以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明で用いる芳香族エステル化合物(A)は、下記構造式(1)
(式中Ar
1は置換または非置換の芳香族環基である。R
1は重合性不飽和結合含有置換基であり、lは0又は1〜7の整数である。R
2はアルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子の何れかであり、mは0又は1〜7の整数である。nは2又は3である。ナフタレン環上の各置換基はナフタレン環を形成するどの炭素原子に結合していても良い。)
で表され、分子中に少なくとも一つの重合性不飽和結合含有置換基を有する。
前記芳香族エステル化合物(A)としては、後述する硬化性組成物として調整する際のハンドリング性や、その硬化物の耐熱性、誘電特性とのバランスにより優れる観点から、常温(25℃)で液体であるか、あるいは、その軟化点が40℃〜200℃の範囲であることが好ましい。
重合性不飽和結合含有置換基は、前記構造式(1)中のAr1における芳香族環基上の置換基、或いはR1として分子中に存在する。
前記構造式(1)中のAr1は置換または非置換の芳香族環基であり、炭素原子数は3〜30の範囲であることが好ましい。構造式(1)中のnは2または3であることから、当該芳香族環基を構成する芳香族環の水素原子のうち2つまたは3つが構造式(1)中の括弧内の構造部位に置換されることとなる。
前記芳香族環基としては、特に制限されないが、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等の単環芳香族化合物から水素原子が2つまたは3つ除かれたもの;ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等の縮環芳香族化合物から水素原子が2つまたは3つ除かれたもの等の、芳香族化合物から水素原子が2つまたは3つ除かれたものが挙げられる。また、これらの芳香族化合物を複数組み合わせたものであってもよく、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等の環集合芳香族化合物から水素原子が2つまたは3つが除かれたもの;ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、1,1−ジフェニルエタン、2,2−ジフェニルプロパン、ナフチルフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジナフチルメタン、ジナフチルプロパン、フェニルピリジルメタン、フルオレン、ジフェニルシクロペンタン等のアルキレンにより連結される芳香族化合物から水素原子が2つまたは3つ除かれたもの等が挙げられる。
中でも、より誘電特性に優れる硬化物が得られることから、Ar1は置換または非置換のベンゼン環又はナフタレン環から水素原子が2つまたは3つ除かれたものであることが好ましく、置換または非置換のベンゼン環から水素原子が2つまたは3つ除かれたものであることがより好ましい。
Ar1に係る芳香族環基は、置換基を有していてもよい。この際、「芳香族環基の置換基」とは、前記芳香族環基を構成する芳香族環の水素原子の少なくとも1つと置換されるものである。芳香族環基の置換基の具体例としては、特に制限されないが、アルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
前記アルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
前記アルキルオキシカルボニル基としては、特に制限されないが、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
前記アルキルカルボニルオキシ基としては、特に制限されないが、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、Ar1は重合性不飽和結合含有置換基を有していてもよい。重合性不飽和結合含有置換基の具体例としては、アルケニル基やアルキニル基等が挙げられる。
前記アルケニル基としては、特に制限されないが、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、1−ウンデセニル基、1−ペンタデセニル基、3−ペンタデセニル基、7−ペンタデセニル基、1−オクタデセニル基、2−オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1,3−ブタジエニル基、1,4−ブタジエニル基、ヘキサ−1,3−ジエニル基、ヘキサ−2,5−ジエニル基、ペンタデカ−4,7−ジエニル基、ヘキサ−1,3,5−トリエニル基、ペンタデカ−1,4,7−トリエニル基等が挙げられる。
前記アルキニル基としては、特に制限されないが、エチニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1,3−ブタジイニル基等が挙げられる。
前記重合性不飽和結合含有置換基は置換基をさらに有していてもよい。この際、「重合性不飽和結合含有置換基の置換基」とは、前記重合性不飽和結合含有置換基を構成する水素原子の少なくとも1つと置換されるものである。当該重合性不飽和結合含有置換基の置換基の具体例としては、アルキルオキシカルボニル基、炭アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。この際、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子としては上述したものが挙げられる。
これらのうち、重合性不飽和結合含有置換基としては、置換または非置換の炭素原子数2〜30のアルケニル基であることが好ましく、置換または非置換の炭素原子数2〜10のアルケニル基であることがより好ましく、置換または非置換の炭素原子数2〜5のアルケニル基であることがさらに好ましく、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基であることが特に好ましく、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基であることが最も好ましい。
Ar1の好ましい構造としては、下記式(2−1)〜(2−17)が挙げられる。
この際、上記式(2−1)〜(2−17)において、「*」は、「−C(O)OAr2」に結合する位置を示す。なお、「−*」は芳香環のどの位置に結合されていてもよい。
これらのうち、式(2−1)〜(2−11)であることが好ましく、式(2−1)、(2−2)、(2−6)、(2−7)、(2−9)であることがより好ましく、式(2−1)、(2−2)、(2−6)、(2−7)であることがさらに好ましい。また、芳香族エステル化合物(A)の高ハンドリング性、低粘度である観点においては(2−1)、(2−2)であることが好ましく、一方、得られる硬化物においてより耐熱性であり、低誘電特性とのバランスに優れる観点からは、(2−6)、(2−7)であることが好ましい。
