JP2019172510A - 成形体、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法、及び、非水系電解質二次電池の製造方法に関する。 - Google Patents

成形体、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法、及び、非水系電解質二次電池の製造方法に関する。 Download PDF

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Abstract

【課題】焼成時にルツボ、匣鉢などの容器や、スペーサーなどの部材を用いなくとも、成形体を効率良く、低コストで焼成することができ、生産性が向上する成形体を提供。【解決手段】ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して得られる、単数又は複数の成形体であって、成形体を焼成するときに、焼成炉から供給されるガスと接触でき、かつ、成形体の焼結により生成されるガスを排出できる空間を形成する形状を有する、成形体などによる。【選択図】図1

Description

本発明は、成形体、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法、及び、非水系電解質二次電池の製造方法に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度や耐久性を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、電動工具やハイブリット自動車をはじめとする電気自動車用の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池などの非水系電解質二次電池がある。非水系電解質二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
非水系電解質二次電池については、現在研究開発が盛んに行われているところであるが、なかでも、層状またはスピネル型のリチウム複合酸化物を正極材料に用いた非水系電解質二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
非水系電解質二次電池の正極活物質として、現在、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5)などのリチウム複合酸化物が提案されている。
これらの中でも、リチウムニッケル複合酸化物は、高容量で、かつ、高出力であり、今後の環境対応自動車の二次電池の正極活物質として求められる特性を満足するものとして注目されており、急速に需要が拡大しつつある。
さらに、環境対応自動車の需要拡大に伴い、その低価格化が求められている。そのため環境対応自動車の高コスト要因の一つである二次電池の低コスト化の要求が高まってきており、リチウム二次電池を構成する材料の一つである正極活物質も低コスト化を求められている。
リチウムニッケル複合酸化物は、ニッケルを含む化合物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物(原料混合物)を調製した後、リチウム混合物を焼成することで得ることができる。リチウム混合物の焼成は、例えば、650℃以上950℃以下程度の温度で3時間以上行われる。この焼成工程の間に、リチウム化合物がニッケルを含む化合物と反応(焼結)して、高い結晶性を有するリチウムニッケル複合酸化物が得られる。
リチウム混合物の焼成は、一般的に、リチウム混合物の粉末を、匣鉢等の容器に入れて、焼成炉で焼成される。しかしながら、容器に粉末を入れて焼成した場合、熱伝導が悪く、発生ガスと反応ガスとの置換性も悪いため、リチウム化合物がニッケルを含む化合物とを十分に反応させるためには、長時間の昇温と反応の時間が必要になり、これらを含めたトータルの焼成時間が長時間になることがある。
リチウム混合物の粉末の焼成を効率よく行うための焼成条件について、これまでいくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、ニッケル複合化合物とリチウム化合物とを混合して得られる混合物(粉)を焼成容器に充填して焼成する工程において、酸素を混合物内に十分に拡散させるため、混合物の盛り量(混合物を焼成容器に入れたときの厚さ)に対する特定の温度領域に保持される最小保持時間及び、酸素濃度の範囲をそれぞれ特定し、可能な限り効率よく、混合物を焼成する方法が示されている。
また、リチウム混合物を造粒して造粒物を得た後、又は、成形して成形体を得た後、焼成してリチウムニッケル複合酸化物を得る方法もいくつか開示されている。
例えば、特許文献2には、少なくともニッケル塩とリチウム塩とを所定量混合して原料混合物とし、該原料混合物を焼成してLiNiOを合成するに際して、原料混合物を造粒し得られた造粒物を焼成することを特徴とするLiNiO系層状複合酸化物の製造方法が記載されている。また、特許文献2の実施例には、アルミナ製容器に入れた造粒物を焼成炉に装入した後、酸化ガスを導入しながら700℃まで昇温し、24時間保持して焼成合成物を得ることが記載されている。特許文献2によれば、上記製造方法により、所望の結晶構造を有する合成物を、作業面を含めて生産性よく製造できるとしている。
また、特許文献3には、リチウム原料を含む原料混合物を造粒形成等の工程を得て成形体とした後、酸化性雰囲気下で700℃〜1000℃の温度で2〜15時間保持して焼成し、リチウム複合酸化物を合成することが記載されている。また、特許文献3の実施例には、原料混合物を、金型プレスにより2t/cmの圧力で成形してペレットにして、このペレットを800℃で10時間、純酸素雰囲気で焼成したことが記載されている。
また、特許文献4の実施例には、原料を混合した混合粉末を直径50mm、厚さ5mmの成形体にプレス圧500Kg/cmでプレス成形し、厚さ1mmのアルミナスペーサーの破片をプレス成形体の適当な所に挟み込み、740℃で10時間焼成した後、そのまま引き続いて、820℃で20時間保持して焼成することが記載されている。特許文献4によれば、プレス成形は、分子間移動距離が短くなり、焼成時の結晶成長を促進するという点で極めて有用であるとしている。
また、特許文献5には、リチウム化合物を含む原料をスラリー化して、噴霧又は凍結乾燥して得た乾燥品をプレス成形後焼成することが記載されている。また、特許文献5の実施例には、乾燥ゲルを、静的圧縮機を用いて2t/cm圧で成形し、φ14、厚み2mmのペレット状とし、これをアルミナ製ボートに入れ、管状炉にて酸素雰囲気中、750℃で48時間焼成したことが記載されている。
特開2011−146309号公報 特開2000−072446号公報 特開平11−135123号公報 特開平06−290780号公報 国際公開第98/06670号
しかしながら、特許文献1の製造方法では、生産性を上げるために混合物の盛り量を増やすと混合物の昇温時間が延び、また発生ガスと反応ガスの置換が悪くなるため、焼成時間が長くなってしまい生産性が損なわれる。また特許文献2〜5の製造方法では、焼成時間が10時間以上であり、リチウムニッケル複合酸化物を製造するための時間が長くなり生産性が悪い。
また、正極活物質の焼成を行おうとする場合、特許文献1、2、5に記載されるように、原料の混合粉末や、ペレット状の造粒物や成形体をルツボ、匣鉢などの容器に入れて焼成する方法が広く用いられている。焼成時に、ルツボ、匣鉢などの容器を用いる場合、ルツボまたは匣鉢は、熱衝撃性が低いため、繰り返し使用することによりルツボまたは匣鉢が劣化して破損するという問題がある。これら問題により、正極活物質の製造に係るコストを低くすることに制限があった。
一方、特許文献4に記載の製造方法は、原料粉(リチウム混合物)を特定の形状にプレスして成形することで、焼成時にルツボあるいは匣鉢などの容器を使用しないため、容器の破損という問題については解決できるものの、焼成時間が10時間以上を要するため、生産性の悪いという問題がある。
