本発明の複合粒子は、前記したように、第4族金属酸化物微粒子とルミネセンス物質と界面活性剤とを含有する複合粒子であり、第4族金属酸化物微粒子が第4族金属酸化物からなる一次粒子が凝集した二次粒子であり、二次粒子の流体力学的平均粒子径が30〜300nmであることを特徴とする。
本発明の複合粒子は、第4族金属酸化物微粒子とルミネセンス物質と界面活性剤とが併用されているので、水系溶媒における分散性および安定性に優れている。
第4族金属酸化物微粒子は、第4族金属酸化物からなる一次粒子が凝集した二次粒子である。第4族金属酸化物微粒子としては、例えば、二酸化チタン微粒子、二酸化ジルコニウム微粒子、二酸化ハフニウム微粒子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明の複合粒子を生体に適用する場合、これらの第4族金属酸化物微粒子のなかでは、生体内における安定性を向上させる観点から、二酸化チタン微粒子および二酸化ジルコニウム微粒子が好ましく、二酸化ジルコニウム微粒子がより好ましい。
二次粒子の流体力学的平均粒子径は、生体の細胞、組織などへの本発明の複合粒子の蓄積性を低減させる観点から、30nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、生体の細胞、組織などへの本発明の複合粒子の蓄積性を低減させるとともに、毛細血管などの閉塞を抑制する観点から、300nm以下、好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。なお、二次粒子は、一次粒子が凝集したものであることから、二次粒子の粒子径は、通常、一次粒子の粒子径よりも大きい。一次粒子の個数平均粒子径は、特に限定されないが、本発明の複合粒子の工業的生産性を向上させる観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、本発明の複合粒子の工業的生産性を向上させる観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
なお、本明細書において、「流体力学的平均粒子径」は、測定用試料として測定対象の粒子を超純水に懸濁させた試料を用い、ゼータ電位・粒子径・分子量測定装置〔マルバーン社製、商品名:Zetasizer nano ZS〕を用い、動的光散乱法に基づいて25℃で測定試料に含まれる粒子の粒度分布を測定し、キュムラント法を用いて算出された散乱光強度基準による調和平均粒子径である。
第4金属酸化物微粒子の形状としては、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、棒状、筒状、鱗片状、板状などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。第4金属酸化物微粒子の形状のなかでは、水系溶媒への分散性を向上させる観点から、球状および棒状が好ましい。
本発明の複合粒子は、第4族金属酸化物微粒子の表面にアルカリ溶解性の表面処理層が形成された被覆微粒子とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物とを接触させた後、当該被覆微粒子とルミネセンス物質とを接触させ、当該被覆微粒子と界面活性剤とをさらに接触させることによって製造することができる。
第4族金属酸化物微粒子は、例えば、第4族金属酸化物の原料化合物を水の存在下で加熱することなどによって製造することができる。第4金属酸化物の原料化合物を水の存在下で加熱する際の圧力は、常圧であってもよく、加圧であってもよい。圧力が加圧である場合、例えば、圧力に耐える水熱合成用反応容器などを用いることができる。
第4族金属酸化物の原料化合物は、水の存在下で加熱されることによって第4族金属酸化物を形成する化合物であればよい。第4族金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化ハフニウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。第4族金属酸化物は、結晶構造中の一部の酸素原子が欠損している酸素欠損型金属酸化物であってもよい。第4族金属酸化物の原料化合物としては、例えば、第4族金属の水酸化物、第4族金属の塩化物、第4族金属のオキシ塩化物、第4族金属の硝酸塩、第4族金属のオキシ硝酸塩、第4金属の硫酸塩、第4族金属のオキシ硫酸塩、第4族金属の有機酸塩、第4族金属のオキシ有機酸塩、第4族金属の炭酸塩、第4族金属のアルコキシド、第4族金属の錯体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。第4族金属としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の複合粒子を生体に適用する場合、第4族金属酸化物のなかでは、入手が容易であり、生体内における安定性を向上させる観点から、二酸化チタンの原料化合物および二酸化ジルコニウムの原料化合物が好ましい。
二酸化チタンの原料化合物としては、例えば、塩化チタン;オキシ塩化チタン;オキシ硝酸チタン;硫酸チタン;酢酸チタン、オクタン酸チタン、2−エチルヘキサン酸チタンなどのチタン有機酸塩;酢酸酸化チタン、オレイン酸酸化チタン、ステアリン酸酸化チタン、ラウリン酸酸化チタンなどのチタンオキシ有機酸塩;テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタンなどのチタンアルコキシド;アセチルアセトナトチタンなどのチタン錯体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの二酸化チタンの原料化合物のなかでは、入手が容易であり、原料化合物の加水分解・重縮合反応における反応速度の制御が容易であることから、塩化チタン、オキシ塩化チタン、オキシ硫酸チタン、酢酸チタン、2−エチルヘキサン酸チタン、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、アセチルアセトナトチタンが好ましく、2−エチルヘキサン酸チタン、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタンおよびアセチルアセトナトチタンがより好ましい。
二酸化ジルコニウムの原料化合物としては、例えば、塩化ジルコニウム;オキシ塩化ジルコニウム;オキシ硝酸ジルコニウム;硫酸ジルコニウム;酢酸ジルコニウム、オクタン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムなどのジルコニウム有機酸塩;酢酸酸化ジルコニウム、オレイン酸酸化ジルコニウム、ステアリン酸酸化ジルコニウム、ラウリン酸酸化ジルコニウムなどのジルコニウムオキシ有機酸塩;炭酸ジルコニウム;テトラブトキシジルコニウムなどのジルコニウムアルコキシドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの二酸化ジルコニウムの原料化合物のなかでは、入手が容易であり、原料化合物の加水分解・重縮合反応における反応速度の制御が容易であることから、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウムおよび炭酸ジルコニウムが好ましく、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムがより好ましい。
第4族金属酸化物の原料化合物の加熱時に用いられる水は、有機溶媒と混合して用いてもよい。有機溶媒は、第4族金属酸化物の原料化合物の加熱時の水熱反応を十分に進行させる観点から、好ましくは常圧下での沸点が120℃以上である有機溶媒である。有機溶媒の常圧下での沸点は、第4金属酸化物の原料化合物の加熱時の水熱反応を十分に進行させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは210℃以上である。有機溶媒としては、例えば、デカン、ドデカン、テトラデカン、キシレン、トリメチルベンゼン、トルエンなどの炭化水素系有機溶媒;オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、メタントリメチロールなどのアルコール系有機溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系有機溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、水と有機溶媒との混合物が2層に分離している場合、前記混合物は、2層に分離している状態で用いてもよく、当該混合物に界面活性剤などを添加することによって均一相状態または懸濁乳化状態にして用いてもよい。
第4族金属酸化物の原料化合物の加熱時に用いられる第4族金属酸化物の原料化合物と水とのモル比(水/第4族金属酸化物の原料化合物)は、第4族金属酸化物微粒子の製造に要する時間を短縮させるとともに、粗大な粒子の形成を抑制する観点から、好ましくは4/1以上、より好ましくは8/1以上であり、本発明の複合粒子の工業的生産性を向上させる観点から、好ましくは100/1以下、より好ましくは50/1以下である。
