JP2019160565A - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ワークに対する異常放電の発生を抑制するプラズマ処理装置を提供する。【解決手段】接地される接地電極部21を有してワーク1を保持する保持部2と、所定の電圧が印加される印加電極部3と、前記保持部2の内部空間におけるガスを排気する排気部22と、を備え、前記接地電極部21は、前記ワークが接触して設置される設置面21Aと、前記設置面21Aから前記内部空間へ貫通する吸着孔211と、を有する、プラズマ処理装置。【選択図】図2
Description
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
従来、密閉容器の内部を減圧してプラズマを発生し、当該密閉容器内に配置されたワークをプラズマ処理する技術が多く利用された。しかしながら、近年では、大気圧下で安定的にプラズマ放電させる技術が確立されてきており、開放空間でのプラズマ処理が実用化されている。これにより、減圧に耐える強固な密閉容器が不要となり、安価なプラズマ処理装置が実現されている。
大気圧下で安定的にプラズマ放電させる代表的なプラズマ処理方法として、金属電極間に誘電体を挟んで、高周波数の高電圧を金属電極に印加させる誘電体バリア放電方式がある。本方式では、概ね1mm以下程度の狭い空間ギャップにて大気圧下での安定放電が実現でき、Heなどの希ガスの他、空気または窒素などの比較的低コストのガスでの放電も可能である。誘電体バリア放電方式を用いたプラズマ処理装置の一例は、特許文献1および特許文献2に開示される。
上記特許文献1および特許文献2のプラズマ処理装置では、一対の電極の両方を誘電体で被覆した形態を採るが、誘電体は一般的にセラミック等の高価な部材であるため、装置コストが高くなる。
そこで、従来、接地される接地電極と高電圧が印加される印加電極からなる一対の電極のうち、印加電極のみを誘電体で被覆する形態が採られる場合がある。この場合、接地電極にワーク(被処理体)を接触させて設置する。しかしながら、この形態では、ワークと接地電極との導通が不十分の状態であると、ワークと接地電極に電位差が生じ、異常放電が生じる課題があった。異常放電が生じるとワークに不要な表面処理がなされる虞がある。
上記状況に鑑み、本発明は、ワークに対する異常放電の発生を抑制できるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
本発明の例示的なプラズマ処理装置は、接地される接地電極部を有してワークを保持する保持部と、所定の電圧が印加される印加電極部と、前記保持部の内部空間におけるガスを排気する排気部と、を備え、前記接地電極部は、前記ワークが接触して設置される設置面と、前記設置面から前記内部空間へ貫通する吸着孔と、を有する構成としている。
本発明の例示的なプラズマ処理装置によれば、ワークに対する異常放電の発生を抑制できる。
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置100の全体構成を概略的に示す図である。
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置100の全体構成を概略的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置100は、大気圧下でプラズマを発生させ、被処理体である金属製のワーク1に対してプラズマ処理を行う装置である。プラズマ処理装置100は、保持部2と、印加電極部3と、高電圧電源部4と、タイマー5と、イジェクタ6と、空気供給部7と、流量計8と、を備える。
保持部2は、ワーク1を保持する。高電圧電源部4は、高周波である高電圧を印加電極部3に印加する。すなわち、印加電極部3には、交流電圧が印加される。一方、金属製の保持部2にグランド電位が印加されることで、金属製のワーク1には保持部2を介してグランド電位が印加される。印加電極部3とワーク1との間の隙間に処理ガスが導かれるので、当該隙間において放電が発生して、プラズマが発生する。発生したプラズマによってワーク1の表面を処理することができる。
高電圧電源部4が印加する電圧の周波数は、例えば、1kH〜100kHzである。高電圧電源部4が印加する電圧の波形は、パルス波形が望ましいが、その他にも正弦波、矩形波等でもよく、大気圧プラズマ放電で用いられる公知の波形を用いればよい。また、高電圧電源部4が印加する電圧は、例えば5kVpp〜20kVppであり、印加電極部3とワーク1との間のギャップ等によって適宜設定される。
