JP2019152598A - 超音波探傷用探触子 - Google Patents

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航大 野村
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Toshihide Fukui
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Abstract

【課題】本発明は、被検査物における検査面が曲面でも、より集音できる超音波探傷用探触子を提供する。【解決手段】本発明の超音波探傷用探触子Pは、超音波で被検査物Obの欠陥を検出する超音波探傷装置に用いられる装置であって、被検査物Ob内で集音するように被検査物Obへ第1超音波を送信する送信用振動子1と、前記第1超音波に基づいて被検査物Obから来た第2超音波を受信する受信用振動子1と、送信用振動子1と被検査物Obとの間に配置され、前記第1超音波を伝播する遅延材2とを備え、遅延材2は、前記第1超音波を放射する放射面が被検査物Obにおける検査面の形状に倣う形状を持ち、前記放射面の形状が内側に凹む凹形状である場合には被検査物Obの第3音速以上の第1音速である第1材料で形成され、前記放射面の形状が外側に突出した凸形状である場合には被検査物Obの第3音速以下の第2音速である第2材料で形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、超音波で被検査物の欠陥を検出する超音波探傷装置に用いられる超音波探傷用探触子に関する。
従来、被検査物における例えば傷、亀裂および接合不良等の欠陥を非破壊で検査する際に、超音波探傷装置が利用されている。この超音波探傷装置は、被検査物へ第1超音波を送信し、前記送信した第1超音波に基づいて前記被検査物から来た第2超音波を受信する超音波探傷用探触子(超音波探傷用プローブ)を備え、前記受信した第2超音波を解析することで、前記欠陥の有無、その位置およびその大きさ(サイズ)等を検出する。
このような超音波探傷装置に用いられる超音波探傷用探触子は、通常、超音波の放射面が平面である。このため、被検査物の検査面が曲面であると、平面の放射面を曲面の検査面に密着できず、検査が困難となる。そこで、例えば特許文献1に、曲面に追随する超音波探傷装置が開示されている。
この特許文献1に開示された超音波探傷装置は、複数の圧電振動子が配列され、曲面形状に変形可能なアレイ圧電振動子と、該アレイ圧電振動子から超音波を発振させる前記圧電振動子を選択する駆動素子選択部と、該駆動素子選択部で選択された圧電振動子から発振される超音波を送受信し、その電気信号を検出する信号検出部と、前記アレイ圧電振動子に応力を加えて所望の曲面形状に変形させる変形調整手段とを備える。前記特許文献1によれば、このような超音波探傷装置では、検出結果に基づいて各圧電振動子と検査対象物表面との距離が測定でき、該測定結果に基づいて変形調整手段によってアレイ圧電振動子を変形させることで、該圧電振動子を検査対象物の表面形状に沿った形状に容易に調整することが可能になる。これにより、個々の圧電振動子が検査対象物の探傷面と略平行になることで、圧電振動子から発信された超音波が検査対象物の探傷面に対し略垂直に入射することが可能になり、測定精度を一層高めることができる。
特開2009−276085号公報
ところで、超音波探傷法には、比較的微小な欠陥に対する検出感度を向上させるために、超音波を被検査物内で集音するように入射させる検出方法がある。このような検出方法の場合、被検査物における検査面が平面である場合には、被検査物内における所定の領域で効果的に集音できるが、前記検査面が曲面であると、被検査物内に超音波が入射する際に生じる発散の影響により、集音し難い場合がある。前記特許文献1に開示された超音波探傷装置は、前記検査面の形状による影響を低減できるが、集音の点が考慮されておらず、効果的に集音することが難しい。
