JP2019173040A - アルミニウム−マグネシウム溶射被膜、ならびに、基材、粗面被膜、及びアルミニウム−マグネシウム溶射被膜を有する複合体 - Google Patents

アルミニウム−マグネシウム溶射被膜、ならびに、基材、粗面被膜、及びアルミニウム−マグネシウム溶射被膜を有する複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】腐食性に優れたアルミニウム−マグネシウム溶射被膜の提供、およびそのアルミニウム−マグネシウム溶射被膜を有する複合体の提供。【解決手段】亜リン酸金属系防錆顔料を含む封孔処理材で封孔処理したアルミニウム−マグネシウム溶射被膜。少なくとも金属基材、粗面被膜および金属溶射被膜をこの順で有する複合体であって、金属溶射被膜は、亜リン酸金属系防錆顔料を含む封孔処理材で封孔処理したアルミニウム−マグネシウム溶射被膜である複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム−マグネシウム溶射被膜、ならびに、基材、粗面被膜、及びアルミニウム−マグネシウム溶射被膜を有する複合体に関する。
金属溶射は、高耐久材料を形成することのできる技術として注目される防食技術であり、橋梁の桁端部等の、過酷な腐食環境に置かれた部材等に適用されている。金属溶射の中でも、亜鉛−アルミニウム(擬)合金、アルミニウム−マグネシウム合金による溶射は、特に優れた耐久性を付与できる技術として、注目を集めている。
金属を溶射により、表面が平滑な鋼材の表面に直接被覆する場合、基材と金属溶射皮膜との間には親和性や化学的結合が期待できないため、金属溶射皮膜と基材との密着性を向上させるための被溶射基材表面を処理する手段として、粗面形成材を塗付することにより粗面化処理する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2)。
そして大気中で溶射を行った場合、溶射直後の皮膜には多くの気孔が生じていることが知られており、大気中の腐食因子がこの気孔を通って素地に達し、素地が腐食することを防止するため通常封孔処理が行われている(特許文献3)。
特開平02−025555号公報 特開2010−53175号公報 特開2014−19908号公報
このような封孔処理は、被膜の開孔部に、無機質系または前記有機質系の封孔剤を用いて浸透、含浸充填させることで行われているが、アルミニウム−マグネシウム合金によって溶射した場合、前記封孔処理材ではその封孔性は不十分であり、さらなる腐食性の改善が求められている。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、腐食性に優れたアルミニウム−マグネシウム溶射被膜を提供すること、およびそのアルミニウム−マグネシウム溶射被膜を有する複合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、下記によって本発明の目的が達成できることを見出した。
(1)亜リン酸金属系防錆顔料を含む封孔処理材で封孔処理したアルミニウム−マグネシウム溶射被膜。
(2)少なくとも金属基材、粗面被膜および金属溶射被膜をこの順で有する複合体であって、該金属溶射被膜は、亜リン酸金属系防錆顔料を含む封孔処理材で封孔処理したアルミニウム−マグネシウム溶射被膜である複合体。
(3)前記粗面被膜が、25℃における収縮応力と120℃における収縮応力との差が200MPa以下である前記2記載の複合体。
本発明によれば、腐食性に優れたアルミニウム−マグネシウム溶射被膜を提供すること、およびそのアルミニウム−マグネシウム溶射被膜を有する複合体を提供することができる。
本発明のアルミニウム−マグネシウム溶射被膜は、亜リン酸金属系防錆顔料を含む封孔処理材で封孔処理したことを特徴とする。
<封孔処理材>
本発明の封孔処理材は、亜リン酸金属系防錆顔料を含むことを特徴とする。この防錆顔料の特性が本発明の効果を発現する理由は下記のように推測している。
前述の通り従来は、亜鉛−アルミニウム(擬)合金溶射とアルミニウム−マグネシウム合金溶射では、区別なく同じ封孔処理材を使用していた。
亜鉛溶射・亜鉛−アルミニウム(擬)合金溶射では、亜鉛が半分以上の割合を占め鋼材に対して十分犠牲防食作用を示すことができたことから、持続性も十分であった。鉄(Fe)の標準電極電位(VS SHE)が−0.44Vであるのに対して、亜鉛(Zn)の標準電極電位(VS SHE)は−0.76Vであることからも支持される。したがって、亜鉛自体による防食性への寄与が大きいことから、封孔処理材は孔を埋める機能を有していればよい。
