以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係るシール除去装置1は、後で詳述するように図1〜図3に示す構成を有している。このシール除去装置1は、例えば、図4に示すオイルシール構造を有する車両50の軸封シール54を除去するために用いられるものである。ここでまず、軸封シール54の除去対象である車両50について説明する。
この車両50は、図4に示すように、ハウジング51と、ハウジング51と一体に設けられ、軸穴部52aを有する突出軸52と、突出軸52の軸穴部52aを貫通する回転軸53と、回転軸53が貫通された状態で軸穴部52aに嵌着され、軸穴部52aと回転軸53との間に満たされたオイルをシールする軸封シール54と、を備えている。
軸封シール54は、回転軸53の外径より小さい内径を有する環状部材である内側パッキン54aと、内側パッキン54aよりも大きな内径を有する環状部材である外環54bとを周方向に重なるように組み合わせて構成されている。外環54bの内部所要位置には、例えば、一般冷間圧延鋼板(SPCC)等からなる金属製の内環54cが埋め込まれている。また、内環54cの外環54bからはみ出した部分が内側パッキン54aの一部領域に埋入した状態となっている。内側パッキン54aには、その外周を取り囲むように例えば金属環からなるスプリング54dが組み込まれている。スプリング54dは、内側パッキン54aの内周側を回転軸53側に押し付け、オイルシール状態を確保可能に軸穴部52aへ嵌着ならしめるものである。
図4に示す構造を有し、且つ、回転軸53が貫通した状態で軸穴部52aに嵌着される軸封シール54は、内側にあっては、内側パッキン54aの内周側が回転軸53の外周側に密着する一方、外側にあっては、外環54bの外周側が軸穴部52aの内周側に密着する。これにより、軸封シール54は、図4における軸封シール54の左側面側で、軸穴部52aと回転軸53との間に満たされるオイルをシールしている。
次に、本実施形態に係るシール除去装置1の構成について、図1〜図3を参照して説明する。
本実施形態に係るシール除去装置1は、図1に示すように、装置本体10と、装置本体10に対して着脱(離脱)可能な第1の補助部材20及び第2の補助部材30と、を備えている。装置本体10は、例えば、S45C〜S55C等の炭素鋼性の鋼管により構成される。第1の補助部材20及び第2の補助部材30は、例えば、S45C−D〜S55C−D等の炭素鋼製のものである。
装置本体10は、回転軸53の外形より若干大きい内径を有し(図9、図10参照)、回転軸53をその軸方向に摺動可能に収容する空間11が形成された円筒体形状の部材によって構成される。
装置本体10は、一端10aが閉塞されるとともに、他端10bが開口されて開口部13を形成している。装置本体10の開口部13と対向する上記一端10aの側面中央部には、当該側面を貫通して空間11に達する孔部12が形成されている。他方、装置本体10の開口部13は、軸封シール54の除去作業(図5〜図8参照)において、回転軸53をその先端部分から空間11内に導入する導入口(入り口)としての機能を果たす。
装置本体10は、軸封シール54の除去作業(図5〜図8参照)に際して作業者が把持可能な円筒体形状をなし、軸穴部52aに挿入されるグリップ部14と、グリップ部14と一体に形成された略円筒状の噛み込み部15と、を備えている。
グリップ部14は、装置本体10の一端10a側から中心軸C1(図3参照)方向に所定の長さで形成されている。グリップ部14は、例えば、その表面一体に網目状の浅い溝などを形成する滑り止め加工がなされていてもよい。
噛み込み部15は、グリップ部14における装置本体10の一端10a側の端部から他端10bにかけて順に連なって配列された非テーパー部16a及びテーパー部16bを有している。
非テーパー部16aは、均一な外径を有しており、テーパー部16bは、装置本体10の他端10b側に向かうにしたがって漸次縮径するテーパー形状を有している。
