JP2019163211A - 柿ポリフェノール分解物の製造方法 - Google Patents

柿ポリフェノール分解物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】柿から得られ、機能性が高められた天然由来素材を提供する。【解決手段】柿ポリフェノール含有物を亜臨界水で処理して柿ポリフェノール分解物を得る。その亜臨界水処理に供される柿ポリフェノール含有物としては、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物であるか、あるいは、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物から熱水抽出された抽出物であることが好ましい。本発明による柿ポリフェノール分解物は、特には、グルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、アミラーゼに対する阻害活性が高いので、例えば、血糖値上昇抑制のための有効成分として有用である。【選択図】なし

Description

本発明は、機能性が高められた天然由来素材を提供できるようにした、柿ポリフェノール分解物の製造方法に関する。
茶、ぶどう、りんご、カカオなどの天然物に含まれるポリフェノールには、抗酸化作用をはじめ、血圧低下作用、血糖値上昇抑制作用、発がん抑制作用、冠動脈性心疾患改善作用など、さまざまな生理活性が報告されている。
一方、柿の渋味はポリフェノール類のタンニンに起因するものである。渋柿や未熟な甘柿を口にすると、そのタンニンが舌や口腔粘膜のタンパク質と結合して、強い渋味(収斂味)を呈する一方、成熟した甘柿あるいは渋抜きをした渋柿(干し柿)では、そのタンニンは不溶化されており、渋味を感じないので、おいしく食べることができるのである。
柿タンニンの構造については、品種「平核無」の未熟果を用いて研究されており、その構造は、エピカテキン(epicatechin;EC)、エピカテキンガレート(epicatechin gallate;ECg)、エピガロカテキン(epigallocatechin;EGC)、エピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate; EGCg)が所定の比率で縮合したプロアントシアニジンポリマー(それぞれの構成ユニットがC−4とC−6またはC−8の結合で重合している。)であることが報告されている(下記非特許文献1、及び図7参照)。また、柿タンニンの機能性に関しては、ラット動物試験やヒトボランティア評価において、経口投与により糖負荷後の血糖値上昇を抑制する作用効果があることが明らかにされている(下記非特許文献2)。
一方、下記特許文献1には、柿タンニンから得られ、B環のピロガロール率が70〜90%、ガロイル化率が40〜70%であってエピガロカテキン−3−O−ガレート三量体を含有する柿ポリフェノールオリゴマーには、α―グルコシダーゼ及び/又はα―アミラーゼに対して、茶カテキンである単量体のエピガロカテキン−3−O−ガレートよりも強い阻害活性があることが記載されている。
Matsuo, T. and Ito, S.," The chemical structure of kaki-tannin from immature fruit of the persimmon (Diospyros kaki L.)." Agric. Biol. Chem. (1978), 42, 1637-1643. Takashi Kometani and Kumiko Takemori "Polyphenols from Persimmon Fruits as a Functional Foods Material" Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi(2016), 63(7), 331-337.
特開2009−001531号公報
しかしながら、本発明者らの研究によれば、柿タンニンのそのままでは、その機能性が十分に生かされているとはいい難かった。また、特許文献1に記載の柿ポリフェノールオリゴマーは、酸性下で、低分子化反応剤としての茶カテキン又はエピガロカテキン−3−O−ガレートの存在下で断片化した後、吸着樹脂に吸着させ、水洗してからエタノール水溶液で溶出し、乾固後、これを更にゲル濾過カラムにかけて単量体を除いて、二量体から五量体までのオリゴマーを主要成分とするものであり、その調製に複雑な作業や設備を要しコストが嵩むため、汎用性のある素材とはいい難かった。
本発明は、柿ポリフェノールを加工して、その機能性を十分に発揮させるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、第1に、柿ポリフェノール含有物を亜臨界水で処理することを特徴とする柿ポリフェノール分解物の製造方法を提供するものである。
上記柿ポリフェノール分解物の製造方法においては、前記柿ポリフェノール含有物は、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物であることが好ましい。
また、上記柿ポリフェノール分解物の製造方法においては、前記柿ポリフェノール含有物は、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物から熱水抽出された抽出物であることが好ましい。
また、上記柿ポリフェノール分解物の製造方法においては、前記亜臨界水での処理は、圧力1〜10MPa下に行うことが好ましい。
また、上記柿ポリフェノール分解物の製造方法においては、前記亜臨界水での処理は、下記式で求められるR0の値が1〜20000となる範囲の条件で行うことが好ましい。
本発明は、第2に、柿ポリフェノール含有物を亜臨界水で処理する工程を含むことを特徴とする血糖値上昇抑制用組成物の製造方法を提供するものである。
