JP2019172500A - 合わせガラス用中間膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】高遮音性を有し、かつ高温における力学強度の低下が抑制された合わせガラス用中間膜を提供する。【解決手段】 正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物Xを含む層(x)を少なくとも有し、剛直性に関する所定の条件(1)、正接損失に関する所定の条件(2)、ヘイズに関する所定の条件(3)を満たす合わせガラス用中間膜。【選択図】図1
Description
本発明は合わせガラス用中間膜に関する。
高強度かつ高透明性を有し、ガラスとの接着性に優れ、柔軟性に優れる合わせガラス用中間膜を2枚のガラスで挟んで得られる合わせガラスは、自動車フロントガラスなどの各種安全ガラスに使用されている。
近年、生活環境の質向上に対する要求の向上にともない、遮音に関するニーズが高まっている。合わせガラスにおいても、遮音性を有する合わせガラス用中間膜を含む、遮音性合わせガラスに関する検討が行われている。従来知られている遮音性合わせガラス用中間膜を使用した合わせガラスは、合わせガラス用中間膜の減衰性能により、コインシデンス効果による音響透過損失の低下を抑制する効果がある(例えば、特許文献1)。特許文献1では、室温における合わせガラスの遮音性能を向上させるために、合わせガラス用中間膜の正接損失(tanδ)のピーク温度を室温付近またはそれ以下の温度に調節している。
しかしながら、特許文献1の合わせガラス用中間膜は、高遮音性を達成するために、特定の低分子化合物を多量に含有する必要があり、高温における合わせガラス用中間膜の力学強度が大きく低下してしまうという課題があった。このような合わせガラス用中間膜は、自動車フロントガラスの温度が上昇する夏場において、安全性が低下してしまうことが問題となる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高遮音性を有し、かつ高温における力学強度の低下が抑制された合わせガラス用中間膜を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の樹脂及び化合物からなる組成物を含む層を少なくとも有し、特定の条件を満たす合わせガラス用中間膜が上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の好適な態様を包含する。
[1]正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物Xを含む層(x)を少なくとも有し、下記条件(1)〜(3)を満たす合わせガラス用中間膜。
(1)分子動力学シミュレーションにより算出した熱可塑性樹脂(a)の剛直性をSa、化合物(b)の剛直性をSbとしたときに、Sb−Saの値が−11.0以上20.0以下である。
(2)熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yの正接損失の極大値をtanδyとしたときに、tanδy―tanδaの値が0.5以上である。
(3)組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下である。
[2]前記熱可塑性樹脂(a)が、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イソプレン系ブロック共重合体、ブタジエン系ブロック共重合体およびアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである、[1]の合わせガラス用中間膜。
[3]前記化合物(b)が、少なくとも1つの環構造を含む化合物である、[1]または[2]の合わせガラス用中間膜。
[4]前記熱可塑性樹脂(a)が、0℃以上に少なくとも1つの正接損失の極大値を有する、[1]〜[3]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[5]前記化合物(b)の融点が150℃以下である、[1]〜[4]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[6]前記化合物(b)が、3つ以上の環構造からなる縮合環を含まない化合物である、[1]〜[5]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[7]前記化合物(b)が、芳香環に直接結合した水酸基を含まない化合物および亜リン酸エステル構造を含まない化合物である、[1]〜[6]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[8]前記化合物(b)が芳香族化合物である、[1]〜[7]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[9]前記化合物(b)として2種以上の構造の異なる化合物を含み、化合物(b)中に最も多く含まれる化合物(b−1)の含有量が、全ての化合物(b)の合計量に対して20質量%以上である、[1]〜[8]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[10]前記層(x)が−30℃以上50℃以下の温度に正接損失の極大値を有する、[1]〜[9]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[11]前記層(x)が可塑剤(c)を含む、[1]〜[10]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[12]前記熱可塑性樹脂(a)が、粘度平均重合度が150以上10000以下の樹脂である、[1]〜[11]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[13]前記層(x)に加えて、層(z)を有するガラス用中間膜であって、
当該層(z)は、ポリビニルアセタール樹脂およびアイオノマー樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂を含み、少なくとも1つの最外層を構成する、[1]〜[12]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[14]2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときのヘイズが1.5以下である、[1]〜[13]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[15]2枚のガラス板の間に、[1]〜[14]のいずれかの合わせガラス用中間膜が挟持されてなる合わせガラス。
[1]正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物Xを含む層(x)を少なくとも有し、下記条件(1)〜(3)を満たす合わせガラス用中間膜。
(1)分子動力学シミュレーションにより算出した熱可塑性樹脂(a)の剛直性をSa、化合物(b)の剛直性をSbとしたときに、Sb−Saの値が−11.0以上20.0以下である。
(2)熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yの正接損失の極大値をtanδyとしたときに、tanδy―tanδaの値が0.5以上である。
(3)組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下である。
[2]前記熱可塑性樹脂(a)が、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イソプレン系ブロック共重合体、ブタジエン系ブロック共重合体およびアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである、[1]の合わせガラス用中間膜。
[3]前記化合物(b)が、少なくとも1つの環構造を含む化合物である、[1]または[2]の合わせガラス用中間膜。
[4]前記熱可塑性樹脂(a)が、0℃以上に少なくとも1つの正接損失の極大値を有する、[1]〜[3]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[5]前記化合物(b)の融点が150℃以下である、[1]〜[4]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[6]前記化合物(b)が、3つ以上の環構造からなる縮合環を含まない化合物である、[1]〜[5]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[7]前記化合物(b)が、芳香環に直接結合した水酸基を含まない化合物および亜リン酸エステル構造を含まない化合物である、[1]〜[6]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[8]前記化合物(b)が芳香族化合物である、[1]〜[7]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[9]前記化合物(b)として2種以上の構造の異なる化合物を含み、化合物(b)中に最も多く含まれる化合物(b−1)の含有量が、全ての化合物(b)の合計量に対して20質量%以上である、[1]〜[8]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[10]前記層(x)が−30℃以上50℃以下の温度に正接損失の極大値を有する、[1]〜[9]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[11]前記層(x)が可塑剤(c)を含む、[1]〜[10]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[12]前記熱可塑性樹脂(a)が、粘度平均重合度が150以上10000以下の樹脂である、[1]〜[11]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[13]前記層(x)に加えて、層(z)を有するガラス用中間膜であって、
当該層(z)は、ポリビニルアセタール樹脂およびアイオノマー樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂を含み、少なくとも1つの最外層を構成する、[1]〜[12]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[14]2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときのヘイズが1.5以下である、[1]〜[13]のいずれかの合わせガラス用中間膜。
[15]2枚のガラス板の間に、[1]〜[14]のいずれかの合わせガラス用中間膜が挟持されてなる合わせガラス。
本発明は、高遮音性を有し、かつ高温における力学強度の低下が抑制された合わせガラス用中間膜を提供することである。
本発明の合わせガラス用中間膜は、正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物Xを含む層(x)を少なくとも有し、下記条件(1)〜(3)を満たす。
(1)分子動力学シミュレーションにより算出した熱可塑性樹脂(a)の剛直性をSa、化合物(b)の剛直性をSbとしたときに、Sb−Saの値が−11.0以上20.0以下である。
(2)熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yの正接損失の極大値をtanδyとしたときに、tanδy―tanδaの値が0.5以上である。
(3)組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下である。
(1)分子動力学シミュレーションにより算出した熱可塑性樹脂(a)の剛直性をSa、化合物(b)の剛直性をSbとしたときに、Sb−Saの値が−11.0以上20.0以下である。
(2)熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yの正接損失の極大値をtanδyとしたときに、tanδy―tanδaの値が0.5以上である。
(3)組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下である。
<熱可塑性樹脂(a)>
熱可塑性樹脂(a)は正接損失の極大値であるtanδaが、0.5以上である。tanδaは、熱可塑性樹脂(a)を厚さ0.8mmに成形したフィルムの動的粘弾性を、周波数0.3Hz、引張モードで−100〜120℃の範囲で測定した際の極大値である。
正接損失がtanδaとなる温度をTa(℃)としたときに、Taは−70℃以上が好ましく、−50℃以上がより好ましく、−40℃以上がさらに好ましく、0℃以上が最も好ましい。またTaは75℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。Taが上記範囲を満たすことで、高遮音性を有し、かつ高温における力学強度の低下が抑制された合わせガラス用中間膜を提供することができる。
