JP2019158025A - ドライコンタクトメカニカルシール - Google Patents
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Abstract
【目的】密封端面の接触状態を適正に維持して、良好なメカニカルシール機能を発揮するドライコンタクトメカニカルシールを提供する。【構成】回転軸4に軸線方向移動可能に保持された回転密封環5とシールケース2に固定された静止密封環3との対向端面である密封端面3a,5aが無潤滑の接触状態で相対回転することによりシール機能を発揮するように構成されたドライコンタクトメカニカルシールにおいて、静止密封環3を、密封端面3aを形成した密封環本体31とその外周部に密着状態で嵌合された金属製の保持環32とからなる円環状複合物となし、保持環32に、シールケース2に形成された供給通路13から供給されたパージ流体Fを当該保持環32の先端面に開口する噴出口14aから回転密封環5に向けて噴出する複数のパージ流体噴出通路14を形成する。【選択図】図1
Description
本発明は、医薬,食品,化学品,半導体等の分野で使用される攪拌機等の回転機器に装備されるドライコンタクトメカニカルシールに関するものである。
従来のドライコンタクトメカニカルシールとして、特許文献1及び特許文献2に開示されるように、回転軸に軸線方向移動可能に保持された回転密封環とシールケースの内周部に固定された静止密封環との対向端面である密封端面を無潤滑の接触状態で相対回転させることにより、両密封端面の接触部分の内周側領域である被密封流体領域とその外周側領域である大気領域とを区画して、被密封流体領域の流体(被密封流体)をシールするように構成されたものが周知である。
このようなドライコンタクトメカニカルシールにあっては、両密封端面の接触部分が液体潤滑されないドライ雰囲気(ガス雰囲気)で相対回転されることから、当該接触部分には摩擦熱が発生して、密封環が異常発熱する虞れがある。その結果、密封端面に熱歪が生じて、両密封端面の接触状態が不適正となり、良好なメカニカルシール機能を発揮できない虞れがある。また、被密封流体の温度が氷点以下である場合には、被密封流体が接触する密封環等のメカニカルシール構成部材に結露が生じて、結露により付着した水分が密封端面間に侵入することにより密封端面が異常摩耗し、両密封端面の接触状態が不適正となり、良好なメカニカルシール機能を発揮できない虞れがある。
本発明は、このような問題を生じることなく、両密封端面の接触状態を適正に維持して良好なメカニカルシール機能を発揮することができるドライコンタクトメカニカルシールを提供することを目的とするものである。
本発明は、上記の目的を達成すべく、回転軸に軸線方向移動可能に保持された回転密封環とシールケースに固定された静止密封環との対向端面である密封端面が接触状態で相対回転することにより当該密封端面の接触部分の内周側領域である被密封流体領域をシールするように構成されたドライコンタクトメカニカルシールであって、静止密封環を、前記密封端面を形成した密封環本体とその外周部に密着状態で嵌合された金属製の保持環とからなる円環状複合物となし、当該保持環に、シールケースに形成した供給通路から供給されたパージ流体を当該保持環の先端面に開口する噴出口から回転密封環に向けて噴出する複数のパージ流体噴出通路を形成したことを特徴とするドライコンタクトメカニカルシールを提案する。
かかるドライコンタクトメカニカルシールの好ましい実施の形態にあっては、回転密封環が前記各パージ流体噴出通路の噴出口に直対向する環状壁面を有するものであり、当該各パージ流体噴出通路がパージ流体を噴出口から当該環状壁面に向けて噴出させるものである。各パージ流体噴出通路は、パージ流体を当該パージ流体噴出通路の噴出口から回転密封環の外周面に向けて噴出させるものとすることもできる。
また、前記保持環は、前記密封環本体の外周部の一部分であって当該外周部の密封端面側の部分に密着状態で嵌合されたもの、或は前記密封環本体の外周部にその全面に亘って密着状態で嵌合されたものである。何れの場合にも、前記保持環は、前記密封環本体の外周部に焼嵌めにより密着状態で嵌合させておくことが好ましい。また、前記パージ流体としてはガスを使用することができ、前記密封環本体は硬質の難削材で構成しておくことができる。