非テーパー部16a及びテーパー部16bには、両者の外周に連なるねじ山部分17が設けられる。また、非テーパー部16aの外周及びテーパー部16bの外周には、装置本体10の中心軸C1方向にねじ山部分17を横断する切欠き溝18a、18b、18c、18dが形成されている。
このように、装置本体10において、噛み込み部15は、軸穴部52aの内周壁面に向って突出するねじ山部分17と、ねじ山部分17と交差する縦方向の切欠き溝18a、18b、18c、18dに沿って形成された複数のねじ切り刃部分19と、を有する。複数のねじ切り刃部分19は、図1及び図2(a)に示すように、切欠き溝18a、18b、18c、18dにそれぞれ対応する各一対のねじ切り刃部分19aと19b、19cと19d、19eと19f、19gと19hと、を有している。そして、噛み込み部15のねじ山部分17は、上述したテーパー部16bを構成し、グリップ部14から離隔する先端側になるに従って漸次縮径する外面テーパー形状を有している。
本実施形態では、図2(a)に明示されているように、切欠き溝18a、18b、18c、18dは、断面U字形状を有し、周方向に互いに90度ずつ離間した配置となっている。なお、切欠き溝18a、18b、18c、18dの溝形状は、断面U字形状に限らず、様々な溝形状としてもよい。また、4つの切欠き溝18a、18b、18c、18dを設ける構成は好ましい形態ではあるが、本実施形態は、これに限らず、少なくとも2つ以上の切欠き溝18が形成されていればよい。
また、上述した噛み込み部15の構成のうち、ねじ山部分17の外面テーパー形状については、そのテーパー角度が適宜な値に設定されている。ここで例えば、図3において、噛み込み部15のテーパー部16bにおけるねじ山部分17における隣接するねじ山の頂点部分を装置本体10の中心軸C1方向に結ぶ線分(一点鎖線で示す線分)と、該中心軸C1とのなす角度を噛み込み部15のテーパー角度と規定するものとする。
本実施形態において、噛み込み部15のテーパー部16bを構成する部分のテーパー角度が、20度から40度の範囲内であることが望ましい。好ましいテーパー角度は、例えば、30度である。本実施形態に係るシール除去装置1においては、噛み込み部15のテーパー角度が30度であることを前提としている。
上述した構成を有する装置本体10は、他端10b側から見ると図2(a)に示す形状を有している。図2(a)に示すように、装置本体10において、噛み込み部15は、4つの切欠き溝18a、18b、18c、18dのそれぞれに対応する各一対のねじ切り刃部分19aと19b、19cと19d、19eと19f、19gと19hを有している。これらねじ切り刃部分19a、19b、19c、19d、19e、19f、19g、19hは、装置本体10の中心軸C1方向に延びて形成されており、後述する軸封シール54の除去作業に際し、装置本体10を軸穴部52a内に押し込む場合(例えば、図9参照)に、軸封シール54の内周面部にテーパー部16bを差し込み易くする作用を果たす。
また、噛み込み部15は外周一体にねじ山部分17が形成されており、このようなねじ山部分17の構造によれば、装置本体10を軸穴部52a内に押し込んだ後に装置本体10を回転させることにより、特に、テーパー部16bにおけるねじ山部分17を軸封シール54の内周面部に対して噛み込ませ易くする作用をもたらす。なお、本実施形態では、軸封シール54は軸穴部52aへの嵌着用のスプリング54dを有しており、噛み込み部15のねじ山部分17はスプリング54dの内周部にねじ切り状態で噛み込み可能な構成となっている。
また、装置本体10は、一端10a側から見ると図2(b)に示す形状を有している。装置本体10において、開口部13と対向する面、すなわち、装置本体10(グリップ部14)の一端10a側の端面に設けられた孔部12には、第1の補助部材20及び第2の補助部材30を装着するための雌ねじ山が形成されている。
