JP2019163623A - 二酸化炭素を利用した地盤改良方法及び地盤改良システム - Google Patents

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Abstract

【課題】二酸化炭素を利用し、豪雨による斜面崩落の危険度が高い斜面などの地盤強化を図ることができる地盤改良方法を提供する。【解決手段】本地盤改良方法は、二酸化炭素と反応し固化する二酸化炭素吸収剤もしくは二酸化炭素吸収剤を含む水溶液を、改良対象の地盤表面に散布する又は地盤内部に混入する散布混入工程、二酸化炭素吸収剤を地盤内の間隙に浸透させる浸透工程、二酸化炭素吸収剤と二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体と反応させ、二酸化炭素吸収剤を固化させ上記の間隙に結合剤として残留させる反応固化工程を備える。散布混入工程は、同一地盤に対して複数回にわたり実施される。反応固化工程において、地盤内部のガスを吸引することにより、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体を、強制的に地盤表面又は地盤内部に送り込む。【選択図】図2

Description

本発明は、二酸化炭素を利用した地盤改良方法及び地盤改良システムに関するものである。
天然の無機物である石灰による土を固化させる処理は、古くから行われ、中国の秦の始皇帝時代の万里の長城の建設において、黄土を石灰で固化させたことが知られている。日本では、古民家の土間床に使用された地面の三和土(たたきつち)が、赤土、砂利などに消石灰とにがりを混練し塗布し敲き固めた素材であることが知られている。このように石灰によって土を固化させる処理は、土の安定性と耐久性の向上のため、そのままでは使用困難な土に石灰を加えて使用できる建築素材に変える方法であり、建物、道路、鉄道線路、河川壁の基礎工事や改修工事など広範囲に適用されている。また、廃棄物処理やリサイクル処理においても石灰が活用されている。
土木建築用の結合剤やコンクリート,モルタルの主原料とする無機質の粉末であるセメントの成分は、主に、カルシウム−ケイ素−アルミニウム−鉄を含んだ酸化物であり、生石灰(CaO) とシリカ(SiO )の混合比率を変えることにより、固化反応速度が異なる各種セメントが生成され、また、原料に少量含まれるアルミナ(Al)と酸化鉄(Fe)も、セメントを焼成し易くするとともに、セメントの反応速度や硬化強度に影響を与えることが知られている。このように、現在の建造物の基礎工事に用いられるセメントもまた、石灰を用いている。
一方で、昨今、大気中の二酸化炭素による地球温暖化が人類にとって深刻な課題になっている。この地球温暖化防止に関するもので大気中の二酸化炭素の量を減少させる技術が開発されているが、開発されている技術はその多くが大規模かつ高コストなものが多く、特に大気中の二酸化炭素を濃縮させてから処理するものが多いため、二酸化炭素の濃縮設備に関するコストが大きいといった問題や、濃縮設備を稼働させるために電力を消費するため、その電力を生成するために二酸化炭素を放出してしまうといったジレンマが存在する。
また、地球温暖化による影響から、異常気象による豪雨によって河川の氾濫や斜面崩壊による大規模な災害が発生している。これらの防災対策の一つとして、土砂崩れを未然に防ぐために斜面補強対策などが行われているものの、防災対策が必要な箇所は日本国内だけでも50万箇所以上存在することが知られており、高コストな斜面補強対策などは予算不足で遅々として進んでいないといった現状がある。
かかる状況下、セメントコンクリートに含まれる生石灰(CaO)やシリカ(SiO )に基づいて二次的に生成される水酸化カルシウムやカルシウムシリケート水和物が、大気中の二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムを生成する過程で生じる炭酸化現象を利用し、建造物の外壁を構成するセメントコンクリート成型体に二酸化炭素を積極的に固定化する技術が知られている(特許文献1を参照)。特許文献1に開示された技術は、地面の表面に形成されるセメントコンクリート擁壁が、その擁壁自体に直径数10〜数100μmの空隙や空洞孔を所定範囲の容積率で有する表層部を有し、かつその表層部に大気が接触するように水抜き孔が設けられた構造であり、水抜き孔の内壁の表層部を通して、効率よく二酸化炭素を浸透させるようにし、炭酸化現象を促し、二酸化炭素の固定化量を増大させるものである。
しかしながら、建造物の基礎工事と同様に、セメントコンクリート擁壁を建設するためのコストが高いといった問題がある。
特開2007−177586号公報
上述したとおり、2つの課題、すなわち、地球温暖化対策、及び、豪雨による斜面崩落の危険度が高い斜面防災対策は、至急対策を講じることが必要である。これら2つの重要な課題を同時に解決できる方法として、大気中の二酸化炭素を危険斜面の内部に取り込み、そこで雨水の浸透によって二酸化炭素と固化補助剤を化学反応させて二酸化炭素を固化し、その作用によって地盤の強度を上げて、豪雨による斜面崩落の危険度を下げるという方法を提供する。
すなわち、本発明は、二酸化炭素を利用し、豪雨による斜面崩落の危険度が高い斜面などの地盤強化を図ることができる地盤改良方法及び地盤改良システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良方法は、下記1)〜3)の工程を備える。
1)二酸化炭素と反応し固化する二酸化炭素吸収剤もしくは二酸化炭素吸収剤を含む水溶液を、改良対象の地盤表面に散布する又は地盤内部に混入する散布混入工程。
2)二酸化炭素吸収剤を地盤内の間隙に浸透させる浸透工程。
3)二酸化炭素吸収剤と二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体と反応させ、二酸化炭素吸収剤を固化させ上記の間隙に結合剤として残留させる反応固化工程。
