以下、図面を参照して本発明の作業機の実施形態について説明する。但し、本発明の作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の記号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。例えば、本発明の作業機が中央作業体、左側作業体及び右側作業体の3つの作業体で構成される場合、それぞれの作業体が有する部分であることを示すために、数字の後に「C」、「L」及び「R」を付すことがある。
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は圃場から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は圃場に向かって垂直に近づく方向を示す。また、「前」は作業機を基準として走行機体が位置する方向を示し、「後」は前とは180°反対の方向を示す。また、「左」は作業機を基準として走行機体が位置する方向に向かったときの左を示し、「右」は左とは180°反対の方向を示す。
<実施形態>
[作業機10の構成]
以下、本発明の一実施形態による作業機10の構成について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態における作業機の構成を示す斜視図である。図2は、本発明の一実施形態における作業機が左側作業体を折り畳んだときの構成を示す斜視図である。なお、図2は、図1に対して左側作業体10Lの位置が変化しただけの図であるため、説明の便宜上、図1において既出の符号のいくつかは省略されている。
図1に示されるように、本実施形態による作業機10は、中央作業体10C、左側作業体10L及び右側作業体10Rを備え、3つに分割された構造となっている。中央作業体10Cは、作業機10の中央部に配置され、作業機本体として機能する。左側作業体10L及び右側作業体10Rは、中央作業体10Cの左右両端部に上下方向に回動可能に取り付けられている。作業機10は、これら左側作業体10L及び右側作業体10Rを斜め上方に回動させることにより中央作業体10Cに重ねて折り畳むことができ、斜め下方に回動させることにより図1に示すように展開することができる。
ここで、左側作業体10L及び右側作業体10Rを中央作業体10Cに重ねて折り畳んだ状態を収納状態と呼ぶ。収納状態とは、作業機10が走行機体の進行方向に対して直交する方向の幅を縮小された状態である。また、左側作業体10L、右側作業体10R及び中央作業体10Cが横に並んだ状態を展開状態と呼ぶ。展開状態とは、作業機10が走行機体の進行方向に対して直交する方向に延長された状態である。
次に、中央作業体10Cについて説明する。中央作業体10Cは、トラクタ等の走行機体との連結部として機能するトップマスト12及びロアーリンク連結部14、走行機体から動力が伝達される入力軸16、左右方向に延び中央作業体10Cを支持する支持フレーム18、伝動フレーム(チェーンケース)20C、ギヤボックス22、中央シールドカバー24C、耕耘ロータ(図示を省略)、第1中央整地体28C、駆動モータ部28Ca、第2中央整地体30C、エプロン制御機構31a及び31b、並びに中央レベラ制御機構32Cを備えている。
トップマスト12は、中央作業体10Cの前方中央部に設けられ、ロアーリンク連結部14は、中央作業体10Cの前方左右二箇所に設けられている。トップマスト12及び左右2箇所に設けられたロアーリンク連結部14は、図示しない走行機体のトップリンク及び左右二箇所に設けられたロアーリンク(3点リンクヒッチ機構)にそれぞれ連結され、作業機10は走行機体の後部に昇降可能に装着される。なお、作業機10と走行機体との連結は、走行機体の3点リンクヒッチ機構に装着されるオートヒッチフレームを介してもよい。
入力軸16は、中央作業体10Cの前方中央部に設けられたギヤボックス22に設けられ、走行機体から伝達された動力を作業機10に入力する。入力軸16は走行機体のPTO軸に連結され、PTO軸からユニバーサルジョイント等を介して動力が伝達される。
支持フレーム18は、中央作業体10Cの本体フレームを兼ねており、ギヤボックス22の左右両側に走行機体の進行方向に対して左右方向に延設されている。ここで、ギヤボックス22と伝動フレーム20Cとの間に配置された支持フレーム18内には、伝動シャフト(図示を省略)が内装されている。この伝動シャフトにより、ギヤボックス22から伝動フレーム20Cに対して耕耘ロータを回転させるための動力が伝達される。
