるためのトルクであり、アクセル要求トルクPiAPS(またはこれに相関するパラメーター)に向かって漸増するように制御される。
なお、本実施の形態では、漸増制御の内容は従来と同様であるので、説明を省略する。
終了後トルク演算部6(加算手段)は、燃料カット制御の終了後(漸増制御)における制限トルクPiFCRを演算するものである。ここで演算される制限トルクPiFCRは、点火制御用目標トルクPiTGTの増加勾配に制限をかけるためのトルクであり、アクセル要求トルクPiAPS(またはこれに相関するパラメーター)に向かって漸増するように制御される。
なお、本実施の形態では、漸増制御の内容は従来と同様であるので、説明を省略する。
[2−6.点火時期演算部]
点火時期演算部7(点火時期制御手段)は、目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPiTGTと、開始時トルク演算部5または終了後トルク演算部6で演算された制限トルクPiFCRとに基づいて、点火プラグ13の点火時期を制御するものである。
点火時期演算部7での演算プロセスを図6に例示する。
点火時期演算部7には、実充填効率演算部7a,MBT演算部7b,実トルク演算部7c,最小値選択部7d,点火指標演算部7e,リタード量演算部7fおよび減算部7gが設けられる。
点火時期演算部7(点火時期制御手段)は、目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPiTGTと、開始時トルク演算部5または終了後トルク演算部6で演算された制限トルクPiFCRとに基づいて、点火プラグ13の点火時期を制御するものである。
点火時期演算部7での演算プロセスを図6に例示する。
点火時期演算部7には、実充填効率演算部7a,MBT演算部7b,実トルク演算部7c,最小値選択部7d,点火指標演算部7e,リタード量演算部7fおよび減算部7gが設けられる。
実充填効率演算部7aは、吸気流量QINに基づき、制御対象の気筒の実際の充填効率を実充填効率Ecとして演算するものである。
ここでは、制御対象の気筒について、直前の一回の吸気行程(ピストンが上死点から下死点に移動するまでの一行程)の間にエアフローセンサー32で検出された吸気流量QINの合計から、制御対象の気筒に実際に吸入された空気量が演算され、実充填効率Ecが演算される。ここで演算された実充填効率Ecは、MBT演算部7bおよび実トルク演算部7cに伝達される。
ここでは、制御対象の気筒について、直前の一回の吸気行程(ピストンが上死点から下死点に移動するまでの一行程)の間にエアフローセンサー32で検出された吸気流量QINの合計から、制御対象の気筒に実際に吸入された空気量が演算され、実充填効率Ecが演算される。ここで演算された実充填効率Ecは、MBT演算部7bおよび実トルク演算部7cに伝達される。
MBT演算部7bは、実充填効率演算部7aで演算された実充填効率Ecおよび実回転数Neに基づき、最大のトルクを発生させる最少進角点火時期(いわゆるMBT)を演算するものである。以下、点火時期を表す記号としてSAを用いる。
また、点火時期SAのうちの最少進角点火時期を意味するときには、SAMBTと表記する。
MBT演算部7bは、例えば図7に示すように、実充填効率Ec,点火時期SAおよび理論空燃比で発生するトルクの対応関係を実回転数Ne毎のマップや数式として記憶しており、これを用いて点火時期SAMBTを演算する。ここで演算された点火時期SAMBTは減算部7gに伝達される。
なお、図7のグラフでは、実充填効率Ecが所定値Ec1であるときの点火時期SAMBTがSA1であり、実充填効率Ecが所定値Ec2であるときの点火時期SAMBTがSA2である。
また、点火時期SAのうちの最少進角点火時期を意味するときには、SAMBTと表記する。
MBT演算部7bは、例えば図7に示すように、実充填効率Ec,点火時期SAおよび理論空燃比で発生するトルクの対応関係を実回転数Ne毎のマップや数式として記憶しており、これを用いて点火時期SAMBTを演算する。ここで演算された点火時期SAMBTは減算部7gに伝達される。
なお、図7のグラフでは、実充填効率Ecが所定値Ec1であるときの点火時期SAMBTがSA1であり、実充填効率Ecが所定値Ec2であるときの点火時期SAMBTがSA2である。
実トルク演算部7cは、実充填効率演算部7aで演算された実充填効率Ecにて、制御対象の気筒で生じうる最大のトルク(すなわち、実充填効率Ecで点火時期をMBTに設定した場合に発生するトルク)を最大実トルクPiACT_MBTとして演算するものである。ここでいう最大実トルクPiACT_MBTは、図7中に示された各実充填効率Ecでのトルク変動グラフの最大値に対応する。