上記血糖値上昇抑制用組成物の製造方法においては、前記柿ポリフェノール含有物は、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物であることが好ましい。
また、上記血糖値上昇抑制用組成物の製造方法においては、前記柿ポリフェノール含有物は、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物から熱水抽出された抽出物であることが好ましい。
また、上記血糖値上昇抑制用組成物の製造方法においては、前記亜臨界水での処理は、圧力1〜10MPa下に行うことが好ましい。
また、上記血糖値上昇抑制用組成物の製造方法においては、前記亜臨界水での処理は、下記式で求められるR0の値が1〜20000となる範囲の条件で行うことが好ましい。
また、上記血糖値上昇抑制用組成物の製造方法においては、前記血糖値上昇抑制用組成物は、グルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、アミラーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素を阻害するものであることが好ましい。
また、上記血糖値上昇抑制用組成物の製造方法においては、前記血糖値上昇抑制用組成物は、血糖値上昇抑制のための飲食品又は医薬品として用いられることが好ましい。
本発明によれば、柿ポリフェノールの加工に亜臨界水での処理を利用したので、簡便な作業や設備で、効率的に、柿由来天然素材の機能性を高めることができる。特には、血糖値上昇抑制に寄与し得るグルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、アミラーゼ等の酵素に対する阻害活性を高めることができる。
本発明に使用可能な亜臨界水処理装置の一例を示す概略構成図である。 試験例1において種々の条件下で亜臨界水処理したときに得られた柿ポリフェノール溶液の分子量分布を評価した結果を示す図表である。 試験例2において種々の条件下で亜臨界水処理したときに得られた柿ポリフェノール溶液の凝固点降下を評価した結果を示す図表である。 試験例3において種々の条件下で亜臨界水処理したときに得られた柿ポリフェノール溶液のpHを評価した結果を示す図表である。 試験例2の凝固点降下の結果をY軸に試験例3のpHの結果をX軸にとってプロットしたグラフである。 試験例4において種々の条件下で亜臨界水処理したときに得られた柿ポリフェノール溶液の糖質分解酵素阻害活性を評価した結果を示す図表であり、図6aはα−グルコシターゼ阻害活性についての結果であり、図6bはマルターゼ阻害活性についての結果であり、図6cはスクラーゼ阻害活性についての結果であり、図6dはα−アミラーゼ阻害活性についての結果である。 柿タンニンの化学構造を示す図表である。
本発明は、柿ポリフェノール含有物を亜臨界水で処理することにより、機能性に富む柿ポリフェノール分解物を得る方法を提供するものである。ここで、「機能性」とは、当該分野の当業者に理解されるであろう、通常の用語の意義と同義であり、具体的には、ある物質に備わる属性のことであり、より具体的には、ある物質が生体や生体関連物質に影響を与え得る能力をいう。一般にポリフェノールの機能性としては、抗酸化、血糖上昇抑制、抗炎症・抗アレルギー作用、骨粗鬆症予防作用、視覚機能調節作用、抗疲労作用、認知機能維持作用、発がん抑制作用、冠動脈性心疾患改善作用等、あるいは、その血糖上昇抑制効果に関連するグルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、サッカラーゼ等の糖消化酵素に対する阻害活性などが知られている。よって、本発明は、潜在的に、これらの機能性に富む柿由来天然素材の提供を可能にする。
本発明において「亜臨界水」とは、当該分野の当業者に理解されるであろう、通常の用語の意義と同義であり、具体的には、水を大気圧での沸点(100℃)から臨界温度(374.15℃)の範囲で加圧した際に液状を保持している状態の水を意味している。亜臨界水は、通常の状態の水に比べて、イオン積が増加し、比誘電率が下がる特性を有している。一般に、イオン積の増加により加水分解力が強められ、比誘電率が低下すると有機溶媒に似た性質を持つようになる。
本発明において、亜臨界水による処理が施される柿ポリフェノール含有物としては、柿ポリフェノールを含むものであれば特に制限はないが、入手のし易さや調製のし易さ、あるいはヒトや動物に投与したときの安全性の観点からは、天然素材である柿渋や柿タンニン等を用いることが好ましい。あるいは、そのような柿渋や柿タンニン等から抽出して得られた柿ポリフェノール素材であってもよい。ただし、有効に機能性に富む柿ポリフェノール分解物を得るには、上記柿ポリフェノール含有物には、所定分子量以上の柿ポリフェノールが含まれている必要がある。具体的には、そのポリフェノールの分子量分布における平均分子量が10000〜1000000を呈することが好ましく、50000〜600000を呈することがより好ましく、100000〜400000を呈することが更により好ましい。また、そのポリフェノール含有量が乾燥固形分換算で1〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることが更により好ましい。なお、ポリフェノールの分子量分布並びに平均分子量は、GCP(ゲル浸透クロマトグラフィー)、粘度法、質量分析法、浸透圧法、光散乱法等により測定することができる。例えば、GCP(ゲル浸透クロマトグラフィー)では、予め標準分子量物質(例えば直鎖状分子であるポリエチレングリコール等)の分子量毎に溶出曲線を観察し、その分子量毎に溶出ピークの溶出位置(溶出量)を定めて検量線をとり、これに実際に得られた溶出曲線の溶出ピークの位置を当てはめることなどにより、平均分子量を求めることができる。また、ポリフェノールの含有量は、例えば、酒石酸鉄法、プルシアンブルー法、フォリン−デニス法、フォリン−チオカルト法、バニリン−塩酸法、バニリン−硫酸法等により測定することができる。その定量のためには、例えば、予め指標物質としてカテキンなどを用いて検量線をとり、これに実際に得られた測定値を当てはめることなどにより、ポリフェノール量を求めることができる。