第4族金属酸化物の原料化合物の加熱時における圧力は、第4族金属酸化物微粒子の製造に際に用いられる水を液体状態に維持して本発明の複合粒子の工業的生産性を向上させる観点から、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは0.6MPa以上であり、製造時の安全性を向上させるとともに、本発明の複合粒子の製造コストを低減させる観点から、好ましくは3MPa以下、より好ましくは2MPa以下、さらに好ましくは1.5MPa以下、さらに一層好ましくは1MPa以下である。
第4族金属酸化物の原料化合物の加熱温度は、本発明の複合粒子の製造に要する時間を短縮させるとともに、第4族金属酸化物微粒子の結晶性を向上させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは160℃以上であり、製造時の安全性を向上させるとともに、本発明の複合粒子の製造コストを低減させる観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。
第4族金属酸化物の原料化合物の加熱時間は、第4族金属酸化物の原料化合物の種類などによって異なるので一概に決定することができないことから、第4族金属酸化物の原料化合物の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。加熱時間は、通常、5〜50時間であり、好ましくは10〜40時間である。なお、本明細書において、「第4族金属酸化物の原料化合物の加熱時間」は、第4族金属酸化物の原料化合物が前記加熱温度に維持される時間を意味する。
第4族金属酸化物の原料化合物の加熱時に用いられる雰囲気は、製造時の安全性を向上させる観点から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを含む雰囲気であることが好ましい。
つぎに、第4族金属酸化物微粒子の表面にアルカリ溶解性の表面処理層を形成させ、被覆微粒子を得る。アルカリ溶解性の表面処理層として、例えば、シランカップリング剤層、カルボン酸層、リン酸エステル層、硫酸エステル層などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
アルカリ溶解性の表面処理層の形成方法は、アルカリ溶解性の表面処理層の種類などによって異なるので一概に決定することができないことから、アルカリ溶解性の表面処理層の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。アルカリ溶解性の表面処理層の形成に用いられる化合物などの種類および使用量、アルカリ溶解性の表面処理層の形成の際の条件などは、アルカリ溶解性の表面処理層の種類などによって異なるので一概に決定することができないことから、アルカリ溶解性の表面処理層の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
これらのアルカリ溶解性の表面処理層のなかでは、容易に形成させることができることから、シランカップリング剤層が好ましい。シランカップリング剤層は、例えば、第4族金属酸化物微粒子を分散媒に分散させた分散液とシランカップリング剤とを混合し、得られた混合物を加熱することなどによって形成させることができる。シランカップリング剤層は、シランカップリング剤を含む層である。シランカップリング剤層は、第4族金属酸化物の原料化合物の加熱時に生成される副生成物などを含んでいてもよい。
分散媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの炭化水素系有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
分散液における第4族金属酸化物微粒子の含有率は、第4金属酸化物微粒子の種類、シランカップリング剤の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、第4族金属酸化物微粒子の種類、シランカップリング剤の種類、複合粒子の用途の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。分散液における第4金属酸化物微粒子の含有率は、通常、本発明の複合粒子の製造コストを低減させる観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、本発明の複合粒子の工業的生産性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下である。
シランカップリング剤としては、例えば、式(I):
−Si−OR1 (I)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表わされる加水分解性基を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示に限定されるものではない。
式(I)において、R1は、炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(I)で表わされる加水分解性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、式(II):
[R2−(CH2)m]4-n−Si−(OR1)n (II)
(式中、R1は前記と同じ、R2はビニル基、アミノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メルカプト基またはグリシドキシ基、mは0〜4の整数、nは1〜3の整数を示す)
で表わされる化合物、アルコキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示に限定されるものではない。
式(II)において、R1は、式(I)におけるR1と同様である。R2は、ビニル基、アミノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メルカプト基またはグリシドキシ基である。式(II)で表わされる化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのR2がビニル基である化合物;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシランなどのR2がアミノ基である化合物;3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのR2が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのR2がメルカプト基である化合物;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのR2がグリシドキシ基である化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどのアルキル基含有アルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどのアリール基含有アルコキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのシランカップリング剤のなかでは、本発明の複合粒子の製造コストを低減させるとともに、水系溶媒における本発明の複合粒子の分散性を向上させる観点から、R2が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物およびアルキル基含有アルコキシシランが好ましく、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランおよびデシルトリメトキシシランがより好ましい。
混合物における第4族金属酸化物微粒子100質量部あたりのシランカップリング剤の量は、第4族金属酸化物微粒子の種類、シランカップリング剤の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、第4族金属酸化物微粒子の種類、シランカップリング剤の種類、複合粒子の用途の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。混合物における第4族金属酸化物微粒子100質量部あたりのシランカップリング剤の量は、通常、表面処理層を効率よく形成させる観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、より一層好ましくは4質量部以上であり、本発明の複合粒子の製造コストを低減させる観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。また、第4族金属酸化物微粒子を分散媒に分散させた分散液とシランカップリング剤と混合時に適切な溶媒を用いることが好ましい。溶媒は、シランカップリング剤に含まれる加水分解性官能基の加水分解速度などによって異なるので一概に決定することができないことから、シランカップリング剤に含まれる加水分解性官能基の加水分解速度などに応じて適宜設定することが好ましい。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサンなどの炭化水素系有機溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の溶媒を併用することにより、加水分解速度を容易に制御することができる。
