JP2019167850A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】過渡時における排気エミッションの悪化を抑制する。【解決手段】内燃機関100の制御装置200は、機関負荷が増加する過渡時における燃料噴射量、及び燃料噴射時期を制御する過渡時燃料噴射制御部を備える。過渡時燃料噴射制御部は、予混合圧縮自着火燃焼を実施して機関本体の出力トルクを要求トルクにするために燃料噴射弁から噴射する必要のある第1燃料量を算出し、過渡時に仮に第1噴射量を噴射して拡散燃焼を実施した場合に得られる拡散出力トルクを算出し、予混合圧縮自着火燃焼を実施して出力トルクを拡散出力トルクにするために燃料噴射弁から噴射する必要のある第2燃料量を算出し、過渡時には、第1燃料量をメイン噴射によって噴射し、第2燃料量から第1燃料量を差し引いた差分量をアフタ噴射によって噴射して、予混合圧縮自着火燃焼を実施するように構成される。【選択図】図1
Description
本発明は内燃機関の制御装置に関する。
特許文献1には、圧縮自着火燃焼が行われる従来の内燃機関の制御装置として、加速時には燃焼室内に噴射する総燃料噴射量を加速先の運転条件における定常時の総燃料噴射量よりも多くすると共に、総燃料噴射量を吸気行程で行うメイン噴射と膨張行程で行うポスト噴射によって燃焼室内に噴射するように構成されたものが開示されている。
しかしながら、前述した従来の内燃機関の制御装置は、加速時に総燃料噴射量を多くするにあたって、メイン噴射の噴射量を多くしていた。そのため、定常時よりも燃料濃度の濃い混合気が形成されてしまい、酸素不足によってスモークの原因となる煤の生成が助長されて排気エミッションが悪化するおそれがあった。
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、加速時、すなわち機関負荷が増加する過渡時における排気エミッションの悪化を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、機関本体と、機関本体の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備え、燃焼室内で少なくとも予混合圧縮自着火燃焼を実施することが可能な内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置が、機関負荷が増加する過渡時における燃料噴射量、及び燃料噴射時期を制御する過渡時燃料噴射制御部を備える。過渡時燃料噴射制御部は、機関負荷に基づいて、機関本体に対する要求トルクを算出する要求トルク算出部と、要求トルクに基づいて、予混合圧縮自着火燃焼を実施して機関本体の出力トルクを要求トルクにするために燃料噴射弁から噴射する必要のある第1燃料量を算出する第1燃料量算出部と、過渡時に仮に第1燃料量を噴射して拡散燃焼を実施した場合に得られる出力トルクである拡散出力トルクを算出する拡散出力トルク算出部と、予混合圧縮自着火燃焼を実施して出力トルクを拡散出力トルクにするために燃料噴射弁から噴射する必要のある第2燃料量を算出する第2燃料量算出部と、を備え、過渡時には、第1燃料量を予混合気を形成するためのメイン噴射によって噴射し、第2燃料量から第1燃料量を差し引いた差分量をメイン噴射よりも遅角側で行われるアフタ噴射によって噴射して、予混合圧縮自着火燃焼を実施するように構成される。
本発明のこの態様によれば、機関負荷が増加する過渡時における排気エミッションの悪化を抑制することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
図1は、本発明の一実施形態による内燃機関100、及び内燃機関100を制御する電子制御ユニット200の概略構成図である。
図1に示すように、内燃機関100は、複数の気筒10を備える機関本体1と、燃料供給装置2と、吸気装置3と、排気装置4と、吸気動弁装置5と、排気動弁装置6と、を備える。
