以下、本発明のスクリュー圧縮機の実施の形態について図面を用いて例示説明する。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を図1〜図3を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機(ツインスクリュー式の圧縮機)を示す断面図である。図2は、図1に示す第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機をII−II矢視から見た断面図である。図3は、図1に示す第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機をIII−III矢視から見た断面図である。図1及び図2中、スクリュー圧縮機の左側が吸入側であり、右側が吐出側である。図3中、白抜き矢印は回転方向を示している。
図1において、スクリュー圧縮機1は、ツインスクリュー式の圧縮機であり、スクリューロータとして互いに噛み合って回転する雄ロータ2及び雌ロータ3と、両ロータ2、3を収容するケーシング4とを備えている。雄ロータ2は、吸込側軸受6と吐出側軸受7、8とにより軸線Lmを中心に回転自在に支持されている。雌ロータ3は、吸込側軸受10と吐出側軸受11、12とにより軸線Lfを中心に回転自在に支持されている。スクリュー圧縮機1は、ケーシング4よりも上流側に配置される吸込みフィルタや吸込み絞り弁(ともに図示せず)を備えている。スクリュー圧縮機1は、例えば、給液式の圧縮機であり、スクリュー圧縮機1を駆動する電動機等の原動機やスクリュー圧縮機1の下流側(吐出側)に接続される液分離器、その他の機器(ともに図示せず)と共に圧縮機ユニットを構成する。
雄ロータ2は、螺旋状の雄歯を複数有する歯部21と、歯部21の軸方向(図1中、左右方向)の両側端部にそれぞれ一体に設けられた吸込側及び吐出側のシャフト部22、23とで構成されている。雄ロータ2の歯部21の隣接する雄歯間には、螺旋状の歯溝(溝)が形成されている。吸込側のシャフト部22は、先端部がケーシング4の外側に延出しており、原動機に連結される。雌ロータ3は、螺旋状の雌歯を複数有する歯部31と、歯部31の軸方向の両側端部にそれぞれ一体に設けられた吸込側及び吐出側のシャフト部32、33とで構成されている。雌ロータ3の歯部31の隣接する雌歯間には、螺旋状の歯溝(溝)が形成されている。
ケーシング4は、雄ロータ2の歯部21と雌ロータ3の歯部31とを互いが噛み合った状態で収容する収容室としてのボア46を有している。ボア46は、図3に示すように、一部が重複する2つの円筒穴で構成されている。ボア46を形成する壁面は、図1〜図3に示すように、雄ロータ2の歯部21の径方向外側を覆う円筒状の第1周面46aと、雌ロータ3の歯部31の径方向外側を覆う円筒状の第2周面46bと、雄ロータ2及び雌ロータ3の歯部21、31の吐出側端面に対向する軸方向一方側(図1及び図2中、右側)の吐出側端面46cと、雄ロータ2及び雌ロータ3の歯部21、31の吸込側端面に対向する軸方向他方側(図1及び図2中、左側)の吸込側端面46dとの4つの面により構成されている。図3に示すように、第1周面46aと第2周面46bとで一対の交線が形成されており、ロータ噛合い部の膨張側(図3中、上側)に位置する交線を膨張側カスプ46fと称し、ロータ噛合い部の圧縮側(図3中、下側)に位置する交線を圧縮側カスプ46gと称する。
ボア46内に雄ロータ2及び雌ロータ3の歯部21、31が収容されることで、雄ロータ2及び雌ロータ3の複数の歯溝とそれを取り囲むボア46の壁面とで複数の作動室Sが形成される。作動室Sには、雄ロータ2及び雌ロータ3の潤滑、圧縮気体の冷却、雄ロータ2及び雌ロータ3とケーシング4との隙間等のシールを目的として、液体(例えば、油や水)が供給される。
ケーシング4は、図1及び図2に示すように、吐出側である軸方向一方側が開口する有底筒状の主ケーシング41と、主ケーシング41の開口部を閉塞するように主ケーシング41に取り付けられた吐出側ケーシング42とを有している。主ケーシング41は、その内壁面がボア46の第1周面46a、第2周面46b、吸込側端面46dを構成している。吐出側ケーシング42は、主ケーシング41側の端面がボア46の吐出側端面46cを構成している。
主ケーシング41の軸方向他方側(図1中、左側)の端部には、雄ロータ2用の吸込側軸受6を保持する吸込側軸受室48及び雌ロータ3用の吸込側軸受10を保持する吸込側軸受室49がそれぞれ設けられており、各吸込側軸受室48、49の他方側(図1中、左側)が開口している。主ケーシング41には、両吸込側軸受室48、49の開口部を閉塞する吸込側カバー43が取り付けられている。
吐出側ケーシング42には、雄ロータ2用の吐出側軸受7、8を保持する吐出側軸受室50及び雌ロータ3用の吐出側軸受11、12を保持する吐出側軸受室51がそれぞれ設けられており、各吐出側軸受室50、51の一方(図1中、右側)が開口している。吐出側ケーシング42には、両吐出側軸受室50、51の開口を閉塞する吐出側カバー44が取り付けられている。