以下では、原料の柿から上記柿ポリフェノール含有物を調製する方法について、更に詳細に説明する。ただし、本発明において亜臨界水による処理が施される、上記柿ポリフェノール含有物として、これを調製する方法が以下の説明によって制限を受けるものではない。
原料として用いる柿の品種に特に制限はなく、日本でよく栽培される品種では、例えば、「刀根早生」、「平核無」、「甲州百目」、「会津身不知」、「西条」、「愛宕」、「市田柿」、「天王」等が挙げられる。用いる部位としても、果実、果皮、果肉、種子、葉、根茎、枝、樹皮等、特に制限はないが、果実にはポリフェノールが集積したタンニン細胞が多く含まれており、また、採取しても天然に再生可能であるので、好ましく用いられる。果実は、ヘタや果皮や種子等の果肉以外のいずれかをそのまま含む状態で原料にしてもよく、あるいは、ヘタや果皮や種子等の果肉以外のいずれか、もしくはそれらのすべてを除いた状態で原料にしてもよい。
原料の柿からポリフェノールを抽出する際には、自然的に及び/又は人工的に脱渋の処理を施すことが好ましい。これにより柿ポリフェノールは、アセトアルデヒド縮合・重合反応等により水不溶化され、形成した水不溶化物は、水やその他の等張液、緩衝液等によって簡単に洗浄することができるので、その洗浄により有効かつ効率的に不純物を取り除くことができる。そして洗浄後には加熱や超音波等の処理を施すことでポリフェノールを再度可溶化することができ、これを亜臨界水処理すれば、より純度の高い柿ポリフェノール分解物を得ることができる。なお、このポリフェノールの再可溶化の処理は、亜臨界水による処理がその再可溶化の処理を兼ねていてもよい。すなわち、水不溶化物にそのまま亜臨界水による処理に施すと、その処理により水不溶化した状態のポリフェノールが水中に溶出する。そしてそれとともに分解も同時に進行する。
自然的な脱渋の処理としては、発酵等が挙げられる。ただし、製造に1年から3年以上の時間がかかり、発酵により独特の不快感を催す強い発酵臭が生じるため、使用する場面が限定されやすい。
人工的な脱渋の処理としては、渋柿を甘くするための渋抜きの目的で行う通常の方式を適宜採用することができる。例えば、原料となる柿をポリエチレン袋などの容器にエタノールやドライアイスと共に入れて封をして所定期間保管する方式を採用したり、もしくは、大量の柿を処理するのには、炭酸ガスを用いた恒温短期脱渋法や、脱渋と貯蔵を同時に行う低温脱渋法の方式を適宜に採用してもよい。あるいは、より簡易的にに柿ポリフェノールの水不溶化を促すには、原料の柿を粉砕もしくは均質化してうえで、それを密閉できる容器、袋等に収容し、原料の柿の重量1kg当たり1〜5mLのエタノールを添加し、密封して24時間〜3日間静置するなどのようにするとよい。脱渋の程度は、当業者に周知のタンニンプリント法などで確認することもできる。
脱渋の処理の後には、上述したとおり、形成した水不溶物を水や等張液、緩衝液等で洗浄することにより柿ポリフェノールの純度を高めることができる。その洗浄の態様に特に制限はないが、柿ポリフェノール、より具体的には例えば柿果実中にタンニン蓄積細胞として存在するタンニン細胞は、十分に脱渋の処理を施すと水中での分離性及び沈降性が増す。よって、できるだけコストをかけずに効率的に洗浄の処理を行うことを考慮すれば、その態様は、原料の柿を粉砕もしくは均質化してエタノールやドライアイス等で脱渋の処理を十分に行ったうえで、1〜20倍量の水を加え、撹拌もしくは混合し、その後静置して、上澄みを除き、これを5〜20回、場合によっては5時間〜3日間の期間にわたって繰り返し行って、最終的な沈殿を濾別する等の方法である。このようにして比較的大量の原料を効率的に処理することが可能となる。
洗浄の処理の後には、水不溶化した柿ポリフェノールを再可溶化するが、上述したとおり、亜臨界水による処理がその再可溶化の処理を兼ねていてもよい。ただし、より均質な、あるいは、また、より安定に柿ポリフェノール分解物を得るには、上記脱渋処理後の水不溶化物は、一旦熱水等の溶媒で抽出して抽出物として、これを亜臨界水処理するのがよい。これによれば、上記脱渋処理後の水不溶化物に含まれる柿ポリフェノールが、亜臨界水処理の効果をより均一に受け得る。具体的には、上記不溶化処理後の水不溶化物に、その全質量に対して5〜20倍量、好ましくは8〜15倍量の抽出溶媒、特に好ましくは水を加えて30分〜1時間程度、90〜120℃の範囲で抽出を行うことができる。例えば、熱水抽出は、通常オートクレーブに用いられる加熱加圧条件(120℃、0.2MPa)で行ってもよい。その抽出溶媒としては、水でもよく、あるいは、有機溶媒又は水と有機溶媒を任意の混合比で混合した含水有機溶媒等を用いてもよい。有機溶媒としてはエタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン等が挙げられる。抽出の際には超音波処理を用いてもよい。抽出後には、真空乾燥、減圧濃縮、凍結乾燥、熱風乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥、加圧乾燥、自然乾燥等により水分を除去し、あるいは全体を減量し、もしくは水分を除去した後に残る乾固物を得てもよい。更には、必要に応じて、1μm〜1mmの範囲に属する孔径、より好ましくは100μm〜500μmの範囲に属する孔径、更により好ましくは150μm〜300μmの範囲に属する孔径を有するフィルターに通して、ミクロな不溶物もしくは凝集物等の残渣を除去してもよい。これによれば、亜臨界水処理において管型反応器等の装置を用いる場合でも、そのチューブ内での詰まりをなくし、安定な流速を維持できる。