機関本体1は、各気筒10に形成される燃焼室内で燃料を自着火燃焼させて、例えば車両などを駆動するための動力を発生させることができるように構成される。機関本体1には、気筒毎に一対の吸気弁50と一対の排気弁60とが設けられる。
燃料供給装置2は、電子制御式の燃料噴射弁20と、デリバリパイプ21と、サプライポンプ22と、燃料タンク23と、圧送パイプ24と、燃圧センサ211と、を備える。
燃料噴射弁20は、各燃焼室内に直接燃料を噴射することができるように、気筒毎に1つ設けられる。燃料噴射弁20の開弁時間(噴射量)及び開弁時期(噴射時期)は電子制御ユニット200からの制御信号によって変更され、燃料噴射弁20が開弁されると燃料噴射弁20から燃焼室内に直接燃料が噴射される。
デリバリパイプ21は、圧送パイプ24を介して燃料タンク23に接続される。圧送パイプ24の途中には、燃料タンク23に貯蔵された燃料を加圧してデリバリパイプ21に供給するためのサプライポンプ22が設けられる。デリバリパイプ21は、サプライポンプ22から圧送されてきた高圧燃料を一時的に貯蔵する。燃料噴射弁20が開弁されると、デリバリパイプ21に貯蔵された高圧燃料が燃料噴射弁20から燃焼室内に直接噴射される。
サプライポンプ22は、吐出量を変更することができるように構成されており、サプライポンプ22の吐出量は、電子制御ユニット200からの制御信号によって変更される。サプライポンプ22の吐出量を制御することで、デリバリパイプ21内の燃料圧力、すなわち燃料噴射弁20の噴射圧が制御される。
燃圧センサ211は、デリバリパイプ21に設けられる。燃圧センサ211は、デリバリパイプ21内の燃料圧力、すなわち各燃料噴射弁20から各気筒10内に噴射される燃料の圧力(噴射圧)を検出する。
吸気装置3は、各気筒10の燃焼室内に空気を導くための装置であって、燃焼室内に吸入される空気の状態(吸気圧力、吸気温度、EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス量)を変更することができるように構成されている。吸気装置3は、エアクリーナ30と、吸気管31と、ターボチャージャ32のコンプレッサ32aと、インタクーラ33と、吸気マニホールド34と、電子制御式のスロットル弁35と、エアフローメータ212と、EGR通路36と、EGRクーラ37と、EGR弁38と、を備える。
エアクリーナ30は、空気中に含まれる砂などの異物を除去する。
吸気管31は、一端がエアクリーナ30に連結され、他端が吸気マニホールド34のサージタンク34aに連結される。
ターボチャージャ32は過給機の一種であり、排気のエネルギを利用して空気を強制的に圧縮し、その圧縮した空気を各燃焼室に供給する。これにより充填効率が高められるので、機関出力が増大する。コンプレッサ32aは、ターボチャージャ32の一部を構成する部品であり、吸気管31に設けられる。コンプレッサ32aは、同軸上に設けられた後述するターボチャージャ32のタービン32bによって回されて、空気を強制的に圧縮する。なおターボチャージャ32に替えて、クランクシャフト(図示せず)の回転力を利用して機械的に駆動される過給機(スーパチャージャ)を用いても良い。
インタクーラ33は、コンプレッサ32aよりも下流の吸気管31に設けられ、コンプレッサ32aによって圧縮されて高温となった空気を冷却する。
吸気マニホールド34は、サージタンク34aと、サージタンク34aから分岐して機関本体1の内部に形成されている各吸気ポート(図示せず)の開口に連結される複数の吸気枝管34bと、を備える。サージタンク34aに導かれた空気は、吸気枝管34bを介して各燃焼室内に均等に分配される。このように、吸気管31、吸気マニホールド34及び各吸気ポートが、各燃焼室内に空気を導くための吸気通路を形成する。サージタンク34aには、サージタンク34a内の圧力(吸気圧力)を検出するための圧力センサ214と、サージタンク34a内の温度(吸気温度)を検出するための温度センサ215と、が取り付けられている。