本発明のドライコンタクトメカニカルシールにあっては、静止密封環の密封環本体が、パージ流体がパージ流体噴出通路を流動することにより放熱、冷却される金属製の保持環に密着していることから、当該密封環本体から保持環への熱移動が効果的に行われて、当該密封環本体に形成された密封端面における熱歪の発生が可及的に防止される。また、パージ流体がパージ流体噴出通路の噴出口から回転密封環に向けて噴出されることから、回転密封環が冷却されて、これに形成された密封端面における熱歪の発生も可及的に防止される。また、被密封流体の温度が氷点以下の場合には、バージ流体による昇温効果によって密封環等における結露の発生が防止されることから、結露による水分の密封端面間への侵入により密封端面が異常摩耗するようなことがない。したがって、本発明のドライコンタクトメカニカルシールによれば、静止密封環の密封端面と回転密封環の密封端面とが適正に接触して、良好なシール機能(メカニカルシール機能)が発揮される。
以下、本発明を実施するための形態を図1及び図2に基づいて具体的に説明する。図1は本発明に係るドライコンタクトメカニカルシールの一例を示す断面図であり、図2は図1の要部を拡大して示す詳細図である。
この実施の形態におけるドライコンタクトメカニカルシールは、医薬,食品,化学,半導体等の分野において使用される攪拌機等の回転機器であってガスを扱う回転機器の軸封手段として使用されるものであり、次のように構成されている。
すなわち、図1に示すドライコンタクトメカニカルシールは、回転機器のハウジング1にシールケース2を取り付け、このシールケース2に静止密封環3を固定し、当該回転機器の回転軸(攪拌軸等)4に回転密封環5をOリング6を介して軸線方向移動可能に保持し、回転密封環5をスプリング7により静止密封環3へと押圧、附勢して、両密封環3,5の対向端面である密封端面3a,5aが無潤滑の接触状態で相対回転することにより、当該密封端面3a,5aの接触部分の内周側領域である被密封流体領域Aとその外周側領域である非密封流体領域Bとを区画し、被密封流体領域Aの流体(被密封流体)をシールするように構成されている。この例では、被密封流体領域Aは当該回転機器の機内領域であり、被密封流体はガスである。また、非密封流体領域Bは当該回転機器の機外領域である大気領域である。なお、以下の説明において、軸線とは回転軸4の中心線をいい、軸線方向とは回転軸4の中心線に平行する方向をいう。また、前後とは、図1及び図2における左右をいう。
シールケース2は、図1及び図2に示す如く、ハウジング1の軸封部端面(前端面)に密着状態で取り付けられた円筒体であり、ステンレス鋼(例えば、SUS316等)等の金属材で構成されている。
静止密封環3は、図1及び図2に示す如く、密封環本体31とその外周部に密着状態で嵌合された保持環32とからなる円環状複合物である。
密封環本体31は、図2に示す如く、外径を一定とする先端部分31aと、外径を先端部分31aの外径より大径として先端部分31aの基端(後端)に連なる中間部分31bと、外径を中間部分32より小径として中間部分31bの基端(後端)に連なる基端部分31cとからなる円環状の一体成形物である。先端部分31aの先端面(前端面)は、軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面(以下「静止側密封端面」という)3aに構成されている。なお、先端部分31aの先端側部分の内周面は一定径の円柱面に構成されているが、先端部分31aの基端側部分、中間部分31b及び基端部分31cの内周面は、先端部分31aの先端側部分の内周面から漸次大径となる円錐面に構成されている。