一方、アルミニウム−マグネシウム合金では、アルミニウムが95%、マグネシウムが5%と圧倒的にアルミニウムの配合比が高い。アルミニウムの標準電極電位(VS SHE)は−1.68Vであるが、アルミニウムは緻密な酸化被膜を形成するため犠牲防食作用は示しにくいことが知られている。そこで、標準電極電位(VS SHE)が−2.37Vのマグネシウムが、防食性を補うために添加されている。
本発明での亜リン酸金属系防錆顔料が添加されると、亜リン酸イオンの還元効果により腐食因子である酸素を捕捉し、マグネシウムの腐食が抑制され、防食性が向上する。
≪防錆顔料≫
本発明での防錆顔料は亜リン酸金属化合物で有ればよく、たとえば亜リン酸鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸ストロンチウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸ゲルマニウムなどが挙げられる。
≪その他の材料≫
本発明の防錆顔料だけを封孔処理材として使用することもできるし、その他特許文献3に記載した、亜鉛系合金溶射で使用した材料、例えば着色顔料等を併用することもできる。本発明の防錆顔料は封孔処理材の10質量%以上であることが好ましい。
≪複合体≫
本発明は、少なくとも基材、粗面被膜およびアルミニウム−マグネシウム溶射被膜をこの順で有する複合体である場合に好ましく使用される。
≪金属基材≫
本発明の金属基材としては、鋼材を使用されているものであれば適用することができ、例えば、ブリキ板、ダル鋼板、みがき鋼板、黒皮鋼板、ケレンした錆鋼板、溶接鋼板、鋳物等の鉄製基材が挙げられるが、アルミニウム−マグネシウム合金溶射が使用される基材であることが好ましく、特に鋼材であることが好ましい。基材の表面は、Sa2.0以上のグレードに素地調整されていることが好ましい。
≪粗面被膜≫
本発明の粗面被膜が、前記文献1、2に記載の公知の粗面被膜を使用することができるが、25℃における収縮応力と120℃における収縮応力との差が200MPa以下である粗面被膜であることが好ましい。そして、ヤング率が2200N/mm以下、破断点伸びが2.0%以上、破断点応力が10N/mm以上、周波数1Hzにおける損失弾性率と周波数1Hzにおける貯蔵弾性率との比である損失正接tanδが82〜120℃の範囲内に極大値を有することが好ましい。架橋密度が0.038mol/cm以下であることが好ましい。
本発明の粗面被膜に関する実験、測定方法は下記の通りである。
[測定用単離膜の作製方法]
得られた粗面被膜形成材を、すき間10mmのアプリケーターを用いてPP板へ塗布し、室温で24時間乾燥して、単離膜(膜厚130μm)を得た。この膜について下記の評価を行った。特に断りの無い場合は、23℃55%RHの雰囲気下で測定を行った。
[ヤング率、破断点伸び、及び破断点応力の測定方法]
ロードセル(100N)を用い、オートグラフ(島津製作所 製)にて、上記単離膜について、ヤング率、破断点伸び、及び破断点応力を測定した。測定条件は、以下の通りである。
試験温度:室温(約23℃)
引張速度:20mm/min
試料長さ:30mm
試料幅:10mm
[25℃と120℃における収縮応力の差の測定方法]
RSA−GII(TAインスツルメント社製)にて、25℃と120℃における収縮応力の差を測定した。具体的には、25℃で静置した上記単離膜を24mmの試料長さに固定し、120℃に加熱した。試料温度が安定したところで試料長さを固定し、5℃/minで冷却した際の、各温度における収縮応力を記録した。測定条件は以下の通りである。
温度範囲:120〜−30℃
応力範囲:≦35N
冷却速度:5℃/min
測定長さ:24.0mm
測定幅:8.0mm
[損失正接の極大値及び架橋密度の測定方法]
RSA−GII(TAインスツルメント社製)にて、上記単離膜について、損失弾性率及び貯蔵弾性率を測定し、損失弾性率及び貯蔵弾性率から損失正接及び架橋密度を算出して、損失正接の極大値を与える温度を読み取った。測定条件は以下の通りである。
温度範囲:−30℃〜200℃
昇温速度:5℃/min
測定長さ:24.0mm
測定幅:8.0mm
周波数:1Hz
歪み:0.05%
