JP2019155537A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性にすぐれた表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】工具基体の表面に、A層とB層を含む硬質被覆層(好ましくは、xが原子比で、0.40≦x≦0.80を満足する(AlxCr1−x)N層)が形成されている表面被覆切削工具において、逃げ面特定領域に形成されている硬質被覆層の工具基体表面から100nmの高さ位置にあるA層の結晶粒の平均幅W1は30nm≦W1≦100nmであり、硬質被覆層の表面から100nmの深さ位置にあるB層の結晶粒の平均幅W2は3nm≦W2≦20nmであり、前記逃げ面特定領域に形成されている硬質被覆層について、工具基体表面と前記A層とB層の界面との距離dを測定した場合、前記dの最大値dmax1−6と最小値dmin1−6の差d1−6は、400nm≦d≦1200nmを満足する表面被覆切削工具。【選択図】 図1

Description

この発明は、高熱発生を伴うとともに、刃先に断続的・衝撃的な負荷が作用する炭素鋼、合金鋼などの高速断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関する。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、上記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリル、さらに上記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また上記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて上記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
そして、これらの被覆工具の長寿命化を図るという観点から、耐摩耗性と共に、耐チッピング性、耐欠損性等を向上させることが求められており、このような特性を満足すべく、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、「WC基超硬合金からなる工具基体の表面に、CrAlN膜からなる硬質被覆層を物理蒸着した被覆工具において、
(a)硬質被覆層の、工具基体とCrAlN膜の界面から0.1μmの高さ位置にあるCrAlN結晶粒の粒径幅をWΙ、CrAlN膜の最表面から0.1μmの深さ位置にあるCrAlN結晶粒の粒径幅をWΙΙとしたとき、
10nm<WΙ<50nm、かつ、5<WΙΙ/WΙ<100
を満たす関係が存在し、
(b)さらに、電子線後方散乱回折装置を用いて、硬質被覆層断面のCrAlN結晶粒の結晶方位を解析し、測定された二次元領域を工具基体表面に対して略垂直な方向に100nm毎のピッチで縦区分に区切り、さらに、それぞれの縦区分内を工具基体とCrAlN膜の界面からCrAlN膜の成長方向に100nm毎のピッチで区切り、100nm×100nmに区分けされたそれぞれの領域(セル)に存在する各測定点の、<111>結晶方位とCrAlN膜測定断面の法線方向がなす傾斜角の平均傾斜角を計算し、同一縦区分に存在するセルのうち、測定傾斜角の最大値と最小値の差が15度以下であり、
<111>結晶方位とCrAlN膜測定断面の法線と直交する方向がなす傾斜角の平均傾斜角を計算し、同一縦区分に存在するセルのうち、測定傾斜角の最大値と最小値の差が15度以下であり、
<100>結晶方位とCrAlN膜測定断面の法線がなす傾斜角の平均傾斜角を計算し、同一縦区分に存在するセルのうち、測定傾斜角の最大値と最小値の差が15度以下
である100nm幅の縦区分が、測定された全面積のうちの60%以上を占有する被覆工具」が提案されている。
そして、上記被覆工具によれば、切刃に対して衝撃的・断続的高負荷が作用する乾式断続重切削条件や、連続的な高負荷がかかる乾式連続高送り切削条件においても、すぐれた高温強度に加えてすぐれた耐欠損性と靭性を示し、すぐれた工具特性を発揮し、工具寿命の延命化に寄与するとされている。
また、特許文献2には、「WC基超硬合金で構成された工具基体の表面に、平均層厚が2〜10μmのAlとCrの複合窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成した被覆工具において、
上記被覆工具の上記工具基体の逃げ面上の刃先から、上記逃げ面上で上記逃げ面刃先から反対側に向けて100μm離れた位置までの領域上に蒸着形成された硬質被覆層は、粒状結晶組織を有し、上記領域上に形成された上記硬質被覆層表面の粒状結晶粒の平均粒径は0.2〜0.5μmであり、上記領域における上記工具基体と上記硬質被覆層の界面における粒状結晶粒の平均粒径は、上記硬質被覆層表面の上記粒状結晶粒の平均粒径より0.02〜0.1μm小さく、粒径が0.15μm以下の結晶粒が占める結晶粒径長割合は20%以下である被覆工具。」が提案されている。
そして、上記被覆工具によれば、所定組成の(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層が、刃先から100μm離れた位置までの範囲においては粒状結晶組織で構成され、しかも、表面粒径は0.2〜0.5μm、また、界面粒径は、表面粒径より0.02〜0.1μm小さく、また、逃げ面上の刃先から100μm離れた位置までの範囲においては、粒径が0.15μm以下の結晶粒が占める結晶粒径長割合は20%以下であることから、炭素鋼、合金鋼などの切削加工において、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するとされている。