上記1)〜3)の工程によって、大気をそのまま斜面などの地盤の地中に取り込み、その中に含まれる二酸化炭素と二酸化炭素吸収剤との炭酸化反応によって、地中に炭酸塩を生成し、その生成物によって土粒子間の動きを抑制し、結果的に斜面の強度を向上させて、豪雨時の土砂災害に対する安全率を向上させることができる。また、二酸化炭素吸収剤を固化させ、地盤内の間隙に結合剤として残留させることにより、地盤の透水性を変化させることができ、これに伴い、河川などの水の流れが変化し、地形の形成を制御できる可能性がある。
上記1)〜3)の工程では、二酸化炭素を濃縮する必要がないことから、濃縮関連設備に関係するコストが不要であり、二酸化炭素や大気をそのまま地盤表面に散布又は地盤内部に混入するだけであり、全体コストを大幅に低減することができる。
ここで、二酸化炭素吸収剤とは、二酸化炭素と反応し自らが固化する化合物から成り、砂礫の間隙で固化することで結合剤として作用し、土壌の砂礫の固化補助剤や土壌の補強剤として機能できるものである。具体的には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属炭酸塩の少なくとも何れかである。特に、アルカリ土類金属水酸化物の消石灰(Ca(OH))や、アルカリ土類金属酸化物の生石灰(CaO)を好適に用いることができる。
改良対象の地盤とは、豪雨による崩落の危険度が高い斜面、車両等が走行困難な泥濘面、盛り土など、補強が必要な地盤である。改良対象の地盤が盛り土の場合には、盛り土を形成する過程において、盛り土の表面に二酸化炭素吸収剤を含む水溶液を散布することが好ましい。
上記1)の散布混入工程において、二酸化炭素吸収剤を地盤表面に散布する場合には、二酸化炭素吸収剤を散布後、更に水を地盤表面に散布することが好ましい。
上記1)の散布混入工程において、二酸化炭素吸収剤を含む水溶液を地盤内部に混入する場合には、地表から粘土層までの任意の場所に、パイプを通じて混入させることが好ましい。
ここで、パイプはメッシュ状のパイプであり、パイプにはメッシュ面に散布用孔が散在し、メッシュ面が地盤の表面に沿って配設されることが好ましい。
上記3)の反応固化工程において、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体を、パイプを通じて、強制的に地盤表面又は地盤内部に送り込むことが好ましい。強制的に地盤表面又は地盤内部に送り込む方法としては、例えば、ポンプを用いて、強制的に二酸化炭素等の気体を地盤表面又は地盤内部に送り込むことができる。
上記1)の散布混入工程によって、まず、土壌中に最初から存在した二酸化炭素が二酸化炭素吸収剤と反応して全て消費される。その後に、大気を更に地中に強制的に吸入させて、大気中に含まれる二酸化炭素との炭酸化反応を促進させる。
また、斜面の強度向上の度合いや改良対象の地盤の場所的分布をモニタリングし、斜面などの地盤が全体として必要なレベルまで強度が確保できるように、二酸化炭素吸収剤の散布から大気の吸入プロセスを随時繰り返すことにより、効果をより発揮させることができる。
上記1)の散布混入工程において、予め改良対象の地盤における粘土層の等高線を計測し、等高線の高い場所の地盤表面に散布する又は地盤内部に混入することが好ましい。粘土層の上層には地下水が流れることから、等高線の高い場所の地盤表面に散布する又は地盤内部に混入することにより地下水によって、二酸化炭素吸収剤を広範囲に土壌内で広範囲に拡散させることが可能である。
上記1)の散布混入工程は、同一地盤に対して複数回にわたり実施されることが好ましい。
上記2)の浸透工程及び上記3)の反応固化工程に要する時間は、改良対象の地盤をサンプリングし、予め上記1)の散布混入工程を実施し、適切な養生時間を算出することでもよい。
上記3)の反応固化工程において、地盤内部のガスを吸引することにより、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体を、強制的に地盤表面又は地盤内部に送り込むことが好ましい。地盤内に挿し込んだパイプを用いて地盤内部のガスを吸引してもよい。上述したが、改良対象の地盤の場所的分布をモニタリングし、斜面などの地盤が全体として必要なレベルまで強度が確保できるように、大気の吸入プロセスを随時繰り返すことが効果的である。
以上述べたとおり、本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良方法では、パイプを通じて、大気を強制的に地盤内部に送り込んだり、地盤内部のガスを吸引することにより結果として大気を強制的に地盤内部に送り込んだりすることが可能である。このことにより、地盤の地下水位を低下させることも実現可能である。すなわち、パイプを通じて追加の空気を入れることができるので、パイプによる大気混入を行っている際に必要以上に地下水があれば、そのパイプを地下水の排管用パイプとして自然に利用することになる。このような排管用パイプとしての利用の効果によって、必要以上に地下水があれば、まず地下水が抜き取られ、その水位が十分に下がってから空気を吸引することになる。これは、地盤改良を目的として設置するパイプによって、本発明の地盤改良方法に、地下水位低下工法の要素が自動的に組み込まれていることになり、無駄のない優れた方法であるということができる。
次に、本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良システムについて説明する。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良システムは、上記の地盤改良方法に用いるシステムであって、二酸化炭素吸収剤を地盤表面に散布する移動体と、その移動体を操作して改良対象の地盤表面に散布させる操作端末を備える。