なお、tanδaが複数存在する場合、少なくとも一つのtanδaとTaが上記条件を満たせばよい。
熱可塑性樹脂(a)は正接損失の極大値であるtanδaが、0.5以上である。tanδaは、熱可塑性樹脂(a)を厚さ0.8mmに成形したフィルムの動的粘弾性を、周波数0.3Hz、引張モードで−100〜120℃の範囲で測定した際の極大値である。
正接損失がtanδaとなる温度をTa(℃)としたときに、Taは−70℃以上が好ましく、−50℃以上がより好ましく、−40℃以上がさらに好ましく、0℃以上が最も好ましい。またTaは75℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。Taが上記範囲を満たすことで、高遮音性を有し、かつ高温における力学強度の低下が抑制された合わせガラス用中間膜を提供することができる。
なお、tanδaが複数存在する場合、少なくとも一つのtanδaとTaが上記条件を満たせばよい。
前記熱可塑性樹脂(a)としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカルボン酸ビニル樹脂、オレフィン−カルボン酸ビニル共重合体、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン‐ジエンブロック共重合体、塩素化ポリオレフィン樹脂など、従来公知の熱可塑性樹脂が使用可能である。中でも、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イソプレン系ブロック共重合体、ブタジエン系ブロック共重合体およびアクリル樹脂が好ましい。これらの中でも、合わせガラス用中間膜において優れた遮音性能を発現する観点から、熱可塑性樹脂(a)はビニルエステル単位を有するものが好ましい。当該ビニルエステル単位の含有量は0.1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、70モル%以上が特に好ましい。ビニルエステル単位を含む樹脂としては、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
熱可塑性樹脂(a)の粘度平均重合度は、150以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましい。また、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下がさらに好ましく、2500以下が特に好ましい。粘度平均重合度が、150未満であると、合わせガラス用中間膜の力学強度が不十分となることがあり、10000を超えると溶融加工時の加工性が低下することがある。
分子動力学シミュレーションにより算出した熱可塑性樹脂(a)の剛直性をSaとした際に、当該Saは、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。Saは50.0以下が好ましく、40.0以下がより好ましく、30.0以下がさらに好ましく、20.0以下が特に好ましい。Saが1.0未満だと合わせガラス用中間膜の力学強度が不十分となることがあり、Saが50.0以上だと、熱可塑性樹脂(a)が後述の化合物(b)と十分に相溶しないことがある。なお、剛直性の詳細な測定方法は後述する。
前記熱可塑性樹脂(a)として好適に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、従来公知のものが使用可能である。例えば次のような方法によって得ることができる。まず濃度3〜30質量%のポリビニルアルコール水溶液を、80〜100℃の温度範囲で保持した後、その温度を10〜60分かけて徐々に冷却する。該水溶液の温度が−10〜30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、30〜300分間温度を一定に保ち、アセタール化反応を行う。その後、反応液で30〜200分かけて20〜80℃の温度まで昇温し、その温度で30〜300分保持する。次に反応液を、必要に応じてアルカリなどの中和剤を添加して中和し、樹脂を水洗、乾燥することにより、ポリビニルアセタール樹脂が得られる。
アセタール化反応に用いる酸触媒としては、例えば有機酸および無機酸のいずれでも使用可能であり、例えば酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸、硝酸、硫酸が好ましく用いられる。
アセタール化反応に用いるアルデヒドは、例えば炭素数1以上で、炭素数8以下のアルデヒドを用いることが好ましい。炭素数1以上で、炭素数8以下のアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、二種以上併用してもよい。これらの中でも炭素数2〜5のアルデヒドを用いることが好ましく、炭素数4のアルデヒドを用いることがより好ましい。特にn−ブチルアルデヒドが入手容易であり、アセタール化反応後に残存するアルデヒドの水洗や乾燥による除去が容易で、また得られるポリビニルアセタール樹脂の取り扱い性と力学特性のバランスに優れるため、好ましく用いられる。したがって本発明で使用されるポリビニルアセタール樹脂としては、特にポリビニルブチラール樹脂が好適である。
ポリビニルアセタール樹脂の平均残存水酸基(JISK6728:1977におけるビニルアルコール)量は、10モル%以上であることが好ましく、14モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、22モル%以上が特に好ましく、26モル%以上が最も好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の平均残存水酸基量は、60モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましく、35モル%以下が特に好ましく、30モル%以下が最も好ましい。平均残存水酸基量が10モル%未満であると、合わせガラス用中間膜の力学強度が不十分となる。また、そのようなポリビニルアセタール樹脂は安価に入手することが困難である。また、平均残存水酸基量が60モル%を超えると、合わせガラス用中間膜が吸水しやすくなったり、後述する化合物(b)および可塑剤との相溶性が低下したりすることがあり、さらに十分な遮音性能が発現しないことがある。
ポリビニルアセタール樹脂の平均残存ビニルエステル基(JISK6728:1977における酢酸ビニル)量は、遮音性能の観点では0.1モル%以上が好ましく、0.2モル%以上がより好ましく、0.3モル%以上がさらに好ましく、0.5モル%以上が最も好ましい。また力学強度の観点、長期間使用した場合の耐候性の観点では50モル%未満が好ましく、25モル%以下がより好ましく、17モル%以下がさらに好ましく、12モル%以下が特に好ましく、2モル%以下が最も好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂の平均アセタール化度(JISK6728:1977におけるビニルブチラール)は、40モル%以上が好ましく、45モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、60モル%以上が特に好ましく、68モル%以上が最も好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の平均アセタール化度は、86モル%以下が好ましく、84モル%以下がより好ましく、82モル%以下がさらに好ましく、75モル%以下が特に好ましく、73モル%以下が最も好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の平均アセタール化度が40モル%未満となると、十分な遮音性能が発現しないことがある。また、86モル%を超えるものは工業的に安価に生産することが困難であり、また得られる合わせガラス用中間膜の力学強度が低下することがある。
ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度(JISK6728:1977における平均重合度)は、150以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましい。また、4000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下がさらに好ましい。粘度平均重合度が150未満であると、得られる合わせガラス用中間膜の力学強度が不十分となることがあり、4000を超えると溶融加工時の加工性が低下することがある。
前記熱可塑性樹脂(a)として用いることができるポリカルボン酸ビニル樹脂としては、カルボン酸ビニル化合物を従来公知の方法、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの方法を適用し、重合開始剤としては、重合方法に応じて、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などを適宜選択して重合したものが挙げられる。カルボン酸ビニル化合物は、炭素数4〜20のカルボン酸ビニル化合物が好ましく、炭素数4〜10のカルボン酸ビニル化合物がより好ましく、炭素数4〜6のカルボン酸ビニル化合物がさらに好ましい。カルボン酸ビニル化合物の炭素数が4より小さくなると、目的の重合体の製造が困難となり、炭素数が20より大きくなると、力学特性が低下したり、遮音性能が低下したりする傾向がある。このようなカルボン酸ビニル化合物としては、例えば酢酸ビニル、酢酸n−プロペニル、酢酸イソプロペニル、酢酸n−ブテニル、酢酸イソブテニル、プロピオン酸ビニルなどの酢酸ビニル系化合物;プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ペンタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ドデカン酸ビニル、ヘキサデカン酸ビニルなどが挙げられる。これらの中でも特に、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニルが好適に用いられ、酢酸ビニルがより好適に用いられる。
ポリカルボン酸ビニル樹脂は、本発明の趣旨に反しない限り、カルボン酸ビニル化合物とオレフィン以外の他の単量体との共重合体を用いることができる。当該単量体として例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン、その塩およびその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミドおよびその誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン、その塩およびその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミドおよびその誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸エステルまたはマレイン酸無水物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物などが挙げられる。これらの他の単量体を共重合させる場合には、通常、これらの他の単量体を、カルボン酸ビニル化合物に対して10モル%未満の割合で用いることが好ましい。
ポリカルボン酸ビニルの粘度平均重合度は500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましい。また、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3500以下がさらに好ましい。粘度平均重合度がこの範囲を満たすことで、優れた遮音性能と十分な力学強度を発現するため好適である。
本発明で用いられるオレフィン−カルボン酸ビニル共重合体としては、例えば、従来公知のオレフィン−カルボン酸ビニル共重合体が挙げられる。オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどの従来公知の化合物が使用できる。またカルボン酸ビニル化合物としては、例えば酢酸ビニル、酢酸n−プロペニル、酢酸イソプロペニル、酢酸n−ブテニル、酢酸イソブテニルなどの酢酸ビニル系化合物;プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ペンタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ドデカン酸ビニル、ヘキサデカン酸ビニルが挙げられる。これらの中でもオレフィンとしてエチレンを使用し、カルボン酸ビニル化合物として酢酸ビニルを使用したオレフィン−カルボン酸ビニル共重合体が、合わせガラス用中間膜として優れた遮音性能、十分な力学強度を発現する観点で好ましい。