タイマー5は、高電圧電源部4より印加電極部3に電圧を印加する時間を計測する。すなわち、タイマー5によって、ワーク1に対してプラズマ処理を行う処理時間を制御できる。
イジェクタ6は、保持部2の排気口に接続される負圧発生器である。イジェクタ6は、空気供給部7から供給される空気の高速なガス流を生成することで、ベンチュリー効果により、当該ガス流と直交する方向に負圧を生成する。イジェクタ6により負圧が生成されることで、保持部2の内部空間におけるガスが排気される。すなわち、イジェクタ6は、排気部として機能する。なお、イジェクタ6の代わりに例えば真空ポンプを採用してもよい。
流量計8は、保持部2の排気口とイジェクタ6との間の流路中に配置される。流量計8は、上記流路を流れるガス流の流量を計測する。
図2は、印加電極部3および保持部2に関する構成をより具体的に示した縦断面図である。なお、図2において、X1を上側、X2を下側として示す。
保持部2は、接地電極部21と、ハウジング22と、を有する。接地電極部21は、例えば直方体状であり、グランド電位が印加される。ハウジング22は、上方に開口した例えば直方体状の箱部材であり、接地電極部21を下方から支持する。接地電極部21とハウジング22によって囲まれて内部空間2Aが形成される。すなわち、保持部2は、内部空間2Aを有する。ハウジング22の側面には、排気口221が設けられる。排気口221は、イジェクタ6(図1)に接続される。
接地電極部21は、設置面21Aを上面として有する。設置面21Aにワーク1が接触して設置される。接地電極部21は、内部空間2A側に下面21Bを有する。接地電極部21は、複数の吸着孔211を有する。吸着孔211は、設置面21Aから下面21Bまで上下方向に貫通する貫通孔である。なお、吸着孔211は、単数であってもよい。ワーク1を設置面21Aに設置した状態で、ワーク1により吸着孔211の設置面21A側端部は閉塞される。
また、接地電極部21は、設置面21Aから下面21Bまで上下方向に貫通する貫通孔である連通孔212を有する。ワーク1は、連通孔212上には設置されない。すなわち、連通孔212は、設置面21A上方の空間と内部空間2Aとを接続する。
印加電極部3は、接地電極部21の上方に配置される。図2には、誘電体9が示される。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、誘電体9を有する。誘電体9は、印加電極部3の下面を被覆する。誘電体9の材料としては、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック材料、または快削性セラミックなどが好適に使用される。
ワーク1は、誘電体9と接地電極部21とによって上下方向に挟まれる。誘電体9の下面とワーク1の上面との間には、隙間S1が設けられる。また、仕切り10は、連通孔212を挟んでワーク1と対向する箇所に配置され、接地電極部21と誘電体9とを接続する。
イジェクタ6によって内部空間2Aにおけるガスが排気口221を介して外部へ排気されると、内部空間2Aは負圧となる。これにより、吸着孔211を介してワーク1は設置面21Aに吸着される。このとき、処理ガスが隙間S1へ流れ込むガス流が形成される。なお、図2には、処理ガスの流れをガス流F1として示す。処理ガスの種類は、空気または窒素など特に限定はされない。
グランド電位が印加された接地電極部21と導通することでワーク1は接地され、印加電極部3に高周波の高電圧が印加されるので、隙間S1において誘電体バリア放電が発生する。これにより、隙間S1においてプラズマP1が生成され、生成されたプラズマP1の活性種によってワーク1の上面が処理される。誘電体バリア放電により大気圧下で隙間S1において安定した放電を形成できる。
隙間S1は、連通孔212を介して内部空間2Aと連通するので、内部空間2Aが負圧となることで、プラズマ化によって生成された所定のガス(例えば窒素酸化物、オゾン等)は連通孔212および内部空間2Aを介して外部へ排気される。
本実施形態では、吸着孔211によってワーク1を設置面21Aに吸着させることで、ワーク1を設置面21Aに密着させる。これにより、ワーク1と接地電極部21との導通が十分にとれた状態となり、ワーク1と接地電極部21に電位差が生じることが抑制される。従って、ワーク1と接地電極部21との間で異常放電が発生することを抑制できる。これにより、ワーク1の下面に不要な処理が行われることを抑制できる。
換言すれば、本実施形態のプラズマ処理装置100は、接地される接地電極部21を有してワーク1を保持する保持部2と、所定の電圧が印加される印加電極部3と、保持部2の内部空間2Aにおけるガスを排気する排気部(イジェクタ6)と、を備え、接地電極部21は、ワーク1が接触して設置される設置面21Aと、設置面21Aから内部空間2Aへ貫通する吸着孔211と、を有する。