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、被検査物における検査面が曲面でも、より集音できる超音波探傷用探触子を提供することである。
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる超音波探傷用探触子は、超音波で被検査物の欠陥を検出する超音波探傷装置に用いられる超音波探傷用探触子であって、前記被検査物内で集音するように前記被検査物へ第1超音波を送信する送信用振動子と、前記第1超音波に基づいて前記被検査物から来た第2超音波を受信する受信用振動子と、前記送信用振動子と前記被検査物との間に配置され、前記第1超音波を伝播する遅延材とを備え、前記遅延材は、前記第1超音波を放射する放射面が前記被検査物における検査面の形状に倣う形状を持ち、前記遅延材は、前記放射面の形状が内側に凹む凹形状である場合には前記被検査物の第3音速以上の第1音速である第1材料で形成され、前記放射面の形状が外側に突出した凸形状である場合には前記被検査物の第3音速以下の第2音速である第2材料で形成されている。好ましくは、上述の超音波探傷用探触子において、前記受信用振動子は、前記送信用振動子と兼用されている。好ましくは、上述の超音波探傷用探触子において、前記被検査物は、予め決定(指定、規定)されており、前記遅延材は、前記予め決定されている前記被検査物における検査面の形状に倣う形状に形成される。
第1物質から第2物質へ伝播する超音波は、いわゆる音波のスネルの法則に従う。すなわち、第1物質の音速をv1とし、第2物質の音速をv2とし、第1物質と第2物質との界面における法線方向を基準に、入射角をφ1とし、屈折角をφ2とする場合、sinφ1/v1=sinφ2/v2が成り立つ。上記超音波探傷用探触子は、前記放射面(第1放射面)の形状が内側に凹む凹形状である場合には前記被検査物の第3音速以上の第1音速である第1材料で前記遅延材(くさび)が形成される。よって、前記遅延材の第1音速をV1とし、前記被検査物の第3音速をV3とし、入射角をθ1とし屈折角をθ3とすると、V1≧V3、sinθ1/sinθ3=V1/V3>1となるので、sinθ1>sinθ3となり、この結果、遅延材から被検査物へ入射される超音波は、集音する方向に伝播する。一方、上記超音波探傷用探触子は、前記放射面の形状が外側に突出した凸形状である場合には前記被検査物の第3音速以下の第2音速である第2材料で前記遅延材が形成される。よって、前記遅延材の第2音速をV2とし、前記被検査物の第3音速をV3とし、入射角をθ2とし屈折角をθ3とすると、V2≦V3、sinθ2/sinθ3=V2/V3<1となるので、sinθ2<sinθ3となり、遅延材から被検査物へ入射される超音波は、集音する方向に伝播する。したがって、上記超音波探傷用探触子は、被検査物における検査面が曲面でも、より集音できる。上記超音波探傷用探触子は、このようにより集音できるので、所望の領域を探傷できるから、特に、被検査物内の比較的微小な欠陥を探傷する場合に有利である。
他の一態様では、上述の超音波探傷用探触子において、前記送信用振動子は、前記第1超音波を放射する第2放射面が前記第1超音波を前記被検査物内で集音するように曲面形状を持つ。
このような超音波探傷用探触子は、第2放射面を曲面形状に形成するという比較的容易な手法で、第1超音波を被検査物内で集音するように放射できる。
他の一態様では、上述の超音波探傷用探触子において、前記遅延材は、合成石英ガラスで形成されている。
このような超音波探傷用探触子は、被検査物が例えば検査面の形状が外側に突出した凸形状である鋼である場合に、鋼の縦波音速が約5900m/secであってその横波音速が約3200m/secである一方、合成石英ガラスの縦波音速が約5970m/secであってその横波音速が約3760m/secであるので、前記遅延材の第1音速が前記被検査物の第3音速以上である条件を満たすことができる。特に、縦波音速では、前記遅延材の第1音速と被検査物の第3音速との差が約1.12%となり、入射角と屈折角とが略同じとなり、被検査物に入射する際の入射角と屈折角との差が小さくなってより効果的に集音できる。