さらに、特許文献3には、「WC基超硬合金で構成された工具基体の表面に、AlとCrの複合窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成した被覆工具において、
上記硬質被覆層は、逃げ面とすくい面の交差稜線部から少なくとも100μmまでの範囲の位置において、0.3μm未満の結晶幅の微細結晶粒が0〜50長さ%を占める薄層Aと、0.3μm未満の結晶幅の微細結晶粒が50〜100長さ%を占める薄層Bの交互積層で構成され、薄層Aと薄層Bの微細結晶粒の割合の差が10長さ%以上であり、かつ交互積層の最表面は薄層Aで構成され、一方上記交差稜線部から150μm以上離れた位置においては、上記硬質被覆層は0.3μm未満の結晶幅の微細結晶粒が0〜50長さ%を占める被覆工具。」が提案されている。
そして、上記被覆工具によれば、切れ刃稜線部近傍の硬質被覆層が、0.3μm未満の結晶幅の微細結晶粒が0〜50長さ%を占める薄層Aと、0.3μm未満の結晶幅の微細結晶粒が50〜100長さ%を占める薄層Bの交互積層で構成されていることによって、炭素鋼、合金鋼などの高熱発生を伴う高速切削加工において、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するとされている。
特開2011−218542号公報 特開2013−212574号公報 特開2014−159072号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と厳しい切削条件下で行われるようになってきている。
前記特許文献1〜3に示される従来の被覆工具は、AlとCrの複合窒化物(以下、(Al,Cr)Nで示す)からなる硬質被覆層において、(Al,Cr)N結晶粒の結晶組織を改善することにより、耐摩耗性を維持しつつ、耐チッピング性、耐欠損性を向上させるものであるが、刃先に断続的・衝撃的な高負荷が作用する切削条件においては、前記特許文献1、2に示される被覆工具では、工具基体と硬質被覆層の密着性が十分とはいえないために、剥離を生じやすく、これを原因として寿命に至る場合がある。
また、前記特許文献3に示される被覆工具においては、工具基体表面と(Al,Cr)N層の界面での剥離発生は抑制されるものの、交互積層構造を構成する薄層Aと薄層Bの層間での剥離を発生しやすいため、やはり工具寿命は短命となるのが現状である。
そこで、高熱発生を伴い、刃先に断続的・衝撃的な高負荷が作用する高速断続切削加工に供した場合でも、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性にすぐれ、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具の開発が望まれる。
本発明者等は、高熱発生を伴い、刃先に断続的・衝撃的な高負荷が作用する炭素鋼、合金鋼などの高速断続切削加工において、耐摩耗性と共に、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性にすぐれ、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する被覆工具を提供すべく、硬質被覆層の結晶組織構造について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
従来、被覆工具を作製するにあたり、硬質被覆層の形成手段としては、いくつかの方法が提案されている。
例えば、PVD法の一種であるアークイオンプレーティング(以下、「AIP」ともいう)法によりAlとCrの複合窒化物(以下、(Al,Cr)Nで示す場合がある)からなる硬質被覆層を成膜する際には、通常、工具基体を装置内に装入し、所定のバイアス電圧を印加するとともに、装置内を所定温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成のAl−Cr合金ターゲットとの間にアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入し、所定圧の反応雰囲気中で蒸着することによって、硬質被覆層を成膜している。
また、前記特許文献1においては、圧力勾配型Arプラズマガスを利用したイオンプレーティング装置を用いて、成膜中のバイアスを調整することによって、工具基体側における(Al,Cr)N層と硬質被覆層の表面側の(Al,Cr)N層の結晶組織の作り分けを行っており、さらに、前記特許文献2、3においては、AIP法で(Al,Cr)N層を成膜するに際し、磁場を印加し、かつ、磁場の大きさを調整することによって、所定の結晶組織を有する(Al,Cr)N層を作製している。
本発明者らは、AIP法により硬質被覆層(例えば、(Al,Cr)N層)を成膜するに際し、成膜時にアーク電流値を一定とした状態で、バイアス電圧と工具基体の温度の双方を関連付けてコントロールすることにより、工具基体側の硬質被覆層の結晶粒と硬質被覆層の表面側の結晶粒の結晶組織を異なったものとして成膜できることを見出した。
