JP2019152666A - ジカウイルスを検出する方法及びキット - Google Patents

ジカウイルスを検出する方法及びキット Download PDF

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Abstract

【課題】 試料中の自己抗体による影響を回避し、ジカウイルスを特異的かつ高感度で検出し得る免疫学的手法を提供すること。【解決手段】 抗原抗体反応の前に、酸性溶液で試料を前処理することにより、試料中の自己抗体と検出対象抗原との間で形成された複合体を解離させ、検出用抗体による抗原の検出感度を顕著に向上させることができることを見出した。【選択図】 なし

Description

本発明は、前処理液及びジカウイルスNS1タンパク質に特異的な抗体を利用したジカウイルスの免疫学的検出法、及び、当該免疫学的検出法を利用してジカウイルス感染症の診断を補助する方法に関する。また、本発明は、これら方法に用いられるキットに関する。
ジカウイルスはフラビウイルス科に属する1本鎖RNAの球形ウイルスであり、2つの遺伝子型(アフリカ型とアジア型)が存在する。ヒトは、ネッタイシマカやヒトスジシマカといった媒介蚊に刺されることにより感染する。臨床的特徴は、2〜12日間の潜伏期の後に、全身の不快感、倦怠感といった前駆的症状にはじまり、突然の発熱、頭痛、全身の筋肉痛などが出現する。時にギランバレー症候群を引き起こす可能性や、妊婦への感染では小頭症児の発生が指摘されている。このため、ジカウイルスの流行地域からの入国者や帰国者について、ジカウイルスに感染の疑いがある場合には、ジカウイルス感染の診断を行う必要がある。
ジカウイルス感染の診断においては、遺伝子増幅法(RT−PCR)によるウイルス遺伝子の検査やウイルスの分離が行われているが、前者は、特別な設備が必要であり、後者は、多くの時間と手間を要する。
一方、血清中の抗体(IgMやIgG)を検出する血清学的検査も行われているが、フラビウイルス科に属する他のウイルスとの交差反応性(偽陽性)の問題が指摘されている。最近になり、ジカウイルスNS1タンパク質を利用することで、交差反応性の問題を低減させることが可能であることが報告された(非特許文献1)。
しかしながら、血清学的検査は、直接ジカウイルスを検出するものではなく、例えば、ジカウイルスに対する抗体が生じていない感染初期には適用できないという本質的問題を避けることができない。
そこで、ジカウイルスのNS1タンパク質に対する抗体を利用した免疫クロマトグラフィーによる検出法が開発されている(特許文献1)。
特開2017−207335号公報
Steinhagen K et al. Euro Surveill. 2016;21(50):pii=30426.
しかしながら、本発明者らが、ジカウイルスのNS1タンパク質(ジカウイルスNS1タンパク質)に対する抗体を利用して、ヒト由来の試料中のジカウイルスの検出を試みたところ、陰性検体と測定値に明確な差異が認められず、偽陰性と判定され得るケースが見出された(実施例1の「前処理なし」を参照のこと)。その要因の一つとして、ヒト血液中に生成されるジカウイルスに対する抗体(以下、「自己抗体」とも称する)による、検出対象抗原と検出用抗体との抗原抗体反応の阻害が考えられた。そこで、本発明は、このような試料中の自己抗体による影響を回避し、ジカウイルスを特異的かつ高感度で検出し得る免疫学的手法を提供することを目的とする。また、本発明は、アジア株かアフリカ株かを問わず、広範にジカウイルスを検出し得る免疫学的手法を提供することをも目的とする。さらなる本発明の目的は、これら免疫学的手法に用いられるキットを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、検出対象抗原と検出用抗体との抗原抗体反応の前に、酸性の溶液(酸性前処理液)で試料を前処理することにより、試料中の自己抗体と検出対象抗原との間で形成された複合体を解離させ、前記検出用抗体による前記検出対象抗原の検出感度を顕著に向上させることができることを見出した。また、前記酸性前処理液に界面活性剤及び/又はタンパク質変性剤を添加することにより、検出感度をさらに向上させることができることを見出した。さらに、本発明者らは、この検出系において特に優れた感度をもたらし、広範なジカウイルスに適用可能なモノクローナル抗体及びその組み合わせを同定することにも成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、酸性の前処理液及びジカウイルスNS1タンパク質に特異的な抗体を利用したジカウイルスの免疫学的検出法、当該免疫学的検出法を利用してジカウイルス感染症の診断を補助する方法、並びに、これら方法に用いられるキットに関し、より詳しくは、以下を提供するものである。
[1]試料中のジカウイルスを検出する方法であって、
酸性の前処理液で試料を処理する前処理工程と、
前処理工程後の試料中に含まれるジカウイルスNS1タンパク質を、ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体から選択される少なくとも1種の抗体を用いたイムノアッセイにより検出する工程と、
を含むことを特徴とする方法;
[2]前記前処理液が、下記(1)〜(4)の成分から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、[1]に記載の方法。
(1)陽イオン性界面活性剤
(2)両性界面活性剤
(3)非イオン性界面活性剤
(4)タンパク質変性剤;
[3]前記前処理液が陽イオン性界面活性剤を含み、前記陽イオン性界面活性剤が、分子内に炭素数8〜16のアルキル基と第四級アンモニウム基とを有する陽イオン性界面活性剤である、[2]に記載の方法;
[4]前記前処理液が両性界面活性剤を含み、前記両性界面活性剤が、分子内に炭素数8〜16のアルキル基と第四級アンモニウム基とを有する両性界面活性剤、又は、分子内にベンジル基と第四級アンモニウム基とを有する両性界面活性剤である、[2]に記載の方法;
[5]前記前処理液が両性界面活性剤を含み、前記両性界面活性剤が、ステロイド骨格と第四級アンモニウム基とを有する両性界面活性剤である、[2]に記載の方法;
[6]前記前処理液が非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤である、[2]に記載の方法;
[7]前記前処理液がタンパク質変性剤を含み、前記タンパク質変性剤が、グアニジン及び尿素から選択される少なくとも1種である、[2]に記載の方法;
[8][1]〜[7]のうちのいずれかに記載の方法に用いるためのキットであって、
酸性の前処理液と、
ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体から選択される少なくとも1種の抗体を含む反応液と、
を少なくとも備えるキット;
[9]前記ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体がモノクローナル抗体であり、かつ、下記(a)又は(b)の特徴を有する、[1]〜[7]のうちのいずれかに記載の方法又は[8]に記載のキット;
(a)配列番号1の260−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片に結合する、
(b)配列番号1の1−176番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片に結合する;
[10]前記イムノアッセイが、抗原捕捉用抗体と検出用抗体とを用いたサンドイッチイムノアッセイであり、前記抗原捕捉用抗体及び前記検出用抗体の少なくとも一方が、(a)又は(b)の特徴を有するモノクローナル抗体である、[9]に記載の方法又はキット;
[11](a)の特徴を有するモノクローナル抗体が、さらに、配列番号1の260−310番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片及び300−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片には結合しないという特徴を有する、[9]又は[10]に記載の方法又はキット;
[12](a)の特徴を有するモノクローナル抗体が、配列番号1の280−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片に結合し、かつ260−310番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片及び300−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片には結合しないという特徴を有する、[11]に記載の方法又はキット;