排気部6により内部空間2Aにおけるガスが排気されることで、内部空間2Aが負圧となり、吸着孔211を介してワーク1が接地電極部21の設置面21Aに吸着され、ワーク1が接地される。これにより、ワーク1と印加電極部3との間にプラズマが生成され、生成されたプラズマの活性種によりワーク1表面を処理することができる。ワーク1を設置面21Aに密着させて固定できるので、接地電極部21とワーク1との間に電位差が発生して異常放電が発生することを抑制できる。
また、接地電極部21は、ワーク1と印加電極部3との間の隙間S1と、内部空間2Aとを連通する連通孔212を有する。
これにより、共通の排気部6により、ワーク1の接地電極部21への吸着と、プラズマ化により発生するガスの連通孔212を介した排気が可能となる。
なお、連通孔212を設けず、プラズマ化による所定のガスを排気する経路をイジェクタ6による排気経路とは別途設けてもよい。
また、図1に示すように、ワーク1の下面は平坦であり、ワーク1の下面によって吸着孔211の設置面21A側端部は閉塞される。なお、これに限らず、例えば、ワーク1の下面に上方へ凹む凹部(半球状など)を設け、当該凹部によって吸着孔211の設置面21A側端部を閉塞してもよい。
すなわち、吸着孔211の設置面21A側端部は、ワーク1によって閉塞される。これにより、ワーク1の接地電極部21への吸着力をより大きくすることができる。
なお、例えば、ワーク1の下面に脚部を設け、当該脚部を設置面21A上に配置してもよい。この場合、ワーク1の下面が設置面21Aより若干浮いた状態となり、ワーク1によって吸着孔211の設置面21A側端部は閉塞されないが、ワーク1を設置面21Aへ吸着する効果を得ることはできる。
また、吸着孔211の軸方向(上下方向)に視た断面積は、連通孔212の軸方向に視た断面積よりも小さいことが望ましい。これにより、吸着孔211を介した差圧を大きくすることで、ワーク1を接地電極部21へより密着させることができる。
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置200の一部構成を示す縦断面図である。なお、本実施形態においては、中心軸C1の延びる方向を「軸方向」と称し、軸方向のX1側を「上側」、軸方向のX2側を「下側」とする。また、中心軸C1周りの方向を「周方向」、中心軸C1の径方向を「径方向」と称する。
図3は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置200の一部構成を示す縦断面図である。なお、本実施形態においては、中心軸C1の延びる方向を「軸方向」と称し、軸方向のX1側を「上側」、軸方向のX2側を「下側」とする。また、中心軸C1周りの方向を「周方向」、中心軸C1の径方向を「径方向」と称する。
プラズマ処理装置200は、保持部12と、印加電極部13と、高電圧電源部14と、誘電体15と、を有する。なお、プラズマ処理装置200は、その他にも、先述した図1と同様なイジェクタ、空気供給部、および流量計(いずれも不図示)を有する。
保持部12は、接地電極部(ワークホルダ)121と、ハウジング122と、を有する。接地電極部121は、略円柱状であり、開口部121Aを有する。開口部121Aは、中心軸C1を中心として軸方向に貫通して形成される。接地電極部121は、金属製であり、グランド電位を印加される。
ハウジング122は、上方が開口した円筒形状であり、接地電極部121を下側から支持する。接地電極部121とハウジング22とに囲まれて内部空間12Aが形成される。すなわち、保持部12は、内部空間12Aを有する。また、ハウジング122の側面には、排気口122Aが形成される。
印加電極部13は、中心軸C1を中心として軸方向に延びる金属部材である。誘電体15は、中心軸C1を中心として軸方向に延びる。誘電体15は、軸方向に延びる中空部15Aを内部に有する。すなわち、誘電体15は、軸方向に延びる円筒形状を有する。中空部15Aは、誘電体15を下端から上端まで貫通する。
印加電極部13は、中空部15A内に配置される。これにより、印加電極部13の径方向外側に誘電体15が配置される。誘電体15の材料は、先述した第1実施形態と同様である。
また、図3は、保持部12に対してワーク11をセットした状態を示す図である。この状態で、ワーク11と保持部12により半密閉空間が形成される。図4は、ワーク11の斜視図である。ワーク11は、略円柱状の基体111と、基体111の下方に位置する円柱状の凸部112と、基体111の外周面上端部から径方向外側に突出して環状に形成される鍔部113と、を有する。