本発明の粗面被膜における25℃における収縮応力と、120℃における収縮応力との差は、200MPa以下であり、好ましくは190MPa以下であり、より好ましくは180MPa以下である。上記差の下限は、特に限定されず、例えば、0MPa以上でよく、5MPa以上でもよい。
本発明の粗面被膜におけるヤング率は、2200N/mm以下であり、好ましくは2100N/mm以下であり、より好ましくは2000N/mm以下である。ヤング率の下限は、特に限定されず、例えば、500N/mm以上でよく、1000N/mm以上でもよい。なお、本明細書において、粗面被膜のヤング率は、式E=F/(L’/L)(式中、Eは当該ヤング率、Fは上記粗面被膜の1%伸び応力、L’は上記粗面被膜の1%伸び長さ、Lは上記粗面被膜の初期長さを表す。)から算出される。
本発明における破断点伸びは、2.0%以上であり、好ましくは2.1%以上であり、より好ましくは2.2%以上である。上記破断点伸びの上限は、特に限定されず、例えば、10%以下でよく、5%以下でもよい。
本発明の粗面被膜における破断点応力は、10N/mm以上であり、好ましくは11N/mm以上であり、より好ましくは12N/mm以上である。上記破断点応力の上限は、特に限定されず、例えば、100N/mm以下でよく、50N/mm以下でもよい。
本発明の粗面被膜における周波数1Hzにおける損失弾性率と、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率と、の比である損失正接tanδは、好ましくは82〜120℃の範囲内、より好ましくは83〜110℃の範囲内、更により好ましくは85〜105℃の範囲内に極大値を有する。
本発明の粗面被膜における架橋密度は、好ましくは0.038mol/cm以下であり、より好ましくは0.035mol/cm以下であり、更により好ましくは0.03mol/cm以下である。上記架橋密度の下限は、特に限定されず、例えば、0.005mol/cm以上でよく、0.007mol/cm以上でもよい。なお、粗面被膜の架橋密度は、式n=E’/3RT(式中、nは当該架橋密度、E’は上記粗面被膜の周波数1Hzにおける平坦領域貯蔵弾性率、Tは上記平坦領域貯蔵弾性率の絶対温度、Rは気体定数(8.31×10Pa・cc/mol・K)を表す。)から算出される。
本発明における粗面被膜のガラス転移温度は、好ましくは65℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、更により好ましくは75℃以上である。上記ガラス転移温度の上限は、特に限定されず、例えば、120℃以下でよく、100℃以下でもよい。
本発明の粗面被膜における粗面被膜の厚みは、粗面被膜−金属溶射被膜界面で剥離が生じにくい限り、特に限定されず、例えば、20〜100μmであり、好ましくは30〜80μmであり、より好ましくは40〜70μmである。
上記粗面被膜は、1層単独で存在しても、2層以上存在してもよい
≪粗面被膜形成材≫
本発明における粗面被膜形成材は、本発明における粗面被膜を形成するのに用いられ、結合剤及び骨材を含有する。上記粗面被膜形成材は、更に、中空フィラーを含有してもよい。上記粗面被膜形成材は、これらに加えて、必要に応じ、顔料;分散剤、発泡防止剤、たれ防止剤等の添加剤;上記成分を溶解又は分散する溶媒を含有してもよい。
≪結合剤≫
結合剤としては、ある程度の乾燥性、硬度、密着性、耐水性、及び耐久性のある被膜が得られるものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、特公平2−54422号公報に記載されているような、一液常温硬化型樹脂である熱可塑性アクリル樹脂、ビニ
ル樹脂、塩化ゴム、アルキド樹脂;二液硬化型樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、エポキシ樹脂;熱硬化性樹脂であるメラミン−アルキド樹脂、メラミン−アクリル樹脂、メラミン−ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等の、各種塗料に使用されている樹脂が使用可能である。中でも、以下の結合剤は、基材表面との密着性等に優れた被膜が得られるので、特に好ましい。
(I)重量平均分子量300以上のエポキシ樹脂とアミノ系化合物とを反応させて得られる樹脂からなる結合剤