なお、式(2−1)〜(2−17)の芳香族環の水素原子の少なくとも1つが不飽和結合含有基と置換していてもよい。
前記構造式(1)中のR1は重合性不飽和結合含有置換基を表す。重合性不飽和結合含有置換基の具体例としては、アルケニル基やアルキニル基等が挙げられる。
前記アルケニル基としては、特に制限されないが、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、1−ウンデセニル基、1−ペンタデセニル基、3−ペンタデセニル基、7−ペンタデセニル基、1−オクタデセニル基、2−オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1,3−ブタジエニル基、1,4−ブタジエニル基、ヘキサ−1,3−ジエニル基、ヘキサ−2,5−ジエニル基、ペンタデカ−4,7−ジエニル基、ヘキサ−1,3,5−トリエニル基、ペンタデカ−1,4,7−トリエニル基等が挙げられる。前記アルキニル基としては、特に制限されないが、エチニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1,3−ブタジイニル基等が挙げられる。
前記重合性不飽和結合含有置換基は置換基をさらに有していてもよい。この際、「重合性不飽和結合含有置換基の置換基」とは、前記重合性不飽和結合含有置換基を構成する水素原子の少なくとも1つと置換されるものである。当該重合性不飽和結合含有置換基の置換基の具体例としては、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。この際、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子としては上述したものが挙げられる。
これらのうち、重合性不飽和結合含有置換基としては、置換または非置換の炭素原子数2〜30のアルケニル基であることが好ましく、置換または非置換の炭素原子数2〜10のアルケニル基であることがより好ましく、置換または非置換の炭素原子数2〜5のアルケニル基であることがさらに好ましく、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基であることが特に好ましく、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基であることが最も好ましい。
構造式(1)中のlは0又は1〜7の整数である。特に、硬化性に優れ、また、硬化物における耐熱性や誘電特性に一層優れる硬化性組成物となることから、lの少なくとも一つは1以上の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。更に、全てのlが1以上の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
前記構造式(1)中のR2はアルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。アルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子としては上述したものが挙げられる。
前記構造式(1)で表される芳香族エステル化合物(A)の具体的な構造としては、特に制限されないが、下記化学式(3−1)〜(3−11)で表される化合物が挙げられる。
前記芳香族エステル化合物(A)の製造方法は特に制限されず、適宜公知の方法により製造することができる。
一実施形態において、芳香族エステル化合物(A)の製造方法は、前記構造式(1)中Ar1で表される芳香族環基を有するポリカルボン酸化合物またはその誘導体と、前記構造式(1)中のナフタレン環構造部位に対応するナフトール化合物と、を反応させる工程を含む。
(ポリカルボン酸化合物またはその誘導体)
前記ポリカルボン酸化合物またはその誘導体は、置換または非置換の芳香族環基を有する。この際、「ポリカルボン酸化合物の誘導体」として、カルボン酸の酸ハロゲン化物等が挙げられる。芳香族環基中の炭素原子数は3〜30の範囲であることが好ましい。
前記芳香族環基および芳香族環基の置換基は上述したものと同様である。
具体的なポリカルボン酸化合物またはその誘導体は下記化学式(4−1)〜(4−15)で表される化合物が挙げられる。
上記化学式(4−1)〜(4−15)において、R1はヒドロキシ基、ハロゲン原子である。また、R2は重合性不飽和結合含有置換基である。この際、前記重合性不飽和結合含有置換基は上述したものと同様である。さらに、pは、2または3である。また、qは0または1以上の整数であり、好ましくは0または1〜3であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。尚、上記化学式における芳香環上の置換基の位置については、便宜上同一の芳香環上に記載しているが、例えば、上記化学式(4−7)等において、R1OC、R2は異なるベンゼン環上に置換していてもよく、1分子中における置換基の個数として、p及びqであることを示している。
具体的なポリカルボン酸化合物またはその誘導体としては、特に制限されないが、イソフタル酸、テレフタル酸、5−アリルイソフタル酸、2−アリルテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸;トリメリット酸、5−アリルトリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸;ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、3−アリルナフタレン−1,4−ジカルボン酸、3,7−ジアリルナフタレン−1,4−ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸;2,4,5−ピリジントリカルボン酸等のピリジントリカルボン酸;1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリカルボン酸等のトリアジンカルボン酸;これらの酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらのうち、ベンゼンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸であることが好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリドであることがより好ましく、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリドであることがさらに好ましい。
