JP2019167513A - ポリプロピレンフィルム、金属層一体型ポリプロピレンフィルム、及び、フィルムコンデンサ - Google Patents

ポリプロピレンフィルム、金属層一体型ポリプロピレンフィルム、及び、フィルムコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】 成形加工性に優れるポリプロピレンフィルムを提供すること。【解決手段】 溶融せん断粘度、及び、せん断速度に関する測定結果をCarreau−Yasudaモデルに適用した際に決定される、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数cが、−200以上−50以下であり、厚さが1〜10μmであるポリプロピレンフィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリプロピレンフィルム、金属層一体型ポリプロピレンフィルム、及び、フィルムコンデンサに関する。
ポリプロピレンフィルムは、高い耐電圧性や低い誘電損失特性等の優れた電気特性を有し、且つ、高い耐湿性を有する。そのため、広く電子機器や電気機器に用いられている。具体的には、例えば、高電圧コンデンサー、各種スイッチング電源、フィルター用コンデンサー(例えば、コンバーター、インバーター等)、平滑用コンデンサー等に使用されるフィルムとして利用されている。
近年、コンデンサーの小型化及び高容量化が更に要求されている。コンデンサーの体積を変えないで静電容量を向上させるためには、誘電体としてのフィルムを薄くすることが好ましい。そのため、厚さがより薄いフィルムが求められている。
また、近年、ポリプロピレンフィルムは、電気自動車やハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバーター電源機器用コンデンサーとして、広く用いられ始めている。自動車等に用いられるインバーター電源機器用コンデンサーは、小型、軽量、高容量であり、且つ、広い温度範囲(例えば、−40℃〜90℃)で、長期間にわたる高い耐電圧性が求められている。
特許文献1には、230℃で測定した時の溶融張力とメルトフローレート(MFR)とが特定の関係を満たすポリプロピレンを、立体規則性の高いポリプロピレン樹脂に含有させたポリプロピレンフィルムが開示されている(特に、請求項1、請求項4参照)。また、効果として、延伸性に優れることで厚み・諸物性の均一性に優れ、規則性の高いポリプロピレン樹脂を用いながら、均一延伸でき耐熱性、熱寸法安定性、機械剛性、電気絶縁性に優れたポリプロピレンフィルムを提供できる旨が記載されている(特に、段落[0011]参照)。
特許第4929923号公報
特許文献1に記載の溶融張力やメルトフローレートは、原料ペレットから得られる値である。一方、製品としてのポリプロピレンフィルムは、原料ペレットからフィルムに成形されるまでの間に熱履歴を経る。そして、ポリプロピレンフィルムの溶融張力やメルトフローレートの値は、熱履歴の影響により変化する。そのため、特許文献1のポリプロピレンフィルムは、その元となる原反シート(延伸前のフィルム)が充分な延伸性を有しておらず、好適に薄膜化できない場合があるといった問題がある。
また、従来、ポリプロピレン全体の重量平均分子量を調整し、且つ、分子量分布を調整する等して、要求されている成形加工性(例えば、延伸性)が得られるようにする方法も存在する。しかしながら、これらのパラメータは、複雑に関係しているため、要求を満たすための組み合わせを導き出すことが難しく、改善の余地があった。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、成形加工性に優れるポリプロピレンフィルムを提供することにある。また、本発明は、当該ポリプロピレンフィルムを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルム、及び、当該金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するフィルムコンデンサを提供することにある。
本発明者らはポリプロピレンフィルムについて鋭意検討を行った。その結果、溶融せん断粘度、及び、せん断速度の測定結果を非ニュートン流体のせん断粘度曲線を表すモデルであるCarreau−Yasudaモデルに適用した際に決定される特定の係数が所定の範囲内にあるポリプロピレンフィルムは、成形加工性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るポリプロピレンフィルムは、
溶融せん断粘度、及び、せん断速度に関する測定結果を式(1)に示すCarreau−Yasudaモデルに適用した際に決定される、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数cが、−200以上−50以下であり、厚さが1〜10μmであることを特徴とする。
Figure 2019167513
係数cは、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数である。具体的に、係数cが大きいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は小さくなり(傾きが小さくなり)、係数cが小さいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は大きくなる(傾きが大きくなる)。
本発明は、係数cが−50以下となる程度に、せん断速度変化に対する粘度変化が大きい。本発明者らは、係数cが−50以下であると、ポリプロピレンフィルムの成形加工性が優れる理由として、せん断速度変化に対する粘度変化が大きいと、押出機内の高せん断速度域での樹脂の流動性が増すため、押出成形性が良好となるためと推察している。
一方、せん断速度変化に対するせん断粘度変化が大きすぎても(すなわち、係数cが−200よりも小さくても)、溶融樹脂をシート状に押し出す際に、わずかな速度変化により粘度が大きく変化してしまうため、安定した押し出しが困難となり、薄膜を得にくい場合がある。そこで、本発明では、係数cを−200以上−50以下とした。これにより、厚さが1〜10μmという薄いポリプロピレンフィルムが安定的に得られる。
前記構成によれば、式(1)に示すCarreau−Yasudaモデルにおける係数cが−200以上−50以下であるため、実施例からも分かるように、成形加工性が良好である。つまり、本発明は、係数cが−200以上−50以下を満たすポリプロピレンフィルムであるため、原反シートを延伸して当該ポリプロピレンフィルムとする場合に、(i)原反シート延伸時の破断がなく、(ii)原反シートの流れ方向の厚みムラが抑制されており、(iii)原反シートの幅方向の厚みムラが抑制されており、(iv)原反シートの面方向の厚みムラが抑制されており、(v)原反シートの樹脂流動性に優れる。
このように、本発明は、本発明者らによる、係数cが−200以上−50以下であると、ポリプロピレンフィルムの成形加工性が向上するという新たな知見に基づく発明である。
また、前記構成によれば、実際の製品としてのポリプロピレンフィルムの物性、すなわち、係数cを規定している。すなわち、フィルム形成過程において受けた熱履歴を踏まえた後の実際のポリプロピレンフィルムの物性で規定しているため、当該物性を満たすポリプロピレンフィルムは、確実に成形加工性が向上している。
また、係数cが−200以上−50以下という条件を満たすか否かは、作製したポリプロピレンフィルムについて溶融せん断粘度、及び、せん断速度に関する測定を行えばよい。従って、要求される成形加工性を満たすポリプロピレンフィルムを容易に製造することができる。なお、係数cが−200以上−50以下となるポリプロピレンフィルムは、樹脂の選択や製造方法の選択により達成できる。例えば、用いる樹脂として、溶融せん断時の粘度変化が大きい樹脂を選択するのか、それとも、小さい樹脂を選択するのかに応じて、フィルム成型時の押出成形条件(シート成形条件、リップギャップ調整等)や延伸条件を最適に設定することにより達成できる。具体的には、分子量が高く溶融せん断時の粘度変化が小さい樹脂の場合、樹脂流動性が低く厚みばらつきが大きくなりやすいため、延伸むらができずに製膜できる範囲で樹脂温度、縦延伸温度、横延伸温度などの成形温度を高くすることが好ましい。また、分子量分布が広く溶融せん断時の粘度変化が大きい樹脂の場合、延伸むらができずに製膜できる範囲で樹脂温度、縦延伸温度、横延伸温度などの成形温度を低くしたり、リップギャップを広げたりすることが好ましい。
前記構成のポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を材料とし、前記ポリプロピレン樹脂を溶融押し出しして原反シートとし、その後、二軸延伸したフィルムであり、
下記式(2)に示す、前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートと、前記原反シートのメルトフローレートとの変化率が、1.3以下であることが好ましい。
(変化率)=(原反シートのメルトフローレート)/(ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート) 式(2)
前記変化率が、1.3以下であると、樹脂劣化しにくく溶融安定性に優れ、成形物の厚み変動を抑制するため、押出成形性が良好になると推察している。
前記構成のポリプロピレンフィルムは、コンデンサー用であることが好ましい。
前記係数cが−200以上−50以下である前記ポリプロピレンフィルムは、成形加工性に優れるため、薄い厚みとすることができ、コンデンサー用として好適に使用できる。
前記構成のポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を含有し、
前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の数平均分子量Mnが、30000以上53000以下であり、
前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが、25万以上45万以下であり、
前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂のz平均分子量Mzが、50万以上210万以下であり、前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]が、5以上12以下であり、