保持環32は、図1に示す如く、薄肉円筒部32aとその基端(後端)に連なる厚肉円筒部32bとからなる断面L字状の円筒体であり、この例では、密封環本体31の外周部の一部分であって当該外周部の密封端面3a側の部分、つまり密封環本体31の先端部分31aの外周部に固着されている。すなわち、保持環32は、図2に示す如く、薄肉円筒部32a及び厚肉円筒部32bの内周面を密封環本体31の先端部分31aの外周面に密着させると共に厚肉円筒部32bの基端面(後端面)を密封環本体31の中間部分31bの先端面(前端面)に密着させた状態で、密封環本体31の外周部(先端部分31aの外周部)に嵌合、固着されている。保持環32の薄肉円筒部32aの外径は密封環本体31の基端部分31cの外径と同一に設定されており、当該薄肉円筒部32aの先端面(前端面)は、軸線方向において、密封環本体31の先端面である静止側密封端面3aと面一又はほぼ面一とされている。保持環32の厚肉円筒部32bの外径は、密封環本体31の中間部分31bの外径と同一に設定されている。
密封環本体31は、シール条件に応じて選定された適宜の密封環材料で構成されており、この例では硬質の難削材(例えば、アルミナ,炭化珪素,窒化珪素,炭化硼素等のセラミックス、タングステンカーバイド等の超硬合金等)で構成されている。保持環32は、密封環本体31の構成材より熱伝導率が高く且つ難削材ではない金属材で構成されているが、かかる金属材としてはメカニカルシールの金属構成部品として一般的に使用されるSUS316等のステンレス鋼等が該当し、この例ではシールケース2と同質の金属材で構成されている。
密封環本体31の外周部(先端部分31aの外周部)への保持環32の固着は、焼嵌め、圧入等、適宜の周知方法によって行うことができるが、この例では、保持環32を焼嵌めにより密封環本体31の外周部に密着状態で嵌合させている。
静止密封環3は、図1及び図2に示す如く、シールケース2の内周部に第1及び第2Oリング8,9を介して嵌合、固定されている。すなわち、第1Oリング8は、密封環本体31の中間部分31bとハウジング1の内周部に形成された環状突起1aとの対向端面間に嵌合させた状態で、密封環本体31の基端部分31cとシールケース2の内周部との対向周面間に圧縮状態で装填されており、密封環本体31とシールケース2との間をシールしている。第2Oリング9は、保持環32の厚肉円筒部32bとシールケース2の内周部に形成された環状突起2aとの対向端面間に嵌合させた状態で、保持環32の薄肉部分32aとシールケース2の内周部との対向周面間に圧縮状態で装填されており、保持環32とシールケース2との間をシールしている。なお、密封環本体31の外周部に保持環32を密着させてなる静止密封環3は、保持環32を有さず密封環本体31のみで構成した静止密封環と同一又はほぼ同一の形状をなすように構成されている。
回転軸4はハウジング1から大気領域Bへと延びてシールケース2及び静止密封環3を同心状に貫通しているが、この回転軸4には、図1に示す如く、静止密封環3より大気領域B側(前側)に配して、ステンレス鋼(例えば、SUS316等)等の金属材で構成されたスプリングリテーナ10が固定されている。スプリングリテーナ10は、スプリング保持部10aとその先端内周部(後端内周部)から突出する密封環保持部10bとからなる断面L字状の円筒体であり、適当数のセットスクリュー(図示せず)により回転軸4に固定されている。
回転密封環5は、図1及び図2に示す如く、回転軸5に軸線方向移動可能に嵌合された本体部5bとその先端面(後端面)から静止密封環3方向(後方)に突出するノーズ部5cと本体部5bの基端面(前端面)から連なってスプリングリテーナ10の密封環保持部10bに軸線方向移動可能に嵌合された二次シール部5dとからなる円環状体であり、二次シール部5dと回転軸4との対向周面間にOリング6を装填したシール状態で回転軸4に軸線方向移動可能に保持されている。回転密封環5は、静止密封環3の密封環本体31の構成材及びシール条件に応じて選定された適宜の密封環材料(例えば、カーボン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、充填材入りのPTFE等のフッ素樹脂、PEEK(ポリエーテエーテルケトン)等のエンジニアリングプラスチック、ポリイミド樹脂等)で構成されている。回転密封環5には、二次シール部5dの基端面(前端面)に接触すると共に当該二次シール部5dの基端側部分(前端側部分)の外周面に接触する状態で、断面L字状をなす円筒状の金属製(SUS316等のステンレス鋼等)のドライブカラー11が取り付けられている。