スロットル弁35は、インタクーラ33とサージタンク34aとの間の吸気管31内に設けられる。スロットル弁35は、スロットルアクチュエータ35aによって駆動され、吸気管31の通路断面積を連続的又は段階的に変化させる。スロットルアクチュエータ35aによってスロットル弁35の開度を調整することで、各燃焼室内に吸入される空気の流量を調整することができる。
エアフローメータ212は、コンプレッサ32aよりも上流側の吸気管31内に設けられる。エアフローメータ212は、吸気通路内を流れて最終的に各燃焼室内に吸入される空気の流量を検出する。
EGR通路36は、後述する排気マニホールド40と吸気マニホールド34のサージタンク34aとを連通し、各燃焼室から排出された排気の一部を圧力差によってサージタンク34aに戻すための通路である。以下、EGR通路36に流入した排気のことを「EGRガス」という。EGRガスをサージタンク34a、ひいては各燃焼室に還流させることで、燃焼温度を低減させて窒素酸化物(NOx)の排出を抑えることができる。
EGRクーラ37は、EGR通路36に設けられる。EGRクーラ37は、EGRガスを、例えば走行風や冷却水などによって冷却するための熱交換器である。
EGR弁38は、EGRクーラ37よりもEGRガスの流れ方向下流側のEGR通路36に設けられる。EGR弁38は、連続的又は段階的に開度を調整することができる電磁弁であり、その開度は電子制御ユニット200によって制御される。EGR弁38の開度を制御することで、サージタンク34aに還流させるEGRガスの流量が調節される。
排気装置4は、各燃焼室内で生じた排気を浄化して外気に排出するための装置であって、排気マニホールド40と、排気管41と、ターボチャージャ32のタービン32bと、排気後処理装置42と、を備える。
排気マニホールド40は、機関本体1の内部に形成されている各排気ポート(図示せず)の開口と連結される複数の排気枝管と、排気枝管を集合させて1本にまとめた集合管と、を備える。
排気管41は、一端が排気マニホールド40の集合管に連結され、他端が開口端となっている。各燃焼室から排気ポートを介して排気マニホールド40に排出された排気は、排気管41を流れて外気に排出される。
タービン32bは、ターボチャージャ32の一部を構成する部品であり、排気管41に設けられる。タービン32bは、排気のエネルギによって回されて、同軸上に設けられたコンプレッサ32aを駆動する。
タービン32bの外側には、可変ノズル32cが設けられている。可変ノズル32cは絞り弁として機能し、可変ノズル32cのノズル開度(弁開度)は電子制御ユニット200によって制御される。可変ノズル32cのノズル開度を変化させることでタービン32bを駆動する排気の流速を変化させることができる。すなわち、可変ノズル32cのノズル開度を変化させることで、タービン32bの回転速度を変化させて過給圧を変化させることができる。具体的には、可変ノズル32cのノズル開度を小さくする(可変ノズル32cを絞る)と、排気の流速が上がってタービン32bの回転速度が増大し、過給圧が増大する。
排気後処理装置42は、タービン32bよりも下流側の排気管41に設けられる。排気後処理装置42は、排気を浄化した上で外気に排出するための装置であって、有害物質を浄化する各種の触媒(例えば三元触媒)を担体に担持させたものである。
吸気動弁装置5は、各気筒10の吸気弁50を開閉駆動するための装置であって、機関本体1に設けられる。本実施形態による吸気動弁装置5は、吸気弁50の開閉時期を制御できるように、例えば電磁アクチュエータによって吸気弁50を開閉駆動するように構成される。
排気動弁装置6は、各気筒10の排気弁60を開閉駆動するための装置であって、機関本体1に設けられる。本実施形態による排気動弁装置6は、排気弁60の開閉時期を制御できるように、例えば電磁アクチュエータによって排気弁60を開閉駆動するように構成される。
なお、吸気動弁装置5及び排気動弁装置6としては、電磁アクチュエータに限らず、例えばカムシャフトによって吸気弁50又は排気弁60を開閉駆動するように構成し、当該カムシャフトの一端部に油圧制御によってクランクシャフトに対するカムシャフトの相対位相角を変更する可変動弁機構を設けることによって、吸気弁50又は排気弁60の開閉時期を制御できるようにしてもよい。