より具体的にいえば、工具基体側の硬質被覆層を相対的に粗粒組織の層として形成するとともに、硬質被覆層の表面側を相対的に微粒組織の層として形成することができることを見出したのである。
そして、硬質被覆層として、工具基体側と硬質被覆層の表面側でこのような異なる結晶組織を形成することによって、工具基体を構成する比較的粗粒の粒子(例えば、WC粒子、TiCN粒子、cBN粒子)と硬質被覆層を構成する比較的微粒の結晶粒の粒径ギャップに起因する工具基体と硬質被覆層間の密着性低下を防止することができるとともに、摩耗寿命に至る以前に、硬質被覆層の剥離発生に起因する欠損によって寿命となることを防止し得ることを見出した。
さらに、工具基体側の硬質被覆層の前記粗粒組織の層と硬質被覆層表面側の前記微粒組織の層の界面として、複雑な凹凸形状の界面を形成することができるため、工具基体表面と平行な方向に大きな負荷が作用する高速断続切削条件でも、アンカー効果によって粗粒組織の層と微粒組織の層との密着性が向上し、その結果、チッピング、欠損、剥離の発生が抑制され、長期にわたって、すぐれた耐摩耗性と共に、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性が発揮されることを見出したのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット及び立方晶窒化ホウ素基焼結体のいずれかからなる工具基体の表面に、平均層厚が1〜10μmの硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、CrとAlの複合窒化物であり、
(b)前記工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた位置の領域上に形成されている硬質被覆層において、前記工具基体と硬質被覆層の界面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの高さ位置にある結晶粒の、工具基体の表面と平行な方向に測定された結晶粒の平均幅をWとし、硬質被覆層の表面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの深さ位置にある結晶粒の、工具基体の表面と平行な方向に測定された結晶粒の平均幅をWとした場合、30nm≦W≦100nm、かつ、3nm≦W≦20nmを満足し、
(c)前記結晶粒の平均幅がWである結晶粒群からなるA層は工具基体側に、また、前記結晶粒の平均幅がWである結晶粒群からなるB層は硬質被覆層表面側に、それぞれ形成されており、前記A層と前記B層の界面は、工具基体と硬質被覆層の界面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの高さ位置と、硬質被覆層の表面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの深さ位置との間に存在しており、
(d)前記工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた位置の領域上に形成されている硬質被覆層について、100nm間隔で前記工具基体表面と前記A層と前記B層の界面との距離dを工具基体表面に垂直な方向に測定した場合、測定された距離dの最大値dmax1−6と最小値dmin1−6の差d1−6は、400nm≦d1−6≦1200nmを満足する、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて、それぞれ、1μm〜2μm、2μm〜3μm、3μm〜4μm、4μm〜5μm、5μm〜6μm離れた位置の各区間に形成されている硬質被覆層について、100nm間隔で前記工具基体表面と前記A層と前記B層の界面との距離dを工具基体表面に垂直な方向に測定した場合、それぞれの区間において測定された距離dの最大値dmax1−2、dmax2−3、dmax3−4、dmax4−5、dmax5−6と、それぞれの区間において測定された距離dの最小値dmin1−2、dmin2−3、dmin3−4、dmin4−5、dmin5−6の差d1−2、d2−3、d3−4、d4−5、d5−6は、いずれも前記d1−6の0.3倍以上であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた位置の領域上に形成されている硬質被覆層について、100nm間隔で前記工具基体表面と前記硬質被覆層の表面との距離Dを工具基体表面に垂直な方向に測定した場合、測定された距離Dの最大値Dmax1−6と最小値Dmin1−6の差D1−6は、前記d1−6の0.5倍以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記硬質被覆層が、
組成式:(AlCr1−x)N
で表される(ただし、xは原子比で、0.40≦x≦0.80)AlとCrの複合窒化物層であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