オレフィン−カルボン酸ビニル共重合体において、オレフィン単位とカルボン酸ビニル単位との合計量に対するカルボン酸ビニル単位の量の比率は10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上が特に好ましい。また、オレフィン単位に対するカルボン酸ビニル単位の合計量に対するカルボン酸ビニル単位の量の比率は90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下がさらに好ましく、75モル%以下が特に好ましい。カルボン酸ビニル単位の量が上記範囲を満たすと、本発明の合わせガラス用中間膜が十分な力学強度を発現し、また好適な温度で優れた遮音性能を発現することが可能である。
本発明で使用する熱可塑性樹脂(a)は、取扱い性や成形性を改善するために、熱可塑性樹脂としての特性を損なわない範囲で部分的にまたは少量の架橋構造を含むものでも構わない。
本発明では熱可塑性樹脂(a)として、上記したものを2種以上混合して用いても良い。
本発明では熱可塑性樹脂(a)として、上記したものを2種以上混合して用いても良い。
<化合物(b)>
化合物(b)は、分子量が140以上10000以下の化合物である。また化合物(b)は、後述の合わせガラス用中間膜の段落に記載する(1)〜(3)の条件を満たすものである。
化合物(b)は、分子量が140以上10000以下の化合物である。また化合物(b)は、後述の合わせガラス用中間膜の段落に記載する(1)〜(3)の条件を満たすものである。
化合物(b)は、遮音性能に優れる合わせガラス用中間膜を得る観点で、少なくとも1つの環構造を含む化合物であることが好ましい。化合物(b)に含まれる環の数は、2〜10であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。また、合わせガラス用中間膜の遮音性を高めるという観点では、化合物(b)が芳香族化合物であることが好ましい。化合物(b)が芳香族化合物である場合、剛直性が十分となり十分な遮音性が得られやすい。
上述した、少なくとも1つの環構造を含む化合物とは、単環を1つ有するもの、単環を複数有するものの他、2つ以上の環が縮合した縮合環構造を1つ又は複数有する化合物が含まれる。縮合環構造を少なくとも1つ有する場合、遮音性を高めるという観点では、その一つの縮合環を構成する環の数は2であることが好ましい。これは、縮合環を構成する環の数が増加するにつれて、化合物(b)の結晶性が高くなり、熱可塑性樹脂(a)中にうまく分散せず、遮音性向上効果が得られないためである。
上述した、少なくとも1つの環構造を含む化合物とは、単環を1つ有するもの、単環を複数有するものの他、2つ以上の環が縮合した縮合環構造を1つ又は複数有する化合物が含まれる。縮合環構造を少なくとも1つ有する場合、遮音性を高めるという観点では、その一つの縮合環を構成する環の数は2であることが好ましい。これは、縮合環を構成する環の数が増加するにつれて、化合物(b)の結晶性が高くなり、熱可塑性樹脂(a)中にうまく分散せず、遮音性向上効果が得られないためである。
化合物(b)の後述する方法でシミュレーションによって評価される剛直性Sbは、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。剛直性Sbは50.0以下が好ましく、40.0以下がより好ましく、30.0以下のものがさらに好ましく、20.0以下のものが特に好ましい。剛直性Sbが1.0未満だと、得られる合わせガラス用中間膜の力学強度が不十分となることがあり、剛直性Sbが50.0以上だと、化合物(b)が熱可塑性樹脂(a)と十分に相溶しないことがある。
合わせガラス用中間膜の長期透明性という観点では、化合物(b)は、芳香環に直接結合した水酸基を含む化合物および亜リン酸エステル構造を含む化合物の、いずれにも該当しない化合物であることが望ましい。芳香環に直接結合した水酸基は酸化されやすい。また亜リン酸エステル構造も酸化されやすい。これらに基づく酸化が発生すると、中間膜の品質低下および着色の原因となることがある。
本発明で使用する化合物(b)は、その融点が−100℃以上500℃以下であることが好ましい。その融点は−80℃以上がより好ましく、−50℃以上がさらに好ましく、−20℃以上がさらにより好ましい。またその融点は400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましく、250℃以下がさらにより好ましく、150℃以下が最も好ましい。融点が500℃を超えると、化合物(b)の熱可塑性樹脂(a)に対する相溶性が低下してしまうことがある。
化合物(b)の分子量は140以上10000以下である。分子量は150以上が好ましく、200以上がより好ましく、250以上がさらに好ましく、280以上が特に好ましい。また、10000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましく、800以下が特に好ましく、600以下が最も好ましい。化合物(b)の分子量が140未満の場合は、長期間使用した場合に化合物(b)が揮発してしまう傾向にあり、10000を超える場合は、熱可塑性樹脂(a)との相溶性が低下したり、十分な遮音性能が発現しなかったりする傾向がある。
化合物(b)は熱可塑性樹脂(a)との関係によって選択すればよく、特に限定されないが、例えば、フタル酸ジブチル、2−メトキシ−1−ナフタレンメタノール、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオン、α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、スタノロンが挙げられる。
化合物(b)は、2種以上の構造の異なる化合物を含んでいても良い。この場合、当該異なる化合物の合計の質量を化合物(b)の質量とし、当該異なる化合物の混合物から実施例の方法で算出される剛直性Sbを化合物(b)の剛直性Sbとして考えれば良い。
化合物(b)が、2種以上の構造の異なる複数の化合物を含む場合は、化合物(b)中に最も多く含まれる化合物(b−1)の含有量が、化合物(b)の全量に対して20質量%以上であることが好ましい。当該含有量は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。20質量%未満では、遮音性向上効果が得られないことがある。
化合物(b)が、2種以上の構造の異なる複数の化合物を含む場合は、化合物(b)中に最も多く含まれる化合物(b−1)の含有量が、化合物(b)の全量に対して20質量%以上であることが好ましい。当該含有量は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。20質量%未満では、遮音性向上効果が得られないことがある。
<組成物X>
組成物Xは、正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物である。なお、後述の層(x)は組成物Xを含む層であり、組成物X以外の他の物質を含んでも良い。
組成物Xは、正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物である。なお、後述の層(x)は組成物Xを含む層であり、組成物X以外の他の物質を含んでも良い。
組成物Xにおいて、熱可塑性樹脂(a)の含有量は20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましい。組成物において、熱可塑性樹脂(a)の含有量は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、75質量%以下が特に好ましい。組成物Xにおいて、熱可塑性樹脂(a)の含有量が上記範囲外となると、合わせガラス用中間膜が十分な遮音性能を発現できなくなる傾向にあり、または合わせガラス用中間膜の強度が不十分となることがある。
化合物(b)の含有量は、熱可塑性樹脂(a)100質量部に対して5〜500質量部である。また、化合物(b)の含有量は10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらにより好ましく、45質量部以上が特に好ましく、65質量部以上が最も好ましい。化合物(b)の含有量は、熱可塑性樹脂(a)100質量部に対して400質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、170質量部以下がさらに好ましく、150質量部以下がいっそう好ましく、130質量部以下が特に好ましく、100質量部以下が最も好ましい。熱可塑性樹脂(a)100質量部に対する化合物(b)の量が5質量部未満の場合は、後述のtanδxの値を十分に高くすることができない場合があり、500質量部を超える場合は、化合物(b)がブリードアウトしたり、相分離したりする傾向がある。
組成物Xは、熱可塑性樹脂(a)と化合物(b)のみを混合することで得られる。混合の方法としては、例えば、ラボプラストミルによる溶融混練が挙げられる。
<層(x)>
層(x)は、組成物Xを含む層である。すなわち、層(x)は、熱可塑性樹脂(a)100質量部と化合物(b)5〜500質量部を必ず含み、さらに必要に応じて他の物質を含むものである。
層(x)は、組成物Xを含む層である。すなわち、層(x)は、熱可塑性樹脂(a)100質量部と化合物(b)5〜500質量部を必ず含み、さらに必要に応じて他の物質を含むものである。
本発明において、層(x)において正接損失の極大値であるtanδxは、好ましくは、1.0以上、さらに好ましくは2.5以上、さらにより好ましくは3.0以上である。tanδxは、層(x)を構成する材料を膜厚0.8mmに成形したフィルムの動的粘弾性を、周波数0.3Hz、引張モードで測定した際に−100〜120℃の範囲で測定した際の極大値の内、0.5以上のものである。
また、正接損失がtanδxとなる温度をTx(℃)したときに、Txは−30℃以上50℃以下が好ましく、−20℃以上40℃以下がより好ましく、−10℃以上30℃以下が特に好ましい。上記の温度範囲以外の場合は、合わせガラス用中間膜が室温で高い遮音性を達成することが困難な場合がある。
なお、tanδxが複数存在する場合、少なくとも一つのtanδxとTxが上記範囲を満たせばよい。
また、正接損失がtanδxとなる温度をTx(℃)したときに、Txは−30℃以上50℃以下が好ましく、−20℃以上40℃以下がより好ましく、−10℃以上30℃以下が特に好ましい。上記の温度範囲以外の場合は、合わせガラス用中間膜が室温で高い遮音性を達成することが困難な場合がある。
なお、tanδxが複数存在する場合、少なくとも一つのtanδxとTxが上記範囲を満たせばよい。
層(x)において、(Tx+30)℃における貯蔵弾性率は、0.10以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.30以上がさらに好ましく、0,40以上が最も好ましい。当該貯蔵弾性率は実施例に記載の方法で測定できる。この範囲であると、合わせガラス用中間膜において、高温における力学強度の低下が抑制できる。上記の貯蔵弾性率達成の観点では、層(x)を構成する組成物において樹脂の含有量が44質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
層(x)が含んでもよい他の物質として、例えば可塑剤(c)が挙げられる。可塑剤(c)は環構造を含まないものが好ましい。上記の温度Txが室温より高温で、合わせガラス用中間膜が室温で遮音性を発現させることが難しい場合に、層(x)に可塑剤(c)を含ませることで、遮音性を改善しやすい。
本発明において使用する可塑剤(c)は、組成物Xとの相溶性、組成物Xの可塑化効果に優れるものであれば特に限定されず、例えば従来公知の可塑剤が使用される。これらの中でも特にj価カルボン酸1分子と1価アルコールj分子のエステル化反応で得られる化合物(j=1〜4)、1価カルボン酸k分子とk価アルコール1分子とのエステル化反応で得られる化合物(k=1〜4)から選ばれる1種類以上の化合物が好適に使用される。また、可塑剤(c)が使用される場合、組成物Xと可塑剤(c)が、層(x)に含まれる比率で室温において相溶していることが、得られる合わせガラス用中間膜が透明性を有する点からの好ましい。ここで「相溶している」とは層(x)を膜厚0.8mmのフィルムに成形し、2枚のクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下であることを指す。
j価カルボン酸1分子と1価アルコールj分子のエステル化反応で得られる化合物(j=1〜4)を具体的に例示するとアジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸ジノニル、セバシン酸ブチル、セバシン酸ヘキシル、セバシン酸ジ(ブトキシエチル)、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、トリメット酸トリ2−エチルヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。また1価カルボン酸k分子とk価アルコール1分子とのエステル価反応で得られる化合物(k=1〜4)を具体的に例示すると、トリエチレングリコールジ2−エチルブタノエート、トリエチレングリコール−ビス−(2−エチルヘキサのエート)(3G8)、トリエチレングリコールジノネート、テトラエチレングリコールジ2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、グリセリントリブチル、グリセリントリヘキシル、グリセリントリ(ブトキシエチル)、グリセリントリ2−エチルヘキシルなどが上げられるがこれらに限定されない。