また、特許文献4では、原料粉(リチウム混合物)をプレスして得た成形体と成形体との間に、1mm以上のスペーサーを挟み焼成するとしている。しかし、スペーサーを用いて焼成する場合、成形体と成形体との間にスペーサーを置く工程が必要となる。また、成形体を焼成炉で焼成する際には、セッターと呼ばれる敷板の上に成形体を載せるが、セッターと成形体が密着すると反応ガスと発生ガスの交換が悪くなるため、セッターと成形体の間にもスペーサーを置く工程も必要となる。さらに、スペーサーを用いて焼成する場合、焼成後に、上記スペーサーを除去する工程も必要となり、生産性を悪化させるという問題があった。
本発明は係る問題点に鑑み、焼成時にルツボ、匣鉢などの容器や、スペーサーなどの部材を用いなくとも、リチウム混合物を効率良く、低コストで焼成でき、生産性が向上する成形体を提供する。また、この成形体を用いて、大量の正極活物質を、低コスト、かつ、生産性高く製造することができる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
本発明の第1の態様によれば、ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して得られる、単数又は複数の成形体であって、成形体を焼成するときに、焼成炉から供給されるガスと接触でき、かつ、成形体の焼結により生成されるガスを排出できる空間を形成する形状を有する、成形体が提供される。
また、上記成形体は、焼成した後、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられてもよい。また、上記成形体は、1つ以上の突起部を備え、突起部を用いて空間を形成してもよい。また、複数の成形体を積み重ねて形成され、複数の成形体のうち、突起部を有する成形体と接触する他の成形体は、突起部の位置を固定できる固定部を備え、突起部と、固定部とを組み合わせて、空間を形成してもよい。
また、上記成形体は、少なくとも一方の面が湾曲した形状を有し、湾曲した形状により、空間を形成してもよい。また、上記成形体は、内部に向かって開口した孔部を備え、孔部が空間を形成してもよい。また、上記成形体は、棒状又は板状の形状を有し、成形体を複数組み合わせることにより、空間を形成してもよい。
本発明の第2の態様によれば、ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して単数又は複数の成形体を得ることと、成形体を焼成して焼成体を得ることと、焼成体を解砕して、リチウムニッケル複合酸化物の粉末を得ることと、を備え、成形体は、焼成するときに、焼成炉から供給されるガスと接触でき、かつ、成形体の焼結により生成されるガスを排出できる空間を形成する形状を有する非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
本発明の第3の態様によれば、正極と負極と非水電解液とを備える非水系電解質二次電池の製造方法であって、上記の非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、正極を製造することを備える、非水系電解質二次電の製造方法が提供される。
本発明の第4の態様によれば、ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して得られる成形体であって、1以上の突起部を備え、焼成した後、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられる、成形体が提供される。
本発明の第5の態様によれば、ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して得られる成形体であって、孔部を備え、焼成した後、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられる、成形体が提供される。
本発明の成形体によれば、焼成時にルツボ、匣鉢などの容器や、スペーサーなどの部材を用いなくとも、成形体を効率良く、低コストで焼成することができ、生産性を向上させることができる。また、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法によれば、大量の正極活物質を低コスト、かつ、生産性高く製造することができる。また、焼成前のスペーサーの設置および焼成後のスペーサーの除去に要する時間を節約できる。
図1(A)は、本実施形態に係る成形体の一例を示す斜視図であり、図1(B)は、その断面図である。 図2(A)は、本実施形態に係る成形体の一例を示す斜視図であり、図2(B)は、その断面図である。 図3(A)は、本実施形態に係る成形体の一例を示す斜視図であり、図3(B)は、その断面図である。 図4(A)は、本実施形態に係る成形体の一例を示す斜視図であり、図4(B)は、その断面図である。 図5(A)及び図5(B)は、本実施形態に係る成形体の一例を示す斜視図である。 図6(A)は、本実施形態に係る成形体の一例を示す斜視図であり、図6(B)は、その断面図である。 図7は、本実施形態に係る非水系電解質二次電池の製造方法の一例を示す図である。 図8(A)から図8(C)は、成形体を製造する装置の一例を示す図である。 図9は、成形体を焼成する装置の一例を示す図である。 図10は、実施例で使用したコイン型二次電池の概略説明図である。
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。また、以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、鉛直方向をZ方向とし、水平方向をX方向、Y方向とする。また、X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれについて、適宜、矢印の先の側を+側(例、+X側)と称し、その反対側を−側(例、−X側)と称する。
なお、本明細書において、成形体は、単数であってもよく、複数であってもよい。また、単独の成形体(例、図1(A)等)を複数組み合わせて形成された成形体(複数)を、単独の成形体と区別して、集合体(例、図2(A)等)ともいう。
[成形体]
(第1実施形態)
図1(A)は、本実施形態の成形体の一例を示す斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A線に沿った断面を−Y側から見た断面図である。
本実施形態において、成形体10は、図1(A)及び図1(B)に示すように、突起部1と、本体部2とを備える。また、成形体10は、焼成するときに、焼成炉から供給されるガス(反応ガス)と接触でき、かつ、成形体10の焼結により生成されるガスを排出できる空間SP(空間部)を形成する形状を有する。
成形体10は、ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物の粉末を成形して得られる。成形体10は、リチウム混合物の粉末を、例えば、プレス装置等を用いて加圧して得ることができる。なお、成形体の製造方法の詳細については、後述する。また、成形体10は、焼成した後、例えば、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられる。成形体10を焼成することにより、リチウムニッケル複合酸化物が形成される。
空間SPは、例えば、図1(B)に示すように、突起部1を用いて、本体部2と、成形体10を載置する載置部20との間に形成される。成形体10は、空間SPを形成できる形状を有することにより、焼成してリチウムニッケル複合酸化物を形成する際、特許文献4に記載される従来技術のようなスペーサーを用いなくとも、成形体10を効率よく焼成することができ、その結果、生産性が向上する。