移動体は、自動車や列車などの陸上の移動体に限らず、空中を移動できるドローンなどの飛行体でもよい。また、移動体は自律走行できるものでもよい。操作端末は、移動体に搭載されるものでも、無線ネットワークによって移動体を遠隔操作できるものでもよい。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良システムでは、上記の地盤改良方法で使用するパイプと、二酸化炭素もしくは二酸化炭素を含む気体をパイプに送り込むためにパイプの投入口に接続される送出用ポンプ、又は、二酸化炭素もしくは二酸化炭素を含む気体を強制的に地盤表面又は地盤内部に送り込むためにパイプの排出口に接続される吸引用ポンプと、二酸化炭素吸収剤を地盤表面に散布する移動体と、その移動体を操作して改良対象の地盤表面に散布させる操作端末を備える。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良システムでは、パイプを用いて、大気を強制的に地盤内部に送り込んだり、パイプを用いて、地盤内部のガスを吸引することにより結果として大気を強制的に地盤内部に送り込んだりすることにより、地盤の地下水位を低下させることも実現可能である。上述の地盤改良方法で述べたとおり、パイプを通じて空気を吸引したり送り出したりできるので、必要以上に地下水があれば、そのパイプを地下水の排管用パイプとして利用し、必要以上に地下水があれば、まず地下水を抜き取り、その水位が十分に下がってから空気を吸引できる。地盤改良を目的とする本発明のシステムによって、地下水位低下工法の要素が自動的に組み込まれていることになり、無駄のない優れたシステムであるということができる。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良システムでは、上記の地盤改良方法で使用するパイプと、二酸化炭素吸収剤を含む水溶液をパイプに送り込むためにパイプの投入口に接続される送出用ポンプを備える。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良システムにおける上記パイプはメッシュ状のパイプであり、パイプにはメッシュ面に散布用孔が散在し、メッシュ面が地盤の表面に沿って配設されることが好ましい。
本発明によれば、二酸化炭素を利用し、豪雨による斜面崩落の危険度が高い斜面などの地盤強化を図ることができるといった効果がある。
大気をそのまま地盤の地中に取り込み、その中に含まれる二酸化炭素と二酸化炭素吸収剤との炭酸化反応によって、地中に炭酸塩を生成し、その生成物によって土粒子間の動きを抑制し、結果的に斜面の強度を向上させて、豪雨時の土砂災害に対する安全率を向上させるため、二酸化炭素を濃縮する必要がないことから、全体コストを大幅に低減することができる。
特に、二酸化炭素吸収剤を自然界に多く存在する無機物の石灰を用いることにより、材料コストを大幅に低減することが可能である。
実施例1の二酸化炭素を利用した地盤改良方法のフロー図 実施例1の二酸化炭素を利用した地盤改良方法の説明図 地盤改良方法の効果の説明図 実施例2の二酸化炭素を利用した地盤改良方法のフロー図 実施例2の二酸化炭素を利用した地盤改良方法の説明図 実施例3の二酸化炭素を利用した地盤改良方法のフロー図 実施例3の二酸化炭素を利用した地盤改良方法の説明図 実施例4の二酸化炭素を利用した地盤改良方法の説明図 実施例5の一軸圧縮実験の説明図 改良土の顕微鏡写真 応力−ひずみ曲線(実施例5) 実施例6の大気の強制的吸引実験の説明図 実施例6のCa(OH)2水溶液と水との比較対照実験の説明図
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良方法の一実施形態について、図1〜3を参照して説明する。図1は、本実施例の二酸化炭素を利用した地盤改良方法のフローを示している。ここでは、改良対象の地盤として暴雨により土砂災害が生じる危険度が高い斜面を例に説明する。
まず、二酸化炭素吸収剤として水酸化カルシウムCa(OH)2を斜面表面に散布する(散布混入工程;ステップS01)。そして、降雨等により地盤内に浸透させる(浸透工程;ステップS02)。地盤内に浸透したCa(OH)2と、地盤内のCO2が反応(炭酸化)し、結合剤(CaCO3)を生成させる(反応固化工程1;ステップS03)。
水酸化カルシウムは消石灰であり、上述のとおり、土に混練され土を固化するのに用いられていた。また、セメントコンクリート成型体で二次的に生成される水酸化カルシウムが二酸化炭素と反応する炭酸化現象によって、二酸化炭素を積極的に固定化することも行われている。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良方法は、水酸化カルシウムを土に混練するのではなく、また、水酸化カルシウムを含むセメントコンクリート成型体を作製するのではなく、改良対象の地盤表面に、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)を散布し、それを自然の降雨や人工の散水によって、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)を地盤内に浸透させ、地盤内に浸透した二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)と、地盤内のCO2とを反応させて、地盤内の間隙に結合剤(炭酸カルシウム)を生成させて、地盤表面や内部を固化し強化する。
本実施例の二酸化炭素を利用した地盤改良方法では、既に存在する地盤表面に対して、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)を散布させ、降雨等で地盤内に浸透させるのが特徴である。
反応固化工程1(ステップS03)では、地盤内の存在するCO2が反応し、結合剤(CaCO3)を生成させる。地盤内部の礫や砂の間隙にはCO2を含む空気が残留しており、始めに地盤内に存在するCO2が反応する。その後、時間の経過と共に、大気中の二酸化炭素が地盤に浸透していく(ステップS04)。地盤固化を優先する場合には、後述するように、吸引ポンプ等を用いて強制的に二酸化炭素を地盤に浸透させてもよい。
大気中の二酸化炭素が地盤に浸透すると、地盤内の残っているCa(OH)2と更に浸透したCO2が反応し、結合剤(CaCO3)が増大していく(反応固化工程2;ステップS05)ことで、地盤表面や内部を広範囲に固化し更に強化する。このような流れで、斜面が徐々に固化し、斜面崩落の危険度が低下する(ステップS06)。