本発明の被覆工具は、硬質被覆層が異なる結晶組織を有するA層とB層によって構成され、前記A層は、工具基体側に形成され、結晶粒の平均幅が相対的に大きな粗粒結晶組織を有し、一方、前記B層は、硬質被覆層表面側に形成され、結晶粒の平均幅が相対的に小さな微粒結晶組織を有し、しかも、前記A層と前記B層の界面は、工具基体表面に沿った平行な界面ではなく、A層とB層が入り組んだ複雑な凹凸形状を有する界面として形成されており、また、好ましくは、前記A層とB層の界面に比し、工具基体の凹凸が小さいことから、A層とB層の密着性が高くかつ切削抵抗の低い硬質被覆層を形成し、その結果、刃先に断続的・衝撃的な高負荷が作用する炭素鋼、合金鋼などの高速断続切削加工において、耐摩耗性と共に、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性にすぐれ、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する。
本発明被覆工具の縦断面の逃げ面特定領域(逃げ面刃先から1μm〜6μmの領域)のSEM像の模式図の一例を示し、図中に、A層とB層の界面を示すとともに、dmax1−6の高さ位置とdmin1−6の高さ位置を表示した。 図1と同じ本発明被覆工具の縦断面の逃げ面特定領域(逃げ面刃先から1μm〜6μmの領域)のSEM像の模式図の一例であるが、図中に、区間1−2〜区間5−6を示すとともに、区間4−5におけるdmax4−5の高さ位置とdmin4−5の高さ位置を表示した。 本発明の被覆工具を作製するための、AIP装置の概略説明図を示し、(a)はその平面図を示し、(b)はその側面図を示す。
本発明について、以下に詳細に説明する。
硬質被覆層の平均層厚:
本発明被覆工具の硬質被覆層は、1〜10μmの平均層厚を有するが、その理由は、平均層厚が、1μm未満では、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮することができず、工具寿命短命の原因となり、一方、その平均層厚が10μmを越えると、刃先にチッピング、欠損が発生し易くなるからである。
硬質被覆層の種類:
本発明被覆工具の硬質被覆層は、硬質被覆層の耐摩耗性、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性という観点を重視するため、CrとAlの複合窒化物((Al,Cr)N)層からなる。
また、(Al,Cr)N層の組成を、
組成式:(AlCr1−x)N
で表した場合、x(原子比)が、0.40≦x≦0.80を満足することが好ましい。
これは、xが0.40未満であると、Alの含有割合が少ないため、耐熱性、耐熱亀裂性が低下し、一方、xが0.80を超えると、Crの含有割合が少なくなり、高温硬さが低下するという理由による。
硬質被覆層を構成する結晶粒の平均幅W、W
本発明の硬質被覆層は、工具基体表面側に形成される結晶粒と、硬質被覆層の表面側に形成される結晶粒が、異なった結晶粒の平均幅を有することを一つの技術的特徴とする。
ここで、工具基体表面側と硬質被覆層の表面側で結晶粒の平均幅が異なる結晶組織は、高速断続切削加工時に大きな負荷が作用する領域に少なくとも形成されていればよく、工具基体全体(即ち、切れ刃、逃げ面、すくい面の全ての領域)でこのような結晶組織を有する硬質被覆層が形成されていることを必要とするわけではない。
高速断続切削加工時に断続的・衝撃的な高負荷が作用する領域とは、具体的には、工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた位置までの領域(以下、この領域を、「逃げ面特定領域」という場合がある。)であるが、少なくともこの領域においては、工具基体表面側と硬質被覆層の表面側で結晶粒の平均幅が異なる結晶組織を形成することが必要である。
なお、本発明では、「逃げ面上の刃先」あるいは「逃げ面刃先」とは、「逃げ面において、切れ刃先端のコーナー部分を除いた、直線状切れ刃の最も先端に近い部分」であると定義する。
本発明の被覆工具における硬質被覆層は、粗粒の結晶粒群によって構成されるA層と微粒の結晶粒群によって構成されるB層からなり、A層は硬質被覆層の工具基体側に形成され、B層は硬質被覆層の表面側に形成される。
前記逃げ面特定領域の硬質被覆層について、工具基体と硬質被覆層の界面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの高さ位置(後記するように、A層に属する領域である)にある結晶粒の、工具基体の表面と平行な方向における結晶粒の平均幅をWとして求め、また、硬質被覆層の表面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの深さ位置(後記するように、B層に属する領域である)にある結晶粒の、工具基体の表面と平行な方向における結晶粒の平均幅をWとして求めた場合、Wは、30nm≦W≦100nmを満足し、また、Wは、3nm≦W≦20nmを満足することが必要である。
ここで、Wが30nm未満では、工具基体の硬質成分粒子(例えば、WC粒子、TiCN粒子、cBN粒子)と硬質被覆層を構成する結晶粒の粒径差が大きくなるために、工具基体と硬質被覆層の密着性が低下し、一方、Wが100nmを超える大きさであると、A層の結晶粒群の粒径が大きすぎて、工具基体表面から剥離しやすくなるので、Wは、30nm≦W≦100nmの範囲とする。
また、Wが3nm未満では、B層を構成する結晶粒自体の強度が低下し、また耐摩耗性も低下し、一方、Wが20nmを超えて大きくなると、亀裂の進展分散効果が低下するため、耐チッピング性、耐剥離性が低下するので、Wは、3nm≦W≦20nmの範囲とする。
硬質被覆層のA層とB層の界面:
工具基体表面側に形成される粗粒の結晶粒群からなるA層と、硬質被覆層の表面側に形成される微粒の結晶粒群からなるB層の界面は、工具基体表面に沿った平行な界面ではなく、A層とB層がお互いに入り組んだ複雑な凹凸形状を有するが、このような界面形態を有することによって、切削加工時に工具基体表面と平行な方向に大きな負荷が作用した場合でも、アンカー効果によって粗粒組織のA層と微粒組織のB層との密着性がすぐれるため、チッピング、欠損、剥離の発生が抑制される。
ここで、A層とB層の界面は、以下の手順で測定し求めることができる。
まず、工具基体と硬質被覆層を区別する必要があるが、そのためには、SEM−EDSを用いて、硬質被覆層中に含有される特定の元素についてのマッピング像を求め、前記元素が原子%で1%以上含有されるか否かを判別し、含有量が原子%で1%未満である領域を工具基体とし、含有量が原子%で1%以上である領域を硬質被覆層であるとして判定する。
次に、被覆工具の前記逃げ面特定領域を含む逃げ面側の断面を切り出し、その断面をSEMにて観察し、前記逃げ面特定領域における工具基体表面と硬質被覆層との界面を50等分(言い換えれば、逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた領域を、100nm毎に50等分)して、直線として線形近似し、この直線を工具基体表面であるとして定義する。
次に、硬質被覆層のSEM反射電子像を縦1024ピクセル、横768ピクセルの画素数で撮影し、各ピクセル毎に白黒の濃淡を256階調で数値化する。
次いで、前記逃げ面特定領域において、工具基体表面から100nm毎の高さで、前記SEM反射電子像の硬質被覆層の部分に、工具基体表面と平行な方向に直線を引き、直線上で96階調以上白黒の濃淡が変化する点を結晶粒界と特定し、前記逃げ面特定領域の所定の位置と該位置に対応する所定の高さに存在する結晶粒の幅Wを測定する。
そして、前記で求めた結晶粒の幅Wが30nm以上である結晶粒群はA層に属するとし、一方、前記で求めた結晶粒の幅Wが30nm未満ある結晶粒群はB層に属するとすることによって、A層及びB層を特定することができ、その結果として、A層とB層の界面を特定することができる。
また、蒸着条件をコントロールすることによって、前記A層とB層の界面は、工具基体表面に垂直な方向に100nmの高さ位置と、硬質被覆層の表面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの深さ位置との間に存在するようにすることが必要である。
この理由は、A層とB層の界面が、工具基体表面から100nm以内の高さ位置にある場合には、硬質被覆層全体がほぼB層で形成されているに等しく、また、硬質被覆層表面から100nmの深さ位置にある場合には、硬質被覆層全体がほぼA層で形成されているに等しくなり、硬質被覆層をA層とB層とで構成した利点が発揮されなくなるからである。
なお、本発明において、結晶粒の幅Wを測定するためには、SEM画像の倍率が最低50000倍以上必要である。
硬質被覆層のA層とB層の界面の形態:
本発明では、高速断続切削において、工具基体表面と平行な方向に大きな負荷が作用した場合であっても、アンカー効果を発現させてA層とB層との密着性を高め、チッピング、欠損、剥離の発生を抑制すべく、上述の手順により求めた、お互いに入り組んだ複雑な凹凸形状を有するA層とB層の界面について、その界面の形態を次のとおり定めた。
即ち、前記逃げ面特定領域に形成されている硬質被覆層について、工具基体表面に沿って100nm間隔で、工具基体表面と垂直な方向に、A層とB層の界面と工具基体表面との距離dを、工具基体表面に垂直な方向に測定した場合、測定した距離dの最大値dmax1−6と最小値dmin1−6の差d1−6が、400nm≦d1−6≦1200nmとなるような界面の形態とする。
これは言いかえれば、A層とB層の界面の工具基体表面からの高さ位置(あるいは硬質被覆層表面からの深さ位置)が所定の凹凸状態を有すること、即ち、最小で400nmの高低差を有し、該高低差は1200nmを超えないこと、を意味する。
このように定めたのは、d1−6が400nmより小さいと、A層とB層の界面の凹凸差が不十分であるため、アンカー効果によるA層とB層の密着性向上効果が十分でなくなり、一方、d1−6が1200nmより大きいと、工具基体表面と平行な方向におけるB層の亀裂進展分散効果が低下するため、耐チッピング性、耐剥離性が低下するという理由による。
前記アンカー効果をより確実に高めるためには、前記逃げ面特定領域に形成されている硬質被覆層について、工具基体表面と平行な方向に1μm間隔で5つの区間(即ち、区間1−2,区間2−3,区間3−4,区間4−5,区間5−6)に等分し、かつ、各区間において100nm間隔で、A層とB層の界面と工具基体表面との距離dを、工具基体表面に垂直な方向に測定し、それぞれの区間で測定した距離dの最大値dmax1−2、dmax2−3、dmax3−4、dmax4−5、dmax5−6と、それぞれの区間で測定した距離dの最小値dmin1−2、dmin2−3、dmin3−4、dmin4−5、dmin5−6の差d1−2、d2−3、d3−4、d4−5、d5−6を求めた場合に、すべての区間における差d1−2、d2−3、d3−4、d4−5、d5−6が、いずれも前記d1−6の0.3倍以上となるような界面の形態とする。
このように定めることによって、少なくとも1μmの周期で、d1−6の0.3倍以上となるA層とB層の界面の凹凸が形成されていることになるから、より一層のアンカー効果がもたらされ、これによってA層とB層の密着性がより高まり、その結果、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性がより一層向上する。