例えば、成形体10を単体(1つ)で焼成する場合、成形体10は、セッター(棚板)上に載置される。この場合、図1(B)の載置部20は、セッターである。この場合、成形体10は、突起部1により、成形体10と載置部20(セッター)との間に、空間SPを形成する。
焼成時に、外界(空間SPを含む)と接する成形体10の表面では、反応ガスや熱が直接供給され、また、成形体10の焼結により生成されるガスを外界に直接排出できる。空間SPが形成された成形体10は、焼成炉から供給されるガスと接触し、かつ、成形体10の焼結により生成されるガスを排出できる、表面の面積が増加するため、焼成効率が向上する。
成形体10の密度は、例えば、1.3g/cm以上であり、好ましくは1.4g/cm以上2.4g/cm以下である。密度が上記範囲である場合、十分な強度を有することができ、生産性に優れる。また、密度が1.4g/cm以上である場合、成形体10の角や稜線の部分での欠けの発生を抑制することができ、より生産性が向上する。また、密度が2.4g/cm以下である場合、成形体10を焼成した後の解砕性が良好であり、より生産性が向上する。
成形体10は、突起部1を1つ以上備える。突起部1が少なくとも1つ存在する場合、空間SPを形成することができる。また、突起部1が3つ以上、好ましくは4つ以上存在する場合、成形体10を、安定して、載置部20に載置することができる。
本体部2(成形体10)と載置部20との間の距離は、適宜調整することができるが、平均距離で、例えば1mm以上であり、好ましくは5mm以上である。本体部2と載置部20との間の距離は、例えば、突起部1の高さを調整することにより、上記範囲とすることができる。例えば、図1(A)に示すように、複数の同一形状の突起部1を、本体部2の面方向に対して垂直に設けた場合、突起部1の高さは、例えば1mm以上であり、好ましくは5mm以上である。
なお、本体部2と載置部20との間の距離が大きいほど、反応ガス及び成形体10から発生するガス並びに熱により効率的な移動が可能となるが、一度に焼成できる成形体10の量が減少する。よって、本体部2と載置部20との間の平均距離の上限は、例えば、20mm以下であり、好ましくは15mm以下である。
また、成形体10が突起部1を複数備える場合、突起部1は、本体部2から、同じ方向に向けて突出するように本体部2に設けられるのが好ましい。突起部1は、図1(B)に示すように、成形体10を載置部20に載置したときに、本体部1が水平方向に配置されるように、設けられるのが好ましい。この場合、成形体10は、同様の形状の3以上の突起部1が、同じ方向に向けて突出するように本体部2に設けられ、載置した際の安定性が向上する。本実施形態では、同様の形状の4つの突起部1が、それぞれ、−Z方向に向けて同じ方向に突出するように、本体部2の4角(四隅)に設けられている。
本体部2は、図1(A)に示すように、例えば、板状の形状を有する。また、図1(A)において、本体部2のXY平面における断面形状は、四角形であるが、四角形でなくてもよい。本体部2のXY平面における断面形状は、特に限定されず、例えば、辺を3つ以上有する多角形であってもよく、円形や楕円形であってもよい。本体部2のXY平面における断面形状が四角形である場合、焼成炉内に、効率よく配置することが容易である。
本体部2の厚さ(例、Z方向の高さ)は、例えば、5mm以上200mm以下であり、好ましくは10mm以上100mm以下である。本体部2の厚さが上記範囲である場合、一つの成形体10あたりのリチウム混合物を焼成する量を十分な量とすることができ、生産性に優れる。
本体部2の面内(例、XY平面)における任意の2点間の距離の最大値Lは、例えば、50mm以上であり、好ましくは100mm以上300mm以下である。最大値Lが上記範囲である場合、一つの成形体10あたりのリチウム混合物を焼成する量を十分な量とすることができ、生産性に優れる。
また、本体部2の厚さtに対する、本体部2の面内における任意の2点間の距離の最大値Lの比(L/t)は、例えば、0.3以上30.0以下であり、好ましくは0.5以上10.0以下である。
なお、本体部2の形状は任意であり、板状以外の形状であってもよい。本体部2は、例えば、直方体(立方体を含む)、四角錐台とすることができる。
本体部2が、直方体または四角錐台である場合、直方体または四角錐台の成形体の寸法は、好ましくは高さ50mm以上300mm以下、幅50mm以上300mm以下、奥行50mm以上500mm以下であり、より好ましくは高さ200mm以下、幅200mm以下、奥行300mm以下である。本体部2の高さ、幅、奥行きが50mm未満の場合は、成形体を積み重ねるまたは並べる工程での手間が増えかえって生産性が悪化することがある。また本体部2の高さ、幅、奥行きが300mm超である場合、成形体10の重量が増しハンドリング性が悪化して生産性が悪化することがある。
なお、焼成の際、成形体10は、セッター上に載置してもよく、他の成形体上に載置してもよい。成形体10を、他の成形体上に載置する場合、空間SPは、例えば、突起部1を用いて、本体部2と、他の成形体との間に形成される(図2(B)参照)。なお、他の成形体は、空間SPを形成する形状を有してもよく、有さなくてもよい。複数の成形体を組み合わせて集合体30(図2(A)参照)として焼成する場合、空間SPを形成する形状を有する成形体10は、1つ以上用いればよい。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
第1実施形態の成形体10は、複数を組み合わせて集合体30とすることができる。図2(A)は、本実施形態の集合体30の一例を示す斜視図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B線に沿った断面を−Y側から見た断面図である。図2(B)は、集合体30を焼成炉内に載置したとき例を示す。
集合体30は、図2(A)及び図2(B)に示すように、成形体10を複数組み合わせて形成される。集合体30は、焼成するときに、焼成炉から供給されるガスと接触でき、かつ、成形体10の焼結により生成されるガスを排出できる空間SPを形成する形状を有する。
図2(A)の集合体30の場合、各成形体10は、載置部20上または他の成形体10上に載置される。集合体30において、空間SPは、例えば、図2(B)に示すように、各成形体10の突起部1により、成形体10と載置部20との間、又は、成形体10と成形体10との間に形成される。各成形体10は、その突起部1を用いて、空間SPを形成している。
このように、集合体30は、空間SPを形成できる形状を有することにより、特許文献4に記載される従来技術のようなスペーサーを用いなくとも、成形体を効率よく焼成することができ、その結果、生産性が向上する。
なお、集合体30において、それぞれの本体部2(成形体10)の間の距離は、前述した、本体部2(成形体10)と載置部20との距離と同様に、適宜調整することができ、それぞれの本体部2の間の平均距離で、例えば1mm以上であり、好ましくは5mm以上である。それぞれの成形体10の間の距離は、例えば、突起部1の高さを対応する高さとすることにより、上記範囲とすることができる。
なお、それぞれの本体部2の間の距離が大きいほど、反応ガス及び成形体10から発生するガス並びに熱のより効率的な移動が可能となるが、一度に焼成できる成形体10の量が減少する。よって、それぞれの本体部2の間の距離の上限は、例えば、20mm以下であり、好ましくは15mm以下である。
なお、集合体30を構成する複数の成形体10は、互いに同じ形状でもよいし、互いに異なっていてもよい。集合体30を構成する複数の成形体10は、上記したいずれの成形体10を採用してもよい。集合体30を構成する複数の成形体10の形状が互いに同じ形状である場合、効率よく製造することができ、その結果、生産性が向上する。
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図3(A)は、本実施形態の成形体10及び集合体30の他の例を示す斜視図であり、図3(B)は、図3(A)に示すC−C線に沿った断面を−Y側から見た断面図である。