前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]が、10以上70以下であることが好ましい。
前記主成分のポリプロピレン樹脂として、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、z平均分子量Mz、前記分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]、及び、前記分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]が前記数値範囲内のものを使用すれば、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得やすい。
前記構成のポリプロピレンフィルムは、前記主成分のポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)が、96.0%以上99.5%以下であり、
前記主成分のポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が、1.0g/10min以上8.0g/10min以下であることが好ましい。
ヘプタン不溶分は、多いほど樹脂の立体規則性が高いことを示す。前記主成分のポリプロピレン樹脂として、ヘプタン不溶分(HI)が、96.0%以上99.5%以下のものを使用すると、適度に高い立体規則性により、樹脂の結晶性が適度に向上し、成形加工性が向上する。一方、キャスト原反シート成形の際の固化(結晶化)の速度が適度となり、適度の延伸性を有する。
また、前記主成分のポリプロピレン樹脂として、メルトフローレート(MFR)が、1.0g/10min以上8.0g/10min以下のものを使用すれば、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得やすい。
また、本発明に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、
前記ポリプロピレンフィルムと、
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有することを特徴とする。
前記構成によれば、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層を有するため、ポリプロピレンフィルムを誘電体とし、金属層を電極としたフィルムコンデンサに使用することができる。また、前記係数cが−200以上−50以下である前記ポリプロピレンフィルムを有するため、成形加工性に優れ、薄い厚みとすることができる。
また、本発明に係るフィルムコンデンサは、巻回された前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有することを特徴とする。
本発明によれば、成形加工性に優れ、薄い厚みのポリプロピレンフィルムを提供することができる。また、当該ポリプロピレンフィルムを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルム、及び、当該金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するフィルムコンデンサを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本実施形態に係るポリプロピレンフィルムは、微孔性フィルムではないので、多数の空孔を有していない。また、本実施形態に係るポリプロピレンフィルムは、単層で構成されていることが好ましい。
本実施形態に係るポリプロピレンフィルムは、
溶融せん断粘度、及び、せん断速度に関する測定結果を式(1)に示すCarreau−Yasudaモデルに適用した際に決定される、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数cが、−200以上−50以下である。前記係数cは、好ましくは、−60以下であり、より好ましくは、−70以下である。また、前記係数cは、好ましくは、−180以上であり、より好ましくは、−150以上である。
Figure 2019167513
Carreau−Yasudaモデルは、非ニュートン流体のせん断粘度曲線を表すモデルであり、ゼロせん断領域とずり流動領域の両特性を表現可能なモデルである。
ゼロせん断粘度ηは、全体の粘度の大きさを表す。具体的に、ゼロせん断粘度ηが大きいほど、せん断粘度ηは大きくなる。つまり、せん断速度を同一とした場合、ゼロせん断粘度ηが大きいほど、せん断粘度ηは大きくなる。
遅延時間λは、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数である。具体的に、係数λが大きいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は小さくなり(傾きが小さくなり)、係数λが小さいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は大きくなる(傾きが大きくなる)。
係数bは、温度と粘度との傾きを表す係数である。具体的に、係数bが小さいほど、温度変化に対するせん断粘度の変化は小さくなり(傾きが小さくなり)、係数bが大きいほど、温度変化に対するせん断粘度の変化は大きくなる(傾きが大きくなる)。
係数cは、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数である。具体的に、係数cが大きいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は小さくなり(傾きが小さくなり)、係数cが小さいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は大きくなる(傾きが大きくなる)。
係数dは、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数である。具体的に、係数dが大きいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は小さくなり(傾きが小さくなり)、係数dが小さいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は大きくなる(傾きが大きくなる)。
以下、前記係数cを求める方法について説明する。なお、各パラメータ(ゼロせん断粘度η、係数b、係数c、係数d、遅延時間λ)は、同時に求められるため、係数cも含めたすべてのパラメータを求める方法を、以下に説明する。
<Carreau−Yasudaモデルにおける各パラメータの決定方法>
まず、以下の(1)〜(5)の手順により、測定温度230℃、240℃、250℃におけるせん断粘度ηとせん断速度γとの関係(フローカーブ)を得る。なお、測定には、Thermofisher Scientific社製のHAAKE MiniLab Rheomex CTW5(マイクロレオロジーコンパウンダー)を用いる。
(1)ポリプロピレンフィルムを短冊状に切り出して5g秤り取り、全量を試料投入部から投入する。
(2)回転数10rpmで1分間安定化させた後、回転数10rpmから360rpmの間の10点の圧力損失dPを測定し、測定した圧力損失dPから、各回転数のせん断応力τを導出する。なお、測定する10点は、対数表記で均等分割したときの10点である。
(3)回転数10、20、50、100rpmの時に吐出口から排出される各樹脂量Qを測定し、測定した樹脂量Qから、各回転数のせん断速度γを導出し、γと回転数の線形近似式を求める。得られた近似式から、上記(2)の10点の回転数の時のγを求める。
(4)上記(1)〜上記(3)で得られた10点のせん断応力τとせん断速度γから、変形Hargen−Poiseulleの式([せん断粘度η]=[せん断応力τ]/[せん断速度γ])を用いてせん断粘度ηを求める。以上より、せん断粘度ηとせん断速度γとの関係(フローカーブ)を得る。
(5)上記(1)〜(4)の操作を測定温度230℃、240℃、250℃で実施し、各測定温度でのせん断粘度ηとせん断速度γとの関係(フローカーブ)を得る。
次に、解析ソフト(株式会社HASLの解析ソフトMaterialfit Ver.3.0.0)の非ニュートン純粘性モデルフィット機能を用いて、上記(5)で得られたフローカーブ(η-γカーブ)を式(1)に示すCarreau−Yasudaモデル(粘度式)にフィッティングして、マスターカーブを得る。以上により、各パラメータ(ゼロせん断粘度η、係数b、係数c、係数d、遅延時間λ)を得る。なお、基準温度Trは240℃としてフィッティングする。基準温度Trを240℃としたのは、測定温度230℃、240℃、250℃のうちの中間温度を選択したことによる。
上述した通り、係数cは、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数である。具体的に、係数cが大きいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は小さくなり(傾きが小さくなり)、係数cが小さいほど、せん断速度変化に対するせん断粘度の変化は大きくなる(傾きが大きくなる)。
本実施形態に係るポリプロピレンフィルムは、係数cが−50以下となる程度に、せん断速度変化に対する粘度変化が大きい。本発明者らは、係数cが−50以下であると、ポリプロピレンフィルムの成形加工性が優れる理由として、せん断速度変化に対する粘度変化が大きいと、押出機内の高せん断速度域での樹脂の流動性が増すため、押出成形性が良好となるためと推察している。
一方、せん断速度変化に対するせん断粘度変化が大きすぎても(すなわち、係数cが−200よりも小さくても)、溶融樹脂をシート状に押し出す際に、わずかな速度変化により粘度が大きく変化してしまうため、安定した押し出しが困難となり、薄膜を得にくい場合がある。そこで、本実施形態では、係数cを−200以上−50以下とした。これにより、厚さが1〜10μmという薄いポリプロピレンフィルムが安定的に得られる。
本実施形態に係るポリプロピレンフィルムは、式(1)に示すCarreau−Yasudaモデルにおける係数cが−200以上−50以下であるため、実施例からも分かるように、成形加工性が良好である。つまり、本実施形態に係るポリプロピレンフィルムは、係数cが−200以上−50以下を満たすポリプロピレンフィルムであるため、原反シートを延伸して当該ポリプロピレンフィルムとする場合に、(i)原反シート延伸時の破断がなく、(ii)原反シートの流れ方向の厚みムラが抑制されており、(iii)原反シートの幅方向の厚みムラが抑制されており、(iv)原反シートの面方向の厚みムラが抑制されており、(v)原反シートの樹脂流動性に優れる。