柿の種類や収穫時期にもよるが、上記のようにして、例えば、柿果実から脱渋の処理を経て熱水抽出により調製された柿ポリフェノール含有物は、通常、そのポリフェノールの分子量分布における平均分子量は、上述した範囲である。すなわち、具体的には、そのポリフェノールの分子量分布における平均分子量が、典型的に10000〜1000000を呈し、より典型的には50000〜600000し、更により典型的には100000〜400000を呈する。また、そのポリフェノール含有量が乾燥固形分換算で50〜90質量%程度であり、より典型的には60〜80質量%程度である。
(亜臨界水処理)
以下では、柿ポリフェノール含有物を亜臨界水で処理する方法について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明において柿ポリフェノール含有物を亜臨界水で処理する方法が、以下の説明によって制限を受けるものではない。
図1には、本発明に使用可能な亜臨界水処理装置の一例が示される。この例に示される亜臨界水処理装置1はいわゆる管型反応器であり、その構成は、原料溶液を保持し供給する原料溶液容器10と、原料溶液を送液するためのチューブ11及び高圧ポンプ12と、チューブ11に高圧ポンプ12を介して連なり、所定温度に加熱設定可能なオイルバス14に浸かるコイル状チューブ13と、オイルバス14の熱媒体を撹拌するための攪拌機15(マグネットスターラー)と、コイル状チューブ13がオイルバス14から出たチューブ部分に連なり、冷却用水槽17に浸かるコイル状チューブ16と、コイル状チューブ16が冷却用水槽17から出たチューブ部分に介在し、チューブ内の溶液の圧力を調整可能な背圧弁18と、処理された溶液をサンプリングするサンプリング容器19とを備えている。
この亜臨界水処理装置1の原料溶液容器10に、柿ポリフェノール含有物を入れ、高圧ポンプ12を駆動して、高圧ポンプ12による圧力付与と背圧弁18により、チューブ内を流れる液体の水圧を調整しつつ、所定温度に調整されたオイルバス14に浸かるコイル状チューブ13に送液すると、柿ポリフェノール含有物は、コイル状チューブ13内で形成された温度と圧力の条件下に所定時間曝される。その後には、冷却用水槽17に浸かるコイル状チューブ16を通して冷却して、亜臨界状態を終了させて、処理物がサンプリング容器19に回収されるようにしている。送液は、チューブ内を連続して流れるようにしてもよく、所定時間は流し、所定時間は止めて、それを繰り返すように間欠的に送液してもよい。
図1に示す例の亜臨界水処理装置1では、その構成上、用いるチューブとして、例えば内径0.5〜1mm程度であり、全長2〜5m程度のものを用いることができる。この場合、典型的には圧力1〜10MPa下の亜臨界状態を、より典型的には圧力3〜10MPa下の亜臨界状態を、更により典型的には圧力8〜9MPa下の亜臨界状態を作出し、5〜50mL/min程度の処理速度で被処理物を亜臨界水処理するのに適した装置といえる。処理圧力が1MPa未満では、亜臨界水による処理が不十分となり、ひいては得られる柿ポリフェノール処理物の機能性が高められない傾向となる。また、処理圧力が10MPa以上になると、その圧力に耐えうる特別に設計されたチューブや背圧弁等の設備を準備する必要があるので、コストがかかる傾向となり好ましくない。また、コイル状チューブ13での滞留時間としては、典型的には1秒〜60分、より典型的には10秒〜30分、更により典型的には30秒〜10分などである。更に、温度条件としては、典型的には120〜250℃、より典型的には130〜240℃、更により典型的には140〜220℃などである。
ここで、亜臨界水処理では、得られる処理物の特性に大きく影響を及ぼす因子としては、その処理温度及び時間であるが、これらは一般に用いる装置に特有の操作変数と考えられる。よって、処理温度と時間とを別個に指標にするだけでなく、それらを合わせて反映させた、被処理物が経験する熱履歴を指標にすることがより望ましい。これによれば、使用する装置によらずに、亜臨界水処理の条件を最適化することが容易となる。亜臨界水処理において被処理物が経験する熱履歴を反映させたパラメーターとしては、下記式で求められるR0:Severity factor(単位:min)がある(Heitz M., Carrasco F., Rubio M., Brown A., Chornet E., and Overend RP. Physico-chemical characterization of lignocellulosic substrates pretreated via autohydrolysis: an application to tropical woods. Biomass, 13, 255-273. 1987)。
ここで、T(t)は処理開始からの時間t(分)における処理温度(℃)であり、100の値はベース温度(℃)であり、14.75は擬一時反応に対する活性化エネルギーに相当する量として用いられた値である。なお、式中の100及び14.75以外の値を用いてR0に相当する量を定義し、その量により亜臨界水処理の条件を最適化することもできる。
実際、図1に説明した亜臨界水処理装置1などでは、上記の温度、滞留時間の目安として、R0の値が100以下である場合は、140〜160℃、0.5〜5分相当となり、R0の値が100以上1000以下である場合は、160〜200℃、0.5分〜10分相当となり、R0の値が1000以上である場合は、180〜220℃、0.5分〜10分相当となる。