ケーシング4には、図2に示すように、作動室Sからケーシング4の外部へ圧縮気体を吐出するための吐出流路61が設けられている。吐出流路61は、ボア46とケーシング4の外部とを連通させるものであり、吐出側ケーシング42に設けられた第1吐出流路部62と、主ケーシング41に設けられて第1吐出流路部62に接続する第2吐出流路部63とで構成されている。吐出流路61は、ケーシング4の外壁面側の開口部を構成する吐出口(図示せず)と、ボア46側の開口部を構成する吐出ポート65とを有している。吐出ポート65は、図2及び図3に示すように、作動室Sから気体を吐出させるためのものであり、ボア46におけるロータ軸方向の一方側端部(図2中、右側端部)の位置で且つ雄ロータ2及び雌ロータ3の双方の軸線Lm、Lfを含む特定の仮想平面SPtに対して一方側(図2及び図3中、下側)の位置に開口するように設けられている。吐出ポート65は、例えば、ボア46に対してロータ軸方向のみに開口するアキシャル吐出ポートとして構成されている。
主ケーシング41には、図2に示すように、ケーシング4の外部から作動室Sに気体を吸い込むための吸込流路71が設けられている。吸込流路71は、ケーシング4の外部とボア46とを連通させるものであり、主ケーシング41の外壁面側の開口部を構成する吸込口72と、ボア46側の異なる2つの開口部を構成する第1吸込ポート74及び第2吸込ポート75とを有している。吸込流路71は、第1吸込ポート74側と第2吸込ポート75側とに分岐した1つの流路で構成されている。
吸込口72は、主ケーシング41の外周面における軸方向他方側(図2中、左側)且つ特定の仮想平面SPtに対して他方側(図2中、上側)に設けられている。第1吸込ポート74及び第2吸込ポート75は、作動室Sに気体を吸い込むためのものであり、互いに独立して設けられている。
第1吸込ポート74は、ボア46におけるロータ軸方向の他方側(図2中、左側)の位置で且つ特定の仮想平面SPtに対して少なくとも他方側(図2中、上側)の位置に開口するように設けられている。第1吸込ポート74は、例えば、ボア46に対してロータ軸方向及びロータ径方向の両方向に開口している1つの開口部である。具体的には、第1吸込ポート74は、ボア46の吸込側端面46dに設けられたアキシャル第1ポート74aと、ボア46の第1周面46a及び第2周面46b(図3参照)における軸方向他方側(図2中、左側)且つ特定の仮想平面SPtに対して少なくとも他方側の領域に設けられ、アキシャル第1ポート74aと共に1つの開口を形成するラジアル第1ポート74bとで構成されている。すなわち、アキシャル第1ポート74aとラジアル第1ポート74bは、ボア46の吸込側端面46dと第1周面46a及び第2周面46bとの角部で連続する開口部を構成している。アキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74bは、は、容積が拡大していく工程の作動室Sと連通する一方、容積が最大に至った作動室S及び容積が縮小していく工程の作動室Sとの連通が遮断されるように形成されている。
第2吸込ポート75は、図2及び図3に示すように、吐出ポート65へ気体を吐出する吐出工程から気体を吸い込む吸込工程へ転じた直後の作動室Sに対して連通する(開口する)ように設けられている。具体的には、第2吸込ポート75は、例えば、ボア46の第1周面46a及び第2周面46bにおけるロータ軸方向の一方側端部(図2中、右側端部)の位置で且つ特定の仮想平面SPtに対して他方側(図2及び図3中、上側)の位置、すなわち、特定の仮想平面SPtに対して吐出ポート65の反対側の位置に、第1吸込ポート74とは分離して開口するように設けられている。第2吸込ポート75は、ボア46に対してロータ径方向のみに開口するラジアル吸込ポートとして構成されている。
主ケーシング41の吸込流路71内には、図2に示すように、ロータ軸方向に延在するカバー14が雄ロータ2と雌ロータ3との噛合い部(シールライン)を覆うように設けられている。給液式の場合、運転中に高圧側の作動室Sと低圧側の作動室Sとの圧力差によって、雄ロータ2と雌ロータ3との噛合い部の隙間から、作動室S内の圧縮気体中に含まれる液体が噴出する。カバー14は、当該噛合い部の隙間から噴出する液体が吸込み絞り弁(図示せず)へ向かうのを抑制し、噴出した液体による吸込気体の加熱を抑制するものである。
上記構成のスクリュー圧縮機1においては、図1に示す雄ロータ2が原動機により駆動されると、雄ロータ2が雌ロータ3を回転駆動し、気体がスクリュー圧縮機1内へ吸い込まれる。気体は、スクリュー圧縮機1の上流側に位置する吸込フィルタや吸込み絞り弁(ともに図示せず)を通過した後、図2に示す吸込流路71から第1吸込ポート74及び第2吸込ポート75を介して作動室S内に吸い込まれる。作動室Sは、図1に示す両ロータ2、3の回転の進行に伴い軸方向に移動しつつ容積が増減する。これにより、気体が作動室S内に吸い込まれ圧縮される。その後、作動室Sは、図2及び図3に示す両ロータ2、3の回転の進行により吐出ポート65に開口し、作動室S内の気体が吐出ポート65を介して吐出流路61から下流側の機器に吐出される。両ロータ2、3の回転がさらに進行すると、作動室Sの容積がほぼ零となり、作動室Sが再び吸込工程に転じる。これらの工程を繰り返すことで気体が継続的に圧縮される。
次に、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の作用及び効果を従来のスクリュー圧縮機と比較しつつ図4〜図8を用いて説明する。