回転密封環5のノーズ部5cは内外径を一定とする円筒状のもので、その先端面は軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面(以下「回転側密封端面」という)5aに構成されている。回転側密封端面5aの外径は静止側密封端面3aの外径より小径に設定されており、回転側密封端面5aの内径は静止側密封端面3aの内径より大径に設定されている。回転密封環5の本体部5bの外径は、回転密封環5のノーズ部5cの外径及び静止密封環3の密封環本体31の先端部分31aの外径より大径であって静止密封環3の保持環32の薄肉円筒部32aの外径と同一又はほぼ同一に設定されていて、当該回転密封環5の本体部5bの先端面には、回転側密封端面5aの外周側において保持環32の先端面に直対向して軸線に直交する環状壁面5eが形成されている。なお、回転密封環5は、ドライブカラー11に取り付けたドライブピン12をスプリングリテーナ10のスプリング保持部10aに形成した貫通孔10cに挿通させることにより、軸線方向移動を所定範囲で許容した状態で回転軸4に対して相対回転不能に保持されている。
スプリング7は、図1に示す如く、スプリングリテーナ10のスプリング保持部10bと回転密封環5に固定されたドライブカラー11との間に円周方向に等間隔を隔てて装填した複数(1つのみ図示)の圧縮コイルスプリングで構成されており、両密封端面3a,5aを接触させるべく、回転密封環5を静止密封環3へと押圧附勢している。
而して、保持環32には、図1に示す如く、シールケース2に形成した供給通路13から供給されたパージ流体Fを当該保持環32の先端面に開口する噴出口14aから回転密封環5に向けて噴出する複数のパージ流体噴出通路14が形成されている。
供給通路13は、図1に示す如く、シールケース2にその外周部から内周部へと径方向に貫通する形態で形成されており、その一端部(上流端部)にはパージ流体Fの供給配管15が接続されており、その他端部(下流端部)にはシールケース2と静止密封環3との対向周面間の環状空間であって両Oリング8,9でシールされた環状空間13aが形成されている。
各パージ流体噴出通路14は、図2に示す如く、保持環32の薄肉円筒部32aの先端面(前端面)に開口された噴出口14aから保持環32の厚肉円筒部32bの外周面へと貫通する断面円形のキリ穴であり、保持環32の薄肉円筒部32a及び厚肉円筒部32bに形成されて軸線方向に延びる下流側部分14bと、当該下流側部分14bの基端(後端)から厚肉円筒部32の径方向に延びて前記供給通路13の下流端部の環状空間13aに連通接続された上流側部分14cとからなる。複数のパージ流体噴出通路14は保持環32の円周方向に等間隔を隔てて並列状に配置されており、当該パージ流体噴出通路14の噴出孔14aは円周方向に等間隔を隔てた状態で回転密封環5の前記環状壁面5eに直対向している。
したがって、供給配管15から供給通路13に供給されたパージ流体Fは、供給通路13から各パージ流体噴出通路14を流動して、各噴出口14cからこれに直対向する回転密封環5の環状壁面5eに向けて噴出される。パージ流体Fとしては、被密封流体がこれが接触する密封環3,5等のメカニカルシール構成部材に結露を生じる流体(氷点以下の温度のガス等であり、以下「結露発生流体」という)である場合には、常温又は常温以上に加温された流体が使用され、このような結露を生じない流体(例えば、常温以上の温度のガス等であって、以下「非結露発生流体」という)である場合には、常温又は常温以下に冷却された流体が使用されるが、何れの場合にも、パージ流体として大気領域Bに放出して支障のない空気等のガス又は水等の液体をシール条件等に応じて適宜に選択使用することができる。この例では、パージ流体Fとして常温の加圧空気を使用している。
以上のように構成されたドライコンタクトメカニカルシールにあって、被密封流体が非結露発生流体である場合には、パージ流体Fが、各パージ流体噴出通路14を上流側部分14cから下流側部分14bへと流動して、下流側部分14bの開口端部である噴出口14aから回転密封環5の環状壁5eに向けて噴出されることにより、両密封環3,5が効果的に冷却され、両密封端面3a,5aにおける熱歪の発生が可及的に防止される。