図2に示すように、改良対象の地盤である斜面4の表面に対して、空中を飛行する移動体(図示せず)から二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム1)を散布する(図2(1)を参照)。雨5又は散水によって、水酸化カルシウム1が地盤内に浸透する(図2(2)を参照)。大気中のCO2が地盤表面に接することにより、水酸化カルシウム1とCO2が反応(炭酸化)し、炭酸カルシウムを生成する。地盤表面が炭酸化反応による緻密化によって固化し、強固な地盤表面が形成される。また、大気中のCO2が地盤内に浸透することにより、浸透した水酸化カルシウム2と浸透したCO2が反応(炭酸化)し、炭酸カルシウムを生成する。地盤内部が炭酸化反応による緻密化によって固化し、強固な地盤内部が形成される。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良方法により得られる効果について図3を参照して説明する。本地盤改良方法により、斜面の表面及び内部が緻密化され、固化して強固になり安定化する。すなわち、礫や砂の間隙に生成した炭酸カルシウムが結合剤3として機能することによって、地すべりや土砂崩れを防止できる。
また、斜面表面が固化することにより、表面の透水性も変化する。この透水性の変化によって、雨5によって地盤内に浸み込む雨水5aは減少し、表面に沿って流れる雨水5bが増加する。暴雨によって斜面の地盤内部が大量の雨水を含み、それによって斜面崩落が生じるケースでも、斜面表面が固化し表面の透水性が変化することにより、斜面の地盤内部が含む雨水の量が減り、斜面崩落を回避することができる。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良方法の他の実施形態について、図4,5を参照して説明する。図4は、本実施例の二酸化炭素を利用した地盤改良方法のフローを示している。ここでも、改良対象の地盤として暴雨により土砂災害が生じる危険度が高い斜面を例に説明する。
まず、二酸化炭素吸収剤として水酸化カルシウムCa(OH)2水溶液を斜面表面に散布する(散布混入工程;ステップS11)。この場合、降雨や散水による地盤内への浸透は不要で、対象地盤を養生、地盤内に浸透させる(浸透工程;ステップS12)。そして、地盤内に浸透したCa(OH)2と、地盤内のCO2が反応(炭酸化)し、結合剤(CaCO3)を生成させる(反応固化工程1;ステップS13)。
実施例1と同様に、反応固化工程1(ステップS13)では、地盤内の存在するCO2が反応し、結合剤(CaCO3)を生成させる。地盤内部の礫や砂の間隙にはCO2を含む空気が残留しており、始めに地盤内の存在するCO2が反応する。その後、時間の経過と共に、大気中の二酸化炭素が地盤に浸透していく(ステップS14)。地盤固化を優先する場合には、後述するように、吸引ポンプ等を用いて強制的に二酸化炭素を地盤に浸透させてもよい。
大気中の二酸化炭素が地盤に浸透すると、地盤内の残っているCa(OH)2と更に浸透したCO2が反応し、結合剤(CaCO3)が増大していく(反応固化工程2;ステップS15)ことで、地盤表面や内部を広範囲に固化し更に強化する。このような流れで、斜面が徐々に固化し、斜面崩落の危険度が低下する(ステップS16)。
図5に示すように、改良対象の地盤である斜面4の表面に対して、空中を飛行する移動体から二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)1の水溶液を散布する(図5(1)を参照)と、水酸化カルシウム水溶液が地盤内に浸透し、結果として、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)2が地盤内に浸透する。大気中のCO2が地盤表面に接することにより、水酸化カルシウム1とCO2が反応(炭酸化)し、炭酸カルシウムを生成する。地盤表面が炭酸化反応による緻密化によって固化し、強固な地盤表面が形成される。また、大気中のCO2が地盤内に浸透することにより、浸透した水酸化カルシウム2と浸透したCO2が反応(炭酸化)し、炭酸カルシウムを生成する。地盤内部が炭酸化反応による緻密化によって固化し、強固な地盤内部が形成される。
本発明の二酸化炭素を利用した地盤改良方法の他の実施形態について、図6,7を参照して説明する。図6は、本実施例の二酸化炭素を利用した地盤改良方法のフローを示している。ここでも、改良対象の地盤として暴雨により土砂災害が生じる危険度が高い斜面を例に説明する。
まず、二酸化炭素吸収剤として水酸化カルシウムCa(OH)2の水溶液を対象地盤内部に混入する(散布混入工程;ステップS21)。この場合、降雨や散水による地盤内への浸透は不要であるが、降雨や散水によって地盤内に更に浸透し、拡散させることができる(浸透工程;ステップS22)。そして、地盤内に浸透したCa(OH)2と、地盤内のCO2が反応(炭酸化)し、結合剤(CaCO3)を生成させる(反応固化工程1;ステップS23)。
実施例1,2と同様に、反応固化工程1(ステップS23)では、地盤内の存在するCO2が反応し、結合剤(CaCO3)を生成させる。地盤内部の礫や砂の間隙にはCO2を含む空気が残留しており、始めに地盤内の存在するCO2が反応する。その後、時間の経過と共に、大気中の二酸化炭素が地盤に浸透していく(ステップS24)。地盤固化を優先する場合には、後述するように、吸引ポンプ等を用いて強制的に二酸化炭素を地盤に浸透させてもよい。
大気中の二酸化炭素が地盤に浸透すると、地盤内の残っているCa(OH)2と更に浸透したCO2が反応し、結合剤(CaCO3)が増大していく(反応固化工程2;ステップS25)ことで、地盤表面や内部を広範囲に固化し更に強化する。このような流れで、斜面が徐々に固化し、斜面崩落の危険度が低下する(ステップS26)。