また、前記A層とB層の界面形態によるアンカー効果を十分に発揮させるためには、前記逃げ面特定領域に形成されている硬質被覆層について、100nm間隔で、工具基体表面と硬質被覆層の表面との距離Dを工具基体表面に垂直な方向に測定した場合、測定した距離Dの最大値Dmax1−6と最小値Dmin1−6の差D1−6は、前記d1−6の0.5倍以下であることが望ましい。
これは、前記D1−6が前記d1−6の0.5倍を超えると、工具基体の凹凸に対して、A層とB層の界面の凹凸差が不十分なため、A層とB層の界面のアンカー効果が低下し、A層とB層の密着性が低下するという理由による。また、前記D1−6が大きな値を持つことで切削抵抗の高い硬質被覆層が形成され、チッピング、欠損等が発生する可能性が増大するという理由による。
硬質被覆層の成膜方法:
本発明の硬質被覆層は、例えば、以下の方法によって成膜することができる。
図3(a)、(b)に、本発明の(Al,Cr)N層を成膜するための、AIP(アークイオンプレーティング)装置の概略図を示す。
図3(a)、(b)に示すAIP装置内に、所定の成分組成のターゲット(例えば、70原子%Al−30原子%Cr合金からなるターゲット)を配置するとともに、WC基超硬合金、TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体をAIP装置の回転テーブル上に載置し、工具基体に対するボンバード前処理を行った後、例えば、成膜初期には、工具基体に対してバイアス電圧を印加するとともに、工具基体の温度を510℃に保持し、アーク電流値が100Aとなるようなアーク放電を発生させ、かつ、バイアス電圧を一定に維持したまま成膜を継続し、アーク放電で発生したイオンをバイアス電圧で加速させて工具基体表面に突入させることによって生成される熱エネルギーの発生による温度上昇を監視し、成膜後期においてバイアス電圧を変更して工具基体の最終到達温度を535℃まで上昇させることにより、A層の粗粒の成長表面にランダムに突入するイオンによって確率的に形成される微粒が、ひとたび微粒が形成されるとその近傍に選択的に微粒が形成される傾向を反映して、A層とB層からなり、かつ、A層とB層がお互いに入り組んだ複雑な凹凸形状の界面を有する本発明の硬質被覆層を成膜することができる。
なお、工具基体表面の温度は、バイアス電圧が印加される温度測定用のダミー工具の表面に熱電対を設置して代表値として取得することで、本発明の工具を形成できることを確認している。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、ここでは、代表的な工具基体として炭化タングステン基超硬合金(以下、「WC基超硬合金」で示す。)を用い、AlとCrの複合窒化物((Al,Cr)N)層を形成した場合について記載するが、工具基体として、TiCN基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素基焼結体を用いた場合であっても、同様の結果が得られることを確認している。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意した。これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した。その後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体に押出しプレス成形し、得られた圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温した。さらに、この温度で1時間保持した後、炉冷の条件で焼結して、直径が10mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成した。さらに上記丸棒焼結体から、研削加工にて、切刃部の直径×長さが10mm×22mmの寸法で2枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)を製造した。
(a)上記の工具基体を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図2(a)、(b)に示すAIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着した。そして、AIP装置の一方にボンバード洗浄用のTiカソード電極を、他方側に所定の組成のAl−Cr合金からなるターゲット(カソード電極)を配置した。
(b)ついで、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒータで工具基体を400℃に加熱した後、上記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、工具基体表面はボンバード洗浄される。