図3(A)の成形体10は、自身以外の成形体10の突起部1を支持する固定部3を備えている点が、第2実施形態の成形体10と異なっている。本実施形態の集合体30は、複数の成形体10を積み重ねて形成され、複数の成形体10のうち、突起部1を有する成形体10と接触する他の成形体10は、突起部1の位置を固定できる固定部3を備え、突起部1と、固定部3とを組み合わせて、空間SPを形成する。
集合体30が焼成炉内で移動するような型の焼成炉を用いて焼成する場合、集合体30を移動させる際に振動により積み重ねた成形体10が焼成炉内で倒壊するおそれがある。本実施形態では、それぞれの成形体10が固定部3を備えることにより、焼成炉内での成形体10の倒壊を抑制することができる。
固定部3は、自身以外の成形体10を自身に組み合わせたときに、自身以外の成形体10の突起部1を支持する。固定部3は、自身以外の成形体10の突起部1の位置、形状などに応じて構成される。本実施形態では、4つの固定部3が、自身以外の成形体10を自身に組み合わせたときに、自身以外の成形体10の4つの突起部1のそれぞれがはまり込んで、自身以外の成形体10の位置を固定(保持)するように、本体部2の上面において凹状形状に設けられている。図3(A)の各固定部3は、自身以外の成形体10の突起部1を組み合わせたときに突起部1の水平方向(XY方向)の位置を固定し、自身以外の成形体10の水平方向(XY方向)の位置を固定する。また、図3(A)の各固定部3は自身以外の成形体10の突起部1を着脱可能に支持し、例えば、固定部3で突起部1を支持した後、支持した突起部1を固定部3から取り外して、自身以外の成形体10を自身から容易に分離することもできる。なお、固定部3は、凹状形状以外であってもよく、突起部1の位置を固定するように形成された突起であってもよい。
図3(A)の集合体30は、上記した固定部3を備える成形体10が複数組み合わされて構成されている。それぞれの成形体10は、自身以外の成形体10を自身に組み合わせたときに、自身以外の成形体10の指示部1が自身の固定部3に固定され、自身以外の成形体10を自身に簡単かつ確実に組み合わせることができる。これにより、集合体30は、安定した構造となる。また、集合体30は、成形体10から簡単かつ確実に形成することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図4(A)は、本実施形態の成形体10及び集合体30の他の例を示す斜視図であり、図4(B)は、図4(A)に示すD−D線に沿った断面を−Y側から見た断面図である。
図4(A)の成形体10は、突起部1を備えず、本体部2の少なくとも一方の面が湾曲する形状を有する点が、第1実施形態の成形体10と異なっている。また、図4の成形体10又は集合体30は、空間SPが、例えば、図4(B)に示すように、本体部2の一方の面(例えば、−Z側)が湾曲することにより、本体部2と、成形体10を載置する載置部20との間、又は、成形体10と成形体10との間に形成される点が、第1実施形態の成形体10、又は、第2実施形態の集合体30と異なっている。
なお、本実施形態の集合体30において、それぞれの成形体10の間の距離は、適宜調整することができ、それぞれの成形体10の間に形成される空間SPの平均高さ(例、Z方向)で、例えば1mm以上であり、好ましくは5mm以上である。空間SPの平均高さは、例えば、湾曲する面の形状を調整することにより、上記範囲とすることができる。
なお、それぞれの成形体10の間に形成される空間SPの平均高さが大きいほど、反応ガス及び成形体10から発生するガス並びに熱により効率的な移動が可能となるが、一度に焼成できる成形体10の量が減少する。よって、空間SPの平均高さの上限は、例えば、20mm以下であり、好ましくは15mm以下である。
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図5(A)及び図5(B)は、集合体30の他の例をそれぞれ示す斜視図である。図5(A)及び図5(B)の成形体10は、棒状又は板状の形状を有し、この棒状又は板状の成形体10を複数組み合わせて、空間SPを形成する点が、第2実施形態の集合体30と異なっている。なお、集合体30を構成する成形体10は、棒状及び板状の少なくとも一方の形状を有すればよく、集合体30は、棒状の成形体10と板状の成形体10との両方を組み合わせて、形成されてもよい。また、棒状又は板状の成形体10の形状や大きさは、上述の本体部2と同様の範囲とすることができる。
なお、本実施形態の集合体30において、それぞれの成形体10の間の距離は、適宜調整することができ、接触せずに間隔をあけて隣り合う、それぞれの成形体10の間の平均距離で、例えば1mm以上であり、好ましくは5mm以上である。それぞれの成形体10の間の距離は、例えば、棒状又は板状の形状をする成形体10の配置を調整することにより、上記範囲とすることができる。
なお、それぞれの成形体10の間の平均距離が大きいほど、反応ガス及び成形体10から発生するガス並びに熱のより効率的な移動が可能となるが、一度に焼成できる成形体10の量が減少する。よって、それぞれの成形体10の間の平均距離の上限は、例えば、20mm以下であり、好ましくは15mm以下である。
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図6(A)及び図6(B)は、成形体の他の例を示す図である。図6(A)は斜視図である。図6(B)は、図6(A)に示すE−E線に沿った断面を−Y方向から見た図である。
図6(A)の成形体10は、成形体10の内部に向かって開口する孔部4を有し、孔部4により、空間SPを形成する点で、第1実施形態の成形体10と異なっている。孔部4は、図6(A)及び(B)に示すように、貫通した孔4aであってもよく、貫通しない孔4bであってもよい。後部4の径は、例えば、5mm以上あればよい。また、図6(A)の孔部4の形状は、円柱形状であるが、これ以外の形状であってもよく、例えば、スリット状であってもよい。
なお、孔部4を備える成形体10は、単独で焼成してもよく、複数を積み重ねて集合体30を形成した後、焼成してもよい。
[非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法]
図7は、本実施形態に係る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法(以下、「正極活物質の製造方法」ともいう。)の一例を示す図である。本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、上述した成形体10を用いることにより、リチウム混合物を効率よく焼成し、生産性を向上することができる。
正極活物質の製造方法は、図7に示すように、ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを混合して、リチウム混合物の粉末を得ること(ステップS10)と、リチウム混合物の粉末を成形して単数又は複数の成形体10を得ること(ステップS20)と、成形体10を焼成して焼成体を得ること(ステップS30)と、焼成体を解砕して、リチウムニッケル複合酸化物の粉末を得ること(ステップS40)とを備える。以下、各ステップについて、説明する。
(混合工程:ステップS10)
まず、ニッケルを含む化合物と、リチウム化合物と、を含むリチウム混合物を得る(ステップS10)。なお、リチウム混合物は、後述するように、十分な強度を有する成形体を形成するため、粒子同士を決着するバインダーを含んでもよい。
(ニッケルを含む化合物)
本実施形態で用いられるニッケルを含む化合物は、特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。ニッケルを含む化合物としては、例えば、ニッケルを含む水酸化物、及び、ニッケルを含む酸化物の少なくとも一方を用いることができる。