層(x)における可塑剤(c)の使用量は、熱可塑性樹脂(a)100質量部に対して10〜60質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。また可塑剤の当該使用量は0〜10質量部であってもよい。可塑剤の量が60質量部を超えると、合わせガラス用中間膜に要求される力学強度の達成が難しくなることがある。
層(x)は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤(接着剤調整剤)、その他添加剤を含んでいてもよい。
接着性改良剤(接着剤調整剤)としては酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酪酸マグネシウムなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩といった、従来公知の接着性改良剤を使用できる。その添加量も特に限定されず、例えばパンメル試験により得られるパンメル値が目的に応じた値になるように添加量を調節することができる。
本発明の合わせガラス用中間膜における層(x)の厚さは、0.005mm以上が好ましく、0.01mm以上がより好ましく、0.02mm以上がさらに好ましく、0.04mm以上がいっそう好ましく、0.07mm以上よりいっそう好ましく、0.1mm以上が特に好ましく、0.15mm以上がとりわけ好ましく、0.2mm以上が最も好ましい。また層(x)の厚さは5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましく、1.6mm以下がいっそう好ましく、1.2mm以下がよりいっそう好ましく、1.1mm以下が特に好ましく、1mm以下がとりわけ好ましく、0.79mm以下が最も好ましい。層(x)の厚さは従来公知の方法、例えば接触式または非接触式の厚み計などを用いて測定される。
層(x)は、例えば、組成物Xとさらに必要に応じて他の物質を混合し、成形することで得ることができる。混合の方法としては、例えばミキシングロール、プラストミル、押し出し機などを用いた溶融混練、あるいは各成分を適当な有機溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法などが挙げられる。混合においては、特に制限はないが、組成物Xと必要に応じて他の物質を混合する方法や、熱可塑性樹脂(a)と化合物(b)と必要に応じて他の物質を同時に混合する方法が挙げられる。成形の方法としては、熱プレス成形、ロール成形などが公知の方法が挙げられる。
<合わせガラス用中間膜>
本発明の合わせガラス用中間膜は、正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物Xを含む層(x)を少なくとも有し、下記条件(1)〜(3)を満たすものである。
(1)分子動力学シミュレーションにより算出した熱可塑性樹脂(a)の剛直性をSa、化合物(b)の剛直性をSbとしたときに、Sb−Saの値が−11.0以上20.0以下である。
(2)熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yの正接損失の極大値をtanδyとしたときに、tanδy―tanδaの値が0.5以上である。
(3)組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下である。
以下条件(1)〜(3)について説明する。
本発明の合わせガラス用中間膜は、正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物Xを含む層(x)を少なくとも有し、下記条件(1)〜(3)を満たすものである。
(1)分子動力学シミュレーションにより算出した熱可塑性樹脂(a)の剛直性をSa、化合物(b)の剛直性をSbとしたときに、Sb−Saの値が−11.0以上20.0以下である。
(2)熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yの正接損失の極大値をtanδyとしたときに、tanδy―tanδaの値が0.5以上である。
(3)組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下である。
以下条件(1)〜(3)について説明する。
<条件(1)について>
合わせガラス用中間膜の減衰性(正接損失tanδ)を高めて、遮音性を発現させるという観点で、後述する方法で測定された化合物(b)の剛直性パラメータであるSbと、熱可塑性樹脂(a)の剛直性パラメータであるSaの差が重要である。
熱可塑性樹脂(a)は、正接損失が極大値となる温度Taより低温において貯蔵弾性率が高い状態で保持されているが、Ta付近の温度で貯蔵弾性率が低下する。熱可塑性樹脂(a)のみで化合物(b)を含まない場合(図1における(a)の場合)は、Taより低温から徐々に貯蔵弾性率の低下が始まる。しかし、種々解析を行った結果、熱可塑性樹脂(a)に化合物(b)を添加した場合(図1における(a+b)の場合)は、Taより低温において、貯蔵弾性率の低下が抑制されることが判明した。この結果、熱可塑性樹脂(a)に化合物(b)を添加した場合、Ta付近の温度で貯蔵弾性率が急激に低下するために正接損失tanδの極大値が、熱可塑性樹脂(a)の正接損失の極大値tanδaと比べて向上する(図1参照)。なお、図1においては、上記(a)の場合と上記(a+b)の場合のそれぞれにおいて、図1に記載の通り、温度を横軸とし、縦軸を貯蔵弾性率E’及びtanδとして、それらの関係のイメージを示した。また、図1のE’のグラフ上に示した矢印は、tanδが極大となる温度付近でのE’の傾きを示す。これにより、上記(a)に比べて上記(a+b)の場合では、当該E’の傾きの絶対値が大きくなっていることが分かる。
Taより低温における、貯蔵弾性率の低下の抑制効果は、後述する方法で測定された化合物(b)の剛直性パラメータであるSbと熱可塑性樹脂(a)の剛直性パラメータであるSaとの差であるSb−Saと相関がある。Sb−Saの値は、合わせガラス用中間膜の減衰性を高めるために−11.以上20.0以下である。また、Sb−Saの値は、―9.0以上が好ましく、−6.0以上がより好ましく、−4.0以上がさらに好ましく、−2.0以上が最も好ましい。また、Sb−Saの値は、19.0以下が好ましく、15.0以下がさらに好ましく、13.0以下が特に好ましい。
合わせガラス用中間膜の減衰性(正接損失tanδ)を高めて、遮音性を発現させるという観点で、後述する方法で測定された化合物(b)の剛直性パラメータであるSbと、熱可塑性樹脂(a)の剛直性パラメータであるSaの差が重要である。
熱可塑性樹脂(a)は、正接損失が極大値となる温度Taより低温において貯蔵弾性率が高い状態で保持されているが、Ta付近の温度で貯蔵弾性率が低下する。熱可塑性樹脂(a)のみで化合物(b)を含まない場合(図1における(a)の場合)は、Taより低温から徐々に貯蔵弾性率の低下が始まる。しかし、種々解析を行った結果、熱可塑性樹脂(a)に化合物(b)を添加した場合(図1における(a+b)の場合)は、Taより低温において、貯蔵弾性率の低下が抑制されることが判明した。この結果、熱可塑性樹脂(a)に化合物(b)を添加した場合、Ta付近の温度で貯蔵弾性率が急激に低下するために正接損失tanδの極大値が、熱可塑性樹脂(a)の正接損失の極大値tanδaと比べて向上する(図1参照)。なお、図1においては、上記(a)の場合と上記(a+b)の場合のそれぞれにおいて、図1に記載の通り、温度を横軸とし、縦軸を貯蔵弾性率E’及びtanδとして、それらの関係のイメージを示した。また、図1のE’のグラフ上に示した矢印は、tanδが極大となる温度付近でのE’の傾きを示す。これにより、上記(a)に比べて上記(a+b)の場合では、当該E’の傾きの絶対値が大きくなっていることが分かる。
Taより低温における、貯蔵弾性率の低下の抑制効果は、後述する方法で測定された化合物(b)の剛直性パラメータであるSbと熱可塑性樹脂(a)の剛直性パラメータであるSaとの差であるSb−Saと相関がある。Sb−Saの値は、合わせガラス用中間膜の減衰性を高めるために−11.以上20.0以下である。また、Sb−Saの値は、―9.0以上が好ましく、−6.0以上がより好ましく、−4.0以上がさらに好ましく、−2.0以上が最も好ましい。また、Sb−Saの値は、19.0以下が好ましく、15.0以下がさらに好ましく、13.0以下が特に好ましい。
<条件(2)について>
本発明では、減衰性(正接損失tanδ)の高い組成物Xを含む層(x)を用いた合わせガラス用中間膜により、高い遮音性を発現している。層(x)は、熱可塑性樹脂(a)100質量部と化合物(b)5〜500質量部と必要に応じて他の物質を含むものである。一方、熱可塑性樹脂(a)と化合物(b)の関係を簡略にする観点で検討をした、熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yにおいて、以下の条件を満たすことが本発明において重要である。
熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yにおいて正接損失の極大値tanδyは1.0以上である。tanδyは、組成物Yを厚さ0.8mmに成形したフィルムの動的粘弾性を、周波数0.3Hz、引張モードで測定した際に−100〜120℃の範囲に得られる極大値の内、0.5以上のものである。。また、前述の熱可塑性樹脂(a)におけるtanδaとの関係で、tanδy−tanδaの値が、0.5以上である。tanδyは、1.0以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましく、4.0以上が特に好ましい。このような関係を満たす熱可塑性樹脂(a)と化合物(b)を選択することにより、本発明における合わせガラス用中間膜の要求物性を達成できる。さらに、tanδy−tanδaの値は、0.6以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましく、1.5以上が特に好ましい。また、20.0以下が好ましい。tanδy−tanδaの値が0.5未満の場合、合わせガラス用中間膜において、高遮音性と要求される力学強度の両立が達成できないことがある。
本発明では、減衰性(正接損失tanδ)の高い組成物Xを含む層(x)を用いた合わせガラス用中間膜により、高い遮音性を発現している。層(x)は、熱可塑性樹脂(a)100質量部と化合物(b)5〜500質量部と必要に応じて他の物質を含むものである。一方、熱可塑性樹脂(a)と化合物(b)の関係を簡略にする観点で検討をした、熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yにおいて、以下の条件を満たすことが本発明において重要である。
熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yにおいて正接損失の極大値tanδyは1.0以上である。tanδyは、組成物Yを厚さ0.8mmに成形したフィルムの動的粘弾性を、周波数0.3Hz、引張モードで測定した際に−100〜120℃の範囲に得られる極大値の内、0.5以上のものである。。また、前述の熱可塑性樹脂(a)におけるtanδaとの関係で、tanδy−tanδaの値が、0.5以上である。tanδyは、1.0以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましく、4.0以上が特に好ましい。このような関係を満たす熱可塑性樹脂(a)と化合物(b)を選択することにより、本発明における合わせガラス用中間膜の要求物性を達成できる。さらに、tanδy−tanδaの値は、0.6以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましく、1.5以上が特に好ましい。また、20.0以下が好ましい。tanδy−tanδaの値が0.5未満の場合、合わせガラス用中間膜において、高遮音性と要求される力学強度の両立が達成できないことがある。
<条件(3)について>
合わせガラス中間膜の遮音性を向上させるという観点では、化合物(b)が熱可塑性樹脂(a)に十分に相溶していることが好ましい。そのため、組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下であることが要求される。当該ヘイズは0.00001以上が好ましい。また、当該ヘイズは1.4以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましい。