この場合、エポキシ樹脂の製造のしやすさ、有機溶剤に対する溶解のしやすさ等の観点からエポキシ樹脂の重量平均分子量を300〜5000、好ましくは500〜3000とする。前記エポキシ樹脂としては、次のようなものが例示される。ビスフェノール型エポキシ樹脂として、一般に市販されている油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート827、同828、同834、同836、同1001、同1004、同1007;チバガイギー(株)製の商品名アラルダイトGY252、同GY250、同GY260、同GY280、同6071、同6084、同6097;ダウ・ケミカル(株)製の商品名DER330、同331、同337、同661、同664;大日本インキ化学工業(株)製の商品名エピクロン800、同1010、同1000、同3010;フェノールノボラック型エポキシ樹脂として例えば、ダウ・ケミカル(株)製の商品名DEN431、同438、同439;チバガイギー(株)製の商品名EPN1138;大日本インキ化学工業(株)製の商品名エピクロンN−565、同N−577;ポリグリコール型エポキシ樹脂として例えばチバガイギー(株)製の商品名アラルダイトCT−508;ダウ・ケミカル(株)製の商品名DER732、同736、同741;エステル型エポキシ樹脂として例えば大日本インキ化学工業(株)製の商品名エピクロン200、同400、同1400;エポキシ化ポリブタジエンとして、日本曹達(株)製の商品名BF−1000;エポキシ化油としてアデカ・アーガス化学(株)製の商品名アデカ・サイザーO−180、同O−130P;等を挙げることができる。更に、ポリオール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ハロゲン含有エポキシ樹脂、シリコン変性エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂の誘導体も使用可能である。
前記アミノ系化合物としては、芳香族モノアミン、芳香族ジアミン、芳香族モノイミン、芳香族ジイミン、脂肪族モノアミン、脂肪族ジアミン、脂肪族モノイミン、脂肪族ジイミン、複素環式モノアミン、複素環式ジアミン、複素環式モノイミン、複素環式ジイミン、あるいはこれらの誘導体、もしくは、通常、エポキシ樹脂の硬化剤に用いられているポリアミド樹脂等が挙げられる。
これらを具体的に例示すると、アニリン、メチルアニリン、トルイジン、オルト−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、パラ−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、エチレンイミン、ヘキサメチレンジアミン等の化合物、あるいは一般に市販されている味の素(株)製の商品名エポメートB−002、同C−002、同S−005、三和化学(株)製の商品名サンマイド320、同330、第一ゼネラル(株)製の商品名パーサミド400、同401、同711、同754等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上の混合物として使用する。
このようなエポキシ樹脂とアミノ系化合物とを必要に応じて溶媒存在下で、50〜180℃の温度で反応させることにより、本発明における粗面被膜形成材に好適な結合剤である樹脂(I)が得られる。なお両者の反応における混合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基とアミノ系化合物中の活性水素当量比が(1:1.1〜1.6)、好ましくは(1:1.2〜1.5)となるような割合である。後者が前記範囲より多くなると、得られる被膜の耐水性等が低下する傾向にあり、逆に少なくなると後述するキレート形成能を有する化合物と塩を形成させる効果が低下し、得られる被膜の密着性等が低下する傾向にある。
(II)重量平均分子量300以上のエポキシ樹脂とアミノ系化合物硬化剤からなり、かつ前記エポキシ樹脂中のエポキシ基とアミノ系化合物中の活性水素の当量比が(1:0.5〜2.0)になるよう混合した混合物からなる結合剤
前記エポキシ樹脂としては、前述と同様なエポキシ樹脂が使用可能である。前記アミノ系化合物としては、従来から通常エポキシ樹脂用硬化剤として使用されているポリアミド樹脂、アミンアダクト樹脂、ポリアミン等が代表的なものとして挙げられる。
前記ポリアミド樹脂は、ダイマー酸(一般の工業製品はモノマー酸約3パーセント、ダイマー酸約85パーセント、トリマー酸を約12パーセント含有する)とエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、あるいはメタフェニレンジアミン等のポリアミン類との縮合生成物である。