ここで、第1の補助部材20及び第2の補助部材30の構成について説明する。図1に示すように、第1の補助部材20は、円柱状の第1の補助部材本体部21と、第1の補助部材本体部21の一端側に設けられ、装置本体10の孔部12に形成された雌ねじ山に回転挿入可能な雄ねじ山が形成されたボルト形状の突起部22と、第1の補助部材本体部21の他端側に設けられ、放射外方に突出する棒状の操作部23と、を備えている。これにより、第1の補助部材20は、装置本体10の孔部12の雌ねじ山に対して第1の補助部材本体部21の突起部22の雄ねじ山をねじ込み方向にねじ込むことにより、例えば、図5に示す態様で装置本体10(グリップ部14の一端10a側の端面)に装着することができる。
また、第2の補助部材30は、図1に示すように、装置本体10の孔部12に形成された雌ねじ山に回転挿入可能で雄ねじ山が形成されたボルト形状の第2の補助部材本体部31と、第2の補助部材本体部31の他端側に設けられ、第2の補助部材本体部31を雄ねじ山が回転挿入可能に回転用工具に嵌合する嵌合頭部32と、を備えている。本実施形態において、嵌合頭部32は例えば上面から見て六角形の形状を成す部材であり、第2の補助部材本体部31と一体化された構造を有している。これにより、第2の補助部材30は、装置本体10の孔部12に対して第2の補助部材本体部31の雄ねじ山をねじ込み方向にねじ込むことにより、上述した第1の補助部材20(図5参照)に替えて、例えば、図7(b)に示す態様で装置本体10に装着することができる。
次に、本実施形態に係るシール除去装置1を用いたシール除去方法について、図5〜図10を参照して説明する。
図4に示す車両50における軸封シール54を除去するシール除去工程においては、まず初めに、シール除去装置1を構成する装置本体10、第1の補助部材20及び第2の補助部材30(図1参照)を準備する。これら各部材は、例えば、シール除去工具セット等としてケースに収納されて提供される。
装置本体10、第1の補助部材20及び第2の補助部材30を準備する工程の完了後、本実施形態に係るシール除去工程は、装置本体10に第1の補助部材20を装着する工程へと進む。
この工程において、作業者は、図5に示すように、第1の補助部材20の第1の補助部材本体部21の突起部22の先端部を装置本体10の一端10a、すなわち、グリップ部14の噛み込み部15から離隔する基端側の孔部12にねじ込み可能なように位置合わせを行う。引き続き、作業者は、操作部23を図5の矢印方向に回転させて突起部22を孔部12にねじ込ませることでグリップ部14の基端側に第1の補助部材20を装着する。
次に、本実施形態に係るシール除去工程は、第1の補助部材20が装着されたグリップ部14を、噛み込み部15が軸封シール54の内周部に噛み込んだ状態となるようグリップ部14の内方に収容された回転軸53に対して回転させながら押し込んで軸穴部52aに挿入する工程(図6参照)へと進む。
この工程において、作業者は、まず、図6(a)に示すように、第1の補助部材20を装着した装置本体10の開口部13に回転軸53の端面部53aが入るように位置合わせを行った後、第1の補助部材20の操作部23を操作し、装置本体10を周方向に回しながら前方に徐々に押し込んでいく。これにより、装置本体10は、空間11内に回転軸53が収容された状態で徐々に軸穴部52aの奥側に入り込んでいき、その過程で、噛み込み部15のねじ山部分17(テーパー部16b)が軸封シール54の内周面部に当接する。
引き続き、作業者は、例えば、図6(b)に示すように、第1の補助部材20の操作部23を操作しながら、装置本体10を図示する方向に回転させ且つ前方に押し込む作業を続行する。この作業を続行することで、軸封シール54の内周面部、より具体的にはスプリング54dの内周部に対して噛み込み部15のねじ山部分17がねじ切り状態で噛み込む度合いが徐々に増していく。
図6(b)に示す工程において、所望の位置まで装置本体10を押し込んだ後、本実施形態に係るシール除去工程は、第2の補助部材30を、第1の補助部材20に替えて、第2の補助部材30の先端部分が回転軸53の端面部53aに突き当たる状態までねじ込み方向に回転させてグリップ部14の基端側に装着する工程(図7参照)へと進む。
