JP2019157004A - 発泡成形用ポリプロピレン組成物及び発泡成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】発泡成形性に優れ、微細で独立気泡率の高い良好な発泡構造を有し、耐熱性、断熱性、機械的特性等に優れる発泡成形体を得ることができる発泡成形用ポリプロピレン組成物を提供する。【解決手段】(A)不飽和シラン化合物によりグラフト変性されたプロピレン系重合体、(B)分子内に長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体、及び(C)発泡剤を含む発泡成形用ポリプロピレン組成物。(A)変性プロピレン系重合体のMFRが5〜30g/分で、ゲル分率が50質量%以上。(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体のMFRが1〜15g/分で、溶融張力が3cN以上。【選択図】なし

Description

本発明は発泡成形用ポリプロピレン組成物及びそれを用いて成形された発泡成形体に関し、より詳細には、微細で独立気泡率の高い発泡構造の発泡成形体を得ることができる発泡成形用ポリプロピレン組成物及び発泡成形体に関するものである。
従来より、緩衝材、断熱材等の産業用資材、自動車部品等の工業用部材に用いられる発泡成形体として、板状又はシート状に成形されたポリプロピレン系樹脂発泡成形体が用いられている。そのなかでも特に、成形性に優れている等の理由から溶融張力に優れたポリプロピレン系樹脂からなる架橋ポリプロピレン系樹脂発泡成形体が好ましく用いられている。
従来の架橋ポリプロピレン系樹脂は、押出発泡時の加工性を考慮して設計されているため、押出発泡特性は良好であるが、得られた成形品の特性としては、ポリプロピレンそのものを押出成形して得られる成形品と同等のものしか得られなかった。
一方、ポリプロピレンの有する特徴である耐熱性を大幅に向上させうる技術として、シラン変性ポリプロピレンを架橋する方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、ポリプロピレンの物性を大幅に向上させることは可能であるが、架橋度が高すぎると、押出発泡時などの加工が困難にある傾向があった。
また、いわゆる高溶融張力ポリプロピレンとシラン変性ポリプロピレンを併用したものがある(特許文献2)が、その組成物を成形して得られる発泡成形体の最終ゲル分率が高いため、発泡成形体内部の気泡は微細ではなく、また、セル抑制効果が十分ではなく、発泡倍率も上がりにくかった。
特開昭51−70263号公報 特許第3867941号公報
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、発泡成形に非常に適した発泡成形用ポリプロピレン組成物であって、発泡成形性に優れ、微細で独立気泡率の高い良好な発泡構造を有し、耐熱性、断熱性、機械的特性等に優れる発泡成形体を得ることができる発泡成形用ポリプロピレン組成物とその発泡成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、発泡成形体内部の気泡の発生状態と、原料として使用するポリプロピレン組成物の成分のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートとに相関があることに着目し、特定のゲル分率とメルトフローレートを有する不飽和シラン化合物によりグラフト変性されたプロピレン系重合体に、特定のメルトフローレートと溶融張力を有し、且つ分子内に長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体を配合することで、発泡成形体内部の気泡の発生状態を制御することができ、得られる発泡成形体が、良好な発泡構造を有し、耐熱性等の特性を良好に発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] (A)不飽和シラン化合物によりグラフト変性されたプロピレン系重合体、(B)分子内に長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体、及び(C)発泡剤を含んでなる発泡成形用ポリプロピレン組成物であって、該(A)変性プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、荷重2.16kg、JIS K7210準拠)が5〜30g/分であり、ゲル分率が50質量%以上であり、該(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、荷重2.16kg、JIS K7210準拠)が1〜15g/分であり、溶融張力が3cN以上であることを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン組成物。
[2] 前記(A)変性プロピレン系重合体と前記(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体の合計量に対して、前記(A)変性プロピレン系重合体の割合が5〜30質量%であり、且つ前記(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体の割合が95〜70質量%である、[1]に記載の発泡成形用ポリプロピレン組成物。