図7に示すように、散布混入工程(ステップS21)では、斜面表面にパイプ7を複数設置し、これらのパイプ7を用いて地盤内部との貫通孔とし、そのパイプ7から二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)の水溶液を斜面地盤内部に混入させる。パイプ7の長さは地盤の強度や地盤内の地層に応じて、適宜選択できるが、地盤表面から粘土層までの間で適宜選択する。パイプ7の開口端7aの径は特に限定されるものではないが、パイプに降雨が大量に入らないように、径の寸法を調整したり、開口端7aの形状を調整するなどの手当てをするのがよい。適度な降雨であれば、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)の更なる浸透や拡散に寄与するが、多量の降雨であれば、パイプ内を雨水で満たし、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)を外部に漏出するリスクがあるためである。
上述の実施例3では、斜面表面から地盤内部に向かってパイプ5で貫通孔を設ける例を示した(図7を参照)。本実施例では、メッシュ状のパイプを用いて、空気又は二酸化炭素、或は、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)を、地盤内に効率よく広範囲に供給する方法及びシステムについて、図8を参照して説明する。
メッシュ状に形成されたメッシュ状パイプ10は、空気又は二酸化炭素、或は、二酸化炭素吸収剤をパイプ内に投入する投入口10aと、投入した二酸化炭素等を排出する排出口10bを有している。排出口10bはメッシュ状パイプ10のメッシュ面に散布用孔として多数設けられている。図8において、メッシュ状パイプ10から地盤内部へ向かう多数の点線矢印は、排出口10bから排出される空気又は二酸化炭素、或は、二酸化炭素吸収剤の排出の様子を図示したものである。メッシュ状パイプ10は、地盤内であって、メッシュ面が地盤の表面に沿って配設される。なお、図8では、投入口10aは、斜面の下方に配置されているが、斜面の上方に配置した方が、投入物が地盤内に入る易くなる場合には、斜面の上方に配置することが好ましい。
二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)の土への散布工程の有無、浸透工程の時間(養生期間)、二酸化炭素を含む気体(空気)の吸気量、吸気方法(1回又は複数回に分割)の違いによって、改良した土の強度について調べたので、その結果について説明する。
それぞれの土の強度は、土の一軸圧縮試験の結果により評価を行った。試験対象の土の中で空気を循環させるため、円筒型モールドを用い、養生期間、空気の吸気量又は吸気方法を変えて、改良土(供試体)を作製し、各供試体の一軸圧縮強さをもとに比較評価を行った。
一軸圧縮試験は、自立する供試体に対して拘束圧が作用しない状態で圧縮する試験であり、その最大圧縮応力を一軸圧縮強さという。主として乱さない粘性土を対象とし、練り返した試料又は締め固めた土、砂質土など自立する供試体であれば使用可能である。
一軸圧縮試験は、JIS A 1216で規定されており、円柱供試体に毎分1%の圧縮ひずみが生じる割合で連続的に圧縮を加える。圧縮中は、変位計で圧縮量ΔH(cm)と荷重計で圧縮力P(N)を測定する。その結果から、圧縮応力σ(kN/m)と圧縮ひずみε(%)を算定して、応力−ひずみ曲線を描き、最大圧縮応力から一軸圧縮強さqu(kN/m)を決定する。
一軸圧縮試験において、通常の一軸圧縮試験に用いるモールドを使用せずに、供試体に空気を送り込む仕組みを備えたモールドを準備した。図9は、試験構成イメージを示している。
準備した円筒形モールド20の寸法は、内径5.5cm、外形6.2cm、高さ8.7cmである。モールド20の下部の側面には、エアー吸入口21の孔が開いており、そこにシリコンチューブ22を取り付け、この部分から注射器23を用いて空気を抜き、供試体上面から内部に空気を供給させた。モールド20の円筒底面に孔が開いているため、供試体を作製し養生する際は、アクリルの底板を敷き、水漏れ防止のために粘土で円筒と底板を固定した。
次に、各供試体の作製手順と養生方法について説明する。6パターンの供試体A〜Fを作製した。供試体Aは、Ca(OH)2を入れないパターンであり、標準砂と水を混ぜた試料をモールドに突き固めながら三回に分けて入れ、その後2日養生したものである。供試体B〜Fは、標準砂と水にCa(OH)2の粉末を加えて混ぜた試料を同様にモールドに突き固めながら入れ、供試体BとCは2日間養生し、それ以外の供試体D〜Fは4日間養生し、その後に圧縮試験を実施した。また、供試体B〜Eは、モールドに試料を突き固めた後、すぐに注射器でシリコンチューブから下記表1に示す回数分だけ空気を抜いた後に養生した。吸気方法の違いによる強度の違いを確認するために、供試体Fは1日に5回ずつ抜く作業を養生中の4日間行った。注射器1回分の容量は100mLであり、各供試体には40回分抜くことで供試体内に供給されるCO2量で反応しきる分量のCa(OH)2を散布した。大気中のCO2量は約400ppmであり、100mL容量の注射器40回分で吸引できるCO2量は1.6gであり、1.6gのCO2量で反応しきるCa(OH)2の必要量は、2.7gであった。なお、標準砂と水の比率は、4:1の割合で試料を作製した。
6種類の供試体A〜Fの条件パラメータと一軸圧縮強さの結果を下記表1に纏める。
水酸化カルシウム(Ca(OH))の有無による強度変化について説明する。上記表1に示すように、Ca(OH)を散布しなかった供試体Aの一軸圧縮強さが、Ca(OH)を散布した供試体B〜Fの値よりも低いことがわかる。この結果は、供試体にCa(OH)を散布することによって、土が改良され、一軸強度が増加し、土の耐久性を高めることができる可能性を示唆している。
供試体Aと供試体Bの試料をデジタル顕微鏡(Mix Mart社製、“A1 DIGITAL MICROSCOPE”)で観察(500倍ズームで観察)し、違いがあるかを確認したところ、図10に示すように、供試体Bの試料のみ、砂粒の周りに白い粉末状の付着物が確認できた。この付着物は、散布したCa(OH)がCOを吸収し炭酸化反応が生じて生成された炭酸カルシウム(CaCO3)と後述のとおり推察できる。砂粒が図10に示す白い付着物を纏った状態になることにより、土の強度が上昇することがわかった。