この工程では、まず、図7(a)に示すように、装置本体10を図6(a)の位置に保ったうえで、第1の補助部材20の操作部23を、装着時とは反対側に回転させることにより第1の補助部材20を装置本体10の孔部12から取り外す。
なお、図7(a)における第1の補助部材20の取り外し前にあっては、軸穴部52a内における装置本体10の噛み込み部15と軸封シール54の位置関係は、例えば、図9に示すような関係にある。図9は、軸封シール54の内環54cの一端部が噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまる噛み込み状態のときの図7(a)のB−B線による横断面図である。
図9においては、図6に示す工程において、装置本体10を軸穴部52aに押し込む過程で、軸封シール54のパッキン54aの内周部に噛み込み部15のねじ山部分17がねじ切り状態で噛み込みながら、内環54cの一端部が当該噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまり、噛み込み状態となっている。
図7(a)に示す第1の補助部材20の取り外し工程の後、本実施形態に係るシール除去工程は、第2の補助部材30を装着す工程へと進む。この工程において、作業者は、図7(b)に示すように、第2の補助部材30の第2の補助部材本体部31の先端部を装置本体10の孔部12にねじ込み可能なように位置合わせを行う。引き続き、作業者は、第2の補助部材本体部31の嵌合頭部32を、例えば、手回しし、それ以上回すことができなくなったときに当該操作を停止する。この作業により、第2の補助部材本体部31を孔部12にねじ込ませ、グリップ部14の基端側に第2の補助部材30を装着することができる。
このとき、回転軸53を収容中の装置本体10では、第2の補助部材本体部31と回転軸53との位置関係は図10(a)に示すような関係にある。図10(a)は、軸封シール54の内環54cの一端部が噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまる噛み込み状態のときの図7(b)のC−C線による横断面図である。
図10(a)においては、装置本体10に対して第2の補助部材30の付け替えが行われているものの、図9に示す状態と同様、装置本体10を軸穴部52aに押し込む過程で、軸封シール54のパッキン54aの内周部に噛み込み部15のねじ山部分17がねじ切り状態で噛み込みながら、内環54cの一端部が当該噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまり、噛み込み状態となっている。
図10(a)に示す第2の補助部材本体部31と回転軸53の端面部53aとの位置関係によれば、この状態から、第2の補助部材本体部31をそれまでと同じ方向にさらに回転させることで、第2の補助部材本体部31を回転軸53の端面部53aに当接させた状態で前方へ押し進め、逆に装置本体10を押し込む方向とは逆方向に引き出すことができることが理解できる。
装置本体10に対して第2の補助部材本体部31を図10(a)に示す位置関係となるように取り付けた後、本実施形態に係るシール除去工程は、噛み込み部15のねじ山部分17の谷部が内環54cの一端部に噛み込んだ状態で、軸封シール54が軸穴部52aから離脱するまで、第2の補助部材30をねじ込み方向にさらに回転させる工程へと進む。
この工程において、作業者は、まず、図8(a)に示すように、第2の補助部材本体部31の嵌合頭部32を図示する方向にさらに回転駆動する作業を行う。この作業は、例えば回転工具を用いて行うことができる。その際、作業者は、図示していないスパナ等の回転工具に嵌合頭部32を嵌合させ、当該回転工具を操作して嵌合頭部32を第2の補助部材本体部31とともに回転駆動させる。この作業により、第2の補助部材本体部31の先端部分が回転軸53の端面部53aに当接した状態で第2の補助部材本体部31がさらに空間11の奥へとねじ込まれるように動く。この動きに追従して、装置本体10は、第2の補助部材本体部31が動く方向とは反対の方向に向かって移動し、回転軸53を収容したまま軸穴部52aから次第に外側に向けて引き出される。