合わせガラス中間膜の遮音性を向上させるという観点では、化合物(b)が熱可塑性樹脂(a)に十分に相溶していることが好ましい。そのため、組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下であることが要求される。当該ヘイズは0.00001以上が好ましい。また、当該ヘイズは1.4以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましい。
<層(z)>
本発明の合わせガラス用中間膜は、層(x)からのみから構成させていてもよいが、例えば、層(x)の少なくとも一方の面に層(z)が積層された構成や、層(x)の両面に層(z)が積層された構成を有していてもよい。本発明の合わせガラス用中間膜において、層(x)の少なくとも一方の面に層(z)が積層されていることが、合わせガラス用中間膜の遮音性だけでなく、力学強度、ガラスとの接着性、取扱い性を高めやすいため好ましい。層(x)は遮音性を有することが好ましく、層(y)は保護層として機能することが好ましい。
本発明の合わせガラス用中間膜は、層(x)からのみから構成させていてもよいが、例えば、層(x)の少なくとも一方の面に層(z)が積層された構成や、層(x)の両面に層(z)が積層された構成を有していてもよい。本発明の合わせガラス用中間膜において、層(x)の少なくとも一方の面に層(z)が積層されていることが、合わせガラス用中間膜の遮音性だけでなく、力学強度、ガラスとの接着性、取扱い性を高めやすいため好ましい。層(x)は遮音性を有することが好ましく、層(y)は保護層として機能することが好ましい。
本発明の合わせガラス用中間膜が層(z)を有する場合、該層(z)は樹脂(d)を含む組成物Zからなる。組成物Zに含まれる樹脂(d)としては熱可塑性樹脂が好ましく、例えばポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂などが挙げられる。これらは力学強度、透明性、ガラスとの接着性に優れているため好適である。
組成物Zは樹脂(d)を組成物Zの総質量に基づいて40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、60質量%以上含むことがさらに好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましく、90質量%以上含むことが最も好ましい。また、組成物Zは樹脂(d)を100質量%含むものであってもよい。樹脂(d)の含有量が40質量%より少なくなると、層(z)とガラスとの接着性が低下したり、層(z)および合わせガラス用中間膜の力学強度が不十分になることがある。
樹脂(d)として用いてもよいポリビニルアセタール樹脂の平均残存水酸基量は、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。ポリビニルアセタールの平均残存水酸基量は、50モル%以下が好ましく、45モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。平均残存水酸基量が10モル%より少なくなると、ガラスとの接着性が低下する傾向にあり、また本発明の合わせガラス用中間膜の遮音性能が低下することがある。一方平均残存水酸基量が50モル%より多くなると、耐水性が低下する傾向にある。
樹脂(d)として用いてもよいポリビニルアセタール樹脂の平均残存ビニルエステル基量は30モル%以下が好ましい。平均残存ビニルエステル基量が30モル%を超えると、ポリビニルアセタールの製造時にブロッキングを起こしやすくなるため製造しにくくなる。平均残存ビニルエステル基量は、20モル%以下が好ましく、0モル%であってもよい。
樹脂(d)として用いてもよいポリビニルアセタール樹脂の平均アセタール化度は40モル%以上が好ましく、90モル%以下が好ましい。平均アセタール化度が40モル%未満であると可塑剤などとの相溶性が低下する傾向にある。平均アセタール化度が90モル%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂を得るための反応に長時間を要し、プロセス上好ましくないことがあり、また十分な力学強度を発現しないことがある。平均アセタール化度は60モル%以上がより好ましく、耐水性や可塑剤との相溶性の観点から、65モル%以上がさらに好ましく、68モル%以上が特に好ましい。また、平均アセタール化度は85モル%以下が好ましく、80モル%以下がさらに好ましく、75モル%以下が特に好ましい。
樹脂(d)として用いてもよいポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度は、100以上が好ましく、300以上がより好ましく、1000以上であることがより好ましく、1400以上であることがさらに好ましく、1600以上であることが特に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度が100未満であると、耐貫通性、耐クリープ物性、特に85℃、85%RHのような高温高湿条件下での耐クリープ物性が低下することがある。また、ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度は、5000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下がさらに好ましく、2300以下が特に好ましく、2000以下が最も好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度が5000を超えると成形が難しくなることがある。さらに、得られる合わせガラス用中間膜のラミネート適性を向上させ、いっそう外観が優れた合わせガラスを得るためには、ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度が1800以下であることが好ましい。なお、ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度は、例えば、JIS K6728:1977に準拠して測定することができる。
樹脂(d)として用いてもよいポリビニルアセタール樹脂の平均残存ビニルエステル基量は30モル%以下が好ましいため、原料としてけん化度が70モル%以上のポリビニルアルコール樹脂のけん化物を使用することが好ましい。ポリビニルアルコール樹脂のけん化度が70モル%未満となると、ポリビニルアセタール樹脂の透明性や耐熱性が低下することがあり、またアルデヒド類との反応性も低下することがある。けん化度は、より好ましくは95モル%以上である。
ポリビニルアルコール樹脂はポリ酢酸ビニル樹脂のけん化物であり、そのけん化度は、例えば、JIS K6726:1994に準拠して測定することができる。
樹脂(d)として用いてもよいポリビニルアルコール樹脂のアセタール化に用いるアルデヒド類、ポリビニルアセタール樹脂としては、上記熱可塑性樹脂(a)におけるものをいずれも採用することができる。
樹脂(d)として用いてもよいエチレン−酢酸ビニル共重合体においては、エチレン単位、酢酸ビニル単位の合計に対する酢酸ビニル単位の割合は、50モル%未満が好ましく、30モル%未満がより好ましく、20モル%未満がさらに好ましく、15モル%未満が特に好ましい。この範囲とすることで、合わせガラス用中間膜に必要な力学強度と柔軟性を発現しやすい。
樹脂(d)として用いてもよいアイオノマー樹脂としては、エチレン由来の構成単位、およびα,β−不飽和カルボン酸に由来の構成単位を有し、α,β−不飽和カルボン酸の少なくとも一部が金属イオンによって中和された樹脂が挙げられる。ベースポリマーとなるエチレン・α,β−不飽和カルボン酸共重合体において、α,β−不飽和カルボン酸の構成単位の含有割合は、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸の構成単位の含有割合は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。本発明においては、入手のしやすさの点から、エチレン・アクリル酸共重合体のアイオノマー、およびエチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマーが好ましい。アイオノマーを構成するα,β−不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などが挙げられ、アクリル酸またはメタクリル酸が特に好ましい。
組成物Zは、樹脂(d)以外の成分として、さらに可塑剤(e)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、機能性無機化合物、遮熱材料(例えば、赤外線吸収能を有する、無機遮熱性微粒子または有機遮熱性材料)等の種々の添加剤を必要に応じて含有してよい。特に組成物Zにポリビニルアセタール樹脂を使用する場合には、得られる合わせガラス用中間膜の力学強度、遮音性の観点から可塑剤(e)を含むことが好ましい。
可塑剤(e)としては、例えば層(x)に含まれ得る可塑剤として上記に述べたものが挙げられる。組成物Zが可塑剤(e)を含む場合、その含有量は樹脂(d)100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましい。組成物Zにおける可塑剤(e)の含有量は、樹脂(d)100質量部に対して、60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましい。組成物Bにおける可塑剤(e)の含有量が、樹脂(d)100質量部に対して20質量部より少ないと、得られる合わせガラス用中間膜の柔軟性が不十分となる傾向にあり、合わせガラス用中間膜としての衝撃吸収性が問題になる場合がある。また、組成物Zにおける可塑剤(e)の含有量が、樹脂(d)100質量部に対して60質量部より多いと、得られる合わせガラス用中間膜の力学強度が不十分となる傾向にある。特にポリビニルアセタール樹脂を用いる場合には、優れた遮音性を発現する観点で、可塑剤(e)の含有量は35〜60質量部であることが好適である。
層(z)を構成する組成物Zを成形したフィルム(厚さは0.8mm)の動的粘弾性を、周波数0.3Hz、引張モードで測定した際に得られるtanδが最大の値を示す極大値を有する温度をTD(℃)とすると、上述の層(x)に関するTx(℃)との関係で、TDはTxよりも高いことが好ましく、TDはTxよりも10℃以上高いことがより好ましく、TDはTxよりも20℃以上高いことがさらにより好ましい。このような条件を満たすことにより、遮音性に優れるだけでなく、力学強度、ガラスとの接着性、取扱い性に優れた合わせガラス用中間膜を得ることができる。
層(z)を構成する組成物Zは、樹脂、その他成分を従来公知の方法で混合することにより得られる。混合方法としては、例えばミキシングロール、プラストミル、押し出し機などを用いた溶融混練、あるいは各成分を適当な有機溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法などが挙げられる。
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されるものではなく、層(x)を構成する組成物を均一に混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等、公知の製膜方法により層(x)を作製すれば良い。また、同様の方法で必要に応じて組成物Zから層(z)を作製すれば良い。層(z)が含まれる場合、層(x)とプレス成形等で積層させてもよいし、層(x)、層(z)およびその他必要な層を共押出法により成形してもよい。また、作製した層(x)を単独で使用してもよい。
公知の製膜方法の中でも特に押出機を用いて合わせガラス用中間膜を製造する押出法が好適に採用される。押出し時の樹脂温度は150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。また、押出し時の樹脂温度は250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎると、用いる樹脂が分解を起こし、熱可塑性樹脂(a)および樹脂(d)の劣化が懸念される。逆に温度が低すぎると、押出機からの吐出が安定せず、機械的トラブルの要因になる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。