すなわち、静止密封環3にあっては、静止側密封端面3aが形成された密封環本体31に発生した熱は、密封環本体31に密着する金属製の保持環32へと伝熱、放熱される。このとき、保持環32は密封環本体31の外周部に密着状態で嵌合されていることから、密封環本体31の保持環32への伝熱、放熱が円滑且つ迅速に行われる。
一方、保持環32は、これに形成された複数のパージ流体噴出通路14を流動するパージ流体によって効果的に冷却される。特に、複数のパージ流体噴出通路14が保持環32の円周方向に等間隔を隔てて配置されていることにより、パージ流体噴出通路14を流動するパージ流体による保持環32の冷却は円周方向において均一に行われる。
したがって、静止密封環3の密封環本体31からこれに密着する金属製の保持環32への伝熱、放熱は円周方向に均一に且つ効果的に行われ、密封環本体31が良好に冷却されて、密封環本体に形成された静止側密封端面3aにおける熱歪の発生が可及的に防止される。
また、回転密封環5にあっては、パージ流体Fが各パージ流体噴出通路14の噴出口14aから回転密封環5に向けて噴出されるから、パージ流体Fの接触によって冷却される。特に、パージ流体Fが各パージ流体噴出通路14の噴出口14aから回転密封環5の環状壁5eに向けて噴出されると、パージ流体Fが環状壁面5eに衝突することによって、図2に示す如く、回転密封環5のノーズ部5cの外周側領域であって環状壁面5eと静止側密封端面3aとの間に形成された環状空間Cにおいてパージ流体Fによる攪拌、循環流fが形成される。その結果、回転密封環5の環状壁面5e及びノーズ部5cの外周面並びに静止側密封端面3aにパージ流体Fが十分に接触して、ノーズ部5cに形成された回転側密封端面5a及び静止側密封端面3aが効果的に冷却される。しかも、複数のパージ流体噴出通路14の噴出口14aが保持環32の円周方向に均等に配置されていることから、両密封端面3a,5aの円周方向における冷却が均一に行われ、密封端面3a,5aにおける熱歪の発生がより効果的に防止される。
したがって、上記したドライコンタクトメカニカルシールにあっては、両密封端面3a,5aが無潤滑状態で接触しているにも拘わらず、両密封端面3a,5aが熱歪を生じることなく適正な接触状態で相対回転して、良好なシール機能を発揮することができる。また、金属製の保持環32を密封環本体31の外周部の一部分(先端部分31aの外周部)に密着させて、保持環32が被密封流体に接触しないようにしているから、両密封環3,5を被密封流体(非結露発生流体)との接触により当該被密封流体が金属汚染しない材料で構成しておくことにより、金属汚染を嫌う非結露発生流体を扱う回転機器の軸封手段としても好適に使用することができる。
ところで、静止密封環を保持環32を有さず密封環本体のみで構成した単一成形物となし、これにパージ流体噴出通路を形成して、静止密封環をパージ流体により直接冷却することも考えられるが、静止密封環が前記したような硬質の難削材で構成されている場合、静止密封環にパージ流体噴出通路を形成(キリ穴加工)することは困難である。また、かかる場合にあって、静止密封環にパージ流体噴出通路14を形成しておかずとも、静止密封環が金属製のシールケースに嵌合されていることから、静止密封環からシールケースに伝熱、放熱されることも考えられる。しかし、図2を参照すれば理解されるように、静止密封環とシールケースとは、Oリングを介在させる構造上、密着せず、静止密封環からシールケースへの伝熱、放熱を期待することはできない。また、静止密封環とシールケースとの間にはOリングが介在していることから、Oリングを介して静止密封環からシールケースへと伝熱、放熱される可能性はあるが、Oリングと静止密封環及びシールケースとの接触面積(伝熱、放熱面積)は極く僅かであるから、Oリングを介しての伝熱、放熱は殆ど期待できない。
また、回転密封環5は回転するものであるから、静止状態にある静止密封環に比して放熱効果の高いものであるが、回転密封環5が熱により寸法変化が生じ易いPTFE等で構成されている場合には、例えば高負荷、高温条件下では回転による放熱効果のみでは外径側に変形し、静止側密封端面3aに対する回転側密封端面5aの接触状態が変化して安定したメカニカルシール機能を発揮できなくなる虞れがある。しかし、上記した如く、パージ流体Fを回転密封環5に向けて噴出させるようにすると、回転による放熱効果に加えてパージ流体Fによる放熱、冷却効果が発揮されることから、回転密封環5が熱変形を生じ易いPTFE等で構成されている場合にも、高負荷、高温条件下で良好なメカニカルシール機能を発揮することができる。