(ニッケルを含む水酸化物)
ニッケルを含む水酸化物は、ニッケル水酸化物、及び、ニッケルとニッケル以外の金属とを含む水酸化物(ニッケル複合水酸化物)を含む。ニッケル複合水酸化物は、ニッケル以外に、コバルト、アルミニウム及びマンガンのうち少なくとも1つ以上を含んでもよい。ニッケル複合水酸化物としては、例えば、ニッケルコバルト複合水酸化物、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物などが用いられる。また、ニッケル複合水酸化物は、モリブデン、タングステン、ケイ素、ホウ素、ニオブ、バナジウム、チタンなどの元素を含んでもよい。
ニッケルを含む水酸化物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、晶析法を用いることができる。晶析法によって得られるニッケルを含む水酸化物は、粒子全体で組成が均一となり、最終的に得られる正極活物質の組成も均一になる。
以下、ニッケルを含む水酸化物の製造方法の一例として、ニッケルコバルト複合水酸化物の製造方法について説明する。ニッケルコバルト複合水酸化物は、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、任意の金属Mを含む水溶液を攪拌しながら、アンモニウムイオン供給体などの錯化剤の存在下、アルカリ水溶液を用いて中和して、晶析反応を行うことで製造することができる。晶析法により得られたニッケルコバルト複合水酸化物は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成され、このニッケルコバルト複合水酸化物の粒子を前駆体として用いて得られる正極活物質も、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたものとなる。
なお、上記ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、任意の金属Mを含む水溶液を調整する際に用いる金属塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などを用いることができる。
ニッケル複合水酸化物がニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物である場合、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)を含む水溶液を攪拌しながら、アンモニウムイオン供給体などの錯化剤の存在下、アルカリ水溶液を用いて中和する、晶析反応を行うことで製造することができる。
また、ニッケル複合水酸化物が金属Mを含む場合、例えば、晶析反応において、Ni及びCoと共に晶析させ、ニッケル複合水酸化物中に均一に分散させてもよいし、ニッケル複合水酸化物を晶析により形成した後、得られたニッケル複合酸化物粒子の表面に被覆したり、リチウム化合物の添加と同時に添加して混合したりしてもよい。
ニッケル複合水酸化物は、例えば、ニッケル(Ni)と、コバルト(Co)と、任意に他の金属(M)とを含むことが好ましく、高い電池容量を得るという観点から、各元素のモル比が、Ni:Co:M=(1−x−y):x:y(0.03≦x≦0.10、0.03≦y≦0.10)で表されることがより好ましく、Mがアルミニウム(Al)を含むことがさらに好ましい。ニッケル複合水酸化物に含まれる各元素の比率は、成形体10、及び、リチウムニッケル複合酸化物まで継承される。よって、ニッケル複合水酸化物全体の組成は、得ようとするリチウムニッケル複合酸化物のリチウム以外の金属の組成と同様とすることができる。
(ニッケルを含む酸化物)
ニッケルを含む酸化物は、ニッケル酸化物、及び、ニッケルとニッケル以外の金属とを含む酸化物(ニッケル複合酸化物)を含む。ニッケル複合酸化物は、ニッケル以外に、コバルト、アルミニウム及びマンガンのうち少なくとも1つ以上を含んでもよい。ニッケル複合酸化物としては、例えば、ニッケルコバルト複合酸化物、ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物などが用いられる。また、ニッケル複合酸化物は、モリブデン、タングステン、ケイ素、ホウ素、ニオブ、バナジウム、チタンなどの元素を含んでもよい。
ニッケルを含む酸化物は、例えば、上述したニッケルを含む水酸化物を酸化することで得られる。ニッケルを含む水酸化物を酸化物にすることで、リチウム混合物からなる成形体を焼成する際に発生する水蒸気の量が減少し、焼結反応がより促進され、焼成時間を大幅に短縮することができる。
ニッケルを含む水酸化物の酸化は、例えば、酸化焙焼(熱処理)により行うことができる。酸化焙焼の温度は、例えば、600℃以上800℃以下で行うことが好ましい。酸化焙焼の温度が600℃未満の場合、ニッケルを含む酸化物に水分が残留して酸化が十分に進まない場合がある。一方、酸化焙焼の温度が、800℃を超える場合、ニッケルを含む酸化物同士が結着して粗大粒子が形成される場合があり、また、多くのエネルギーを使用するため、コストの観点から、工業的に適当ではない。
酸化焙焼の時間は、例えば、0.5時間以上3.0時間以下で行うことが好ましい。酸化焙焼の時間が0.5時間未満の場合、ニッケルを含む水酸化物の酸化が十分に進まないことがある。一方、酸化焙焼の時間が3.0時間を超えると、エネルギーコストが大きくなり、工業的に適当ではない。
(リチウム化合物)
リチウム化合物は、リチウムを含む化合物をいう。リチウム化合物としては、特に限定されず、公知のリチウム化合物を用いることができ、例えば、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物が用いることができる。これらの中でも、好ましくは水酸化リチウム、炭酸リチウムが用いられる。
リチウム化合物として水酸化リチウムを用いた場合、後述するように、バインダーを用いなくても、十分な強度を有する成形体を得ることができるため、正極活物質への不純物の混入を抑制することができる。また、水酸化リチウムは反応性が高いため、これを用いた成形体は、より焼成時間を短くすることができる。
また、水酸化リチウムは、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)などの水酸化リチウム水和物であってよく、無水水酸化リチウム(LiOH)であってもよい。無水水酸化リチウムは、水酸化リチウム水和物を熱処理して得ることができる。無水水酸化リチウムを用いた場合、焼成工程における水分の発生をより抑制することができ、よりリチウムニッケル複合酸化物の合成反応が促進され、焼成時間を短縮することができる。
(リチウム混合物)
ニッケルを含む化合物とリチウム化合物との混合は、ニッケルを含む化合物中の金属元素(ニッケルを含む)の合計の原子数(Me)と、リチウム化合物中のリチウムの原子数(Li)との比(Li/Me比)が、例えば、0.95以上1.10以下、好ましくは1.00以上1.05以下、より好ましくは1.01を超え1.03以下の範囲となるように行われる。Li/Me比が1以下である場合、一部のニッケル複合酸化物が反応せずに残存して十分な電池性能が得られないことがある。また、Li/Me比が1.05以上より大きい場合、焼結が促進され、焼成物が硬くなり解砕が困難になる場合や、正極活物質の粒径や結晶子径が大きくなり十分な電池性能が得られないことがある。
Li/Me比は、後述する焼成工程(ステップS30)前後でほぼ変化しないので、リチウム混合物中のLi/Me比がリチウムニッケル複合酸化物中でもほぼ維持される。よって、ニッケルを含む化合物とリチウム化合物との混合は、得ようとするリチウムニッケル複合酸化物中のLi/Me比と同じになるように、混合することができる。Li/Me比は、二次電池において要求される電池特性、二次電池の構成などに応じて、適宜、好適な値を選択することができる。
