例えば、レーダ装置として、パルス波を繰り返し発信するパルスレーダ装置が知られている。広角範囲において車両/歩行者を検知する広角パルスレーダの受信信号は、近距離に存在するターゲット(例えば車両)と、遠距離に存在するターゲット(例えば歩行者)とからの複数の反射波が混合された信号となる。このため、(1)レーダ送信部では、低いレンジサイドローブとなる自己相関特性(以下、低レンジサイドローブ特性と呼ぶ)を有するパルス波又はパルス変調波を送信する構成が要求され、(2)レーダ受信部では、広い受信ダイナミックレンジを有する構成が要求される。
広角レーダ装置の構成として、以下の2つの構成が挙げられる。
一つ目の構成は、パルス波又は変調波を狭角(数度程度のビーム幅)の指向性ビームを用いて、機械的又は電子的に走査してレーダ波を送信し、狭角の指向性ビームを用いて反射波を受信する構成である。この構成では、高分解能を得るためには走査回数が増加するので、高速移動するターゲットに対する追従性が劣化する。
二つ目の構成は、受信ブランチにおいて、複数のアンテナ(複数のアンテナ素子)で構成されるアレーアンテナによって反射波を受信し、アンテナ素子間隔に対する受信位相差に基づく信号処理アルゴリズムによって反射波の到来角を推定する手法(Direction of Arrival (DOA) estimation)を用いる構成である。この構成では、送信ブランチでの送信ビームの走査間隔を間引いたとしても、受信ブランチにおいて到来角を推定できるので、走査時間の短縮化を図ることができ、1つ目の構成と比較して追従性が向上する。例えば、到来方向推定方法には、行列演算に基づくフーリエ変換、逆行列演算に基づくCapon法及びLP(Linear Prediction)法、又は、固有値演算に基づくMUSIC(Multiple Signal Classification)及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)が挙げられる。
また、受信ブランチに加え、送信ブランチでも複数のアンテナ素子を用いてビーム走査を行うMIMOレーダは、時分割、周波数分割又は符号分割を用いて多重した信号を複数の送信アンテナ素子から送信し、周辺物体で反射された信号を複数の受信アンテナ素子で受信し、受信信号の各々から、多重された送信信号を分離して受信する。
さらに、MIMOレーダでは、送受信アレーアンテナにおけるアンテナ素子の配置を工夫することにより、最大で送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積に等しい仮想的な受信アレーアンテナ(仮想受信アレー)を構成できる。これにより、送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積で示される伝搬路応答を得ることができ、送受信アンテナ素子間隔を適切に配置することで、少ない素子数によってアレーアンテナの実効的な開口長を仮想的に拡大し、角度分解能の向上を図ることができる。
ここで、MIMOレーダにおけるアンテナ素子構成として、1つのアンテナ素子を用いる構成(以下、単体アンテナと呼ぶ)と、複数のアンテナ素子をサブアレー化した構成(以下、サブアレーと呼ぶ)とに大別される。
単体アンテナを用いた場合は、サブアレーを用いた場合と比較して、広い指向性を有する特性となるが、アンテナ利得は相対的に低くなる。そのため、反射波信号の受信SNR(Signal to Noise Ratio)を向上させるためには、受信信号処理において、例えば、より多くの加算処理を行うか、或いは、単体アンテナを複数用いてアンテナを構成することになる。
一方、サブアレーを用いた場合は、単体アンテナを用いた場合と比較して、1つのサブアレーには、複数のアンテナ素子が含まれるため、アンテナとしての物理的なサイズが大きくなり、メインビーム方向のアンテナ利得を高めることができる。具体的には、サブアレーの物理的なサイズは、送信信号の無線周波数(キャリア周波数)における波長程度以上となる。
また、MIMOレーダは垂直方向又は水平方向の一次元走査を行う場合以外に、垂直方向及び水平方向の二次元におけるビーム走査を行う場合にも適用可能である(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。
しかしながら、非特許文献1のように送信アンテナ素子と受信アンテナ素子とのそれぞれにおいて、アンテナ素子を水平方向及び垂直方向に半波長程度で等間隔に配置する場合、アンテナ素子が隣接しているため物理的制約からアンテナ素子をサブアレー化してアンテナ利得を高利得化するのが困難である。
一方、アンテナ素子をサブアレー化するためにアンテナ間隔を1波長以上拡げるほど、角度方向のグレーティングローブ又はサイドローブ成分が発生し、誤検出の確率が増大する。
また、MIMOレーダに対して小型化かつ低コスト化を図るために送受信ブランチのアンテナ素子数の制約(例えば、送信4アンテナ素子程度/受信4アンテナ素子程度)がある場合、より多くのアンテナ素子を用いて反射波信号の受信SNRを向上させることが困難であり、また、MIMOレーダによる面的な仮想受信アレーにおいて垂直方向及び水平方向の開口長が制約される。
以上より、垂直方向及び水平方向に半波長程度の素子間隔で等間隔に送信アンテナ素子及び受信アンテナ素子を配置した場合、アンテナ素子が隣接しているためアンテナ素子1素子あたりの開口長を大きくしてアンテナ素子を高利得化するのが困難である。一方、アンテナ素子間隔を拡げるほどグレーティングローブがメインローブの近くに発生し、誤検出の確率が増大する。
(実施の形態1)
本開示に係る一態様では、アンテナ素子をサブアレー化して反射波信号の受信SNRを向上させ、仮想受信アレーを半波長程度に等間隔に配置し、グレーティングローブ又はサイドローブ成分を抑圧する。本開示の一態様によれば、誤検出の確率を増大させず、アンテナ1素子あたりの開口長を大きくして高利得化しつつ、仮想受信アレーを等間隔に配置し、仮想受信アレーにおける開口長を拡大できるレーダ装置を提供できる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
複数の送信アンテナ(送信サブアレー)及び複数の受信アンテナ(受信サブアレー)の配置の説明に先立ち、レーダ装置の構成について説明する。具体的には、レーダ装置の送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナを時分割で切り替えて、時分割多重された異なるレーダ送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行うMIMOレーダの構成について説明する。しかし、レーダ装置の構成は、これに限定されず、送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナから周波数分割多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行う構成でもよい。また、同様に、レーダ装置の構成は、送信ブランチで複数の送信アンテナから符号分割多重された送信信号を送出し、受信ブランチで、受信処理を行う構成でもよい。
なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示は以下の実施の形態により限定されるものではない。
[レーダ装置10の構成]
図1は、実施の形態1に係るレーダ装置10の構成の一例を示すブロック図である。レーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチまたはレーダ送信回路とも称する)100と、レーダ受信部(受信ブランチまたはレーダ受信回路とも称する)200と、基準信号生成部(基準信号生成回路)300と、制御部(制御回路)400と、を有する。
レーダ送信部100は、基準信号生成部300から受け取る基準信号に基づいて高周波(無線周波数:Radio Frequency)のレーダ信号(レーダ送信信号)を生成する。そして、レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ素子#1〜#Ntを時分割で切り替えて、レーダ送信信号を送信する。
レーダ受信部200は、ターゲット(図示せず)において反射されたレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ素子#1〜#Naを用いて受信する。レーダ受信部200は、基準信号生成部300から受け取る基準信号を用いて、下記の処理動作を行うことで、レーダ送信部100と同期した処理を行う。レーダ受信部200は、各受信アンテナ素子202において受信した反射波信号を信号処理し、少なくともターゲットの有無検出又は方向推定を行う。なお、ターゲットは、レーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(2輪、3輪、及び4輪を含む)又は人を含む。
基準信号生成部300は、レーダ送信部100及びレーダ受信部200のそれぞれに接続されている。基準信号生成部300は、基準信号をレーダ送信部100及びレーダ受信部200に供給し、レーダ送信部100及びレーダ受信部200の処理を同期させる。
制御部400は、レーダ送信部100が生成するパルス符号、レーダ送信部100による可変ビーム制御において設定する位相、及び、レーダ送信部100が信号を増幅するレベルを、レーダ送信周期Tr毎に設定する。そして、制御部400は、パルス符号を指示する制御信号(符号制御信号)、位相を指示する制御信号(位相制御信号)、及び、送信信号の増幅レベルを指示する制御信号(送信制御信号)を、レーダ送信部100に出力する。また、制御部400は、レーダ送信部100における送信サブアレー#1〜#Nの切替(レーダ送信信号の出力切替)タイミングを指示する出力切替信号を、レーダ受信部200に出力する。
[レーダ送信部100の構成]