また、上記ドライコンタクトメカニカルシールにあって、被密封流体が結露発生流体である場合には、パージ流体Fが、各パージ流体噴出通路14を上流側部分14cから下流側部分14bへと流動して、下流側部分14bの開口端部である噴出口14aから回転密封環5の環状壁5eに向けて噴出されることにより、両密封環3,5が昇温されて結露の発生が防止され、両密封端面3a,5a間に結露による水分が侵入して密封端面3a,5aが異常摩耗するようなことがない。
すなわち、静止密封環3にあっては、金属製の保持環32が密封環本体31の外周部に密着状態で嵌合されていることから、保持環32のパージ流体噴出通路14を流動するパージ流体Fにより密封環本体31が昇温されて、結露の発生が効果的に防止される。また、回転密封環5にあっては、パージ流体Fが各パージ流体噴出通路14の噴出口14aから回転密封環5に向けて噴出されるから、パージ流体Fの接触によって昇温されて、結露の発生が防止される。特に、パージ流体Fが各パージ流体噴出通路14の噴出口14aから回転密封環5の環状壁5eに向けて噴出されると、パージ流体Fが環状壁面5eに衝突することによって、図2に示す如く、回転密封環5のノーズ部5cの外周側領域であって環状壁面5eと静止側密封端面3aとの間に形成された環状空間Cにおいてパージ流体Fによる攪拌、循環流fが形成される。その結果、回転密封環5の環状壁面5e及びノーズ部5cの外周面並びに静止側密封端面3aにパージ流体Fが十分に接触して、ノーズ部5cに形成された回転側密封端面5a及び静止側密封端面3aが効果的に昇温され、結露の発生ば防止される。
したがって、上記したドライコンタクトメカニカルシールにあっては、被密封流体が結露発生流体である場合にも、結露による水分が密封端面3a,5a間に侵入して密封端面3a,5aが異常摩耗するようなことがなく、密封端面3a,5aが適正な接触状態で相対回転して、良好なメカニカルシール機能を発揮することができる。また、金属製の保持環32を密封環本体31の外周部の一部分(先端部分31aの外周部)に密着させて、保持環32が被密封流体に接触しないようにしているから、両密封環3,5を被密封流体(結露発生流体)との接触により当該被密封流体が金属汚染しない材料で構成しておくことにより、金属汚染を嫌う結露発生流体を扱う回転機器の軸封手段としても好適に使用することができる。
また、回転密封環5を軸線方向移動可能に保持するOリング6としては、氷点以下の被密封流体(結露発生流体)に対する耐熱性を有するものが使用されるが、被密封流体の温度によっては耐熱性を超えて劣化し、Oリング6による回転密封環5の追従性に悪影響を及ぼす虞れがある。しかし、上記した如くパージ流体Fによる回転密封環5の昇温効果によりOリング6の劣化を防止して、回転密封環5の追従性を良好に維持することができ、このことによっても密封端面3a,5aの接触状態が適正に保持されることになる。
以上のように本発明のドライコンタクトメカニカルシールによれば、被密封流体が非結露発生流体及び結露発生流体の何れである場合にも、密封端面3a,5aが適正な接触状態で相対回転して、良好且つ安定したメカニカルシール機能を発揮させることができる。
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良,変更することができる。
例えば、各パージ流体噴出通路14は、図3に示す如く、下流側部分14bを上流側部分14cとの接続部から保持環32の内周方向に傾斜するように形成して、噴出口14aから噴出されるパージ流体Fが回転密封環5の環状壁面5eに斜めに衝突するように構成してもよい。このようにすれば、各パージ流体噴出通路14の噴出口14aから噴出されたパージ流体Fが回転密封環5の環状壁面5eと静止側密封端面3aとの間の環状空間Cにおいてより効果的に攪拌、循環し、その攪拌、循環流fにより両密封端面3a,5aが非結露発生流体の場合にはより効果的に冷却され、結露発生流体の場合にはより効果的に昇温、結露防止が行われる。