混合には、一般的な混合機を使用することができ、例えば、シェイカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができる。またこの混合は、ニッケルを含む化合物の形骸が破壊されない程度で、十分に混合されればよい。混合が十分でない場合には個々の粒子間でLi/Me比がばらつき、十分な電池特性が得られない等の問題が生じることがある。
(バインダー)
リチウム混合物は、バインダーを含んでもよい。バインダーを含む場合、リチウム混合物の成形性が向上し、容易に種々の形状の成形体を形成することができる。リチウム化合物として、炭酸リチウムを用いる場合、バインダーを含むことにより、十分な強度を有する成形体を容易に得ることができる。バインダーとしては、公知のバインダーを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースなどを用いることができる。これらの中でもポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
リチウム混合物における、バインダーの含有量は、リチウム混合物全量に対して、例えば0.05質量%以上0.2質量%以下、好ましくは0.08質量%以上0.12質量%以下とすることができる。バインダーの含有量が上記範囲である場合、適度な強度を有する成形体を製造することができる。バインダーの含有量が多すぎる場合、成形体を構成するそれぞれの粒子の接着強度が強くなりすぎて、リチウムとニッケル複合酸化物との反応により生じる生成ガスの排出効率が低下したり、バインダーが分解して生じる炭酸ガス量が増加して、成形体内部で生成ガスが排出できずに、成形体の内圧が上昇して、成形体が破砕したりすることがある。
なお、リチウム混合物は、バインダーを含まなくてもよい。リチウム化合物として、水酸化リチウムを用いる場合、バインダーを用いずに、ニッケル複合酸化物及び水酸化リチウムのみで成形体を形成することができる。バインダーを用いない場合、得られるリチウムニッケル複合酸化物中の不純物(例えば、炭素など)の含有量を低減することができる。
(仮焼)
また、リチウム混合物の粉末は、焼成(ステップS30)前に、酸化性雰囲気下、350℃以上800℃以下、かつ、後述する焼成温度よりも低い温度で仮焼してもよい。仮焼は、例えば、350℃以上800℃以下、好ましくは450℃以上780℃以下の温度で、1時間以上10時間以下程度、好ましくは2時間以上6時間以下、保持して行うことが好ましい。焼成前に仮焼した場合、リチウムの拡散が十分に行われ、より均一なリチウムニッケル複合酸化物を得ることができる。
(成形:ステップS20)
次いで、リチウム混合物の粉末を成形して、成形体10を得る(ステップS20)。本実施形態に用いられる成形体10は、焼成するときに、焼成炉から供給されるガスと接触でき、かつ、成形体10の焼結により生成されるガスを排出できる空間SPを形成する形状を有する。成形体10の形状は、上述した通りである。空間SPを形成した成形体10を焼成することにより、短時間の焼成で、リチウムニッケル複合酸化物を生産性高く、得ることができる。
成形体を製造する装置としては、特に限定されず、リチウム混合物の粉末を加圧できるものであればよく、例えば、プレス装置等を用いることができる。例えば、長辺及び短辺が10mm以上100mm以下、厚さが5mm以上200mm以下の板状の成形体10を製造する場合、油圧式プレス機を用いることが好ましい。
図8(A)〜図8(C)は、フローティングダイ法を用いて、成形体10を製造するプレス装置の一例を示す図である。このプレス装置は、ダイ50、上パンチ70、及び、下パンチ60を、少なくとも備える。例えば、リチウム混合物の粉末40をダイ50に供給した後(図8(A)参照)、上パンチ70を下降させて、リチウム混合物の粉末40を加圧し、成形体10を形成する(図8(B)及び(C)参照)。その後、上パンチ70の下降とともに、ダイ50も下降させて、成形体10を型抜きする(図8(C)参照)。これにより、均一性が高い所定の密度を有する所定の形状の成形体10を、容易且つ効率的に製造することができる。
(焼成:ステップS30)
次いで、得られた成形体10を、焼成して、リチウムニッケル複合酸化物の焼結体を得る(ステップS30)。成形体10を焼成することにより、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物が反応し、リチウムニッケル複合酸化物の焼結体が生成される。
焼成は、例えば、酸素雰囲気中、650℃以上850℃以下で焼成することが好ましい。焼成温度が650℃未満である場合、リチウムの拡散が十分に行われなくなり、未反応のリチウム化合物の粒子が残ったり、リチウムニッケル複合酸化物の結晶構造が十分整わなくなったりして、得られた正極活物質を用いた二次電池が十分な電池特性を有さないことがある。一方、焼成温度が850℃超である場合、リチウムニッケル複合酸化物の粒子間で激しく焼結が生じるとともに異常粒成長を生じて、比表面積が低下することがある。正極活物質の比表面積の低下により、正極の抵抗が上昇して電池容量が低下することがある。
なお、焼成温度は、成形体の組成に応じて、適宜、調整することができる。例えば、焼成は、温度を室温から徐々に上げて昇温し、650℃以上850℃以下の温度範囲で3時間以下保持することが好ましい。
650℃以上850℃以下の温度範囲で焼成する場合、焼成時間は、例えば、3時間以下であり、好ましくは2時間以上2.5時間未満である。また、成形体の昇温速度は、例えば、4℃/分以上であり、好ましくは6℃/分以上、より好ましくは8℃/分以上である。
本実施形態の正極活物質の製造方法は、上述した成形体10を用いて焼成することにより、従来の焼成時間の60〜80%の時間で、従来と同等以上の高い結晶性を有するリチウムニッケル複合酸化物を得ることができる。
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気であり、例えば、酸素濃度が80〜100容量%の雰囲気とすることが好ましく、酸素気流中で行なうことが好ましい。酸素濃度が80容量%未満である場合、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物の反応に必要な量の酸素を供給できず、リチウムニッケル複合酸化物が十分に形成されない場合がある。
焼成炉としては、特に限定されず、酸素気流中で加熱できるものであればよく、例えば、縦型炉、回転炉床炉及びローラーハースキルンなどを用いることができる。これらの中でも、設備投資とランニングコストの観点から、ローラーハースキルンを用いることが好ましい。焼成炉内において、成形体10は、焼成炉から供給されるガスと接触でき、かつ、成形体10の焼結により生成されるガスを排出できる空間SPを形成する形状を有するように配置される。
図9は、ローラーハースキルンを用いた場合の焼成炉内の一例を示す図である。図9に示すように、焼成炉100内では、例えば、載置部20(セッター)上に載置された集合体30を、ロールR(ローラ)により搬送しながら、電池ヒータh(ヒータ)により熱が供給されて焼成工程が進行する。また、集合体30に形成された空間SPには、焼成炉からの反応ガスや熱が供給される。これにより、空間SPを介して、反応ガスによる固気反応をより高い効率で行うことができ、効率よく焼成することができる。
従来、リチウム混合物の粉末や、造粒物を焼成する場合、匣鉢等の容器に粉末又は造粒物を入れて焼成しているが、本実施形態の製造方法では、成形体と雰囲気ガスとの接触面積をより大きくして、焼結反応を促進するという観点、および、原料の投入量の観点から、匣鉢等の容器を用いないことが好ましい。
(解砕工程:ステップS40)
次いで、焼成工程によって得られたリチウムニッケル複合酸化物の焼成体を解砕して、リチウムニッケル複合酸化物の粉末を得る(ステップS40)。解砕により、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。