[3] さらに(D)シラノール縮合触媒を含む、[1]又は[2]に記載の発泡成形用ポリプロピレン組成物。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン組成物で成形された発泡成形体。
[5] ゲル分率が15質量%未満である、[4]に記載の発泡成形体。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物によれば、微細で独立気泡率の高い良好な発泡構造を有し、耐熱性、断熱性、機械的特性等に優れる発泡成形体を良好な発泡成形性のもとに得ることができる。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物により得られる発泡成形体は、耐熱性等の特性に優れる上に、ゲル分率も低いことから、緩衝材、断熱材等の産業用資材、自動車部品等の工業用部材の分野に好適に用いることができ、その商品価値は非常に高い。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[発泡成形用ポリプロピレン組成物]
本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物は、(A)不飽和シラン化合物によりグラフト変性されたプロピレン系重合体(以下「(A)シラン変性ポリプロピレン」と称す場合がある。)、(B)分子内に長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体(以下「(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体」と称す場合がある。)、及び(C)発泡剤を含んでなる発泡成形用ポリプロピレン組成物であって、該(A)シラン変性ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR、230℃、荷重2.16kg、JIS K7210準拠)が5〜30g/分であり、ゲル分率が50質量%以上であり、該(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、荷重2.16kg、JIS K7210準拠)が1〜15g/分であり、溶融張力が3cN以上であることを特徴とする。
以下、各成分について詳細に説明する。
<(A)シラン変性ポリプロピレン>
本発明で用いる(A)不飽和シラン化合物によりグラフト変性されたプロピレン系重合体に用いるポリプロピレン(グラフト変性するプロピレン系重合体)としては、例えば、プロピレン単独重合体、主成分のプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィン(エチレンを含む)の1種又は2種以上との共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
なお、ここで、「主成分」とは、樹脂中に50質量%以上、好ましくは80質量%以上含まれる成分をさす。
これらのポリプロピレンを不飽和シラン化合物によりグラフト変性してなる(A)シラン変性ポリプロピレンは、例えば、上記ポリプロピレンに、加水分解可能な有機基を有するオレフィン性不飽和シラン化合物を、ラジカル発生剤の存在下に共重合させることによって得られる。この反応において、不飽和シラン化合物は、ベースとなるポリプロピレン相互の架橋点となるようにポリプロピレンにグラフト化されるものである。
ここで、加水分解可能な有機基を有するオレフィン性不飽和シラン化合物とは、下記一般式(1)で表されるシラン化合物をいう。
RSiR’3−n (1)
(式中、Rは1価のオレフィン性不飽和炭化水素基を示し、Yは加水分解し得る有機基を示し、R’は脂肪族不飽和炭化水素基以外の1価の炭化水素基あるいはYと同じものを示し、nは0、1又は2を示す。)
一般式(1)において、Rはビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基等が好ましく、R’はメチル基、エチル基、プロピル基、デシル基、フェニル基等が好ましく、Yはメトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオノキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましい。
好ましい不飽和シラン化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
CH=CHSi(OA) (2)
(式中、Aは炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示す。)
不飽和シラン化合物の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、CH=C(CH)COOCSi(OA)(但し、Aは上記と同義である。)で表される化合物、例えばγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中で、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。これらの不飽和シラン化合物は単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