[13](b)の特徴を有するモノクローナル抗体が、さらに、配列番号1の83−141番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片及び89−264番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片に結合するという特徴を有する、[9]又は[10]に記載の方法又はキット;
[14]ジカウイルス感染症の診断を補助する方法であって、
酸性の前処理液で試料を処理する前処理工程と、
前処理工程後の試料中に含まれるジカウイルスNS1タンパク質を、ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体から選択される少なくとも1種の抗体を用いたイムノアッセイにより検出する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
本発明の方法によれば、試料中にジカウイルスに対する自己抗体が存在する場合でも、特異的かつ高感度でジカウイルスを検出することができる。さらに、ジカウイルスのアジア株とアフリカ株との双方を高感度で検出することもできる。
本発明の一実施形態に係る免疫測定器具(イムノクロマトグラフィーの検出器具)の主要部の模式断面図である。 本発明の一実施形態に係る免疫測定器具(イムノクロマトグラフィーの検出器具)の模式平面図である。 本発明の一実施形態に係る免疫測定器具(イムノクロマトグラフィーの検出器具)の模式断面図である。
本発明は、試料中のジカウイルスを検出する方法、及び、ジカウイルス感染症の診断を補助する方法を提供する。
本発明の試料中のジカウイルスを検出する方法、及びジカウイルス感染症の診断を補助する方法(以下、「本発明の方法」と称する)は、試料中に含まれるジカウイルスNS1タンパク質を、ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体から選択される少なくとも1種の抗体を用いたイムノアッセイにより検出する工程を含む。
本発明において、「ジカウイルスの検出」には、前記イムノアッセイによりジカウイルスNS1タンパク質の存在の有無を確認する検出の他、ジカウイルスNS1タンパク質の量の定量又は半定量も含まれる。
本発明において「ジカウイルス」とは、フラビウイルス科に属する+鎖のRNAウイルスの1種であり、ジカウイルス感染症(ジカ熱)の原因となるウイルスを意味する。
本発明に用いられる「試料」としては、ジカウイルスが存在し得る試料である限り特に制限はない。ジカウイルス感染症の診断の補助を目的とする場合、前記試料としては、一般的には、診断対象(好ましくはヒト)から採取された血液検体又は尿検体等の検体が用いられる。血液検体は、好ましくは血清又は血漿である。
本発明において「ジカウイルスNS1タンパク質」とは、ジカウイルスのNS1タンパク質であり、「NS1タンパク質」とは、ジカウイルスの非構造タンパク質の1つであり、典型的には、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するものである。
本発明の方法は、前記イムノアッセイの前に、酸性の前処理液で前記試料を処理する前処理工程を含む。試料中に検出対象抗原(ジカウイルスNS1タンパク質)に対する自己抗体が存在する場合、当該自己抗体が検出対象抗原との間で複合体を形成し、続いて行われる検出用抗体(ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体)と検出対象抗原との間の抗原抗体反応を阻害し、引いては試料中の抗原の検出感度を低下させてしまう。しかしながら、本発明に係る前処理工程を行うことにより、このような自己抗体による影響を抑制して検出感度を顕著に向上させることができる。
前記酸性の前処理液(以下、「酸性前処理液」と称する)は酸性化剤を含有するものであり、該酸性化剤を用いて調製することができる。「酸性化剤」としては、例えば、塩酸、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、リン酸、ギ酸、フマル酸、酒石酸、及び硫酸を挙げることができるが、これらに制限されない。酸性化剤は、単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。本発明に係る酸性前処理液は、例えば、緩衝液をベースに調製することができる。前記緩衝液としては特に制限はないが、酸性条件下で緩衝作用を示すものが好ましい。好ましい緩衝液としては、例えば、グリシン塩酸緩衝液やクエン酸緩衝液などが挙げられる。本発明に係る酸性前処理液のpH値は、当該酸性前処理液が試料と混合された後のpH値が、通常、4.5以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下(例えば、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下)となるように適宜調整される。試料との混合後に上記の所定のpHとなるようにするために、前記酸性前処理液自体のpH値は、通常、上記の所定のpHよりも強い酸性を有する。このような酸性前処理液のpHは、試料との混合比率などに応じて変動し得るが、通常、4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下(例えば、2.0以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下)である。
本発明に係る酸性前処理液の好ましい態様においては、前記酸性化剤に加えて、さらに、界面活性剤及び/又はタンパク質変性剤を含む。
「界面活性化剤」は、水溶液中で表面張力を低下させる化合物であり、分子内に親水性部分と疎水性部分とをもつ。本発明に用いられる界面活性剤としては、試料中に含まれる自己抗体と検出対象抗原との複合体の解離作用があれば特に制限はなく、例えば、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、いずれか単独で、若しくは組み合わせて、及び/又は下記のタンパク質変性剤と組み合わせて、用いることができる。
前記陽イオン性界面活性剤の例としては、分子内に疎水性のアルキル基と第四級アンモニウム基とを有する陽イオン性界面活性剤が挙げられる。前記アルキル基としては、直鎖アルキル基を有するものが好ましく、前記直鎖アルキル基を有するものは、典型的には、CH−(CH)n−N(CH・ハロゲン化物イオン(nは自然数、ハロゲン化物イオンは、例えば、Br、Cl)の構造を有する。前記アルキル基の炭素数は8〜16のものが好ましく、12〜16のものがより好ましく、12〜14のものがさらに好ましい。好ましい陽イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、C12TAC(ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、C14TAC(テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、C16TAC(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、C8TAB(オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド)、C9TAB(ノニルトリメチルアンモニウムブロマイド)、C12TAB(ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド)が挙げられる。
前記両性界面活性剤の例としては、分子内に疎水性のアルキル基と、第四級アンモニウム基を含む親水性部分とを有する両性界面活性剤が挙げられる。前記疎水性のアルキル基としては、直鎖アルキル基又はベンジル基が好ましい。前記親水性部分には、スルホネート基、カルボキシル基、及びホスファチジル基からなる群より選択される少なくとも一つのマイナス電荷を有する置換基が含まれることが好ましい。前記直鎖アルキル基を有するものは、典型的には、CH−(CH)n−N(CH−[(CH−SO ](nは自然数)の構造を有する。前記アルキル基の炭素数は8〜16が好ましく、12〜16がより好ましく、12〜14がさらに好ましい。好ましい直鎖アルキル基を有する両性界面活性剤の具体例としては、例えば、N−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート(C12APS)、N−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート(C14APS)が挙げられる。また、好ましいベンジル基を有する両性界面活性剤の具体例としては、例えば、N−ベンジル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート(NDSB−256)が挙げられる。