図2は、実施の形態1に係るレーダ送信部100の構成の一例を示すブロック図である。レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部(レーダ送信信号生成回路)101と、送信周波数変換部(送信周波数変換回路)105と、電力分配器(電力分配回路)106と、送信増幅部(送信増幅回路)107と、送信アレーアンテナ108と、を有する。
なお、以下では、符号化パルスレーダを用いたレーダ送信部100の構成を一例として示すが、これに限定されず、例えば、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダの周波数変調を用いたレーダ送信信号に対しても同様に適用可能である。
レーダ送信信号生成部101は、基準信号生成部300から受け取る基準信号を所定数倍したタイミングクロック(クロック信号)を生成し、生成したタイミングクロックに基づいてレーダ送信信号を生成する。そして、レーダ送信信号生成部101は、制御部100からの所定のレーダ送信周期Tr毎の符号制御信号に基づいて、レーダ送信周期Trにてレーダ送信信号を繰り返し出力する。
レーダ送信信号は、y(kt,M)=I(kT,M)+jQ(kt,M)で表される。ここで、jは虚数単位を表し、kは離散時刻を表し、Mはレーダ送信周期の序数を表す。また、I(kT,M)及びQ(kT,M)は、第M番目のレーダ送信周期における離散時刻kTにおけるレーダ送信信号(kT,M)の同相成分(In-Phase成分)、及び直交成分(Quadrature成分)をそれぞれ表す。
レーダ送信信号生成部101は、符号生成部(符号生成回路)102と、変調部(変調回路)103と、LPF(Low Pass Filter)104とを含む。
符号生成部102は、レーダ送信周期Tr毎の符号制御信号に基づいて、第M番目のレーダ送信周期における符号長Lの符号系列の符号an(M)(n=1,…,L)(パルス符号)を生成する。符号生成部102において生成される符号an(M)には、低レンジサイドローブ特性が得られるパルス符号が用いられる。符号系列としては、例えば、Barer符号、M系列符号、Gold符号が挙げられる。なお、符号生成部102で生成される符号an(M)は、同一の符号であっても、異なる符号が含まれる符号であってもよい。
変調部103は、符号生成部102から出力される符号an(M)に対してパルス変調(振幅変調、ASK(Amplitude Shift Keying)、パルスシフトキーイング)又は位相変調(PSK:Phase Shift Keying)を行い、変調信号をLPF104へ出力する。
LPF104は、変調部103から出力される変調信号のうち、所定の制限帯域以下の信号成分を、ベースバンドのレーダ送信信号として送信周波数変換部105へ出力する。
送信周波数変換部105は、LPF104から出力されるベースバンドのレーダ送信信号を,所定のキャリア周波数(RF:Radio Frequency)帯でのレーダ送信信号に周波数変換する。
電力分配器106は、送信周波数変換部105から出力される無線周波数帯のレーダ送信信号をNt個に分配し、各送信増幅部107へ出力する。
送信増幅部107(107−1〜107−Nt)は、制御部400から指示されるレーダ送信周期Tr毎の送信制御信号に基づいて、出力されるレーダ送信信号を所定レベルに増幅して出力するか、或いは送信出力をオフとする。
送信アレーアンテナ108は、Nt個の送信アンテナ素子#1〜#Nt(108−1〜108−Nt)を有する。各送信アンテナ素子#1〜#Ntは、それぞれ、個別の送信増幅部107−1〜107−Ntに接続され、個別の送信増幅部107−1〜107−Ntから出力されるレーダ送信信号を送信する。
図3は、実施の形態1に係るレーダ送信信号の一例を示す図である。各レーダ送信周期Trのうち、符号送信区間Twの間にパルス符号系列が送信され、残りの区間(Tr−Tw)は無信号区間となる。符号送信区間Tw内には符号長Lパルス符号系列が含まれる。1つの符号には、L個のサブパルスが含まれる。また、1つのサブパルスあたり、No個のサンプルを用いたパルス変調が施されることにより、各符号送信区間Tw内には、Nr(=No×L)個のサンプルが含まれる。また、レーダ送信周期Trにおける無信号区間(Tr−Tw)には、Nu個のサンプルが含まれる。
図4は、制御部400による各送信アンテナ素子#1〜#Ntの時分割切替動作の一例を示す。図4において、制御部400は、レーダ送信周期Tr毎に、送信アンテナ素子#1から送信アンテナ素子#Ntまで順に、各送信アンテナ素子からの出力を切り替える指示をする制御信号(符号制御信号、送信制御信号)をレーダ送信部100へ出力する。また、制御部400は、各送信サブアレーの送信出力期間を(Tr×Nb)とし、全ての送信サブアレーの送信出力期間(Tr×Np)=(Tr×Nb×Nt)の切替動作を、Nc回繰り返す制御を行う。また、後述するレーダ受信部200は、制御部400の切替動作に基づいて測位処理を行う。
例えば、送信アンテナ素子#1からレーダ送信信号を送信する場合、制御部400は、送信アンテナ素子#1に接続された送信増幅部107−1に対して、入力信号を所定レベルに増幅するように指示する送信制御信号を出力し、送信アンテナ素子#1に接続されていない送信増幅部107−2〜107−Ntに対して、送信出力をオフとするように指示する送信制御信号を出力する。
同様に、送信アンテナ素子#2からレーダ送信信号を送信する場合、制御部400は、送信アンテナ素子#2に接続された送信増幅部107−2に対して、入力信号を所定レベルに増幅するように指示する送信制御信号を出力し、送信アンテナ素子#2に接続されていない送信増幅部107に対して、送信出力をオフとするように指示する送信制御信号を出力する。
以降、制御部400は、送信アンテナ素子#3〜#Ntに対して同様の制御を順に行う。以上、制御部400によるレーダ送信信号の出力切替動作について説明した。
[レーダ送信部100の他の構成]
図5は、実施の形態1に係るレーダ送信信号生成部101の他の構成の一例を示すブロック図である。レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101の代わりに、図5に示すレーダ送信信号生成部101aを備えてもよい。レーダ送信信号生成部101aは、図2に示される符号生成部102、変調部103及びLPF104を有さず、代わりに図5に示される符号記憶部(符号記憶回路)111及びDA変換部(DA変換回路)112を備える。
符号記憶部111は、図2に示される符号生成部102において生成される符号系列を予め記憶し、記憶している符号系列を巡回的に順次読み出す。
DA変換部112は、符号記憶部111から出力される符号系列(デジタル信号)をアナログのベースバンド信号に変換する。
[レーダ受信部200の構成]
図6は、実施の形態1に係るレーダ受信部200の構成の一例を示すブロック図である。レーダ受信部200は、受信アレーアンテナ202と、Na個のアンテナ素子系統処理部(アンテナ素子系統処理回路)201(201−1〜201−Na)と、方向推定部(方向推定回路)214と、を有する。
受信アレーアンテナ202は、Na個の受信アンテナ素子#1〜#Na(202−1〜202−Na)を有する。Na個の受信アンテナ素子202−1〜202−Naは、測定ターゲット(物体)を含む反射物体に反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、それぞれ、対応するアンテナ素子系統処理部201−1〜201−Naへ受信信号として出力する。
各アンテナ素子系統処理部201(201−1〜201−Na)は、受信無線部(受信無線回路)203と、信号処理部(信号処理回路)207とを有する。受信無線部203及び信号処理部207は、基準信号生成部300から受け取る基準信号を所定数倍したタイミングクロック(基準クロック信号)を生成し、生成したタイミングクロックに基づいて動作することにより、レーダ送信部100との同期を確保する。
受信無線部203は、増幅器(増幅回路)204と、周波数変換器(周波数変換回路)205と、直交検波器(直交検波回路)206と、を有する。具体的には、第z番目の受信無線部203において、増幅器204は、第z番目の受信アンテナ素子#zから受け取る受信信号を所定レベルに増幅する。ここで、z=1,…,Nrである。次いで、周波数変換器205は、高周波帯域の受信信号をベースバンド帯域に周波数変換する。次いで、直交検波器206は、ベースバンド帯域の受信信号を、I信号及びQ信号を含むベースバンド帯域の受信信号に変換する。
各信号処理部207は、第1のAD変換部(AD変換回路)208、第2のAD変換部(AD変換回路)209と、相関演算部(相関演算回路)210と、加算部(加算回路)211と、出力切替部(出力切替回路)212と、Nt個のドップラ解析部(ドップラ解析回路)213−1〜213−Ntと、を有する。
第1のAD変換部208は、直交検波器206からI信号を入力する。第1のAD変換部208は、I信号を含むベースバンド信号に対して、離散時間でのサンプリングを行うことにより、I信号をデジタルデータに変換する。
第2のAD変換部209は、直交検波器206からQ信号を入力する。第2のAD変換部209は、Q信号を含むベースバンド信号に対して、離散時間でのサンプリングを行うことにより、Q信号をデジタルデータに変換する。
ここで、第1のAD変換部208及び第2のAD変換部209のサンプリングでは、レーダ送信信号における1つのサブパルスの時間Tp(=Tw/L)あたり、Ns個の離散サンプルが行われる。すなわち、1サブパルスあたりのオーバーサンプル数はNsとなる。
図7は、実施の形態1に係るレーダ装置10のレーダ送信信号の送信タイミング、及び、測定範囲の一例を示す。以下の説明では、I信号Iz(k,M)及びQ信号Qz(k,M)を用いて、第1のAD変換部208及び第2のAD変換部209の出力としての第M番目のレーダ送信周期Tr[M]の離散時間kにおけるベースバンドの受信信号を複素数信号xz(k,M)=Iz(k,M)+jQz(k,M)と表す。また、以下では、離散時刻kは、レーダ送信周期(Tr)の開始するタイミングを基準(k=1)とし、信号処理部207は、レーダ送信周期Trが終了する前までのサンプル点であるk=(Nr+Nu)Ns/Noまで周期的に計測を行う。すなわち、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noとなる。ここでjは虚数単位である。