上記熱履歴を指標にしたとき、本発明における亜臨界水処理の条件としては、上記R0の値が1〜20000となる範囲の条件で行うことが好ましく、R0の値が50〜1000となる範囲の条件で行うことがより好ましく、R0の値が100〜500となる範囲の条件で行うことが更により好ましい。R0の値が1未満の条件で行っても亜臨界水による処理が不十分となり、ひいては得られる柿ポリフェノール処理物の機能性が高められない傾向となる。また、R0の値が上記範囲を超える条件で行うと柿ポリフェノールの分解が過度になり、特には例えばグルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、アミラーゼ等の酵素を阻害する活性について、後述の実施例で示されるように、得られる柿ポリフェノール処理物の機能性が高められない場合がある。
上記のようにして、例えば、柿果実から脱渋の処理を経て熱水抽出により抽出物を得、それを亜臨界水処理した場合、亜臨界水による処理条件にもよるが、上記のようにして得られた柿ポリフェノール分解物は、通常、そのポリフェノールの分子量分布における平均分子量が1000〜100000程度を呈し、より典型的には5000〜50000程度を呈する。また、そのポリフェノール含有量が乾燥固形分換算で50〜90質量%程度であり、より典型的には60〜80質量%程度である。
柿ポリフェノール分解物は、亜臨界水で処理した処理物をそのまま用いてもよく、ミクロな不溶物もしくは凝集物等の残渣をフィルター濾過等で取り除いてもよい。更には、希釈して用いてもよく、減圧濃縮等の濃縮をして用いてもよく、又は乾燥粉末として用いてもよい。具体的な一例としては、亜臨界水で処理した処理物をフィルター濾過して残渣を取り除き、真空乾燥、減圧濃縮、凍結乾燥、熱風乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥、加圧乾燥、自然乾燥等を用いて水分を取り除き、得られた乾固物を粉砕して粉末状に調製し得る。
(血糖値上昇抑制用組成物)
以下では、上記のようにして得られた柿ポリフェノール分解物の利用形態について更に詳細に説明する。ただし、本発明による柿ポリフェノール分解物の利用形態が、以下の説明によって制限を受けるものではない。
本発明による柿ポリフェノール分解物は、血糖値上昇抑制のための有効成分として有用である。例えば、そのような利用形態の組成物が、本発明による柿ポリフェノール分解物を単独で含むものとして提供されてもよく、あるいは、他の素材とを組み合わせて含むものとして提供されてもよい。例えば、上記柿ポリフェノール分解物を0.1〜100質量%含有する血糖値上昇抑制用組成物であってよく、より典型的には1〜80質量%含有する血糖値上昇抑制用組成物であってもよく、更により典型的には30〜70質量%含有する血糖値上昇抑制用組成物であってもよい。その組成物の調製法に特に制限はなく、上記柿ポリフェノール分解物を、必要に応じてその他の成分と共に、その組成物中に少なくとも含有せしめればよい。また、血糖値上昇抑制に有効な他の成分を組み合わせて含むものであってもよい。
上記血糖値上昇抑制用組成物は、その製品形態に特に制限はなく、例えば、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、粉末状(顆粒、細粒)、錠剤(錠剤、タブレット)、カプセル状(カプセル剤)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、固形状、半液体状(ゼリー)、クリーム状、ペースト状等が挙げられる。
上記血糖値上昇抑制用組成物は、飲食品、医薬品、医薬部外品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、健康食品、動物用医薬品、動物用医薬部外品、動物用機能性食品、動物用栄養補助食品、動物用サプリメント、動物用健康食品等の形態で、あるいはこれら形態と組み合わせて利用することができる。
上記血糖値上昇抑制用組成物は、必要に応じて、上記のような製品に通常使用されている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、界面活性剤、溶解補助剤、還元剤、緩衝剤、吸着剤、流動化剤、帯電防止剤、抗酸化剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、遮光剤、着香剤、香料、芳香剤、コーティング剤、可塑剤等を添加して用いることができる。
上記血糖値上昇抑制用組成物は、これをヒトや動物が摂取することによって、血糖値上昇抑制の作用効果が奏される。すなわち、後述の実施例でも示されるように、本発明による柿ポリフェノール分解物は、グルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、アミラーゼ等の酵素を阻害する活性に優れている。これらの酵素は食事からの糖吸収に関わり、より具体的には多糖類やオリゴ糖を分解して糖を体内に吸収し易くする作用を有する酵素である。よって、これらの活性を阻害することにより、特には例えば食事後の血糖値の上昇を抑制することができる。
本発明による柿ポリフェノール分解物は、柿の食経験上、ヒトや動物が経口的に摂取しても問題はなく、したがって上記血糖値上昇抑制用組成物の摂取量には特に制限はないが、上述したような血糖値上昇抑制をもたらすのに有効な摂取量としては、摂取者の性別、年齢、体格等によって適宜決定することができるが、例えば成人1日当たり、ポリフェノール量として50mg〜5gであることが好ましく、100mg〜3gであることがより好ましい。1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で服用され得るが、食事からの糖吸収を抑える目的であれば、より望ましい利用形態としては、食事の際中あるいはその後30分以内に経口的に摂取されるようにして用いられることが好ましく、15分以内に経口的に摂取されるように用いられることがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の試験例においては、亜臨界水処理の条件の指標として、下記式で求められるR0:Severity factor(単位:min)を使用した。