電子制御ユニット200は、デジタルコンピュータから構成され、双方性バス201によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)202、RAM(ランダムアクセスメモリ)203、CPU(マイクロプロセッサ)204、入力ポート205及び出力ポート206を備える。
入力ポート205には、前述した燃圧センサ211などの出力信号が、対応する各AD変換器207を介して入力される。また入力ポート205には、機関負荷を検出するための信号として、アクセルペダル220の踏み込み量(以下「アクセル踏込量」という。)に比例した出力電圧を発生する負荷センサ217の出力電圧が、対応するAD変換器207を介して入力される。また入力ポート205には、機関回転速度などを算出するための信号として、機関本体1のクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ218の出力信号が入力される。このように入力ポート205には、内燃機関100を制御するために必要な各種センサの出力信号が入力される。
出力ポート206は、対応する駆動回路208を介して、燃料噴射弁20などの各制御部品に接続される。
電子制御ユニット200は、入力ポート205に入力された各種センサの出力信号に基づいて、各制御部品を制御するための制御信号を出力ポート206から出力して内燃機関100を制御する。以下、電子制御ユニット200が実施する内燃機関100の制御について説明する。
電子制御ユニット200は、機関運転状態(機関回転速度及び機関負荷)に基づいて、機関本体1の運転モードを予混合燃焼モード、又は拡散燃焼モードのいずれかに切り替えて、機関本体1の運転を行う。
電子制御ユニット200は、図2に示すように、機関運転状態が低回転速度・低負荷側の第1運転領域内にあれば、運転モードを予混合燃焼モードに切り替える。また電子制御ユニット200は、機関運転状態が高回転速度・高負荷側の第2運転領域内にあれば、運転モードを拡散燃焼モードに切り替える。そして電子制御ユニット200は、各運転モードに応じて燃料供給装置2や吸気装置3などの各種装置を制御して機関本体1の運転を行う。
具体的には電子制御ユニット200は、運転モードが拡散燃焼モードのときは、燃焼室内に噴射された燃料が、基本的に燃料噴射後にほぼ遅れなく短い着火遅れ時間(燃焼室内に噴射された燃料が自着火に至るまでの時間)で燃焼する拡散燃焼を起こすように、各種装置の制御を実施して機関本体1の運転を行う。
また電子制御ユニット200は、運転モードが予混合燃焼モードのときは、燃焼室内に噴射された燃料が、基本的に燃料噴射後に空気との予混合期間をある程度置いた上で(すなわち燃料噴射後に拡散燃焼時よりも長い着火遅れ時間で)燃焼する予混合圧縮自着火燃焼を起こすように、各種装置の制御を実施して機関本体1の運転を行う。
このように拡散燃焼は、予混合圧縮自着火燃焼と比較して燃料噴射後の燃料と空気との予混合期間が短い燃焼形態なので、燃焼室内において燃料濃度の濃い混合気(すなわち当量比φの大きい混合気)が燃焼する割合が増加する傾向にある。燃焼室内において燃料濃度の濃い混合気が燃焼すると、酸素不足によってスモークの原因となる煤が生成される。
これに対して予混合圧縮自着火燃焼は、燃料噴射後に燃料と空気との予混合期間をある程度設けた上で、予混合気を燃焼させる燃焼形態なので、拡散燃焼を実施した場合と比較して、燃焼室内において燃料濃度の濃い混合気が燃焼する割合を低減することができる。そのため、予混合圧縮自着火燃焼及び拡散燃焼の双方を実施できる運転領域において、本実施形態のように予混合圧縮自着火燃焼を実施することで、煤の生成を抑制できるため、排気エミッションを向上させることができる。