第z番目の信号処理部207において、相関演算部210は、レーダ送信周期Tr毎に、第1のAD変換部208及び第2のAD変換部209から受け取る離散サンプル値x
z(k,M)と、レーダ送信部100において送信される符号長Lのパルス符号a
n(M)(ただし、z=1,…,Na、n=1,…,L)との相関演算を行う。例えば、相関演算部210は、離散サンプル値x
z(k,M)と、パルス符号a
n(M)とのスライディング相関演算を行う。例えば、第M番目のレーダ送信周期Tr[M]における離散時刻kのスライディング相関演算の相関演算値AC
z(k,M)は、式(1)に基づき算出される。
式(1)において、アスタリスク(*)は複素共役演算子を表す。
相関演算部210は、例えば、式(1)に従って、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noの期間に亘って相関演算を行う。
なお、相関演算部210は、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noに対して相関演算を行う場合に限定されず、レーダ装置10の測定対象となるターゲットの存在範囲に応じて、測定レンジ(すなわち、kの範囲)を限定してもよい。限定することにより、相関演算部210における演算処理量が低減される。例えば、相関演算部210は、k=Ns(L+1),…,(Nr+Nu)Ns/No−NsLに測定レンジを限定してもよい。この場合、図7に示されるように、レーダ装置10は、符号送信区間Twに相当する時間区間では測定を行わない。
上述の構成により、レーダ送信信号がレーダ受信部200に直接的に回り込むような場合でも、レーダ送信信号が回り込む期間(少なくともτ1未満の期間)では相関演算部210による処理が行われない。したがって、レーダ装置10は、回り込みの影響を排除して測定できる。また、測定レンジ(kの範囲)を限定する場合、以下で説明する加算部211、出力切替部212、ドップラ解析部213、及び方向推定部214の処理に対しても、同様に測定レンジ(kの範囲)を限定した処理を適用すればよい。これにより、各構成部での処理量を削減でき、レーダ受信部200における消費電力を低減できる。
第z番目の信号処理部207において、加算部211は、制御部400から出力される出力切替信号に基づいて、第ND番目の送信アンテナ素子#NDから連続的に送信されるレーダ送信周期Trの複数回Nbの期間(Tr×Nb)を単位として、離散時刻k毎に相関演算部210から受け取る相関演算値ACz(k,M)を用いて、加算(コヒーレント積分)処理を行う。ここで、ND=1,…,Nt、z=1,…,Naである。
期間(Tr×Nb)に亘る加算(コヒーレント積分)処理は次の式(2)で表される。
ここで、CI
z (ND)(k,m)は相関演算値の加算値(以下、相関加算値と呼ぶ)を表し、mは加算部211における加算回数の序数を示す1以上の整数である。また、z=1,…,Naである。
なお、理想的な加算利得を得るためには、相関演算値の加算区間において、相関演算値の位相成分がある程度の範囲で揃うことが条件となる。つまり、加算回数は、測定対象となるターゲットの想定最大移動速度に基づいて設定されることが好ましい。これは、ターゲットの想定最大移動速度が大きいほど、ターゲットからの反射波に含まれるドップラ周波数の変動量が大きく、高い相関を有する時間期間が短くなるため、Np(=N×Nb)は小さい値となり、加算部211での加算による利得向上効果が小さくなるためである。
第z番目の信号処理部207において、出力切替部212は、制御部400から出力される出力切替信号に基づいて、第NDの送信アンテナ素子から連続的に送信されるレーダ送信周期Trの複数回Nbの期間(Tr×Nb)を単位に加算した、離散時間k毎の加算結果CIz (ND)(k,m)を、第NDのドップラ解析部213−NDに択一的に切り替えて出力する。ここで、ND=1,…,Nt、z=1,…,Naである。
各信号処理部207は、送信アンテナ素子#1〜#Ntと同数のNt個のドップラ解析部213−1〜213−Ntを有する。ドップラ解析部213(213−1〜213−Nt)は、離散時間k毎に得られた加算部211のN
C個の出力であるCI
z (ND)(k,N
C(w−1)+1)〜CI
z (ND)(k,N
C×w)を一単位として、離散時間kのタイミングを揃えてコヒーレント積分を行う。例えば、ドップラ解析部213は、以下の式(3)に示すように、2Nf個の異なるドップラ周波数f
sΔΦに応じた位相変動Φ(f
s)=2πf
s(T
r×N
b)ΔΦを補正した後に、コヒーレント積分を行う。
ここで、FT_CI
z (ND)(k,f
s,w)は、第z番目の信号処理部207における第N
D番目のドップラ解析部213−N
Dにおける第w番目の出力であり、加算部211の第N
D番目の出力に対する、離散時間kでのドップラ周波数f
sΔΦのコヒーレント積分結果を示す。ただし、N
D=1,…,Ntであり、f
s=−Nf+1,…,0,Nfであり、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noであり、wは自然数であり、ΔΦは位相回転単位であり、jは虚数単位であり、z=1,…,Naである。
これにより、各信号処理部207は、離散時間k毎の2Nf個のドップラ周波数成分に応じたコヒーレント積分結果であるFT_CIz (ND)(k,−Nf+1,w),…,FT_CIz (ND)(k,Nf−1,w)を、レーダ送信周期間Trの複数回Nb×Ncの期間(Tr×Nb×Nc)毎に得る。
ΔΦ=1/Ncとした場合、上述したドップラ解析部213の処理は、サンプリング間隔Tm=(Tr×Np)、サンプリング周波数fm=1/Tmで加算部211の出力を離散フーリエ変換(DFT)処理していることと等価である。
また、Nfを2のべき乗の数に設定することで、ドップラ解析部213は、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理を適用でき、演算処理量を削減できる。なお、Nf>Ncでは、q>Ncとなる領域においてCIz (ND)(k,Nc(w−1)+1)=0とするゼロ埋め処理を行うことで、ドップラ解析部213は、同様にFFT処理を適用でき、演算処理量を削減できる。
また、ドップラ解析部213において、FFT処理の代わりに、上述の式(3)に示す積和演算を逐次的に演算する処理を行ってもよい。つまり、ドップラ解析部213は、離散時刻k毎に得られた加算部211のNc個の出力であるCIz (ND)(k,Nc(w−1)+q+1)に対して、fs=−Nf+1,…,0,Nf−に対応する係数exp[−j2πfsTrNbqΔΦ]を生成し、逐次的に積和演算処理してもよい。ここで、q=0,…,Nc−1である。
なお、以下の説明では、第1番目のアンテナ素子系統処理部201−1の信号処理部207から第Na番目のアンテナ系統処理部201−Naの信号処理部207の各々において同様の処理を施して得られた第w番目の出力FT_CI
z (1)(k,f
s,w),…,FT_CI
z (Na)(k,f
s,w)を、次の式(4)(又は式(5))のように仮想受信アレー相関ベクトルh(k,f
s,w)として表記する。
仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)は、送信アンテナ素子#1〜#Ntの数Ntと受信アンテナ素子#1〜#Naの数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)は、後述する、ターゲットからの反射波信号に対して受信アンテナ素子#1〜#Na間の位相差に基づく方向推定を行う処理の説明に用いる。ここで、z=1,…,Naであり、ND=1,…,Ntである。
また、上述の式(4)及び式(5)では、各送信サブアレーからの送信時間差に起因するドップラ周波数(fsΔΦ)毎の位相回転が補正されている。すなわち、第1の送信サブアレー(ND=1)を基準として、第NDの送信サブアレーからのドップラ周波数(fsΔΦ)成分の受信信号FT_CIz (Na)(k,fs,w)に対し、exp[−j2πfsΔΦ(ND−1)TrNb]が乗算されている。
以上、信号処理部207の各構成部における処理について説明した。
方向推定部214は、第1番目のアンテナ素子系統処理部201−1の信号処理部207ないし第Na番目のアンテナ素子系統処理部201−Naの信号処理部207から出力されるw番目のドップラ解析部213の仮想受信アレー相関ベクトルh(k,f
s,w)に対して、以下の式(6)で表されるように、送信アレーアンテナ108間及び受信アレーアンテナ202間の移相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値h
cal[b]を乗算することで、アンテナ間偏差を補正した仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(k,f
s,w)を算出する。なお、b=1,…,(Nt×Na)である。
アンテナ間偏差を補正した仮想受信アレー相関ベクトルh_after_cal(k,fs,w)は、Na×Nr個の要素からなる列ベクトルである。以下では、仮想受信アレー相関ベクトルh_after_cal(k,fs,w)の各要素をh1(k,fs,w),…,hNa×Nr(k,fs,w)と表記して、方向推定処理の説明に用いる。
次いで、方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh_after_cal(k,fs,w)を用いて、受信アンテナ202間の反射波信号の位相差に基づいて反射波信号の到来方向の推定処理を行う。
方向推定部214は、方向推定評価関数値PH(θ,k,fs,w)における方位方向θを所定の角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出し、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向の推定値とする。