また、本実施形態では、実際の製品としてのポリプロピレンフィルムの物性、すなわち、係数cを規定している。すなわち、フィルム形成過程において受けた熱履歴を踏まえた後の実際のポリプロピレンフィルムの物性で規定しているため、当該物性を満たすポリプロピレンフィルムは、確実に成形加工性が向上している。
また、係数cが−200以上−50以下という条件を満たすか否かは、作製したポリプロピレンフィルムについて溶融せん断粘度、及び、せん断速度に関する測定を行えばよい。従って、要求される成形加工性を満たすポリプロピレンフィルムを容易に製造することができる。なお、係数cが−200以上−50以下となるポリプロピレンフィルムは、樹脂の選択や製造方法の選択により達成できる。例えば、用いる樹脂として、溶融せん断時の粘度変化が大きい樹脂を選択するのか、それとも、小さい樹脂を選択するのかに応じて、フィルム成型時の押出成形条件(シート成形条件、リップギャップ調整等)や延伸条件、製膜設備等を最適に設定することにより達成できる。具体的には、本実施形態に係るポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の分子量が高いか又は分子量分布が適度に狭く(例えばMw/Mnが8.5未満、8.4以下等)溶融せん断時の粘度変化が小さい樹脂の場合、樹脂流動性が低く厚みばらつきが大きくなりやすいため、延伸むらができずに製膜できる範囲で樹脂温度、縦延伸温度、横延伸温度などの成形温度を高くすることが好ましい。また、本実施形態に係るポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の分子量分布が広く(例えば、Mw/Mnが8.5以上)溶融せん断時の粘度変化が大きい樹脂の場合、延伸むらができずに製膜できる範囲で樹脂温度、縦延伸温度、横延伸温度などの成形温度を低くしたり、リップギャップを広げたりすることが好ましい。
特に、生産機(実際の生産において使用される製造装置)を用いたポリプロピレンフィルムの製造は、高せん断速度にて行われるが、高せん断速度領域(例えば、せん断速度γ=1000(1/s))でのせん断粘度ηは、実測が困難である。
本実施形態では、前記マスターカーブを用いるため、任意の温度でのせん断粘度ηとせん断速度γとの関係を得ることが可能となる。そして、前記マスターカーブを用いれば、実際の生産時に使用される、実測が困難である高せん断速度領域でのせん断粘度ηも含めた粘度全体の傾向を知ることができる。つまり、本実施形態では、実測が困難である高せん断速度領域でのせん断粘度ηも含めた粘度全体の傾向が成形加工性にどのように影響しているかを係数cを介してとらえて、確実な成形加工性向上を担保している。
前記ポリプロピレンフィルムの27℃での絶縁破壊強度ESは、240Vac/μm以上であることが好ましく、250Vac/μm以上であることがより好ましく、260Vac/μm以上であることがさらに好ましい。前記ポリプロピレンフィルムの27℃での絶縁破壊強度ESは、高いほど好ましいが、例えば、500Vac/μm以下、450Vac/μm以下、400Vac/μm以下である。
前記ポリプロピレンフィルムの100℃での絶縁破壊強度ESは、235Vac/μm以上であることが好ましく、238Vac/μm以上であることがより好ましい。前記ポリプロピレンフィルムの100℃での絶縁破壊強度ESは、高いほど好ましいが、例えば、400Vac/μm以下、350Vac/μm以下、300Vac/μm以下である。
前記ポリプロピレンフィルムの融点は、168.0〜178.0℃であることが好ましく、171.0〜175.0℃であることがより好ましく、172.0〜174.2℃であることがさらに好ましい。前記ポリプロピレンフィルムの融点が168.0℃以下であると、コンデンサ用ポリプロピレンフィルムとして耐電圧特性に劣る場合があるため好ましくない。前記ポリプロピレンフィルムの融点の測定方法は、実施例記載の方法による。
前記ポリプロピレンフィルムは、前記係数cが−200以上−50以下であれば、その用途は特に限定されないが、コンデンサー用であることが好ましい。
前記係数cが−200以上−50以下である前記ポリプロピレンフィルムは、成形加工性が良好であり、薄い厚みとすることができる。従って、コンデンサー用として好適に使用できる。
前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、コンデンサーに使用した場合のコンデンサーの小型化及び高容量化を担保する観点から、1〜10μmである。具体的に、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、10μm以下であり、6.0μm以下が好ましく、4.0μm以下がより好ましく、3.5μm以下がさらに好ましく、3.0μm以下が特に好ましい。また、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、製造上の観点から、1.0μm以上である。前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、1.5μm以上、1.8μm以上とすることができる。
前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定される値をいう。
前記ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を含む。前記ポリプロピレン樹脂の含有量は、ポリプロピレンフィルム全体に対して(ポリプロピレンフィルム全体を100質量%としたときに)、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。前記ポリプロピレン樹脂の含有量の上限は、ポリプロピレンフィルム全体に対して、例えば、100質量%、98質量%等である。前記ポリプロピレン樹脂は、一種のポリプロピレン樹脂を単独で含むものであってもよく、二種以上のポリプロピレン樹脂を含むものであってもよい。
ここで、前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種以上である場合、含有量の多い方のポリプロピレン樹脂を、本明細書では、「主成分のポリプロピレン樹脂」という。また、前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が一種である場合、当該ポリプロピレン樹脂を、本明細書では、「主成分のポリプロピレン樹脂」という。
以下、本明細書において、主成分であるか否かを特に明記せずに「ポリプロピレン樹脂」というときは、特段の断りがない限り、主成分としてのポリプロピレン樹脂と、主成分以外のポリプロピレン樹脂との両方を意味する。例えば、「前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましい。」と記載されている場合、主成分としてのポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であることが好ましいことと、主成分以外のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であることが好ましいこととの両方を意味する。
前記ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸フィルムであってもよく、一軸延伸フィルムであってもよく、無延伸フィルムであってもよいが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。なお、以下では、前記ポリプロピレンフィルムが二軸延伸フィルムである場合について説明する。
前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましく、25万以上40万以下であることがより好ましい。前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であると、樹脂流動性が適度となる。その結果、キャスト原反シートの厚さの制御が容易であり、薄い延伸フィルムを作製することが容易となる。また、キャスト原反シートや延伸フィルムの厚みムラが発生し難くなる。また、キャスト原反シートに適度な延伸性を与えることができる。ポリプロピレン樹脂を2種以上使用する場合、上記Mwが25万以上33万未満のポリプロピレン樹脂と上記Mwが33万以上45万以下のポリプロピレン樹脂を併用することが好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂の数平均分子量Mnは、30000以上53000以下であることが好ましく、33000以上52000以下であることがより好ましい。前記ポリプロピレン樹脂の数平均分子量Mnが30000以上53000以下であると、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得やすい。
前記ポリプロピレン樹脂のz平均分子量Mzは、500000以上2100000以下であることが好ましく、700000以上1700000以下であることがより好ましい。前記ポリプロピレン樹脂のz平均分子量Mzが500000以上2100000以下であると、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得やすい。
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]は、5以上12以下であることが好ましく、5以上11以下であることがより好ましく、5以上10以下であることがさらに好ましく、5.5〜9.5であることが特に好ましい。前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]が5以上12以下であると、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得やすい。ポリプロピレン樹脂を2種以上使用する場合、上記分子量分布が5以上8.5未満のポリプロピレン樹脂と上記分子量分布が8.5以上11以下のポリプロピレン樹脂を併用することが好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]は、10以上70以下であることが好ましく、15以上60以下であることがより好ましく、15以上50以下であることがさらに好ましい。前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]が10以上70以下であると、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得やすい。