しかしながら予混合圧縮自着火燃焼は、前述した通り予混合気を燃焼させる燃焼形態なので、拡散燃焼を実施する場合よりも吸気の応答遅れの影響を受けやすく、特に本実施形態のようにターボチャージャ32によって過給している場合には吸気の応答遅れが顕著となる。そのため、予混合圧縮自着火燃焼を実施している領域でアクセルペダル220が踏み込まれて機関負荷が増加したとき(車両加速要求があったとき)に、機関本体1の出力トルク(以下「機関出力トルク」という。)の立ち上がりが遅れやすく、トルクレスポンスが悪くなる傾向にある。
図3は、機関負荷が増加してから一定の機関負荷になるまでの過渡時、すなわち機関負荷が増加したときに機関出力トルクが機関負荷に応じた要求トルクになるまでの過渡時において、予混合圧縮自着火燃焼を実施した場合のトルクレスポンスと、拡散燃焼を実施した場合のトルクレスポンスとを、比較して示した図である。
図3に示すように過渡時においては、予混合圧縮自着火燃焼を実施して加速した場合には、拡散燃焼を実施して加速した場合と比較して機関出力トルクの立ち上がりが遅く、トルクレスポンスが悪くなっていることが分かる。
そこで本実施形態では、予混合圧縮自着火燃焼を実施している領域でアクセルペダル220が踏み込まれて機関負荷が増加したときには、過渡時において少なくとも拡散燃焼を実施して加速した場合と同等のトルクレスポンスが得られるように、定常時よりも燃料噴射量を増量して予混合圧縮自着火燃焼を実施することとした。
このとき、増量分の燃料を、予混合気を形成するためのメイン噴射によって噴射してしまうと、定常時よりも燃料濃度の濃い予混合気が形成されてしまい、結果として予混合圧縮自着火燃焼を実施しても酸素不足によってスモークの原因となる煤の生成が助長されて排気エミッションが悪化するおそれがある。
そこで本実施形態ではさらに、この増量分の燃料については、メイン噴射よりも遅角側で実施されるアフタ噴射によって噴射することとした。これにより、排気エミッションが悪化することも抑制することができる。
以下、この本実施形態による過渡時における燃料噴射制御について説明する。
図4は、本実施形態による過渡時における燃料噴射制御について説明するフローチャートである。
ステップS1において、電子制御ユニット200は、予混合圧縮自着火燃焼を実施している第1運転領域でアクセルペダル220が踏み込まれて機関負荷が増加してから一定の機関負荷になるまでの過渡時であるか否かを判定する。電子制御ユニット200は、このような過渡時であればステップS2の処理に進み、過渡時でなければ今回の処理を終了する。
なお前述した通り、過渡時において予混合圧縮自着火燃焼を実施したときにトルクレスポンスが悪化する主な原因は吸気の応答遅れによるものである。そのため、例えば緩やかな加速を行うときなど、アクセル踏込量の変化率が小さい場合には吸気の応答遅れの影響も小さくなる。したがって、アクセル踏込量の変化率が所定値以上のとき限り(すなわち或る一定以上の加速が求められているときに限り)、ステップS2の処理に進ませるようにしても良い。これにより、例えば緩やかな加速を行うときなどには燃料噴射量の増量が行われないため、燃費の悪化を抑制することができる。
ステップS2において、電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成されたテーブルを参照し、機関負荷に基づいて機関本体1に対する要求トルクを算出する。要求トルクは、基本的に機関負荷が高くなるほど大きくなる。
ステップS3において、電子制御ユニット200は、予混合圧縮自着火燃焼を実施して機関出力トルクを要求トルクにするために燃料噴射弁20から噴射する必要のある燃料量(以下「第1燃料量」という。)を算出する。本実施形態では電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成されたテーブルを参照し、要求トルクに基づいて第1燃料量を算出する。第1燃料量は、基本的に要求トルクが大きくなるほど多くなる。
この第1燃料量は、定常時であれば、機関出力トルクを要求トルクにすることが可能な燃料量であり、換言すれば、定常時における目標噴射量である。したがって過渡時には、前述したようにトルクレスポンスが悪化するため、この第1燃料量を燃料噴射弁20から噴射して予混合圧縮自着火燃焼を実施しても、機関出力トルクは要求トルクよりも低くなり、また当該第1燃料量を噴射して拡散燃焼を実施した場合の機関出力トルクよりも低くなる。