その他の両性界面活性剤の具体例としては、例えば、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−[(3−クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホネート(CHAPSO)など、分子内に疎水性のステロイド骨格と、第四級アンモニウム基とを含む親水性部分とを有する両性界面活性剤が挙げられる。
前記非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤が挙げられ、その中でも、ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルが好ましい。好ましいポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルの具体例としては、例えば、TritonX(TritonX−100、TritonX−305、TritonX−405、TritonX−705など)が挙げられる。
また、複数の界面活性剤を組み合わせて用いる場合の好ましい具体例としては、例えば、C12TACとTritonX−100との組み合わせが挙げられる。
本発明に係る酸性前処理液中の上記界面活性化剤の濃度としては、0.15〜20%、特に0.5〜10%、さらに1.0〜5.0%とすることが好ましい。特に、前記酸性前処理液が試料と混合された後の濃度が0.1〜5.0%、好ましくは0.17〜3.3%となるように適宜調整される。例えば、試料と混合した際にn倍に希釈されることを意図しているのであれば、予め、n倍の濃度の界面活性剤を含む酸性前処理液として調製すればよい。なお、このときの「%」は、重量/容量パーセントである。
「タンパク質変性剤」は、タンパク質の高次構造を変化させる作用を有する化合物である。本発明に用いられるタンパク質変性剤としては、試料中に含まれる自己抗体と検出対象抗原との複合体の解離作用があれば特に制限はないが、タンパク質の水素結合を切断するカオトロピック変性剤が好ましい。前記カオトロピック変性剤としては、例えば、グアニジン及び尿素が挙げられる。ここで「グアニジン」には、その塩又は誘導体も含まれる。グアニジン塩としては、例えば、グアニジン塩酸塩、グアニジン炭酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジンスルファミン酸塩が挙げられ、グアニジン誘導体としては、例えば、グアニジノ安息香酸、グアニジノグルタル酸、グアニジノコハク酸、グアニジノ酢酸、グアニジノプロピオン酸、グアニジノベンズイミダゾールが挙げられるが、これらに制限されない。タンパク質変性剤は、これらをいずれか単独で、若しくは組み合わせて、及び/又は前記界面活性剤と組み合わせて、用いることができる。
本発明に係る酸性前処理液中の上記タンパク質変性剤の濃度としては、0.1〜8M、特に0.3〜6M、さらに0.5〜4Mとすることが好ましい。特に、前記酸性前処理液が試料と混合された後の濃度が0.01〜4M、好ましくは0.33〜2.7Mとなるように適宜調整される。例えば、試料と混合した際にn倍に希釈されることを意図しているのであれば、予め、n倍の濃度のタンパク質変性剤を含む酸性前処理液として調製すればよい。
前記界面活性剤と前記タンパク質変性剤との組み合わせの好ましい具体例としては、例えば、C12TAC又はTritonX−100とグアニジンとの組み合わせが挙げられる。
本発明に係る前処理工程としては、試料と前記酸性前処理液とを混合することでこれらを反応させることが好ましい。前記試料と前記酸性前処理液との混合液の前記前処理工程におけるpH値(前処理時におけるpH値)としては、通常、4.5以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下(例えば、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下)である。また、前記前処理工程における処理温度は、通常、15〜100℃であり、好ましくは30〜80℃である。室温で行ってもよい。また、処理時間は、通常、1〜180分であり、好ましくは3〜60分である。当業者であれば、目的とする自己抗体と検出対象抗原との解離を行うのに有効な処理温度及び処理時間をそれぞれ適宜選択することができる。
本発明の方法としては、上記前処理工程に続いて、前記イムノアッセイの前に、必要に応じて、前記試料と酸性前処理液との混合液に中和液をさらに混合して溶液を中和する中和工程をさらに含んでもよい。前記中和工程をさらに要する場合としては、例えば、イムノアッセイに用いる抗体の耐酸性が低い場合や、前記酸性化剤が検出シグナルに直接影響を与える場合(イムノクロマトグラフィーなど)が挙げられる。
前記中和液のpHは、例えば7.0〜12であることが好ましい。前記中和液は、塩基性物質を含有することが好ましい。「塩基性物質」としては、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属(例えば、一価金属、二価金属)の水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等の金属(例えば、一価金属、二価金属)の炭酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の金属(例えば、一価金属、二価金属)の炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の金属(例えば、一価金属)のリン酸塩;ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等の金属(例えば、一価金属)のホウ酸塩;アンモニア)、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環化合物)、及びこれらの2種以上(例えば、2種、3種、4種又は5種)の混合物が挙げられる。
前記中和液には、pH緩衝剤がさらに含有されていてもよい。「pH緩衝剤」としては、上記pH範囲に適した緩衝剤であれば特に限定されず、例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、Tris、Tricine、Bicin、イミダゾール、トリエチルアミン、グリシルグリシン、MES、HEPES、MOPS、MOPSO、CAPS、CAPSO、TES等、通常pH緩衝剤として広く使用されているものをいずれも使用可能である。
前記中和液には、さらに、必要に応じて、BSA、カゼイン、グロブリン等の吸収剤;アジ化ナトリウム等の保存剤がさらに含有されていてもよい。
また、本発明の方法において、前記イムノアッセイが、抗原捕捉用抗体と検出用抗体とを用いたサンドイッチイムノアッセイであり、前記抗原捕捉用抗体として磁性粒子に固相化した固相化抗体を使用する場合においては、前記中和液は、前記磁性粒子を含む粒子液を構成するバッファーとして使用することもできる。この場合前記粒子液は、長期保存によって固相化抗体の活性を低下させないpH、例えば、pH7.0〜8.0程度とすることが好ましい。
本発明の方法は、上記前処理工程及び必要に応じて前記中和工程に続いて、前処理工程後の試料中に含まれるジカウイルスNS1タンパク質を、ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体から選択される少なくとも1種の抗体を用いたイムノアッセイにより検出する工程を含む。
本発明に係るジカウイルスNS1タンパク質に対する「抗体」は、好ましくはモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、完全な抗体のみならず、抗体断片であってもよい。抗体断片としては、例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、単鎖抗体、ダイアボディーが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明に係るジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体として特に好ましいモノクローナル抗体は、以下の(a)又は(b)の特徴を有するもの(以下、「本発明に係るモノクローナル抗体」と称する)であり、ジカウイルスと同じフラビウイルス科に属するデングウイルスには反応しないため高い特異性を有する。
(a)配列番号1の260−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片に結合する(以下、「特徴(a)モノクローナル抗体」と称する)。
(b)配列番号1の1−176番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片に結合する(以下、「特徴(b)モノクローナル抗体」と称する)。