中央シールドカバー24Cは、支持フレーム18に沿って設けられ、耕耘ロータの上方を覆うように配置される。耕耘ロータで砕かれた土は、中央シールドカバー24Cの内壁に当たってさらに砕土されるとともに、落下して再び圃場に戻る。このように、中央シールドカバー24Cは、耕耘ロータによって巻き上げられた土の飛散防止機能と砕土機能とを兼ね備えている。
中央作業体10Cが有する耕耘ロータは、中央シールドカバー24Cの下方に回転自在に軸支された回転軸(図示を省略)に対して、フランジ又はホルダを用いて複数の耕耘爪を取り付けた構成を有する。入力軸16から入力された動力は、ギヤボックス22内で変速され、支持フレーム18内の伝動シャフト、伝動フレーム20C等を経由して伝達され、耕耘ロータの回転運動へと変換される。
第1中央整地体28Cは、中央シールドカバー24Cに対し、回動可能に取り付けられており、通常、エプロンと呼ばれる。第2中央整地体30Cは、第1中央整地体28Cに対し、上下方向へ回動可能に取り付けられており、通常、レベラと呼ばれる。第1中央整地体28Cは、中央作業体10Cの耕耘ロータの回転によって飛散した泥や土を圃場に戻すカバーとしての役割と、第2中央整地体30Cを圃場に押し付けて整地作業を行う整地部材としての役割を担う。第2中央整地体30Cは、直接圃場に接することにより、圃場表面の整地を行う整地部材としての役割を担う。
エプロン制御機構31a及び31bは、中央シールドカバー24Cと第1中央整地体28Cとの間に架設され、第1中央整地体28Cの上下方向への回動を制御する手段として機能する。エプロン制御機構31a及び31bは、第1中央整地体28Cの上方向への回動を妨げる加圧モードと、第1中央整地体28Cの上方向への回動を妨げない非加圧モードとを切り替え可能であり、加圧モードでは、第1中央整地体28Cに対して上方向への回動を妨げる付勢力を働かせる。この付勢力は、エプロン制御機構31a及び31bを構成するリンクロッドに配置されたスプリングの反力によって実現される。エプロン制御機構31a及び31bを加圧モードとすることにより、第1中央整地体28Cによる砕土性能や整地性能を高めることができ、より効率良く圃場を仕上げることができる。なお、エプロン制御機構31a及び31bは、例えば、駆動モータ部28Caとワイヤによって接続され、制御される。エプロン制御機構31a及び31bに関して、詳細は後述する。
中央レベラ制御機構32Cは、中央シールドカバー24Cと第2中央整地体30Cとの間に架設され、第2中央整地体30Cの上下方向への回動を制御する手段として機能する。中央レベラ制御機構32Cは、第2中央整地体30Cを下方に向けた状態(土寄せ状態)に固定する土寄せモードと、第2中央整地体30Cの上下方向への回動を妨げない整地モードとを切り替え可能である。モードの切り替えは、中央レベラ制御機構32Cを構成するリンクロッドの動作の規制又は解除によって実現される。
次に、左側作業体10Lについて説明する。左側作業体10Lは、左側シールドカバー24L、左側シールドカバー24Lの下方に配置された耕耘ロータ26L(図2参照)、伝動フレーム(チェーンケース)20L、第1左側整地体28L、第2左側整地体30L、左側レベラ制御機構32L、及び左側延長整地体回動機構34Lを備えている。左側シールドカバー24L、伝動フレーム20L、第1左側整地体28L、第2左側整地体30L、及び左側レベラ制御機構32Lの担う役割については、それぞれ前述の中央作業体10Cにおける対応する各要素と同様であるため、ここでの説明は省略する。
ここで、図2に示されるように、耕耘ロータ26Lは、回転軸26La及びその回転軸26Laの周囲にホルダを介して配置された複数の耕耘爪26Lbを備える。伝動フレーム20Lを介して伝達された動力により回転軸26Laが回転すると、その周囲に配置された耕耘爪26Lbが一斉に回転し、圃場の土を砕土及び攪拌する。なお、図示は省略しているが、中央作業体10C及び右側作業体10Rが有する耕耘ロータも耕耘ロータ26Lと同様の構成を有している。
図1に戻って、左側延長整地体回動機構34Lは、左側作業体10Lの第2左側整地体30Lに対し、回動可能に連結された左側延長整地体36Lを回動させるための機構である。左側延長整地体36Lは、左側作業体10Lの端部から作業機10の左方向に延長して設けられ、左側作業体10Lの外側の領域の整地作業を担う。第2左側整地体30Lと左側延長整地体36Lとは、延長整地体連結部38Lによって回動可能に連結されており、左側延長整地体36Lが第2左側整地体30Lに向かって折り畳まれるように回動可能となっている。