混合物の加熱温度は、第4族金属酸化物微粒子の種類、シランカップリング剤の種類、複合粒子の用途、溶媒の沸点などによって異なるので一概に決定することができないことから、第4族金属酸化物微粒子の種類、シランカップリング剤の種類、複合粒子の用途、溶媒の沸点などに応じて適宜設定することが好ましい。混合物の加熱温度は、通常、好ましくは30〜180℃、より好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜130℃である。
混合物の加熱時間は、第4族金属酸化物微粒子の種類、シランカップリング剤の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、第4族金属酸化物微粒子の種類、シランカップリング剤の種類、複合粒子の用途の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。混合物の加熱時間は、通常、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.3〜3時間である。
つぎに、被覆微粒子にアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を接触させる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
被覆微粒子とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物との接触は、例えば、被覆微粒子を分散媒に分散させた被覆微粒子分散液をアルカリ金属水酸化物溶液またはアルカリ土類金属水酸化物溶液に滴下し、得られた混合物を撹拌することなどによって行なうことができる。アルカリ金属水酸化物溶液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物水溶液、アルカリ金属水酸化物アルコール溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アルカリ金属水酸化物は、被覆微粒子とアルカリ金属水酸化物との接触に際して、アルカリ金属水酸化物溶液中でイオンに解離していてもよい。アルカリ土類金属水酸化物溶液としては、例えば、アルカリ土類金属水酸化物水溶液、アルカリ土類金属水酸化物アルコール溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アルカリ土類金属水酸化物は、被覆微粒子とアルカリ土類金属水酸化物との接触に際して、アルカリ金属水酸化物溶液中でイオンに解離していてもよい。
被覆微粒子分散液に用いられる分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール系有機溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系有機溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの変性エーテル系有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの炭化水素系有機溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系有機溶媒;鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油などの油類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒のなかでは、取り扱いが容易であることから、アルコール系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および炭化水素系有機溶媒が好ましく、ケトン系有機溶媒および炭化水素系有機溶媒がより好ましい。溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
被覆微粒子分散液における被覆微粒子の含有率は、当該被覆微粒子の種類、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、当該被覆微粒子の種類、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。被覆微粒子分散液における被覆微粒子の含有率は、通常、本発明の複合粒子の製造コストを低減させる観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、本発明の複合粒子の工業的生産性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下である。
アルカリ金属水酸化物溶液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は、被覆微粒子の種類、アルカリ金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、被覆微粒子の種類、アルカリ金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。アルカリ金属水酸化物溶液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は、通常、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。アルカリ土類金属水酸化物溶液におけるアルカリ土類金属水酸化物の濃度は、被覆微粒子の種類、アルカリ土類金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、被覆微粒子の種類、アルカリ土類金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。アルカリ土類金属水酸化物溶液におけるアルカリ土類金属水酸化物の濃度は、通常、被覆微粒子とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物とを十分に反応させる観点から、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
被覆微粒子分散液の滴下速度は、被覆微粒子の種類、アルカリ土類金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、被覆微粒子の種類、アルカリ土類金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。
得られた混合物の撹拌時間および撹拌速度は、被覆微粒子の種類、アルカリ土類金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、被覆微粒子の種類、アルカリ土類金属水酸化物の種類、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。
つぎに、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の接触後の被覆微粒子にルミネセンス物質を接触させる。被覆微粒子にルミネセンス物質を接触させる方法としては、例えば、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の接触後の被覆微粒子を分散媒に分散させた分散液に、ルミネセンス物質を溶媒に溶解させた溶液を接触させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ルミネセンス物質を接触させる分散液に用いられる分散媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ルミネセンス物質を接触させる分散液における被覆微粒子の含有率は、当該被覆微粒子の種類、ルミネセンス物質の種類、界面活性剤の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、当該被覆微粒子の種類、ルミネセンス物質の種類、界面活性剤の種類、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。
ルミネセンス物質としては、例えば、蛍光物質、燐光物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
蛍光物質としては、例えば、シアニン系色素などの近赤外蛍光色素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。シアニン系色素としては、例えば、インドシアニングリーン、モノメチンシアニン、トリメチンシアニン、ペンタメチンシアニン、ヘプタメチンシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。シアニン系色素は、商業的に容易に入手することができ、その例としては、例えば、ライコア・バイオサイエンシーズ(LI−COR Biosciences)製の商品名:IRDye(登録商標)800RSおよびIRDye(登録商標)800CW、ルミプローブ(Lumiprobe)社製の商品名:Cy3、Cy5およびCy7などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