例えば一般に市販されている富士化成工業(株)製商品名トーマイドY−25、同245、同2400、同2500、トーマイド210、同215、同215−X、同225、同225−X、同235S、同235A;第一ゼネラル(株)製商品名ゼナミド2000、パーサミド115、同125、同100、同140、同230、同280、同400、同401、同415、DSX−1280;三和化学(株)製商品名サンマイド320、同330;油化シェルエポキシ(株)製商品名エピキュアー4255等が挙げられる。
前記アミンアダクト樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂等の前記したエポキシ樹脂とエチレンジアミン、ジエチレントリアミンあるいはメタフェニレンジアミン等のポリアミン類との付加生成物である。例えば一般に市販されている富士化成工業(株)製商品名トーマイド238、フジキュアー202、同110;旭電化(株)製商品名アデカハードナーEH−531、同101、同532、同551等が挙げられる。
更に前記アミンアダクトとしては、ブチルグリシジルエーテル、パーサティック酸のグリシジルエステル、あるいはビスフェノール型エポキシ樹脂等と複素環状ジアミンとの付加生成物もある。例えば、一般に市販されている、味の素(株)製商品名エポメートB−002、同B−001、同C−002、同S005、同S−002、同LX−1、同RX−2、同RX−3、同N−001の如きものがある。
前記硬化剤であるアミノ系化合物はエポキシ樹脂と橋かけ反応を行なうため1分子中に少なくとも2個以上の窒素原子及びこれに結合した活性水素を有することが必要である。該アミノ系化合物としては、特にその他の制限はなく、アミン価として50以上であることが好ましい。
但しアミノ系化合物のアミン価が極めて大きくなると主剤としてのエポキシ樹脂と混合した後の可使時間が短くなるという制約が生じる。このようなエポキシ樹脂と硬化剤であるアミノ系化合物からなる結合剤は、予め混合しておくと反応し、ゲル化するため、塗布される使用直前に混合するのが好ましい。両者の混合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基とアミノ系化合物中の活性水素の当量比が(1:0.5〜2.0)、好ましくは(1:0.8〜1.5)である。この範囲で防食性、耐湿性等に優れた本来の特性を発揮する被膜を形成する。
≪骨材≫
本発明で用いる骨材は、得られる被膜が所望の表面粗さになるよう、平均粒子径が5〜200μm、好ましくは20〜100μmである。該骨材としては、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉄、珪素等の金属、あるいは合金もしくは酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。具体的には、例えば酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、炭化珪素、窒化硼素等が挙げられる。また、使用する溶媒に溶解しないアクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン等の合成樹脂粉末を使用してもよい。これらの粒子を単独でも、2種以上の混合物としても使用可能である。
これらの骨材のうち、使用される結合剤に対する化学的安定性や溶射材と腐食電池を形成せず、硬く、かつ粗面被膜形成材中で沈澱しにくいこと等を考慮すると、ケイ砂、アルミナ、炭化珪素等が特に好ましい。骨材は、得られる乾燥被膜中に含まれる容積百分率(PVC)が好ましくは20〜80%、より好ましくは40〜65%である。
中空フィラーとしては、特に限定されず、例えば、ガラス等の無機材料からなる中空フィラー;熱硬化性ポリイミド等の有機材料からなる中空フィラーが挙げられ、具体的には、中空ガラスバルーン等が挙げられる。中空フィラーは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
≪溶媒≫
本発明で用いる溶媒としては、結合剤を溶解しうる有機溶剤が適当であり、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、芳香族石油ナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられる。前記溶剤は1種又は2種以上の混合溶剤として用いられる。