ここで、本実施形態において、左側延長整地体回動機構34Lは、駆動モータ部34La、回動アーム34Lb、及び連結ワイヤ34Lcを含む。回動アーム34Lbは、一端が駆動モータ部34Laに接続され、他端が連結ワイヤ34Lcに接続されている。また、連結ワイヤ34Lcは、一端が回動アーム34Lbに接続され、他端が左側延長整地体36Lに接続されている。
駆動モータ部34Laが動作すると、回転駆動力が発生して、回動アーム34Lbが略水平方向に回動する。この回動アーム34Lbの回動動作に連動して、連結ワイヤ34Lcに引っ張られた左側延長整地体36Lが延長整地体連結部38Lを介して回動する。これにより、左側延長整地体36Lの収納及び展開が可能となる。
なお、本実施形態では、左側延長整地体回動機構34Lを、駆動モータ部34La、回動アーム34Lb、及び連結ワイヤ34Lcで構成する例を示したが、延長整地体連結部38Lを介して左側延長整地体36Lを回動可能とする機構であれば、他の機構を用いてもよい。
次に、右側作業体10Rについて説明する。右側作業体10Rは、右側シールドカバー24R、右側シールドカバー24Rの下方に配置された耕耘ロータ(図示を省略)、伝動フレーム(チェーンケース)20R、第1右側整地体28R、第2右側整地体30R、右側レベラ制御機構32R、及び右側延長整地体回動機構34Rを備えている。ここで、右側シールドカバー24R、伝動フレーム20R、第1右側整地体28R、第2右側整地体30R、右側レベラ制御機構32R、及び右側延長整地体回動機構34Rの担う役割については、それぞれ前述の左側作業体10Lにおける対応する各要素と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、右側延長整地体36R及び延長整地体連結部38Rについても、前述の左側延長整地体36L及び延長整地体連結部38Lと同様である。
さらに、本実施形態による作業機10は、中央作業体10C、左側作業体10L、及び右側作業体10Rに、それぞれ中央土寄せ板40Ca及び40Cb、左側土寄せ板40L、並びに右側土寄せ板40Rを備えている。これらは、代掻き作業時に発生する水流(実際には、土を含む水の流れ)をコントロールするための板であり、これら土寄せ板を設けることにより、圃場表面の仕上がりを向上させることができる。
例えば、中央土寄せ板40Ca及び40Cbは、作業機10の前方を走行する走行機体のタイヤ等の轍に土を戻す位置に設けられ、轍によって生じた圃場の起伏の平坦化に寄与する。また、左側土寄せ板40L及び右側土寄せ板40Rは、土を内側に寄せるとともに、各土寄せ板の裏側にその周辺の水流を引き込む。その結果、左側作業体10L及び右側作業体10Rの端部よりも外側に藁などが浮遊していたとしても、水流によってそれぞれの耕耘ロータ内に引き込み、圃場表面の仕上がりの向上に寄与する。
また、本実施形態による作業機10は、左側作業体10L及び右側作業体10Rに、それぞれ左側レベラ制御機構32L、右側レベラ制御機構32Rを備えている。これら左側レベラ制御機構32L及び右側レベラ制御機構32Rは、中央レベラ制御機構32Cと同様に、それぞれ第2左側整地体30L、第2右側整地体30Rの上下方向への回動を規制又は解除する手段として機能する。
以上説明した左側作業体10L及び右側作業体10Rは、中央作業体10Cの両端部に設けられた作業体回動機構44a及び44bを介して回動用シリンダ46a及び46bの作用により回動し、前述の収納状態又は展開状態となる。その際、第1中央整地体28Cと第1左側整地体28L、及び、第1中央整地体28Cと第1右側整地体28Rとは、それぞれ第1連結部48a及び48bとによって連結される。また、第2中央整地体30Cと第2左側整地体30L、及び、第2中央整地体30Cと第2右側整地体30Rとは、それぞれ第2連結部50a及び50bとによって連結される。
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、左側作業体10L及び右側作業体10Rを合わせた総称を「側方作業体」と呼ぶことがある。また、第1左側整地体28L及び第1右側整地体28Rを合わせた総称を「第1側方整地体」と呼んだり、第2左側整地体30L及び第2右側整地体30Rを合わせた総称を「第2側方整地体」と呼んだりすることがある。