本発明に係る「特徴(a)モノクローナル抗体」の好ましい態様は、さらに、配列番号1の260−310番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片及び300−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片には結合しないという特徴を有する(以下、場合により「特徴(a1)モノクローナル抗体」と称する)。このような特徴(a1)モノクローナル抗体としては、本実施例に記載の抗体A、C、及びDが挙げられる(表1)。さらに、本発明の「特徴(a1)モノクローナル抗体」のより好ましい態様は、配列番号1の280−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片に結合し、かつ、260−310番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片及び300−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片には結合しないという特徴を有する(以下、場合により「特徴(a2)モノクローナル抗体」と称する)。このような特徴(a2)モノクローナル抗体としては、本実施例に記載の抗体C及びDが挙げられる(表1)。その結合特性から、抗体A、C及びDに代表されるこれら抗体は、ジカウイルスNS1タンパク質のコンフォメーションエピトープを認識する抗体であると考えられる。
本発明に係る「特徴(b)モノクローナル抗体」の好ましい態様は、さらに、配列番号1の83−141番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片及び89−264番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片に結合するという特徴を有する。このようなモノクローナル抗体としては、本実施例に記載の抗体Bが挙げられる(表1)。
本発明に係るジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体は適宜従来公知の方法によって作製することができ、例えば、本発明に係るモノクローナル抗体の作製においては、本実施例の調製例に記載のように、まず、組換えジカウイルスNS1タンパク質を免疫原として多くのハイブリドーマを作製し、その中から、当該ジカウイルスNS1タンパク質に対して高い反応性を示すモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選抜し、さらに、選抜したハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体のエピトープ解析を行って、上記特徴(a)又は(b)を有するモノクローナル抗体を産生するクローンを同定すればよい。
ハイブリドーマ法としては、代表的には、ケーラーよびミルスタインの方法(Kohler&Milstein,Nature,256:495(1975))が挙げられる。この方法における細胞融合工程に使用される抗体産生細胞は、抗原(標的タンパク質、その部分ペプチド、又はこれらを発現する細胞など)で免疫された動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ラクダ、アルパカ、ニワトリ)の脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血白血球などである。免疫されていない動物から予め単離された上記の細胞又はリンパ球などに対して、抗原を培地中で作用させることによって得られた抗体産生細胞も使用することが可能である。ミエローマ細胞としては公知の種々の細胞株を使用することが可能である。抗体産生細胞及びミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、好ましくは、同一の動物種起源のものである。ハイブリドーマは、例えば、抗原で免疫されたマウスから得られた脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞との間の細胞融合により産生され、その後のスクリーニングにより、抗原に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。抗原に対するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマを培養することにより、また、ハイブリドーマを投与した哺乳動物の腹水から、取得することができる。
また、本発明に係るモノクローナル抗体は、例えば、当該抗体をコードするDNAが取得できれば、組換えDNA法によって作製することができる。この方法は、上記抗体をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞などからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(例えば哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、組換え抗体として産生させる手法である(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS、Vandamme A.M. et al.,Eur.J.Biochem.192:767−775(1990))。抗体をコードするDNAの発現においては、重鎖又は軽鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよく、重鎖及び軽鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよい(例えば、国際公開第94/11523号参照)。組換え抗体は、上記宿主細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液から分離・精製し、実質的に純粋で均一な形態で取得することができる。抗体の分離・精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている方法を使用することができる。トランスジェニック動物作製技術を用いて、抗体遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物(ウシ、ヤギ、ヒツジ又はブタなど)を作製すれば、そのトランスジェニック動物のミルクから、抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である。
本発明に係るジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)としては、標識物質を結合させた標識抗体として使用することができる。標識物質としては、抗体に結合させて検出できるものであれば特に制限はないが、例えば、アルカリホスファターゼ(ALP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、βガラクトシダーゼ(β−gal)などの酵素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やローダミンイソチオシアネート(RITC)などの蛍光色素、アロフィコシアニン(APC)やフィコエリスリン(R−PE)などの蛍光タンパク質、125Iなどの放射性同位元素、金属粒子、アビジン、ビオチン、ラテックスなどが挙げられる。
標識物質として酵素を用いた場合には、基質として、発色基質、蛍光基質、あるいは化学発光基質などを添加することにより、基質に応じて種々の検出を行うことができる。
標識物質を結合させた本発明に係るジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)(標識抗体)を用いてジカウイルスNS1タンパク質を直接的に検出する方法以外に、前記抗体には標識物質を結合させず、標識物質が結合した二次抗体などを利用して間接的に検出する方法を利用することもできる。ここで「二次抗体」とは、本発明に係るジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)に対して反応性を示す抗体である。例えば、本発明に係るモノクローナル抗体をマウス抗体として調製した場合には、二次抗体として抗マウスIgG抗体を使用することができる。ウサギ、ヤギ、マウスなどの様々な生物種に由来する抗体に対して、使用可能な標識二次抗体が市販されており、本発明に係るモノクローナル抗体の由来する生物種に応じて、適切な二次抗体を選択して使用することができる。二次抗体に代えて、標識物質を結合させたプロテインGやプロテインAなどを用いることも可能である。