上述のポリカルボン酸化合物またはその誘導体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ナフトール化合物)
ナフトール化合物の具体例としては、下記化学式(5−1)〜(5−3)で表される化合物が挙げられる。
上記化学式(5−1)〜(5−3)において、R2は重合性不飽和結合含有置換基である。この際、前記重合性不飽和結合含有置換基は上述したものと同様である。さらに、qは0または1以上の整数であり、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
具体的なナフトール化合物としては、特に制限されないが、ナフトール;2−アリル−1−ナフトール、1−アリル−2−ナフトール、3−アリル−1−ナフトール、3−アリル−1−ナフトール等のアリルナフトールが挙げられ、2−アリル−1−ナフトール、1−アリル−2−ナフトールであることがより好ましい。
上述のナフトール化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリカルボン酸化合物またはその誘導体、およびフェノール化合物の使用量としては、特に制限されないが、フェノール化合物のヒドロキシ基のモル数に対するポリカルボン酸化合物またはその誘導体のカルボキシ基および/またはその誘導基(ハロゲン化アシル基等)のモル数のモル比〔(カルボキシ基および/またはその誘導基)/(ヒドロキシ基)〕が、0.8〜3.0であることが好ましく、0.9〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.2であることがさらに好ましい。
反応条件については特に制限されず、適宜公知の手法が採用されうる。
反応時のpHは、特に制限されないが、11以上であることが好ましい。この際、pHの調整は、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等の塩基が使用されうる。
反応温度も特に制限されず、20〜100℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。
反応圧力も特に制限されず、常圧であることがより好ましい。
反応時間も特に制限されず、0.5〜10時間であることが好ましく、1〜5時間であることがより好ましい。
本発明で用いるマレイミド化合物(B)は、分子中にマレイミド基を有する化合物であればよく、その他の具体構造は特に限定なく多種多様な化合物を用いることができる。中でも、硬化性組成物の硬化性や硬化物における耐熱性、誘電特性に優れることから、1分子中にマレイミド基を2個以上有する化合物が好ましい。具体的には、1分子中にマレイミド基を2つ有するビスマレイミド化合物や、1分子中にマレイミド基を3つ以上有するポリマレイミド化合物等が挙げられる。マレイミド化合物(B)は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記ビスマレイミド化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(6)で表される化合物等が挙げられる。
(式中Xは二価の有機基である。R
3は水素原子、脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子の何れかであり、式中に存在する複数のR
3は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
前記構造式(6)中のR3は水素原子、脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子の何れかである。前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等のアルキル基;シクロへキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基等の重合性不飽和結合含有基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記構造式(6)中のXの具体構造は特に限定されず、どのような構造部位であってもよい。特に、硬化物における耐熱性や誘電特性に一層優れる硬化性組成物となることから、Xが芳香環含有構造部位であることが好ましい。芳香環含有構造部位の具体例としては、例えば、下記構造式(X−1)〜(X−10)の何れかで表されるもの等が挙げられる。
[式中R
4は互いに独立して重合性不飽和結合含有基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかである。R
5は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子の何れかである。Yはアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルホニル基、酸素原子、硫黄原子の何れかである。式(X−4)において複数存在するYは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。Zは炭素原子又は窒素原子である。但し、式(X−8)中のZは炭素原子である。iは0又は1〜4の整数、lは0又は1〜6の整数、mは0又は1〜5の整数、nは0又は1〜7の整数、oは0又は1〜3の整数である。j及びkは2以上の整数である。ナフタレン環上の結合点及び置換基の位置はナフタレン環を形成するどの炭素原子上であってもよい。]
前記構造式(X−1)〜(X−10)中のR4は重合性不飽和結合含有基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかである。前記重合性不飽和結合含有基において重合性不飽和結合とは、例えば、炭素間二重結合や炭素間三重結合等が挙げられる。前記重合性不飽和結合含有基のうち、炭素間二重結合を有するものの具体例としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アリル基、(メタ)アリルオキシ基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、1−ウンデセニル基、1−ペンタデセニル基、3−ペンタデセニル基、7−ペンタデセニル基、1−オクタデセニル基、2−オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1,3−ブタジエニル基、1,4−ブタジエニル基、ヘキサ−1,3−ジエニル基、ヘキサ−2,5−ジエニル基、ペンタデカ−4,7−ジエニル基、ヘキサ−1,3,5−トリエニル基、ペンタデカ−1,4,7−トリエニル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルキレンオキシ基等が挙げられる。また、炭素間三重結合を有するものの具体例としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1,3−ブタジイニル基等が挙げられる。