本明細書において、前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、z平均分子量、及び、分子量分布(Mw/Mn、及び、Mz/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定した値である。より具体的には、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機のHLC−8121GPC−HT(商品名)を使用して測定した値である。GPCカラムとして、東ソー株式会社製の3本のTSKgel GMHHR−H(20)HTを連結して使用する。カラム温度を140℃に設定して、溶離液としてトリクロロベンゼンを1.0ml/10分の流速で流して、MwとMnの測定値を得る。東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いてその分子量Mに関する検量線を作成して、測定値をポリスチレン値に換算して、Mw、Mn及びMzを得る。ここで、標準ポリスチレンの分子量Mの底10の対数を、対数分子量(「Log(M)」)という。
前記ポリプロピレン樹脂は、分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(以下、「微分分布値差D」ともいう)が、−5%以上14%以下であることが好ましく、−4%以上12%以下であることがより好ましく、−4%以上10%以下であることがさらに好ましい。
なお、「対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(微分分布値差D)が、−5%以上14%以下である」とは、前記ポリプロピレン樹脂の有するMwの値より、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としての対数分子量Log(M)=4.5の成分と、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としてのLog(M)=6.0前後の成分とを比較したときに、差分が正の場合は低分子量成分の方が多く、差分が負の場合は高分子量成分の方が多いと理解できる。
つまり、分子量分布Mw/Mnが5〜12であるといっても単に分子量分布幅の広さを表しているに過ぎず、その中の高分子量成分、低分子量成分の量的な関係までは分からない。そこで、安定製膜性と原反シートの厚み均一性の観点から、前記ポリプロピレン樹脂は、広い分子量分布を有すると同時に、低分子量成分を適度に含むようにするために分子量1万から10万の成分を、分子量100万の成分と比較して、微分分布値差が−5%以上14%以下となるようにポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
前記微分分布値は、GPCを用いて、次のようにして得た値である。GPCの示差屈折(RI)検出計によって得られる、時間に対する強度を示す曲線(一般には、「溶出曲線」ともいう)を使用する。標準ポリスチレンを用いて得た検量線を使用して、時間軸を対数分子量(Log(M))に変換することで、溶出曲線をLog(M)に対する強度を示す曲線に変換する。RI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、強度を示す曲線の全面積を100%とすると、対数分子量Log(M)に対する積分分布曲線を得ることができる。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによって得る。したがって、「微分分布」とは、濃度分率の分子量に対する微分分布を意味する。この曲線から、特定のLog(M)のときの微分分布値を読みとる。
前記ポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)は、96.0%以上であることが好ましく、より好ましくは97.0%以上である。また、前記ポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)は、99.5%以下であることが好ましく、より好ましくは99.0%以下である。ここで、ヘプタン不溶分は、多いほど樹脂の立体規則性が高いことを示す。前記ヘプタン不溶分(HI)が、96.0%以上99.5%以下であると、キャスト原反シート成形の際の固化(結晶化)の速度が適度となり、適度の延伸性を有する。ヘプタン不溶分(HI)の測定方法は、実施例記載の方法による。
前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1.0〜8.0g/10minであることが好ましく、1.5〜7.0g/10minであることがより好ましく、2.0〜6.0g/10minであることがさらに好ましい。前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートの測定方法は、実施例記載の方法による。
前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種以上である場合、主成分のポリプロピレン樹脂は、前記微分分布値差Dが8.0%以上であり、前記ヘプタン不溶分(HI)が98.5%以下であり、前記メルトフローレート(MFR)が4g/10min以上8g/10min以下であることが好ましい。また、前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種以上である場合、主成分以外のポリプロピレン樹脂は、前記微分分布値差Dが8.0%未満であり、前記ヘプタン不溶分(HI)が98.5%超えであり、前のメルトフローレート(MFR)が1g/10min以上3.9g/10min以下であることが好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂は、一般的に公知の重合方法を用いて製造することができる。前記重合方法としては、例えば、気相重合法、塊状重合法及びスラリー重合法を例示できる。
重合は、1つの重合反応機を用いる単段(一段)重合であってもよく、2つ以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。また、重合は、反応器中に水素又はコモノマーを分子量調整剤として添加して行ってもよい。
重合の際の触媒には、一般的に公知のチーグラー・ナッタ触媒を使用することができ、前記ポリプロピレン樹脂を得ることができる限り特に限定されない。前記触媒は、助触媒成分やドナーを含んでもよい。触媒や重合条件を調整することによって、分子量、分子量分布、立体規則性等を制御することができる。
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布等は、樹脂混合(ブレンド)により調整することができる。例えば、互いに分子量や分子量分布の異なるもの2種類以上の樹脂を混合する方法が挙げられる。一般的には、主樹脂に、それより平均分子量が高い樹脂、又は、低い樹脂を、樹脂全体を100質量%とすると、主樹脂が55質量%以上90質量%以下である2種のポリプロピレン混合系が、低分子量成分量の調整が行い易いため、好ましい。
なお、前記の混合調整方法を採用する場合、平均分子量の目安として、メルトフローレート(MFR)を用いても構わない。この場合、主樹脂と添加樹脂のMFRの差は、1〜30g/10分程度としておくのが、調整の際の利便性の観点から好ましい。
樹脂混合する方法としては、特に制限はないが、主樹脂と添加樹脂の重合粉、又は、ペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、主樹脂と添加樹脂の重合粉、又は、ペレットを、混練機に供給し、溶融混練してブレンド樹脂を得る方法が挙げられる。
前記ミキサーや前記混練機は、特に制限されない。前記混練機は、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでもよい。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
溶融混練によるブレンドの場合は、良好な混練物が得られれば、混練温度は特に制限されない。一般的には、200℃から300℃の範囲であり、樹脂の劣化を抑制する観点から、230℃から270℃が好ましい。また、樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズしてもよい。これにより、混合ポリプロピレン原料樹脂ペレットを得ることができる。
ポリプロピレン原料樹脂中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、電気特性を向上させるために可能な限り少ないことが好ましい。総灰分は、ポリプロピレン樹脂を基準(100重量部)として、50ppm以下であることが好ましく、40ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂は、添加剤を含んでいてもよい。「添加剤」とは、一般的に、ポリプロピレン樹脂に使用される添加剤であって、前記係数cが−200以上−50以下となるポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されない。前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤等が挙げられる。前記ポリプロピレン樹脂は、前記添加剤を、前記ポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で含めてもよい。