また、ワーク11は、凹部11A、凹部11B、および軸方向に貫通する貫通孔11Cを有する。円柱状の凹部11Aの上端位置は、鍔部113の上端位置と一致する。円柱状の凹部11Bは、凹部11Aの下方に凹部11Aと連続して配置される。円柱状の貫通孔11Cは、凹部11Bの下方に凹部11Bと連続して配置される。すなわち、凹部11A、凹部11B、および貫通孔11Cは、互いに連通する。
基部111は、下端において円環状の面である円環面111Aを有する。凸部112は、円環面111Aの径方向内側から下方へ突出する。接地電極部121は、上面として設置面1211を有する。円環面111Aが設置面1211上に載置されることにより、ワーク11は保持部12に保持される。このとき、凸部112は、開口部121Aに嵌合する。
開口部121Aの軸方向に延びる内壁面である接触内壁面121A1は、凸部112の外周面である接触外周面112Aと接触可能に配置され、軸方向に垂直な平面上におけるワーク11の移動を阻止する。
印加電極部13と誘電体15はともに、貫通孔11Cの下側から貫通孔11Cの上側まで貫通孔11Cを貫通する。すなわち、印加電極部13と誘電体15はともに、貫通孔11Cの内壁面の軸方向全体および周方向全体に対して径方向に対向する。誘電体15と貫通孔11Cとの間には、円筒形状の隙間S2が形成される。隙間S2は、開口部121Aを介して内部空間12Aと連通する。
また、接地電極部121は、軸方向に延びる貫通孔である吸着孔121Bを複数有する。接地電極部121は、設置面1211と軸方向に対向する下面1212を有する。下面1212は、内部空間12Aに面する。吸着孔121Bは、設置面1211から下面1212まで貫通する。なお、吸着孔121Bは、単数であってもよい。
ワーク11が設置面1211に設置された状態で、円環面111Aは、吸着孔121Bの設置面1211側端部を閉塞する。
排気口122Aに接続されたイジェクタ(不図示)により内部空間12Aにおけるガスが排気口122Aから外部へ排気されると、内部空間122A内部は負圧となる。貫通孔11Cより上側は、大気圧下での外気側となる。外気側と負圧との差圧によって吸着孔121Bを介してワーク11は設置面1211に吸着される。これにより、ワーク11は、グランド電位を印加される接地電極部121と導通し、接地される。
このとき、内部空間12Aが負圧であることにより、外気側から隙間S2を通じて内部空間12Aへ流れるガス流が発生する。このガス流により、外気側から貫通孔11Cへ処理ガスが導かれる。本実施形態において、処理ガスは外気となるが、必要であれば図示しないガス供給手段により図3上方から所望のガスを噴射しても良い。例えば金属製ワークに付着した切削油などの残渣を除去する場合には窒素に対して酸素を微量に添加したガスであることが望ましいが、本発明ではガス種を限定しない。
ワーク11は接地され、印加電極部13には高電圧電源部14により高周波の高電圧が印加される。隙間S2のギャップは狭く、大気圧下で隙間S2において放電が発生する。誘電体バリア放電によって放電は安定的に行われる。従って、隙間S2においてプラズマP2が発生する。プラズマP2は、隙間S2の軸方向全体および周方向全体において発生する。
このように、貫通孔11C内部で発生したプラズマP2の活性種により直接的に貫通孔11Cの内壁面を処理することができるので、リモート方式の装置による処理に比べて、プラズマ処理を高速に行うことができる。
例えば、ワーク11に対して貫通孔11Cを形成した場合に、貫通孔11Cの内壁面に残留した切削油をプラズマ処理により除去することができる。これにより、貫通孔11Cの濡れ性を向上させ、貫通孔11Cに対して接着剤により部材を固定する際の接着強度を向上できる。なお、貫通孔に対するプラズマ処理は上記に限らず、例えば、貫通孔の内壁面に薄膜を形成することに用いてもよい。
また、貫通孔11C内部で処理ガスをプラズマ化することで発生する所定のガス(例えば窒素酸化物、オゾン等)を内部空間12Aおよび排気口122Aを介して外部へ排出し、上記所定のガスの外気側への漏洩を抑制することができる。また、内部空間12Aにおける負圧による外気との差圧によって、ワーク11は接地電極部121に押し当てられて保持され、ワーク11のばたつきを抑制することもできる。
特に、誘電体15と貫通孔11Cとの間のギャップを狭くすれば、隙間S2の断面積を小さくし、隙間S2を通るガス流の流速を高速化できる。これにより、上記所定のガスの外気側への漏洩をより抑制することができる。この場合、ガス流が高速化するが、先述のようにワーク11は接地電極部121に押し当てられるので、ワーク11のばたつきは抑制される。