シラン変性反応における不飽和シラン化合物の添加量は、得られるシラン変性ポリプロピレンの全質量を基準にして、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上であり、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。不飽和シラン化合物の添加量が少なすぎると充分なグラフト化が困難となる傾向があり、また多すぎると成形不良となる傾向があるとともに経済的でなくなる。不飽和シラン化合物の添加量は、シラン変性ポリプロピレンにおける不飽和シラン化合物に由来する単位の割合と同じ意味をもつものである。
また、使用されるラジカル発生剤としては、重合開始作用の強い種々の有機過酸化物及びパーエステル、例えば、ジクミルパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。これらの中で、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドが好ましい。これらラジカル発生剤は、単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
ラジカル発生剤の使用量は、得られるシラン変性ポリプロピレンの全質量を基準にして、通常0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、通常0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。ラジカル発生剤の使用量が少なすぎると充分なグラフト化反応が困難となる傾向があり、また多すぎると押出加工性が低下するとともに成形表面が悪くなる傾向がある。
また、本発明で用いる(A)シラン変性ポリプロピレンは、シラン化合物に由来する単位の含有量が適当であれば2種以上のシラン変性ポリプロピレンをブレンドしたものであってもよく、シラン変性ポリプロピレンと非変性ポリプロピレンとをブレンドしたものであってもよい。
本発明で用いる(A)シラン変性ポリプロピレンは、ゲル分率が50質量%以上であることを必須の要件とする。ここで、ゲル分率は、樹脂の架橋度を示す指標となるものであり、ゲル分率が大きければ架橋度が高く、逆にゲル分率が小さければ架橋度は低いといえる。架橋度であるゲル分率が50質量%より低い場合、得られる発泡成形体の耐熱性が低下してしまう。(A)シラン変性ポリプロピレンのゲル分率は好ましくは55質量%以上であるが、ゲル等の発生により外観不良を生じる恐れがあることから、その上限は通常80質量%である。
なお、本発明において、(A)シラン変性ポリプロピレンのゲル分率は以下の方法で測定するものとする。
即ち、シラン変性ポリプロピレンにジオクチルスズラウレートを0.05質量%添加し、溶融混練後、210℃にて0.5mm厚みに押出したシートを80℃の温水中、24時間架橋処理したものを用い、これを1mm四方に裁断したサンプル約0.5g(この試料重量をG1(g)とする)を200メッシュの金網中で、キシレンにより10時間沸点抽出する。金網上に残った沸騰キシレン不溶分を10Torrの真空中において80℃で8時間乾燥させてからその重量を精量し(精量した沸騰キシレン不溶分の重量をG2(g)とする)、下記式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=G2(g)/G1(g)×100
また、本発明で用いる(A)シラン変性ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR、230℃、荷重2.16kg、JIS K7210準拠)は5〜30g/10分、好ましくは7〜20g/分である。MFRがこれより低いと、気泡の成長を阻害して発泡倍率が上がらず、これより高いと後述する(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体の発泡特性を阻害し、気泡の抑制効果が得られず、気泡が荒くなってしまう。
(A)シラン変性ポリプロピレンは、1種のみを用いてもよく、変性前のポリプロピレン系樹脂の組成やシラン変性に用いた不飽和シラン化合物やMFR、ゲル分率等の物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
なお、(A)シラン変性ポリプロピレンとしては、上記物性を満たす市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製「リンクロン」などを用いることができる。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物に含まれる(A)シラン変性ポリプロピレンの配合量は、(A)シラン変性ポリプロピレンと後述の(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体との合計100質量%に対して好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは15〜25質量%である。(A)シラン変性ポリプロピレンの配合量が上記下限以上であると最終的に得られる発泡成形体の耐熱性が良好となり、上記上限以下であれば、後述の(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体の発泡特性を阻害することが防止される。