図8(a)に示す工程において、装置本体10が同図に示す位置まで引き出された状態のとき、軸穴部52a内における装置本体10及び軸封シール54の位置関係は、例えば、図10(b)に示すような関係にある。図10(b)は、軸封シール54の内環54cの一端部が噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまる噛み込み状態のまま軸封シール54が軸穴部52a外まで引き出されたときの図8(a)のD−D線による横断面図である。図10(b)においては、図8(a)に示す工程の最終段階にあって、装置本体10が軸穴部52a内から引き出される動きに追従して、噛み込み部15のねじ山部分17の谷部が内環54cの一端部に噛み込んた状態のまま軸封シール54も軸穴部52aの外方へと引き出される。
ここで、装置本体10は、軸穴部52aに押し込む過程で、図10(a)に示すように、パッキン54aの内周部に噛み込み部15のねじ山部分17がねじ切り状態で噛み込みながら、内環54cの一端部が当該噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまり、噛み込み状態となる。この状態で装置本体10を図10(b)に示す位置まで引き抜くと、内環54cに対して引き抜き方向の力が働き、軸封シール54を容易に取り出すことが可能になる。
なお、本実施形態に係るシール除去装置1は、金属製の内環54cを有しないオイルシールの除去にも適用可能である。この種のオイルシールに対して、シール除去装置1は、装置本体10を軸穴部52aに押し込む過程で、噛み込み部15のねじ山部分17をオイルシールの内周部の適宜な位置に噛み込ませ、この状態で装置本体10を引き抜くことにより、オイルシールに対して引き抜き方向の力を作用させつつ当該オイルシールを取り出すことができる。
図8(a)に示す工程が完了した後、本実施形態に係るシール除去工程は、装置本体10を取り出す工程へと進む。この工程において、作業者は、図8(a)に示す状態から、グリップ部14を握り、装置本体10を同図の矢印方向に引き抜く。
この作業により、装置本体10は、図8(b)に示すように、噛み込み部15のねじ山部分17の谷部に軸封シール54の内環54cが噛み込まれたまま回転軸53から抜き出され、軸穴部52a外へ取り出される。このとき、噛み込み部15のねじ山部分17の谷部は、軸封シール54のスプリング54dの内周部にねじ切り状態で噛み込まれていてもよい。
図5〜図10を参照して説明したように、本実施形態に係るシール除去装置1を用いたシール除去方法においては、シール除去装置1を準備する工程(図1参照)と、グリップ部14の噛み込み部15から離隔する基端側に対して離脱可能な第1の補助部材20を基端側に装着する工程(図5参照)と、第1の補助部材20が装着されたグリップ部14を、噛み込み部15が軸封シール54の内周部に噛み込んだ状態となるようグリップ部14の内方(空間11)に収容された回転軸53に対して回転させながら押し込んで軸穴部52aに挿入する工程と、基端側に対して離脱可能な第2の補助部材30を、第1の補助部材20に替えて、第2の補助部材30の先端部分が回転軸53の端面部53aに突き当たる状態までねじ込み方向に回転させて基端側に装着する工程(図6参照)と、噛み込み部15が軸封シール54の内周部に噛み込んだ状態で、軸封シール54が軸穴部52aから離脱するまで、第2の補助部材30をねじ込み方向にさらに回転させる工程と、を含んでいる。