前記ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂(以下「他の樹脂」ともいう)を含んでもよい。「他の樹脂」とは、一般的に、樹脂とされるポリプロピレン樹脂以外の樹脂であって前記係数cが−200以上−50以下となるポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されない。前記他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(1−メチルペンテン)などのポリプロピレン以外のポリオレフィン;エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などのα−オレフィン同士の共重合体;スチレン−ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン ブロック共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体−ビニル単量体ランダム共重合体等が挙げられる。前記ポリプロピレンフィルムは、前記他の樹脂を、前記ポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない範囲の量で含めてよい。
本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するための「延伸前のキャスト原反シート」は、次のようにして好適に作製することができる。ただし、本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するための「延伸前のキャスト原反シート」は、以下の記載の作製方法に限定されない。
まず、ポリプロピレン樹脂ペレット、ドライ混合されたポリプロピレン樹脂ペレット、又は、予め溶融混練して作製した混合ポリプロピレン樹脂ペレットを押出機に供給して、加熱溶融する。
加熱溶融時の押出機回転数は、5〜40rpmが好ましく、14.5〜30rpmがより好ましく、15〜20rpmがさらに好ましい。また、加熱溶融時の押出機設定温度は、254〜280℃が好ましく、258℃〜280℃がより好ましく、260〜280℃がさらに好ましく、260〜270℃が特に好ましい。また、加熱溶融時の樹脂温度は、251〜277℃が好ましく、255℃〜277℃がより好ましく、257〜277℃がさらに好ましく、257〜267℃が特に好ましい。加熱溶融時の樹脂温度は、押出機に挿入された温度計にて測定される値である。加熱溶融時の押出機設定温度が254℃を著しく下回るか、及び/又は、加熱溶融時の樹脂温度が251℃を著しく下回ると、原反シートの流れ方向厚みむらや幅方向の厚みむらが生じやすいため、延伸時の破断等をすることなく厚さ1〜10μmである薄膜ポリプロピレンフィルムを良好に得る、ということが困難となる。
加熱溶融時の押出機回転数、押出機設定温度、樹脂温度を前記数値範囲内において適宜選択することにより、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得ることができる。なお、加熱溶融時の押出機回転数、押出機設定温度、樹脂温度は、使用するポリプロピレン樹脂の物性も考慮して選択する。なお、加熱溶融時の樹脂温度を前記数値範囲内にすることにより、樹脂の劣化を抑制することもできる。前記押出機回転数を大きくすると前記係数cが小さくなる傾向となり、前記押出機回転数を小さくすると前記係数cが大きくなる傾向となる。また、前記加熱溶融時の樹脂温度を大きくすると前記係数cが小さくなる傾向となり、前記加熱溶融時の樹脂温度を小さくすると前記係数cが大きくなる傾向となる。
次に、Tダイを用いて溶融樹脂をシート状に押し出し、少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることで、未延伸のキャスト原反シートを成形する。ここで、Tダイのリップギャップは、幅方向に一定の間隔で配置された複数本のリップボルトにより調整する。具体的には、例えば、キャスト原反シートの製品となる部分(両サイドの製品とせずに切り捨てる部分を除いた部分)に対応する位置のリップギャップが均一となるように各リップボルトを調整する方法が挙げられる。また、幅方向で中央に向かうほど、リップギャップが広く、又は、狭くなるように、各リップボルトを調整する方法が挙げられる。前記リップボルトの調整は、使用するポリプロピレン樹脂の物性等に応じて決定することができる。
リップギャップは、0.8mm未満が好ましく、0.75mm以下がより好ましく、0.70mm以下がさらに好ましい。また、リップギャップは、0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。キャスト原反シートの厚みは、押出機回転数とリップギャップで設定することができ、リップギャップを上記数値範囲内とすれば、キャスト原反シート厚みを、均一な厚みとしやすい。なお、ここでのリップギャップの値は、各リップボルト位置でのギャップの平均値をいう。リップギャップが0.8mmを著しく上回ると、延伸製膜時に破断するおそれがある。前記リップギャップを大きくすると前記係数cが大きくなる傾向となり、前記リップギャップを小さくすると前記係数cが小さくなる傾向となる。
また、前記金属ドラムの表面温度(押し出し後、最初に接触する金属ドラムの温度)は、50〜100℃であることが好ましく、より好ましくは、60〜100℃であり、さらに好ましくは60〜80℃である。前記金属ドラムの表面温度は、使用するポリプロピレン樹脂の物性等に応じて決定することができる。金属ドラムの表面温度が50℃を著しく下回ると、原反シートの良好なシート成形性が得られにくいため、延伸製膜時に延伸むらや破断をすることなく厚さ1〜10μmである薄膜ポリプロピレンフィルムを良好に得る、ということが困難となる。各リップボルトを適宜調整したり、前記金属ドラムの表面温度を適宜設定することにより、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得ることができる。
前記キャスト原反シートのメルトフローレート(MFR)は、1.0〜9.0g/10minであることが好ましく、2.0〜8.0g/10minであることがより好ましく、3.0〜7.0g/10minであることがさらに好ましい。前記ポリプロピレンフィルムのメルトフローレートの測定方法は、実施例記載の方法による。
下記式(2)に示す、前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートと、前記キャスト原反シートのメルトフローレートとの変化率は、1.3以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
(変化率)=(原反シートのメルトフローレート)/(ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート) 式(2)
前記変化率が、1.3以下であると、樹脂劣化しにくく溶融安定性に優れ、成形物の厚み変動を抑制するため、押出成形性が良好になると推察している。なお、下限値としては、0以上、0.01以上、0.1以上等である。
前記キャスト原反シートの流れ方向の一定長さごとの厚みばらつきUMDは、好ましくは1.6μm以下であり、より好ましくは1.5μm以下である。また、前記UMDは、小さいほど好ましいが、例えば0.01μm以上である。
前記UMDは、以下の(1a)〜(4a)の手順により得られる値である。
(1a)幅180mm、流れ方向8020mmのキャスト原反シートのサンプルを作成する。
(2a)前記サンプルの幅方向の中心位置(両末端から90mmの位置)を、流れ方向に2mmピッチで、4001点の厚みを測定する。測定は、流れ方向で端部から10mmの位置から開始する。
(3a)測定開始位置から0mm〜2000mmの地点の合計1001点の厚みの平均値A1と、2000mm〜4000mmの地点の合計1001点の厚みの平均値A2と、4000mm〜6000mmの地点の合計1001点の厚みの平均値A3と、6000mm〜8000mmの地点の合計1001点の厚みの平均値A4とを求める。
(4a)前記平均値A1、前記平均値A2、前記平均値A3、及び、前記平均値A4の標準偏差を求め、これをUMDとする。
より詳細には、実施例に記載の方法による。
前記UMDの最大偏差は、好ましくは7.0μm以下であり、より好ましくは6.0μm以下である。また、前記UMDの最大偏差は、小さいほど好ましいが、例えば0.01μm以上である。
前記UMDの最大偏差は、以下の(1b)〜(2b)の手順により得られる値である。
(1b)前記平均値A1、前記平均値A2、前記平均値A3、及び、前記平均値A4の平均値Bを求める。
(2b)前記平均値Bと全測定点のそれぞれの厚みとの差のうち、差の絶対値が最も大きいものをUMDの最大偏差とする。
より詳細には、実施例に記載の方法による。
前記キャスト原反シートの流れ方向一定間隔ごとの幅方向の厚みばらつきUTDは、好ましくは1.2μm以下であり、より好ましくは1.0μm以下である。また、前記UTDは、小さいほど好ましいが、小さいほど好ましいが、例えば0.01μm以上である。
前記UTDは、以下の(1c)〜(4c)の手順により得られる値である。
(1c)上記(1a)のサンプルを準備する。
(2c)流れ方向で0mm、2000mm、4000mm、6000mm、及び、8000mmの位置において、幅方向に1mmピッチで、181点の厚みを測定する。なお、(2c)における「流れ方向で0mm、2000mm、4000mm、6000mm、及び、8000mmの位置」とは、上記(2a)の測定開始位置(流れ方向で端部から10mmの位置)を基準(0mm)の位置とした位置である。
(3c)流れ方向で0mmの位置における合計181点の厚みの平均値C1と、流れ方向で2000mmの位置における合計181点の厚みの平均値C2と、流れ方向で4000mmの位置における合計181点の厚みの平均値C3と、流れ方向で6000mmの位置における合計181点の厚みの平均値C4と、流れ方向で8000mmの位置における合計181点の厚みの平均値C5とを求める。
(4c)前記平均値C1、前記平均値C2、前記平均値C3、前記平均値C4、及び、前記平均値C5の標準偏差を求め、これをUTDとする。
より詳細には、実施例に記載の方法による。
前記キャスト原反シートの連続製膜時の厚み変動パラメータUTOTALは、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは0.9μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下である。また、前記UTOTALは、小さいほど好ましいが、例えば0.01μm以上である。前記UTOTALは、下記式により得られる値である。
TOTAL=UMD×UTD