<(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体>
本発明で用いる(B)分子内に長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体は、ポリプロピレン鎖が分岐した構造を有するものであれば特に制限されない。また、通常、このプロピレン系重合体は高溶融張力ポリプロピレンと呼称され、従来の直鎖状ポリプロピレンのレオロジー的特性を改良した材料であり、電子線照や、パーオキサイドと架橋モノマーの存在下、押出機内で変性する、もしくは特殊な触媒によって重合時に枝分かれ構造を付与するなどして、分子内に分岐構造(架橋構造を含む)を付与したポリプロピレン系樹脂である。
高溶融張力ポリプロピレンとしては、例えば特開2009−275207号公報にプロピレン鎖が分岐した構造を有するプロピレン系重合体が開示されている。また、特表2015−521684号公報に架橋構造を有するプロピレン系重合体が開示されている。
(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、荷重2.16kg、JIS K7210準拠)は1〜15g/10分であり、好ましくは2〜10g/10分である。(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体のMFRが上記下限未満であると、押出発泡時の気泡抑制効果が低下し、連続気泡が形成されるようになる。MFRが上記上限を超えると、添加した(C)発泡剤から発生するガスのふくらみを十分に得ることができず、発泡倍率が上がりにくくなる。
また、(B)長鎖分岐構造プロピレンプロピレン系重合体は、上記のMFRの範囲内において、溶融張力が3cN以上であることが必要である。溶融張力が3cNより低いと、気泡の抑制効果を得ることができない。溶融張力は好ましくは4cN以上であるが、あまりに溶融張力が高い場合、気泡の成長速度を抑制してしまう観点から通常、その上限は15cNである。
ここで、溶融張力は、以下のように測定される。
口径2mmφ、長さ40mmのオリフィスを装着し、口径10mmφ、長さ350mmのシリンダーを有する東洋精機製キャピログラフを用い、230℃に加熱されたシリンダーにプロピレン系重合体を10g充填する。充填後5分間予熱し、重合体を十分溶融させた後、シリンダー上部にあるピストンを20mm/minの速度で降下させ、シリンダー内の溶融樹脂を押し出す。押し出された樹脂は、上記オリフィス内を通過し、外部に出される。押し出されたストランド状の樹脂を4m/minの速度で巻き取り、この際の荷重を溶融張力とする。
(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、プロピレン系重合体の構成ないし組成やMFR、溶融張力等の物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体としては市販品を用いることもでき、例えば、ボレアリス社製「Daploy WB140HMS」、日本ポリプロ社製「WAYMAX MFX4000」などが例示できる。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物に含まれる(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体の配合量は、(A)シラン変性ポリプロピレンと(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体との合計100質量%に対して好ましくは95〜70質量%、より好ましくは90〜70質量%、更に好ましくは85〜75質量%である。(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体の配合量が上記下限以上であれば気泡抑制効果を十分に得ることができ、上記上限以下であれば得られる発泡成形体の耐熱性が良好となる。
<(C)発泡剤>
(C)発泡剤としては、揮発性発泡剤、分解型発泡剤を用いることができる。
揮発性発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウム、クエン酸等が挙げられる。
上記発泡剤は適宜混合して用いることができる。
(C)発泡剤の配合量は、用いる発泡剤の種類や所望する発泡倍率(密度)等によっても異なるが、例えば、分解型発泡剤の場合、通常(A)シラン変性ポリプロピレンと(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体との合計100質量部に対して1〜10質量部程度とすることが好ましい。いずれの発泡剤を用いる場合であっても、その使用量が少な過ぎると十分な発泡作用を得ることができず、多過ぎると発泡の制御が困難になるおそれがある。