燐光物質としては、例えば、硫化亜鉛、イリジウム錯体、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体、レニウム錯体、モリブデン錯体、アルミン酸ストロンチウム、ランタノイドイオン(錯塩)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の複合粒子を生体に適用する場合、これらのルミネセンス物質のなかでは、生体への透過性に優れた近赤外光を励起光として用いることができることから、近赤外光蛍光色素が好ましく、シアニン系色素がより好ましい。
ルミネセンス物質の溶液に用いられる溶媒としては、例えば、水、エタノールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ルミネセンス物質の溶液におけるルミネセンス物質の濃度は、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。
ルミネセンス物質を接触させる際の被覆微粒子100質量部あたりのルミネセンス物質の量は、当該被覆微粒子の種類、ルミネセンス物質の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、当該被覆微粒子の種類、ルミネセンス物質の種類、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。ルミネセンス物質を接触させる際の被覆微粒子100質量部あたりのルミネセンス物質の量は、ルミネセンス物質の被覆微粒子に効果的に接触させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、工業的生産性を向上させる観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
つぎに、ルミネセンス物質の接触後の被覆微粒子に界面活性剤を接触させることにより、複合粒子を得ることができる。被覆微粒子に界面活性剤を接触させる方法としては、例えば、分散液とルミネセンス物質との混合物に界面活性剤を接触させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
界面活性剤を水に分散させたときのpHは、本発明の複合粒子を水系溶媒に分散させたときのゼータ電位を負の値に調整し、細胞への取り込みの際、細胞への負荷を低減させる観点から、2〜7であることが好ましく、3〜7がより好ましい。界面活性剤を水に分散させたときのpHは、より具体的には、界面活性剤をその濃度が10wt%となるようにイオン交換水に分散させたときのpHである。被覆微粒子と接触させる際に、界面活性剤として、市販の界面活性剤水系溶媒溶液を用いることができる。前記界面活性剤水系溶媒溶液のpHは、好ましくは2〜7が好ましく、より好ましくは3〜7である。前記界面活性剤水系溶媒溶液における界面活性剤濃度は、工業生産性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上であり、被覆微粒子との反応性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下である。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ジステアロイル−N−モノメトキシ-ポリエチレングリコール-スクシニル-フォスファチジルエタノールアミンなどのポリオキシエチレン鎖含有リン脂質;ポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリル酸系ポリマー;アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩などのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩;プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩;アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩;ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアニオン性界面活性剤のなかでは、本発明の複合粒子の生体適合性を向上させるとともに、水系溶媒における本発明の複合粒子の分散性を向上させる観点から、ポリオキシエチレン鎖含有リン脂質およびポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリル酸系ポリマーが好ましい。
ポリオキシエチレン鎖含有リン脂質の重量平均分子量は、水系溶媒における本発明の複合粒子の分散性を向上させる観点から、好ましくは2000以上、より好ましくは 5000以上であり、複合粒子の安定性を向上させるの観点から、好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下である。ポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリル酸系ポリマーの重量平均分子量は、水系溶媒における本発明の複合粒子の分散性を向上させる観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上であり、複合粒子の安定性を向上させるとともに、流体力学的平均粒子径を制御する観点から、好ましくは200000以下、より好ましくは100000以下である。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求められたポリスチレン換算重量平均分子量を意味する。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、アルキルアミドベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
これらの界面活性剤のなかでは、水系溶媒における複合粒子の分散性および安定性を向上させる観点から、アニオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン鎖含有リン脂質およびポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリル酸系ポリマーがより好ましい。
界面活性剤を接触させる際の被覆微粒子100質量部あたりの界面活性剤の量は、当該被覆微粒子の種類、界面活性剤の種類、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、当該被覆微粒子の種類、界面活性剤の種類、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。界面活性剤を接触させる際の被覆微粒子100質量部あたりの界面活性剤の量は、安定な分散液を得る観点から、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、工業的生産性を向上させる観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
被覆微粒子にルミネセンス物質を接触させる際に、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の接触後の被覆微粒子を分散媒に分散させた分散液と、ルミネセンス物質を溶媒に溶解させた溶液とを用いた場合、被覆微粒子にルミネセンス物質および界面活性剤を接触させて得られた産物から複合粒子を分離することができる。
本発明の複合粒子の流体力学的平均粒子径は、二次粒子の流体力学的平均粒子径と比較して大きければよい。本発明の複合粒子の流体力学的平均粒子径は、蛍光イメージング、燐光発光イメージングなどに本発明の複合粒子を用いる際に、明瞭な発光信号を得る観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、複合粒子の凝集を抑制する観点から、好ましくは400nm以下、より好ましくは200nm以下である。本発明の複合粒子を生体に適用する場合、本発明の複合粒子の流体力学的平均粒子径は、また、本発明の複合粒子を腫瘍の検出に用いる場合、血液中における当該複合粒子の滞留性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、血管透過性・滞留性亢進効果〔Enhanced Permeability and Retention(EPR)〕効果)を効果的に発現させて腫瘍における集積性を向上させる観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。
以上説明したように、本発明の複合粒子は、水系溶媒における分散性および安定性に優れているので、例えば、生体などに適用される光イメージング剤に用いることができる。
本発明の光イメージング剤は、前記複合粒子を含有することを特徴とする。本発明の光イメージング剤は、複合粒子を含有するので、水系溶媒における分散性および安定性に優れている。