図5〜図8に示す一連のシール除去工程を実現するために、本実施形態においては、装置本体10に軸封シール54に対して抜け止め状態に噛み込む噛み込み部15を設けることを前提とし、その噛み込み操作と噛み込み後の抜去操作とに好適な操作部をさらに設けている。すなわち、本実施形態に係るシール除去装置1は、噛み込み操作に好適な操作部として上述した第1の補助部材20に相当する回転操作部材を有し、噛み込み後の抜去操作に好適な操作部としては同じく第2の補助部材30に相当する取出し補助部材を有している。
回転操作部材は、グリップ部14の噛み込み部15から離隔する基端側、すなわち、装置本体10の一端10aに離脱可能に装着できる構成を有する。具体的に、回転操作部材は、グリップ部14の基端側に設けた基端側ねじ結合部分(上述した装置本体10の孔部12に形成された雌ねじ山)にねじ結合させることが可能なねじ結合部分、すなわち、上述した第1の補助部材20の突起部22における雌ねじ山を有している。
取出し補助部材は、グリップ部14の基端側に離脱可能に装着できるうえに、グリップ部14から回転操作部材が離脱したときに、グリップ部14の内方(装置本体10内部の空間11)に挿入されて回転軸53の端面部53aに突き当たるとともに、回転操作部をねじ結合させるグリップ部14の基端側ねじ結合部分にねじ結合可能なねじ結合部分、すなわち、上述した第2の補助部材30の第2の補助部材本体部31における雄ねじ山を有している。
回転操作部材は、上述した一連の工程中(図5〜図8参照)、図5に示す工程でグリップ部14の基端側にねじ結合により離脱可能に装着され(図5参照)、図6(a)及び図6(b)に示す工程では、作業者によって、グリップ部14を回転させながら軸穴部52aの奥に向けて押し込む作業のための操作がなされる。
回転操作部材は、例えば、円柱状の第1の補助部材本体部21と、その放射外方に突出する棒状の操作部23とを有する(図1、図5、図6参照)。かかる構造により、回転操作部材は、グリップ部14の押込み及び回転に際して作業者が力を込め易く、噛み込み部15を軸封シール54に対して抜け止め状態に噛み込み易くするよう働き、作業者による当該工程における好適な操作を可能とする。
他方、取出し補助部材は、図7(b)に示す工程で回転操作部材から付け替えられた後、図8(b)に示す工程において、作業者によって、さらにねじ込み方向にねじ込む作業のための回転駆動操作がなされる。
ここで取出し補助部材は、図10に示すように、軸封シール54に噛み込み部15が噛み込んでおり、かつ、先端部分が回転軸53の端面部53aに突き当たっている状態から、さらに上記ねじ込み方向に回転させるにつれてグリップ部14を当該ねじ込み方向と逆の方向に移動させるような補助作用をもたらす。これにより、取出し補助部材は、グリップ部14の取出しに際して作業者に大きな力を強いることがなく、作業者による当該工程における好適な操作をもたらす。
このように、本実施形態に係るシール除去装置1は、軸封シール54に対して抜け止め状態に噛み込む噛み込み部15を有する装置本体10と、装置本体10に対して離脱可能であり、噛み込み操作と噛み込み後の抜去操作とに好適な回転操作部材及び取出し補助部材をさらに有している。
上記構成を有するシール除去装置1において、特に、取出し補助部材は、グリップ部14から回転操作部材が離脱したときに、グリップ部14の内方に挿入されて回転軸53の端面部53aに突き当たるとともに、回転操作部をねじ結合させるグリップ部14の基端側ねじ結合部分(孔部12)にねじ結合可能である。すなわち、このシール除去装置1は、軸封シール54に噛込み部15が噛み込んだとき、該軸封シール54を、取出し補助部材のねじ込み方向の回転操作に伴なって軸穴部52aから除去できる構成である。また、本実施形態のシール除去装置1は、軸封シール54が、軸穴部52aへの嵌着用の金属環としてのスプリング54dを有しており、噛み込み部15のねじ山部分17が、スプリング54dの内周部にねじ切り状態で噛み込み可能な構成である。
なお、本実施形態の上述した例においては、除去対象の軸封シール54は、回転軸53が貫通するハウジング51の軸穴部52aに嵌着されたものであったが(図4参照)、本実施形態は、これに限らず、例えば、ハウジング51と該ハウジング51より直接外部へ突き出ている回転駆動軸との間に介挿されているオイルシールが対象であってもよい。