前記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等のアルキル基;シクロへキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記重合性不飽和結合含有基やアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記重合性不飽和結合含有基やアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。
これらの中でも、硬化物における耐熱性や誘電特性に優れることから、R4はビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アリル基、(メタ)アリルオキシ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、重合性不飽和結合含有基を有するアラルキル基の何れかであることが好ましい。
前記構造式(X−3)、(X−4)中のYはアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルホニル基、酸素原子、硫黄原子の何れかである。前記アルキレン基及びハロゲン化アルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが炭素原子数1〜4の範囲であることが好ましい。
前記構造式(X−2)中のjは2又は3であることが好ましい。また、前記構造式(X−4)中のkは2又は3であることが好ましい。
前記構造式(X−6)、(X−7)中のR5は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子の何れかである。前記アルキル基及びハロゲン化アルキル基の炭素原子数は特に限定されないが炭素原子数1〜4の範囲であることが好ましい。
前記マレイミド化合物(B)の具体例としては、例えば、下記構造式(6−1)〜(6−19)で表されるもの等が挙げられる。
前記一分子中にマレイミド基を3つ以上有するポリマレイミド化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(7−1)〜(7−3)の何れかで表される化合物等が挙げられる。
(式中R
3は水素原子、脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子の何れかであり、式中に存在する複数のR
3は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。R
4は互いに独立して重合性不飽和結合含有基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかである。iは0又は1〜4の整数、oは0又は1〜3の整数である。Vは炭素原子数1〜4のアルキレン基、アリールメチレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、アルキレンビフェニレンアルキレン基、シクロアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。R
5は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子の何れかである。Zは炭素原子又は窒素原子である。tは2以上の整数、pは3〜6の整数である。)
これらマレイミド化合物(B)としては、市販されているものをそのまま使用してもよく、例えば、大和化成工業株式会社製BMIシリーズ(BMI−1000、2000、2300、3000、4000、6000、7000、8000、TMH等)、ケイ・アイ化成株式会社製BMI、BMI−70、BMI−80等、東京化成工業株式会社製B1109,N1971、B4807、P0778、P0976等が挙げられる。
前記マレイミド化合物(B)の中でも、硬化性組成物の硬化性や粘度、硬化物における耐熱性、誘電特性等の観点から、前記ビスマレイミド化合物が好ましい。更に、前記構造式(6)中のXが前記構造式(X−1)〜(X−4)の何れかであるものが好ましく、(X−3)又は(X−4)であるものがより好ましい。
本発明の硬化性組成物において、前記芳香族エステル化合物(A)と前記マレイミド化合物(B)との配合割合は特に限定されず、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整される。中でも、硬化物における耐熱性と誘電特性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、前記芳香族エステル化合物(A)100質量部に対し前記マレイミド化合物(B)を10〜300質量部の範囲で用いることが好ましく、20〜200質量部の範囲で用いることがより好ましい。
本発明の硬化性組成物は、前記芳香族エステル化合物(A)及び前記マレイミド化合物(B)の他、その他の成分を含有していてもよい。以下、その他の成分の一例を挙げる。なお、本発明の硬化性組成物が含有し得るその他の成分は以下に例示されたものに限定されるものではなく、これら以外の成分を含有していてもよい。
[他の樹脂成分]
他の樹脂成分の具体例としては、特に制限されないが、前記芳香族エステル化合物(A)以外のポリエステル樹脂、前記マレイミド化合物(B)以外のイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミン化合物、イミダゾール化合物、酸無水物、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂、シアン酸エステル樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステル、リン酸エステル−カーボネート共重合体、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。これらの他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[溶媒]
一実施形態において、組成物は溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒は、組成物の粘度を調整する機能等を有する。
溶媒の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量としては、硬化性組成物の全質量に対して、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。溶媒の使用量が10質量%以上であると、ハンドリング性に優れることから好ましい。一方、溶媒の使用量が80質量%以下であると、他基材との含浸性に優れることから好ましい。