本発明の光イメージング剤は、前記複合粒子のみで構成されていてもよく、添加剤などを含有していてもよい。添加剤としては、例えば、複合粒子を分散させるための分散媒、安定化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明の光イメージング剤が添加剤などを含有する場合、本発明の光イメージング剤における前記複合粒子の含有率は、複合粒子の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、複合粒子の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。
以上説明したように、本発明の光イメージング剤は、水系溶媒における分散性および安定性に優れているので、生体などにおける光超音波イメージング法、蛍光イメージング法などの光イメージング剤として利用することができる。したがって、本発明の光イメージング剤は、例えば、生体イメージング、画像診断、好ましくは腫瘍の画像診断などに用いられることが期待されるものである。
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、各略語の意味は、以下のとおりである。
<略語の説明>
BSA:ウシ血清アルブミン
DSPE−PEG:ジステアロイル-N-モノメトキシ-ポリエチレングリコール-スクシニル-フォスファチジルエタノールアミン(ポリエチレングリコール鎖含有リン脂質)
FBS:ウシ胎児血清
ICG:インドシアニングリーン
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PEG:ポリエチレングリコール
製造例1
(1)被覆二酸化ジルコニウム粒子(被覆微粒子(1−1))の製造
2−エチルヘキサン酸ジルコニウム・ミネラルスピリット溶液(第一稀元素化学工業(株)製、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム含有率:44質量%)782gおよび純水268gを混合して混合物を得た。得られた混合物を攪拌機付きオートクレーブ内に仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換した。オートクレーブ内の混合液を180℃まで加熱し、0.94MPaの圧力下で180℃の温度にて16時間保持することにより、二酸化ジルコニウム粒子の沈殿物を生成させた。前記沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後、乾燥させた。乾燥後の沈殿物100gをトルエン800mLに分散させ、分散液を得た。定量濾紙〔アドバンテック東洋(株)製、型式:No.5C〕を用いて分散液を濾過し、粗大粒子などを除去した。得られた濾液を減圧濃縮してトルエンを除去することにより、白色の被覆二酸化ジルコニウム粒子(被覆微粒子(1−1))を得た。
前記被覆二酸化ジルコニウム粒子のX線回折を測定した。X線回折の測定には、X線回折装置〔(株)リガク製、品番:RINT−TTRIII)を用いた。測定条件は、以下のとおりである。
(X線回折の測定条件)
X線源:CuKα(波長:0.154nm)
X線出力設定:50kV、300mA
サンプリング幅:0.0200°
スキャンスピード:10.0000°/min
測定範囲:10°〜75°
測定温度:25℃
また、統合粉末X線解析ソフトウェア〔(株)リガク製、品番:PDXL〕を用い、参照強度比法にしたがって回折ピークの強度の値を解析することにより、単斜晶に対する正方晶の割合〔正方晶/単斜晶(質量比)〕を定量した。
その結果、正方晶に帰属する回折ピークおよび単斜晶に帰属する回折ピークが検出された。したがって、前記二酸化ジルコニウム粒子は、正方晶と単斜晶とから構成される結晶構造を有していることがわかる。また、単斜晶に対する正方晶の割合〔正方晶/単斜晶(質量比)〕は、54/46であることが確認された。
超高分解能電解放出型走査電子顕微鏡〔(株)日立ハイテクノロジーズ製、品番:S−4800〕下に、任意の100個の被覆二酸化ジルコニウム粒子の長軸方向の長さ(長径)を測定し、当該長軸方向の長さの平均値を求めることにより、被覆二酸化ジルコニウム粒子(一次粒子)の個数平均粒子径を算出した。
その結果、被覆二酸化ジルコニウム粒子(一次粒子)の個数平均粒子径は、12nmであることが確認された。
また、赤外吸収スペクトル測定装置(パーキンエルマー社製、商品名:Spectrum One)を用い、前記被覆二酸化ジルコニウム粒子の赤外吸収スペクトルを測定した。
赤外吸収スペクトルの測定結果から、C−Hに由来する吸収およびカルボキシル基由来する吸収が確認された。したがって、被覆二酸化ジルコニウム粒子は、2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートの被覆層を有することがわかる。
さらに、熱重量−示唆熱分析装置〔(株)リガク製、商品名:Thermo plus EVO II/TG−DTA〕を用い、空気雰囲気下に室温から800℃まで10℃/minの昇温速度で被覆二酸化ジルコニウム粒子を昇温させ、当該被覆二酸化ジルコニウム粒子の質量減少率を測定した。
その結果、前記被覆二酸化ジルコニウム粒子の質量減少率は、12%であることが確認された。したがって、前記被覆二酸化ジルコニウム粒子における2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートの含有率は、12質量%であることがわかる。
(2)被覆微粒子(1−1)の表面処理による被覆微粒子(1−2)の製造
製造例1(1)で得られた被覆二酸化ジルコニウム粒子10gをトルエン90gに分散させて透明な分散液を得た。得られた分散液に3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン1.5gを添加し、90℃の温度で1時間加熱還流を行なった。加熱還流後の分散液にn−ヘキサン300gを添加し、分散液中の被覆二酸化ジルコニウム粒子を凝集させ、白濁液を得た。得られた白濁液から凝集粒子(一次粒子が凝集した二次粒子)を濾別した後、室温で乾燥させた。
凝集粒子の結晶構造および単斜晶に対する正方晶の割合〔正方晶/単斜晶(質量比)〕を製造例(1)と同様にして調べた。その結果、正方晶に帰属する回折ピークおよび単斜晶に帰属する回折ピークが検出された。したがって、前記凝集粒子は、正方晶と単斜晶とから構成される結晶構造を有していることがわかる。また、単斜晶に対する正方晶の割合〔正方晶/単斜晶(質量比)〕は、54/46であることが確認された。
さらに、前記凝集粒子の赤外吸収スペクトルを製造例1(1)と同様にして測定した。赤外吸収スペクトルの測定結果から、C−Hに由来する吸収、カルボキシル基に由来する吸収およびSi−O−Cに由来する吸収が確認された。このことから、前記凝集粒子は、2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートを含む層と、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを含む層とを有していることがわかる。
さらに、前記凝集粒子の質量減少率を製造例1(1)と同様にして測定した。その結果、前記凝集粒子の質量減少率は、17%であることが確認された。したがって、前記凝集粒子における2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとの合計含有率は、17質量%であることがわかる。
また、蛍光X線分析装置〔(株)リガク製、品番:ZSX Primus II〕を用い、前記凝集粒子におけるケイ素含有量を測定することにより、前記凝集粒子における3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの含有量を求めた。さらに、元素分析装置〔(株)ジェイ・サイエンス・ラボ製、品番:JM10〕を用い、前記凝集粒子における全炭素含有量を測定した。つぎに、前記凝集粒子における全炭素含有量の値から3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランに由来する炭素の量の値を差し引くことにより、2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートに由来する炭素の量を算出した。算出された2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートに由来する炭素の量に基づき、前記凝集粒子における2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートの含有量を求めた。つぎに、前記凝集粒子における3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの含有量と、前記凝集粒子における2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートの含有量とに基づき、2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートに対する3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの存在比率(モル比)を求めた。その結果、2−エチルヘキサン酸および/または2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートに対する3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの存在比率(モル比)は、1.5であることが確認された。