印加電極部13と誘電体15は、貫通孔11Cの下側から貫通孔11Cの上側まで貫通孔11Cを貫通する。すなわち、印加電極部13および誘電体15は、貫通孔11Cの両開口端部より外側へ突出する。なお、貫通孔11C内部が内側、貫通孔11C外部が外側である。これにより、貫通孔11Cの両開口端部におけるプラズマの生成を安定化することができる。
また、印加電極部13は、ワーク11にグランド電位が印加された状態で、高電圧電源部14により高電圧が印加される。これにより、印加電極部13よりも外側に位置して人が接触し易いワーク11側をグランド電位とすることができ、安全性を向上させることができる。
また、ワーク11を接地電極部121にセットすることで、接触外周面112Aおよび接触内壁面121A1により、ワーク11は接地電極部121に対して軸方向に垂直な平面上における位置決めがなされる。接地電極部121と誘電体15との位置関係は予め決定されるので、ワーク11のセットによりワーク11と誘電体15との位置関係も規定される。これにより、貫通孔11Cの内壁面と誘電体15との間のギャップの管理が容易となる。ギャップの管理により、貫通孔11Cの内壁面のプラズマ処理を均一化することができる。また、ワーク11は、接地電極部121に対して軸方向に着脱することができる。
また、排気口122Aとイジェクタとの間の流路上に流量計を配置するので、排気口122Aから外部へ排気されるガス流の流量を測定することができる。これにより、ワーク11の接地電極部121への差圧による固定状態の異常を検知することが可能となる。
そして、特に本実施形態では、吸着孔121Bによる吸着により、ワーク11が設置面1211に密着する。これにより、ワーク11と接地電極部121との導通が十分にとれた状態となり、ワーク11と接地電極部121に電位差が生じることが抑制される。従って、ワーク11と接地電極部121との間で異常放電が発生することを抑制できる。これにより、ワーク11の円環面111Aに不要な処理が行われることを抑制できる。
換言すれば、本実施形態のプラズマ処理装置200は、接地される接地電極部121を有してワーク11を保持する保持部12と、所定の電圧が印加される印加電極部13と、保持部12の内部空間12Aにおけるガスを排気する排気部と、を備え、接地電極部121は、ワーク11が接触して設置される設置面1211と、設置面1211から内部空間12Aへ貫通する吸着孔121Bと、を有する。
これにより、排気部により内部空間12Aにおけるガスが排気されることで、内部空間12Aが負圧となり、吸着孔121Bを介してワーク11が接地電極部121の設置面1211に吸着され、ワーク11が接地される。これにより、ワーク11と印加電極部13との間にプラズマP2が生成され、生成されたプラズマP2の活性種によりワーク11表面を処理することができる。ワーク11を設置面1211に密着させて固定できるので、接地電極部121とワーク11との間に電位差が発生して異常放電が発生することを抑制できる。
また、接地電極部121は、ワーク11と印加電極部13との間の隙間S2と、内部空間12Aとを連通する連通孔(開口部121A)を有する。
これにより、共通の排気部により、ワーク11の接地電極部121への吸着と、プラズマ化により発生するガスの排気が可能となる。
また、印加電極部13は、少なくともワーク11の有する貫通孔11Cの内部において、貫通孔11Cの少なくとも一部に対して径方向に対向する。
これにより、排気部により排気することで、処理ガスを貫通孔11Cと印加電極部13との間の隙間S2に導入し、隙間S2においてプラズマP2を発生させ、発生したプラズマP2と接触する貫通孔11Cの内壁面を処理することができる。このようなダイレクトなプラズマ処理により、貫通孔11Cのプラズマ処理を高速化できる。
また、吸着孔121Bの軸方向に視た断面積は、連通孔(開口部121A)の軸方向に視た断面積よりも小さいことが望ましいことは、上記第1実施形態と同様である。
また、吸着孔121Bの設置面1211側端部は、ワーク11によって閉塞されることが望ましいことも、上記第1実施形態と同様である。
ここで、吸着孔121Bの配置に関する形態について説明する。図5Aは、保持部12および印加電極部13を上方から視た平面図であり、吸着孔121Bの配置の一例を示す。図5Aにおいて、外縁11Sは、ワーク11の設置領域の外縁を示し、外縁121Sは、接地電極部121の外縁を示す。
図5Aに示すように、吸着孔121Bは、軸方向に視て同一円Cr1上において周方向に等間隔に4つ配置される。すなわち、吸着孔121Bは、周方向90°ごとに配置される。
また、図5Bは、図5Aの変形例であり、吸着孔121Bの配置の別例を示す。図5Bでは、吸着孔121Bは、軸方向に視て同一円Cr1上において周方向に等間隔に3つ配置される。すなわち、吸着孔121Bは、周方向120°ごとに配置される。