[エプロン制御機構の構成]
図3は、本発明の一実施形態における作業機10を後方から向かって左側の斜め上方から見たときのエプロン制御機構31aの拡大図である。図4(a)は、本発明の一実施形態における加圧アーム70の概略図である。図4(b)は、本発明の一実施形態における加圧フック80の概略図である。図5(a)は本発明の一実施形態における作業機10が加圧モードのときの、エプロン制御機構31aの部分側面図である。図5(b)及び図5(c)は、本発明の一実施形態における作業機10が非加圧モードのときの、エプロン制御機構31aの部分側面図である。なお、本実施形態においては、エプロン制御機構31aについて説明するが、エプロン制御機構31bも同様である。また、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)は、作業機10の左側側方から見た図である。さらに、図1及び図2において説明された内容は、図3、図4(a)、図4(b)、図5(a)、図5(b)及び図5(c)においては、説明を省略することがある。
図3及び図5(a)に示されるように、エプロン制御機構31aは、一端と他端との間が第1中央整地体28Cに対して摺動可能になるように第1中央整地体28Cに取り付けられるとともに、支持部材68に設けられた摺動部66に対して上方に第1スプリング60が挿着され、支持部材68に設けられた摺動部66に対して下方に第2スプリング61が挿着されるリンクロッド62と、リンクロッド62の他端を回動可能に支持する加圧アーム70と、加圧フック80の一部に備えられるねじりコイルばね98と、中央シールドカバー24Cに取り付けられ、加圧アーム70及び加圧フック80を回動可能に支持し、孔部93を有する支持部材91を有する本体部90と、加圧フック80に一端が接続され、他端が孔部93に挿通されるワイヤ94と、を備える。本実施形態においては、本体部90は、ネジにより中央シールドカバー24Cに取り付けられているが、本体部90は中央シールドカバー24Cに溶接されていてもよい。
図5(a)に例示されるように、ワイヤ出口部92は、支持部材91に支持されている。ワイヤ接続部97は、例えば、ワイヤ94、及び接続部材96を有する。ワイヤ接続部97において、ワイヤ94の一端は接続部材96に接続されており、ワイヤ94の他端はワイヤ出口部92に挿通されている。このとき、ワイヤ出口部92は、一端に、ワイヤ94が挿通される孔が開いている。ワイヤ94は、当該孔の中心点を通り、本体部90において加圧フック80が設けられている側の当該孔の面に対して、垂直に挿通される。同様にして、ワイヤ94は、孔部93の中心点を通り、本体部90において加圧フック80が設けられている側の支持部材91の面に対して、垂直に挿通される。なお、ワイヤ出口部92は本体部90と一体になっていてもよい。また、本明細書などにおいて、ワイヤ94の一端は、加圧フック、又は加圧フックの孔部86に接続されていると記載することがある。
リンクロッド62は、一端と他端との間が、第1中央整地体28Cに取り付けられた支持部材68に対して、摺動可能に取り付けられている。支持部材68は、左右方向に対向して配設された一対の支持板を備え、一対の支持板の間には円柱状の摺動部66が取り付けられている。摺動部66には、孔部67が設けられている。リンクロッド62は摺動部66に対して、摺動可能なように、孔部67に挿通されている。リンクロッド62には、ピン状部材64が取り付けられている。また、第1スプリング60は、ピン状部材64と摺動部66との間のリンクロッド62に、装着可能に設けられている。リンクロッド62の他端近傍には、ピン状部材64を挿着するための挿着孔がリンクロッド62の軸方向に所定間隔を有して複数設けられている。
図3のエプロン制御機構31aにおいては、挿着孔が3箇所設けられ、ピン状部材64は、リンクロッド62の他端に最も近い挿着孔に挿着された例が示されている。ピン状部材64の挿着位置を変更することによって、第1スプリング60とピン状部材64との隙間の大きさを調整することができる。当該隙間を調整することによって、第1中央整地体28Cが回動し、第1スプリング60が伸縮する範囲を調整することができるため、耕深によって第1中央整地体28Cの高さ調整が可能となり、圃場表面の仕上がりの向上に寄与する。なお、挿着孔の数は、図3の例に限定されない。例えば、挿着孔の数を増やすことによって、第1スプリング60が伸縮する範囲の選択肢を広げることができるため、様々な圃場表面に合わせて、圃場表面の仕上がりを調整することができる。また、挿着孔の位置も図3の例に限定されない。例えば、挿着孔は、作業機10の前後方向に設けられていてもよい。