先ず、比較例としての従来のスクリュー圧縮機の構成について図4を用いて説明する。図4は、比較例としての従来のスクリュー圧縮機(ツインスクリュー式の圧縮機)を示す縦断面図である。図4中、スクリュー圧縮機の左側が吸込側、右側が吐出側である。なお、図4において、図1〜図3に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図4に示す比較例のスクリュー圧縮機101が本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1(図2参照)と異なる主な点は、吸込流路171のボア46側の開口部が第1吸込ポート74のみで構成されており、主ケーシング141には第2吸込ポート75(図2参照)が存在していないことである。すなわち、比較例の吸込流路171は、吸込口72が主ケーシング141の外壁面側の開口部を構成すると共に第1吸込ポート74が主ケーシング141のボア46側の開口部を構成する分岐のない流路である。比較例のスクリュー圧縮機101のそれ以外の構成は、本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1の構成と同様である。
比較例のスクリュー圧縮機の動作を図5及び図6を用いて説明する。図5は、比較例としての従来のスクリュー圧縮機におけるボア壁面の展開図であり、吸込工程から吐出工程までの遷移を示す説明図である。図6は、比較例としての従来のスクリュー圧縮機及び第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの回転角度に対する作動室の容積の変化を示す説明図である。図6中、横軸θはスクリューロータの回転角度を、縦軸Vsは作動室の容積を示している。
図5において、中央の縦線はボア(収容室)46の圧縮側カスプ46g(図3参照)を、左右の縦線はボア46の膨張側カスプ46f(図3参照)を示している。左側の斜線は雄ロータ2の歯先線を、右側の斜線は雌ロータ3の歯先線を示している。歯先線と交差する上端側の横線はボア46の吐出側端面46c(図4参照)を、下端側の横線はボア46の吸込側端面46d(図4参照)を示している。下端部のハッチング部分は主ケーシング141を、上端部のハッチング部分は吐出側ケーシング42を示している。主ケーシング141の左右両側のハッチングが施されていない部分は、吸込流路171(図4参照)を示している。吐出側ケーシング42の中央部のハッチングが施されていない部分は、吐出流路61(図4参照)を示している。ボア46の吐出側端面46cのうち吐出流路61の領域は、吐出ポート65(図4参照)を示している。ボア46の吸込側端面46dのうち吸込流路71の領域は、第1吸込ポート74のアキシャル第1吸入ポート74a(図4参照)を示している。また、第1吸込ポート74のラジアル第1吸入ポート74b(図4参照)を破線で示している。雄ロータ2の隣接する歯先線間(歯溝)及び雌ロータ3の歯先線間(歯溝)に作動室Sが形成されている。
図5において、作動室Sは、吸込側端面46d上の雄ロータ2及び雌ロータ3の噛合い領域の位置で生まれ、雄ロータ2及び雌ロータ3の回転に伴い、吐出側端面46cに向かって移動しながらその容積を徐々に拡大していく(ハッチングで示した作動室Sの状態(a)から状態(c)へ遷移する工程を参照)。この容積拡大の期間中、作動室Sは第1吸込ポート74のアキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74bと連通した状態にあり、作動室Sには第1吸込ポート74を介して気体が吸い込まれる。すなわち、この遷移工程は、図6に示すように、作動室Sがその容積を拡大して気体を吸い込む吸込工程である。
その後、作動室Sは、雄ロータ2及び雌ロータ3の回転により、その容積が最大容積に至る(ハッチングで示した雌ロータ3側の作動室Sの状態(d)又は雄ロータ2側の作動室Sの状態(e)を参照)。最大容積に至った作動室Sは、第1吸込ポート74のアキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74bとの連通が遮断された状態となり、ほぼ密閉された空間となる。したがって、最大容積の作動室Sには、気体が供給されることはない。すなわち、図6に示すように、作動室Sがほぼ最大容積に達した状態において、作動室Sの吸込工程が終了する。
最大容積に至った作動室Sは、アキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74bとの連通が遮断された状態で、両ロータ2、3の回転に伴い吐出側端面46cに向かって移動しながらその容積を徐々に縮小していく(ハッチングで示した作動室Sの状態(e)から状態(f)へ遷移する工程を参照)。これにより、作動室Sに閉じ込められた気体が圧縮される。すなわち、この遷移工程は、図6に示すように、作動室Sがその容積を縮小して気体を圧縮する圧縮工程である。
その後、作動室Sは、両ロータ2、3の回転に伴い、その容積を縮小しつつ吐出ポート65に連通した状態となり、密閉空間でなくなる(ハッチングで示した作動室Sの状態(g)から状態(h)へ遷移する工程を参照)。これにより、作動室Sの圧縮工程が終了し、作動室S内の気体が吐出ポート65を介して吐出される。すなわち、この遷移工程は、図6に示すように、作動室Sがその容積を縮小しつつ気体を吐出する吐出工程である。
吐出工程の作動室Sはその容積が最終的にほぼ零になると、作動室Sの吐出工程が終了する。容積がほぼ零になった作動室Sは、両ロータ2、3の回転に伴い、吸い込み途中の作動室に転じる。すなわち、作動室Sが第1吸込ポート74のアキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74bと連通した状態になり、再度吸込工程に戻る。