解砕の方法としては、公知の手段を用いることができ、たとえば、ピンミルやハンマーミル、分級機能付きの解砕機などを使用することができる。なお、この際、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することが好ましい。
(水洗ろ過)
また、焼成後に得られたリチウムニッケル複合酸化物の粉末は水洗してもよい。リチウムニッケル複合酸化物を水洗する場合、リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面の余剰のリチウムが除去され、より高容量で熱安定性が高い非水系電解質二次電池用正極活物質を得ることができる。ここで、水洗方法としては、公知の技術が用いられる。
例えば、水洗する際のスラリー濃度として、好ましくは、質量比で水1に対してリチウムニッケル複合酸化物を0.5〜2投入し、リチウムニッケル複合酸化物粒子表面の余剰のリチウムが十分に除去される間、撹拌した後、固液分離して乾燥すればよい。スラリー濃度が質量比で2を超える場合、粘度も非常に高いため攪拌が困難となるばかりか、液中のアルカリが高いので平衡の関係から付着物の溶解速度が遅くなったり、剥離が起きても粉末からの分離が難しくなったりすることがある。一方、スラリー濃度が質量比で0 . 5未満では、希薄過ぎるためリチウムの溶出量が多く、正極活物質の結晶格子中からのリチウムの脱離も起きるようになり、結晶が崩れやすくなるばかりか、高pHの水溶液が大気中の炭酸ガスを吸収して炭酸リチウムを再析出する。
上記水洗に使用する水は、特に限定されるものではないが、電気伝導率測定で10μS/cm未満の水が好ましく、1μS/cm以下の水がより好ましい。すなわち、電気伝導率測定で10μS/cm未満の水を使用することにより、正極活物質への不純物の付着による電池性能の低下を防止することが可能となる。
上記スラリーの固液分離時の粒子表面に残存する付着水は少ないことが好ましい。付着水が多いと、液中に溶解したリチウムが再析出し、乾燥後のリチウムニッケル複合酸化物粉末の表面に存在するリチウム量が増加する。固液分離には、通常に用いられる遠心機、フィルタープレスなどが用いられる。
(乾燥工程)
水洗後のリチウムニッケル複合酸化物は、乾燥してもよい。乾燥の温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは80℃以上550℃以下、さらに好ましくは120℃以上350℃以下である。乾燥温度を80℃以上とする場合、水洗後の正極活物質を素早く乾燥し、粒子表面と粒子内部とでリチウム濃度の勾配が起こることを防ぐことができる。一方、正極活物質の表面付近では化学量論比に極めて近いか、もしくは若干リチウムが脱離して充電状態に近い状態になっていることが予想されるので、乾燥温度が550℃を超える場合、充電状態に近い粉末の結晶構造が崩れる契機になり、電気特性の低下を招くおそれがある。さらに、生産性および熱エネルギーコストをも考慮すると、乾燥温度は、120℃以上350℃以下がより好ましい。このとき、乾燥方法としては、濾過後の粉末を、炭素および硫黄を含む化合物成分を含有しないガス雰囲気下、または真空雰囲気下に制御できる乾燥機を用いて、所定の温度で行うことが好ましい。
2.非水系電解質二次電池
本実施形態に係る非水系電解質二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、正極、負極および非水系電解液を備える。また、二次電池は、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成されることができる。以下、本実施形態に係る二次電池の各構成について説明する。
なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(正極)
正極は、上記の本実施形態に係る正極活物質を含む。正極は、例えば、以下のようにして、作製することができる。
まず、上記の正極活物質、導電材、及び、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。
正極合材ペースト中のそれぞれの材料の混合比は、特に限定されず、要求される二次電池の性能に応じて、適宜、調整することができる。材料の混合比は、公知の非水系電解質二次電池の正極と同様の範囲とすることができ、例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下とすることができる。
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させて、シート状の正極を作製することができる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレス等により加圧してもよい。
作製したシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、上記例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
導電剤としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
また、必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加してもよい。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(負極)
負極は、金属リチウムやリチウム合金等を用いることができる。また、負極は、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを用いることができる。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。
負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を含む薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(非水系電解液)
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO等、およびそれらの複合塩を用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。なお、非水系電解質二次電池は、上記の非水系電解液に代えて、公知の固体電解質を用いてもよい。
(非水系電解質二次電池の形状、構成)
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解質で構成される本発明の非水系電解質二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
本発明により得られた正極活物質を用いた正極を有する非水系電解質二次電池について、その正極界面抵抗を確認した。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。以下、得られた正極活物質の評価方法について説明する。
(評価用電池の製造および評価)
以下の方法により評価用のコイン型二次電池CBA(図10参照)を作製し、正極界面抵抗の測定、及び、充放電サイクル試験を行った。
(コイン型二次電池CBAの作製)
正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚み100μmにプレス成形して、正極(評価用電極)PEを作製した。次に作製した正極PEを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。乾燥した正極(評価用電極)PE、負極NE、セパレータSE、および、電解液を用いて、図3に示すようにコイン型二次電池CBAを、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