得られた凝集粒子〔被覆微粒子(1−2)〕をその濃度が70質量%となるようにメチルエチルケトンに分散させ、二酸化ジルコニウム/メチルエチルケトン分散液を得た。
実施例1
5M水酸化ナトリウム水溶液1mLを撹拌しながら、当該水酸化ナトリウム水溶液に製造例1で得られた二酸化ジルコニウム/メチルエチルケトン分散液10μLを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を室温で30分間撹拌し、分散液Aを得た。つぎに、遠心式フィルターユニット〔メルクミリポア社製、商品名:アミコンウルトラ−4、分画分子量:3000〕および超純水を用い、前記分散液Aに含まれる固形分の遠心洗浄を5000×gで30分間の条件で行なうことにより、粒子を得た。得られた粒子を超純水10mLに分散させ、分散液Bを得た。
ゼータ電位・粒子径・分子量測定装置〔マルバーン社製、商品名:Zetasizer nano ZS〕を用い、動的光散乱法に基づいて25℃で分散液Bに含まれる粒子の粒度分布を測定し、キュムラント法を用いて散乱光強度基準による凝集粒子(二次粒子)の流体力学的平均粒子径を求めた。その結果、凝集粒子の流体力学的平均粒子径(二次粒子)は、190nmであった。
前記分散液Bを撹拌しながら、当該分散液BにICG水溶液〔ICG濃度:2mg/mL〕1mLを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を室温で12時間撹拌し、懸濁液を得た。つぎに、遠心式フィルターユニット〔メルクミリポア社製、商品名:アミコンウルトラ−4、分画分子量:10000〕および超純水を用い、前記懸濁液に含まれる粒子の遠心洗浄を5000×gで30分間の条件で行なった。洗液にICGが含まれていないことを確認した後、粒子を回収した。得られた粒子を超純水10mLに分散させ、分散液Cを得た。
DSPE−PEG〔日油(株)製、商品名:SUNBRIGHT DSPE−050CN〕をその濃度が20mg/mLとなるように添加してDSPE−PEG水溶液を得た。得られたDSPE−PEG水溶液2mLを分散液Cに添加し、混合物を得た。得られた混合物を室温で2時間撹拌し、分散液Dを得た。つぎに、遠心式フィルターユニット〔メルクミリポア社製、商品名:アミコンウルトラ−4、分画分子量:30000〕および超純水を用い、前記分散液Dに含まれる粒子の遠心洗浄を5000×gで20分間の条件で行なうことにより、二酸化ジルコニウム微粒子とICGとDSPE−PEGとを含有する複合粒子の分散液を得た。
比較例1
5M水酸化ナトリウム水溶液1mLを撹拌しながら、当該水酸化ナトリウム水溶液に製造例1で得られた二酸化ジルコニウム/メチルエチルケトン分散液10μLを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を室温で30分間撹拌し、分散液Aを得た。つぎに、遠心式フィルターユニット〔メルクミリポア社製、商品名:アミコンウルトラ−4、分画分子量:3000〕および超純水を用い、前記分散液Aに含まれる固形分の遠心洗浄を5000×gで30分間の条件で行なうことにより、粒子を得た。得られた粒子を超純水10mLに分散させ、分散液Bを得た。
前記分散液Bを撹拌しながら、当該分散液BにICG水溶液〔ICG濃度:2mg/mL〕1mLを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を室温で12時間撹拌し、懸濁液を得た。つぎに、遠心式フィルターユニット〔メルクミリポア社製、商品名:アミコンウルトラ−4、分画分子量:10000〕および超純水を用い、前記懸濁液に含まれる粒子の遠心洗浄を5000×gで30分間の条件で行なった。洗液にICGが含まれていないことを確認した後、粒子を回収した。得られた粒子を超純水10mLに分散させ、分散液Cを得た。
つぎに、遠心式フィルターユニット〔メルクミリポア社製、商品名:アミコンウルトラ−4、分画分子量:30000〕および超純水を用い、前記分散液Cに含まれる粒子の遠心洗浄を5000×gで20分間の条件で行なうことにより、二酸化ジルコニウム微粒子とICGとを含有する複合粒子の分散液を得た。
試験例1
実施例1で得られた複合粒子の分散液を超純水で10倍希釈し、撹拌することにより、動的光散乱(DLS)測定試料を得た。また、前記において、実施例1で得られた複合粒子の代わりに比較例1で得られた複合粒子を用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、DLS測定試料を得た。
実施例1で得られた複合粒子の分散液を超純水で20倍希釈し、撹拌することにより、電気泳動光散乱(ELS)測定試料を得た。また、前記において、実施例1で得られた複合粒子の代わりに比較例1で得られた複合粒子を用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、ELS測定試料を得た。
ゼータ電位・粒子径・分子量測定装置〔マルバーン社製、商品名:Zetasizer nano ZS〕を用い、動的光散乱法に基づいて25℃でDLS測定試料に含まれる粒子の粒度分布を測定し、キュムラント法を用いて散乱光強度基準による凝集粒子の流体力学的平均粒子径を求めた。さらに、ゼータ電位・粒子径・分子量測定装置〔マルバーン社製、商品名:Zetasizer nano ZS〕を用いて電気泳動光散乱法に基づいて25℃でELS測定試料に含まれる複合粒子のゼータ電位を測定した。
その結果、実施例1で得られた複合粒子の流体力学的平均粒子径は210nm、ゼータ電位は−24mVであった。また、比較例1で得られた複合粒子の流体力学的平均粒子径は200nm、ゼータ電位は−20mVであった。したがって、実施例1で得られた複合粒子のゼータ電位の絶対値は、比較例1で得られた複合粒子のゼータ電位の絶対値よりも高いことがわかる。実施例1では、二酸化ジルコニウム微粒子とICGとDSPE−PEGとが併用されているのに対し、比較例1では、DSPE−PEGが用いられていない。また、ゼータ電位の絶対値は、分散性の指標として用いることができる。これらの結果から、実施例1で得られた複合粒子では、二酸化ジルコニウム微粒子とICGとDSPE−PEGとが併用されているので、比較例1で得られた複合粒子と比べて分散性が向上していることがわかる。
試験例2
実施例1で得られた複合粒子をその濃度がICG換算量として20mMとなるようにPBSと混合し、37℃で30分間撹拌することにより、試料を得た。また、前記において、実施例1で得られた複合粒子の代わりに比較例1で得られた複合粒子を用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、試料を得た。なお、試料中における複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオン共存下に維持されている。
ICGをその濃度が20mMとなるようにPBSと混合し、37℃で30分間撹拌することにより、試料を得た。なお、試料中におけるICGは、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオン共存下に維持されている。
前記試料および分光光度計〔日立ハイテク(株)製、品番:UV−3010〕を用い、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオン共存下における実施例1で得られた複合粒子、比較例1で得られた複合粒子およびICGの波長600〜900nmにおける吸収スペクトル(「光吸収スペクトル」または「可視―近赤外光吸収スペクトル」ともいう)を測定した。これらの結果を図1に示す。図中、1は実施例1で得られた複合粒子の吸収スペクトル、2は比較例2で得られた複合粒子の吸収スペクトル、3はICGの吸収スペクトルを示す。また、図中、λ1は波長779nm、λ2は波長792nmを示す。
図1に示された結果から、実施例1で得られた複合粒子の吸収スペクトルの吸収ピーク波長は、比較例1で得られた複合粒子およびICGの各吸収スペクトルの吸収ピーク波長に対し、長波長側にシフトしていることがわかる。一方、比較例1で得られた複合粒子の吸収スペクトルの吸収ピーク波長とICGの吸収スペクトルの吸収ピーク波長に類似していることがわかる。これらの結果から、二酸化ジルコニウム微粒子とICGとDSPE−PEGとを含有する複合粒子からICGが遊離した場合、吸収スペクトルの吸収ピーク波長がシフトすることがわかる。したがって、吸収スペクトルを用いることにより、二酸化ジルコニウム微粒子とICGとDSPE−PEGとを含有する複合粒子からのICGの遊離の有無を調べることができることがわかる。
試験例3
実施例1で得られた複合粒子をその濃度がICG換算量として20mMとなるようにPBSと混合し、37℃で30分間撹拌することにより、試料を得た。得られた試料を37℃で24時間静置した。なお、試料中における複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオンおよび血中タンパク質の共存下に維持されている。