このように、比較例のスクリュー圧縮機101は、作動室Sが状態(a)から状態(h)へ遷移し、これを繰り返すことで、気体を継続的に圧縮する。すなわち、図6に示す吸込工程、圧縮工程、吐出工程を順に繰り返すことで、気体を継続的に圧縮する。
ところで、比較例のスクリュー圧縮機101においては、吸込ポート74を介して作動室Sに気体を吸い込む際に圧力損失(吸込損失)が生じ、その分、圧縮効率が低下する。したがって、作動室Sに気体を吸い込む際の圧力損失の更なる低減が求められている。
次に、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の作用及び効果を図7及び図8を用いて説明する。図7は、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるボア壁面の展開図であり、吸込工程から吐出工程までの遷移を示す説明図である。図8は、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機、比較例のクリュー圧縮機、特許文献1に記載のスクリュー圧縮機の各々における作動室の容積と作動室内の気体の圧力との関係を示す特性図(指圧線図)である。図8中、横軸Vsは作動室の容積を、縦軸Psは作動室の圧力を示している。図7及び図8において、図1〜図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態のスクリュー圧縮機1においては、作動室Sに気体を吸い込むためのボア46側の開口部として、第1吸込ポート74に加えて、第1吸込ポート74とは独立して異なる位置に設けた第2吸込ポート75を備えている(図2及び図3を参照)。図7に示す本実施の形態に係る展開図が図5に示す比較例の展開図と異なる点は、主ケーシング41の左右両側のハッチングが施されていない部分が吸込流路71を示していること、及び、第1吸込ポート74とは異なる第2吸込ポート75が二点鎖線で示されていることである。
図7において、ハッチングで示した雌ロータ3側の作動室Sは、状態(a)から状態(b)へ遷移する吸込工程では、第1吸込ポート74のアキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74bと連通した状態である一方、第2吸込ポート75との連通が遮断された状態である。ハッチングで示した雄ロータ2側の作動室Sは、状態(b)から状態(c)へ遷移する工程では、第1吸込ポート74のアキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74bと連通した状態である一方、第2吸込ポート75との連通が遮断された状態である。したがって、当該作動室Sには、従来と同様に、第1吸込ポート74のみを介して気体が吸い込まれる。
また、ハッチングで示した雌ロータ3側の作動室Sは、状態(c)の吸込工程において、第1吸込ポート74に連通すると共に、第2吸込ポート75に連通した状態となる。また、ハッチングで示した雄ロータ2側の作動室Sは、状態(d)の吸込工程において、第1吸込ポート74に連通すると共に、第2吸込ポート75に連通した状態となる。したがって、当該作動室Sには、第1吸込ポート74に加えて、第2吸込ポート75を介して気体が吸い込まれる。
作動室Sのその後の圧縮工程及び吐出工程は、比較例のスクリュー圧縮機101の場合と同様である。
このように、作動室Sの吸込工程の一部分の過程において、第1吸込ポート74に加えて、第2吸込ポート75を介して作動室Sに気体が吸い込まれる。したがって、作動室Sに気体を吸い込むためのボア46側の開口部の開口面積が第2吸込ポート75分増加する。
ここで、図8において、圧力損失のない理想的な第1指圧線図(二点鎖線)C1、比較例のスクリュー圧縮機101における損失を考慮した第2指圧線図(一点鎖線)C2、特許文献1に記載のスクリュー圧縮機における圧力損失を考慮しない第3指圧線図C3(実線)、本実施の形態のスクリュー圧縮機における損失を考慮した第4指圧線図I(破線)を比較する。
比較例の第2指圧線図C2及び本実施の形態の第4指圧線図Iでは、作動室S内に取り込まれる気体の元々の圧力P(容積Vsが0のときの圧力)が損失のない理想的な第1指圧線図C1に対して低下している。これは、ケーシング4よりも上流側の吸込み絞り弁や吸込フィルタ(ともに図示せず)等の通過の際の圧力損失を考慮したものである。
また、比較例の第2指圧線図C2では、作動室Sの容積Vsが0の状態から増加する吸込工程において、作動室Sに取り込まれる気体の圧力が第1指圧線図C1に対して低下する。これは、上述したように、吸込流路171から吸込ポート74を介して作動室Sに吸い込む際に摩擦抵抗や渦の発生等による気体の圧力損失が発生するためである。
本実施の形態の第4指圧線図Iでも、比較例の第2指圧線図C2と同様に、吸込工程において、作動室Sに吸い込まれる気体の圧力が各種損失により低下する。しかし、本実施の形態は、比較例のスクリュー圧縮機101と比較すると、第2吸込ポート75の分開口面積が増加するので、その分、作動室Sに流入する気体の流速が低下し、当該気体の圧力損失が低減される。したがって、吸込工程にある作動室Sに吸い込まれる気体の圧力降下を比較例のスクリュー圧縮機101よりも抑制することができ、スクリュー圧縮機1の圧縮効率が向上する。