前記UMD、前記UTD、及び、前記UTOTALの少なくとも1つ、好ましくは、すべてが前記数値範囲を満たすと、前記キャスト原反シートの全体の厚みムラは少ないといえる。その結果、延伸時の破断を抑制し、さらに延伸後のポリプロピレンフィルムの厚みムラも抑制することができる。
なお、前記UMD、前記UMDの最大偏差、前記UTD、及び、前記UTOTALの好ましい数値範囲は、研究用小型延伸装置を用いて作製したキャスト原反シートの好ましい数値範囲である。
生産設備を用いて作製したキャスト原反シートの好ましい数値範囲は以下の通りである。
前記UMDは、好ましくは0.10μm以下であり、より好ましくは0.08μm以下である。また、前記UMDは、小さいほど好ましいが、例えば0.01μm以上である。
前記UMDの最大偏差は、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以下である。また、前記UMDの最大偏差は、小さいほど好ましいが、例えば0.01μm以上である。
前記UTDは、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以下である。また、前記UTDは、小さいほど好ましいが、小さいほど好ましいが、例えば0.01μm以上である。
変動パラメータUTOTALは、好ましくは0.05μm以下であり、より好ましくは0.03μm以下である。また、前記UTOTALは、小さいほど好ましいが、例えば0.01μm以上である。
研究用小型延伸装置と生産設備とで、好ましい数値範囲が異なるのは、生産設備の方が厚みムラが少なくなるためである。
前記キャスト原反シートの厚さは、前記ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはないが、通常、0.05mm〜2mmであることが好ましく、0.1mm〜1mmであることがより好ましい。
本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、次のようにして好適に作製することができる。ただし、本実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、以下の記載の作製方法に限定されない。
前記ポリプロピレンフィルムは、前記ポリプロピレンキャスト原反シートに延伸処理を行って製造することができる。延伸は、縦及び横に二軸に配向せしめる二軸延伸が好ましく、延伸方法としては逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法としては、例えば、まず、キャスト原反シートを好ましくは110〜170℃、より好ましくは135℃〜170℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に延伸する。流れ方向の延伸倍率は3.5〜5.5倍が好ましく、4.2〜5.4倍がより好ましい。引き続き、当該シートをテンターに導いて、横方向に延伸する。横方向の延伸時の温度は150℃〜165℃が好ましく、横方向の延伸倍率は9〜11倍が好ましい。その後、2〜10倍に緩和、熱固定を施す。以上により、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる。前記流れ方向の延伸倍率、横方向の延伸倍率、緩和後の倍率を適宜設定することにより、前記係数cが−200以上−50以下であるポリプロピレンフィルムを得ることができる。
前記ポリプロピレンフィルムには、金属蒸着加工工程などの後工程において、接着特性を高める目的で、延伸及び熱固定工程終了後に、オンライン又はオフラインにてコロナ放電処理を行ってもよい。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとして空気、炭酸ガス、窒素ガス、又は、これらの混合ガスを用いて行うことが好ましい。
コンデンサーとして加工するために、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層し、金属層一体型ポリプロピレンフィルムとしてもよい。前記金属層は、電極として機能する。前記金属層に用いられる金属としては、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、それらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサー性能などを考慮すると、亜鉛、アルミニウムが好ましい。
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層する方法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を例示することができる。生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。
蒸着により金属層を積層する際のマージンパターンも特に限定されるものではないが、コンデンサーの保安性等の特性を向上させる点から、フィッシュネットパターンないしはTマージンパターンといった、いわゆる特殊マージンを含むパターンをフィルムの片方の面上に施すことが好ましい。保安性が高まり、コンデンサーの破壊、ショートの防止、などの点からも効果的である。
マージンを形成する方法はテープ法、オイル法など、一般に公知の方法が、何ら制限無く使用することができる。
本実施形態のフィルムコンデンサは、金属層一体型ポリプロピレンフィルムが複数積層された構成を有していてもよいし、巻回された金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有していてもよい。このようなフィルムコンデンサは、電気自動車やハイブリッド自動車などの駆動モーターを制御するインバーター電源機器用コンデンサなどに好適に使用できる。このほか、鉄道車両用、風力発電用、太陽光発電用、一般家電用などにおいても好適に使用できる。
前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、従来公知の方法で積層するか、巻回してフィルムコンデンサとすることができる。
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔ポリプロピレン樹脂〕
実施例及び比較例のポリプロピレンフィルムを製造するために使用したポリプロピレン樹脂を、表1に示す。
表1に示すポリプロピレン樹脂Aは、大韓油化社製のS802Mであり、ポリプロピレン樹脂Dは、HPT−1である。ポリプロピレン樹脂Bは、ボレアリス社製のHC300BFであり、ポリプロピレン樹脂Fは、HC318BFであり、ポリプロピレン樹脂Hは、WB135HMSである。ポリプロピレン樹脂C、ポリプロピレン樹脂E、及び、ポリプロピレン樹脂Gは、プライムポリマー株式会社製の製品である。表1に示す樹脂A〜H(ポリプロピレン樹脂A〜H)は、プライムポリマー社、大韓油化社、ボレアリス社のいずれかから購入したものである。
表1に、ポリプロピレン樹脂A〜Hの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、及び、分子量分布(Mz/Mn)を示した。これらの値は、原料樹脂ペレットの形態での値である。測定方法は以下の通りである。
<ポリプロピレン樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、及び、分子量分布(Mz/Mn)の測定>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で、ポリプロピレン樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)、分布曲線の微分分布値を測定した。
東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC装置であるHLC−8121GPC-HT型を使用した。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結して使用した。140℃のカラム温度で、溶離液として、トリクロロベンゼンを、1.0ml/minの流速で流して測定した。検量線を、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いて作製し、測定された分子量の値をポリスチレンの値に換算して、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び、z平均分子量(Mz)を得た。このMwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。また、このMzとMnの値を用いて分子量分布(Mz/Mn)を得た。
Figure 2019167513
<対数分子量log(M)=4.5のときの微分分布値、対数分子量log(M)=6.0のときの微分分布値、及び、分子量微分分布値差の測定>
また、樹脂A〜Fについて、対数分子量log(M)=4.5のときの微分分布値、対数分子量log(M)=6.0のときの微分分布値を、次のような方法で得た。まず、RI検出計を用いて検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、上記標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて標準ポリスチレンの分子量M(Log(M))に対する分布曲線に変換した。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(M)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによってLog(M)に対する微分分布曲線を得た。この微分分布曲線から、Log(M)=4.5およびLog(M)=6.0のときの微分分布値を読んだ。また、Log(M)=4.5のときの微分分布値とLog(M)=6.0のときの微分分布値との差を分子量微分分布値差とした。なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、使用したGPC測定装置に内蔵されている解析ソフトウェアを用いて行った。その結果、対数分子量log(M)=4.5のときの微分分布値は、樹脂Aでは、27.4%、樹脂Bでは、31.5%、樹脂Cでは、30.0%、樹脂Dでは、31.4%、樹脂Eでは、33.6%、樹脂Fでは、30.3%であった。また、対数分子量log(M)=6.0のときの微分分布値は、樹脂Aでは、30.8%、樹脂Bでは、26.5%、樹脂Cでは、21.2%、樹脂Dでは、27.6%、樹脂Eでは、24.4%、樹脂Fでは、27.0%であった。また、分子量微分分布値差(D)は、樹脂Aでは、−3.4%、樹脂Bでは、5.0%、樹脂Cでは、8.8%、樹脂Dでは、3.8%、樹脂Eでは、9.2%、樹脂Fでは、3.3%であった。