負極NEには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用い、電解液には、1MのLiPFを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(宇部興産株式会社製)を用いた。セパレータSEには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型二次電池CBAは、ガスケットGAとウェーブワッシャーWWを有し、正極缶PCと負極缶NCとでコイン状の電池に組み立てられた。
(電池評価)
製造したコイン型二次電池CBAの性能を示す初期充放電容量を以下のように評価した。
(初期放電容量)
初期放電容量は、コイン型二次電池CBAを製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
[実施例1]
(混合)
原料粉として、組成比がNi:Co:Al=88:9:3のニッケル複合酸化物の粉末と、水分率が1.5%以下で、全炭素量(トータルカーボン)が1.0%以下の水酸化リチウム粉末とを用いた。上記ニッケル複合酸化物の粉末と上記水酸化リチウムの粉末とを、Li/Me比が1.03になるように混合し、リチウム混合物の粉末を調製した。
(成形)
得られたリチウム混合物の粉末12kgを、油圧プレス機に投入して、成形体を10枚作製した。以下、成形体の製造条件の詳細について説明する。
・成形体の形状
成形体は、板状部(本体部)と4か所の突起部とを有する形状に成形した。板状部(本体部)の寸法は、幅165mm×奥行165mm×厚さ30mmとし、突起部の寸法は、それぞれ径10mm×高さ5mmとした。板状部の各角(各隅)から対角方向に20mm内側に突起部の中心を置くようにして、計4か所の突起部を設置した。
・成形条件
リチウム混合物(粉末)1.2kgを金型に詰めてプレス(約0.4t/cm)して、上記形状を有する10枚の成形体(密度:1.5g/cm)を作製した。
得られた成形体を焼成炉内で上下に5枚積み重ねたものを2つ並べた。3枚目の成形体の一方の側面中心部にこの成形体中心部に向け温度測定用の細孔を開け、熱電対を挿入して温度計と接続し、成形体中心部の温度を測定した。
(焼成)
焼成炉内を酸素濃度90%雰囲気下で急昇温して、該成形体の中心部温度を90分で、室温から760℃まで昇温し、そのまま760℃で2.5時間保持した。その後、焼成炉内で、成形体を6時間かけて室温まで徐冷し、焼成炉から取り出した。
焼成体はロールクラッシャーおよびピンミルを用いて平均粒径を50μmまで粉砕して、リチウムニッケル複合酸化物の粉末を得た。得られた粉体を用いてコイン型二次電池CBAを作製し、上記評価方法により初期放電容量を測定した。得られたコイン型二次電池CBAの初期放電容量は233mAh/gであった。
[比較例1]
実施例1と同じリチウム混合物の粉末9.5kgを入れた匣鉢を、同一の焼成炉内に置き、原料粉に熱電対を挿入して温度計と接続し、酸素濃度90%雰囲気下で原料粉内部温度が760℃になるまで240分で昇温し、そのまま760℃で3時間保持した。その後は実施例1と同様に冷却、粉砕してリチウムニッケル複合酸化物の粉体を得た。得られた粉体を用いてコイン型二次電池CBAを作成して初期放電容量を測定した。得られたコイン型二次電池CBAの初期放電容量は、235mAh/gであった。また、匣鉢内寸法は、幅300mm×奥行300mm×高さ100mmであった。
(評価)
実施例1の成形体を用いた製造方法では、比較例1の匣鉢を用いて、粉末を焼成した製造方法よりも、焼成に要する時間が短縮できた。また、実施例1の成形体を用いた製造方法では、焼成炉内単位体積あたりの原料投入量が増え、生産性が大きく向上した。
本実施形態の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法によれば、リチウム混合物の粉末を、より密度の高い成形体に成形することで、単位体積当たりの原料投入量が増えるとともに、焼成時間も短縮されるため、大きく生産性を向上させることができる。また成形体を積み重ねて焼成する場合の、成形体間にスペーサーを配置しなくとも、効率的に焼成することができるため、スペーサーの配置および除去に要する時間を短縮し、より高い生産性が達成される。
1…突起部
2…本体部
3…固定部
4…孔部
10…成形体
20…載置部
30…集合体
SP…空間
40…リチウム混合物の粉末
50…ダイ
60…下パンチ
70…上パンチ
h…ヒータ
R…ロール
PE…正極(評価用電極)
NE…負極
SE…セパレータ
GA…ガスケット
WW…ウェーブワッシャー
PC…正極缶
NC…負極缶
CBA…コイン型二次電池

Claims (11)

  1. ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して得られる、単数又は複数の成形体であって、
    前記成形体を焼成するときに、焼成炉から供給されるガスと接触でき、かつ、前記成形体の焼結により生成されるガスを排出できる空間を形成する形状を有する、成形体。
  2. 焼成した後、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられる、請求項1に記載の成形体。
  3. 1つ以上の突起部を備え、前記突起部を用いて前記空間を形成する、請求項1又は請求項2に記載の成形体。
  4. 複数の成形体を積み重ねて形成され、
    前記複数の成形体のうち、前記突起部を有する成形体と接触する他の成形体は、前記突起部の位置を固定できる固定部を備え、前記突起部と、前記固定部とを組み合わせて、前記空間を形成する、請求項3に記載の成形体。
  5. 少なくとも一方の面が湾曲した形状を有し、前記湾曲した形状により、前記空間を形成する、請求項1又は請求項2に記載の成形体。
  6. 内部に向かって開口した孔部を備え、前記孔部が前記空間を形成する、請求項1又は請求項2に記載の成形体。
  7. 前記成形体は、棒状及び板状の少なくとも一方の形状を有し、前記成形体を複数組み合わせることにより、前記空間を形成する、請求項1又は請求項2に記載の成形体。
  8. ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して単数又は複数の成形体を得ることと、
    前記成形体を焼成して焼成体を得ることと、
    前記焼成体を解砕して、リチウムニッケル複合酸化物の粉末を得ることと、
    を備え、
    前記成形体は、焼成するときに、焼成炉から供給されるガスと接触でき、かつ、前記成形体の焼結により生成されるガスを排出できる空間を形成する形状を有する、
    非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 正極と負極と非水電解液とを備える非水系電解質二次電池の製造方法であって、
    請求項8に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、正極を製造することを備える、非水系電解質二次電池の製造方法。
  10. ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して得られる成形体であって、
    1以上の突起部を備え、
    焼成した後、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられる、成形体。
  11. ニッケルを含む化合物の粉末と、リチウム化合物の粉末とを含有するリチウム混合物粉末を成形して得られる成形体であって、
    孔部を備え、
    焼成した後、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられる、成形体。
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