なお、特許文献1に記載のスクリュー圧縮機における第3指圧線図C3は、作動室が最大容積に達する前に作動室を密閉し、その後の作動室の最大容積までの容積増大に伴い気体を膨張させることで、作動室が最大容積に達したときに作動室を密閉する場合よりも、圧縮工程の駆動動力の低減が可能であることを示している。すなわち、特許文献1に記載の技術は、作動室に吸い込まれる気体の圧力損失を低減することで圧縮効率を向上させる(駆動動力を低減する)本実施の形態とは異なるものである。
ところで、作動室Sに吸い込まれた気体の一部は、遠心力によって吸込ポートから逆流して作動室Sに吸い込まれる気体に対して抵抗となり、作動室Sの吸込量が低下する。吸込ポート1つ1つの開口面積が過度に大きいと、この逆流現象の影響が大きくなる。本実施の形態においては、第2吸込ポート75を第1吸込ポート74とは独立して異なる位置に設けているので、各吸込ポートの開口面積を過度に大きくせずに、全体の開口面積を大きくすることができる。したがって、吸込ポートの全体の開口面積を増加させた場合であっても、気体の吸込ポートからの逆流現象を抑制することができる。
上述したように、本発明の第1の実施の形態によれば、従来の吸込ポートと同様な第1吸込ポート74に加えて、第1吸込ポート74とは分離して異なる位置に第2吸込ポート75を設けることで、作動室Sに気体を吸い込むための開口面積が第2吸込ポート75分増加するので、第1吸込ポート74及び第2吸込ポート75を介して作動室Sに流入する気体の圧力損失を低減することができる。その結果、吸込工程の作動室S内の気体の圧力低下が抑制されるので、スクリュー圧縮機1の圧縮効率が向上する。
また、本実施の形態においては、作動室に供給された液体が雄ロータ2及び雌ロータ3の歯部21、31の吐出側端面と吐出側ケーシング42の端面との隙間(端面隙間)から低圧の作動室S側へ噴出するが、第2吸込ポート75を、ボア46の吐出側端面46cでなくボア46の第1周面46a及び第2周面46bの吐出側端部に設けて、ラジアルポートとして構成しているので、第2吸込ポート75を介した気体の吸込みが当該端面隙間から噴出する液体によって阻害されることを抑制することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機を図9及び図10を用いて例示説明する。図9は、本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機(ツインスクリュー式の圧縮機)を示す縦断面図である。図10は、第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるボア壁面の展開図であり、吸込工程から吐出工程までの遷移を示す説明図である。図9中、スクリュー圧縮機の左側が吸込側、右側が吐出側である。なお、図9及び図10において、図1〜図8に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図9に示す第2の実施の形態によるスクリュー圧縮機1Aは、大略第1の実施の形態と同様の構成であるが、吸込流路71A及び吸込流路71Aのボア46側の開口部の1つである第2吸込ポート75Aの構成が異なる。具体的には、第2吸込ポート75Aは、第1の実施の形態の吸込ポート75と同様に、吐出ポート65へ気体を吐出する吐出工程から気体を吸い込む吸込工程へ転じた直後の作動室Sに対して連通する(開口する)ように設けられているが、第1の実施の形態の吸込ポート75のようなラジアル吸込ポートでなく、ボア46に対してロータ軸方向のみに開口するアキシャル吸込ポートとして構成されている。第2吸込ポート75Aは、ボア46の吐出側端面46c(ロータ軸方向の一方側端面)における特定の仮想平面SPtに対して他方側(図9中、上側)の位置、すなわち、特定の仮想平面SPtに対して吐出ポート65の反対側の位置に、第1吸込ポート74とは分離して開口するように設けられている。吸込流路71Aは、主ケーシング41Aに設けられた第1流路部77と、吐出側ケーシング42Aに設けられ、第1流路部77に連続する第2流路部78とで構成されている。第1流路部77は、吸込流路71Aの吸込口72及び第1吸込ポート74を有しており、主ケーシング41Aの吐出側の端面に開口して第2流路部78に連通している。第1流路部77は、吸込口72から第1吸込ポート74側と第2流路部78側に分岐している。第2流路部78は、吸込流路71Aの第2吸込ポート75Aを有しており、吐出側ケーシング42Aにおける主ケーシング41A側の端面に開口して第1流路部77に連通している。
次に、第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の作用及び効果を説明する。図10に示す本実施の形態に係る展開図が図7に示す第1の実施の形態に係る展開図と異なる点は、主ケーシング41Aの左右両側のハッチングが施されていない部分及び吐出側ケーシング42Aの右端部のハッチングが施されていない部分が吸込流路71Aを示していること、さらに、ボア46の吐出側端面46cのうち吸込流路71Aの領域が第1吸込ポート74とは異なる第2吸込ポート75A(アキシャルポート)を示していることである。
図10において、ハッチングで示した雌ロータ3側の作動室Sは、状態(c)の吸込工程において、第1吸込ポート74(アキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74b)と連通する共に、第2吸込ポート75Aに連通した状態となる。したがって、当該作動室Sには、第1吸込ポート74に加えて、第2吸込ポート75Aを介して気体が吸い込まれる。このように、作動室Sの吸込工程の一部分の過程において、第1の実施の形態と同様に、第1吸込ポート74に加えて、第2吸込ポート75Aを介して作動室Sに気体が吸い込まれる。したがって、作動室Sに気体を吸い込むためのボア46側の開口部の開口面積が第2吸込ポート75A分増加する。