また、回転密封環5が保持環32の先端面に直対向する環状壁面を有しないものである場合或は本体部5bの外径が保持環32の外径と同一又はほぼ同一である場合には、各パージ流体噴出通路14を、図4に示す如く、パージ流体Fを噴出口14aから回転密封環5の外周面、例えば本体部5bの外周面5fに向けて噴出するように構成しておくことができる。かかる場合、各パージ流体噴出通路14の噴出口14aから噴出されたパージ流体Fによっては静止側密封端面3aが直接的に冷却、昇温されることはないが、当該パージ流体Fによる回転側密封環5及び回転側密封端面5aに対する冷却効果、昇温効果(結露発生防止効果)は図2又は図3に示したものと同等に発揮される。
また、被密封流体が金属汚染を嫌う流体でない場合には、金属製の保持環32を密封環本体31の外周部にその全面に亘って密着状態で嵌合させておくことができる。例えば、図5又は図6に示す如く、保持環32を、第1薄肉円筒部32aとその基端に連なる厚肉円筒部32bとその基端に連なる第2薄肉円筒部32cとからなる断面T字状の円筒体に構成して、これら円筒部32a、32b及び32cの内周面を密封環本体31の外周面に全面的に密着させた状態で、焼嵌め等により密封環本体31の外周部に嵌合、固着させる。保持環32の第1及び第2薄肉円筒部32a,32cの外径は同一に設定されており、第1薄肉円筒部32aの先端面は、軸線方向において、密封環本体31の先端面である静止側密封端面3aと面一又はほぼ面一とされている。静止密封環3は、第1及び第2Oリング8,9を、保持環32の厚肉円筒部32bとハウジング1の内周部に形成された環状突起1a及びシールケース2の内周部に形成された環状突起2aとの対向端面間に嵌合させた状態で、第1及び第2薄肉円筒部32a,32cとシールケース2の内周部との対向周面間に圧縮状態で装填させることにより、シールケース2の内周部にこれとの間をシールした状態で嵌合、固定されている。
而して、当該保持環32には、図5又は図6に示す如く、第1薄肉円筒部32aの先端面から厚肉円筒部32bの外周面へと貫通する複数のパージ流体噴出通路14が形成されている。ここに、図5に示すものでは、各パージ流体噴出通路14が図2に示すものと同様形態をなしており、パージ流体Fが各パージ流体噴出通路14の噴出孔14aから回転密封環5の環状壁面5eに向けて噴出される。また、図6に示すものでは、各パージ流体噴出通路14が図4に示すものと同様形態をなしており、パージ流体Fが各パージ流体噴出通路14の噴出孔14aから回転密封環5の外周面(本体部5bの外周面)5fに向けて噴出される。
図5に示すものでは図2に示すものと同等の放熱、冷却効果又は昇温による結露発生防止効果が得られ、図6に示すものでは図4に示すものと同等の放熱、冷却効果又は昇温による結露発生防止効果が得られるが、図5及び図6に示すものでは、保持環32が密封環本体31の外周部に全面に亘って密着しており、両者31,32の接触面がより大きくなっているため、密封環本体31から金属製の保持環32への伝熱、放熱効果又は昇温による結露発生防止効果が増大し、密封環本体31がより効果的に冷却又は昇温される。また、密封環本体31の外周面が図2及び図4に示すものに比してシンプルな円柱面形状となっていることから、密封環本体31が上記した難削材で構成される場合にも、当該密封環本体31の製作が容易となり、焼嵌め等による保持環32の密封環本体31への嵌合も容易となる。なお、図3〜図6に示す各ドライコンタクトメカニカルシールの構成は、上記した点を除いて、図1及び図2に示すドライコンタクトメカニカルシールと同一構成をなし且つ同一機能を有するものである。
また、上記した各実施の形態では、回転密封環5を回転側密封端面5aが形成されたノーズ部5cを有するものとしたが、特許文献2に示されたものと同様に、回転密封環5をノーズ部を有しないものとすると共に静止密封環3の密封環本体31をノーズ部を有する形状となし、このノーズ部の先端面を静止側密封端面3aに構成するようにすることも可能である。また、回転密封環5のノーズ部5cは、特許文献1に示されたものと同様に、内周面及び/外周面をテーパ面とする形状となすことも可能である。