本実施形態における合わせガラス用中間膜は、層(x)を少なくとも有し、場合により、該層(x)の少なくとも一方の面に積層された層(z)を有する。層(x)の両面に層(z)が積層された構成であってもよい。合わせガラス用中間膜が層(x)以外の層を含む場合の積層構成は、所望する目的に応じて適宜決定してよいが、例えば層(z)/層(x)、層(z)/層(x)/層(z)、層(z)/層(x)/層(z)/層(x)、層(z)/層(x)/層(z)/層(x)/層(z)という積層構成であってもよい。これらの中でも特に取扱い性と遮音性のバランスに優れる観点から層(z)/層(x)/層(z)が好ましい。また上記積層構成において、層(x)や層(z)を複数含む場合、層(x)や層(z)中の成分は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、層(x)、層(z)以外の層(層(u)とする)を1層以上含んでいてもよく、例えば、層(z)/層(x)/層(u)/層(z)、層(z)/層(x)/層(z)/層(u)、層(z)/層(u)/層(x)/層(u)/層(z)、層(z)/層(u)/層(x)/層(z)/層(u)、層(z)/層(x)/層(u)/層(z)/層(u)、層(z)/層(u)/層(x)/層(z)/層(u)、層(z)/層(u)/層(x)/層(z)/層(u)/層(z)、層(z)/層(u)/層(z)/層(x)/層(z)/層(u)/層(z)などの積層構成でも構わない。また上記積層構成において、層(u)を複数含む場合、層(u)中の成分は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
なお、層(u)としては公知の樹脂からなる層が使用可能であり、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。その他に液晶ポリマーを用いることもできる。また、層(u)も、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、遮熱材料(例えば、赤外線吸収能を有する、無機遮熱性微粒子または有機遮熱性材料)、機能性無機化合物などの添加剤を含有してよい。
また、本発明の合わせガラス用中間膜は表面にメルトフラクチャーやエンボスなど、従来公知の方法で凹凸構造を形成することが好ましい。メルトフラクチャーおよびエンボスの形状は、従来公知のものを採用することができる。本発明の合わせガラス用中間膜の表面に凹凸構造を形成すると、合わせガラス用中間膜とガラスとを熱圧着する際の泡抜け性に優れるため好ましい。
本発明の合わせガラス用中間膜が層(z)を有する場合、層(z)の厚さは、0.01mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上がさらに好ましく、0.20mm以上が特に好ましく、0.25mm以上が最も好ましい。また層(z)の厚さは1.00mm以下が好ましく、0.70mm以下がより好ましく、0.60mm以下がさらに好ましく、0.50mm以下がいっそう好ましく、0.45mm以下が特に好ましく、0.4mm以下が最も好ましい。層(z)の厚さは、上記層(x)の厚さと同様にして測定される。
本発明の合わせガラス用中間膜の厚さは、通常、その下限は0.1mm、好ましくは0.2mm、より好ましくは0.3mm、さらに好ましくは0.4mm、さらにより好ましくは0.5mm、さらにより好ましくは0.6mm、さらにより好ましくは0.7mm、最も好ましくは0.75mmである。またその上限は5mm、好ましくは4mm、より好ましくは2mm、さらに好ましくは1.6mm、さらにより好ましくは1.2mm、さらにより好ましくは1.1mm、さらにより好ましくは1mm、最も好ましくは0.79mmである。合わせガラス用中間膜の厚さは、上記層(x)の厚さと同様にして測定される。
本発明の合わせガラス用中間膜と積層させるガラスは、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの従来公知の有機ガラス等を制限なく使用できる。これらは無色または有色のいずれであってもよい。これらは一種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、各ガラスの厚さは、120mm以下であることが好ましい。
本発明の合わせガラス用中間膜を二枚のガラスに挟む方法は、従来公知の方法が使用できる。例えば真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また上記方法により仮圧着した後に、オートクレーブに投入して本接着する方法も挙げられる。
本発明の合わせガラスは透明性に優れるものであることが好ましい。例えばそのヘイズは10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。なお本発明においてヘイズは、ヘーズメーターHZ−1(スガ試験機株式会社製)によりJIS K7136:2000に準拠して測定する。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例等により何ら限定されない。
[評価方法]
(熱可塑性樹脂(a)の動的粘弾性による評価;tanδaとTaの測定)
後述する製造例で得られる樹脂、および後述する実施例で用いられる樹脂のそれぞれを、熱プレス機を使用して180℃、10MPa、30分プレスして、厚さ0.8mmのフィルムを得た。得られたフィルムを幅3mmに切断し、動的粘弾性測定用サンプルとした。
この測定用サンプルについて、動的粘弾性装置(株式会社ユービーエム製、Rheogel−E4000)を使用し、−100から120℃まで3℃/分で昇温しながら、チャック間距離20mm、周波数0.3Hz、歪み制御は自動調整(10μm、0.05%)、静荷重制御は自動静荷重(最低静荷重25g、自動制御値200%)、引張モードで分析した。得られた結果から−100〜120℃の範囲に存在する正接損失tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)およびtanδの極大値であるtanδaとその温度Ta(℃)を求めた。さらに、(Ta+30)℃における貯蔵弾性率E’(Ta+30)を求めた。結果を表1に示す。
(熱可塑性樹脂(a)の動的粘弾性による評価;tanδaとTaの測定)
後述する製造例で得られる樹脂、および後述する実施例で用いられる樹脂のそれぞれを、熱プレス機を使用して180℃、10MPa、30分プレスして、厚さ0.8mmのフィルムを得た。得られたフィルムを幅3mmに切断し、動的粘弾性測定用サンプルとした。
この測定用サンプルについて、動的粘弾性装置(株式会社ユービーエム製、Rheogel−E4000)を使用し、−100から120℃まで3℃/分で昇温しながら、チャック間距離20mm、周波数0.3Hz、歪み制御は自動調整(10μm、0.05%)、静荷重制御は自動静荷重(最低静荷重25g、自動制御値200%)、引張モードで分析した。得られた結果から−100〜120℃の範囲に存在する正接損失tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)およびtanδの極大値であるtanδaとその温度Ta(℃)を求めた。さらに、(Ta+30)℃における貯蔵弾性率E’(Ta+30)を求めた。結果を表1に示す。
(熱可塑性樹脂(a)の剛直性評価;Saの算出)
Accelrys社製分子動力学シミュレーションソフト「Materials studio(ver 6.1)」を用いて熱可塑性樹脂(a)について分子動力学シミュレーションを行い、得られた結果から熱可塑性樹脂(a)の剛直性Saを評価した。
Materials studioには、分子動力学シミュレーションを行うためのモジュールが搭載されている。用いたモジュールを以下に説明する。
・Discoverモジュール:Minimization機能でエネルギー最小化計算、Dynamics機能で分子動力学シミュレーションを行う。
・Forciteモジュール:Geometry optimization機能でエネルギー最小化計算、Analysis機能で分子動力学シミュレーションの結果解析を行う。
剛直性の評価は次の4つのステップで行った。(1)熱可塑性樹脂(a)の分子モデル構築;(2)得られた分子モデルを用いてエネルギー最小化計算を行い、安定な構造を決定;(3)(2)で得られた安定な構造を用いて分子動力学シミュレーションを実施;(4)(3)のシミュレーション結果を用いて剛直性を評価。以下各ステップについてより詳細に説明する。
(1)グラフィカルユーザインターフェースであるMaterialsvisualizerのBuild polymer機能を用いて、重合度が14の熱可塑性樹脂(a)の分子モデルの構築を行った。立体規則性を示すChiralinversionは0.5とした。
(2)各種条件を以下の様に設定した((3)も同様)。分子力場をpcff(polymerconsistentforcefield)、温度制御をAndersen Thermostat、圧力制御をBerendsen Barostatとした。さらに、coulombicinteractionsをEwaldsummation(accuracy:0.01kcalmol−1)、vanderWaalsinteractionsをatom−basedsummation(cutoffdistance:9.5Å、splinewidth:1Å、Bufferwidth:0.5Å)とした。計算はすべて1気圧、25℃の定温・定圧(NPT)条件で行った。(1)で得られた分子モデルを用い、構築した熱可塑性樹脂(a)はDiscoverモジュールのMinimization機能でエネルギー最小化計算(ConjugateGradientメソッド、Polak−Ribiereアルゴリズムを使用)を行い、安定な構造を1つ得た。
(3)続いて(2)で得られた安定な構造1つをコピーして2つとし、各構造の重心が互いに15Å離れるように、Build Crystal機能により作製した、周期境界条件が設定された一片の長さが100Åの立方体セルに配置した。そのセルに対して、DiscoverモジュールのDynamics機能で、1気圧、25℃、タイムステップを1fsとして1000ps分子動力学シミュレーションを行った。
(4)上記(3)のシミュレーションの1ps毎の結果において、熱可塑性樹脂(a)の分子モデルにおける中心の4つのモノマー単位において、任意の原子をA1、A1に直接結合した任意の原子をA2とし、A2に直接結合したA1でない任意の原子をA3とし、同様にしてA4〜A6までの原子を決定した。次に、ForciteモジュールのAnalysis機能で、A1とA6の間の原子間距離Bを1ps毎に算出した。100〜1000psの原子間距離Bについて、平均値をBave、最大値から5番目の値をBmax、最小値から5番目の値をBminとして、下記式(I)から剛直性を算出した。
剛直性=(Bave)/(Bmax−Bmin)…(I)
この剛直性の計算を熱可塑性樹脂(a)の分子モデルにおいて、中心の4つのモノマー単位に含まれる全ての組み合わせのA1とA6の間で行った。熱可塑性樹脂(a)の減衰性という観点で、分子中の最も剛直な部分が重要であるためので、得られた剛直性のうち最大のものを剛直性Saとした。熱可塑性樹脂(a)に複数種類のモノマー単位が含まれるときは、それぞれのモノマー単位からなる樹脂のモデルを構築し、それぞれの剛直性を上述の方法から求めた。その剛直性に熱可塑性樹脂(a)におけるモノマー単位のモル%をかけて足し合わせたものを剛直性Saとした。結果を表1に示す。
Accelrys社製分子動力学シミュレーションソフト「Materials studio(ver 6.1)」を用いて熱可塑性樹脂(a)について分子動力学シミュレーションを行い、得られた結果から熱可塑性樹脂(a)の剛直性Saを評価した。
Materials studioには、分子動力学シミュレーションを行うためのモジュールが搭載されている。用いたモジュールを以下に説明する。
・Discoverモジュール:Minimization機能でエネルギー最小化計算、Dynamics機能で分子動力学シミュレーションを行う。
・Forciteモジュール:Geometry optimization機能でエネルギー最小化計算、Analysis機能で分子動力学シミュレーションの結果解析を行う。
剛直性の評価は次の4つのステップで行った。(1)熱可塑性樹脂(a)の分子モデル構築;(2)得られた分子モデルを用いてエネルギー最小化計算を行い、安定な構造を決定;(3)(2)で得られた安定な構造を用いて分子動力学シミュレーションを実施;(4)(3)のシミュレーション結果を用いて剛直性を評価。以下各ステップについてより詳細に説明する。
(1)グラフィカルユーザインターフェースであるMaterialsvisualizerのBuild polymer機能を用いて、重合度が14の熱可塑性樹脂(a)の分子モデルの構築を行った。立体規則性を示すChiralinversionは0.5とした。
(2)各種条件を以下の様に設定した((3)も同様)。分子力場をpcff(polymerconsistentforcefield)、温度制御をAndersen Thermostat、圧力制御をBerendsen Barostatとした。さらに、coulombicinteractionsをEwaldsummation(accuracy:0.01kcalmol−1)、vanderWaalsinteractionsをatom−basedsummation(cutoffdistance:9.5Å、splinewidth:1Å、Bufferwidth:0.5Å)とした。計算はすべて1気圧、25℃の定温・定圧(NPT)条件で行った。(1)で得られた分子モデルを用い、構築した熱可塑性樹脂(a)はDiscoverモジュールのMinimization機能でエネルギー最小化計算(ConjugateGradientメソッド、Polak−Ribiereアルゴリズムを使用)を行い、安定な構造を1つ得た。