上述したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、作動室Sに気体を吸い込むための開口面積が第2吸込ポート75A分増加するので、作動室Sに流入する気体の圧力損失を低減することができる。その結果、吸込工程の作動室S内の気体の圧力低下が抑制されるので、スクリュー圧縮機1Aの圧縮効率が向上する。
また、本実施の形態によれば、第2吸込ポート75Aをアキシャルポートとして構成しているので、作動室Sに吸い込まれた気体が遠心力により第2吸込ポート75Aを介して逆流することを防止することができる。
[第2の実施の形態の変形例]
次に、本発明の第2の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機について図11を用いて例示説明する。図11は、本発明の第2の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機(ツインスクリュー式の圧縮機)を示す縦断面図である。図11中、スクリュー圧縮機の左側が吸込側、右側が吐出側である。なお、図11において、図1〜図10に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図11に示す第2の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機1Bは、大略第2の実施の形態と同様の構成であるが、吸込流路の構成が異なる。具体的には、吸込流路は、主ケーシング41Bに設けられ、比較例のスクリュー圧縮機101の吸込流路171と同様な経路でケーシング4の外部とボア46を連通させる第1吸込流路71Bと、吐出側ケーシング42Bに設けられ、第1吸込流路71Bとは独立した異なる経路でケーシング4の外部とボア46を連通させる第2吸込流路81とで構成されている。第1吸込流路71Bは、第2の実施の形態と同様な吸込口72が主ケーシング41Bの外壁面側の開口部を構成すると共に、第1吸込ポート74がボア46側の開口部を構成している。第2吸込流路81は、吐出側ケーシング42Bの外壁面側の開口部を構成し主ケーシング41Bの吸込口72とは独立した異なる第2の吸込口82と、ボア46側の開口部を構成する第2の実施の形態と同様な第2吸込ポート75Aとを有している。本変形例においても、作動室Sに気体を吸い込むためのボア46側の開口部の開口面積が第2吸込ポート75A分増加する。
本発明の第2の実施の形態の変形例によれば、第2の実施の形態と同様に、作動室Sに気体を吸い込むための開口面積が第2吸込ポート75A分増加するので、作動室Sに流入する気体の圧力損失を低減することができる。その結果、吸込工程の作動室S内の気体の圧力低下が抑制されるので、スクリュー圧縮機1Aの圧縮効率が向上する。
また、本変形例によれば、異なる位置に分離して設けた第1吸込ポート74と第2吸込ポート75Aに応じて、吸込流路を2つの独立した第1吸込流路71B及び第2吸込流路81により構成したので、第1吸込流路71B及び第2吸込流路81の各流路長を短縮できる。したがって、流路長の短縮が可能な分、第1吸込流路71B及び第2吸込流路81における圧力損失の低減により作動室Sに吸い込まれる気体の圧力低下が更に抑制できるので、スクリュー圧縮機1Bの圧縮効率が更に向上する。
また、本変形例によれば、吐出側ケーシング42B内に配置した雄ロータ2用の吐出側軸受7、8(図1参照)及び雌ロータ3用の吐出側軸受11、12(図1参照)の近傍に第2吸込流路81を設けているので、第2吸込流路81に流れる気体によって、雄ロータ2用の吐出側軸受7、8及び雌ロータ3用の吐出側軸受11、12を冷却することが可能である。吐出側ケーシング42Bに第2吸込流路81を設けない場合、雄ロータ2用の吐出側軸受7、8及び雌ロータ3用の吐出側軸受11、12を液冷する必要があり、液体による撹拌損失が発生する。本変形例では、第2吸込流路81に流れる気体による冷却効果の分、液冷の割合を低下させることで、撹拌損失を低減し省エネルギを図ることができる。
なお、本変形例においては、ケーシング4に第1吸込流路71Bと第2吸込流路81を独立して設けているので、第1吸込流路71Bと第2吸込流路81の各々に吸込み絞り弁が必要である。本構成の場合、各吸込み絞り弁の開閉を独立に制御することで、無負荷運転時に二段階の減圧運転圧力で減圧運転を行うスクリュー圧縮機を構成することが可能である。例えば、給液式のスクリュー圧縮機では、圧縮気体に含まれる液体を分離するための分離器と圧縮機本体との圧力差を利用して圧縮機本体に液体を供給するので、分離器から圧縮機本体へ液体を供給するためには、所定の圧力差(最小循環給液圧力)以上の圧力が必要である。本変形例においては、各吸込み絞り弁を独立に開閉制御することで、無負荷運転時に、最小循環給液圧力以上の減圧運転圧力と最小循環給液圧力よりも低い減圧運転圧力の二段階で減圧運転を行うことが可能である(例えば、WO2016/002635号を参照)。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係るスクリュー圧縮機を図12及び図13を用いて例示説明する。