図5Aでは、開口部121Aと外縁11Sとの間の円環状領域R1を中央線によって2分割した場合、分割後の各領域には、それぞれ2つの吸着孔121Bが配置される。円環状領域R1は、設置面1211におけるワーク11と接触する領域である。同様に、図5Bでは、円環状領域R1を中央線によって2分割した場合、分割後の各領域には、それぞれ1つの吸着孔121B、2つの吸着孔121Bが配置される。
すなわち、設置面1211におけるワーク11と接触する領域R1を中央線によって2分割した各領域には、それぞれ少なくとも1つの吸着孔121Bが設けられる。
これにより、ワーク11の接地電極部121に対する片持ち状態を抑制することができる。
また、吸着孔121Bは、同一円Cr1上において周方向に等間隔に複数配置される。
これにより、ワーク11をより均一に接地電極部121へ吸着させることができる。
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るプラズマ処理装置300の一部構成を示す縦断面図である。プラズマ処理装置300は、先述の第2実施形態との相違点として、弾性部材16を有する。弾性部材16は、樹脂などにより形成される円筒状部材である。弾性部材16は、開口部121Aの内壁面に固定される。弾性部材16の上端面は、自然状態において設置面1211よりも上方に位置する。
図6は、第3実施形態に係るプラズマ処理装置300の一部構成を示す縦断面図である。プラズマ処理装置300は、先述の第2実施形態との相違点として、弾性部材16を有する。弾性部材16は、樹脂などにより形成される円筒状部材である。弾性部材16は、開口部121Aの内壁面に固定される。弾性部材16の上端面は、自然状態において設置面1211よりも上方に位置する。
図6の状態においてワーク11を上方からプラズマ処理装置300にセットすると、図7に示す状態となる。ワーク11をセットするとき、まず、ワーク11の凸部112を弾性部材16により囲まれた空間の上端部に嵌合させる。このとき、凸部112のエッジは他の物体に接触し易いが、突出した弾性部材16と接触し易くなるので、凸部112を保護することができる。
ワーク11を弾性部材16に嵌合させると、ワーク11の円環面111Aは、弾性部材16の突出した上端面に載置される。すると、ワーク11の重量により、ワーク11は弾性部材16が縮むことによる弾性力に抗して下方へ移動する。そして、ワーク11の重量と弾性力とが釣り合った位置でワーク11は停止する。このとき、ワーク11の円環面111Aは、設置面1211よりも若干上方に位置する。
そして、排気部(イジェクタ)によって内部空間12Aにおけるガスを排気すると、吸着孔121Bによりワーク11がさらに下方へ移動して設置面1211に吸着される。このように、弾性部材16を設けることにより、ワーク11をセットするときにワーク11の設置面1211との衝突による衝撃を抑制することができる。なお、ワーク11を弾性部材16に嵌合させたときに、ワーク11の重量によりワーク11が設置面1211と接触するまで下方へ移動してもよい。
すなわち、接地電極部121には、ワーク11を載置可能な弾性部材16が設けられ、弾性部材16は、自然状態にて設置面1211よりも突出する。
これにより、ワーク11を弾性部材16の突出する箇所に載置することで、ワーク11には弾性部材16による弾性力が加えられる。これにより、ワーク11と設置面1211との衝突による衝撃を抑制することができる。
また、接地電極部121は、ワーク11の凸部112を挿入可能な孔部(開口部121A)を有し、弾性部材16は、孔部121Aの内壁に配置される。
これにより、ワーク11を接地電極部121に設置するときに、ワーク11において他の物体と接触し易い凸部112のエッジは、弾性部材16に接触し易くなるので、凸部112を保護することが可能となる。
<第3実施形態の変形例>
図8は、第3実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置301の一部構成を示す縦断面図である。プラズマ処理装置301は、複数の弾性部材161を有する。弾性部材161は、円環状である。吸着孔121Bの設置面1211側端部には、径方向へ拡がった凹部121B1が形成される。弾性部材161は、凹部121B1内に収容される。弾性部材161の上端面は、自然状態において、設置面1211より上方に位置する。