なお、評価関数値PH(θ,k,fs,w)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種のものがある。例えば非特許文献2に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、ビームフォーマ法は、以下の式(7)及び式(8)のように表すことができる。
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、a
H(θ
u)は、方位方向θ
uの到来波に対する仮想受信アレーの方向ベクトルを示すまた、θ
uは到来方向推定を行う方位範囲内を所定の方位間隔β
1で変化させたものである。例えば、θ
uは以下のように設定される。
ここでfloor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
なお、ビームフォーマ法に代えて、Capon、MUSICといった手法も同様に適用可能である。
図8は、実施の形態1に係る方向推定部214の動作説明に用いる三次元座標系を示す。方向推定部214の処理を図8に示される三次元座標系に適応することにより二次元方向に推定処理を行う場合について、以下説明する。
図8において、原点Oを基準とした物標(ターゲット)PTの位置ベクトルをrPTと定義する。また、図8では、物標PTの位置ベクトルrPTをXZ平面に射影した射影点をPT’とする。この場合、方位角θは、直線O-PT’とZ軸とのなす角度と定義される(物標PTのX座標が正の場合、θ>0)。また、仰角φは、物標PT、原点O及び射影点PT’を含む平面内での、物標PT、原点O及び射影点PT’を結ぶ線の角度と定義される(物標PTのY座標が正の場合、φ>0)。なお、以下では、XY平面内に送信アレーアンテナ108及び受信アレーアンテナ202を配置する場合を一例として説明を行う。
原点Oを基準とした、仮想受信アレーにおける第nva番目のアンテナ素子の位置ベクトルをSnvaと表記する。ここで、nva=1,…, Nt×Naである。
仮想受信アレーにおける第1番目(nva=1)のアンテナ素子の位置ベクトルS1は、第1番目の受信アンテナ素子Rx#1の物理的な位置と原点Oとの位置関係に基づいて決定される。仮想受信アレーにおける他のアンテナ素子の位置ベクトルS2,…,Snvaは、第1番目のアンテナ素子の位置ベクトルS1を基準に、XY平面内に存在する送信アレーアンテナ108及び受信アレーアンテナ202の素子間隔から決定される仮想受信アレーの相対的な配置を保持した状態で決定される。なお、原点Oを第1番目の受信アンテナ素子Rx#1の物理的な位置と一致させてもよい。
レーダ受信部200が遠方界に存在する物標P
Tからの反射波を受信する場合、仮想受信アレーの第1番目のアンテナ素子での受信信号を基準とした、第2番目のアンテナ素子での受信信号の位相差d(r
PT,2,1)は、以下の式(9)で示される。ここで、<x,y>はベクトルx及びベクトルyの内積演算子である。
なお、仮想受信アレーの第1番目のアンテナ素子の位置ベクトルを基準とした、第2番目のアンテナ素子の位置ベクトルを、素子間ベクトルD(2,1)として次の式(10)で表す。
同様に、レーダ受信部200が遠方界に存在する物標P
Tからの反射波を受信する場合、仮想受信アレーの第n
va (r)番目のアンテナ素子での受信信号を基準とした、第n
va (t)番目のアンテナ素子での受信信号の位相差d(r
PT, n
va (t),n
va (r))は、以下の式(11)で示される。ここで、n
va (r)=1,…, Nt×Na、n
va (t)=1,…, Nt×Naである。
なお、仮想受信アレーの第n
va (r)番目のアンテナ素子の位置ベクトルを基準とした、第n
va (t)番目のアンテナ素子の位置ベクトルを、素子間ベクトルD(n
va (t),n
va (r))として次の式(12)に表す。
上述の式(11)及び式(12)に示すように、仮想受信アレーの第nva (r)番目のアンテナ素子での受信信号を基準とした、第nva (t)番目のアンテナ素子での受信信号の位相差d(rPT,nva (t), nva (r))は、遠方界に存在する物標PTの方向を示す単位ベクトル(rPT/|rPT|)及び素子間ベクトルD(nva (t),nva (r))に依存する。
また、仮想受信アレーが同一平面内に存在する場合、素子間ベクトルD(nva (t),nva (r))は同一平面上に存在する。方向推定部214は、このような素子間ベクトルの全て又は一部を用いて、素子間ベクトルが示す位置に仮想的にアンテナ素子が存在するものとして、仮想面配置アレーアンテナを構成し、二次元における方向推定処理を行う。すなわち、方向推定部214は、仮想受信アレーを構成するアンテナ素子に対する補間処理によって補間された複数の仮想的なアンテナを用いて到来方向推定処理を行う。
なお、方向推定部214は、仮想的なアンテナ素子が重複する場合、重複するアンテナ素子のうちの一つのアンテナ素子を予め固定的に選択してもよい。又は、方向推定部214は、重複する全ての仮想的なアンテナ素子での受信信号を用いて加算平均処理を施してもよい。
以下、Nq個の素子間ベクトル群を用いて、仮想面配置アレーアンテナを構成した場合における、ビームフォーマ法を用いた二次元における方向推定処理について説明する。
ここで、仮想面配置アレーアンテナを構成する第nq番目の素子間ベクトルをD(nva(nq) (t),nva(nq) (r))と表す。ここで、nq=1,…,Nqである。
方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(k, fs, w)の各要素であるh
1(k, fs, w),…,h
Na×N(k, fs, w)を用いて、以下の式(13)に示す仮想面配置アレーアンテナ素子相関ベクトルh
VA(k, fs, w)を生成する。
仮想面配置アレー方向ベクトルa
VA(θu, φv)を、次の式(14)に示す。
仮想受信アレーがXY平面内に存在する場合、物標P
Tの方向を示す単位ベクトル(r
PT/|r
PT|)と、方位角θ及び仰角φとの関係を次の式(15)に示す。
方向推定部214は、垂直方向及び水平方向の二次元空間プロファイルを算出する各角度方向θu,φvに対して、上述の式(15)を用いて単位ベクトル(rPT/|rPT|)を算出する。
さらに、方向推定部214は、仮想面配置アレーアンテナ素子相関ベクトルhVA(k,fs,w)、及び、仮想面配置アレー方向ベクトルaVA(θu,φv)を用いて、水平方向及び垂直方向の二次元方向推定処理を行う。
例えば、ビームフォーマ法を用いた二次元における方向推定処理では、仮想面配置アレーアンテナ相関ベクトルh
VA(k,fs,w)及び仮想面配置アレー方向ベクトルa
VA(θu,φv)を用いて、次の式(16)で示される二次元における方向推定評価関数を用いて垂直方向及び水平方向の二次元空間プロファイルを算出し、二次元空間プロファイルの最大値又は極大値となる方位角及び仰角方向を到来方向の推定値とする。
なお、方向推定部214は、ビームフォーマ法以外にも、仮想面配置アレーアンテナ相関ベクトルhVA(k, fs, w)及び仮想面配置アレー方向ベクトルaVA(θu, φv)を用いて、Capon法又はMUSIC法などの高分解能到来方向推定アルゴリズムを適用してもよい。これにより、演算量は増加するが、角度分解能を高めることができる。
なお、上述した離散時間kは、距離情報に変換して出力されてもよい。離散時間kを距離情報R(k)に変換する際には次の式(17)を用いればよい。
ここで、Twは符号送信区間を表し、Lはパルス符号長を表し、C
0は光速度を表す。
また、ドップラ周波数情報は、相対速度成分に変換して出力されてもよい。ドップラ周波数fsΔΦを相対速度成分v
d(f
s)に変換する際には次の式(18)を用いて変換できる。
ここで、λは送信周波数変換部105から出力されるRF信号のキャリア周波数の波長である。
[レーダ装置10におけるアンテナ素子配置]
以上の構成を有するレーダ装置10の送信アレーアンテナ108のNt個の送信アンテナ素子Tx#1〜#Nt及び受信アレーアンテナ202のNa個の受信アンテナ素子Rx#1〜#Naの配置について説明する。
Nt個の送信アンテナ素子#1〜#Nt及びNa個の受信アンテナ素子Rx#1〜#Naの各々は、水平方向及び垂直方向において一定の規則にしたがって配置される。なお、以下の送信アンテナの配置と受信アンテナの配置とは、それぞれ、送信アンテナと受信アンテナとに限定されるものではない。言い換えると、送信アンテナの配置と受信アンテナの配置とを入れ替えても、同様の仮想受信アレーが得られる。したがって、送信アンテナの配置と受信アンテナの配置とを入れ替えてもよい。また、送信アンテナの配置と受信アンテナの配置とを、左右反転、上下反転、又はともに回転させてもよい。
図9A及び図9Bは、それぞれ、実施の形態1に係る送信アンテナの配置及び受信アンテナの配置を示す。図9Cは実施の形態1に係る仮想受信アンテナの配置の一例を示す。ここで、図9の座標はアンテナ素子の位相中心を示す。
第1軸は第1の間隔dHを基本の単位とし、第2軸は第2の間隔dVを基本の単位として、それぞれ基本の単位の整数倍で示される座標の位置にアンテナ素子を配置する。一例において、レーダ送信信号で用いられる波長を基準として、例えば、第1の間隔dH及び第2の間隔dVは、それぞれ、例えば、0.3波長以上2波長以下であり、半波長程度であり、又は半波長に等しい。ここで、第1軸及び第2軸は、図8に示されるXY平面上にあってもよく、また、互いに直交するように配置されてもよい。
図9Aに示される送信アンテナ素子Tx#1〜#Ntは、第1のアンテナ群G1と第2のアンテナ群G2とを含む。第1のアンテナ群G1は、pt1個のアンテナ素子(少なくとも1つの第1のアンテナ素子)を含む。第2のアンテナ群G2は、pt2個のアンテナ素子(複数の第2のアンテナ素子)を含む。
第1のアンテナ群G1について、第i番目のアンテナ素子の、図9Aの白丸で示される位相中心の座標をTx1
iとすると、Tx1
iは、次の式(19)で表される。