前記試料および分光光度計〔日立ハイテク(株)製、品番:UV−3010〕を用い、調製直後の試料および37℃で24時間静置した後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の波長500〜900nmにおける吸収スペクトル(「光吸収スペクトル」、「可視―近赤外光吸収スペクトル」ともいう)を測定することにより、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオン共存下における実施例1で得られた複合粒子の安定性を調べた。
調製直後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の吸収スペクトルを図2(A)、24時間静置後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の吸収スペクトルを図2(B)に示す。図中、矢印は、波長798nmの吸収ピークを示す。
図2に示された結果から、図2(A)に示された調製直後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の吸収スペクトルと、図2(B)に示された24時間静置後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の吸収スペクトルとの間には、明確な違いが見られないことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られた複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオン共存下に維持した場合であっても、ICGを安定に保持していることがわかる。したがって、実施例1で得られた複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオン共存下において、優れた安定性を示すことがわかる。
試験例4
実施例1で得られた複合粒子をICG換算濃度が20mMとなるように50質量%FBS含有PBS溶液と混合し、37℃で30分間撹拌することにより、試料Aを得た。得られた試料を37℃で24時間静置した。なお、試料A中における複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオンおよび血中タンパク質の共存下に維持されている。
また、比較例1で得られた複合粒子をICG換算濃度が20mMとなるように50質量%FBS含有PBS溶液と混合し、37℃で30分間撹拌することにより、試料Bを得た。得られた試料を37℃で24時間静置した。なお、試料B中における複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオンおよび血中タンパク質の共存下に維持されている。
得られた各試料およびゼータ電位・粒子径・分子量測定装置〔マルバーン社製、商品名:Zetasizer nano ZS〕を用い、調製直後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子および比較例1で得られた複合粒子ならびに24時間静置後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子および比較例1で得られた複合粒子の粒子径分布を測定した。得られた粒子径分布を用い、調製直後の試料に含まれる複合粒子の粒子径分布と24時間静置後の試料に含まれる複合粒子の粒子径分布とを対比することにより、複合粒子と血中タンパク質との間の相互作用の有無を調べた。
調製直後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の粒子径分布を図3(A)、24時間静置後の試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の粒子径分布を図3(B)に示す。なお、図3は、同一の試料を用いて粒子径分布を3回測定した結果を示す。
また、調製直後の試料に含まれる比較例1で得られた複合粒子の粒子径分布を図4(A)、24時間静置後の試料に含まれる比較例1で得られた複合粒子の粒子径分布を図4(B)に示す。なお、図4は、同一の試料を用いて粒子径分布を3回測定した結果を示す。
図3に示された結果から、図3(A)に示された調製直後の各試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の粒子径分布と、図3(B)に示された24時間静置後の各試料に含まれる実施例1で得られた複合粒子の粒子径分布との間には、吸収ピークの大きなシフトが見られないことから、ほとんど変化が見られないことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られた複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオンおよび血中タンパク質の共存下に維持された場合でも、血中タンパク質と相互作用しないことがわかる。実施例1で得られた複合粒子には、二酸化ジルコニウム微粒子とICGとDSPE−PEGとが併用されている。したがって、複合粒子に二酸化ジルコニウム微粒子とICGとDSPE−PEGとを併用することにより、生体内における血中タンパク質との相互作用が効果的に抑制されることがわかる。
これに対して、図4に示された結果から、図4(A)に示された調製直後の各試料に含まれる比較例1で得られた複合粒子の粒子径分布と、図4(B)に示された24時間静置後の各試料に含まれる比較例1で得られた複合粒子の粒子径分布との間には、吸収ピークの大きなシフトが見られることから、大きな変化が見られることがわかる。これらの結果から、比較例1で得られた複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオンおよび血中タンパク質の共存下に維持された場合、血中タンパク質と相互作用することがわかる。
試験例5
実施例1で得られた複合粒子(ICG換算量:0.9pmol)をPBS5μLに添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌することにより、試料を得た。また、比較例1で得られた複合粒子(ICG換算量:0.9pmol)をPBS5μLに添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌することにより、試料を得た。
PBS中において、物性変化・分子間相互作用定量QCM装置〔(株)イニシアム製、商品名:Affinix QN Pro〕の水晶振動子からなるセルの表面にBSA0.18pmolを付着させた。つぎに、前記試料と前記セルの表面に付着したBSAとの接触前後における前記水晶振動子の発振周波数の変化を37℃で測定することにより、前記試料に含まれる複合粒子の種類と、当該複合粒子の種類とBSAとの相互作用に基づく発振周波数の変化との関係を調べた。
複合粒子の種類と発振周波数の変化ΔF2との関係を図5に示す。図中、レーン1は実施例1で得られた複合粒子を用いたときの発振周波数の変化、レーン2は比較例1で得られた複合粒子を用いたときの発振周波数の変化を示す。
図5に示された結果から、実施例1で得られた複合粒子とBSAとの相互作用に基づく発振周波数の変化は、比較例1で得られた複合粒子とBSAとの相互作用に基づく発振周波数の変化の1/2以下であることがわかる。この結果から、実施例1で得られた複合粒子とBSAとの相互作用は、比較例1で得られた複合粒子とBSAとの相互作用と比べて、弱いことがわかる。BSAとの相互作用が弱い物質は、生体内で異物と認識されにくく、肝臓から排出されにくいことが知られている。したがって、実施例1で得られた複合粒子は、比較例1で得られた複合粒子と比べて、生体内で異物と認識されにくく、肝臓から排出されにくいことがわかる。
実施例2〜4
実施例1において、DSPE−PEGを用いる代わりにPEG鎖含有メタクリル酸系ポリマー〔重量平均分子量:10000(実施例2)〕、PEG鎖含有アクリル酸系ポリマー〔重量平均分子量:35000(実施例3)〕およびPEG−アクリル酸グラフトポリマー〔重量平均分子量:10000(実施例4)〕それぞれを用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、複合粒子を得た。なお、実施例2〜4で得られた複合粒子に用いられた二酸化ジルコニウム微粒子は、二酸化ジルコニウムからなる一次粒子が凝集した二次粒子であった。
実施例2〜4で得られた各複合粒子の流体力学的平均粒子径およびゼータ電位を実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
表1に示された結果から、PEG鎖含有メタクリル酸系ポリマー、PEG鎖含有アクリル酸系ポリマーまたはPEG−アクリル酸グラフトポリマーが用いられた複合粒子は、200nm以下の流体力学的平均粒子径を有し、−40〜−20mVのゼータ電位を有することがわかる。したがって、実施例2〜4で得られた各複合粒子は、水系溶媒における分散性に優れていることがわかる。
また、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオン共存下における実施例2〜4で得られた各複合粒子の安定性を試験例2と同様にして調べる。その結果から、実施例2〜4で得られた各複合粒子は、実施例1で得られた複合粒子と同様の安定性を有していることがわかる。さらに、実施例2〜4で得られた各複合粒子と血中タンパク質との間の相互作用の有無を試験例3と同様にして調べる。その結果から、実施例2〜4で得られた各複合粒子は、生体内の温度(37℃)で生体内と同様のイオンおよび血中タンパク質の共存下に維持された場合でも、実施例1で得られた複合粒子と同様に血中タンパク質と相互作用しないことがわかる。