第1スプリング60は、支持部材68に対して上方であって、ピン状部材64と摺動部66との間のリンクロッド62に、摺動可能に挿着されている。また、第2スプリング61は、支持部材68に対して下方であって、摺動部66とリンクロッド62の一端との間のリンクロッド62に、摺動可能に挿着されている。第2スプリング61のばね定数は、第1スプリング60のばね定数よりも小さい。なお、本明細書中では、第1スプリング60及び第2スプリング61は、ともにコイルばねである。
本体部90は、左右方向に対向して配置された一対の板状の本体支持部材を備えている。
図3、図4及び図5(a)を参照する。加圧アーム70は、左右方向に対向して配置された一対の板状の支持部材、円柱状の被係合部74、円筒状の支持部材72、一対の孔部76a及び孔部76bを備えている。一対の板状の支持部材に対して、一対の孔部76a及び孔部76bは一端に設けられ、支持部材72は略中央に設けられ、被係合部74は他端に設けられている。リンクロッド62の他端は、一対の孔部76a及び孔部76bの間に挟まれるように備えられている。また、一対の孔部76a、孔部76b及びリンクロッド62の孔部にピン状部材を挿通することによって、リンクロッド62の他端は、加圧アーム70に取り付けられている。加圧アーム70は、一対の板状の本体支持部材の間に挟まれるように備えられている。ピン状部材を一対の板状の本体支持部材の孔部、及び支持部材72の円筒に挿通することによって、加圧アーム70は本体部90に対して、回動可能に取り付けられている。なお、本実施形態では、被係合部74は円柱状の支持部材を用いているが、被係合部74の形状は円柱状に限定されず、係合部82に係合可能な形状であればよい。例えば、円筒状であってもよい。
図3、図4及び図5(a)を参照する。加圧フック80は、板状部材、係合部82、円筒状の支持部材84、及び突出部88を備えている。突出部88には孔部86が設けられている。加圧フック80は、一対の板状の本体支持部材の間に挟まれるように備えられている。ピン状部材を一対の板状の本体支持部材の孔部、及び支持部材84の円筒に挿通することによって、加圧フック80は本体部90に対して、回動可能に取り付けられている。孔部86には、接続部材96を介してワイヤ94が取り付けられている。なお、ワイヤ94は、孔部86に直接接続されていてもよい。
ワイヤ94によって加圧フック80が引っ張られるとき、作業機10は、図5(a)に示す加圧モードから、図5(b)に示す非加圧モードに切り替えられる。図5(a)に示すように、作業機10が加圧モードのとき、係合部82が、被係合部74に係合することによって、第1中央整地体28Cは上方向へ回動することを妨げられている。図5(b)に示すように、作業機10が非加圧モードのとき、係合部82が、被係合部74と係合しないことによって、第1中央整地体28Cは上方向へ回動することを妨げられていない。
ここで、ワイヤ94によって加圧フック80が引っ張られるとき、支持部材84の中心点を回動支点とし、加圧フック80は本体部90に対して回動する。加圧フック80が回動するときの、孔部86の中心点の軌跡110を一点鎖線で示す。軌跡110は、支持部材84の中心点と孔部86の中心点とを結んだ線の長さを半径とした円弧状となっている。また、ワイヤ出口部92の孔の中心点と、孔部86の中心点とを結んだ線を延長した延長線112も一点鎖線で示す。さらに、ワイヤ出口部92の孔の中心点を通り、本体部90において加圧フック80が設けられている側の支持部材91の面に垂直な線を延長した延長線114も一点鎖線で示す。さらに、非加圧モードにおいて、加圧フック80が支持部材72に当接するときの孔部86の中心点における、孔部86の中心点の軌跡110に対する接線116も一点鎖線で示す。図5(a)の加圧モードにおいては、延長線112と延長線114とが略一致する。図5(b)の非加圧モードにおいては、延長線112と接線116とが略一致する。
また、延長線112は、孔部93の中心点と、孔部86の中心点とを結んだ線を延長した延長線であってもよい。ワイヤ出口部92の孔の中心点と孔部86の中心点とを結んだ線を延長した延長線と、孔部93の中心点と孔部86の中心点とを結んだ線を延長した延長線とは略一致する。