実トルク演算部7cは、例えばMBT演算部7bに記憶されたこのようなマップや数式を用いて最大実トルクPiACT_MBTを演算する。図7のグラフでは、実充填効率Ecが所定値Ec1であるときの最大実トルクPiACT_MBTがPi1であり、実充填効率Ecが所定値Ec2であるときの最大実トルクPiACT_MBTがPi2である。ここで演算された最大実トルクPiACT_MBTは、点火指標演算部7eに伝達される。
実トルク演算部7cは、例えばMBT演算部7bに記憶されたこのようなマップや数式を用いて最大実トルクPiACT_MBTを演算する。図7のグラフでは、実充填効率Ecが所定値Ec1であるときの最大実トルクPiACT_MBTがPi1であり、実充填効率Ecが所定値Ec2であるときの最大実トルクPiACT_MBTがPi2である。ここで演算された最大実トルクPiACT_MBTは、点火指標演算部7eに伝達される。
なお、図7は、同一の燃焼条件(例えば、エンジン回転数および空燃比が一定の条件)において一定の実充填効率Ecで点火時期SAのみを変化させた場合に生成されるトルクの大きさをグラフ化し、異なる実充填効率Ecでのグラフを重ねて表示したものである。一定の実充填効率Ecでは、横軸の点火時期SAの変化に対して縦軸のトルクが上に凸の曲線となる。このグラフの頂点の座標に対応する点火時期がMBTであり、頂点の座標に対応するトルクが実トルクPiACT_MBTである。
また、実充填効率Ecが増加すると、気筒内に導入される空気量の増大によりトルクが増大するとともに燃焼速度(気筒内での火炎伝播速度)が上昇し、MBTは遅角方向へと移動する。実充填効率Ecが所定値Ec1である場合にMBTから所定値αだけ点火時期SAをリタードさせた際に得られるトルクをPi3とおき、実充填効率Ecが所定値Ec2である場合にMBTから所定値αだけ点火時期をリタードさせた際に得られるトルクをPi4とおくと、これらのトルク間には、(Pi3)/(Pi1) = (Pi4)/(Pi2) の関係が成立する。
最小値選択部7dは、点火制御用目標トルクPiTGTと制限トルクPiFCRとのうち、何れか小さい一方を点火時期制御の目標トルクとして選択するものである。ここで選択された一方のトルク値は、点火指標演算部7eに伝達される。
したがって、開始時トルク演算部5または終了後トルク演算部6で演算された制限トルクPiFCRが目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPiTGTよりも大きくならない限り、制限トルクPiFCRが点火指標演算部7eに伝達される。
したがって、開始時トルク演算部5または終了後トルク演算部6で演算された制限トルクPiFCRが目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPiTGTよりも大きくならない限り、制限トルクPiFCRが点火指標演算部7eに伝達される。
点火指標演算部7eは、最小値選択部7dで選択されたトルク値と実トルク演算部7cで演算された最大実トルクPiACT_MBTとの比Kpi(点火指標,点火効率係数)を演算するものである。
ここでは、実際にエアフローセンサー32で検出された吸気流量QINに基づいて生成されうるトルクの大きさに対してどの程度の割合で点火制御用のトルクが必要なのかが演算される。ここで演算された比Kpiはリタード量演算部7fに伝達される。
ここでは、実際にエアフローセンサー32で検出された吸気流量QINに基づいて生成されうるトルクの大きさに対してどの程度の割合で点火制御用のトルクが必要なのかが演算される。ここで演算された比Kpiはリタード量演算部7fに伝達される。
リタード量演算部7fは、MBTを基準として、比Kpiに応じた大きさのリタード量R(点火時期の遅角量)を演算するものである。
リタード量演算部7fは、例えば図8に示すように、比Kpiとリタード量Rとの対応関係を実回転数Ne毎のマップや数式として記憶しており、これを用いてリタード量Rを演算する。なお、ここでいうリタード量RはMBTを基準としたものであり、比Kpi(0≦Kpi≦1)が1に近づくほどリタード量Rがゼロに近づく特性を持つ。
図8に示すように、目標トルク(制限トルクPiFCRが)が小さいほど比Kpiの値は小さくなるため、点火時期の遅延度合い(リタード量R)は大きくなる。
また、リタード量Rは、例えば図8中に破線で示すように、実回転数Neが大きいほど増大する特性を持つ。ここで演算されたリタード量Rは、減算部7gに伝達される。
