JP2019173121A - 防錆方法及び防錆構造 - Google Patents

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Hiroyuki Takihana
裕之 瀧華
高太郎 永井
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高太郎 永井
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Abstract

【課題】建造物の外装材の防錆性を向上させることができ、しかも施工が容易な防錆方法及び防錆構造を提供する。【解決手段】金属体(表鋼板2)からなる建築物の外装材1の1カ所又は複数箇所に、外装材1内に挿入される本体部11と、外装材1の外部に配置される平坦な頭部12とを有し、金属体に比べて電位が低い陽極流電体(ねじ10)を固定する工程を有する防錆方法である。また、金属体(表鋼板2)からなる建築物の外装材1と、外装材1の1カ所又は複数箇所に固定されて金属体に比べて電位が低い陽極流電体(ねじ10)と、から構成され、陽極流電体が、外装材1内に挿入される本体部11と、外装材1の外部に配置される平坦な頭部12とを有する防錆構造である。【選択図】図1

Description

本発明は、建築物等の防錆方法及び防錆構造に関する。
従来、鋼材等の防錆(防食)技術として、犠牲陽極を利用する技術が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1には、防食対象の鋼材に、この鋼材に比べて電気的に卑で、且つ、多孔質性を有した金属材料で構成した犠牲陽極材本体を磁石で固定することで、内部の空隙に保持した雨水によって導電性を向上させ、鋼材から犠牲陽極材本体への電子の移動を促進し、鋼材の防食を行う技術が開示されている。
特許文献2には、防食メッキが施された金属体に、流電陽極体と、この流電陽極体よりも強度が高い導電性の心材が一体的に設けられた防食体を、締結部材で取り付けることで、防食メッキと流電溶極体との電位差を利用して、流電溶極体から防食メッキへ電流を補充して、金属体の防食を行う技術が開示されている。
特許文献3には、支持材によって架設されている屋外タンク屋根板と該支持材との間に亜鉛製または亜鉛合金製の部材を介在させることで、流電陽極作用、インヒビター作用によって屋根板を防食する技術が開示されている。
上記従来技術では、予め、腐食のおそれのある部位を想定して、その部位を電気防食(流電陽極法)を行っているが、既築の建造物では、想定外の部位に腐食が起こる場合が多く、このような想定外の部位を電気防食する際には、その施工が困難であるという問題があった。
特許第5461093号公報 特許第4784952号公報 特開平9−249290号公報
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、建造物の外装材の防錆性を向上させることができ、しかも施工が容易な防錆方法及び防錆構造を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の防錆方法は、金属体を有する建造物の外装材の1カ所又は複数箇所に、前記金属体に比べて電位が低い陽極流電体を固定する工程を有し、前記陽極流電体が、前記外装材内に少なくとも一部が挿入される本体部と、前記外装材の外部に配置される平坦な頭部とを有していることを特徴とする。
ここで、前記陽極流電体が、前記本体部と前記頭部とを有するねじ、ビス、ボルト、及び釘のいずれかである構成とすることができる。また、前記陽極流電体が、亜鉛、アルミ、及びマグネシウムのいずれか、又は、これらの少なくともいずれかを含む合金からなる構成とすることができる。また、前記陽極流電体の前記頭部を、導電性を有するシート部材で被覆する工程を、さらに有する構成とすることができる。
また、本発明の防錆構造は、金属体を有する建築物の外装材の1カ所又は複数箇所に固定されて前記金属体に比べて電位が低い陽極流電体を備えて構成され、前記陽極流電体が、前記外装材内に挿入される本体部と、前記外装材の外部に配置される平坦な頭部とを有することを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、金属体と陽極流電体との間に電位差が生じ、防錆に必要な電流が陽極流電体から金属体に補充され、金属体の腐食を防止することができる。また、金属体を有する外装材の1カ所又は複数箇所に陽極流電体を固定するだけで、簡易に、優れた防錆性を得ることができる。したがって、建造物の外装材の防錆性を向上させることができ、しかも施工が容易な防錆方法及び防錆構造を提供することができる。