(3)続いて(2)で得られた安定な構造1つをコピーして2つとし、各構造の重心が互いに15Å離れるように、Build Crystal機能により作製した、周期境界条件が設定された一片の長さが100Åの立方体セルに配置した。そのセルに対して、DiscoverモジュールのDynamics機能で、1気圧、25℃、タイムステップを1fsとして1000ps分子動力学シミュレーションを行った。
(4)上記(3)のシミュレーションの1ps毎の結果において、熱可塑性樹脂(a)の分子モデルにおける中心の4つのモノマー単位において、任意の原子をA1、A1に直接結合した任意の原子をA2とし、A2に直接結合したA1でない任意の原子をA3とし、同様にしてA4〜A6までの原子を決定した。次に、ForciteモジュールのAnalysis機能で、A1とA6の間の原子間距離Bを1ps毎に算出した。100〜1000psの原子間距離Bについて、平均値をBave、最大値から5番目の値をBmax、最小値から5番目の値をBminとして、下記式(I)から剛直性を算出した。
剛直性=(Bave)/(Bmax−Bmin)…(I)
この剛直性の計算を熱可塑性樹脂(a)の分子モデルにおいて、中心の4つのモノマー単位に含まれる全ての組み合わせのA1とA6の間で行った。熱可塑性樹脂(a)の減衰性という観点で、分子中の最も剛直な部分が重要であるためので、得られた剛直性のうち最大のものを剛直性Saとした。熱可塑性樹脂(a)に複数種類のモノマー単位が含まれるときは、それぞれのモノマー単位からなる樹脂のモデルを構築し、それぞれの剛直性を上述の方法から求めた。その剛直性に熱可塑性樹脂(a)におけるモノマー単位のモル%をかけて足し合わせたものを剛直性Saとした。結果を表1に示す。
(化合物(b)の剛直性評価;Sbの算出)
以下の条件以外は熱可塑性樹脂(a)の剛直性評価の手順と同様にして、化合物(b)の剛直性Sbを評価した。熱可塑性樹脂(a)の剛直性評価の(1)〜(4)の手順に対応する変更点をそれぞれ以下に記載する。結果を表2に示す。
(1)熱可塑性樹脂(a)に代えて、化合物(b)の分子モデルの構築を行った。
(2)上記(1)で得られた分子モデルを用い、ForciteモジュールのGeometry optimization機能でエネルギー最小化を行い、安定な構造を1つ得た。
(3)上記(2)で得られた安定な構造1つをコピーして2つとし、各構造の重心が互いに15Å離れるようにBuild Crystal機能により作製した、周期境界条件が設定された一片の長さが75Åの立方体セルに配置した。そのセルに対してDiscoverモジュールのDynamics機能で1気圧、25℃、タイムステップを1fsとして1000ps分子動力学シミュレーションを行った。
(4)化合物(b)の分子モデルにおいて、任意の原子をA1、A1に直接結合した任意の原子をA2とし、A2に直接結合したA1でない任意の原子をA3とし、同様にしてA4〜A6までの原子を決定した。熱可塑性樹脂(a)の場合と同様にして上記式(I)から剛直性を算出した。
この剛直性の計算を化合物(b)に含まれる全ての組み合わせのA1とA6の間で行った。熱可塑性樹脂(a)の振動減衰性を高めるという点で、化合物(b)の分子中の最も剛直な部分が重要であるので、得られた剛直性が最大となるものを剛直性Sbとした。
化合物(b)として2以上の化合物が含まれることがある。その場合は、それぞれの化合物においてモデルを構築し、それぞれの剛直性を上述の方法から求めた。その剛直性に化合物(b)における各化合物のモル%をかけて足し合わせたものを剛直性Sbとした。結果を表2に示す。
また、得られたSa、Sbより、その差Sb−Saを求めた。結果を表3に示す。
以下の条件以外は熱可塑性樹脂(a)の剛直性評価の手順と同様にして、化合物(b)の剛直性Sbを評価した。熱可塑性樹脂(a)の剛直性評価の(1)〜(4)の手順に対応する変更点をそれぞれ以下に記載する。結果を表2に示す。
(1)熱可塑性樹脂(a)に代えて、化合物(b)の分子モデルの構築を行った。
(2)上記(1)で得られた分子モデルを用い、ForciteモジュールのGeometry optimization機能でエネルギー最小化を行い、安定な構造を1つ得た。
(3)上記(2)で得られた安定な構造1つをコピーして2つとし、各構造の重心が互いに15Å離れるようにBuild Crystal機能により作製した、周期境界条件が設定された一片の長さが75Åの立方体セルに配置した。そのセルに対してDiscoverモジュールのDynamics機能で1気圧、25℃、タイムステップを1fsとして1000ps分子動力学シミュレーションを行った。
(4)化合物(b)の分子モデルにおいて、任意の原子をA1、A1に直接結合した任意の原子をA2とし、A2に直接結合したA1でない任意の原子をA3とし、同様にしてA4〜A6までの原子を決定した。熱可塑性樹脂(a)の場合と同様にして上記式(I)から剛直性を算出した。
この剛直性の計算を化合物(b)に含まれる全ての組み合わせのA1とA6の間で行った。熱可塑性樹脂(a)の振動減衰性を高めるという点で、化合物(b)の分子中の最も剛直な部分が重要であるので、得られた剛直性が最大となるものを剛直性Sbとした。
化合物(b)として2以上の化合物が含まれることがある。その場合は、それぞれの化合物においてモデルを構築し、それぞれの剛直性を上述の方法から求めた。その剛直性に化合物(b)における各化合物のモル%をかけて足し合わせたものを剛直性Sbとした。結果を表2に示す。
また、得られたSa、Sbより、その差Sb−Saを求めた。結果を表3に示す。
(組成物Yの動的粘弾性による評価;tanδyの測定)
各実施例および比較例で用いられる熱可塑性樹脂(a)100質量部に対して化合物(b)25質量部をラボプラストミルで混練(180℃、60rpm、5分)して得られた組成物Yを、熱プレス機を使用して180℃、10MPa、30分プレスして、厚さ0.8mmのフィルムを得た。幅3mmに切断して、動的粘弾性測定用サンプルとした。
この測定用サンプルについて、動的粘弾性装置(株式会社ユービーエム製、Rheogel−E4000)を使用し、−100から120℃まで3℃/分で昇温しながら、チャック間距離20mm、周波数0.3Hz、歪み制御は自動調整(10μm、0.05%)、静荷重制御は自動静荷重(最低静荷重25g、自動制御値200%)、引張モードで分析した。得られた結果から−100〜120℃の範囲に存在する正接損失tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)、およびtanδの極大値であるtanδyとその温度Ty(℃)を求めた。また、得られたtanδa、tanδyから、その差であるtanδy−tanδaを求めた。結果を表3に示す。
各実施例および比較例で用いられる熱可塑性樹脂(a)100質量部に対して化合物(b)25質量部をラボプラストミルで混練(180℃、60rpm、5分)して得られた組成物Yを、熱プレス機を使用して180℃、10MPa、30分プレスして、厚さ0.8mmのフィルムを得た。幅3mmに切断して、動的粘弾性測定用サンプルとした。
この測定用サンプルについて、動的粘弾性装置(株式会社ユービーエム製、Rheogel−E4000)を使用し、−100から120℃まで3℃/分で昇温しながら、チャック間距離20mm、周波数0.3Hz、歪み制御は自動調整(10μm、0.05%)、静荷重制御は自動静荷重(最低静荷重25g、自動制御値200%)、引張モードで分析した。得られた結果から−100〜120℃の範囲に存在する正接損失tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)、およびtanδの極大値であるtanδyとその温度Ty(℃)を求めた。また、得られたtanδa、tanδyから、その差であるtanδy−tanδaを求めた。結果を表3に示す。
(ヘイズの測定)
各実施例および比較例で用いられる熱可塑性樹脂(a)と化合物(b)のみからなる組成物Xを、熱プレス機を使用して180℃、10MPa、30分プレスして、膜厚0.8mmのフィルムを得た。そのフィルムを50mm×50mm×3mmのクリアガラス2枚で挟み、真空ラミネータで仮接着した後、140℃、1.2MPa、60分オートクレーブで処理して透明な合わせガラスを得た。その合わせガラスをスガ試験機社製、ヘイズメータで分析した。その結果を表3に示す。
各実施例および比較例で用いられる熱可塑性樹脂(a)と化合物(b)のみからなる組成物Xを、熱プレス機を使用して180℃、10MPa、30分プレスして、膜厚0.8mmのフィルムを得た。そのフィルムを50mm×50mm×3mmのクリアガラス2枚で挟み、真空ラミネータで仮接着した後、140℃、1.2MPa、60分オートクレーブで処理して透明な合わせガラスを得た。その合わせガラスをスガ試験機社製、ヘイズメータで分析した。その結果を表3に示す。
(中間膜の動的粘弾性による評価;tanδxとTxの測定)
各実施例および比較例で用いられる熱可塑性樹脂(a)100質量部に対して化合物(b)および可塑剤(c)を表3に示される量を添加して、ラボプラストミルで混錬(180℃、60rpm、5分)して得られた組成物を、熱プレス機を使用して180℃、10MPa、30分プレスして、膜厚0.8mmのフィルムを得、幅3mmに切断して動的粘弾性測定用サンプルとした。
この測定用サンプルについて、動的粘弾性装置(株式会社ユービーエム製、Rheogel−E4000)を使用し、−100から120℃まで3℃/分で昇温しながら、チャック間距離20mm、周波数0.3Hz、歪み制御は自動調整(10μm、0.05%)、静荷重制御は自動静荷重(最低静荷重25g、自動制御値200%)、引張モードで分析した。得られた結果から−100〜120℃の範囲に存在する正接損失tanδx(=損失弾性率/貯蔵弾性率)、およびtanδの極大値であるtanδxとその温度Tx(℃)を求めた。さらに、(Tx+30)℃における貯蔵弾性率E’(Tx+30)を求めた。結果を表3及び表4に示す。
各実施例および比較例で用いられる熱可塑性樹脂(a)100質量部に対して化合物(b)および可塑剤(c)を表3に示される量を添加して、ラボプラストミルで混錬(180℃、60rpm、5分)して得られた組成物を、熱プレス機を使用して180℃、10MPa、30分プレスして、膜厚0.8mmのフィルムを得、幅3mmに切断して動的粘弾性測定用サンプルとした。
この測定用サンプルについて、動的粘弾性装置(株式会社ユービーエム製、Rheogel−E4000)を使用し、−100から120℃まで3℃/分で昇温しながら、チャック間距離20mm、周波数0.3Hz、歪み制御は自動調整(10μm、0.05%)、静荷重制御は自動静荷重(最低静荷重25g、自動制御値200%)、引張モードで分析した。得られた結果から−100〜120℃の範囲に存在する正接損失tanδx(=損失弾性率/貯蔵弾性率)、およびtanδの極大値であるtanδxとその温度Tx(℃)を求めた。さらに、(Tx+30)℃における貯蔵弾性率E’(Tx+30)を求めた。結果を表3及び表4に示す。
(製造例)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた5リットルガラス容器に、イオン交換水4050g、ポリビニルアルコール樹脂(PVA−1:粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)330gを仕込み、95℃に昇温してポリビニルアルコール樹脂を完全に溶解させた。得られた溶液を160rpmで攪拌下、10℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド188.5gおよび20%塩酸水溶液200mLを添加し、ブチラール化反応を50分間行った。その後、60分かけて65℃まで昇温し、65℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。得られた樹脂をイオン交換水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰のイオン交換水で洗浄、乾燥してポリビニルブチラール樹脂(PVB−1)を得た。得られたPVB−1をJISK6728:1977に準拠して分析したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は69.1モル%、ビニルエステル単位の含有量は1.0モル%であり、平均残存水酸基量は29.9モル%であった。