他の一態様では、上述の超音波探傷用探触子において、前記遅延材は、サファイアガラスで形成されている。
このような超音波探傷用探触子は、被検査物が例えば検査面の形状が外側に突出した凸形状である鋼である場合に、サファイアガラスの縦波音速が約12300m/secであってその横波音速が約6463m/secであるので、前記遅延材の第1音速が前記被検査物の第3音速以上である条件を満たすことができる。縦波音速では、金が約3240m/secであり、亜鉛が約4170m/secであり、銅が約4660m/secであり、チタンが約6100m/secであり、アルミニウムが約6320m/secであるなど、例えば組成、微細構造および温度等で縦波音速値が変動するものの、サファイアガラスの縦波音速は、金属の縦波音速以上であるため、前記遅延材を前記サファイアガラスで形成することで、上記超音波探傷用探触子は、より広範囲な種類の金属(合金を含む)を被検査物として探傷できる。また、サファイアガラスは、耐摩耗性に優れ、高強度である。
本発明にかかる超音波探傷用探触子は、被検査物における検査面が曲面でも、より集音できる。
実施形態における超音波探傷用探触子の構成を示す図である。 一例の被検査物に対する、実施形態の超音波探傷用探触子における集音効果を説明するための図である。 他の一例の被検査物に対する、実施形態の超音波探傷用探触子における集音効果を説明するための図である。 検査面が平面である被検査物に対する、比較例の超音波探傷用探触子における集音効果を説明するための図である。 検査面が曲面である被検査物に対する、比較例の超音波探傷用探触子における集音効果を説明するための図である。
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態における超音波探傷用探触子の構成を示す図である。実施形態における超音波探傷用探触子(超音波探傷用プローブ)は、超音波で被検査物Obの欠陥を検出する超音波探傷装置に用いられる装置(アタッチメント)であり、前記被検査物Obへ超音波(第1超音波)を送信し、前記送信した第1超音波に基づいて前記被検査物Obから来た超音波(第2超音波)を受信する。前記超音波探傷装置は、例えば、超音波探傷装置本体と、超音波探傷用探触子とを備え、前記超音波探傷用探触子で受信した前記第2超音波を前記超音波探傷装置本体で解析することで、前記欠陥の有無、その位置およびその大きさ(サイズ)等を検出する。このような超音波探傷用探触子Pは、例えば、図1に示すように、振動子1と、遅延材2とを備える。
振動子1は、被検査物Ob内で集音するように前記被検査物Obへ第1超音波を送信する素子である。本実施形態では、振動子1は、さらに、前記第1超音波に基づいて前記被検査物Obから来た、例えば第1超音波の反射波等の第2超音波を受信する素子でもある。すなわち、本実施形態では、前記第1超音波を送信する送信用振動子と前記第2超音波を受信する受信用振動子とは、1つの振動子1で兼用されている。振動子1は、電気信号と超音波(超音波信号)との間で相互に信号を変換できる電気機械変換素子である。振動子1は、例えばPVDF(polyvinylidene fluoride、ポリフッ化ビニリデン)等の圧電ポリマー(強誘電体ポリマー)等を備えて構成される圧電素子であり、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波(超音波信号)との間で相互に信号を変換する。振動子1は、図略の超音波探傷装置本体から供給された電気信号(送信信号)に応じて第1超音波(第1超音波信号)を生成して被検査物Ob内で集音するように前記被検査物Obへ送信し、前記第1超音波に基づいて前記被検査物Obから来た第2超音波(第2超音波信号)を受信し、前記受信した第2超音波に応じた電気信号(受信信号)を生成して前記図略の超音波探傷装置本体へ出力する。そして、本実施形態では、振動子1は、前記第1超音波を放射する放射面(振動子1の放射面、第2放射面)RF2が前記第1超音波を前記被検査物Ob内で集音するように曲面形状を持つ。この振動子1における第2放射面RF2の曲率(または曲率半径)は、被検査物Ob内における、予め設定された集音させたい位置(集音位置)、に応じて適宜に設定される。