ここで、iは1からp
t1までの整数である。式(19)によって、第1のアンテナ群G1は、p
r1間隔で、アンテナ素子が配置されることがわかる。
また、第2のアンテナ群G2について、第j番目のアンテナ素子の、図9Aの白丸で示される位相中心の座標をTx2
jとすると、Tx2
jは、次の式(20)で表される。
ここで、jは1からp
t2までの整数である。式(20)より、第2のアンテナ群G2は、第1軸方向にp
tHシフトして、第2軸方向にジグザグ(zigzag)状にアンテナ素子が配置されることがわかる。
なお、後述するが、xc、ycは第1のアンテナ群G1と第2のアンテナ群G2とが共用するアンテナ素子の番号を示す値である。例えば、図9Aでは、第1のアンテナ群G1の第1アンテナ素子と第2のアンテナ群G2の第1アンテナ素子とが共用されるので、xc=1、yc=1である。
第2のアンテナ群G2は第2軸方向に第2の間隔おきに第1軸方向にxsシフトして配置される。第2軸方向に密集していないため、アンテナ素子をサブアレー化して隣接するアンテナ素子に物理的に干渉しない程度に開口長を拡大し、アンテナ利得を高利得化することが可能である。
上述の式(19)及び式(20)から、x
c及びy
cは、第1のアンテナ群G1と第2のアンテナ群G2とが共用するアンテナ素子の位置関係を表すことがわかる。具体的には、上述の式(19)及び式(20)から、次の式(21)が導かれる。
即ち、送信アンテナ素子Tx#1〜#Ntの第1のアンテナ群G1の第x
c番目のアンテナ素子と第2のアンテナ群G2の第y
c番目のアンテナ素子とは共通のアンテナ素子であり、Tx1
xc=Tx2
ycとなる。つまり、第1のアンテナ群G1の第x
cのアンテナ素子(図9Aではx
c=1)と第2のアンテナ群G2の第y
cのアンテナ素子(図9Aではy
c=1)とが共有される形で、第1のアンテナ群G1と第2のアンテナ群G2とが交差する。したがって、送信アンテナ素子#1〜#Ntの総数Ntとp
t1とp
t2との間には、Nt=p
t1+p
t2-1の関係が成立する。
一例として、図9AのTx#1について説明する。第1のアンテナ群G1の第1番目のアンテナ素子の位相中心の座標Tx1
i=1については、y
c=1、i=1を上述の式(19)に代入することによって、次の式(19−1)が得られる。
次に、第2のアンテナ群G2の第1番目のアンテナ素子の位相中心の座標Tx2
j=1については、x
c=1、y
c=1、j=1を上述の式(20)に代入することによって、次の式(20−1)が得られる。
したがって、第1のアンテナ群G1の第1番目のアンテナ素子の位相中心の座標Tx1i=1と第2のアンテナ群G2の第1番目のアンテナ素子の位相中心の座標Tx2j=1とは、送信アンテナ素子Tx#1の位相中心の座標に等しい。
同様に、第2のアンテナ群の第2番目のアンテナ素子の位相中心の座標Tx2
j=2は、
x
c=1、y
c=1、j=2を上述の式(20)に代入することによって、次の式(20−2)として示すことができる。
ここで、第2のアンテナ群G2の第1軸方向のシフト量x
sが1である場合、次の式(20−3)としてあらわすことができる。
図9Bに示される受信アンテナ素子Rx#1〜#Na(複数の第3のアンテナ素子)の第j行目の第i列目のアンテナ素子の位相中心の座標をRx1
ijとすると、Rx1
ijは、次の式(22)で表される。
ここで、iは1からp
r1までの整数、jは1からp
r2までの整数である。受信アンテナ素子#1〜#Naの総数Naとp
r1とp
r2との間には、Na=p
r1×p
r2の関係が成立する。
上述の式(19)〜式(22)中の定数は、それぞれ、(xt0,yt0)が送信アンテナ素子群の原点座標、(xr0,yr0)が受信アンテナ群の原点座標、pt1が送信アンテナ第1軸方向配置数(pt1≧1)、pt2が送信アンテナ第2軸方向配置数(pt2>1)、pr1が受信アンテナ第1軸方向配置数(第1の列数)(pr1>1)、pr2が受信アンテナ第2軸方向配置数(pr2≧1)、xcが送信アンテナ第2のアンテナ群の繰り返し点(共用のアンテナ素子の第1軸方向での位置)(1≦xc≦pt1)、ycが送信アンテナの第1のアンテナ群G1の繰り返し点(1≦yc≦pt2)、xsが送信アンテナ第2のアンテナ群G2の第1軸方向のシフト量(1≦xs<pr1)、を示し、全て整数である。なお、pr1は、送信アンテナの第1のアンテナ群G1のアンテナ素子間隔に等しい。
図9A、図9Bに示される送受信アンテナによって形成される仮想受信アレーは図9Cに示されるように構成される。仮想受信アレーの仮想アンテナ素子は、全部でNt×Na個である。仮想アンテナ素子が第1軸方向に連続してpt1×pr1個配置された仮想受信アレーが、第2軸方向に等間隔にpr2列配置される。また、仮想アンテナ素子が第2軸方向に連続してpt2×pr2個配置された仮想受信アレーが、第1軸方向に等間隔にpr1-1列配置される。
図9Aに示される実施の形態1に係るアンテナ配置では、送信アレーアンテナ108aの第2のアンテナ群G2のアンテナ素子Tx#1及びTx#pt1+1〜Tx#Ntは、位相中心の第1軸座標がxt0、xt0+ptHの2か所となるように、ジグザグ(zigzag)状に配置される。第2のアンテナ群G2のアンテナ素子Tx#1及びTx#pt1+1〜Tx#Ntの位相中心は、第2の間隔dVで等間隔に配置されていない。しかしながら、仮想受信アレーにおいては、仮想アンテナ素子の位相中心を第2の間隔dVで等間隔に配置できる。このため、仮想受信アレーによって形成されるビーム幅、つまり分解能は仮想受信アレーの第1軸方向および第2軸方向における最大開口長に依存する。
<実施の形態1のバリエーション1>
図10Aは、実施の形態1のバリエーション1に係る送信アンテナ素子Tx#1〜#Ntの配置の一例を示す。図10Bは、実施の形態1のバリエーション1に係る受信アンテナ素子Rx#1〜#Naの配置の一例を示す。図10Cは、実施の形態1のバリエーション1に係る仮想受信アンテナの配置の一例を示す。
図10A及び図10Bに示される一例において、上述の式(19)〜式(22)中の各定数は、それぞれ、(xt0,yt0)=(1,1)、(xr0,yr0)=(1,1)、pt1=1、pt2=4、pr1=8、pr2=1、xc=1、yc=1、xs=1である。また、第1軸と第2軸は互いに直交する。
図10Aにおいて、送信アンテナ素子#1〜#Ntの総数Ntは4であり、それぞれの送信アンテナ素子を、Tx#1〜Tx#4で表す。第1のアンテナ群G1は、Tx#1(少なくとも1つの第1のアンテナ素子)を含む。第2のアンテナ群G2は、Tx#1〜Tx#4(複数の第2のアンテナ素子)を含む。図10Bにおいて、受信アンテナ素子#1〜#Na(複数の第3のアンテナ素子)の総数Naは8であり、それぞれの受信アンテナ素子を、Rx#1〜Rx#8で表す。
以下、図10A及び図10Bに示されるアンテナ素子配置の特徴を説明する。
(1)アンテナ素子の開口長
図11は、実施の形態1のバリエーション1に係るアンテナ素子のサイズの一例を示す。図10A及び図10Bに示されるアンテナ素子の配置の場合、アンテナ素子のサイズを、例えば、図11に示されるように規定できる。ここで、アンテナ素子のサイズ113c、215cは隣接するアンテナ素子に干渉しないサイズである。
図11に示されるように、送信アレーアンテナ108cのアンテナ素子は、第2軸方向において、ジグザグ(zigzag)状に配置されるため、第1軸方向にdH以下の開口長、第2軸方向に2×dV以下の開口長で形成される。受信アレーアンテナ202cのアンテナ素子は、第1軸方向に、直線状に配置されるため、第1軸方向にdH以下の開口長で形成され、第2軸方向には隣接するアンテナ素子がなく、任意の開口長(図11に示される一例においては、4×dV)で形成することができる。
送信アレーアンテナ108cのアンテナ素子を第1軸方向及び第2軸方向に、それぞれ、基本間隔dH、dVで直線状に等間隔配置した場合、送信アレーアンテナのアンテナ素子のサイズは、第2軸方向にdVである。これに対して、本開示の構成においては、例えば、図11に示されるように、送信アレーアンテナ108cは、第2軸方向に2列(ジグザグ状)に配置され、受信アレーアンテナ202cは、第1軸方向に1行(直線状)に配置される。当該構成により、送信アレーアンテナ108cのアンテナ素子のサイズ113cを第2軸方向に2dVまで拡大し、受信アレーアンテナ202cのアンテナ素子のサイズ215cを第2軸方向に4dVまで拡大できる。アンテナ素子のサイズの拡大によって、本開示の構成においては、高いアンテナ利得を得ることができる。
アンテナ素子はサブアレーアンテナ素子を用いて構成し、サブアレーアンテナにアレーウエイトをかけてサイドローブを抑制してもよい。
(2)仮想受信アレーが形成するビームパターン
図12Aは、実施の形態1のバリエーション1に係る仮想受信アレーによる二次元ビームの指向性パターンであって第1軸方向に沿った断面図の一例を示す。図12Bは、実施の形態1のバリエーション1に係る仮想受信アレーによる二次元ビームの指向性パターンであって第2軸方向に沿った断面図の一例を示す。
具体的には、図10Cに示される仮想受信アレーを用いたビームフォーマ法によって形成される二次元のビームパターンにおいて、図12Aは、第2軸方向0度での第1軸方向に沿った断面図を示す。また、同ビームパターンにおいて、図12Bは、第1軸方向0度での第2軸方向に沿った断面図を示す。図12A及び図12Bには、dH=0.5波長、dV=0.6波長の場合が示されている。
図10Cに示されるように、仮想受信アレーは、第1軸方向の開口長が8×dHであり、第2軸方向の開口長が3×dVであり、仮想アンテナ素子が等間隔に配置されている。これにより、図12A及び図12Bに示されるように、グレーティングの生じないビームを形成できる。
<比較例>
実施の形態1のバリエーション1との比較のために、比較例において、送信アンテナ4素子を第2軸方向に並べて配置する場合を説明する。図13は、比較例に係る送信アンテナ素子の配置の一例を示す。図14は、比較例に係る仮想アンテナ素子の配置の一例を示す。図15は、比較例に係る仮想受信アレーによる指向性パターンの第2軸方向に沿った断面図の一例を示す。