前記において、二酸化ジルコニウム微粒子の代わりに他の第4族金属酸化物微粒子を用いた場合にも、実施例1〜4で得られた各複合粒子と同様の傾向が見られる。また、前記において、ICGの代わりに他のルミネセンス物質が用いられた複合粒子を用いた場合にも、実施例1〜4で得られた各複合粒子と同様の傾向が見られる。
これらの結果から、各実施例で得られた複合粒子は、水系溶媒における分散性および安定性に優れており、しかも生体と同様の条件下における安定性に優れていることがわかる。また、各実施例で得られた複合粒子は、30〜300nmの流体力学的平均粒子径を有することので、EPR効果を発現しやすことがわかる。このことから、各実施例で得られた複合粒子は、比較例1で得られた複合粒子と比べて生体における腫瘍への集積性に優れていることがわかる。したがって、本発明の複合粒子は、水系溶媒における分散性および安定性に優れているとともに、生体と同様の条件下における安定性に優れており、しかも生体における腫瘍への集積性に優れていることがわかる。
実施例5
実施例1で得られた複合粒子(ICG換算量:40nmol)を精製水100μLに添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌することにより、光イメージング剤を得た。
比較例2
比較例1で得られた複合粒子(ICG換算量:40nmol)を精製水100μLに添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌することにより、光イメージング剤を得た。
比較例3
ICG40nmolを精製水100μLに溶解させ、光イメージング剤を得た。
調製例1
マウス大腸がん細胞株colon−26(5×106個)をBalb−c nu/nuヌードマウスの下肢近くの腹部に接種した。接種後のBalb−c nu/nuヌードマウスを6日間飼育することにより、マウス大腸がん細胞株colon−26をBalb−c nu/nuヌードマウスに生着させることにより、担癌マウスを得た。
試験例6
調製例1で得られた担癌マウスの尾静脈に実施例5で得られた光イメージング剤100μLを投与した。前記担癌マウスおよび蛍光イメージング装置(パーキンエルマー社製、商品名:IVIS lumina)を用い、イン・ビボ蛍光イメージング法にしたがい、前記担癌マウスの腫瘍担持部を観察した。また、前記担癌マウスの腫瘍担持部(図6中の囲み部分)における蛍光強度および当該腫瘍担持部の反対側の正常組織部における蛍光強度を経時的に測定した。担癌マウスの腫瘍担持部における蛍光強度および当該腫瘍担持部の反対側の正常組織部における蛍光強度を用い、式(III):
[差分蛍光強度]
=[腫瘍担持部における蛍光強度]−[正常組織部における蛍光強度] (III)
にしたがい、差分蛍光強度を求めた。前記において、実施例5で得られた光イメージング剤を用いる代わりに比較例2で得られた光イメージング剤または比較例3で得られた光イメージング剤を用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、差分蛍光強度を求めた。
実施例5で得られた光イメージング剤を用いたときの担癌マウスの腫瘍担持部を観察した結果を図6(A)、比較例2で得られた光イメージング剤を用いたときの担癌マウスの腫瘍担持部を観察した結果を図6(B)、比較例3で得られた光イメージング剤を用いたときの担癌マウスの腫瘍担持部を観察した結果を図6(C)に示す。図中、囲み部分は、担癌マウスの腫瘍担持部における観察対象部を示す。
図6に示された結果から、実施例5で得られた光イメージング剤を用いたときの観察対象部の落射蛍光は、比較例2および3で得られた各光イメージング剤を用いたときの観察対象部の落射蛍光と比べ、強いことがわかる。
また、担癌マウスの腫瘍担持部における蛍光強度(差分蛍光強度)の経時的変化を調べた結果を図7に示す。図中、黒丸は実施例5で得られた光イメージング剤を用いたときの担癌マウスの腫瘍担持部における蛍光強度(差分蛍光強度)の経時的変化、黒三角は比較例2で得られた光イメージング剤を用いたときの担癌マウスの腫瘍担持部における蛍光強度(差分蛍光強度)の経時的変化、黒四角は比較例3で得られた光イメージング剤を用いたときの担癌マウスの腫瘍担持部における蛍光強度(差分蛍光強度)の経時的変化を示す。
図7に示された結果から、光イメージング剤の投与終了時から48時間経過後において、実施例5で得られた光イメージング剤を用いたときの担癌マウスの腫瘍担持部における蛍光強度(差分蛍光強度)は、比較例2および3で得られた各光イメージング剤を用いたときの担癌マウスの腫瘍担持部における蛍光強度(差分蛍光強度)と比べて大きいことがわかる。これらの結果から、実施例5で得られた光イメージング剤は、比較例2および3で得られた各光イメージング剤と比べて腫瘍集積性に優れていることがわかる。
比較例4
(1)複合粒子の製造
5M水酸化ナトリウム水溶液1mLを撹拌しながら、当該水酸化ナトリウム水溶液に製造例1で得られた二酸化ジルコニウム/メチルエチルケトン分散液10μLを滴下した。滴下終了後、得られた混合物を室温で30分間撹拌し、分散液Aを得た。つぎに、遠心式フィルターユニット〔メルクミリポア社製、商品名:アミコンウルトラ−4、分画分子量:3000〕および超純水を用い、前記分散液Aに含まれる固形分の遠心洗浄を5000×gで30分間の条件で行なうことにより、粒子を得た。得られた粒子を超純水10mLに分散させ、分散液Bを得た。
DSPE−PEG〔日油(株)社製、商品名:SUNBRIGHT DSPE−050CN〕をその濃度が20mg/mLとなるように添加してDSPE−PEG水溶液を得た。前記分散液B10mLを撹拌しながら、当該分散液BにDSPE−PEG水溶液2mLを添加し、混合物を得た。得られた混合物を室温で2時間撹拌し、分散液Eを得た。つぎに、遠心式フィルターユニット〔メルクミリポア社製、商品名:アミコンウルトラ−4、分画分子量:30000〕および超純水を用い、前記分散液Dに含まれる粒子の遠心洗浄を5000×gで20分間の条件で行なうことにより、二酸化ジルコニウム微粒子とDSPE−PEGとを含有する複合粒子を得た。
(2)光イメージング剤の製造
比較例4(1)で得られた複合粒子(ICG換算量:40nmol)を精製水100μLに添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌することにより、光イメージング剤を得た。
試験例7
調製例1と同様にして得られた各担癌マウスの尾静脈に実施例5で得られた光イメージング剤100μL、比較例2で得られた光イメージング剤100μL、比較例3で得られた光イメージング剤100μLおよび比較例4で得られた光イメージング剤100μLをそれぞれ投与した。光イメージング剤の投与終了時から48時間経過後の担癌マウスを安楽死させ、腫瘍を含む臓器を摘出した。摘出された臓器および蛍光イメージング装置(パーキンエルマー社製、商品名:IVIS lumina)を用い、イン・ビボ蛍光イメージング法にしたがい、前記臓器における蛍光強度を測定した。
光イメージング剤の種類と腫瘍を含む臓器における蛍光強度との関係を調べた結果を図8に示す。図中、レーン1は実施例5で得られた光イメージング剤を用いたときの腫瘍を含む臓器における蛍光強度、レーン2は比較例2で得られた光イメージング剤を用いたときの腫瘍を含む臓器における蛍光強度、レーン3は比較例3で得られた光イメージング剤を用いたときの腫瘍を含む臓器における蛍光強度、レーン4は比較例4で得られた光イメージング剤を用いたときの腫瘍を含む臓器における蛍光強度を示す。
図8に示された結果から、実施例5で得られた光イメージング剤を用いたときの腫瘍を含む臓器における蛍光強度は、比較例2〜4で得られた各光イメージング剤を用いたときの腫瘍を含む臓器における蛍光強度と比べて大きいことがわかる。これらの結果から、実施例5で得られた光イメージング剤は、比較例2〜4で得られた各光イメージング剤と比べて腫瘍を含む臓器への集積性に優れていることがわかる。
なお、実施例1で得られた複合粒子の代わりに実施例2〜4で得られた各微粒子を含有する光イメージング剤を用いた場合にも、実施例1で得られた複合粒子を含有する光イメージング剤を用いた場合と同様の傾向が見られる。
また、実施例1に用いられた二酸化ジルコニウム微粒子の代わりに他の第4族金属酸化物微粒子が用いられた複合粒子を含有する光イメージング剤を用いた場合にも、実施例1で得られた複合粒子を含有する光イメージング剤を用いた場合と同様の傾向が見られる。
さらに、実施例1に用いられたICGの代わりに他のルミネセンス物質が用いられた複合粒子を含有する光イメージング剤を用いた場合にも、実施例1で得られた複合粒子を含有する光イメージング剤を用いた場合と同様の傾向が見られる。
以上説明したように、本発明の光イメージング剤は、本発明の複合粒子を含有していることから、水系溶媒における分散性および安定性に優れているとともに、生体と同様の条件下における安定性に優れており、しかも生体における腫瘍への集積性に優れていることがわかる。したがって、本発明の光イメージング剤は、例えば、生体イメージング、画像診断、好ましくは腫瘍の画像診断などに好適に使用することができる。