[添加剤]
一実施形態において、組成物は添加剤を含んでいてもよい。当該添加剤としては、硬化促進剤、難燃剤、充填剤等が挙げられる。
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤、過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
前記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−ノネン−5(DBN)等が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−ブチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド等が挙げられる。
前記尿素系硬化促進剤としては、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチル尿素等が挙げられる。
前記過酸化物、アゾ化合物としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上述の硬化促進剤のうち、ジクミルパーオキサイド、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ジメチルアミノピリジンを用いることが好ましい。
なお、上述の硬化促進剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤の使用量は、硬化性組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3であることがさらに好ましい。硬化促進剤の使用量が0.01質量部以上であると、硬化性に優れることから好ましい。一方、硬化促進剤の使用量が5質量部以下であると、成形性に優れることから好ましい。
(難燃剤)
難燃剤としては、特に制限されないが、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
前記無機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等が挙げられる。
前記有機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等のリン酸エステル;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、ジフェニルホスフィンオキシド等ジフェニルホスフィン;10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(1,4−ジオキシナフタレン)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール等のリン含有フェノール;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5−ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状リン化合物;前記リン酸エステル、前記ジフェニルホスフィン、前記リン含有フェノールと、エポキシ樹脂やアルデヒド化合物、フェノール化合物と反応させて得られる化合物等が挙げられる。
前記ハロゲン系難燃剤としては、特に制限されないが、臭素化ポリスチレン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、1,2、−ビス(テトラブロモフタルイミド)、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、テトラブロモフタル酸等が挙げられる。
上述の難燃剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
難燃剤の使用量は、硬化性組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜30であることがより好ましい。難燃剤の使用量が0.1質量部以上であると、難燃性を付与できることから好ましい。一方、難燃剤の使用量が50質量部以下であると、誘電特性を維持しながら難燃性を付与できることから好ましい。
(充填剤)
充填剤としては、有機充填剤、無機充填剤が挙げられる。充填剤は、伸びを向上させる機能、機械的強度を向上させる機能等を有する。
前記有機充填剤としては、特に制限されないが、ポリアミド粒子等が挙げられる。
前記無機充填剤としては、特に制限されないが、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カーボンブラック等が挙げられる。
これらのうち、シリカを用いることが好ましい。この際、シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が用いられうる。
また、上記充填剤は、必要に応じて表面処理されていてもよい。この際使用されうる表面処理剤としては、特に制限されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が使用されうる。表面処理剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
なお、上述の充填剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填剤の平均粒径は、特に制限されず、0.01〜10μmであることが好ましく、0.03〜5μmであることがより好ましく、0.05〜3μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書において「粒径」とは、粒子の輪郭線上の2点間の距離のうち、最大の長さを意味する。また、「平均粒径」は、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られたイメージにおいて、1画面中の任意の100個の粒子の粒径を測定し、その平均値を算出の方法により測定された値を採用するものとする。
充填剤の使用量は、硬化性組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.5〜95質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。充填剤の使用量が0.5質量部以上であると、低熱膨張性を付与できることから好ましい。一方、充填剤の使用量が95質量部以下であると、特性と成形性のバランスに優れることから好ましい。
<硬化物(硬化性組成物の硬化物)>