例えば、送信アンテナのアンテナ素子のサイズを拡大した場合、図13に示されるように、隣接するアンテナ素子と干渉しないように、送信アンテナを、第2軸方向に2×dV以上の間隔を空けて配置する。
受信アンテナが図10Bに示されるように配置されている場合、仮想受信アレーは図14に示される配置となる。その結果、仮想受信アレーも第2軸方向に2×dV以上の間隔で配置されるため、図10Cと比較して、粗となる。なお、図10Cは、第2軸方向に1dVの間隔で配置される。図14に示される仮想受信アレーによって受信されるビームは図15の破線で示されるようにグレーティングローブを含み、誤検出の確率が高まる。
<実施の形態1のバリエーション2>
実施の形態1のバリエーション2では、バリエーション1と同じ仮想受信アレーの素子数で、より高い分解能を得ることのできるアンテナ配置と、それを用いた到来方向推定手法とについて説明する。
図16Aは、実施の形態1のバリエーション2に係る送信アンテナの素子Tx#1〜#Ntの配置の一例を示す。図16Bは、実施の形態1のバリエーション2に係る受信アンテナの素子Rx#1〜#Naの配置の一例を示す。図16Cは、実施の形態1のバリエーション2に係る仮想受信アンテナの配置の一例を示す。なお、仮想受信アンテナの素子数は32で、バリエーション1と同じである。
図16A及び16Bに示される一例において、上述の式(19)〜式(22)中の各定数は、それぞれ、(xt0,yt0)=(1,1)、(xr0,yr0)=(1,1)、pt1=4、pt2=5、pr1=2、pr2=2、xc=2、yc=2、xs=1である。第1軸と第2軸は互いに直交する。
図16Aにおいて、送信アレーアンテナ108eのアンテナ素子の総数Ntは8であり、送信アレーアンテナ108eのアンテナ素子をTx#1〜Tx#8で表す。第1のアンテナ群G1は、Tx#1〜Tx#4(少なくとも1つの第1のアンテナ素子)を含む。第2のアンテナ群G2は、Tx#5、Tx#2、及びTx#6〜Tx#8(複数の第2のアンテナ素子)を含む。図16Bにおいて、受信アレーアンテナ202eのアンテナ素子(複数の第3のアンテナ素子)の総数Naは4であり、受信アレーアンテナ202eのアンテナ素子をRx#1〜Rx#4で表す。
以下、図16A及び図16Bに示されるアンテナ配置を説明する。
(1)アンテナ素子の開口長
図17は、実施の形態1のバリエーション2に係るアンテナ素子のサイズ113f、215fの一例を示す。図16Cに示す仮想受信アレーを得るために、つまり、図16Cにおいて、仮想受信アレーの第1軸方向及び第2軸方向のアンテナ素子間隔が、それぞれ、1×dV及び1×dHとなるように、図16A及び図16Bに示されるように、アンテナ素子を配置する。
図16A及び図16Bに示されるアンテナ配置の場合、アンテナ素子のサイズ113、215を、例えば、図17に示すように規定できる。ここで、アンテナ素子のサイズ113f、215fは隣接するアンテナ素子に干渉しないサイズである。
送信アレーアンテナ108fのアンテナ素子は、第1軸方向にdH以下の開口長、第2軸方向に2×dV以下の開口長で形成される。また、受信アレーアンテナ202fのアンテナ素子は第1軸方向にdH以下の開口長、第2軸方向には5×dV以下の開口長で形成される。
送信アレーアンテナ108fのアンテナ素子を第1軸方向及び第2軸方向に、それぞれ、1×dH間隔及び1×dV間隔で、1列及び1行(直線状)に等間隔配置した場合、アンテナ素子のサイズを第1軸方向及び第2軸方向に、ぞれぞれ、dH及びdVより大きくできない。これに対して、図17に示すように、送信アレーアンテナ108及び受信アレーアンテナ202fのアンテナ素子は、サイズを第1軸方向及び第2軸方向に、ぞれぞれ、dH及びdVよりも大きくなるように拡大できるため、高いアンテナ利得を得ることができる。
なお、図17で示したアンテナ素子はサブアレーアンテナを用いて構成し、サブアレーアンテナにアレーウエイトをかけてサイドローブを抑制してもよい。つまり、図17のアンテナ素子をサブアレーアンテナに置き換え、サブアレーアンテナは、複数のアンテナ素子を用いて構成される。
(2)仮想受信アレーが形成するビームパターン
図18Aは、実施の形態1のバリエーション2に係る仮想受信アレーによる二次元ビームの指向性パターンであって第1軸方向に沿った断面図の一例を示す。図18Bは、実施の形態1のバリエーション2に係る仮想受信アレーによる二次元ビームの指向性パターンであって第2軸方向に沿った断面図の一例を示す。
具体的には、図16Cに示される仮想受信アレーの全てのアンテナ素子を用いたビームフォーマ法によって形成される二次元のビームパターンにおいて、図18Aは、第2軸方向0度での第1軸方向に沿った断面図を示す。また、図18Bは、第1軸方向0度での第2軸方向に沿った断面図を示す。図18A及び図18Bには、dH=0.5波長、dV=0.68波長の場合が示されている。
図16Cに示されるように、仮想受信アレーは、第1軸方向の開口長が7×dH(VA#1〜VA#8、VA#17〜VA#24)であり、第2軸方向の開口長が9×dV(VA#9、VA#4、VA#11、VA#14、VA#15、VA#25、VA#20、VA#27、VA#30、VA#31)である。仮想アンテナが1×dVまたは1×dHの間隔で等間隔に配置されている。これにより、図18A及び図18Bに示されるように、グレーティングの生じないビームを形成できる。
図19Aは、実施の形態1のバリエーション2に係る仮想受信アレー(図16C)の第1軸方向に等間隔に配置された仮想受信アレー(VA#1〜VA#8、VA#17〜VA#24)による一次元ビームによる指向性パターンの一例を示す。
図16Cに示される仮想受信アレーVA#1〜VA#32のうち、第1軸方向に等間隔に配置された仮想受信アレーVA#1〜VA#8、もしくは仮想受信アレーVA#17〜VA#24を用いる場合、7×dHの開口長として、例えば、図19Aに示される第1軸方向の一次元のビームパターンが形成される。
図19Bは、実施の形態1のバリエーション2に係る仮想受信アレーの第2軸方向に等間隔に配置された仮想受信アレーによる一次元ビームによる指向性パターンの一例を示す。
図16Cに示される仮想受信アレーVA#1〜VA#32のうち、第1軸方向の場合と同様に、第2軸方向に等間隔に配置された仮想受信アレーVA#9、VA#4、VA#11、VA#14、VA#15、VA#25、VA#20、VA#27、VA#30、VA#31を用いると、9×dVの開口長として、例えば、図19Bに示される第2軸方向の一次元のビームパターンが形成される。
実施の形態1のバリエーション1に係る図12A及び図12Bと同バリエーション2に係る図19A及び図19Bとを比較することにより、次のことが判る。図10Cに示される同数の等間隔に密に仮想受信アレーが配置されている実施の形態1のバリエーション1に比べて、図16Cに示される同バリエーション2は、仮想受信アレーの形成するビーム幅が小さく、より高い角度分解能が得られる。
一方、図18A及び図18Bに示される実施の形態1のバリエーション2は、図12A及び図12Bに示される実施の形態1のバリエーション1よりも、二次元ビームのサイドローブレベルが高い。
そこで、まず、実施の形態1のバリエーション2のアンテナ配置において、図18A及び図18Bに示される二次元のビームを用いて粗く到来方向を推定する。次いで、推定された到来波のある角度付近で、同バリエーション2のアンテナ配置において、図19A及び図19Bに示される一次元のビームを形成する仮想受信アレーを用いて精密に到来方向を推定してもよい。
このような推定プロセスによって、図18A及び図18Bに示される二次元のビームに比べてサイドローブの低い図19A及び図19Bに示される一次元のビームによって誤検出の確率を減らし、より精密な角度推定が可能である。また、図19A及び図19Bに示される一次元のビームでは確定することが困難な2個以上のターゲットの位置を推定可能となり、さらに、計算量を削減できる。
以上、実施の形態1に係るアンテナ配置の例としてバリエーション1及びバリエーション,2について説明した。
このように、実施の形態1では、レーダ装置10は、送信アレーアンテナ108の複数の送信アンテナ素子#1〜#Ntを切り替えてレーダ送信信号を送信するレーダ送信部100と、レーダ送信信号がターゲットにおいて反射された反射波信号を、送信アレーアンテナ202の複数の受信アンテナ素子#1〜#Naを用いて受信するレーダ受信部200と、を具備する。また、実施の形態1では、送信アンテナ素子#1〜#Nt及び受信アンテナ素子#1〜#Naを上述の規則で配置する。
これにより、送信アレーアンテナ108及び受信アレーアンテナ202を、例えば、サブアレー化によって、アンテナ素子のサイズを拡大し、アンテナ利得を向上させることができる。また、アンテナ配置によって第1の間隔dH及び第2の間隔dVの等間隔に配置された仮想受信アレーを構成でき、角度サイドローブ又はグレーティングローブ成分を抑圧できる。
実施の形態1によれば、送信アレーアンテナ108及び受信アレーアンテナ202のサイズを、例えば、サブアレー化によって拡大し、反射波信号の受信SNRを向上させ、仮想受信アレーの形成するビームパターンにおけるサイドローブ又はグレーティングローブを抑圧できるMIMOレーダを構成できる。
(実施の形態2)
実施の形態1において、第2のアンテナ群として、例えば、図9Aの第2のアンテナ群G2のように、ジグザグ状に2列で配置されている構成を例示した。図9Aに示されるように、第1列のアンテナTx21と第2列のアンテナTx22とは、第2軸方向に第2の間隔を隔てて配置され、第1軸方向に第1の間隔のxs倍を隔てて配置されている。さらに、第1軸の座標において、アンテナTx21とアンテナTx11との間にアンテナTx22が配置されている。
これに代えて、第2のアンテナ群のアンテナ素子が、第1軸上における配置の範囲を広げた配置について説明する。つまり、第2のアンテナ群のアンテナ素子は、第2軸座標が全て異なる位置に配置される。さらに、第2のアンテナ群の少なくとも2個のアンテナ素子は、第1軸座標が同じ位置に配置される。これにより、実施の形態1と比較して、送信アレーアンテナを構成するアンテナ素子の開口長を第2軸方向に広げて配置でき、アンテナ素子の高利得化が可能となるといった効果を得ることができる。