また、本発明のドライコンタクトメカニカルシールは、タンデムシールやダブルシールの一次シール及び/又は二次シールとしても使用することができる。また、本発明のドライコンタクトメカニカルシールは、密封端面3a,5aの接触部分の内周側領域を大気領域等の非密封流体領域とし、その外周側領域を機内領域等の被密封流体領域とする場合にも適用することができる。但し、密封端面3a,5aの外周側領域を被密封流体領域とする場合にあっては、パージ流体Fとして被密封流体に混入しても支障のないガス等を使用する必要がある。
2 シールケース
3 静止密封環
3a 静止側密封端面(静止密封環の密封端面)
4 回転軸
5 回転密封環
5a 回転側密封端面(回転密封環の密封端面)
5e 回転密封環の環状壁面
5f 回転密封環の外周面
13 供給通路
14 パージ流体噴出通路
14a 噴出口
31 密封環本体
32 保持環
F パージ流体
3 静止密封環
3a 静止側密封端面(静止密封環の密封端面)
4 回転軸
5 回転密封環
5a 回転側密封端面(回転密封環の密封端面)
5e 回転密封環の環状壁面
5f 回転密封環の外周面
13 供給通路
14 パージ流体噴出通路
14a 噴出口
31 密封環本体
32 保持環
F パージ流体
Claims (8)
- 回転軸に軸線方向移動可能に保持された回転密封環とシールケースに固定された静止密封環との対向端面である密封端面が接触状態で相対回転することによりシール機能を発揮するように構成されたドライコンタクトメカニカルシールであって、
静止密封環を、前記密封端面を形成した密封環本体とその外周部に密着状態で嵌合された金属製の保持環とからなる円環状複合物となし、
当該保持環に、シールケースに形成した供給通路から供給されたパージ流体を当該保持環の先端面に開口する噴出口から回転密封環に向けて噴出する複数のパージ流体噴出通路を形成したことを特徴とするドライコンタクトメカニカルシール。 - 回転密封環が前記各パージ流体噴出通路の噴出口に直対向する環状壁面を有するものであり、当該各パージ流体噴出通路がパージ流体を噴出口から当該環状壁面に向けて噴出させるものであることを特徴とする、請求項1に記載するドライコンタクトメカニカルシール。
- 前記各パージ流体噴出通路が、パージ流体を当該パージ流体噴出通路の噴出口から回転密封環の外周面に向けて噴出させるものであることを特徴とする、請求項1に記載するドライコンタクトメカニカルシール。
- 前記保持環が、前記密封環本体の外周部の一部分であって当該外周部の密封端面側の部分に密着状態で嵌合されたものであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載するドライコンタクトメカニカルシール。
- 前記保持環が、前記密封環本体の外周部にその全面に亘って密着状態で嵌合されたものであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載するドライコンタクトメカニカルシール。
- 前記保持環が、前記密封環本体の外周部に焼嵌めにより密着状態で嵌合されたものであることを特徴する、請求項1〜5の何れかに記載するドライコンタクトメカニカルシール。
- 前記パージ流体がガスであることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載するドライコンタクトメカニカルシール。
- 前記密封環本体が、硬質の難削材で構成されたものであることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載するドライコンタクトメカニカルシール。
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-
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- 2018-03-14 JP JP2018046473A patent/JP6896668B2/ja active Active
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