顕微鏡による試料の観察により、白い付着物が強度増加に起因していることがわかったが、その付着物がCa(OH)2かCaCO3かをpHを測定して確認した。Ca(OH)2は強塩基であり、一方、CaCO3は弱塩基である。強塩基はpH値11以上を示し、弱塩基は7〜11の範囲のpH値を示す。pH値の測定から、白い粉末状の付着物は炭酸カルシウム(CaCO3)と同定できた。一軸圧縮強度の結果から、Ca(OH)の散布におり、セメント効果と炭酸化反応による地盤固化が期待できる。
次に、COの吸気量による比較評価の結果について説明する。図11(1)は、養生期間2日で注射器による吸気回数だけ違う供試体BとCの応力−ひずみ曲線を示している。供試体Bは吸気回数10回で一軸圧縮強さは7.78(kN/m)、供試体Cは20回で8.11(kN/m)である。図11(1)のグラフから、吸気回数が多い供試体Cの方が、圧縮強さが高くなっているが、供試体Bとあまり変わりがないことが確認できた。この結果から、吸気回数10回と20回では強度に大きな変化はないことがわかった。注射器による吸気10回分のCO2量の差は0.4gであり、このように微量な違いしかないため、Ca(OH)2の反応にもあまり変化が無かったことが要因であると推察する。
次に、養生期間による比較評価の結果について説明する。図11(2)は、養生期間だけ条件が違う供試体CとDの応力−ひずみ曲線を示している。供試体Cは養生期間2日であり、供試体Dは4日間である。図11(2)のグラフから、供試体Dの方が供試体Cよりも一軸圧縮強さが高く、その差は約1.8(kN/m)であることが確認できた。以上の結果から、養生期間を延ばすことで一軸圧縮強さが増加することがわかった。供試体の大きさ、散布するCa(OH)2量によって、最適な養生期間が変化するが、コンクリートと同じようにある程度の養生期間を設けることによって強度を発揮できる。
次に、吸気方法による比較評価の結果について説明する。比較対象の供試体は、全て養生期間が4日である。吸気回数がそれぞれ20回と5×4回(=20回)の供試体DとFの応力−ひずみ曲線を図11(3)に示す。吸気回数40回の供試体Eの応力−ひずみ曲線を図11(4)に示す。図11(3)のグラフから、吸気回数を分けた供試体Fが供試体Dよりも一軸強さが約1.5(kN/m)高くなっていることが確認できた。
更に、図11(3)から、破壊ひずみ(一軸圧縮強さを示した時のひずみ値)が大幅に小さくなっていることがわかる。ここで、供試体DとFの変形係数E50の算出を行った。E50(MN/m)の値は、試料の乱れ具合を推定することができる。算出したE50は、供試体Dが0.42(MN/m)であり、供試体Fが1.62(MN/m)であった。試料が乱れを受けるとE50が小さくなるため、算出した結果から供試体Dよりも供試体Fの方が、乱れが少ない試料といえる。以上の結果から、一軸圧縮強度が高く、乱れの少ない試料であった供試体Fの方がCaCO3と炭酸化反応による固化が表れたと推察する。従って、吸気を数回に分けて養生させる方法は有効であることがわかった。
実施例5では、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)のCO2との炭酸化反応と、反応生成物の炭酸カルシウム(CaCO3)による土の強度増加を確認した。本実施例では、より実際の斜面の環境を想定した模型実験を実施した結果について説明する。実験は、斜面地盤を想定した模型を作製し、固化のプロセスを再現しながら土の強度増加を確認した。実験に用いた型枠を図12(1)に示す。
図12(1)に示すように、型枠である箱型モールド30は、上方が開口した容器であり、それぞれ4つの型枠側壁は、脱型できるように底板とは固定せずクランプで各部材同士を挟んで固定したものである。箱型モールド30には、斜面地盤を想定した模型の型枠にエアーポンプ用のエアー吸入口31(吸引用孔)を設け、エアーポンプ(図示せず)を取付け可能とし、空気循環機能を設けた。
箱型モールド30は、外寸が長辺300mm、短辺70mm、高さ70mmであり、内寸が長辺258mm、短辺50mm、高さ50mmであり、内容積が645cmである。箱型モールド30において、側壁及び底板の材料は、ポリエスタール樹脂の厚板を用い、正面側の長辺の側壁には透明アクリルボードを用いた。そして、図12(1)の正面から見て左下端側にエアー吸入口31(吸引用孔)を設け、エアーポンプ(図示せず)と接続して吸気を行うようにした。エアーポンプ(アズワン株式会社社製;CAS-1)は、吸排両用型であり、空気循環と液体抽出も可能である。本実験では、空気循環の際に多量の水も同時に吸引する。エアー吸入口31(吸引用孔)とエアーポンプはチューブで接続させ、チューブの中間に液体回収用トラップ(図示せず)を設けた。
また、斜面地盤を想定した模型の強度は、市販のコーン貫入試験器を用いて測定した。使用したコーン貫入試験器では貫入抵抗がN値で表示され、コーン先端角が35°、貫入深さが17mmである。測定面にコーンを貫き入れ、突き当て鍔が完全に測定面に接触するまでコーンを徐々に貫入させ(貫入時間は約2秒)、ピーク値を計測した。
まず、エアー吸入口31(吸引用孔)からエアーポンプ(図示せず)で吸引(吸気)することで、図12(2)の模型平面図に示すように、地盤の模型内で空気供給具合が左右で不均等になるようにし、エアー吸入口31付近の土の空気供給が高く頻繁に繰り返され、エアー吸入口31から遠い土壌内への空気供給が低くなるようにし、この空気供給量(吸入量)のばらつきによって、コーン貫入強度に変化があるか否かを確認した。
地盤模型では、実施例5と同様に、標準砂を型枠内に入れ(実施例5と異なり、締め固めず、突き固めない)、その上面に二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)の粉末を散布した。その後、降雨を再現した散水を行い、二酸化炭素吸収剤を標準砂内に浸透させた。散水が終了したらエアーポンプを作動させ、地盤の模型内に空気を供給させた。エアーポンプの作動時間は1回5分とし、養生期間は7日間とし、散水とエアーポンプの作動のセットを毎日実施した。