なお、以下に説明する実施の形態2とそのバリエーション1および2において、アンテナ素子をサブアレー構成としてもよく、特にアンテナ素子のサイズが第2軸方向に2×dV以上の場合に効率よく仮想受信アレーを構成できる。
実施の形態2では、実施の形態1と比較して送信アンテナ素子のサイズを第2軸方向に大きくした場合に、誤検出の確率が低減され、効率のよい仮想受信アレーを構成するアンテナ配置と、それを用いた到来方向推定手法とについて説明する。
図20Aは、実施の形態2に係る送信アレーアンテナ108gのアンテナ素子Tx#1〜#Ntの配置の一例を示す。図20Bは、実施の形態2に係る受信アレーアンテナ202gのアンテナ素子Rx#1〜#Naの配置の一例を示す。図20Cは、実施の形態2に係る仮想受信アレー500gの配置の一例を示す。
図20Aから図20Cにおいては、送信アレーアンテナ108gのアンテナ素子数Nt=6、受信アレーアンテナ202gのアンテナ素子数Na=8、仮想受信アレー500gの素子数は48である場合が、一例として示されている。図20Aおよび図20Bに示される第1軸と第2軸とは、互いに直交する。
図20Aにおいて、送信アレーアンテナ108gのアンテナ素子をTx#1〜Tx#6で表す。第1のアンテナ群G1は、Tx#1(少なくとも1つの第1のアンテナ素子)を含む。第2のアンテナ群G2は、Tx#1〜Tx#6(複数の第2のアンテナ素子)を含む。
図20Aに示されるように、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#6は、第2の方向に第2の間隔毎に配置される。換言すると、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#6は、それぞれが、異なる第2軸座標に配置される。さらに、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#4は、それぞれ、第1軸方向に第1の間隔を隔てて配置され、送信アンテナ素子Tx#1,Tx#2の第1軸座標が、それぞれ、Tx#5,Tx#6の第1軸座標に等しい。
図20Bにおいて、受信アンテナ素子(複数の第3のアンテナ素子)を、Rx#1〜Rx#8で表す。図20Bに示されるように、受信アンテナ素子Rx#1〜Rx#8は、第1軸方向に第1の間隔で等間隔に配置される。
図20Aおよび図20Bに示されるアンテナ素子の配置を用いた場合、図20Cに示される仮想受信アレー500gの構成、即ち、第1軸方向および第2軸方向のアンテナ素子間隔が、それぞれ、1×dV及び1×dHとなる領域を含む仮想受信アレー500gの構成が得られる。
図21は、実施の形態2に係るアンテナ素子のサイズ113、215の一例を示す。
図20Aおよび図20Bに示されるアンテナ配置の場合、アンテナ素子のサイズ113、215を、例えば、図21に示されるように規定できる。ここで、アンテナ素子のサイズ113、215は隣接するアンテナ素子に干渉しないサイズである。
図21において、送信アレーアンテナ108hのアンテナ素子のサイズ113hは、第1軸方向にdH以下の開口長、第2軸方向に4×dV以下の開口長で形成される。また、受信アレーアンテナ202hのアンテナ素子のサイズ215h、は第1軸方向にdH以下の開口長、第2軸方向には任意の開口長で形成される。
図21に示されるアンテナ素子は、それぞれ、複数のアンテナ素子を用いるサブアレーアンテナを用いて構成してもよい。さらに、サブアレーアンテナにアレーウエイトをかけてサイドローブを抑制してもよい。
なお、送信アレーアンテナ108hは、複数のアンテナ素子によってビーム形成してもよい。例えば、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#6に位相を制御して給電して、1送信アンテナ素子、8受信アンテナ素子によって8個の仮想受信アレー素子を構成する。
例えば、図21に示される送信アンテナ108hにおいて、開口長が第1軸方向にdH程度、第2軸方向に4×dV程度としたアンテナ素子を、それぞれ、サブアレーアンテナで構成する場合、サブアレーアンテナを密に構成することができるので、ビーム形成した場合にサイドローブレベルの低いビームを形成することが可能である。
このように、本開示のアンテナ配置とアンテナ素子のサブアレー構成によって、送信アンテナ108をひとつの高利得アンテナとして用いることができる。また、時分割多重MIMOレーダの場合、多重数が少なくなることから送信周期が小さくなり、そのためドップラ解析部によって解析可能である最大ドップラ速度を大きくすることができる。したがって、上述の一例は送信アンテナ素子からそれぞれ独立に信号を送信した場合に比べて、長距離、高速物体の検知に適した構成となる。
<実施の形態2のバリエーション1>
実施の形態2のバリエーション1では、実施の形態2と比較して、受信アンテナの第1軸方向の間隔を広く配置することで仮想受信アレーの開口長を拡げ、高い分解能が得られるアンテナ配置について説明する。
図22Aは、実施の形態2のバリエーション1に係る送信アレーアンテナ108iのアンテナ素子Tx#1〜#Ntの配置の一例を示す。図22Bは、実施の形態2のバリエーション1に係る受信アレーアンテナ202iのアンテナ素子Rx#1〜#Naの配置の一例を示す。図22Cは、実施の形態2のバリエーション1に係る仮想受信アレー500iの配置の一例を示す。
図22Aから図22Cにおいては、送信アレーアンテナ108iのアンテナ素子数Nt=5、受信アレーアンテナ202iのアンテナ素子数Na=6、仮想受信アレー500iの素子数は30である場合が、一例として示されている。図22Aおよび図22Bに示される第1軸と第2軸とは、互いに直交する。
図22Aにおいて、送信アレーアンテナ108iのアンテナ素子をTx#1〜Tx#5で表す。第1のアンテナ群G1は、Tx#1(少なくとも1つの第1のアンテナ素子)を含む。第2のアンテナ群G2は、Tx#1〜Tx#5(複数の第2のアンテナ素子)を含む。
図22Aに示されるように、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#5は、第2の方向に第2の間隔毎に配置される。換言すると、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#5は、それぞれが、異なる第2軸座標に配置される。さらに、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#4は、それぞれ、第1軸方向に第1の間隔を隔てて配置され、送信アンテナ素子Tx#1の第1軸座標が、Tx#5の第1軸座標に等しい。
図22Bにおいて、受信アンテナ素子(複数の第3のアンテナ素子)を、Rx#1〜Rx#6で表す。図22Bに示されるように、受信アンテナ素子Rx#1〜Rx#6は、第1軸方向に2×dHの間隔で等間隔に配置され、第2軸方向に、5×dVの間隔で配置される。
図22Aおよび図22Bに示されるアンテナ素子の配置を用いる場合、図22Cに示される仮想受信アレー500iの構成、即ち、隣接する仮想アンテナ素子が式(23)に示す間隔interval以下の間隔で並ぶ仮想受信アレー500gの構成が得られる。
図22Aおよび図22Bに示されるアンテナ配置の場合、アンテナ素子のサイズを、例えば、図21に示される実施の形態2のアンテナ素子のサイズ113、215と同様に規定できる。
例えば、図22Aに示される送信アレーアンテナ108iのアンテナ素子は、第1軸方向にdH以下の開口長、第2軸方向に4×dV以下の開口長で形成される。また、図22Bに示される受信アレーアンテナ202iのアンテナ素子は、第1軸方向に2×dH以下の開口長、第2軸方向には5×dHV以下の開口長で形成される。
図22Aに示されるアンテナ素子は、それぞれ、複数のアンテナ素子を用いるサブアレーアンテナを用いて構成してもよい。さらに、サブアレーアンテナにアレーウエイトをかけてサイドローブを抑制してもよい。
実施の形態2のバリエーション1によれば、図22Aおよび図22Bに示される構成によって、図22Cに示される仮想受信アレー500iを構成する。これにより、送信アレーアンテナ素子の第2軸方向の開口長を大きくすることができ、さらに、受信アレーアンテナ素子の第1軸方向の開口長を実施の形態2よりも大きくすることができる。
<実施の形態2のバリエーション2>
実施の形態2のバリエーション2のアンテナ配置は、実施の形態のバリエーション1のアンテナ配置を一部含むようなアンテナ配置を採る。実施の形態2のバリエーション1で得られる効果に加えて、分解能の向上と、時分割MIMOの場合に、ドップラ解析部によって解析可能である最大ドップラ速度の向上の効果が得られる。
図23Aは、実施の形態2のバリエーション2に係る送信アレーアンテナ108jのアンテナ素子Tx#1〜#Ntの配置の一例を示す。図23Bは、実施の形態2のバリエーション2に係る受信アレーアンテナ202jのアンテナ素子Rx#1〜#Naの配置の一例を示す。図23Cは、実施の形態2のバリエーション2に係る仮想受信アレー500jの配置の一例を示す。
図23Aにおいて、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#5は、図22Aに示される実施の形態2のバリエーション1の送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#5と同じ構成を採る。また、図23Aにおいて、第1のアンテナ群G1は、送信アンテナ素子Tx#4、Tx#6、Tx#7、Tx#8を含み、第2のアンテナ群G2は、送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#5を含む。
図23Bにおいて、受信アンテナ素子Rx#1,Rx#2,Rx#4,Rx#5,Rx#6は、図22Bに示される実施の形態2のバリエーション1の受信アンテナ素子Rx#1,Rx#2,Rx#4,Rx#5,Rx#6と同じ構成を採る。また、図23Bにおいて、仮想受信アレーの仮想アンテナ素子が重複する位置に構成されるように、受信アンテナ素子Rx#3の第1軸座標および第2軸座標は、それぞれ、他の受信アンテナ素子Rx#1,Rx#2,Rx#4,Rx#5,Rx#6のいずれの第1軸座標および第2軸座標とも異なる。