<ヘプタン不溶分(HI)の測定>
樹脂A〜Gについて、10mm×35mm×0.3mmにプレス成形して約3gの測定用サンプルを作製した。次に、ヘプタン約150mLを加えてソックスレー抽出を8時間行った。抽出前後の試料質量よりヘプタン不溶分を算出した。その結果、樹脂Aでは、98.8%、樹脂Bでは、98.5%、樹脂Cでは、97.8%、樹脂Dでは、98.6%、樹脂Eでは、97.3%、樹脂Fでは、97.2%、樹脂Gでは、97.5%であった。
上述のポリプロピレン樹脂を用いて、実施例、及び、比較例のポリプロピレンフィルムを作製し、その物性を評価した。
<研究用小型延伸装置によるポリプロピレンフィルムの作製>
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂Cのペレットを押出機に供給し、押出機回転数を15rpm、押出機設定温度を260℃に設定し、樹脂温度257℃で溶融した。次に、幅方向に等間隔で配置された12本のリップボルトの調整によってリップギャップを幅方向均一に0.70mmにした幅300mmのTダイを用いて溶融樹脂をシート状に押し出し、表面温度を70℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させた。この際、エアナイフにより金属ドラム上にポリプロピレン樹脂を吹き付けた。このようにして厚さ200μmのキャスト原反シートを得た。なお、リップギャップの調整は、キャスト原反シートの製品となる部分(両サイドの製品とせずに切り捨てる部分を除いた部分)に対応する位置のリップギャップを調整して、幅方向均一に0.70mmにした。このシートを:Brueckner社製バッチ式二軸延伸機KARO IV(研究用小型延伸装置)を用いて、165℃で流れ方向に4.6倍に延伸し、次いで横方向に10倍に延伸し、その後クリップで把持したまま横方向の倍率9倍に緩和を施して、厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(実施例2)
ポリプロピレン樹脂Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(実施例4)
ポリプロピレン樹脂Dとポリプロピレン樹脂Eとをドライブレンドした。混合比率は、質量比で(ポリプロピレン樹脂D):(ポリプロピレン樹脂E)=40:60とした。その後、ドライブレンドした樹脂を用い、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。ただし、押出成形条件(押出機回転数、樹脂温度、リップギャップ)は、表2に示した通りとした。
(実施例5)
ポリプロピレン樹脂Aを用い、押出成形条件(押出機回転数、樹脂温度、リップギャップ)を表2に示した通りとした以外は、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。なお、実施例5における押出機設定温度は265℃とした。
(実施例6)
ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Eとをドライブレンドした。混合比率は、質量比で(ポリプロピレン樹脂A):(ポリプロピレン樹脂E)=35:65とした。その後、ドライブレンドした樹脂を用い、実施例1と同様にして厚さ4μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。ただし、押出成形条件(押出機回転数、樹脂温度、リップギャップ)は、表2に示した通りとした。なお、実施例6における押出機設定温度は265℃とした。
(実施例7)
ポリプロピレン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Cとをドライブレンドした。混合比率は、質量比で(ポリプロピレン樹脂A):(ポリプロピレン樹脂C)=25:75とした。その後、ドライブレンドした樹脂を用い、実施例1と同様にして厚さ4μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。ただし、押出成形条件(押出機回転数、樹脂温度、リップギャップ)は、表2に示した通りとした。なお、実施例7における押出機設定温度は265℃とした。
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂Aを用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂Fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例4)
ポリプロピレン樹脂Gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例5)
ポリプロピレン樹脂Eとポリプロピレン樹脂Hとをドライブレンドした。混合比率は、質量比で(ポリプロピレン樹脂E):(ポリプロピレン樹脂H)=90:10とした。その後、ドライブレンドした樹脂を用い、実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例6)
ポリプロピレン樹脂Eを用い、押出成形条件(押出機回転数、樹脂温度、リップギャップ)を表2に示した通りとした以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ようとしたが、溶融樹脂が変動して原反シートの厚みむらが著しく大きくなり、延伸製膜時に破断が頻発した。なお、比較例6における押出機設定温度は250℃とした。
比較例6については、上述の理由により、後述する粘度パラメータの測定等を行わなかった。
<Carreau−Yasudaモデルにおける各パラメータの決定>
まず、以下の(1)〜(5)の手順により、測定温度230℃、240℃、250℃におけるせん断粘度ηとせん断速度γとの関係(フローカーブ)を得た。なお、測定には、Thermofisher Scientific社製のHAAKE MiniLab Rheomex CTW5(マイクロレオロジーコンパウンダー)を用いた。
(1)実施例、比較例で得たポリプロピレンフィルムを短冊状に切り出して5g秤り取り、全量を試料投入部から投入した。
(2)回転数10rpmで1分間安定化させた後、回転数10rpmから360rpmの間の10点の圧力損失dPを測定し、測定した圧力損失dPから、各回転数のせん断応力τを導出した。なお、測定した10点は、対数表記で均等分割したときの10点である。
(3)回転数10、20、50、100rpmの時に吐出口から排出された各樹脂量Qを測定し、測定した樹脂量Qから、各回転数のせん断速度γを導出し、γと回転数の線形近似式を求めた。得られた近似式から、上記(2)の10点の回転数の時のγを求めた。
(4)上記(1)〜上記(3)で得られた10点のせん断応力τとせん断速度γから、変形Hargen−Poiseulleの式([せん断粘度η]=[せん断応力τ]/[せん断速度γ])を用いてせん断粘度ηを求めた。以上より、せん断粘度ηとせん断速度γとの関係(フローカーブ)を得た。
(5)上記(1)〜(4)の操作を測定温度230℃、240℃、250℃で実施し、各測定温度でのせん断粘度ηとせん断速度γとの関係(フローカーブ)を得た。
次に、解析ソフト(株式会社HASLの解析ソフトMaterialfit Ver.3.0.0)の非ニュートン純粘性モデルフィット機能を用いて、上記(5)で得られたフローカーブ(η-γカーブ)を式(1)に示すCarreau−Yasudaモデル(粘度式)にフィッティングして、マスターカーブを得た。以上により、各パラメータ(ゼロせん断粘度η、係数b、係数c、係数d、遅延時間λ)を得た。なお、基準温度Trは240℃としてフィッティングした。基準温度Trを240℃としたのは、測定温度230℃、240℃、250℃のうちの中間温度を選択したことによる。得られた各モデルパラメータを表2に示す。
<メルトフローレート(MFR)の測定>
実施例、比較例で使用した原料樹脂ペレットの形態でのメルトフローレート(MFR)、及び、実施例、比較例で得た原反シート(二軸延伸前のシート)のメルトフローレート(MFR)を、東洋精機株式会社のメルトインデックサを用いてJIS K 7210の条件Mに準じて測定した。具体的には、まず、試験温度230℃にしたシリンダ内に、4gに秤りとった試料を挿入し、2.16kgの荷重下で3.5分予熱した。その後、30秒間で底穴より押出された試料の重量を測定し、MFR(g/10min)を求めた。上記の測定を3回繰り返し、その平均値をMFRの測定値とした。
また、MFRの変化率を、下記式(2)により求めた。結果を表2に示す。
(変化率)=(原反シートのメルトフローレート)/(ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート) 式(2)
<二軸延伸ポリプロピレンフィルムの融点の測定>
実施例、比較例にて得た二軸延伸ポリプロピレンフィルムの融点を、パーキン・エルマー社製、入力補償型DSC Diamond DSCを用い、以下の手順により得た。まず、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを約5mg秤りとり、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットした。窒素流下、30℃から280℃まで20℃/minの速度で昇温し、その融解曲線を測定した。DSC測定の結果、100℃から190℃の間には少なくとも1つ以上の融解ピークを得ることができ、その最も高温側の融解ピーク曲線のピークトップ(頂点)温度を融点として評価した。
その結果、実施例1では、174.1℃、実施例2では、174.0℃、実施例3では、174.1℃、実施例4では、174.2℃、実施例5では、174.9℃、実施例6では、174.6℃、実施例7では、174.5℃、比較例1では、175.0℃、比較例2では、174.3℃、比較例3では、170.0℃、比較例4では、171.0℃であった。
Figure 2019167513
<厚みむらの評価>
実施例、比較例に係る押出成形後のキャスト原反シート(二軸延伸前)の流れ方向の一定長さごとの厚みばらつきUMD、UMDの最大偏差、流れ方向一定間隔ごとの幅方向の厚みばらつきUTD、及び、連続製膜時の厚み変動パラメータUTOTALは、以下の手順により算出した。