(a)は本願の第1実施形態に係る防錆方法によって得られた防錆構造を備える外装材の概略構成図、(b)は第1実施形態の具体例である実施例1〜9の防錆性の効果試験の手順を説明するための図である。 (a)は本願の第2実施形態に係る防錆方法によって得られた防錆構造を備える外装材の概略構成図、(b)は第2実施形態の具体例である実施例10〜12の防錆性の効果試験の手順を説明するための図である。 (a)は本願の第3実施形態に係る防錆方法によって得られた防錆構造を備える外装材の概略構成図、(b)は第3実施形態の具体例である実施例13〜15の防錆性の効果試験の手順を説明するための図である。 (a)は本願の第4実施形態に係る防錆方法によって得られた防錆構造を備える外装材の概略構成図、(b)は第4実施形態の具体例である実施例16〜18の防錆性の効果試験の手順を説明するための図である。
(第1の実施形態)
以下、本願の第1の実施形態に係る防錆方法及び防錆構造について、図1(a)を参照しながら説明する。図1(a)は、第1の実施形態の防錆方法によって得られた防錆構造を備えた外装材の概略構成図である。
この図1の上図に示すように、第1の実施形態の防錆構造20は、金属体を有する外装材1の1カ所又は複数箇所に固定される陽極流電体としてのねじ10を備えて構成される。
外装材1は、室外側(外部)に配置される金属体からなる表鋼板2と、石こうボード3と、室内側に配置される第2の金属体からなる裏鋼板4と、有している。このような構成の外装材1が、ボルト5等の締結部材によってスタッド6等の取付部材に取り付けられている。なお、裏鋼板4を設けずに外装材1を構成してもよい。
本実施形態では、表鋼板2と裏鋼板4を構成する金属体として、亜鉛鋼板を用いているが、金属体が亜鉛鋼板に限定されるものではなく、亜鉛合金、マグネシウム及びマグネシウム合金などからなる金属板であってもよい。また、金属体がアルミ亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)等、めっきを施された金属板であってもよい。
ここで、建設省告示第1358号で規定されているように、金属板、特に亜鉛鋼板に石こうボードを組み合わせた構成(つまり、厚さが12ミリメートル以上の石こうボードの上に金属板を張ったもの)は準耐火構造の外壁として認められている。実際に建築物に利用する状態において、様々な部材が取り付けられ、この取り付けに多くはねじ等が用いられるため、金属板に穴をあけてしまう場合がある。そのため、この穴から石こうボードの吸水が発生するとともに、ねじ等と金属板の間で異種金属が接触し、石こうボードに接する金属板の面に腐食(ガルバニ腐食)が起こってしまう場合がある。
このような腐食を簡易に抑制するため、第1の実施形態では、外装材1の腐食が生じ易い箇所に、陽極流電体としてのねじ10を固定している。このねじ10は、外装材1内に挿入される本体部11と、外装材1の外部に配置される平坦な頭部12とを有して構成される、いわゆる「皿ねじ」である。ねじ10は、本体部11の外周に、外装材1に螺着するための螺溝が設けられ、頭部12の天面には、マイナス溝、プラス溝、六角穴などが設けられている。
本実施形態の防錆方法は、上述のような構成の外装材1の1カ所又は複数箇所に、ねじ10を固定する工程を有している。ねじ10は、図1の上図に示すように、外気や雨水に曝される表鋼板2側から、表鋼板2を貫通して本体部11が石こうボード3まで到達するように固定する。
本実施形態のねじ10及び後述の他の実施形態で用いる陽極流電体の材料としては、表鋼板2の金属体に比べて電位が低く、当該金属体よりもイオン化傾向の大きい金属であれば、いずれの金属を用いてもよい。例えば、亜鉛、アルミ、及びマグネシウムのいずれか、又は、これらの少なくともいずれかを含む合金が好適に挙げられるが、これらに限定されるものではない。
より具体的には、ねじ10として、例えば、下記表1のような組成のアルミニウム合金ねじ(A7050 株式会社丸エム製作所製)、下記表2のような組成のマグネシウム合金ねじ(AZX912 株式会社丸エム製作所製)等を好適に用いることができる。
(第2の実施形態)
次に、本願の第2の実施形態に係る防錆方法及び防錆構造について、図2(a)を参照しながら説明する。図2(a)は、第2の実施形態の防錆方法によって得られた防錆構造を備えた外装材の概略構成図である。