遅延材(くさび)2は、前記送信用振動子と被検査物Obとの間に配置され、前記第1超音波を伝播する部材である。本実施形態では、上述したように、送信用振動子と受信用振動子とは、1つの振動子1で兼用されている。このため、本実施形態では、遅延材2は、振動子1と被検査物Obとの間に配置され、前記第1および第2超音波それぞれを伝播する。遅延材2は、前記第1超音波を放射する放射面(遅延材2の放射面、第1放射面)RF1が前記被検査物Obにおける検査面DFの形状に倣う形状を持つ。好ましくは前記第1放射面RF1と前記検査面DFとが互いに平行となるように前記検査面DFの形状に対し前記第1放射面RF1の形状が成形される。遅延材2における第1放射面RF1の曲率半径Raは、被検査物Obにおける検査面DFの曲率半径Rに対して+0.1mm以内程度に抑えることが好ましい(R≦Ra≦R+0.1)。より具体的には、遅延材2は、略柱状の部材である。遅延材2の一方端面には、振動子1が配設される。そして、遅延材2の他方端面が、前記第1放射面RF1であって、予め決定(指定、規定)された前記被検査物Obにおける検査面DFの形状に倣う形状に形成されている。したがって、振動子1で生成された第1超音波は、前記一方端面から遅延材2に入射され、遅延材2を伝播し、前記他方端面の第1放射面RF1から射出され、前記第1放射面RF1に接する検査面DFを介して被検査物Obに入射される。前記第1超音波に基づいて前記被検査物Obから来た第2超音波は、前記検査面DFを介して前記他方端面の第1放射面RF1から遅延材2に入射され、遅延材2を伝播し、前記一方端面に接する第2放射面RF2を介して振動子1に入射される。
そして、本実施形態では、遅延材2は、前記第1放射面RF1の形状が内側に凹む凹形状である場合には前記被検査物Obの第3音速以上の第1音速である第1材料で形成され、前記第1放射面RF1の形状が外側に突出した凸形状である場合には前記被検査物Obの第3音速以下の第2音速である第2材料で形成される。このような第1および第2材料は、例えば合成石英ガラスおよびサファイアガラス等の所定の材料である。
このような超音波探傷用探触子Pの一製造例では、まず、例えば合成石英ガラスおよびサファイアガラス等の所定の材料で形成された柱状部材が用意される。前記柱状部材の他方端面が、予め決定(指定、規定)された前記被検査物Obにおける検査面DFの形状に倣う形状に、研磨等で成形される。なお、前記柱状部材を柔らかくしてから、前記柱状部材の他方端面が、前記検査面DFの形状と略同形状の型に押し当てられ、固化後、前記検査面DFの形状に倣う形状に、研磨等で成形されても良い。前記柱状部材の一方端面が、振動子1で発生した第1超音波を被検査物Ob内で集音するように曲面形状に、研磨等で成形される。そして、このような曲面形状に加工された前記柱状部材の一方端面に、例えば振動子1が接着剤による接着で配設される。なお、前記柱状部材の一方端面に、蒸着によって振動子1が形成されることで振動子1が前記柱状部材の一方端面に配設されても良い。これによって超音波探傷用探触子Pが製造される。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。図2は、一例の被検査物に対する、実施形態の超音波探傷用探触子における集音効果を説明するための図である。図3は、他の一例の被検査物に対する、実施形態の超音波探傷用探触子における集音効果を説明するための図である。図4は、検査面が平面である被検査物に対する、比較例の超音波探傷用探触子における集音効果を説明するための図である。図5は、検査面が曲面である被検査物に対する、比較例の超音波探傷用探触子における集音効果を説明するための図である。図2ないし図5において、図Aは、シミュレーションによる超音波による体積ひずみ分布を示し、図Bは、その超音波ピームが界面で屈折する様子を概念的に示す。