図8は、第3実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置301の一部構成を示す縦断面図である。プラズマ処理装置301は、複数の弾性部材161を有する。弾性部材161は、円環状である。吸着孔121Bの設置面1211側端部には、径方向へ拡がった凹部121B1が形成される。弾性部材161は、凹部121B1内に収容される。弾性部材161の上端面は、自然状態において、設置面1211より上方に位置する。
図8の状態においてワーク11を上方からプラズマ処理装置301にセットすると、図9に示す状態となる。ワーク11の凸部112を開口部121Aに嵌合させてワーク11の円環面111Aを弾性部材161の突出した上端面に載置する。すると、ワーク11の重量により、ワーク11は弾性部材161が縮むことによる弾性力に抗して下方へ移動する。そして、ワーク11の重量と弾性力とが釣り合った位置でワーク11は停止する。このとき、ワーク11の円環面111Aは、設置面1211よりも若干上方に位置する。
そして、排気部(イジェクタ)によって内部空間12Aにおけるガスを排気すると、吸着孔121Bによりワーク11がさらに下方へ移動して設置面1211に吸着される。このように、弾性部材161を設けることにより、ワーク11をセットするときにワーク11の設置面1211との衝突による衝撃を抑制することができる。なお、ワーク11を弾性部材161に載置させたときに、ワーク11の重量によりワーク11が設置面1211と接触するまで下方へ移動してもよい。
<第4実施形態>
図10は、本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理装置400の一部構成を示す縦断面図である。本実施形態では、ワーク11は第2実施形態(図3)と上下方向を逆として保持部12に保持される。
図10は、本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理装置400の一部構成を示す縦断面図である。本実施形態では、ワーク11は第2実施形態(図3)と上下方向を逆として保持部12に保持される。
保持部12は、接地電極部123と、ハウジング122と、を有する。接地電極部123は、軸方向に貫通する開口部123Aを有する。接地電極部123は、上方に軸方向視で円環状の載置面1231を有するとともに、載置面1231の径方向内側縁から上側へ突出する円環突部1232を有する。円環突部1232の外周面は、軸方向に延びる接触外壁面1232Aとなる。
ワーク11は、第2実施形態と上下方向が逆とされるので、貫通孔11Cより下側に凹部11Bが位置し、凹部11Bより下側に凹部11Aが位置する。凹部11Bの外周面は、ワーク11の接触内周面11B1となる。ワーク11は、接触外壁面1232Aが接触内周面11B1と接触可能に配置され、設置面1231上に載置される。これにより、ワーク11は、軸方向に垂直な平面上における移動を阻止される。
また、接地電極部123は、軸方向に延びる吸着孔123Bを複数有する。接地電極部123は、設置面1231と軸方向に対向する下面1232を有する。下面1232は、内部空間12Aに面する。吸着孔123Bは、設置面1231から下面1232まで軸方向に貫通する。ワーク11は、凹部11Aと凹部11Bとが接続される位置に段差面11Dを有する。吸着孔123Bの設置面1231側端部は、段差面11Dにより閉塞される。
ワーク11が接地電極部123に保持された状態で、印加電極部13および誘電体15は、貫通孔11Cの下側から貫通孔11Cの上側まで貫通する。貫通孔11Cの上方が外気側となる。ハウジング122の排気口122Aから内部空間12A内部のガスを排気することで、内部空間12A内が負圧となる。これにより、外気側から貫通孔11C、開口部123Aを介して内部空間12Aへ流れるガス流が生じる。
ワーク11は、接地電極部123を介してグランド電位を印加される。印加電極部13に高周波の高電圧を印加することで、誘電体15と貫通孔11Cの内壁面との間の隙間S3において放電が生じる。これにより、隙間S3においてプラズマP3が生成される。生成されたプラズマP3により、上記内壁面をダイレクトに処理することができる。外気と負圧との差圧によって、ワーク11は、接地電極部123に押し付けられて固定される。
また、内部空間12Aを負圧とすることで、吸着孔123Bを介してワーク11は、設置面1231に吸着および密着される。これにより、ワーク11と接地電極部123に電位差が生じて異常放電が発生することが抑制される。
<その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では誘電体を用いていたが、印加電極部に印加する電圧の波形制御によりアーク放電を抑制できる場合など、誘電体を用いない構成も可能である。
本発明は、例えば、ワークの貫通孔に付着した切削油のプラズマ処理に利用することができる。