リタード量演算部7fは、例えば図8に示すように、比Kpiとリタード量Rとの対応関係を実回転数Ne毎のマップや数式として記憶しており、これを用いてリタード量Rを演算する。なお、ここでいうリタード量RはMBTを基準としたものであり、比Kpi(0≦Kpi≦1)が1に近づくほどリタード量Rがゼロに近づく特性を持つ。
図8に示すように、目標トルク(制限トルクPiFCRが)が小さいほど比Kpiの値は小さくなるため、点火時期の遅延度合い(リタード量R)は大きくなる。
また、リタード量Rは、例えば図8中に破線で示すように、実回転数Neが大きいほど増大する特性を持つ。ここで演算されたリタード量Rは、減算部7gに伝達される。
なお、リタード量RはMBTを基準とした点火時期のずれ(時刻の相違量、ずれ時間、あるいは、これに対応する角度であってクランクシャフト回転角に対する位相のシフト量)の大きさを表す値である。
また、図8に示すように、実回転数Neが定まれば、リタード量Rは比Kpiの値に対応して一意に定められる。
したがって、比KpiもMBTを基準とした点火時期の「ずれ量(進角量または遅角量)」に対応する値といえる。
また、図8に示すように、実回転数Neが定まれば、リタード量Rは比Kpiの値に対応して一意に定められる。
したがって、比KpiもMBTを基準とした点火時期の「ずれ量(進角量または遅角量)」に対応する値といえる。
減算部7gは、リタード量演算部7fで演算されたリタード量Rに基づいて実行点火時期SAACTを演算するものである。ここでは、例えばMBT演算部7bで演算された点火時期SAMBTからリタード量Rが減算され、実行点火時期SAACTが演算される。
ここで演算された実行点火時期SAACTは、最小値選択部7dで選択されたトルク値に対応するトルクを生じさせる点火時期である。点火時期演算部7は、制御対象の気筒に設けられた点火プラグ13がこの実行点火時期SAACTに点火するように制御信号を出力し、点火時期制御を実行する。
ここで演算された実行点火時期SAACTは、最小値選択部7dで選択されたトルク値に対応するトルクを生じさせる点火時期である。点火時期演算部7は、制御対象の気筒に設けられた点火プラグ13がこの実行点火時期SAACTに点火するように制御信号を出力し、点火時期制御を実行する。
[3.作用]
上記のエンジン制御装置1によるトルク低減制御(漸減制御)および燃料カット制御について、図9を用いて説明する。
図9は、燃料カット時の制御内容の一例を示すタイミングチャートである。
図9Aはアクセルペダルのオンオフ状態、図9Bは所定時間T2(燃料カット開始までの待機時間)のカウント状態、図9Cは所定時間T1(トルク低減制御開始までの待機時間)のカウント状態、図9Dはトルク低減制御実行フラグ、図9Eは燃料カット実行フラグ、図9Fは点火プラグ13の点火時期、図9Gは点火時期制御の目標トルク、図9Hはエンジン10の実回転数Neである。
上記のエンジン制御装置1によるトルク低減制御(漸減制御)および燃料カット制御について、図9を用いて説明する。
図9は、燃料カット時の制御内容の一例を示すタイミングチャートである。
図9Aはアクセルペダルのオンオフ状態、図9Bは所定時間T2(燃料カット開始までの待機時間)のカウント状態、図9Cは所定時間T1(トルク低減制御開始までの待機時間)のカウント状態、図9Dはトルク低減制御実行フラグ、図9Eは燃料カット実行フラグ、図9Fは点火プラグ13の点火時期、図9Gは点火時期制御の目標トルク、図9Hはエンジン10の実回転数Neである。
図9Aに示すように、時刻t0に車両走行中にアクセルペダルの踏み込みが解除され(アクセルオフ)、条件1および条件2が成立すると、条件3の所定時間T1および条件4の所定時間T1のカウント、すなわち点火回数IGの計測が開始される(図9Bおよび図9C)。
また、図9Gに示すように、アクセルペダルがオフになった時刻t0以降、アクセル要求トルクPiAPSは0となり、点線で示すアイドル目標トルクPiNeFB(より詳細には、アイドル目標トルクPiNeFB+外部負荷装置からのトルク要求)に向かって目標トルクが低下していく。
また、図9Hに示すように、目標トルクの低下により、エンジン10の実回転数Neも低下していく。
また、図9Gに示すように、アクセルペダルがオフになった時刻t0以降、アクセル要求トルクPiAPSは0となり、点線で示すアイドル目標トルクPiNeFB(より詳細には、アイドル目標トルクPiNeFB+外部負荷装置からのトルク要求)に向かって目標トルクが低下していく。
また、図9Hに示すように、目標トルクの低下により、エンジン10の実回転数Neも低下していく。