そこで本実施形態による電子制御ユニット200は、ステップS4において、過渡時に仮に燃料噴射弁20から第1燃料量分の燃料を噴射して拡散燃焼を実施した場合に得られる機関出力トルク(以下「拡散出力トルク」という。)を算出する。本実施形態では電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成された図5のテーブルを参照し、第1燃料量に基づいて拡散出力トルクを算出する。図5は、過渡時において拡散燃焼を実施したときに得られる機関出力トルクと、過渡時において予混合圧縮自着火燃焼を実施したときに得られる機関出力トルクとを、燃料噴射弁20から噴射される燃料量に応じて示したテーブルである。
そして次のステップS5において、電子制御ユニット200は、図5のテーブルを参照し、拡散出力トルクに基づいて、過渡時において予混合圧縮自着火燃焼を実施して機関出力トルクを当該拡散出力トルクにするために燃料噴射弁20から噴射する必要のある燃料量(以下「第2燃料量」という。)を算出する。図5から分かるように、第2燃料量は、第1燃料量よりも多くなるので、予混合圧縮自着火燃焼を実施する際に、予混合気を形成するためのメイン噴射によって第2燃料量分の燃料を全て噴射してしまうと、前述した通り排気エミッションが悪化するおそれがある。
そこで本実施形態による電子制御ユニット200は、ステップS6において、定常時における目標噴射量である第1燃料量をメイン噴射によって噴射し、第2燃料量から第1燃料量を差し引いた差分量をメイン噴射の後に実施されるアフタ噴射によって噴射する。このように、アフタ噴射を実施してアフタ噴射燃料を燃焼室内で燃焼させることで、排気エミッションの悪化を抑制しつつ、機関出力トルクを拡散出力トルクまで増大させることができるのでトルクレスポンスの悪化を抑制することができる。
なおアフタ噴射時期は、アフタ噴射燃料を燃焼室内で燃焼させることで機関出力トルクを拡散出力トルクまで増大させることが可能な時期に設定される。図6は、アフタ噴射時期と機関出力トルクとの関係を示した図である。図6において、横軸が0のときがメイン噴射時期であり、そこから右側に行くほど、アフタ噴射時期がメイン噴射時期から遅角している。なお横軸が0のときの機関出力トルクは、メイン噴射によって第2燃料量分の燃料を全て噴射した場合の機関出力トルクである。
図6に破線で覆った部分に示されているように、メイン噴射時期から或る一定の遅角量の範囲内にアフタ噴射を実施すれば、アフタ噴射燃料のほぼ全てをトルクに変換できる。したがってアフタ噴射時期は、この範囲内に収まるように設定され、例えばメイン噴射時期から一定量遅角した時期に噴射するようにして良いし、又は機関運転状態に応じて遅角量を適宜変更するようにしても良い。
以上説明した本実施形態によれば、機関本体1と、機関本体1の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁20と、を備え、燃焼室内で少なくとも予混合圧縮自着火燃焼を実施することが可能な内燃機関100を制御するための電子制御ユニット200(制御装置)が、機関負荷が増加する過渡時における燃料噴射量、及び燃料噴射時期を制御する過渡時燃料噴射制御部を備える。過渡時燃料噴射制御部は、機関負荷に基づいて機関本体1に対する要求トルクを算出する要求トルク算出部と、要求トルクに基づいて、予混合圧縮自着火燃焼を実施して機関本体1の出力トルク(気化出力トルク)を要求トルクにするために燃料噴射弁20から噴射する必要のある第1燃料量を算出する第1燃料量算出部と、過渡時に仮に第1燃料量を噴射して拡散燃焼を実施した場合に得られる出力トルクである拡散出力トルクを算出する拡散出力トルク算出部と、予混合圧縮自着火燃焼を実施して機関出力トルクを拡散出力トルクにするために燃料噴射弁20から噴射する必要のある第2燃料量を算出する第2燃料量算出部と、を備え、過渡時には、第1燃料量を、予混合気を形成するためのメイン噴射によって噴射し、第2燃料量から第1燃料量を差し引いた差分量を、メイン噴射よりも遅角側で行われるアフタ噴射によって噴射して、予混合圧縮自着火燃焼を実施するように構成される。