1・・・ワーク、2・・・保持部、2A・・・内部空間、21・・・接地電極部、21A・・・設置面、211・・・吸着孔、22・・・ハウジング、221・・・排気口、3・・・印加電極部、4・・・高電圧電源部、5・・・タイマー、6・・・イジェクタ、7・・・空気供給部、8・・・流量計、9・・・誘電体、10・・・仕切り、11・・・ワーク、12・・・保持部、12A・・・内部空間、121・・・接地電極部、121A・・・開口部、121B・・・吸着孔、1211・・・設置面、122・・・ハウジング、122A・・・排気口、123・・・接地電極部、123A・・・開口部、123B・・・吸着孔、1231・・・設置面、13・・・印加電極部、14・・・高電圧電源部、15・・・誘電体、16、161・・・弾性部材、C1・・・中心軸、S1、S2、S3・・・隙間、P1、P2、P3・・・プラズマ、100、200、300、301、400・・・プラズマ処理装置
Claims (9)
- 接地される接地電極部を有してワークを保持する保持部と、
所定の電圧が印加される印加電極部と、
前記保持部の内部空間におけるガスを排気する排気部と、
を備え、
前記接地電極部は、
前記ワークが接触して設置される設置面と、
前記設置面から前記内部空間へ貫通する吸着孔と、を有する、
プラズマ処理装置。 - 前記接地電極部は、前記ワークと前記印加電極部との間の隙間と、前記内部空間とを連通する連通孔を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
- 前記印加電極部は、少なくとも前記ワークの有する貫通孔の内部において、前記貫通孔の少なくとも一部に対して径方向に対向する、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
- 前記吸着孔の軸方向に視た断面積は、前記連通孔の軸方向に視た断面積よりも小さい、請求項2または請求項3に記載のプラズマ処理装置。
- 前記吸着孔の前記設置面側端部は、前記ワークによって閉塞される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
- 前記設置面における前記接地電極部と接触する領域 を中央線によって2分割した各領域には、それぞれ少なくとも1つの前記吸着孔が設けられる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
- 前記吸着孔は、同一円上において周方向に等間隔に複数配置される、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
- 前記接地電極部には、前記ワークを載置可能な弾性部材が設けられ、
前記弾性部材は、自然状態にて前記設置面よりも突出する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。 - 前記接地電極部は、前記ワークの凸部を挿入可能な孔部を有し、
前記弾性部材は、前記孔部の内壁に配置される、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018045782A JP2019160565A (ja) | 2018-03-13 | 2018-03-13 | プラズマ処理装置 |
CN201910188057.1A CN110278650A (zh) | 2018-03-13 | 2019-03-13 | 等离子体处理装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2019160565A true JP2019160565A (ja) | 2019-09-19 |
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ID=67992615
Family Applications (1)
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JP2018045782A Pending JP2019160565A (ja) | 2018-03-13 | 2018-03-13 | プラズマ処理装置 |
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JP (1) | JP2019160565A (ja) |
-
2018
- 2018-03-13 JP JP2018045782A patent/JP2019160565A/ja active Pending
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