また、本実施形態の上述した例では、所定の内径を有する一種類の装置本体10のみ例示しているが、本実施形態は、これに限らず、例えば、各車種ごとに異なる回転軸53の外径にそれぞれ対応する内径を有する複数種類の装置本体10を用意し、これらを回転軸53の径に合わせて選択的に用いるようにしてもよい。
上述したように、本実施形態のシール除去装置1は、回転軸53が貫通するハウジング51の軸穴部52aに嵌着された軸封シール54を軸穴部52aから除去するものである。このシール除去装置1は、把持可能な円筒体形状をなし、軸穴部52aに挿入されるグリップ部14と、グリップ部14と一体に形成された略円筒状の噛み込み部15と、を備え、噛み込み部15は、軸穴部52aの内周壁面に向って突出するねじ山部分17と、該ねじ山部分17と交差する縦方向の切欠き溝18a、18b、18c、18dに沿って形成された複数のねじ切り刃部分19を有する。
この構成により、本実施形態のシール除去装置1は、噛み込み部15が複数のねじ切り刃部分19により軸封シール54の内周壁面にねじ切り状態で噛み込んだ状態にグリップ部14を挿入し、その状態のまま当該グリップ部14を取り出すことにより、回転軸53が貫通するハウジング51の軸穴部52aに嵌着された軸封シールを容易に除去することができる。
その際の軸封シール54の除去作業は、グリップ部14の内方、すなわち、円筒体形状の装置本体10内の空間11に回転軸53を収容した状態で軸穴部52aに挿入且つ回転させ、その後、グリップ部14を取り出す操作で対応でき、作業性に優れる。
また、グリップ部14の挿入、回転、取出し作業は、その内方に回転軸53を収容した状態で行うのが前提であり、そもそも、上記作業前に回転軸を除去する必要がない。
また、本実施形態のシール除去装置1において、噛み込み部15のねじ山部分17は、グリップ部14から離隔する先端側になるに従って漸次縮径する外面テーパー形状を有する構成となっている。
この構成により、本実施形態のシール除去装置1は、噛み込み部15の先端部分を回転軸53の外周面と軸封シール54の内周壁面との間により簡単かつ小さい力で挿入することができ、軸封シール54の除去に関する作業性をより高めることができる。
また、本実施形態のシール除去装置1は、グリップ部14の内方に、グリップ部14にねじ結合するとともに回転軸53の端面部53aに突き当たる第2の補助部材30が設けられており、軸封シール54に噛み込み部15が噛み込んだとき、該軸封シール54を、第2の補助部材30のねじ込み方向の回転操作に伴なって軸穴部52aから除去する構成を有している。
この構成により、本実施形態のシール除去装置1は、グリップ部14に対してねじ結合した第2の補助部材30を、回転軸53の端面部53aに突き当たった状態からさらにねじ込み方向に回転させることで、グリップ部14をねじ込み方向とは逆の方向に移動(後退)させることができる。すなわち、本実施形態では、第2の補助部材30をねじ込み方向に回転させることによりグリップ部14を取り出す力の補助作用が得られ、このような補助作用が期待できないものに比べて軸封シール54をより容易に取り出すことができる。
また、本実施形態のシール除去装置1は、軸封シール54が、軸穴部52aへの嵌着用の金属環としてのスプリング54dを有しており、噛み込み部15のねじ山部分17が、スプリング54dの内周部にねじ切り状態で噛み込み可能である構成を有している。
この構成により、本実施形態のシール除去装置1は、噛み込み部15のねじ山部分17をスプリング54dの内周部に噛み込ませることで噛み込みをより強固にすることができ、軸封シール54をより確実に除去できるようになる。以上により、本実施形態では、回転軸53を取り外すことなく、回転軸53が貫通するハウジング51の軸穴部52aに嵌着された軸封シール54を容易に除去できるようになる。