図2(a)に示す第2の実施形態の外装材1は、図1(a)に示す第1の実施形態の外装材1と同様の構成を備えている。また、第2の実施形態の防錆構造20’は、ねじ10の頭部12とその周辺の表鋼板2の表面を、アルミ製等の導電性テープ13で被覆したこと以外は、第1の実施形態の防錆構造20と同様の構成を備えている。したがって、第1の実施形態と同様の構成には、第1の実施形態と同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。以降の実施形態も同様である。
また、第2の実施形態の防錆方法も、ねじ10の頭部12を、導電性テープ13で被覆する工程をさらに備えていること以外は、第1の実施形態の防錆方法と同様の工程で施工するたことができる。
第2の実施形態でも、外装材1の構成や材料、ねじ10の構成や材料は、第1の実施形態のこれらと同様の構成や材料とすることができる。
(第3の実施形態)
次に、本願の第3の実施形態に係る防錆方法及び防錆構造について、図3を参照しながら説明する。図3(a)は、本願の第3実施形態に係る防錆方法によって得られた防錆構造を備える外装材の概略構成図である。
上記第1、第2の実施形態では、外装材1を表鋼板2と、石こうボード3と、裏鋼板4とで構成しているが、第3の実施形態では、外装材1Aを、金属板2Aから構成している。この金属板2Aは、例えば、亜鉛鉄板、ステンレス鋼板、冷延鋼板等が挙げられる。
第3の実施形態の外装材1Aには、樋などの付帯物7がねじ留めされている。第3の実施形態の防錆構造20は、このような外装材1A及び付帯物7を貫通するように打ち込まれた、陽極流電体としての釘状ねじ10Aから構成される。また、第3の実施形態の防錆方法は、金属板2Aからなる外装材1A及び外装材1Aに固定された付帯物7に、金属板2A及び付帯物7を貫通するように陽極流電体としての釘状ねじ10Aを打ち込んで固定する工程を有している。
第3の実施形態の外装材1Aのように、石こうボードとの複合でなく、金属板単独の外装材の場合も、樋などの付帯物を金属板にねじで取り付けたり、単純に付帯物と触れたりした場合、または水持ちした場合にその付近でガルバニ腐食が起こる場合がある。このような腐食を抑制するため、第3の実施形態では、金属板2Aからなる外装材1A及び付帯物7の複数箇所に、釘状ねじ10Aを打ち込んで固定している。
陽極流電体としての釘状ねじ10Aは、外装材1Aと付帯物7を貫通して打ち込まれる本体部11Aと、外装材1A及び付帯物7の外部側に配置される頭部12Aとを有して構成される。
釘状ねじ10Aの材料としては、第1、第2の実施形態のねじ10と同様に、表鋼板2の金属体に比べて電位が低く、当該金属体よりもイオン化傾向の大きい金属であれば、いずれの金属を用いてもよい。例えば、亜鉛、アルミ、及びマグネシウムのいずれか、又は、これらの少なくともいずれかを含む合金が、好適に挙げられるが、これらに限定されるものではない。
より具体的には、釘状ねじ10Aの材料として、例えば、下記表3のような組成の亜鉛線(AL6亜鉛合金線 ジンクエクセル株式会社製)等を好適に用いることができる。
なお、第3の実施形態の外装材1Aに、第1、第2の実施形態で用いるねじ10を固定してもよいし、第1、第2の実施形態の外装材1に、第3の実施形態の釘状ねじ10Aを固定してもよく、外装材1,1Aの種類や陽極流電体を固定する位置等に応じて、適宜使い分けることができる。
(第4の実施形態)
次に、本願の第4の実施形態に係る防錆方法及び防錆構造について、図4(a)を参照しながら説明する。図4(a)は、第4の実施形態の防錆方法によって得られた防錆構造を備えた外装材の概略構成図である。
図4(a)に示す第4の実施形態の外装材1Aは、図3(a)に示す第3の実施形態の外装材1Aと同様の構成を備えている。また、第4の実施形態の防錆構造20A’は、釘状ねじ10Aの頭部12Aとその周辺の付帯物7の表面を、導電性テープ13で被覆したこと以外は、第3の実施形態の防錆構造20Aと同様の構成を備えている。
また、第4の実施形態の防錆方法は、釘状ねじ10Aの頭部12Aとその周辺を、導電性テープ13で被覆する工程をさらに備えていること以外は、第3の実施形態の防錆方法と同様の工程で施工することができる。
第4の実施形態でも、外装材1の構成や材料、釘状ねじ10Aの構成や材料は、第3の実施形態のこれらと同様の構成や材料とすることができる。
以下、第1〜第4の実施形態に係る防錆方法及び防錆構造の作用効果を説明する。上記各実施形態の防錆方法は、金属体(表鋼板2、金属板2A)を有する建造物の外装材1,1Aの1カ所又は複数箇所に、金属体に比べて電位が低い陽極流電体(ねじ10、釘状ねじ10A)を固定する工程を有している。そして、陽極流電体が、外装材1内に少なくとも一部が挿入される本体部11,11Aと、外装材1の外部に配置される平坦な頭部12,12Aと、を有する。