<(D)シラノール縮合触媒>
本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物は、(D)シラノール縮合触媒を含むものであってもよく、(D)シラノール縮合触媒を添加することで、得られる発泡成形体に架橋構造を形成して耐熱性や機械的特性を高めることができる。
(D)シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫触媒;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛等の鉛触媒;カプリル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の亜鉛触媒;ナフテン酸コバルト等のコバルト触媒、チタン酸テトラブチルエステル等のチタン触媒;ステアリン酸カドミウム等のカドミウム触媒;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等のアルカリ土類金属触媒等の有機金属触媒が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。これらの中で錫触媒が好ましい。
(D)シラノール縮合触媒を添加する場合、その添加量は、(D)シラノール縮合触媒を含む発泡成形用ポリプロピレン組成物の全質量を基準として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。(D)シラノール縮合触媒の添加量が上記下限以上であれば十分な架橋反応を十分に起こすことができ、また上記上限以下であればコスト的に有利である。
(D)シラノール縮合触媒は、ポリオレフィンと混練して造粒することにより得られるマスターバッチとして、発泡成形用ポリプロピレン組成物の押出発泡時に添加することが好ましい。
(D)シラノール縮合触媒のマスターバッチに用いられるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン単独重合体(ポリエチレン)、主成分のエチレンとエチレン以外のα−オレフィンやビニルエステル(例えば酢酸ビニル等)又は不飽和カルボン酸エステル(例えばエチルアクリレート等)との共重合体、プロピレン単独重合体、主成分のプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィン(エチレンを含む)との共重合体等が挙げられる。
(D)シラノール縮合触媒含有マスターバッチ中の(D)シラノール縮合触媒含有量は通常0.1〜5質量%程度である。
(D)シラノール縮合触媒含有マスターバッチには、必要に応じて、混和可能な熱可塑性樹脂、安定剤、滑材、充填剤、着色剤、発泡剤、その他の補助資材を添加することができる。これらの添加剤は、それ自体既知の通常用いられるものであればよい。
<その他の添加成分>
本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物は、上記の(A)シラン変性ポリプロピレン、(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体、(C)発泡剤、必要に応じて用いられる(D)シラノール縮合触媒の他に、通常ポリオレフィンに使用する公知の酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、結晶核剤など、その他ポリプロピレン系樹脂に用いることのできる各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
また、発泡成形体の製造に当たり、発泡成形用ポリプロピレン組成物又は押出機内において発泡剤と溶融混練した発泡性溶融物中に、必要に応じて気泡調整剤を添加することができる。気泡調整剤としては、タルク、シリカ等の無機粉末や多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム或いは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。気泡調整剤の添加量は樹脂成分100質量部当たり一般に1質量部以下が好ましい。
また、(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体に必要な溶融張力を維持する状態において、熱可塑性樹脂を任意に添加することが可能である。熱可塑性樹脂は、熱によって可塑化可能であれば全て利用可能であり、例として、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、ポリスチレン、EPR、EPDM、SEBS、NBRなどが挙げられる。
この中で、耐熱性を維持できる観点から、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂が好ましい
[発泡成形体]