また、同様にして、加圧アーム70の支持部材72の中心点が、本体部90に対する、加圧アーム70の回動支点である。加圧フック80の回動支点の地面からの高さは、加圧アーム70の回動支点の地面からの高さよりも低い。また、加圧アーム70の回動支点の地面からの高さは、被係合部74の地面からの高さよりも高い。さらに、側面視において、作業機10の前方からの加圧アーム70の回動支点の位置は、作業機10の前方からの加圧フック80の回動支点の位置よりも、後方に位置する。
図5(c)を参照する。加圧フック80の回動支点から、延長線114と垂直に交わるように引いた垂線の長さをL1とする。また、加圧フック80が支持部材84の中心点を回動支点として回動するときの孔部86の中心点の軌跡110は、支持部材84の中心点と孔部86の中心点とを結んだ線の長さを半径とし、その半径をL2とする。また、L1はL2よりも短いが、略一致していてもよい。
ワイヤ94による加圧フック80の引っ張りはじめにおいて、ワイヤ94から加圧フック80にかかる力の方向は延長線112と一致する方向であり、延長線114と略一致する方向である。したがって、ワイヤ94から加圧フック80に効率的に力を伝えることができる。このとき、延長線112と延長線114とは略一致するため、加圧フック80の回動支点から、延長線112と垂直に交わるように引いた垂線の長さは、L1と略同等となる。
ワイヤ94によって加圧フック80が引っ張られる状態が続いても、ワイヤ94から加圧フック80にかかる力の方向は延長線112と一致する方向である。また、延長線112は延長線114と略一致する状態から、接線116と略一致する状態に遷移する。すなわち、ワイヤ94から加圧フック80にかかる力は、延長線114と略一致する方向から接線116と略一致する方向に変わる。このとき、加圧フック80の回動支点から、延長線112と垂直に交わるように引いた垂線の長さは、支持部材84の中心点と孔部86の中心点とを結んだ線の長さである半径L2と同等となる。加圧フック80を回転体と見立てた場合、ワイヤ94によって加圧フック80が引っ張られることによって、加圧フック80にかかる力の方向を、接線方向と略一致させることができるため、ワイヤ94から加圧フック80に効率的に力を伝えることができる。
したがって、作業機10は、エプロン制御機構31aを備えることによって、ワイヤ94が加圧フック80を引っ張る力が分散されずに、ワイヤ94から加圧フック80に十分な力を伝えることができるため、ワイヤ94にかかる負荷を低減できる。また、作業機10は、同様にして、ワイヤ94が加圧フック80を引っ張る力を、延長線114または接線116と略一致させることができるため、加圧フック80がワイヤ94によって略水平に引っ張られることを可能にし、ワイヤ94とワイヤ出口部92または孔部93とが擦れて、ワイヤ94、ワイヤ出口部92または孔部93が摩耗及び劣化することを防止できる。したがって、本発明の一実施形態におけるエプロン制御機構を備えることによって、高い信頼性及び耐久性を有する作業機を提供することができる。
図4、図5(a)及び図5(b)を参照する。ワイヤ接続部97が有するワイヤ94は、例えば、その他端がワイヤ出口部92に挿通される。ワイヤ出口部92に挿通されたワイヤ94は、駆動モータ部28Ca(図1に図示)と接続されている。駆動モータ部28Caは、例えば、ワイヤ制御部(図示を省略)を含む。ワイヤ94の一端は、ワイヤ接続部97が有する接続部材96又は加圧フック80に備えられた孔部86を介して加圧フック80に取り付けられている。ワイヤ94の他端はワイヤ制御部に取り付けられている。ワイヤ94は、例えば、ワイヤ制御部に備えられている正逆転モータの駆動に伴い、巻き取られたり、引き出されたりする。本実施形態では、第1中央整地体28Cに対して、エプロン制御機構31a及び31bが左右に備えられているため、ワイヤ94もエプロン制御機構31a及び31bのそれぞれに対して備えられる。したがって、エプロン制御機構31a及び31bの回動規制をバランスよく行うことが可能となる。
図5(a)及び図5(b)に示されるように、ねじりコイルばね98は、加圧フック80に備えられている支持部材84に対して、回動可能なように、支持部材84に支持されている。ワイヤ94によって、加圧フック80が引っ張られるとき、ねじりコイルばね98は、加圧フック80の回動を妨げる方向の力が働くように機能する。加圧フック80の回動を妨げる方向の力とは、図5(a)及び図5(b)において略後方に働く力であり、ねじりコイルばね98が、支持部材84の中心点を回動支点として、時計回りに回動するような力である。