また、上記各実施形態の防錆構造20,20’,20A,20A’は、金属体(表鋼板2、金属板2A)を有する建築物の外装材1,1Aの1カ所又は複数箇所に固定されて金属体に比べて電位が低い陽極流電体(ねじ10、釘状ねじ10A)を備えて構成される。陽極流電体が、外装材1,1A内に挿入される本体部11,11Aと、外装材の外部に配置される平坦な頭部12,12Aと、を有する。
したがって、上記各実施形態によれば、外装材1,1Aの金属体(表鋼板2、金属板2A)とこれよりも陽極流電体(ねじ10、釘状ねじ10A)との間に電位差が生じ、防錆に必要な電流が陽極流電体から金属体に補充され、金属体の腐食を防止することができる。また、このように優れた防錆性を、金属体を有する外装材1,1Aの1カ所又は複数箇所に陽極流電体を固定するだけで簡易に得ることができる。しかも、腐食が発生するおそれのある任意の箇所に、自由に固定することができる。したがって、建造物の外装材1,1Aの防錆性を向上させることができ、しかも施工が容易な防錆方法及び防錆構造20,20’,20A,20A’を提供することができる。
また、上記実施形態で用いる陽極流電体(ねじ10、釘状ねじ10A)が、本体部11,11Aと頭部12,12Aとを有するねじ10、ビス、ボルト、及び釘(釘状ねじ10A)のいずれかであれば、外装材1,1Aへの固定を、ドライバー、ハンマー、六角レンチ等の締結具を用いて容易に行うことができる。また、軽量で取扱性や施工性を向上させることができる。
また、上記各実施形態において、陽極流電体(ねじ10、釘状ねじ10A)が、亜鉛、アルミ、及びマグネシウムのいずれか、又は、これらの少なくともいずれかを含む合金からなるものとすれば、単位質量当たりの有効電気量が極めて大きく、長期の防錆が可能となるとともに、より安定した防錆性能を維持することができる。また、軽量で取扱性を向上させることができる。
また、上記第2、第4の実施形態では、陽極流電体(ねじ10、釘状ねじ10A)の頭部12,12Aを、導電性を有するシート部材として導電性テープ13で被覆する工程を、さらに有している。すなわち、第2、第4の実施形態の防錆構造20’,20A’では、導電性テープ13をさらに備えている。このように伝導性を有するシート部材を用いることで、流電陽極体が腐食しても、シート部材によって導電性を維持できるため、防錆性をより向上させることができる。
なお、第2、第4の実施形態では、アルミ製の導電性テープ13を用いているが、これに限定されることはなく、外装材1,1Aの金属体に応じて、亜鉛製、銅製、ステンレス製等、公知の適宜の導電性テープを用いることができる。また、導電性テープに限定されるものでもなく、シート状の適宜の伝導性素材を用いることができる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1〜実施例12、比較例1〜3)
実施例1〜実施例12の防錆構造の試験体を作製し、それぞれの防錆性の確認試験を行った。実施例1〜9は、第1の実施形態と同様の防錆方法を用いて得た第1の実施形態の防錆構造20と同様の構成を備えた試験体である(図1(b)参照)。実施例10〜12は、第2の施形態と同様の防錆方法を用いて得た第2の実施形態と防錆構造20’と同様の構成を備えた試験体である(図2(b)参照)。
ただし、実施例1〜12では、外装材1をスタッド6等に取り付けるボルト5の代わりに、下記表4に示すようなねじ想定金属板8を石こうボード3の裏面に設けている。また、裏鋼板4を設けていない。実施例1〜12では、ねじ10の素材、石こうボード3の含水率を下記表4のように変えて、それぞれの防錆性の確認試験を行った。
<試験方法>
下記表4に示す予め定められた含水率の石こうボード3を用意し、図1(b)、図2(b)に示すように、亜鉛鋼板からなる表鋼板2と、下記表4に示すねじ想定金属板8で挟んだ。そして、表鋼板2とねじ想定金属板8とを導線(導電テープ9)で繋ぐことで、ガルバニ腐食が発生する状態を再現した。次いで、表4に示す素材のねじ10を、表鋼板2に打ち込み、試験体とし、さらに水分が蒸発しないように真空パック器を用いて、密封した。
なお、各実施例で用いた陽極流電体としてのねじ10は、鉄板に予め4.8mmの穴を空けて打ち込んだ結果、鉄板上に固定することが可能であることを確認した。また、実施例10〜12では、表鋼板2とねじ10との導電性を高めるため、導電性テープ13(3M社製電気テープ)を頭部12に貼り付けた仕様について評価した。