図12は、本発明の第3の実施の形態に係るスクリュー圧縮機(ツインスクリュー式の圧縮機)を示す縦断面図である。図13は、第3の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるボア壁面の展開図であり、吸込工程から吐出工程までの遷移を示す説明図である。図12中、スクリュー圧縮機の左側が吸込側、右側が吐出側である。なお、図12及び図13において、図1〜図11に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図12に示す第3の実施の形態に係るスクリュー圧縮機1Cが第1の実施の形態と異なる点は、吸込流路71C及び吸込流路71Cのボア46側の開口部の1つである第2吸込ポート75Cの構成が異なる。具体的には、第2吸込ポート75Cは、ボア46に対してロータ軸方向及びロータ径方向の両方向に開口している1つの開口部である。具体的には、第2吸込ポート75Cは、アキシャル第2ポート75dと、アキシャル第2ポート75dと共に1つの開口を形成するラジアル第2ポート75eとで構成されている。アキシャル第2ポート75dは、ボア46の吐出側端面46c(ロータ軸方向の一方側端面)における特定の仮想平面SPtに対して他方側(図12中、上側)の位置、すなわち、特定の仮想平面SPtに対して吐出ポート65の反対側の位置に、第1吸込ポート74とは分離して開口するように設けられている。ラジアル第2ポート75eは、ボア46の第1周面46a及び第2周面46b(図3参照)におけるロータ軸方向の一方側端部(図12中、右側端部)の位置で且つ特定の仮想平面SPtに対して他方側(図12中、上側)の位置、すなわち、特定の仮想平面SPtに対して吐出ポート65の反対側の位置に、第1吸込ポート74とは分離して開口するように設けられている。アキシャル第2ポート75dとラジアル第2ポート75eは、ボア46の吐出側端面46cと第1周面46a及び第2周面46bとの角部で連続する開口部を構成している。
吸込流路71Cは、主ケーシング41Cに設けられた第1流路部77Cと、吐出側ケーシング42Cに設けられ、第1流路部77Cに連続する第2流路部78Cとで構成されている。第1流路部77Cは、吸込流路71Cの吸込口72及び第1吸込ポート74に加えて、第2吸込ポート75Cのラジアル第2ポート75eを有しており、主ケーシング41Cの吐出側の端面に開口して第2流路部78Cに連通している。第1流路部77Cは、吸込口72から第1吸込ポート74側とラジアル第2ポート75e側とに分岐している。第2流路部78Cは、吸込流路71Cの第2吸込ポート75Cのアキシャル第2ポート75dを有しており、吐出側ケーシング42Cにおける主ケーシング41C側の端面に開口して第1流路部77Cに連通している。
次に、第3の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の作用及び効果を説明する。図13に示す本実施の形態に係る展開図が図7に示す第1の実施の形態に係る展開図と異なる点は、主ケーシング41Cの左右両側のハッチングが施されていない部分及び吐出側ケーシング42Cの右端部のハッチングが施されていない部分が吸込流路71Cを示していること、ボア46の吐出側端面46cのうち吸込流路71Cの領域が第1吸込ポート74とは異なる第2吸込ポート75Cのアキシャル第2ポート75dを示していること、さらに、第1吸込ポート74とは異なる第2吸込ポート75Cのラジアル第2ポート75eを二点鎖線で示していることである。
図13において、ハッチングで示した雌ロータ3側の作動室Sは、状態(c)の吸込工程において、第1吸込ポート74(アキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74b)と連通する共に、第2吸込ポート75Cのアキシャル第2ポート75dとラジアル第2ポート75eに連通した状態となる。また、ハッチングで示した雄ロータ2側の作動室Sは、状態(d)の吸込工程において、第1吸込ポート74(アキシャル第1ポート74a及びラジアル第1ポート74b)と連通する共に、第2吸込ポート75Cのラジアル第2ポート75eに連通した状態となる。したがって、当該作動室Sには、第1吸込ポート74に加えて、第2吸込ポート75Cを介して気体が吸い込まれる。このように、作動室Sの吸込工程の一部分の過程において、第1の実施の形態と同様に、第1吸込ポート74に加えて、第2吸込ポート75Cを介して作動室Sに気体が吸い込まれる。したがって、作動室Sに気体を吸い込むためのボア46側の開口部の開口面積が第2吸込ポート75C分増加する。
上述したように、第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、作動室Sに気体を吸い込むための開口面積が第2吸込ポート75C分増加するので、作動室Sに流入する気体の圧力損失を低減することができる。その結果、吸込工程の作動室S内の気体の圧力低下が抑制されるので、スクリュー圧縮機1Cの圧縮効率が向上する。
また、本実施の形態によれば、第2吸込ポート75Cを、ボア46に対してロータ軸方向及びロータ径方向の両方向に開口する1つの開口部(アキシャル第2ポート75dとラジアル第2ポート75eとが連続したもの)として構成したので、第2吸込ポートがロータ径方向及びロータ軸方向のいずれか一方に開口する場合(第1の実施の形態及び第2の実施の形態の場合)と比較して、第2吸込ポート75Cの開口面積をより大きくすることができる。したがって、第2吸込ポート75Cの開口面積の更なる増加分、作動室Sに流入する気体の圧力損失を更に低減することができる。