本発明に係るジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)又は前記二次抗体と標識物質との結合には、ビオチン−アビジン系を利用することもできる。この方法においては、例えば、本発明に係るモノクローナル抗体をビオチン化し、これに、アビジン化した標識物質を作用させ、ビオチンとアビジンとの相互作用を利用して、本発明に係るモノクローナル抗体に標識物質を結合させる。
本発明に用いるイムノアッセイ(免疫学的検出法)の検出原理としては、高感度な検出システムを構築することができる点で、サンドイッチ法が好適である。サンドイッチ法においては、固相化した抗原捕捉用抗体(固相化抗体)で検出対象物質を捕捉し、それを標識物質が結合した検出用抗体(標識抗体)に認識させ、洗浄後、標識物質の種類に応じた検出を行う。固相としては、例えば、プラスチックプレートなどのプレート、ニトロセルロースなどの繊維状物質、磁性粒子やラテックス粒子などの粒子を用いることができる。
抗原捕捉用抗体は固相に直接固定してもよいが、間接的に固定してもよい。例えば、抗原捕捉用抗体に結合する物質を固相に固定し、当該物質に抗原捕捉用抗体を結合させることにより、抗原捕捉用抗体を固相に間接的に固定することができる。抗原捕捉用抗体に結合する物質としては、例えば、上記の二次抗体、プロテインG、プロテインAなどが挙げられるが、これらに制限されない。また、抗原捕捉用抗体がビオチン化されている場合には、アビジン化した固相を利用することができる。
サンドイッチ法においては、抗原捕捉用抗体及び検出用抗体の少なくとも一方に、本発明に係るモノクローナル抗体を用いることができる。この場合、他の一方の抗体は、ジカウイルスNS1タンパク質に結合し得る限り、本発明に係るモノクローナル抗体以外の抗体を用いることができる。他の一方の抗体は、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。
好ましい態様においては、抗原捕捉用抗体及び検出用抗体の双方が、本発明に係るモノクローナル抗体であり、かつ、ジカウイルスNS1タンパク質に同時に結合可能な2種の(抗原捕捉用抗体と検出用抗体とで互いに異なる)本発明に係るモノクローナル抗体である。これにより感度及び特異性に特に優れた検出系を構築することができる。このようなジカウイルスNS1タンパク質に同時に結合可能な2種のモノクローナル抗体の組み合わせは、2種の「特徴(a)モノクローナル抗体」であっても、2種の「特徴(b)モノクローナル抗体」であってもよく、「特徴(a)モノクローナル抗体」と「特徴(b)モノクローナル抗体」との組み合わせであってもよい。
2種の「特徴(a)モノクローナル抗体」としては、例えば、本実施例に記載の抗体A、C、及びDから選択される2種のモノクローナル抗体が挙げられる。また、「特徴(a)モノクローナル抗体」と「特徴(b)モノクローナル抗体」との組み合わせとしては、本実施例に記載の抗体A、C、及びDから選択されるモノクローナル抗体と抗体Bとの組み合わせが挙げられる。
また、抗原捕捉用抗体又は検出用抗体の一方に、2種以上の本発明に係るモノクローナル抗体を混合したものを用いてもよく、抗原捕捉用抗体及び検出用抗体の双方に、それぞれ、2種以上の本発明に係るモノクローナル抗体を混合したものを用いてもよい。これにより検出感度を向上させ得る。
これらの抗原捕捉用抗体と検出用抗体との組み合わせの中でも、ジカウイルスNS1タンパク質の定量により好適であるという観点からは、抗原捕捉用抗体及び検出用抗体の双方が本発明に係るモノクローナル抗体であり、かつ、2種の「特徴(a)モノクローナル抗体」であるか、又は、「特徴(a)モノクローナル抗体」と「特徴(b)モノクローナル抗体」との組み合わせであることが好ましい。また、前記組み合わせが2種の「特徴(a)モノクローナル抗体」の組み合わせである場合には、互いに異なる2種の「特徴(a2)モノクローナル抗体」同士の組み合わせであることがさらに好ましい。
試料中のジカウイルスNS1タンパク質を定量する場合には、ELISA、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)等の、マイクロプレートのウェルやビーズ(自動化の観点から、より好ましくは磁性ビーズ)を固相とするサンドイッチ法が好ましい。得られた測定値からのジカウイルスNS1タンパク質量の特定は、一般的に、標準検体による測定値との比較により行うことができる。この場合、例えば、標準検体による測定値に基づいて作成された標準曲線上のどの位置に、実際の測定値が位置づけられるかを調べることにより、試料中のジカウイルスNS1タンパク質量を求めることができる。
一方、より簡便かつ迅速にジカウイルスを検出するには、イムノクロマトグラフィーが好適である。以下、図1〜3に、イムノクロマトグラフィーのデバイス(検出器具)の一例の概略図を示し、これを参照しながら本発明の一実施形態を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。イムノクロマトグラフィーのデバイスの一態様について説明すると、当該デバイス1は、ニトロセルロース膜のような多孔性素材からなるマトリクス2上に、抗原捕捉用抗体をライン状(円状、点状等任意の形状であってよい)に固相化した検出ゾーン6と、その上流側に、標識物質を結合させた検出用抗体(標識抗体)を担持した標識試薬ゾーン4を含む。通常、標識試薬ゾーン4は、標識抗体を担持した多孔性のパッドにより構成される。マトリクス2の上流端には、展開液を貯蔵した展開液槽11が設けられている。さらに、通常、上記検出ゾーン6の下流に、標識抗体の展開を確認するために抗標識抗体をライン状(任意の形状であってよい)に固相化した展開確認部10と、さらにその下流に、展開液を吸収するための多孔性の吸収パッドが設けられた展開液吸収ゾーン5が設けられている。さらに、標識が酵素標識である場合には、標識試薬ゾーン4よりも上流に、標識酵素の基質を担持した基質ゾーン7が設けられる。
使用時には、検体9を標識試薬ゾーン4中の検体ゾーン8に添加し、押し込み部12を加圧して突起部13を移動させることにより、展開液パッド3を展開液槽11に挿入し、展開液パッド3を通じて展開液をマトリクス2に供給する。展開液が基質ゾーン7を通過する際に基質が展開液中に溶出され、基質を含む展開液が流動する。展開液が標識試薬ゾーン4を通過する際に、標識抗体と検体とが展開液中に溶出され、基質、標識抗体及び検体を含む展開液が流動する。検体中にジカウイルスが含まれる場合には、該ウイルスのNS1タンパク質と標識抗体とが、抗原抗体反応により結合し、これらが検出ゾーン6に到達すると、検出ゾーン6において、固相化抗体(抗原捕捉用抗体)とジカウイルスNS1タンパク質とが抗原抗体反応により結合する。その結果、ジカウイルスNS1タンパク質を介して標識抗体が検出ゾーン6に固定される。こうして検出ゾーン6における標識を測定することにより、ジカウイルスが検出されることになる。検体中にジカウイルスが含まれていない場合には、標識抗体は検出ゾーン6に固定されず、さらに下流に移動するため、検出ゾーン6において標識は検出されない。なお、検出ゾーンの下流の展開確認部10には、抗標識抗体が固相化されているため、標識抗体は展開確認部10に固定されることになる。よって、展開確認部10に標識が検出された場合、展開液が正しく展開されたことを意味する。展開液は、最終的に、その下流の展開液吸収ゾーン5の吸収パッドに吸収される。
また、本発明は、上記本発明の方法に用いるためのキットを提供する。本発明のキットは、本発明に係る酸性前処理液と、ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体から選択される少なくとも1種の抗体を含む反応液と、を少なくとも備える。前記反応液は、例えば、上記の緩衝液をベースに調製することができる。
本発明の方法がサンドイッチ法を検出原理とする方法を利用する場合には、固相化した抗原捕捉用抗体(固相化抗体)と検出用抗体の少なくとも一方の抗体が、本発明に係るジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)である。さらに、標準検体試薬(各濃度)、対照試薬、試料の希釈液、希釈用カートリッジ、洗浄液などを組み合わせることができる。酵素標識を利用した場合には、標識の検出に必要な基質や反応停止液などを含めることができる。検出用抗体を標識しない場合には、例えば、当該検出用抗体に結合する物質を標識したものをキットに含めることができる。
前記サンドイッチ法として、イムノクロマトグラフィーを採用する場合には、抗原捕捉用抗体が検出ゾーンに固定化された膜担体と標識抗体を担持しているパッドとを備えたデバイスをキットに含めることができる。当該デバイスは、展開液パッドや吸収パッドなど、イムノクロマトグラフィーに適したその他の構成要素を備えることができる。
なお、イムノクロマトグラフィーを採用する場合、本発明の方法によって試料の前処理工程を行うことで、展開時間が短くなる傾向が見られた。これは、本発明に係る前処理工程により、試料中の成分の凝集等が抑えられ、分散されることで、メンブレンの孔を通過しやすくなったためと考えられる。