エプロン制御機構が、引っ張りばねを備える場合、作業機が作業をするとき、引っ張りばねの間に土又は泥が詰まると、引っ張りばねが伸縮しなくなってしまうため、エプロン制御機構のスムーズな動きが阻害される。一方、エプロン制御機構が、ねじりコイルばねを備える場合、ねじりコイルばねは回動するばねであり、引っ張りばねのように伸縮するばねとは異なるため、ばねの間に土又は泥が詰まり伸縮を妨げられることが少なく、エプロン制御機構のスムーズな動きが阻害されることを防止することができる。また、エプロン制御機構が、引っ張りばねを備える場合、引っ張りばねを支持する部材、及び、引っ張りばねを支持する空間が必要であり、エプロン制御機構の構造が複雑になり、かつ、大型になる。一方、エプロン制御機構は、ねじりコイルばねを備えることによって、ねじりコイルばねを加圧フックの支持部材に装着することができるため、ばねを支持する部材及びばねを支持する空間を設ける必要が無く、エプロン制御機構の構造を簡略化することができ、エプロン制御機構を小型化することができる。本発明の一実施形態におけるエプロン制御機構31a及び31bは、ワイヤ94(引っ張りワイヤ)とねじりコイルばね98との組み合わせを用いているが、この方式に限定されず、ワイヤ94の代わりに、プッシュプルワイヤを用いることもできる。
[エプロン制御機構の動作]
図6は、本発明の一実施形態における作業機10が非動作時の第1中央整地体28Cの加圧モードを説明するための部分側面図である。図7は、本発明の一実施形態における作業機10が動作時の第1中央整地体28Cの加圧モードを説明するための部分側面図である。図8は、本発明の一実施形態における作業機10が非動作時の第1中央整地体28Cの非加圧モードを説明するための部分側面図である。図9は、本発明の一実施形態における作業機10が動作時の第1中央整地体28Cの非加圧モードを説明するための部分側面図である。なお、非動作時とは、作業機が作業をしていないときを示し、動作時とは、作業機が作業をしているときを示しているものとする。また、図1乃至図5(b)において説明された内容は、図6、図7、図8及び図9においては、説明を省略することがある。
図6に示すように、加圧モードにおいては、加圧フック80の係合部82が、加圧アーム70の被係合部74に係合することによって、加圧アーム70の回動を規制する。よって、エプロン制御機構31aは、第1中央整地体28Cの上方向への回動を妨げる。なお、本明細書、図面などにおける加圧モードは、係合部82が、被係合部74に係合している状態である。
図7に示すように、加圧モードであって、作業機10が動作時においては、加圧アーム70が回動できない状態となっているが、第1中央整地体28C及び第2中央整地体30Cが上方向に移動するのに伴い、リンクロッド62は摺動部66に対して摺動する。そして、リンクロッド62の摺動に伴い、リンクロッド62に挿着された第1スプリング60は、リンクロッド62に沿って摺動し、ピン状部材64に当接するため、縮んだ状態となる。一方、リンクロッド62の摺動に伴い、リンクロッド62に挿着された第2スプリング61もリンクロッド62に沿って摺動し、摺動部66とリンクロッド62の一端との間が広がるため、第2スプリング61は自然長となる。このとき、第1中央整地体28Cは上方への回動が妨げられる方向に付勢される。したがって、圃場に対して、第1中央整地体28C及び第2中央整地体30Cが押し付けられた状態となり、土が後方に流れ出すことを妨げることで土がより細かく砕土され、作業機10は圃場表面を均平にし、より効率良く圃場を仕上げることができる。
図8に示すように、非加圧モードにおいては、加圧フック80の係合部82が、加圧アーム70の被係合部74に係合しないことによって、加圧アーム70の回動は規制されない。図8に示す非加圧モードは、ワイヤ94によって孔部86が引っ張られ、加圧フック80が支持部材72に当接する状態を示している。また、図8に示す非加圧モードは、ワイヤ94によって孔部86が引っ張りきられた状態でもある。なお、本明細書、図面などにおける非加圧モードは、係合部82が被係合部74に係合していない状態である。