本発明の発泡成形体は本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物を成形して得られる。本発明の発泡成形体は、前述の(A)シラン変性ポリプロピレン、(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体、(C)発泡剤、更に必要に応じて用いられる(D)シラノール縮合触媒やその他の成分を、加熱、加圧条件下で混練して発泡性溶融物とし、該溶融物を低圧域に押出すことにより得ることができる。その成形法としては、押出成形、射出成形、ブロー成形法等公知の方法を採用することができる。
得られた発泡成形体は、必要に応じて架橋処理をすることが好ましい。架橋処理とは温水、水蒸気等、高温条件下で水と接触せしめ、シリル基を架橋させる工程である。
本発明の発泡成形体の製造方法の一例として、本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物を、シート状に押出発泡成形した後、必要に応じて架橋処理する方法が挙げられる。この場合、通常の熱可塑性樹脂のシート成形法に従い、例えば、Tダイを備えた押出機により、150〜230℃程度の温度で溶融押出し、冷却固化させることにより、所定の厚みで押出成形してもよく、通常の熱可塑性樹脂のシート射出発泡成形法に従い射出成形後、型びらきすることにより圧力を開放して発泡してもよい。このシート成形により本発明のシートが得られる。
上記押出成形及び射出成形のいずれも、成形時における設定温度は150℃以上、かつ、230℃以下であることが好ましい。設定温度が上記下限以上であると流動性が不十分であり、上記上限以下であると、温度上昇に伴う粘度低下が大きく、均一な気泡を得ることが困難である。
架橋処理は、通常空気雰囲気化でも進行するが、製造上、安定した製品を得るためには、架橋処理を行うことが好ましい。架橋処理を行う場合、上記の成形後、得られた成形体を水雰囲気中に曝すことにより、シラノール基間の架橋反応を進行させることにより実施することができる。水雰囲気中に曝す方法は、各種の条件を採用することができ、水分を含む空気中に放置する方法、水蒸気を含む空気を送風する方法、水浴中に浸漬する方法、温水を霧状に散水させる方法等が挙げられる。
この架橋反応においては、(A)シラン変性ポリプロピレンにおける加水分解可能なアルコキシ基がシラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解することによりシラノール基が生成し、更にシラノール基同士が脱水縮合することにより、架橋反応が進行し、シラン変性体同士が結合してシラン架橋ポリプロピレン系樹脂を生成する。
架橋反応の進行速度は水雰囲気中に曝す条件によって決まるが、通常20〜130℃の温度範囲、かつ10分〜1週間の範囲で曝せばよい。特に好ましい条件は、20〜130℃の温度範囲、1時間〜160時間の範囲である。水分を含む空気を使用する場合、相対湿度は1〜100%の範囲から選択される。
本発明の発泡成形体の発泡倍率は2倍以上が望ましい。発泡倍率がこの下限値以上であると、当該発泡成形体は軽量かつ耐衝撃性に優れる。発泡倍率の上限には特に制限はないが、過度に大きいと構造部材として剛性等の機械的強度が不足する場合があることから通常10倍以下である。なお、発泡倍率は後掲の実施例の項に記載されるように発泡前後の密度から算出される。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物を発泡成形してなる発泡シートの厚みは用途に応じて異なり特に制限はないが、通常、0.01〜5mm程度である。
本発明の発泡成形体のゲル分率は15質量%未満であることが好ましく、特に10質量%以下であることが好ましい。発泡成形体のゲル分率が低い程、押出適正が良好であり、10質量%以下であることが好ましい。ただし、気泡の維持や、耐熱性の維持の観点から、発泡成形体のゲル分率の下限は通常3質量%程度である。
なお、発泡成形体のゲル分率は、サンプルとして、発泡成形体である発泡シートを24時間架橋処理したものを用いること以外は、前述の(A)シラン変性ポリプロピレンのゲル分率と同様に測定される。
また、本発明の発泡成形体は、耐熱性の指標の一つとして、JIS C3005に準拠して140℃、1kgf荷重の条件で測定される加熱変形率が4%以下、特に2%以下であることが好ましい。この加熱変形率が上記上限以下であれば架橋特性の効果が十分発現されており、微細な気泡でありかつ耐熱性が高いと言える。
また、気泡形態の評価の一例として、気泡が独立か連続かが、発泡体の性能を図る上で一つの指標となる。気泡が独立気泡の場合、断熱性、機械強度が良好である。一方、連続している場合は、遮音性等が良好である。一般的に独立気泡を得る方が困難であり、独立気泡が得られる場合、連続気泡を得るためには条件調整を実施すれば可能であり、さほどの困難は伴わない。本発明は、独立気泡性が高い発泡成形体が得られることにも特徴を有し、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される独立気泡率は20体積%以上であることが好ましい。
このような本発明の発泡成形体は、建材等の産業資材、自動車部品等、耐熱性や機械的強度が要求される各種の用途に好適である。
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[使用材料]
以下の実施例及び比較例で用いた材料は次の通りである。
<(A)シラン変性ポリプロピレン>