本発明のキットには、さらに、当該キットの使用説明書を含めることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例において、「%」の表示は、特に記載のない場合は、重量/容量(w/v(g/mL))パーセントを示す。また、本実施例において、検体No.は各表で共通であるが、試験例番号は各表でそれぞれ独立している。
[調製例1−1]抗ジカウイルスNS1タンパク質モノクローナル抗体の作製
免疫原としては、組換え(リコンビナント)ジカウイルス(アフリカ株)NS1タンパク質(#ZIKV−NS1、The Native Antigen Company製)を1%SDSの存在下、96℃で10分間加熱して変性させた、変性ジカウイルスNS1タンパク質(以下、「変性抗原」とも称する)を使用した。変性抗原をマウスに免疫し(腹腔内投与、投与量10μg/匹、免疫回数3〜5回)、常法のハイブリドーマ法により、免疫原に対する抗体を産生するハイブリドーマを作製した。
[調製例1−2]抗体スクリーニング
抗体スクリーニングは、ELISAを用いて実施した。調製例1−1の変性抗原をPBSで希釈し、0.1〜0.2μg/mLの溶液を調製した。これを96穴マイクロウェルプレートに50μLずつ分注し、37℃で1時間、又は4℃で一晩コーティングさせた。1%スキムミルク・PBS、又は2%BSA・PBSでブロッキングした後、1〜10倍希釈したハイブリドーマ培養上清を各50μL/ウェル分注し、37℃で1時間反応させた。PBSTで洗浄後、POD標識抗マウスIgG抗体を50μL/ウェル分注し、37℃で30分〜1時間反応させた。PBSTで洗浄後、TMB基質系で発色を行い、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度を測定した。複数のハイブリドーマについて前記のスクリーニングを2回実施し、特に高い吸光度を示す4種のハイブリドーマA〜Dを選出した。
[調製例1−3]モノクローナル抗体のエピトープ解析(ELISA)
ジカウイルスNS1タンパク質のリコンビナント抗原を調製し、調製例1−2の4種のハイブリドーマA〜Dより産生される4種のモノクローナル抗体(抗体A〜D)について、ELISAを用いて各ペプチドとの親和性を調査した。リコンビナント抗原は、次の方法で調製した。352アミノ酸からなるジカウイルスNS1タンパク質(配列番号1、GenBank Accession No.:KU365780)の全長cDNAを人工合成し、PCR法により所望のDNA断片を増幅した。全長cDNA及び各DNA断片を公知の発現ベクターに組込んで大腸菌に導入し、発現したリコンビナント抗原をカラムにて回収・精製した。この方法により、リコンビナント抗原として、配列番号1の1−176番目、83−141番目、89−264番目、260−352番目、260−310番目、280−352番目及び300−352番目のアミノ酸配列からなるリコンビナントペプチド断片、及び配列番号1の全長(1−352番目)からなるリコンビナントNS1タンパク質を調製した。
各リコンビナント抗原(ペプチド断片及びNS1タンパク質)について、PBSで希釈して2μg/mLの溶液を調製し、96穴マイクロウェルプレートに50μLずつ分注した。37℃で1時間コーティングさせた後、2%BSA/PBSを150μL/ウェル加え、4℃で一晩ブロッキングした。PBSTで洗浄し、次いで、抗体A〜Dを希釈液A(5%牛血清、1%BSA、0.1%カゼインナトリウム、100μg/mLマウスイムノグロブリンを含むPBS)で2.5μg/mLに調製し、各50μL/ウェル分注し、37℃で1時間反応させた。PBSTで洗浄後、アルカリホスファターゼ標識抗マウスIgG抗体を50μL/ウェル分注し、37℃で1時間反応させた。PBSTで洗浄後、AMPPD溶液(ルミパルス(登録商標)基質液(富士レビオ社製)を50μL/ウェル分注して37℃で5分間発光させ、マイクロプレートリーダーにて発光量を測定した。結果を表1に示す。表1において、リコンビナント抗原の各数字は配列番号1におけるアミノ酸番号(領域)を示す。
表1の結果より、抗体A〜Dのエピトープは、配列番号1の表2に示す領域と推察された。抗体Aは、260−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片には反応するが、260−310、300−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片には反応しないこと、抗体C及びDは、260−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片及び280−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片には反応するが、260−310番目、300−352番目のアミノ酸配列からなるペプチド断片には反応しないことから、いずれも、コンフォメーションエピトープを認識する抗体であることが推察された。
[参考例1]サンドイッチELISAによるジカウイルス検出
抗体A〜Dを固相化した96穴マイクロウェルプレートと、抗体A〜Dをビオチン標識した標識抗体をそれぞれ組み合わせたサンドイッチELISAにより、ジカウイルス(アフリカ株(AF)・アジア株(BR)各1株)及びデングウイルス(DV)1株のリコンビナントNS1タンパク質の検出を行った。AFのリコンビナントNS1タンパク質(AF抗原)は、調製例1−1に記載のものを使用した。BR(#ZNS118−R−100)のリコンビナントNS1タンパク質(BR抗原)はAlpha diagnostics International社より購入し、DV(#PIP047A)のリコンビナントNS1タンパク質(DV抗原)はBio−Rad Laboratories社より購入した。各リコンビナント抗原を希釈液B(50mM Tris、150mM 塩化ナトリウム、0.1% Triton X−100、pH8.0)で希釈し、5ng/mLのAF抗原溶液、5ng/mLのBR抗原溶液、及び500ng/mLのDV抗原溶液をそれぞれ調製した。
抗体A〜DをそれぞれPBSで希釈し、10μg/mLの溶液を調製した。これを96穴マイクロウェルプレートに100μLずつ分注し、37℃で1時間コーティングさせた。次いで、2%BSA・PBS溶液を250μL/ウェル分注し、4℃で一晩ブロッキングした。これをPBSTで洗浄して、各抗体の固相化プレートを調製した。
前記抗体の固相化プレートに、前記AF抗原溶液、BR抗原溶液、及びDV抗原溶液をそれぞれ100μL/ウェル分注し、37℃で30分間反応させた。PBSTで洗浄後、ビオチンで標識した抗体A〜D(0.05μg/mL希釈液B)を100μL/ウェル分注し、37℃で1時間反応させた。PBSTで洗浄後、希釈液で10000倍希釈したアルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジン(#GTX30954、ジェネンテック社製)溶液を100μL/ウェル分注し、37℃で1時間反応させた。PBSTで洗浄後、AMPPD基質液(ルミパルス(登録商標)基質液(富士レビオ社製))を100μL/ウェル分注して10分間発光させ、マイクロプレートリーダーにて発光量を測定した。各ウェルの発光量の値(S)を、同条件でブランク(希釈液Bのみ)を測定した発光量の値(N)で除して、S/N比を求めた。固相化プレートの作製に用いた抗体(固相抗体)とビオチンで標識した抗体(標識抗体)と抗原(AF、BR、DV)との各組み合わせ条件(表3の試験例1〜16)でのS/N比を表3に示す。
試験例12においてのみ、100倍濃度のデングウイルス抗原検出時に「+」となったが、他の試験例ではいずれも「−」となった。試験例12についても、ジカウイルス感染判定のカットオフをS/N比15.0以上とすることで、デングウイルスの交差反応の影響を回避できると考えられる。ジカウイルスの検出において、AF、BRの両方について検出可能であったのは、試験例2、5、7、8、10〜12、及び15であった。ジカウイルス感染判定のカットオフをS/N比3.0以上とした表3では試験例1、6、13の結果がいずれも「−」となったが、イムノクロマトグラフィーによる検出では、少なくともBRについてはいずれの試験例でも検出可能であった(データ示さず)。
[参考例2]CLEIAによるジカウイルス検出
以下の方法で抗体B、C又はDを単独で、あるいは抗体B、C及びDのうち2種を組み合わせて磁性粒子(平均粒径3μm)に固相化させ、6種の抗ジカウイルス抗体固相化粒子を調製した。すなわち、まず、10mM MES緩衝液(pH5.0)中で磁性粒子0.01g/mLに、抗体B、C、D、又は抗体B、C及びDのうち2種を等量組み合わせた混合抗体を、それぞれ、計0.2mg/L添加し、25℃で1時間ゆるやかに撹拌しながらインキュベートした。反応後、磁性粒子を磁石で集磁し、洗浄液(50mM Tris、150mM NaCl、2.0% BSA、pH7.0)で洗浄し、抗ジカウイルス抗体固相化粒子を得た。6種の抗ジカウイルス抗体固相化粒子をそれぞれ粒子希釈液(50mM Tris、150mM NaCl、1mM EDTA、0.5% BSA、0.5% Tween 40、pH7.2)で0.04%に懸濁し、各種粒子液を調製した。