本発明の一実施形態によれば、上述の芳香族エステル化合物(A)とマレイミド化合物(B)とを含有する硬化性組成物を硬化してなる硬化物が提供される。
上述の芳香族エステル化合物(A)は、重合性不飽和結合含有置換基を有することからそれ自体での重合が可能であり、硬化物を得ることができる。
なお、前記硬化物には、必要に応じて、上述の硬化剤、添加剤、硬化促進剤等を含んでいてもよい。
芳香族エステル化合物(A)はそれ自体誘電正接が低いことから、当該硬化物は、低誘電正接であり、かつ、より耐熱性に優れることから、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、ビルドアップ接着フィルム、半導体封止材料等の電子材用途に使用することができる。また、その他、接着剤、塗料等の用途にも適用することができる。
加熱硬化する際の加熱温度は、特に制限されないが、150〜300℃であることが好ましく、175〜250℃であることがより好ましい。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は実施例の記載に制限されるものではない。
製造例1 アリルナフトールの製造
撹拌装置、還流冷却管、温度計を備えたフラスコに、1−ナフトール144g、メチルイソブチルケトン200g、塩化アリル99.5gを仕込み、80℃に加熱して均一に溶解させた。フラスコ内を撹拌しながら10%水酸化ナトリウム水溶液520gを滴下ロートにより2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間撹拌して反応させた。反応終了後、2層に分離した反応液を分液ロートに移し、下層の水層を分離除去した後、有機層を500mlの蒸留水で5回洗浄した。次いで、減圧条件下でメチルイソブチルケトンを完全に留去し、赤褐色液状の反応生成物を得た。得られた反応生成物をフラスコに移し、150℃に加熱して2時間撹拌して転位反応を行い、アリルナフトールを得た。アセチル化法にて測定したアリルナフトールの水酸基当量は195g/当量であった。
製造例2 芳香族エステル化合物(A−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに先で得たアリルナフトール390gとトルエン1560gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら内容物を溶解させた。次いで、イソフタル酸クロライド203gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら内容物を溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.8gを加えて溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液412gを3時間かけて滴下した滴下終了後、同温度条件下で1時間撹拌を続けた。反応終了後、反応混合物を静置して分液させ、水層を取り除いた。得られた有機相に水を加えて約15分間撹拌し、静置して分液させ、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの水洗操作を繰り返した。水洗後の有機相を加熱減圧条件下で乾燥させ、芳香族エステル化合物(A−1)510gを得た。芳香族エステル化合物(A−1)のエステル基当量は259g/当量、アリル基当量は259g/当量、軟化点は62℃であった。
比較製造例1 芳香族エステル化合物(A’)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコにジシクロペンタジエンとフェノールとの重付加反応樹脂(水酸基当量:165g/当量、軟化点85℃)165g、1−ナフトール72g、およびトルエン630gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら内容物を溶解させた。次いで、イソフタル酸クロリド152gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロミド0.6gを加え、窒素ガスパージ処理を行いながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液315gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度条件下で1時間撹拌を続けた。反応混合物を静置して分液させ、水層を取り除いた。得られた有機相に水を加えて約15分間撹拌し、静置して分液させ、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの水洗操作を繰り返した。水洗後の有機相を加熱減圧条件下乾燥させ、芳香族エステル化合物(A’)を得た。芳香族エステル化合物(A’)のエステル基当量は223g/当量、軟化点は150℃であった。
実施例1及び比較例1
下記表1に示す割合で各成分を配合し、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物について、下記要領で硬化物の耐熱性評価と誘電正接値の測定を行った。結果を表1に示す。
実施例で用いた各成分の詳細は以下の通り。
・マレイミド化合物(B−1):4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成株式会社製「BMI−1000」、マレイミド基当量179g/当量)
・エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON850S」エポキシ当量188g/当量)
硬化物の製造
硬化性組成物を11cm×9cm×2.4mmの型枠に流し込み、プレス機を用いて150℃で60分間、次いで175℃で90分間、更に200℃で90分間成形した。型枠から成形物を取り出し、230℃で4時間更に硬化させて硬化物を得た。
耐熱性の評価(ガラス転移温度の測定)
先で得た厚さ2.4mmの硬化物から幅5mm、長さ54mmの試験片を切り出した。レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」を用い、レクタンギュラーテンション法によるDMA(動的粘弾性)測定により、試験片の弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として測定した。測定条件は周波数1Hz、昇温速度が3℃/分とした。
誘電正接の測定
先で得た硬化物を105℃で2時間加熱真空乾燥させた後、温度23℃、湿度50%の室内に24時間保管したものを試験片とした。アジレント・テクノロジー株式会社製「ネットワークアナライザE8362C」を用い、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電正接を測定した。