A−1:三菱ケミカル社製 リンクロン XPM800HM
MFR=16g/分
ゲル分率=80質量%
<(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体>
B−1:日本ポリプロ社製 WAYMAX EX4000
MFR=6g/分
溶融張力=4cN
B−2:日本ポリプロ社製 ノバテックPP EA9
MFR=0.5g/分
溶融張力=4cN
<(C)発泡剤>
C−1:クラリアント社製 ハイドロセロールCF40EJ(重曹クエン酸系化学発泡剤のLDPEマスターバッチ)
<(D)シラノール縮合触媒>
D−1:ポリプロピレン(日本ポリプロ社製 ノバテックPP MA3、MFR=11g/分)99質量%に、ジオクチルスズラウレート1質量%を溶融混練して触媒マスターバッチとしたもの
[評価方法]
以下の実施例及び比較例で得られた発泡成形体の評価方法は以下の通りである。
発泡倍率:発泡前後の密度から下記式より発泡倍率を算出した。なお、発泡前の密度はポリプロピレンの一般的な密度である0.9g/ccを用いた。
(発泡倍率)=(発泡前密度)/(発泡後密度)
加熱変形率:JIS C3005に準拠し、試験温度140℃、荷重1kgf、1時間の条件で試験を行った。
独立気泡率:測定装置としてエアーピクノメーター(東芝ベックマン製、型式930)を用いて、空気比重を測定し、以下の式により独立気泡率を算出した。
独立気泡率(%)=(測定値−発泡成形体重量/0.9)/見掛発泡成形体体積×100
ゲル分率:得られた発泡シートを1mm四方に裁断したサンプル約0.5g(この試料重量をG1(g)とする)を200メッシュの金網中で、キシレンにより10時間沸点抽出した。金網上に残った沸騰キシレン不溶分を10Torrの真空中において80℃で8時間乾燥させてからその重量を精量し(精量した沸騰キシレン不溶分の重量をG2(g)とする)、下記式によりゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=G2(g)/G1(g)×100
[実施例1、比較例1〜2]
表1に記載の配合処方にて原料をドライブレンドし、40mm単軸押出機(IKG社製 L/D=32)で溶融混練(180℃、60rpm)後、250mm幅、ダイギャップ0.5mmのTダイ(180℃)より、20℃に温度調整した金属ロールにキャストし、巻き取ることによって厚み約2mmの発泡シートを得た。得られたシートを85℃、85%高温恒湿機中、24時間架橋処理を施した後、得られたサンプルを用いて、各種評価を行った。結果を表1に記載する。
Figure 2019157004
表1より、本発明の発泡成形用ポリプロピレン組成物を用いた実施例1の発泡成形体は、独立気泡率が高く、良好な気泡構造を有するものであることが分かる。また、ゲル分率が10質量%以下であり、発泡倍率も3.5倍以上であり、ゲル分率と発泡倍率共にある。更に加熱変形率が小さく、耐熱性が良好である。
一方、(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体のみを用いた比較例1は独立気泡率が低く、また加熱変形率が高く耐熱性に劣る。
(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体を用いていても、そのMFRが小さ過ぎる比較例2では、やはり独立気泡率が低い。

Claims (5)

  1. (A)不飽和シラン化合物によりグラフト変性されたプロピレン系重合体、(B)分子内に長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体、及び(C)発泡剤を含んでなる発泡成形用ポリプロピレン組成物であって、
    該(A)変性プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、荷重2.16kg、JIS K7210準拠)が5〜30g/分であり、ゲル分率が50質量%以上であり、
    該(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、荷重2.16kg、JIS K7210準拠)が1〜15g/分であり、溶融張力が3cN以上であることを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン組成物。
  2. 前記(A)変性プロピレン系重合体と前記(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体の合計量に対して、前記(A)変性プロピレン系重合体の割合が5〜30質量%であり、且つ前記(B)長鎖分岐構造プロピレン系重合体の割合が95〜70質量%である、請求項1に記載の発泡成形用ポリプロピレン組成物。
  3. さらに(D)シラノール縮合触媒を含む、請求項1又は2に記載の発泡成形用ポリプロピレン組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン組成物で成形された発泡成形体。
  5. ゲル分率が15質量%未満である、請求項4に記載の発泡成形体。
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