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた5リットルガラス容器に、イオン交換水4050g、ポリビニルアルコール樹脂(PVA−1:粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)330gを仕込み、95℃に昇温してポリビニルアルコール樹脂を完全に溶解させた。得られた溶液を160rpmで攪拌下、10℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド188.5gおよび20%塩酸水溶液200mLを添加し、ブチラール化反応を50分間行った。その後、60分かけて65℃まで昇温し、65℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。得られた樹脂をイオン交換水で洗浄後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰のイオン交換水で洗浄、乾燥してポリビニルブチラール樹脂(PVB−1)を得た。得られたPVB−1をJISK6728:1977に準拠して分析したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は69.1モル%、ビニルエステル単位の含有量は1.0モル%であり、平均残存水酸基量は29.9モル%であった。
上記PVB−1以外に下記の熱可塑性樹脂を使用した。物性の詳細を表1に記す。
ポリ酢酸ビニル樹脂(PVAc−1):ビニルエステル単位の含有量100モル%
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA−1):ビニルエステル単位の含有量67モル%
ポリ酢酸ビニル樹脂(PVAc−1):ビニルエステル単位の含有量100モル%
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA−1):ビニルエステル単位の含有量67モル%
(実施例1)
熱可塑性樹脂(a)として100質量部のPVAc−1と、化合物(b)として25質量部のフタル酸ジブチルを、ラボプラストミルで溶融混錬して(180℃、60rpm、5分)、組成物を得た。当該組成物を180℃、10MPa、30分熱プレスして膜厚0.8mmの合わせガラス用中間膜を製造した。得られた合わせガラス用中間膜について、上述した方法で、温度Tx、tanδx、貯蔵弾性率E’(Tx+30)を測定した。測定結果を表3に示す。
熱可塑性樹脂(a)として100質量部のPVAc−1と、化合物(b)として25質量部のフタル酸ジブチルを、ラボプラストミルで溶融混錬して(180℃、60rpm、5分)、組成物を得た。当該組成物を180℃、10MPa、30分熱プレスして膜厚0.8mmの合わせガラス用中間膜を製造した。得られた合わせガラス用中間膜について、上述した方法で、温度Tx、tanδx、貯蔵弾性率E’(Tx+30)を測定した。測定結果を表3に示す。
(実施例2〜10、比較例1〜6)
実施例1で製造した組成物に代えて、表3に示す組成で実施例1と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物を用い、実施例1と同様の手法で合わせガラス用中間膜を製造した。得られた合わせガラス用中間膜について、上述した方法で、温度Tx、tanδx、貯蔵弾性率E’(Tx+30)を測定した。測定結果を表3に示す。
実施例1で製造した組成物に代えて、表3に示す組成で実施例1と同様の方法で組成物を得た。得られた組成物を用い、実施例1と同様の手法で合わせガラス用中間膜を製造した。得られた合わせガラス用中間膜について、上述した方法で、温度Tx、tanδx、貯蔵弾性率E’(Tx+30)を測定した。測定結果を表3に示す。
(実施例11)
表4に示す通り、熱可塑性樹脂(a)として100質量部のPVAc−1と、化合物(b)として50質量部のフタル酸ジブチルを用い、ラボプラストミルで溶融混錬して(180℃、60rpm、5分)、組成物を得た。当該組成物を180℃、10MPa、30分熱プレスして膜厚0.15mmの層(x)を製造した。また、同様に0.8mmの層(x)を製造し、温度Tx、tanδx、貯蔵弾性率E’(Tx+30)を測定した。
表4に示す通り、熱可塑性樹脂(d)として100質量部のPVB−1と、可塑剤(e)として36質量部の3G8を用い、ラボプラストミルで溶融混錬して(180℃、60rpm、5分)、組成物を得た。当該組成物を180℃、10MPa、30分熱プレスして膜厚0.33mmの層(z)を製造した。
得られた層(x)と層(z)を、層(z)/層(x)/層(z)の順に重ね、30℃、10MPa、10分プレスして積層し、合わせガラス用中間膜を得た。評価結果を表4に示す。
表4に示す通り、熱可塑性樹脂(a)として100質量部のPVAc−1と、化合物(b)として50質量部のフタル酸ジブチルを用い、ラボプラストミルで溶融混錬して(180℃、60rpm、5分)、組成物を得た。当該組成物を180℃、10MPa、30分熱プレスして膜厚0.15mmの層(x)を製造した。また、同様に0.8mmの層(x)を製造し、温度Tx、tanδx、貯蔵弾性率E’(Tx+30)を測定した。
表4に示す通り、熱可塑性樹脂(d)として100質量部のPVB−1と、可塑剤(e)として36質量部の3G8を用い、ラボプラストミルで溶融混錬して(180℃、60rpm、5分)、組成物を得た。当該組成物を180℃、10MPa、30分熱プレスして膜厚0.33mmの層(z)を製造した。
得られた層(x)と層(z)を、層(z)/層(x)/層(z)の順に重ね、30℃、10MPa、10分プレスして積層し、合わせガラス用中間膜を得た。評価結果を表4に示す。
(実施例12、13、比較例7〜9)
層(x)及び層(z)の組成を表4に示す通りに変更した以外は、実施例11と同様の方法で層(x)及び層(z)を製造し、実施例11と同様にして層(z)/層(x)/層(z)の構成を有する合わせガラス用中間膜を得た。評価結果を表4に示す。
層(x)及び層(z)の組成を表4に示す通りに変更した以外は、実施例11と同様の方法で層(x)及び層(z)を製造し、実施例11と同様にして層(z)/層(x)/層(z)の構成を有する合わせガラス用中間膜を得た。評価結果を表4に示す。
本発明の規定を満たす実施例1〜10については、tanδxの値が高い。また、さらに同程度の減衰性の比較例よりE’(Tx+30)の値が高い(例えば実施例2と比較例5参照)。これにより、高遮音性を有し、かつ高温における力学強度の低下が抑制された合わせガラス用中間膜が提供できる。
一方で、本発明の規定を満たさない比較例1〜6はtanδxの値が低いか、E’(Tx+30)の値が低いか、またはその両方であった。そのため、遮音性に劣るか、高温において力学強度が低下してしまうという欠点がある。
実施例11〜13、比較例7〜8は、層(x)に加えて層(z)を有する合わせガラス用中間膜である。実施例11〜13においては、層(x)のtanδxの値が高い。また、さらに同程度の減衰性の比較例より層(x)のE’(Tx+30)の値が高い(例えば実施例11と比較例8を参照)。これにより、高遮音性を有し、かつ高温における力学強度の低下が抑制された合わせガラス用中間膜が提供できる。
一方で、本発明の規定を満たさない比較例7〜8は、層(x)のtanδxの値が低いか、E’(Tx+30)の値が低いか、またはその両方であった。そのため、遮音性に劣るか、高温において力学強度が低下してしまうという欠点がある。
一方で、本発明の規定を満たさない比較例1〜6はtanδxの値が低いか、E’(Tx+30)の値が低いか、またはその両方であった。そのため、遮音性に劣るか、高温において力学強度が低下してしまうという欠点がある。
実施例11〜13、比較例7〜8は、層(x)に加えて層(z)を有する合わせガラス用中間膜である。実施例11〜13においては、層(x)のtanδxの値が高い。また、さらに同程度の減衰性の比較例より層(x)のE’(Tx+30)の値が高い(例えば実施例11と比較例8を参照)。これにより、高遮音性を有し、かつ高温における力学強度の低下が抑制された合わせガラス用中間膜が提供できる。
一方で、本発明の規定を満たさない比較例7〜8は、層(x)のtanδxの値が低いか、E’(Tx+30)の値が低いか、またはその両方であった。そのため、遮音性に劣るか、高温において力学強度が低下してしまうという欠点がある。
Claims (15)
- 正接損失の極大値であるtanδaが0.5以上である熱可塑性樹脂(a)100質量部および分子量が140以上10000以下の化合物(b)5〜500質量部のみからなる組成物Xを含む層(x)を少なくとも有し、下記条件(1)〜(3)を満たす合わせガラス用中間膜。
(1)分子動力学シミュレーションにより算出した熱可塑性樹脂(a)の剛直性をSa、化合物(b)の剛直性をSbとしたときに、Sb−Saの値が−11.0以上20.0以下である。
(2)熱可塑性樹脂(a)100質量部および化合物(b)25質量部のみからなる組成物Yの正接損失の極大値をtanδyとしたときに、tanδy―tanδaの値が0.5以上である。
(3)組成物Xのみからなる膜厚0.8mmのフィルムを2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときに、該合わせガラスのヘイズが1.5以下である。 - 前記熱可塑性樹脂(a)が、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イソプレン系ブロック共重合体、ブタジエン系ブロック共重合体およびアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記化合物(b)が、少なくとも1つの環構造を含む化合物である、請求項1または2に記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記熱可塑性樹脂(a)が、0℃以上に少なくとも1つの正接損失の極大値を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記化合物(b)の融点が150℃以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記化合物(b)が、3つ以上の環構造からなる縮合環を含まない化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記化合物(b)が、芳香環に直接結合した水酸基を含まない化合物および亜リン酸エステル構造を含まない化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記化合物(b)が芳香族化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記化合物(b)として2種以上の構造の異なる化合物を含み、化合物(b)中に最も多く含まれる化合物(b−1)の含有量が、全ての化合物(b)の合計量に対して20質量%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記層(x)が−30℃以上50℃以下の温度に正接損失の極大値を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記層(x)が可塑剤(c)を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記熱可塑性樹脂(a)が、粘度平均重合度が150以上10000以下の樹脂である、請求項1〜11のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 前記層(x)に加えて、層(z)を有するガラス用中間膜であって、
当該層(z)は、ポリビニルアセタール樹脂およびアイオノマー樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂を含み、少なくとも1つの最外層を構成する、請求項1〜12のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。 - 2枚の厚み3mmのクリアガラスに挟持して合わせガラスとしたときのヘイズが1.5以下である、請求項1〜13のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
- 2枚のガラス板の間に、請求項1〜14のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜が挟持されてなる合わせガラス。
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JP2018061940A JP2019172500A (ja) | 2018-03-28 | 2018-03-28 | 合わせガラス用中間膜 |
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CN115926666A (zh) * | 2022-12-30 | 2023-04-07 | 安徽省阳明达新材料科技有限公司 | 一种夹层玻璃导热耐热eva胶片的制备方法 |
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CN115926666B (zh) * | 2022-12-30 | 2023-07-28 | 安徽省阳明达新材料科技有限公司 | 一种夹层玻璃导热耐热eva胶片的制备方法 |
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