前記UMDは、以下の(1a)〜(4a)の手順により得た。
(1a)まず、実施例、比較例に係るキャスト原反シートを準備した。キャスト原反シートの押出成形条件は、各実施例、各比較例における押出成形条件と同じとした。なお、準備したキャスト原反シートの幅は、実施例、比較例ともに260mmであった。
次に、キャスト原反シートの幅方向の端部0〜40mm位置と220〜260mm位置の部分を切りおとして、幅180mm、流れ方向8020mmのサンプルを採取した。
以上により、幅180mm、流れ方向8020mmのキャスト原反シートのサンプルを作成した。
(2a)前記サンプルの幅方向の中心位置(両末端から90mmの位置)を、流れ方向に2mmピッチで、4001点の厚みを測定した。測定は、流れ方向で端部から10mmの位置から開始した。
(3a)測定開始位置から0mm〜2000mmの地点の合計1001点の厚みの平均値A1と、2000mm〜4000mmの地点の合計1001点の厚みの平均値A2と、4000mm〜6000mmの地点の合計1001点の厚みの平均値A3と、6000mm〜8000mmの地点の合計1001点の厚みの平均値A4とを求めた。
(4a)前記平均値A1、前記平均値A2、前記平均値A3、及び、前記平均値A4の標準偏差を求め、これをUMDとした。
前記UMDの最大偏差は、以下の(1b)〜(2b)の手順により得た。
(1b)前記平均値A1、前記平均値A2、前記平均値A3、及び、前記平均値A4の平均値Bを求めた。
(2b)前記平均値Bと全測定点のそれぞれの厚みとの差のうち、差の絶対値が最も大きいものをUMDの最大偏差とした。
前記キャスト原反シートの流れ方向一定間隔ごとの幅方向の厚みばらつきUTDは、以下の(1c)〜(4c)の手順により得た。
(1c)上記(1a)のサンプルを準備した。
(2c)流れ方向で0mm、2000mm、4000mm、6000mm、及び、8000mmの位置において、幅方向に1mmピッチで、181点の厚みを測定した。なお、(2c)における「流れ方向で0mm、2000mm、4000mm、6000mm、及び、8000mmの位置」とは、上記(2a)の測定開始位置(流れ方向で端部から10mmの位置)を基準(0mm)の位置とした位置である。
(3c)流れ方向で0mmの位置における合計181点の厚みの平均値C1と、流れ方向で2000mmの位置における合計181点の厚みの平均値C2と、流れ方向で4000mmの位置における合計181点の厚みの平均値C3と、流れ方向で6000mmの位置における合計181点の厚みの平均値C4と、流れ方向で8000mmの位置における合計181点の厚みの平均値C5とを求めた。
(4c)前記平均値C1、前記平均値C2、前記平均値C3、前記平均値C4、及び、前記平均値C5の標準偏差を求め、これをUTDとした。
前記キャスト原反シートの連続製膜時の厚み変動パラメータUTOTALは、下記式により得た。
TOTAL=UMD×UTD
結果を表3に示す。
<延伸時の破断評価>
キャスト原反シートの二軸延伸を3回実施し、次の基準で評価した。二軸延伸の条件は、各実施例、各比較例における二軸延伸時の条件と同じとした。結果を表3に示す。
A:延伸時に一度も破れが生じなかった。
B:延伸時にクリップ近辺に1cm角程度の小さな破れが生じる場合があった。
C:全幅的に破れが生じ製膜できなかった。
実施例のように破れがない場合、安定製膜性が高い。
<押出成形時の端部流動性評価>
押出成形後のキャスト原反シートの最端部にある耳の幅長を測定して、両端の平均値を耳幅として算出した。耳幅が5mm以下の場合を〇、5mmを超える場合を×として評価した。結果を表3に示す。なお、最端部とは、幅方向位置0〜4%と96%〜100%の部分をいう。実施例、比較例においては、端から0〜10.4mmと249.6〜260mmの部分をいう。また、「耳」とは、幅方向中央位置の厚さよりも150%以上厚い部分をいう。
耳幅は押出成形時の樹脂の流動性を示しており、耳幅が広いと流動性が低いといえる。流動性が低いと、キャスト原反シートの厚みむらが大きくなり、二軸延伸時の製膜性が不安定になる。また、樹脂の流動性が低いと製品端部の厚みが厚くなり、製品とすることが出来ず歩留りも低下する。
Figure 2019167513
<生産設備によるポリプロピレンフィルムの作製>
(実施例8)
研究用小型延伸装置の代わりに生産設備を用いたこと以外は、実施例4と同様にして厚さ2.0μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例7)
研究用小型延伸装置の代わりに生産設備を用いたこと以外は、比較例1と同様にして厚さ2.0μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<Carreau−Yasudaモデルにおける各パラメータの決定>
実施例1〜7、及び、比較例1〜5と同様にして、実施例8、及び、比較例7について、Carreau−Yasudaモデルにおける各パラメータを決定した。結果を表4に示す。
<メルトフローレート(MFR)の測定>
実施例1〜7、及び、比較例1〜5と同様にして、実施例8、及び、比較例7について、メルトフローレート(MFR)の測定を行った。結果を表4に示す。
<二軸延伸ポリプロピレンフィルムの融点の測定>
実施例1〜7、及び、比較例1〜5と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの融点の測定を測定したところ、実施例8は、172.0℃、比較例7は、172.5℃であった。
Figure 2019167513
<厚みむらの評価>
実施例1〜7、及び、比較例1〜5と同様にして、実施例8、比較例7に係る押出成形後のキャスト原反シート(二軸延伸前)の流れ方向の一定長さごとの厚みばらつきUMD、UMDの最大偏差、流れ方向一定間隔ごとの幅方向の厚みばらつきUTD、及び、連続製膜時の厚み変動パラメータUTOTALを得た。結果を表5に示す。
<延伸時の破断評価>
実施例8、比較例7について、キャスト原反シートの二軸延伸を1回実施し、次の基準で評価した。なお、キャスト原反シートは、連続的に押出成形されてくるものを用いた。二軸延伸の条件は、実施例8、比較例7における二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製する際の二軸延伸時の条件と同じとした。結果を表5に示す。
A:延伸時に、75000m以上破れが生じなかった。
B:延伸時に、30000mまでは破れが生じなかったが、30000m以上75000m未満の箇所に破れが生じた。
C:延伸時に、30000m未満の箇所に破れが生じた。
<押出成形時の端部流動性評価>
実施例1〜7、及び、比較例1〜5と同様にして、実施例8、及び、比較例7について、押出成形時の端部流動性を評価した。結果を表5に示す。
Figure 2019167513

Claims (7)

  1. 溶融せん断粘度、及び、せん断速度に関する測定結果を式(1)に示すCarreau−Yasudaモデルに適用した際に決定される、せん断速度とせん断粘度との傾きを表す係数cが、−200以上−50以下であり、厚さが1〜10μmであることを特徴とするポリプロピレンフィルム。
    Figure 2019167513
  2. ポリプロピレン樹脂を材料とし、前記ポリプロピレン樹脂を溶融押し出しして原反シートとし、その後、二軸延伸したフィルムであり、
    下記式(2)に示す、前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートと、前記原反シートのメルトフローレートとの変化率が、1.3以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
    (変化率)=(原反シートのメルトフローレート)/(ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート) 式(2)
  3. コンデンサー用であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルム。
  4. ポリプロピレン樹脂を含有し、
    前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の数平均分子量Mnが、30000以上53000以下であり、
    前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが、25万以上45万以下であり、
    前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂のz平均分子量Mzが、50万以上210万以下であり、
    前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]が、5以上12以下であり、
    前記ポリプロピレン樹脂のうち、主成分のポリプロピレン樹脂の分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]が、10以上70以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のポリプロピレンフィルム。
  5. 前記主成分のポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)が、96.0%以上99.5%以下であり、
    前記主成分のポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が、1.0g/10min以上8.0g/10min以下であることを特徴とする請求項4に記載のポリプロピレンフィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1に記載のポリプロピレンフィルムと、
    前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有することを特徴とする金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
  7. 巻回された請求項6に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有することを特徴とするフィルムコンデンサ。
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