一方、抗体B、C又はDを単独で、あるいはこれらのうち2種を等量組み合わせた混合抗体をアルカリホスファターゼでそれぞれ標識し、6種の標識抗体を調製し、標識抗体希釈液(1.0mM MgCl、0.3mM ZnCl、150mM NaCl、0.5% BSA、0.5% Tween 80、pH6.8)で0.4μg/mLに希釈し、各種標識抗体液を調製した。
調製例1−1及び参考例1で用いたリコンビナントAF抗原及びBR抗原を使用し、ルミパルス(登録商標)用検体希釈液(富士レビオ社製)で希釈し、10、50、100、1000pg/mLのAF抗原溶液、10、50、100、1000pg/mLのBR抗原溶液を調製した。
各抗原溶液について、上記の各種粒子液、各種標識抗体液を用いて、自動分析器ルミパルス(登録商標)L2400(富士レビオ社製)によるジカウイルス検出を行った。各抗原溶液50μLを粒子液と混合し、37℃で8分間反応させた。粒子を集磁してルミパルス(登録商標)洗浄液(富士レビオ社製)で洗浄し、標識抗体液50μLを添加して懸濁させ、37℃で8分間反応させた。再度、粒子を集磁してルミパルス(登録商標)洗浄液で洗浄し、未反応の標識抗体を除去した後、ルミパルス(登録商標)基質液(富士レビオ社製)を200μL添加し、37℃で4分間発光させ、発光量を測定した。表4に、抗ジカウイルス抗体固相化粒子の作製に用いた抗体(粒子抗体)とアルカリホスファターゼで標識した抗体(標識抗体)と抗原との各組み合わせ条件(表4の試験例1〜12)での、実測値(カウント)からブランク値を減じた値を示す。
粒子に抗体Bを単独で用いた系(試験例1〜3)においては、BR抗原との反応が弱く、低濃度の検出が比較的困難であったが、他の条件においては、AF抗原、BR抗原ともに十分な反応が見られた。特に、抗体C及びDのうちの少なくとも一種を粒子に用いた系では、ジカウイルスの種類に関わらず、十分に検出可能であることが示された。
[実施例1]検体の酸性化前処理による感度向上効果
遺伝子増幅検査で血清中のジカウイルスDNAが検出されたパネル検体42検体(血清検体又は尿検体)について、抗体B及びCを固相化した磁性粒子(抗ジカウイルス抗体固相化粒子)を含む粒子液(400mM MOPS、pH8.0)、並びに、アルカリホスファターゼ標識した抗体Dを含む標識抗体液を用いた以外は、参考例2と同様の方法でCLEIAによるジカウイルス検出を行った。併せて、各検体について、抗原抗体反応の前に、酸性化剤を含む酸性前処理液を用いて前処理を行った後に、上記と同様の方法でジカウイルス検出を行い、前処理の有無による測定値の変化を検討した。なお血清検体は、事前に陰性脱脂血清を用いて10倍希釈を行った。また、尿検体は、ルミパルス希釈液(富士レビオ社製)を用いて10倍希釈を行った。
前処理の方法は、以下のとおりである。各検体100μLを、酸性前処理液(51.32g/L 6N 塩酸、18g/L グリシン、2.5% TritonX−705、1.0% C12APS、pH1.0)50μLと混合し、37℃で6.5分間反応させた。前処理後の検体については、検体全量(150μL)を検出に用いた以外は、前処理なしの前記検体と同様の方法でジカウイルス検出を行った。
前処理なし、前処理ありの条件の両方で、各検体毎に陰性脱脂血清5サンプルを用いて同時にアッセイを行い、得られたカウント値の平均+2SDをカットオフ値(CO)とした。各検体について得られたカウント値(S)を、それぞれカットオフ値で除した値(S/CO)を表5に示す。なお、前処理ありの条件は、使用した検体量が多いため、検体量50μL相当となるようS/CO値の補正を行った。補正方法は、「(それぞれの検体のカウント値−陰性脱脂血清5検体のカウント値平均)/2+陰性脱脂血清5検体のカウント値平均」である。
測定した全42検体のうち、7検体(No.4、9、10、15、21、32及び41)において、前処理による測定値の顕著な上昇が見られた。1検体のみ尿検体(No.12)で前処理による測定値低下がみられたが、判定結果に影響を与えるほどの低下はなく、他の検体では前処理なしとありの条件とで判定結果に差がなかった。これらの検体は自己抗体による影響がない検体であると考えられる。他方、前処理による測定値の上昇が見られた血清検体5検体のうち3検体(検体No.4、21、及び32)は、市販キットによるジカウイルスIgM又はIgGの検出結果が陽性であった。これより、酸性前処理液による前処理工程によって、より感度よくジカウイルス抗体を用いた抗原検出が可能となることが確認された。
[実施例2]酸性化前処理の至適pHの検討
以下の方法で、ジカウイルス陽性・自己抗体陰性モデル検体(抗体陰性検体)及びジカウイルス陽性・自己抗体陽性モデル検体(抗体陽性検体)を調製した。ジカウイルスNS1タンパク質をコードする全長cDNA(配列番号1)を人工合成し、公知の発現ベクターに組込んで大腸菌に導入し、発現したリコンビナント抗原をカラムにて回収・精製し、配列番号1の全長からなるリコンビナントNS1タンパク質を調製した。前記リコンビナントNS1タンパク質をルミパルス(登録商標)用検体希釈液で希釈し、10ng/mLの抗原溶液を調製し、抗体陰性検体とした。併せて、抗体B、C及びDを等量含む混合抗体を、上記抗原溶液に計1μg/mLとなるよう添加し、抗体陽性検体とした。
各検体100μLを、表6に示す各組成の酸性前処理液50μLとそれぞれ混合して、37℃で6.5分間反応させた。酸性前処理液による前処理時の検体のpHを表6に示す。前処理後の各検体について、抗体B及びCを固相化した磁性粒子を表6に示す組成の粒子液に懸濁した粒子液と、アルカリホスファターゼ標識した抗体Dを含む標識抗体液とを用いた以外は、参考例2と同様の方法でジカウイルス検出を行った。また、上記検体に代えて、ルミパルス(登録商標)用検体希釈液のみを検体と同様にジカウイルス検出系に供し、得られたカウント値をブランクとした。各条件での測定値(カウント)からブランクの値を減じ、各前処理条件において、同条件における抗体陰性検体の測定値に対する抗体陽性検体の測定値の割合(抗体解離率)を求めた。結果を表6に示す。
表6に示すとおり、検体の前処理時の条件がpH7.2の条件下(試験例9)では抗体解離率が8.7%となり、抗体による検出阻害が見られたが、検体の前処理時のpHを下げることで抗体解離率が高くなり、抗体の影響を低減できることが示された。
[実施例3]酸性化前処理における界面活性剤・タンパク質変性剤の効果
実施例2と同様の方法で、抗体陰性検体及び抗体陽性検体を調製した。また、酸性前処理液(51.32g/L 6N 塩酸、18g/L グリシン、pH1.0)に、表7に示す各界面活性剤又は表8に示すタンパク質変性剤をそれぞれさらに加え、各種酸性前処理液を調製した。
各検体100μLを、各界面活性剤若しくはタンパク質変性剤を未添加の酸性前処理液(試験例2、24)又はこれらを添加した各酸性前処理液50μLとそれぞれ混合して、37℃で6.5分間反応させた。反応後の各検体について、実施例1と同様の方法でジカウイルス検出を行った。上記検出と併せて、酸性前処理液に代えて、ルミパルス(登録商標)用検体希釈液を検体に添加して同様にジカウイルス検出系に供した(試験例1、23)。また、上記検体に代えて、ルミパルス(登録商標)用検体希釈液について各条件で同様にジカウイルス検出系に供し、得られたカウント値をブランクとした。
各条件での測定値(カウント)からブランクの値を減じ、各前処理条件における、抗体陰性検体の測定値に対する抗体陽性検体の測定値の割合(抗体解離率)を算出した。結果を、抗体陰性検体の測定値(カウント、抗体なし)及び抗体陽性検体の測定値(カウント、抗体あり)と共に表7及び表8に示す。また、界面活性剤若しくはタンパク質変性剤を含まない酸性前処理液を用いた際(試験例2、24)の抗体解離率を100とした場合の、各条件での抗体解離率を算出した。各計算値を抗体解離率補正値とし、表7及び表8に示す。
表7及び表8に示すとおり、酸性前処理液に、酸性化剤に加えて、界面活性剤としてTritonX−100、TritonX−305、TritonX−405、C12TAC、C14TAC、C16TAC、C12TAB、C12APS又はC14APS、あるいは、タンパク質変性剤として尿素又はグアニジンを加えることで、抗体解離率が特に向上することが確認された。
[実施例4]酸性化前処理における界面活性剤の至適濃度
実施例2と同様の方法で、抗体陰性検体及び抗体陽性検体を調製した。酸性前処理液(51.32g/L 6N 塩酸、18g/L グリシン、pH1.0)に、表9に示す各濃度のC12TACをそれぞれさらに加え、各種酸性前処理液を調製した。