密封した各実施例の試験体は、70℃の温水を循環した熱板に挟み込み、1ヶ月後に錆の発生状況を観察した。また、比較例1〜3として、ねじ10を固定していない外装材1について、石こうボード3の含水率と、ねじ想定金属板とを変えて、各実施例と同様の試験方法で防錆性(防食性)の確認試験を行った。実施例1〜12、比較例1〜3の試験結果を下記表4に示す。
外装材1の各部材と、ねじ10の仕様を記載する。
亜鉛鋼板:日新製鋼製 板厚0.4mm、亜鉛付着厚8.3μm
石こうボード:吉野石こう製板厚12.5mm
ねじ(陽極流電体):サイズ M5×10mm 皿ねじ、亜鉛製のねじについては、頭径8mm、首下径5mmに成形した釘形状のものを使用。マグネシウム、アルミニウム製のねじについては、0.1N硫酸に10秒浸漬し、酸化被膜を除去。
上記表4の結果から、陽極流電体としてのねじ10を取り付けた実施例1〜12では、いずれの場合においても、錆の発生を抑制できることが確認された。なお、白錆は亜鉛メッキのみ腐食したもので、赤錆は、基材の鉄板まで腐食したものである。
また、導電性テープ13を貼り付けた実施例10〜12では、流電陽極材料が腐食しても導電性を維持できるため、錆の発生をさらに抑制できることがわかった。
(実施例13〜実施例18、比較例4)
実施例13〜実施例18の防錆構造の試験体を作製し、それぞれの防錆性の確認試験を行った。実施例13〜15は、第3の実施形態と同様の防錆方法を用いて得た第3の実施形態の防錆構造20Aと同様の構成を備えた試験体である(図3(b)参照)。実施例15〜18は、第4の施形態と同様の防錆方法を用いて得た第4の実施形態と防錆構造20A’と同様の構成を備えた試験体である(図4(b)参照)。
ただし、実施例13〜18では、付帯物7を用いていない。実施例16〜18でも、頭部12Aに貼り付ける導電性テープ13として3M社製電気テープを用いた。また、実施例13〜18では、釘状ねじ10Aの素材を下記表5のように変えて、それぞれの防錆性の確認試験を行った。
<試験方法>
各実施例において、厚さ1mmの冷延鋼板からなる金属板2Aに、流電陽極体として下記表5に示す素材の釘状ねじ10Aを打ち込み、50℃95%RHに調整した恒温恒湿槽に各試験体を収容し、7日後に金属板2Aの錆の発生状況を確認した。また、比較例4として、釘状ねじ10Aを打ち込んでいない冷延鋼板についても、各実施例と同様の試験方法で防錆性の確認試験を行った。実施例13〜18、比較例4の試験結果を、下記表5に示す。
上記表5結果から、陽極流電体としての釘状ねじ10Aを取り付けた実施例13〜18では、金属板2Aに赤錆が発生したが、内部までの腐食は抑制できた。また、導電性テープ13を貼り付けた実施例16〜18では、流電陽極材料が腐食しても導電性を維持できるため、錆の発生をさらに抑制できることがわかった。これに対して、比較例4では、全面に赤錆が発生しただけでなく、内部まで腐食して貫通孔が発生した。
以上、本願の防錆方法及び防錆構造を実施形態及び実施例に基づいて説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。

Claims (5)

  1. 金属体を有する建造物の外装材の1カ所又は複数箇所に、前記金属体に比べて電位が低い陽極流電体を固定する工程を有し、
    前記陽極流電体が、前記外装材内に少なくとも一部が挿入される本体部と、前記外装材の外部に配置される平坦な頭部とを有していることを特徴とする防錆方法。
  2. 前記陽極流電体が、前記本体部と前記頭部とを有するねじ、ビス、ボルト、及び釘のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の防錆方法。
  3. 前記陽極流電体が、亜鉛、アルミ、及びマグネシウムのいずれか、又は、これらの少なくともいずれかを含む合金からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の防錆方法。
  4. 前記陽極流電体の前記頭部を、導電性を有するシート部材で被覆する工程を、さらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防錆方法。
  5. 金属体を有する建築物の外装材の1カ所又は複数箇所に固定されて前記金属体に比べて電位が低い陽極流電体を備えて構成され、
    前記陽極流電体が、前記外装材内に挿入される本体部と、前記外装材の外部に配置される平坦な頭部とを有することを特徴とする防錆構造。
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