加圧モードから、非加圧モードにするためには、まず、ワイヤ制御部(図示は省略)でワイヤ94を巻き取る。ワイヤ94が巻き取られると、加圧フック80のワイヤ94が取り付けられた接続部材96が、作業機10の進行方向に引っ張られる。すなわち、加圧フック80が前方に引っ張られる。加圧フック80が、前方に引っ張られると、加圧フック80は、支持部材84の中心点を回動支点として、反時計回りに回動する。よって、加圧フック80の係合部82も、当該回動支点を中心点として、反時計回りに回動する。係合部82が、当該回動支点を中心点として反時計回りに回動すると、係合部82は、加圧モードのときに回動を規制していた加圧アーム70の被係合部74の回動を規制できなくなる。したがって、加圧アーム70が回動可能となり、第1中央整地体28Cが回動可能な非加圧モードとなる。
加圧フック80がワイヤ94に引っ張られると、加圧フック80が回動し、加圧アーム70が有する支持部材72に当接するように構成されている。支持部材72は、ワイヤ94による加圧フック80の引っ張りすぎを防止する、ストッパの役割を有している。よって、ワイヤ94が加圧フック80を引っ張りすぎることなく、支持部材72によって、加圧フック80の回動を止めることができる。
本発明の一実施形態における作業機は、例えば、代掻き機である。図9に示すように、通常の代かき作業を行う場合には、非加圧モードで行う。すなわち、第1中央整地体28Cの回動は妨げられない。作業者は、加圧フック80がワイヤ94に引っ張られるように、エプロン制御機構31a及び31bを制御する。走行機体に牽引された作業機10を前進走行させると、耕耘ロータ26Cによって圃場の耕土が耕耘され、第1中央整地体28C、第1左側整地体28L、及び第1右側整地体28Rによって耕耘された耕土が整地される。さらに、第2中央整地体30C、第2左側整地体30L、及び第2右側整地体30Rによって耕土の表面が均平にされて、通常の代かき作業を行うことができる。なお、回動範囲100が、耕耘ロータ26Cの回動範囲である。
図7に示すように、代掻き機を非加圧モードから、加圧モードにするためには、加圧アーム70の被係合部74を加圧フック80の係合部82に係合させ、加圧アーム70と加圧フック80が回動できない状態とする。加圧モードで、走行機体に牽引された作業機10を前進走行させると、第1中央整地体28C、第1左側整地体28L、及び第1右側整地体28Rが押し付けられた状態となっているため、耕耘ロータ26Cによって耕耘された耕土が、第1中央整地体28C、第1左側整地体28L、及び第1右側整地体28Rによって後方へ流れ出すことを妨げ、土がより細かく砕土されるとともに、圃場表面の凸部の耕土が土寄せされる。さらに、第2中央整地体30C、第2左側整地体30L、及び第2右側整地体30Rによって土寄せされた耕土の表面が均平にされる代かき作業を行うことができる。
図8及び図6を参照し、非加圧モードから、加圧モードに遷移する場合を説明する。本発明の一実施形態における作業機は、非加圧モードから加圧モードに遷移する場合、第2スプリング61には、リンクロッド62を下方に付勢するような力が働く。リンクロッド62が下方に付勢されることによって、加圧アーム70を支持部材72の中心点を回動支点として時計回りに回動させ、被係合部74を終点(回動しきった点)に移動させることができる。よって、本発明の一実施形態における作業機は、第2スプリング61を備えることによって、係合部82と被係合部74との係合をさせやすい位置に移動させることができるため、係合部82を被係合部74に確実に係合させることができる。したがって、本発明の一実施形態における作業機は、非加圧モードと、加圧モードの切り替えを確実に行うことができ、また、加圧モード及び非加圧モードの両方において、安定した動作が可能となる。
以上説明したように、本発明におけるエプロン制御機構を備えることによって、加圧モード及び非加圧モードの両方において、ワイヤにかかる負荷を低減し、耐久性が高い作業機を提供することができる。また、本発明におけるエプロン制御機構は、構造が簡略化されているため、小型で信頼性の高いエプロン制御機構を有する作業機を提供することができる。
本発明の実施形態として上述した各構成は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施してもよい。
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。