時刻t0から所定時間T1が経過した(点火回数IGが所定点火回数IG1以上となった)時刻t1には条件3が成立する。この時、図9Dに示すようにトルク低減制御実施フラグが立ち上がり、トルク低減制御(漸減制御)が開始される。
また、制限トルク補正部5cは、現時点のエンジン10の実回転数Ne(図9H参照)と燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeを算出する。図9の例では、差分ΔNeは十分大きく(例えば図5における所定値D2以上)であり、制限トルクの補正の必要はないものとする。
トルク低減制御(漸減制御)が開始されると、目標トルク=制限トルクPiFCRとなり、下限トルクPiMINに向かって漸減するように目標トルクが設定される。目標トルク=制限トルクPiFCRとなることにより、図9Fに示すように点火プラグ13の点火時期がトルク低減制御開始前よりもリタードし、エンジン10の出力トルクが低減する。
また、制限トルク補正部5cは、現時点のエンジン10の実回転数Ne(図9H参照)と燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeを算出する。図9の例では、差分ΔNeは十分大きく(例えば図5における所定値D2以上)であり、制限トルクの補正の必要はないものとする。
トルク低減制御(漸減制御)が開始されると、目標トルク=制限トルクPiFCRとなり、下限トルクPiMINに向かって漸減するように目標トルクが設定される。目標トルク=制限トルクPiFCRとなることにより、図9Fに示すように点火プラグ13の点火時期がトルク低減制御開始前よりもリタードし、エンジン10の出力トルクが低減する。
時刻t0から所定時間T2が経過した(点火回数IGが所定点火回数IG2以上となった)時刻t2には条件4が成立する。この時、図9Eに示すように燃料カット実施フラグが立ち上がり、燃料カットが開始される。
燃料カットの開始により、図9Gに示すようにエンジン10の出力トルク(目標トルク)は段差状に減少するが、燃料カットに先立ってトルク低減制御を実行しているため、点線で示すトルク低減制御非実行時の目標トルクと比べると、その段差は小さくなっている。
その後、上記条件5または条件6が成立するまで燃料カット制御が継続され、条件5または条件6が成立すると、燃料カット制御が終了する。
燃料カットの開始により、図9Gに示すようにエンジン10の出力トルク(目標トルク)は段差状に減少するが、燃料カットに先立ってトルク低減制御を実行しているため、点線で示すトルク低減制御非実行時の目標トルクと比べると、その段差は小さくなっている。
その後、上記条件5または条件6が成立するまで燃料カット制御が継続され、条件5または条件6が成立すると、燃料カット制御が終了する。
つぎに、エンジン10の実回転数Neと燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeが小さい(例えば図5における所定値D2未満)場合について説明する。
図10は、差分ΔNeが小さい場合の制御内容の一例を示すタイミングチャートである。
図10A〜図10Hの各項目は、図9A〜図9Hと同様である。また、時刻t0からt1までの制御については、図9と同様であるため、説明を省略する。
図10は、差分ΔNeが小さい場合の制御内容の一例を示すタイミングチャートである。
図10A〜図10Hの各項目は、図9A〜図9Hと同様である。また、時刻t0からt1までの制御については、図9と同様であるため、説明を省略する。
図10Hに示すように、のエンジン10の実回転数Neと燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeが小さい(例えば図5における所定値D2未満)場合、図10H中の一点破線で示すように、燃料カット制御が開始される時刻t2までの間に実回転数Neが燃料カット許可回転数Ne1を下回る可能性がある。
この場合、図10G中の実線で示すように、制限トルクPiFCRの補正を行って、トルク低減制御中の目標トルクを制限トルクPiFCR(図10G中一点破線)よりも大きい値とする。すなわち、トルク低減制御時における目標トルクの低減度合いを小さくする。
この場合、図10G中の実線で示すように、制限トルクPiFCRの補正を行って、トルク低減制御中の目標トルクを制限トルクPiFCR(図10G中一点破線)よりも大きい値とする。すなわち、トルク低減制御時における目標トルクの低減度合いを小さくする。
この結果、図10Fに示すように、図9のように目標トルク=制限トルクPiFCRとした場合(図10F中一点破線)と比較して点火時期のリタード量が小さくなり、トルク低減制御によるエンジン10の実回転数Neの低下度合いも小さくなる。