ここで、T(t)は処理開始からの時間t(分)における処理温度(℃)であり、100の値はベース温度(℃)であり、14.75は擬一時反応に対する活性化エネルギーに相当する量として用いられた値である。なお、式中の100及び14.75以外の値を用いてR0に相当する量を定義し、その量により亜臨界水処理の条件を最適化することもできる。
[調製例1](柿ポリフェノールの調製 その1)
柿ポリフェノールは、▲濱▼崎らの方法(「エタノールで脱渋した果実を用いたカキタンニンの迅速な調製法」園芸学研究 (2010) 9 (3) 367-372.)に準じて調製した。具体的には以下のようにして調製した。
日本で栽培されている柿品種のひとつである「刀根早生」の果実を収穫し、収穫後に直ちに0.02mm厚のポリエチレンフィルムで密封し、これに、果実1kg当り2mLのエタノールを加えて、25℃で5日間静置して、脱渋した。脱渋した果実はヘタを取り除き、ミキサーで均質化した。そのホモジネートを容量50mLの遠心管に入れ、1,630×gで15分間の遠心処理を行なうと、少なくともその遠心管内の内容物の中位高さより下層もしくは底部付近にタンニン細胞が層状をなして濃縮するので、その画分を遠心管から採取して、凍結乾燥した。次いで、乾燥粉末100mgに対し10mLの水を加えてオートクレーブ(加熱加圧条件:120℃、0.2MPa)で15分間加熱し、加熱後、1,630×gで15分間の遠心処理を行ない、その上清をNo.2定性濾紙(アドバンテック社製)で濾過して、濾液を得た。これを再び凍結乾燥し、粉末状に調製した。得られた粉末状の柿ポリフェノール含有物のポリフェノール含量を、別途、D−(+)カテキンを指標としたフォーリン・チオカルト法により定量したところ、ポリフェノール含量はおよそ70質量%であった。また、フェノール硫酸法で測定した糖類含量はおよそ20質量%であり、その他10質量%の同定されない成分が含まれていた。
[調製例2](柿ポリフェノールの調製 その2)
柿ポリフェノールを、以下のようにして調製した。
(脱渋)
皮、ヘタが付いた柿を粉砕し、調製例1と同様にして脱渋処理した。これにより、柿ポリフェノールはアセトアルデヒド縮合・重合反応等により水不溶化される。また、タンニン細胞の水中での分離性及び沈降性が向上する。
(水洗)
脱渋後の水不溶化物におよそ10倍量の水を加えて洗浄した。洗浄は、2日間にわたって、合計10回繰り返した。これにより、柿ポリフェノール以外の成分をよく取り除くことができる。
(加水・加熱)
水洗後の水不溶化物におよそ10倍量の水を加えてオートクレーブ(加熱加圧条件:120℃、0.2MPa)で1時間処理した。これにより、アルデヒド縮合・重合等の結合が切れて、柿ポリフェノールが水に可溶化する。
(搾汁・濾過)
布でこし、50μmのフィルターを通し、最終的に1μmのフィルターを通した。得られたフィルター通過液のブリックス(Brix)値はBrix1程度であった。
(濃縮・粉末化)
フィルター通過液を減圧濃縮装置にておよそ15倍に濃縮した。これをドラム乾燥し、粉砕、篩過により、250μmのメッシュパスの粉末を得た。別途、D−(+)カテキンを指標としたフォーリン・チオカルト法により定量したところ、この粉末のポリフェノール濃度は、カテキン換算で70%重量であった。
[調製例3](亜臨界水処理)
図1に説明した亜臨界水処理装置1を使用して、調製例1で得られた柿ポリフェノール含有物の亜臨界水処理を行なった。具体的な装置構成としては、チューブ11としてSUS 316 HPLCチューブ(0.8mm I.D.×4m)、高圧ポンプ12としてLC-10AT HPLCポンプ(島津製作所)、背圧弁18として背圧調整弁(P-880、Upchurch Scientific、Oak Harbor、WA、USA)をそれぞれ使用し、また、オイルバス14にはシリコーンオイルバス(140〜220℃の範囲で温度設定可能)を使用し、そのオイルバスに浸かるチューブの一部(コイル状チューブ13:長さ2m)では亜臨界水処理がなされて、そのオイルバスから出て冷却用水槽に浸かるチューブの一部(コイル状チューブ16:長さ0.6m)で亜臨界水処理による反応が完全に止まるように構成した。
調製例1で得られた柿ポリフェノール含有物を5%(w/v)となるように純水に溶解させ、この溶液を4℃、7,100×gで15分間遠心分離にかけて、その上清をNo.1定性濾紙(アドバンテック社製)で濾過して、更にメンブレンフィルター(DISMIC-25CS、0.8μm、アドバンテック社製)に通して、ポリフェノール溶液を得た。このポリフェノール溶液を上記装置にかけ、0.5〜10分の滞留時間の間、亜臨界水処理が行われるようにした。なお、試験中、上記装置のチューブ内の圧力は、いずれの条件下においても8〜9MPaの範囲であることを確認した。
<試験例1>(分子量分布の変化)
調製例3の亜臨界水処理物について、その分子量分布をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、種々の亜臨界水処理の条件下における柿ポリフェノールの分子量分布の変化を評価した。具体的には、未処理の対照(Control)又は亜臨界水処理後の溶液(1mL)を6,100×gで2分間遠心分離し、その上清をGPC分析に供した。GPC分析は、LC-20AD HPLCポンプ(島津製作所)及びRID-10A屈折率検出器(島津製作所)を備えたジオールカラム(YMC-pack Diol-60, 8.0mmID×500mm、YMC、Kyoto、Japan)を使用し、 溶離液は1.0mL/分の流速で蒸留水とし、カタログ(YMC; 2007)記載のDiol-60カラムの分子量と溶出量との間の検量線を参照した(直鎖状分子であるポリエチレングリコールを標準分子量物質とした検量線)。