7日間の養生終了後、地盤模型の表面層(表面から2.5cm深さ迄の層)と中間層(表面から2.5cmより深い層)について、コーン貫入試験を行い、それぞれの貫入抵抗値を測定した。表面層の貫入抵抗値は、長辺方向に10分割、短辺方向に3分割のメッシュで区切り、メッシュの交差点となる30箇所での測定を行った。一方、中間層の貫入抵抗値は、短辺方向の真ん中で、かつ長辺方向に等間隔に7箇所で測定を行った。
下記表2,3に測定結果を示す。表面層の貫入抵抗値は表2に示し、中間層の貫入抵抗値は表3に示す。なお、表2に示す表面層の貫入抵抗値では、短辺方向に3ヶ所で測定した抵抗値及びその平均値を示している。下記表2,3に測定結果から、エアー吸入口の箇所だけは、他の箇所よりも貫入抵抗値が若干高いものの、エアー吸入口側に近い測定点と遠い測定点の値に大きな違いが無いことがわかった。
散布した水酸化カルシウムを7日間の養生の段階の散水によって、土壌に浸透させているが、7日間の養生時間が短く、土壌に浸透せずに水酸化カルシウムの多くは表面に残存し、散水の影響で粉末同士が固まり、土壌表面を白い膜状に覆っていた。この表面層に残存した水酸化カルシウム膜により、表面層の抵抗値は中間層に比べ4〜5倍程度大きくなった。
次に、水酸化カルシウムの粉末を散布して散水するのではなく、水酸化カルシウムを水に混ぜた状態のもの(水酸化カルシウム水溶液)を、先ほどと同一の地盤模型に散布した。今回は、図13(1)に示すように、長辺の真ん中で2つの領域に分け、エアー吸入口のある左側の半分の領域には水酸化カルシウム水溶液を散布し、他方、右側の半分の領域には水のみを散布することにした。養生期間は7日間、散水と吸気も前回と同様に毎日実施し、エアーポンプの作動時間は1回5分とした。
そして、各領域において、表面層の貫入抵抗値は、長辺方向に5分割、短辺方向に3分割のメッシュで区切り、メッシュの交差点となる15箇所での測定を行い、各領域を合せて30箇所での測定を行った。その結果を下記表4に示す。なお、表4に示す表面層の貫入抵抗値では、短辺方向に3ヶ所で測定した抵抗値及びその平均値を示している。
上記表4から、水酸化カルシウム溶液を散布した領域の貫入抵抗値の方が、水のみを散布した領域の貫入抵抗値よりも高いことを確認できた。本実験において、水酸化カルシウム水溶液を散布した領域の表面層の貫入抵抗値は、上述の表2の結果と似ており、また、抵抗値同士を繋ぎ合わせた等高線図によれば(図13(2)を参照)、エアー吸入口側から中央にかけて右肩下がりに抵抗値が下がっていることを確認できた。
さらに、型枠を外し、水酸化カルシウム水溶液を散布した左側領域と水のみ散水した右側領域に、上から多量の散水を行い、左側領域と右側領域で崩れ方に違いがあるか否かを確認したところ、水のみ散水した右側領域では散水を開始した時点で表面から崩壊し、一方で、水酸化カルシウム水溶液を散布した左側領域では崩壊せず、表面層に亀裂が生じた後、亀裂から水が浸透し、崩壊する状況が確認できた。土壌内部が十分固化されていないため、表面層が崩壊すると、全体が崩壊することになる。
以上の実験結果から、通常の土壌と比較した結果、表面に水酸化カルシウム水溶液を散布した土壌では、表面層の強度増加を確認できた。
最後に、二酸化炭素の吸気量を変動させて、土壌強度が変化するか否かについて確認した実験結果について説明する。上述の実験では、供給するCO量を1日1回、エアーポンプにより吸気しているが、このCO2の供給量を大幅に増加する。具体的には、養生期間を4日間とし、エアーポンプを72時間連続的に作動させ、空気の吸気量を39,700(L)とした。散水は1日1回とした。先の実験では、長辺の真ん中で2つの領域に分けたが、今回は分けることなく、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)の水溶液を土壌全体に散布した。
養生終了後、コーン貫入試験を行った結果を下記表5に示す。
貫入抵抗値が先の2つの実験結果と比べ、大きく増加することを確認した。また、固化した表面層の厚みが大きいことを確認した。また、エアー吸入口付近の方が、貫入抵抗値が増加する傾向が顕著であることを確認した。さらに中間層の土壌を顕微鏡で観察し、土粒子間に白い付着物が存在することを確認した。pH値を確認したところ、弱アルカリ性を示したことから、白い付着物は炭酸カルシウム(CaCO)が生成されたものと推察する。
以上から、強制的に空気を多く土壌内に取り込むことにより、二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)のCO2との炭酸化反応が促進され、炭酸カルシウム(CaCO)が粒子間隙に生成することによる土壌の強度増加が行えることがわかった。
(その他の実施例)
(1)上述の実施例では、二酸化炭素吸収剤として水酸化カルシウムを挙げているが、それ以外に、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)等の他のアルカリ土類金属水酸化物、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属水酸化物、酸化カリウム(K2O)等のアルカリ金属酸化物、生石灰(CaO)等のアルカリ土類金属酸化物、炭酸カリウム(K2CO3)や炭酸ナトリウム(Na2CO3)等のアルカリ金属炭酸塩、及び、炭酸マグネシウム(MgCO3)等のアルカリ土類金属炭酸塩でも構わない。いずれも二酸化炭素を吸収し炭酸化反応が生じるからである。
(2)上述の実施例では、斜面の地盤について説明したが、鉄道の線路の斜面、泥地などの強化であってもよい。
本発明は、豪雨による斜面崩落の危険度が高い斜面の防災対策、鉄道の線路周辺の斜面等の強化対策、盛り土の強化対策など土壌の強化に有用である。