(c)ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して2.8〜4.5Paの反応雰囲気とし、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表2に示す成膜初期のバイアス電圧を印加し、工具基体を表2に示す成膜初期温度に加熱し、このバイアス電圧を一定値に維持しながら、Al−Cr合金ターゲットとアノード電極との間に表2に示すアーク電流を流してアーク放電を発生させて成膜を開始し、成膜を継続し、所定の目標平均層厚の半分に達する成膜後期に、バイアス電圧値を表2に示す成膜後期のバイアス電圧に変更することにより、所定の目標平均層厚に達する直前の工具基体の温度が表2に示す温度に達するようにして、表4に示される組成および目標平均層厚の(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成した。
上記の工程(a)〜(c)により、本発明の被覆工具としての表面被覆エンドミル1〜10(以下、本発明1〜10という)をそれぞれ製造した。
比較例:
比較の目的で、上記実施例1における(c)の工程を、表3に示す条件で実施し、その他は実施例1と同一の条件で、表5に示される組成および目標平均層厚の(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成した比較例の被覆工具としての表面被覆エンドミル1〜10(以下、比較例1〜10という)をそれぞれ製造した。
なお、表2、表3でいう、成膜初期、成膜後期とは、それぞれ、成膜開始時および目標平均層厚の半分の層厚に達する成膜段階をいう。
上記で作製した本発明1〜10の逃げ面特定領域(被覆工具の工具基体の逃げ面上の刃先から、逃げ面上で逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた位置までの領域)について、その断面をSEM(倍率:50000倍)にて観察し、逃げ面特定領域における工具基体表面と硬質被覆層との界面を50等分(即ち、逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた領域を、100nm毎に50等分)して線形近似し、この線を工具基体表面であるとした。
ついで、硬質被覆層のSEM反射電子像を縦1024ピクセル、横768ピクセルの画素数で撮影し、各ピクセル毎に白黒の濃淡を256階調で数値化し、前記逃げ面特定領域において、工具基体表面から50nm毎の高さで、前記SEM反射電子像の硬質被覆層の部分に、工具基体表面と平行な方向に直線を引き、直線上で96階調以上白黒の濃淡が変化する点を結晶粒界と特定し、前記逃げ面特定領域の所定の位置と該位置に対応する所定の高さに存在する結晶粒の幅Wを測定した。
そして、前記で求めた結晶粒の幅Wが30nm以上である結晶粒群はA層に属するとし、一方、結晶粒の幅Wが30nm未満である結晶粒群はB層に属するとして、A層及びB層を特定し、さらに、A層とB層の界面を特定した。
また、A層とB層の界面は、前記逃げ面特定領域において、工具基体表面から工具基体表面に垂直な方向に100nmの高さ位置と、硬質被覆層の表面から工具基体表面に垂直な方向に100nmの深さ位置の間に存在していることを確認した。
そして、前記逃げ面特定領域において、工具基体表面から工具基体表面に垂直な方向に100nmの高さ位置に存在する結晶粒の値を測定するとともに、その平均値をWとして求め、また、硬質被覆層表面から工具基体表面に垂直な方向に100nmの深さ位置に存在する結晶粒の値を測定するとともに、その平均値をWとして求めた。
ついで、前記逃げ面特定領域に形成されている硬質被覆層について、工具基体表面と平行な方向に100nm間隔で、A層とB層の界面と工具基体表面との距離dを、工具基体表面に垂直な方向に測定し、距離dの最大値dmax1−6と最小値dmin1−6及びその差d1−6(=dmax1−6−dmin1−6)を求めた。
さらに、前記逃げ面特定領域に形成されている硬質被覆層について、工具基体表面と平行な方向に1μm間隔で5つの区間、即ち、区間1−2,区間2−3,区間3−4,区間4−5,区間5−6、に等分し、かつ、各区間において100nm間隔で、A層とB層の界面と工具基体表面との距離dを、工具基体表面に垂直な方向に測定し、それぞれの区間における距離dの最大値dmax1−2、dmax2−3、dmax3−4、dmax4−5、dmax5−6と、それぞれの区間における距離dの最小値dmin1−2、dmin2−3、dmin3−4、dmin4−5、dmin5−6を求め、さらに、前記の各区間における最大値と最小値差d1−2、d2−3、d3−4、d4−5、d5−6を求め、前記で求めたd1−6に対する比率(=dn−(n+1)/d1−6)を算出した(但し、n=1〜5)。
また、逃げ面特定領域に形成されている硬質被覆層について、工具基体表面と平行な方向に100nm間隔で、工具基体表面と硬質被覆層の表面との距離Dを測定し、測定した距離Dの最大値Dmax1−6と最小値Dmin1−6から、最大値Dmax1−6と最小値Dmin1−6の差D1−6を求め、前記で求めたd1−6に対する比率(=D1−6/d1−6)を算出した。
表4、表5に、前記で測定・算出した値を示す。
Figure 2019155537
Figure 2019155537
Figure 2019155537
Figure 2019155537
Figure 2019155537
つぎに、上記本発明1〜10および比較例1〜10のエンドミルについて、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCM450の板材、
回転速度:300min−1
縦方向切り込み:15mm、
横方向切り込み:3mm
送り速度(1刃当り):2500mm/min、
切削長:180m、