これにより、過渡時における排気エミッションの悪化を抑制しつつ、過渡時において予混合圧縮自着火燃焼を実施したときのトルクレスポンスの悪化を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば上記の実施形態では、図5のテーブルを予め実験等によって作成し、電子制御ユニット200のROM202に記憶させていたが、燃料噴射弁20から噴射される燃料量と、過渡時において拡散燃焼を実施したときに得られる機関出力トルクと、の関係、及び
過渡時において予混合圧縮自着火燃焼を実施したときに得られる機関出力トルクと、燃料噴射弁20から噴射される燃料量と、の関係を、それぞれ機械学習モデル等の演算モデルによってオフライン上で求めるようにしても良い。
過渡時において予混合圧縮自着火燃焼を実施したときに得られる機関出力トルクと、燃料噴射弁20から噴射される燃料量と、の関係を、それぞれ機械学習モデル等の演算モデルによってオフライン上で求めるようにしても良い。
例えば、燃料噴射弁20から噴射される燃料量と、過渡時において拡散燃焼を実施したときに得られる機関出力トルクと、の関係を機械学習モデルで求める場合には、機械学習モデルの入力パラメータとして少なくとも燃料噴射量(第1燃料量に相当)を用意し、必要に応じて入力パラメータに機関回転速度や燃料噴射時期、EGR率、燃料噴射圧などを加え、入力した燃料噴射量等から得られる機関出力トルク(拡散出力トルクに相当)を機械学習モデルの出力とすればよい。
そして、過渡時において予混合圧縮自着火燃焼を実施したときに得られる機関出力トルクと、燃料噴射弁20から噴射される燃料量と、の関係を機械学習モデルで求める場合には、機械学習モデルの入力パラメータとして少なくとも機関出力トルク(拡散出力トルクに相当)を用意し、必要に応じて入力パラメータに機関回転速度や燃料噴射時期、EGR率、燃料噴射圧を加え、入力した機関出力トルクが得られる燃料量(第2燃料量に相当)を機械学習モデルの出力とすればよい。
1 機関本体
20 燃料噴射弁
100 内燃機関
200 電子制御ユニット(制御装置)
20 燃料噴射弁
100 内燃機関
200 電子制御ユニット(制御装置)
Claims (1)
- 機関本体と、
前記機関本体の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
を備え、
前記燃焼室内で少なくとも予混合圧縮自着火燃焼を実施することが可能な内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置であって、
機関負荷が増加する過渡時における燃料噴射量、及び燃料噴射時期を制御する過渡時燃料噴射制御部を備え、
前記過渡時燃料噴射制御部は、
機関負荷に基づいて、前記機関本体に対する要求トルクを算出する要求トルク算出部と、
前記要求トルクに基づいて、前記予混合圧縮自着火燃焼を実施して前記機関本体の出力トルクを前記要求トルクにするために前記燃料噴射弁から噴射する必要のある第1燃料量を算出する第1燃料量算出部と、
前記過渡時に仮に前記第1燃料量を噴射して拡散燃焼を実施した場合に得られる出力トルクである拡散出力トルクを算出する拡散出力トルク算出部と、
前記予混合圧縮自着火燃焼を実施して前記出力トルクを前記拡散出力トルクにするために前記燃料噴射弁から噴射する必要のある第2燃料量を算出する第2燃料量算出部と、
を備え、
前記過渡時には、前記第1燃料量を、予混合気を形成するためのメイン噴射によって噴射し、前記第2燃料量から前記第1燃料量を差し引いた差分量を、前記メイン噴射よりも遅角側で行われるアフタ噴射によって噴射して、前記予混合圧縮自着火燃焼を実施する、
内燃機関の制御装置。
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