図2には、亜臨界水処理のSeverity factor R0の値が2.3×102、4.5×102、1.1×103である場合について、処理後の溶液のGPCクロマトグラムを、対照(Control)とともに示す。
図2に示されるように、対照(Control)のクロマトグラムは単一ピーク(Mw:1×105)を含んでいた。これに対し、亜臨界水処理後の溶液のクロマトグラムでは、ピークトップ付近の分子量がMw:4×104と小さく、いくつかのブロードなピークが認められ、Severity factor R0の値の増加とともに低分子化が有意に進行することが観察された。
<試験例2>(凝固点降下の変化)
調製例3の亜臨界水処理物について、凝固点降下を指標にして、分解度を評価した。具体的には、種々の亜臨界水処理の条件下における処理後の溶液の凝固点降下の値(K)を、浸透圧計(OM802、Vogel、Kevelaer、Germany)を用いて測定し、未処理の対照(Control)と比べたときの凝固点降下の変化を評価した。
図3には、亜臨界水処理のSeverity factor R0の値が1×101〜1.7×104である場合について、Severity factor R0の値をX軸にとって各条件における処理後の凝固点降下の結果をプロットしたグラフ示す。
図3に示されるように、Severity factor R0の値が1×102までは、凝固点降下の値は対照(Control)とほぼ変わらず、凝固点降下に影響を与えるような低分子が生成されないことが推測できた。Severity factor R0の値が1×102を超えると、凝固点降下の値は右肩上がりに上昇し始め、1×103を超えると更に急激に上昇した。よって、凝固点降下に影響を与えるような低分子が多く生じたものと考えられた。
<試験例3>(pHの変化)
調製例3の亜臨界水処理物について、pHを指標にして、分解度を評価した。具体的には、種々の亜臨界水処理の条件下における処理後の溶液のpHを測定し、未処理の対照(Control)と比べたときのpHの変化を評価した。
図4には、亜臨界水処理のSeverity factor R0の値が1×101〜1.7×104である場合について、Severity factor R0の値をX軸にとって各条件における処理後のpHの結果をプロットしたグラフを示す。
図4に示されるように、pH値は、Severity factor R0の値が1×102から1×103に増加するにつれて4.4付近から3.9付近に低下した。一方、Severity factor R0の値が1×103を超えると、pHの低下率は減少した。なお、図5は、試験例2の凝固点降下の結果をY軸にとり、試験例3のpHの結果をX軸にとって、プロットし直したグラフである。このグラフにみられるように、pH4.4〜pH4.0の範囲では、凝固点降下にそれほど影響なくpHの低下がみられ、一方、pH値が3.9に達した以降は急激に凝固点降下の値も上昇した。これは、pHを低下させる要因と、凝固点降下の値を上昇させる要因が、何かしら独立に存在しているからではないかと考えられた。また、このようなpH降下の現象は、ポリフェノールや糖の分解に起因する、有機酸のような酸性化合物の形成をもたらす現象である可能性が考えられた。
<試験例4>(糖質分解酵素阻害活性の変化)
調製例3の亜臨界水処理物について、糖質分解阻害活性を評価した。具体的には、α−グルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、α−アミラーゼのそれぞれの酵素に対する阻害活性を、種々の亜臨界水処理の条件下における処理後の溶液をサンプルとして用いて、以下に示すアッセイ系により測定し、未処理の対照(Control)と比べたときの阻害活性の変化を評価した。
(1)α−グルコシターゼ阻害活性
酵母由来α−グルコシターゼ溶液(東洋紡、69.4Units/mg、0.1Unit/μLに調製)10μLとサンプルまたは0.2Mリン酸緩衝液(pH6.8)100μL、蒸留水390μLを混合し、37℃で5分間プレインキュベートした。その後、4%(w/v)マルトース溶液500μLを添加し、37℃で30分間インキュベートをした後、1N HCl 1mLを添加し反応を停止させ、1N NaOH 1mLを添加し中和した。反応液中で生成したグルコース量は、グルコースオキシダーゼ法に基づく市販キット(グルコースC-IIテストワコー:和光純薬工業)を用いて測定した。
阻害率は以下の通りに算出した。
阻害率(%)=(1−サンプル添加群のグルコース量/緩衝液添加群のグルコース量)×100
(2)マルターゼ阻害活性
ラット小腸由来アセトンパウダー(Sigma)0.5 gに0.2Mリン酸緩衝液(pH6.0)4.5mLを添加し、氷中でガラスホモジナイザーを用いて均質化した。その後、遠心分離(800×g、10min、4℃)し、上清を粗酵素液とし、この粗酵素液を20倍希釈して用いた。
酵素液400μLとサンプルまたは0.2Mリン酸緩衝液(pH6.0)400μLを混合し、37℃で5分間プレインキュベートをした。その後5%(w/v)マルトース溶液400μLを添加し、37℃で60分間インキュベートした後、沸騰水中で10分間加熱し、反応を停止させた。反応液中で生成したグルコース量は、グルコースオキシダーゼ法に基づく市販キット(グルコースC-IIテストワコー:和光純薬工業)を用いて測定した。
阻害率は以下の通りに算出した。
阻害率(%)=(1−サンプル添加群のグルコース量/緩衝液添加群のグルコース量)×100
(3)スクラーゼ阻害活性
上記(2)で調製した粗酵素液を2倍希釈にして用いた。