図23Cに示す仮想受信アレーにおいて、仮想アンテナ素子VA#6の位置には、送信アンテナ素子Tx#2と受信アンテナ素子Rx#3とによって構成される仮想アンテナ素子と、送信アンテナ素子Tx#3と受信アンテナ素子Rx#2とによって構成される仮想アンテナ素子とが重複して構成される。したがって、仮想アンテナ素子VA#6の位置では、重複する仮想アンテナ素子に対応して、2つの受信信号が存在する。2つの受信信号の一方を用いて到来方向推定を行ってもよく、その平均値を用いてに到来方向推定を行ってもよく、また、その和を用いて到来方向推定を行ってもよい。仮想アンテナの位置が重複することから、重複する2つの受信信号に到来角による位相差はない。また、重複する2つの受信信号を用いてドップラ解析を行ってもよい。
図24は、実施の形態2のバリエーション2に係るアンテナ素子のサイズ113k、215kの一例を示す。
図24に示されるように、アンテナサイズ113k、215kを、例えば、実施の形態2および実施の形態2のバリエーション1と同様に規定できる。ここで、アンテナ素子のサイズ113k、215kは隣接するアンテナ素子に干渉しないサイズである。
なお、図24では送信アンテナ素子Tx#1〜#8および受信アンテナ素子Rx#1〜#6のサイズが、同一である。しかしながら、隣接するアンテナに干渉しないサイズであれば、送信アンテナ素子Tx#1〜#8および受信アンテナ素子Rx#1〜#6のサイズは、異なってもよい。また、送信アンテナ素子および受信アンテナ素子は、サブアレーアンテナを用いて構成してもよく、サブアレーアンテナにアレーウエイトをかけてサイドローブを抑制してもよい。
例えば、受信アンテナ素子Rx#1〜#6は、それぞれ、第1軸方向に2素子、第2軸方向に4素子のサブアレーで構成してもよい。さらに、送信アンテナ素子Tx#6〜#8は、第1軸方向に3×dH、第2軸方向に8×dVの開口長のサブアレーで構成してもよい。図23の構成と比較して、送信アンテナ108kのビームパターンが狭角になり、正面方向のアンテナ利得が上がることからSNRが向上する。
図25Aは、図23Cに示される実施の形態2のバリエーション2に係る仮想受信アレー500jによる二次元ビーム(メインビーム:水平0°、垂直0°方向)の指向性パターンであって第1軸方向に沿った断面図の一例を示す。図25Bは、実施の形態2のバリエーション2に係る仮想受信アレーによる二次元ビームの指向性パターンであって第2軸方向に沿った断面図の一例を示す。
実施の形態2のバリエーション2では、実施の形態2のバリエーション1と比較して、仮想受信アレー500jが疎に配置されることから、サイドローブレベルが高い。そこで、実施の形態1のバリエーション2の説明において上述したように、第1軸方向および第2軸方向の到来方向推定を独立して行う手法と組み合わせることで、サイドローブレベルの高さによる誤検出の確率への影響を抑制してもよい。例えば、図23Cに示す仮想受信アレー500jによって、第1軸方向および第2軸方向に精密に到来方向推定を行い、ある閾値を超えた角度に対して2次元ビームを用いた精密な到来方向推定を行う。これにより、サイドローブレベルの高さによる誤検出の確率への影響を抑制でき、さらに、到来方向推定に求められる計算量を削減できる。
なお、実施の形態2および実施の形態2のバリエーション1と同様に、送信アレーアンテナ108jに含まれる複数の送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#8の一部を多重して使用してもよい。例えば、送信アレーアンテナ108jに含まれる複数の送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#8のうち、送信アンテナTx#1〜Tx#5の5個の送信アンテナを多重して使用してもよい。これにより、第2軸方向(垂直方向)の角度推定性能を維持し、アンテナの多重数を削減できる。また、例えば、送信アレーアンテナ108jに含まれる複数の送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#8のうち、送信アンテナTx#4,Tx#6,Tx#7,Tx#8の4個の送信アンテナを多重して使用してもよい。これにより、第1軸方向(水平方向)の角度推定性能を維持しつつ、アンテナの多重数を削減できる。時分割多重MIMOレーダの場合、アンテナの多重数が少ない程、送信周期がより小さい信号をドップラ解析部213で解析でき、ドップラ解析部213で解析可能である最大速度をより大きくすることができる。
また、複数の送信アンテナ素子Tx#1〜Tx#8に含まれる複数のアンテナ素子によってビーム形成してもよい。
(他の実施の形態)
実施の形態1において、第2のアンテナ群として、第2軸方向に第2の間隔毎に配置され、アンテナ素子毎に第1軸方向に前記第1の間隔のxs倍を隔てて配置された構成を例示した。これに代えて、第2のアンテナ群として、第2軸方向に第2の間隔毎に配置され、N個周期で第1軸方向に第1の間隔のxs,j倍を隔てて配置された構成も考えられる。
具体的には、実施の形態1の説明に記載の式(20)において、p
tHに代えて、1からp
t2までの整数jに対して、次の式(24)で規定されるp'
tHを用いる構成も考えられる。
ここで、Nは2よりも大きくp
r1以下の整数であり、j=0,1,…,N-1に対して、x
s,jは、それぞれ、0以上p
r1未満の整数である。
例えば、N=pr1であり、xs,j=jである場合、送信アレーアンテナ108のアンテナ素子は、第2軸方向にN×dVの開口長を有する。したがって、送信アレーアンテナ108のアンテナ素子を基本間隔dH、dVで直線的に等間隔配置した場合に比べて、送信アレーアンテナ108及び受信アレーアンテナ202のアンテナ素子のサイズを拡大でき、高いアンテナ利得を得ることができる。また、仮想受信アレーを半波長程度に等間隔に配置することにより、グレーティングローブ又はサイドローブ成分を抑圧できる。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
上記各実施の形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。例えば、バイオ技術の適用が可能性としてありえる。
本開示のレーダ装置は、レーダ信号を送信アレーアンテナから送信するレーダ送信回路と、前記レーダ信号がターゲットにおいて反射された反射波信号を受信アレーアンテナから受信するレーダ受信回路と、を具備し、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナの一方は、第1のアンテナ群と第2のアンテナ群とを含み、前記第1のアンテナ群は、各アンテナ素子の位相中心が第1軸方向に沿って第1の配置間隔毎に配置された1つ以上の第1のアンテナ素子と1つの共用アンテナ素子とを含み、前記第2のアンテナ群は、複数の第2のアンテナ素子と前記1つの共用アンテナ素子とを含み、各アンテナ素子の位相中心が前記第1軸方向とは異なる第2軸方向に沿って2列に第2の配置間隔毎に配置され、前記2列それぞれに含まれるアンテナ素子の位相中心は前記第2軸方向における位置が互いに異なり、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナの他方は、位相中心が、前記第1軸方向に沿って、前記第1の配置間隔に基づいた第1の列数、前記第1の配置間隔よりも小さい第3の配置間隔毎に配置され、前記第2軸方向に沿って、前記第2の配置間隔よりも大きい第4の配置間隔毎に配置された、複数の第3のアンテナ素子を含む。
本開示のレーダ装置において、前記第1の配置間隔は、第1の間隔のpr1倍に等しく、前記第2の配置間隔は、第2の間隔に等しく、前記第1の列数は、前記pr1に等しく、前記第3の配置間隔は、前記第1の間隔に等しく、前記第4の配置間隔は、前記第2の間隔のpt2倍に等しく、前記第2のアンテナ群の前記2列は互いに、前記第1軸上で、前記第1の間隔のxs倍、異なる位置に配置され、前記pr1は、1よりも大きい整数であり、前記pt2は、1よりも大きい整数であり、前記xsは、0よりも大きく前記pr1よりも小さい整数である。
本開示のレーダ装置において、前記xsが1に等しい。
本開示のレーダ装置において、前記1つ以上の第1のアンテナ素子の素子数が1に等しい。
本開示のレーダ装置において、前記複数の第3のアンテナ素子の素子数が前記第1の列数に等しい。
本開示のレーダ装置において、前記複数の第3のアンテナ素子の素子数が前記第1の列数よりも大きい。
本開示のレーダ装置において、前記第1の間隔及び前記第2の間隔は、前記レーダ信号の波長を基準として、0.3波長以上2波長以下である。
本開示のレーダ装置において、前記第1のアンテナ群と前記第2のアンテナ群とがT字もしくは十字型に配置される。
本開示のレーダ装置において、前記第1軸方向と前記第2軸方向とは互いに直交する。
本開示のレーダ装置は、レーダ信号を送信アレーアンテナから送信するレーダ送信回路と、前記レーダ信号がターゲットにおいて反射された反射波信号を受信アレーアンテナから受信するレーダ受信回路と、を具備し、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナの一方は、第1のアンテナ群と第2のアンテナ群とを含み、前記第1のアンテナ群は、1つの共用アンテナ素子である、または、各アンテナ素子の位相中心が第1軸方向に沿って配置された1以上の第1のアンテナ素子と前記1つの共用アンテナ素子とを含み、前記第2のアンテナ群は、複数の第2のアンテナ素子と前記1つの共用アンテナ素子とを含み、前記第1軸方向とは異なる第2軸方向における各アンテナ素子の位相中心の位置が互いに異なり、前記複数の第2のアンテナ素子の少なくとも1つの位相中心と前記1つの共用アンテナ素子の位相中心とは、前記第1軸方向における位置が等しく、前記第2軸方向に第2の配置間隔毎に1列以上に配置される。