1 二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)
2 地盤内に浸透した二酸化炭素吸収剤(水酸化カルシウム)
3 結合剤(炭酸カルシウム)
4 斜面
5 雨
5a,5b 雨水
6 地盤内
7 パイプ
7a 開口端
10 メッシュ状パイプ
10a 投入口
10b 排出口
20 円筒形モールド
21 エアー吸入口
22 チューブ
23 注射器
30 箱型モールド
31 エアー吸入口

Claims (15)

  1. 二酸化炭素と反応し固化する二酸化炭素吸収剤もしくは二酸化炭素吸収剤を含む水溶液を、改良対象の地盤表面に散布する又は地盤内部に混入する散布混入工程と、
    前記二酸化炭素吸収剤を前記地盤内の間隙に浸透させる浸透工程と、
    前記二酸化炭素吸収剤と二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体と反応させ、前記二酸化炭素吸収剤を固化させ前記間隙に結合剤として残留させる反応固化工程、
    を備えたことを特徴とする二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  2. 前記散布混入工程において、二酸化炭素吸収剤を地盤表面に散布する場合には、二酸化炭素吸収剤を散布後、更に水を地盤表面に散布することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  3. 前記散布混入工程において、二酸化炭素吸収剤を含む水溶液を地盤内部に混入する場合には、地表から粘土層までの任意の場所に、パイプを通じて混入させることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  4. 前記パイプはメッシュ状のパイプであり、該パイプにはメッシュ面に散布用孔が散在し、メッシュ面が地盤の表面に沿って配設されることを特徴とする請求項3に記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  5. 前記反応固化工程において、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体を、前記パイプを通じて、強制的に地盤表面又は地盤内部に送り込むことを特徴とする請求項3又は4に記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  6. 前記散布混入工程において、予め改良対象の地盤における粘土層の等高線を計測し、前記等高線の高い場所の地盤表面に散布する又は地盤内部に混入することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  7. 前記反応固化工程において、地盤内部のガスを吸引することにより、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体を、強制的に地盤表面又は地盤内部に送り込むことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  8. 前記改良対象の地盤は、豪雨による崩落の危険を伴う斜面であることを特徴とする請求項17の何れかに記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  9. 前記改良対象の地盤は、盛り土であり、盛り土を形成する過程において、盛り土の表面に前記二酸化炭素吸収剤を含む水溶液を散布することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  10. 前記散布混入工程は、同一地盤に対して複数回にわたり実施されることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  11. 前記浸透工程及び前記反応固化工程に要する時間は、改良対象の地盤をサンプリングし、予め前記散布混入工程を実施し、適切な養生時間を算出することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  12. 前記二酸化炭素吸収剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属炭酸塩の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の二酸化炭素を利用した地盤改良方法。
  13. 請求項1〜12の何れかの地盤改良方法に用いるシステムであって、
    前記二酸化炭素吸収剤を地盤表面に散布する移動体と、該移動体を操作して改良対象の地盤表面に散布させる操作端末を備えたことを特徴とする二酸化炭素を利用した地盤改良システム。
  14. 請求項3〜5の何れかの地盤改良方法に用いる前記パイプと、
    二酸化炭素もしくは二酸化炭素を含む気体を前記パイプに送り込むために前記パイプの投入口に接続される送出用ポンプ、又は、二酸化炭素もしくは二酸化炭素を含む気体を強制的に地盤表面又は地盤内部に送り込むために前記パイプの排出口に接続される吸引用ポンプと、
    前記二酸化炭素吸収剤を地盤表面に散布する移動体と、該移動体を操作して改良対象の地盤表面に散布させる操作端末を備えたことを特徴とする二酸化炭素を利用した地盤改良システム。
  15. 請求項3〜5の何れかの地盤改良方法に用いる前記パイプと、
    前記二酸化炭素吸収剤を含む水溶液を前記パイプに送り込むために前記パイプの投入口に接続される送出用ポンプを備えたことを特徴とする二酸化炭素を利用した地盤改良システム。
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WO2022103098A1 (ko) * 2020-11-12 2022-05-19 한국과학기술원 가스 하이드레이트를 포함하는 지반 보강재, 및 이를 이용한 고심도 해저 지반의 보강 방법

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