酵素液400μLとサンプルまたは0.2Mリン酸緩衝液(pH6.0)400μLを混合し、37℃で5分間プレインキュベートをした。その後5%(w/v)スクロース溶液400μLを添加し、37℃で60分間インキュベートした後、沸騰水中で10分間加熱し、反応を停止させた。反応液中で生成したグルコース量は、グルコースオキシダーゼ法に基づく市販キット(グルコースC-IIテストワコー:和光純薬工業)を用いて測定した。
阻害率は以下の通りに算出した。
阻害率(%)=(1−サンプル添加群のグルコース量/緩衝液添加群のグルコース量)×100
(4)α−アミラーゼ阻害活性
ブタ膵臓由来α−アミラーゼ溶液(Sigma、19.5Units/mg、0.25Units/μLに調製)20μLとサンプルまたは0.2Mリン酸緩衝液(pH6.9)1mLを混合し、37℃で5分間プレインキュベートした。その後、4%でんぷん(和光純薬工業)溶液1mLを添加し、37℃で60分間インキュベートをした後、沸騰水中で10分間加熱し、反応を停止させた。反応液中で生成した還元糖量はSomogyi-Nelson法を用いて測定した。
阻害率は以下の通りに算出した。
阻害率(%)=(1−サンプル添加群の還元糖量/緩衝液添加群の還元糖量)×100
図6には、亜臨界水処理のSeverity factor R0の値が1×101〜1.7×104である場合について、Severity factor R0の値をX軸にとって各条件における処理後のポリフェノール含有溶液による、α−グルコシターゼ(図6a)、マルターゼ(図6b)、スクラーゼ(図6c)、α−アミラーゼ(図6d)のそれぞれの酵素に対する阻害率の結果をプロットしたグラフ示す。
図6aに示されるように、未処理の対照(Control)によるα−グルコシターゼ阻害活性は61%程度であったが、亜臨界水処理のSeverity factor R0の値が1×102を超えて増加するにつれてその阻害率は最大79%程度にまで上昇した。ただし、Severity factor R0の値が1×103を超えるとかえって阻害率が低下する傾向となった。
図6bに示されるように、未処理の対照(Control)によるマルターゼ阻害活性は56%程度であったが、亜臨界水処理のSeverity factor R0の値が1×101を超えて増加するにつれてその阻害率は最大82%程度にまで上昇した。ただし、Severity factor R0の値が1×104を超えるとかえって阻害率が低下する傾向となった。
図6cに示されるように、未処理の対照(Control)によるスクラーゼ阻害活性は37%程度であったが、亜臨界水処理のSeverity factor R0の値が3×101を超えて増加するにつれてその阻害率は最大99%程度にまで上昇した。
図6dに示されるように、未処理の対照(Control)によるα−アミラーゼ阻害活性は70%程度であったが、亜臨界水処理のSeverity factor R0の値が1×101〜3×102の範囲でその阻害率が上昇する傾向がみられた。ただし、Severity factor R0の値が1×102を超えるとかえって阻害率が低下する傾向となった。
1 亜臨界水処理装置
10 原料溶液容器
11 チューブ
12 高圧ポンプ
13 コイル状チューブ
14 オイルバス
15 攪拌機(マグネットスターラー)
16 コイル状チューブ
17 冷却用水槽
18 背圧弁
19 サンプリング容器

Claims (12)

  1. 柿ポリフェノール含有物を亜臨界水で処理することを特徴とする柿ポリフェノール分解物の製造方法。
  2. 前記柿ポリフェノール含有物は、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物である、請求項1記載の柿ポリフェノール分解物の製造方法。
  3. 前記柿ポリフェノール含有物は、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物から熱水抽出された抽出物である、請求項1記載の柿ポリフェノール分解物の製造方法。
  4. 前記亜臨界水での処理は、圧力1〜10MPa下に行う、請求項1〜3のいずれか1つに記載の柿ポリフェノール分解物の製造方法。
  5. 前記亜臨界水での処理は、下記式で求められるR0の値が1〜20000となる範囲の条件で行う、請求項1〜4のいずれか1つに記載の柿ポリフェノール分解物の製造方法。
  6. 柿ポリフェノール含有物を亜臨界水で処理する工程を含むことを特徴とする血糖値上昇抑制用組成物の製造方法。
  7. 前記柿ポリフェノール含有物は、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物である、請求項6記載の血糖値上昇抑制用組成物の製造方法。
  8. 前記柿ポリフェノール含有物は、柿の果実を脱渋処理した水不溶化物から熱水抽出された抽出物である、請求項6記載の血糖値上昇抑制用組成物の製造方法。
  9. 前記亜臨界水での処理は、圧力1〜10MPa下に行う、請求項6〜8のいずれか1つに記載の血糖値上昇抑制用組成物の製造方法。
  10. 前記亜臨界水での処理は、下記式で求められるR0の値が1〜20000となる範囲の条件で行う、請求項6〜9のいずれか1つに記載の血糖値上昇抑制用組成物の製造方法。
  11. 前記血糖値上昇抑制用組成物は、グルコシターゼ、マルターゼ、スクラーゼ、アミラーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素を阻害するものである、請求項6〜10のいずれか1つに記載の血糖値上昇抑制用組成物の製造方法。
  12. 前記血糖値上昇抑制用組成物は、血糖値上昇抑制のための飲食品又は医薬品として用いられる、請求項6〜11のいずれか1つに記載の血糖値上昇抑制用組成物の製造方法。
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