よって、図10H中の実線で示すように、燃料カット制御が開始される時刻t2まで燃料カット許可回転数Ne1を上回る実回転数Neが維持される。
よって、図10H中の実線で示すように、燃料カット制御が開始される時刻t2まで燃料カット許可回転数Ne1を上回る実回転数Neが維持される。
[4.効果]
このように、上記のエンジン制御装置1によれば、エンジン制御装置1では、燃料カット制御の開始前に漸減制御を実施して、点火制御用目標トルクPiTGTを漸減させている。これにより、燃料カット制御への突入時のトルク段差を小さくすることができる。
また、エンジン制御装置1では、エンジン10の実回転数Neと燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeに基づいて、トルク低減制御時における目標トルクの低減度合いを補正するので、トルク低減制御時における目標トルクの値をより適切に決定する上で有利となる。
また、エンジン制御装置1では、エンジン10の実回転数Neと燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeが小さいほど、目標トルクの低減度合いを小さくするので、トルク低減制御に伴ってエンジン回転数が低下した場合でも燃料カット許可回転数を下回るのを防止して、確実に燃料カットを実施する上で有利となる。
また、エンジン制御装置1では、目標トルクの低減度合いに合わせて点火時期を遅延させることによりエンジン10の出力トルクを低減させるのでの、応答性の高いトルク制御を行う上で有利となる。すなわち、燃料カット制御の前後で実施される漸増制御および漸減制御において、点火制御用目標トルクPiTGTを使用しているため、例えば、吸気制御用目標トルクPiETV_STDを増減させてスロットル開度,バルブリフト量,バルブタイミング等を制御する場合と比較して、エンジン10の失火をより確実に回避しつつ、燃料カット制御に起因するトルク変動やショックの抑制効果を高めることができ、運転フィーリングを向上させることができる。
このように、上記のエンジン制御装置1によれば、エンジン制御装置1では、燃料カット制御の開始前に漸減制御を実施して、点火制御用目標トルクPiTGTを漸減させている。これにより、燃料カット制御への突入時のトルク段差を小さくすることができる。
また、エンジン制御装置1では、エンジン10の実回転数Neと燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeに基づいて、トルク低減制御時における目標トルクの低減度合いを補正するので、トルク低減制御時における目標トルクの値をより適切に決定する上で有利となる。
また、エンジン制御装置1では、エンジン10の実回転数Neと燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeが小さいほど、目標トルクの低減度合いを小さくするので、トルク低減制御に伴ってエンジン回転数が低下した場合でも燃料カット許可回転数を下回るのを防止して、確実に燃料カットを実施する上で有利となる。
また、エンジン制御装置1では、目標トルクの低減度合いに合わせて点火時期を遅延させることによりエンジン10の出力トルクを低減させるのでの、応答性の高いトルク制御を行う上で有利となる。すなわち、燃料カット制御の前後で実施される漸増制御および漸減制御において、点火制御用目標トルクPiTGTを使用しているため、例えば、吸気制御用目標トルクPiETV_STDを増減させてスロットル開度,バルブリフト量,バルブタイミング等を制御する場合と比較して、エンジン10の失火をより確実に回避しつつ、燃料カット制御に起因するトルク変動やショックの抑制効果を高めることができ、運転フィーリングを向上させることができる。
なお、上記のエンジン制御装置1では、その時点でのエンジン10の運転状態に基づいて下限トルクPiMINが演算される。すなわち、下限トルク演算部5aにおいて、可燃限界に相当する運転状態におけるエンジン回転数,吸気量,点火時期,燃料噴射量等に基づいて下限トルクPiMINの値が設定される。このように、実回転数Neと目標アイドル回転数NeOBJとに基づいて燃焼限界のトルクを演算することで、エンジン10の運転状態に適した大きさの下限トルクPiMINを演算することができ、エンジン10の失火の可能性をさらに低下させることができる。
[5.変形例]
上記のエンジン制御装置1で実施される燃料カット制御,漸増制御および漸減制御の変形例は、多種多様に考えられる。例えば、上述の実施形態に記載された燃料カット制御,漸増制御および漸減制御のそれぞれの開始条件や終了条件等は、実施の形態に応じて適宜変更してもよい。