溶媒の配合量は、塗装作業性、所望の表面粗さを有する被膜の形成されやすさ等を考慮して、粗面被膜形成材の固形分が40〜90質量%、好ましくは60〜90質量%である。
<複合材の製造方法>
本発明における複合材の製造方法は、少なくとも本発明における粗面被膜を基材上に形成する工程(以下、「粗面被膜形成工程」ともいう。)、アルミニウム−マグネシウム合金を溶射して溶射被膜を形成する工程(以下、「溶射被膜形成工程」ともいう。)及び封孔処理工程を含む。
≪粗面被膜形成工程≫
粗面被膜形成工程においては、例えば、本発明における粗面被膜形成材を基材に塗布することにより、本発明における粗面被膜を基材上に形成することができる。前述の通り、前記基材の表面は、Sa2.0以上のグレードに素地調整されていることが好ましい。
基材への粗面被膜形成材の塗布方法としては、特に限定されず、通常の塗料と同様に、例えば、エアースプレー法、エアレススプレー法、ロール塗装法、刷毛塗装法等の各種の塗布方法が挙げられ、特に塗装作業性や塗布量のコントロールの容易さ等からエアレススプレー法が適当である。粗面被膜形成材の塗布量は、好ましくは10〜250g/mであり、より好ましくは50〜150g/mである。
≪アルミニウム−マグネシウム合金溶射被膜形成工程≫
アルミニウム−マグネシウム合金溶射被膜形成工程においては、アルミニウム−マグネシウム合金溶射により前記粗面被膜上に金属を溶射して金属溶射被膜を形成する。ここで、アルミニウム−マグネシウム合金を溶射前の粗面被膜は必ずしも完全乾燥(硬化)状態でなくともよい。即ち、半乾燥(硬化)であってもよい。最も好ましいのは、乾燥状態の粗面被膜上にアルミニウム−マグネシウム合金を溶射し、その後、粗面被膜を完全硬化させる方法である。
アルミニウム−マグネシウム合金溶射被膜の膜厚としては、特に限定されず、例えば、50〜500μmであり、粗面被膜−金属溶射被膜界面での密着性の観点等から、100〜150μmが好ましい。
アルミニウム−マグネシウム合金の溶射方法としては、特に限定されず、公知の溶射方法でよく、例えば、ガスフレーム溶射方法、電気アーク溶射方法等の高温溶射方法、減圧内アーク溶射機による低温溶射方法等が挙げられる。
≪封孔処理工程≫
封孔処理工程においては、前述のアルミニウム−マグネシウム合金溶射被膜上に塗装する。封孔処理材の塗布量としては、特に限定されず、例えば、100〜500g/mであり、封孔処理の観点等から150〜300g/mが好ましい。封孔処理材の塗装方法としては、特に限定されず、公知の塗装方法でよく、例えばスプレー塗装、刷毛塗り等が挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
Sa2.0グレードに素地調整されたブラスト鋼板上に対し、アルミニウム−マグネシウム溶射(溶射角度90°、ガン距離20cm、溶射膜厚400μm)を行った。
この溶射被膜に対し、表1記載の組成を有する封孔処理剤をスプレー塗布した。塗布量は250g/mとした。さらに大日本塗料(株)製商品名Vフロン#100H中塗、Vフロン#100H上塗をそれぞれ塗布量160g/m、150g/mで施し、試験片を作製した。この試験片について防食性評価を行った。
防食性評価は、NEXCO規格(構造物施工管理要領 橋梁建設編 金属溶射)に記載されている方法で人工傷を加えた試験片を作製し、耐複合サイクル防食性を実施し評価した。
評価基準:○変状なし、×発錆もしくは人工傷部の変状あり。
Figure 2019173040
Figure 2019173040
注1) 三菱化学製 jER1001
注2) 大都産業社製 ダイトクラールHD-Q
注3) 大都産業社製 ダイトクラールHD-G
前記表1,2で示す通り、本発明では防食性に優れていることが判る。

Claims (3)

  1. 亜リン酸金属系防錆顔料を含む封孔処理材で封孔処理したアルミニウム−マグネシウム溶射被膜。
  2. 少なくとも金属基材、粗面被膜および金属溶射被膜をこの順で有する複合体であって、該金属溶射被膜は、亜リン酸金属系防錆顔料を含む封孔処理材で封孔処理したアルミニウム−マグネシウム溶射被膜である複合体。
  3. 前記粗面被膜が、25℃における収縮応力と120℃における収縮応力との差が200MPa以下である請求項2記載の複合体。
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