[その他の実施の形態]
なお、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
具体的には、上述した実施の形態においては、スクリュー圧縮機1、1A、1Cの吸込流路71、71A、71Cの吸込口72(吸込み絞り弁を接続する部分)を第2吸込ポート75、75A、75Cよりも第1吸込ポート74に近い位置に設けた例を説明したが(図2、9、12を参照)、吸込口72を第2吸込ポート75、75A、75C寄りに設ける構成も可能である。ただし、第1吸込ポート74は、第2吸込ポート75、75A、75Cよりも開口面積が大きいので、吸込口72(吸込み絞り弁)を第1吸込ポート74寄りに設ける方が圧力損失の低減に関して有利である。
また、上述した実施の形態においては、給液式のスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cを例に説明したが、無給液式のスクリュー圧縮機にも本発明を適用することができる。
また、上述した実施の形態においては、ツインスクリュー式のスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cを例に説明したが、マルチスクリュー式のスクリュー圧縮機にも本発明を適用することができる。
また、上述した実施の形態においては、ツインスクリュー式のスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cを例に説明したが、シングルスクリュー式の圧縮機にも本発明を適用することができる。以下、具体的な構成を図14及び図15を用いて簡潔に説明する。図14は、本発明のその他の実施の形態に係るスクリュー圧縮機(シングルスクリュー式の圧縮機)を平面視の状態で示す概念図である。図15は、図14に示すその他の実施の形態に係るスクリュー圧縮機をXV−XV矢視から見た概念図である。図14及び図15中、白抜き矢印は回転方向を示している。
図14及び図15に示す本実施の形態に係るスクリュー圧縮機91は、螺旋状の溝92aを複数有するスクリューロータ92と、スクリューロータ92と噛み合う2つの歯車ロータ93と、スクリューロータ92及び2つの歯車ロータ93を収容するケーシング94とを備えている。2つの歯車ロータ93は、スクリューロータ92を挟んで対称な位置に配置されている。また、2つの歯車ロータ93は、軸方向がスクリューロータ92の軸方向に対して直交すると共に互いに平行となるように配置されている。ケーシング94は、スクリューロータ92の外周面を覆うように収容する収容室95を内部に有している。
収容室95の壁面とスクリューロータ92の溝92aと歯車ロータ93とで複数の作動室Sが形成されている。各作動室は、スクリューロータ92が180度回転することで、吸込工程から吐出工程までを行う。すなわち、スクリューロータ92の軸線Lsを含み歯車ロータ93の軸方向に直交する特定の仮想平面SPsを境界に、一方側(図15中、上側)に位置する作動室Sと、特定の仮想平面SPsに対して他方側(図15中、下側)に位置する作動室Sとが、それぞれ吸込工程から吐出工程を行う。
収容室95におけるロータ軸方向の一方側端部(図14中、下側端部)の位置には、作動室Sから収容室95外へ圧縮気体を吐出するための吐出ポート96が設けられている。吐出ポート96は、仮想平面SPsを境界に一方側に位置する作動室Sと他方側に位置する作動室Sに応じて、2つ設けられている。すなわち、2つの吐出ポート96は、特定の仮想平面SPsに対して一方側(図15中、上側)及び他方側(図15中、下側)の位置であって、スクリューロータ92の軸線Lsの周りに180°反対側の位置に開口している。
収容室95におけるロータ軸方向の他方側(図14中、上側)の位置には、作動室Sに気体を吸い込むための第1吸込ポート97が設けられている。また、収容室95には、作動室Sに気体を吸い込むための吸込ポートとして、第1吸込ポート97とは独立して異なる位置に第2吸込ポート98が設けられている。第2吸込ポート98は、吐出ポート96へ気体を吐出する吐出工程から気体を吸い込む吸込工程へ転じた直後の作動室Sに対して連通する(開口する)ように設けられている。第2吸込ポート98は、2つの吐出ポート96に応じて2つ設けられている。具体的には、各第2吸込ポート98は、収容室95におけるロータ軸方向の一方側端部(図14中、下側端部)の位置で且つ特定の仮想平面SPsに対して各吐出ポート96の反対側の位置に、第1吸込ポート97とは分離して開口するように設けられている。
本実施の形態に係るシングルスクリュー式のスクリュー圧縮機91においても、第1〜第3の実施の形態に係るツインスクリュー式のスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cと同様に、作動室Sに気体を吸い込むための開口面積が第2吸込ポート98分増加するので、作動室Sに流入する気体の圧力損失を低減することができる。その結果、吸込工程の作動室S内の気体の圧力低下が抑制されるので、スクリュー圧縮機91の圧縮効率が向上する。
なお、本実施の形態に係るスクリュー圧縮機91では、歯車ロータ93の数が2つである構成を例に説明したが、歯車ロータの数が1つ又は3つ以上の構成ででも適用可能である。