上記のエンジン制御装置1で実施される燃料カット制御,漸増制御および漸減制御の変形例は、多種多様に考えられる。例えば、上述の実施形態に記載された燃料カット制御,漸増制御および漸減制御のそれぞれの開始条件や終了条件等は、実施の形態に応じて適宜変更してもよい。
また、上述の実施形態では、エンジン10の実回転数Neと、燃料カット許可回転数Ne1との差分ΔNeが小さいほど目標トルクの低減度合いを小さくするようにしたが、例えば、上記差分ΔNeが大きい場合には目標トルクの低減度合いを大きくしてもよい。
すなわち、本実施の形態では、制限トルク演算部5bで算出された制限トルクに対して、制限トルク補正部5cで算出された正の補正値を足し合わせ、補正後の制限トルク>補正前の制限トルクとなるようにした。しかしながら、上記差分ΔNeが十分に大きい場合には、制限トルク演算部5bで算出された制限トルクから正の補正値を差し引いて、補正後の制限トルク<補正前の制限トルクとなるようにしてもよい。なお、エンジン10の失火を防ぐため。補正後の制限トルクは下限トルクPiMINよりも大きくすることが好ましい。
このように、エンジン回転数が不足する可能性がごく低い場合には、トルク低減制御におけるトルク低減度合いをより大きくすることにより、燃料カット突入時のショックをより一層小さくすることができる。
すなわち、本実施の形態では、制限トルク演算部5bで算出された制限トルクに対して、制限トルク補正部5cで算出された正の補正値を足し合わせ、補正後の制限トルク>補正前の制限トルクとなるようにした。しかしながら、上記差分ΔNeが十分に大きい場合には、制限トルク演算部5bで算出された制限トルクから正の補正値を差し引いて、補正後の制限トルク<補正前の制限トルクとなるようにしてもよい。なお、エンジン10の失火を防ぐため。補正後の制限トルクは下限トルクPiMINよりも大きくすることが好ましい。
このように、エンジン回転数が不足する可能性がごく低い場合には、トルク低減制御におけるトルク低減度合いをより大きくすることにより、燃料カット突入時のショックをより一層小さくすることができる。
また、上述の実施形態では、点火制御用目標トルクPiTGTの上限値を与える制限トルクPiFCRの演算手法について詳述したが、上記の制御は点火時期制御だけでなく吸気量制御にも適用することができる。この場合、例えば上記の制限トルクPiFCRが吸気制御用目標トルクPiETV_STDの上限値を与えるような演算構成とすればよい。
1 エンジン制御装置
2 要求トルク演算部
3 目標トルク演算部
4 燃料カット制御部
5 開始前トルク演算部
5a 下限トルク演算部
5b 制限トルク演算部
5c 制限トルク補正部(トルク補正手段)
6 終了後トルク演算部
7 点火時期演算部(点火時期制御手段)
10 エンジン
2 要求トルク演算部
3 目標トルク演算部
4 燃料カット制御部
5 開始前トルク演算部
5a 下限トルク演算部
5b 制限トルク演算部
5c 制限トルク補正部(トルク補正手段)
6 終了後トルク演算部
7 点火時期演算部(点火時期制御手段)
10 エンジン
Claims (3)
- 所定の燃料カット開始条件成立時にエンジンの燃料カットを実施するとともに、前記燃料カットの実施に先立って前記エンジンの目標トルクを低減させるトルク低減制御を実施するエンジン制御装置であって、
前記燃料カット開始条件は、前記エンジンの実回転数が所定の燃料カット許可回転数以上であることを含んでおり、
前記エンジンの実回転数と、前記燃料カット許可回転数との差分に基づいて、前記トルク低減制御時における前記目標トルクの低減度合いを補正するトルク補正手段を備える、
ことを特徴とするエンジン制御装置。 - 前記トルク補正手段は、前記エンジンの実回転数と、前記燃料カット許可回転数との差分が小さいほど、前記目標トルクの低減度合いを小さくする、
ことを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。 - 前記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御手段を更に備え、
前記点火時期制御手段は、前記トルク低減制御の実施時には前記目標トルクの低減度合いに合わせて前記点火時期を遅延させることにより前記エンジンの出力トルクを低減させる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のエンジン制御装置。
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