の条件で、SCM450の側面切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定し、また、切刃、逃げ面特定領域における損耗状況を観察した。
表6に、その結果を示す。
Figure 2019155537
表6に示される結果から、本発明の被覆工具は、硬質被覆層が、異なる結晶組織を有するA層とB層によって構成され、A層は、工具基体側に形成され、結晶粒の平均幅が相対的に大きな粗粒結晶組織を有し、一方、B層は、硬質被覆層表面側に形成され、結晶粒の平均幅が相対的に小さな微粒結晶組織を有し、しかも、前記A層と前記B層の界面は、A層とB層が入り組んだ複雑な凹凸形状を有する界面として形成されていることから、刃先に断続的・衝撃的な高負荷が作用する炭素鋼、合金鋼などの高速断続切削加工において、耐摩耗性と共に、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性にすぐれる。
これに対して、比較例の被覆工具は、層全体にわたって、均質な結晶組織を有することから、あるいは、異なる結晶組織を有するA層とB層によって構成されていても、本発明で規定する条件を備えないことから、チッピング、欠損、剥離等の発生により、工具寿命が短命となっている。
以上のとおり、本発明被覆工具は、炭素鋼、合金鋼などの高速断続切削加工に供した場合でも長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (4)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット及び立方晶窒化ホウ素基焼結体のいずれかからなる工具基体の表面に、平均層厚が1〜10μmの硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、AlとCrの複合窒化物であり、
    (b)前記工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた位置の領域上に形成されている硬質被覆層において、前記工具基体と硬質被覆層の界面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの高さ位置にある結晶粒の、工具基体の表面と平行な方向に測定された結晶粒の平均幅をWとし、硬質被覆層の表面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの深さ位置にある結晶粒の、工具基体の表面と平行な方向に測定された結晶粒の平均幅をWとした場合、30nm≦W≦100nm、かつ、3nm≦W≦20nmを満足し、
    (c)前記結晶粒の平均幅がWである結晶粒群からなるA層は工具基体側に、また、前記結晶粒の平均幅がWである結晶粒群からなるB層は硬質被覆層表面側に、それぞれ形成されており、前記A層と前記B層の界面は、工具基体と硬質被覆層の界面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの高さ位置と、硬質被覆層の表面から工具基体の表面に垂直な方向に100nmの深さ位置との間に存在しており、
    (d)前記工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた位置の領域上に形成されている硬質被覆層について、100nm間隔で前記工具基体表面と前記A層と前記B層の界面との距離dを工具基体表面に垂直な方向に測定した場合、測定された距離dの最大値dmax1−6と最小値dmin1−6の差d1−6は、400nm≦d1−6≦1200nmを満足する、
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて、それぞれ、1μm〜2μm、2μm〜3μm、3μm〜4μm、4μm〜5μm、5μm〜6μm離れた位置の各区間に形成されている硬質被覆層について、100nm間隔で前記工具基体表面と前記A層と前記B層の界面との距離dを工具基体表面に垂直な方向に測定した場合、それぞれの区間において測定された距離dの最大値dmax1−2、dmax2−3、dmax3−4、dmax4−5、dmax5−6と、それぞれの区間において測定された距離dの最小値dmin1−2、dmin2−3、dmin3−4、dmin4−5、dmin5−6の差d1−2、d2−3、d3−4、d4−5、d5−6は、いずれも前記d1−6の0.3倍以上であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記工具基体の逃げ面上の刃先から、前記逃げ面上で前記逃げ面刃先から反対側に向けて1μm〜6μm離れた位置の領域上に形成されている硬質被覆層について、100nm間隔で前記工具基体表面と前記硬質被覆層の表面との距離Dを工具基体表面に垂直な方向に測定した場合、測定された距離Dの最大値Dmax1−6と最小値Dmin1−6の差D1−6は、前記d1−6の0.5倍以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記硬質被覆層が、
    組成式:(AlCr1−x)N
    で表される(ただし、xは原子比で、0.40≦x≦0.80)AlとCrの複合窒化物層であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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