各検体100μLを、各酸性前処理液50μLとそれぞれ混合して、37℃で6.5分間反応させた。反応後の各検体について、実施例1と同様の方法でジカウイルス検出を行った。上記検体に代えて、ルミパルス(登録商標)用検体希釈液について各条件で同様にジカウイルス検出系に供し、得られたカウント値をブランクとした。
各条件での測定値(カウント)からブランクの値を減じ、各前処理条件における、抗体陰性検体の測定値に対する抗体陽性検体の測定値の割合(抗体解離率)を算出した。結果を、抗体陰性検体の測定値(カウント、抗体なし)及び抗体陽性検体の測定値(カウント、抗体あり)と共に表9に示す。また、界面活性剤を含まない酸性前処理液を用いた際(試験例1)の抗体解離率を100とした場合の、各条件での抗体解離率を算出した。各計算値を抗体解離率補正値とし、表9に示す。
[実施例5]酸性化前処理における界面活性剤・タンパク質変性剤の組み合わせの効果
参考例2で使用したリコンビナント抗原のうち、BR抗原について、ルミパルス(登録商標)用検体希釈液で希釈し、1ng/mLのBR抗原溶液を調製し、ジカウイルス陽性モデル検体(抗体陰性検体)とした。併せて、上記BR抗原溶液に併せて、抗体B、C及びDを等量含む混合抗体を、上記BR抗原溶液に計1μg/mLとなるよう添加し、ジカウイルス陽性/自己抗体陽性モデル検体(抗体陽性検体)とした。酸性前処理液(51.32g/L 6N 塩酸、18g/L グリシン、pH1.0)に、表10に示す各添加剤(界面活性剤及び/又はタンパク質変性剤)をそれぞれさらに加え、各種酸性前処理液を調製した。
各検体100μLを、各酸性前処理液50μLとそれぞれ混合して、37℃で6.5分間反応させた。反応後の各検体について、実施例1と同様の方法でジカウイルス検出を行った。上記検体に代えて、ルミパルス(登録商標)用検体希釈液について各条件で同様にジカウイルス検出系に供し、得られたカウント値をブランクとした。
各条件での測定値(カウント)からブランクの値を減じ、各前処理条件における、抗体陰性検体の測定値に対する抗体陽性検体の測定値の割合(抗体解離率)を算出した。結果を、抗体陰性検体の測定値(カウント、抗体なし)及び抗体陽性検体の測定値(カウント、抗体あり)と共に表10に示す。また、添加剤を含まない酸性前処理液を用いた際の抗体解離率を100とした場合の、各条件での抗体解離率を算出した。各計算値を抗体解離率補正値とし、表10に示す。
[実施例6]イムノクロマトグラフィーによるジカウイルス検出
図1〜3に示すイムノクロマトグラフィーの検出器具を作製した。より具体的には、巾3.7mm、長さ50mmのニトロセルロース膜からなるマトリクス2の一方の末端に展開液吸収ゾーン5を配置し、展開液吸収ゾーン5の末端からマトリクス2の他端方向に15mmの位置に、抗体Dを含む水溶液0.5μLをニトロセルロース膜に点着し乾燥させ、検出ゾーン6を作製した。さらに、展開液吸収ゾーン5の末端から同方向に12mmの位置に、抗アルカリホスファターゼ抗体溶液を点着し乾燥させ、展開確認部10を作製した。また、基質として5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−リン酸二ナトリウム塩(BCIP)溶液0.9μLをライン状に点着して基質ゾーン7を作製した。次いで、ニトロセルロース膜に、抗体B及びCを混合して常法でアルカリホスファターゼ標識した標識抗体を1:1で混合した標識抗体溶液3μLを点着し乾燥させ、標識試薬パッドを作製した。次いで、マトリクス2、展開液パッド3、標識試薬パッド(標識試薬ゾーン4)、及び展開液吸収ゾーン5(高保水性ろ紙)を図1のように重ねて粘着テープで固定した後、展開液槽11を有するプラスチックケースに固定して、図2〜3に示すジカウイルス検出器具を製造した。
ジカウイルス感染者の血清3検体(検体No.21、32、41)について、酸性化剤を含有する酸性前処理液(51.3g/L 6N 塩酸、18g/L グリシン、2.5% TritonX−705、1.0% C12APS、pH1.0)を用いて次の工程で前処理を行い、検体前処理サンプルを調製した。まず、各検体25μLを酸性前処理液12.5μLと混和して、室温で5分間反応させた。次いで、反応後の検体に中和液(400mM MOPS、NaOH(適量)、pH8.0)12.5μLをさらに加えて混和し、室温で1分間反応させた。
上記で製造したジカウイルス検出器具(イムノクロマトグラフィーの検出器具)を使用して、前記ジカウイルス感染者の血清検体の、上記の前処理なしのものと前処理ありのものとについて、ジカウイルスNS1タンパク質の検出を行った。各検体の前処理ありのサンプル20μLを、標識試薬ゾーン4上の検体ゾーン8に滴下した後、変形部材に設けた押し込み部12を下方に加圧して変形させて、変形部材に付設された突起部13によって展開液パッド3を展開液槽11に挿入してその中の展開液を展開液パッド3に供給し、測定を開始した。測定開始15分後、展開確認部10の発色によって展開液の展開を確認した後、検出ゾーン6の発色を目視で確認し、検出ゾーン6の発色時間を測定した。また、この測定と同時に、別途各検体の前処理なしのサンプル20μLをそれぞれジカウイルス検出器具の検体ゾーン8に滴下に滴下して同様に測定を行った。発色時間は、測定開始後、原則として検出ゾーン6の発色が「+w」に達するまでの時間とし、最長30分間まで計測した。各前処理条件における検出ゾーン6の発色時間、並びに、測定開始後15分間経過時及び30分間経過時における発色状態を表11に示す。
いずれの検体においても、前処理を行った場合(前処理あり)では、酸性前処理液によって検体が希釈されているにも関わらず、いずれも前処理を行わなかった場合(前処理なし)と比して顕著に発色時間が短く、かつ、発色が強くなることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、試料中にジカウイルスに対する自己抗体が存在する場合でも、特異的かつ高感度でジカウイルスの存在を検出することが可能となる。ジカウイルスは、ジカウイルス感染症(ジカ熱)の原因となるウイルスであることから、本発明は、研究上の利用にとどまらず、ジカウイルスによる疾患の診断においても大きく貢献し得るものである。
1…検出器具、2…マトリクス、3…展開液パッド、4…標識試薬ゾーン、5…展開液吸収ゾーン、6…検出ゾーン、7…基質ゾーン、8…検体ゾーン、9…検体、10…展開確認部、11…展開液槽、12…押し込み部、13…突起部

Claims (7)

  1. 試料中のジカウイルスを検出する方法であって、
    酸性の前処理液で試料を処理する前処理工程と、
    前処理工程後の試料中に含まれるジカウイルスNS1タンパク質を、ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体から選択される少なくとも1種の抗体を用いたイムノアッセイにより検出する工程と、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記前処理液が、下記(1)〜(4)の成分から選択される少なくとも1つの成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
    (1)陽イオン性界面活性剤
    (2)両性界面活性剤
    (3)非イオン性界面活性剤
    (4)タンパク質変性剤
  3. 前記前処理液が陽イオン性界面活性剤を含み、前記陽イオン性界面活性剤が、分子内に炭素数8〜16のアルキル基と第四級アンモニウム基とを有する陽イオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記前処理液が両性界面活性剤を含み、前記両性界面活性剤が、分子内に炭素数8〜16のアルキル基と第四級アンモニウム基とを有する両性界面活性剤、又は、分子内にベンジル基と第四級アンモニウム基とを有する両性界面活性剤であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  5. 前記前処理液が非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  6. 前記前処理液がタンパク質変性剤を含み、前記タンパク質変性剤が、グアニジン及び尿素から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  7. 請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の方法に用いるためのキットであって、
    酸性の前処理液と、
    ジカウイルスNS1タンパク質に対する抗体から選択される少なくとも1種の抗体を含む反応液と、
    を少なくとも備えることを特徴とするキット。
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