まず、比較例として、検査面が平面である被検査物Ob3へ、前記被検査物Ob3内に集音するような曲率(または曲率半径)を持つ振動子1aから超音波を入射させた場合における超音波による体積ひずみ分布がシミュレーションされ、その結果が図4に示されている。シミュレーションでは、高周波水浸探傷法が想定され、振動子1aと被検査物Ob3との間には、水が介在され、超音波解析ソフトであるComWAVE Version7.0.1(伊藤忠テクノソリューションズ(株)提供、ComWAVEは登録商標である)が用いられた。図4に示すように、想定の通りに、振動子1aから水を介して平面の検査面から被検査物Ob3へ入射された超音波は、被検査物Ob3内における所定の位置で効果的に集音されている。
一方、他の比較例として、前記被検査物Ob3に代え、検査面が曲面である、被検査物Ob3と同材質の被検査物Ob4を用い、この点を除き同条件で同様に、超音波による体積ひずみ分布がシミュレーションされ、その結果が図5に示されている。この場合では、図4に示す超音波による体積ひずみ分布と図5に示す超音波による体積ひずみ分布とを比較すると分かるように、振動子1aから水を介して曲面の検査面から被検査物Ob4へ入射された超音波は、前記検査面が曲面であるため、被検査物Ob4内に超音波が入射する際に生じる発散の影響により、効果的に集音できていない。
しかしながら、本実施形態における超音波探傷用探触子Pでは、遅延材2は、前記第1放射面RF1の形状が内側に凹む凹形状である場合には前記被検査物Obの第3音速以上の第1音速である第1材料で形成されている。よって、前記遅延材2の第1音速をV1とし、前記被検査物Obの第3音速をV3とし、入射角をθ1とし、屈折角をθ3とすると、音波のスネルの法則からsinθ1/sinθ3=V1/V3が成り立ち、上記条件V1≧V3から、sinθ1/sinθ3=V1/V3>1となるので、sinθ1>sinθ3となり、この結果、遅延材2から被検査物Obへ入射される超音波は、集音する方向に伝播する。そして、前記第1放射面RF1の形状が外側に突出した凸形状である場合には前記被検査物Obの第3音速以下の第2音速である第2材料で形成されている。よって、前記遅延材2の第2音速をV2とし、前記被検査物Obの第3音速をV3とし、入射角をθ2とし屈折角をθ3とすると、V2≦V3、sinθ2/sinθ3=V2/V3<1となるので、sinθ2<sinθ3となり、遅延材2から被検査物Obへ入射される超音波は、集音する方向に伝播する。
一例では、鋼から成る円柱状の被検査物(円柱鋼)Ob1、Ob2へ、前記被検査物Ob1、Ob2内に集音するような曲率(または曲率半径)を持つ振動子1から超音波を入射させた場合における超音波による体積ひずみ分布がシミュレーションされ、その結果が図2および図3それぞれに示されている。シミュレーションでは、遅延材2の材料は、合成石英ガラスであり(振動子1と被検査物Obとの間には合成石英ガラスが介在され)、上記ComWAVE Version7.0.1が用いられた。超音波の周波数は、50MHzに設定された。図2に示す被検査物Ob1の直径(第1直径)は、図3に示す被検査物Ob2の直径(第2直径)より大きく設定されている。図2および図3では、この点を除き同条件で同様にシミュレーションが実施された。
上述のように、被検査物Ob1、Ob2が例えば検査面の形状が外側に突出した凸形状である鋼である場合に、鋼の縦波音速が約5900m/secであってその横波音速が約3200m/secである一方、合成石英ガラスの縦波音速が約5970m/secであってその横波音速が約3760m/secであるので、前記遅延材2の第1音速V1が前記被検査物Ob1、Ob2の第3音速V3以上である条件を満たすことができる。このような場合に、図2および図3に示すように、被検査物Ob1、Ob2における検査面が曲面でも、図4に示す検査面が平面である被検査物Ob3と同様に、効果的に集音できている。特に、縦波音速では、遅延材2の第1音速V1と被検査物Ob1、Ob2の第3音速V3との差が約1.12%となり、入射角と屈折角とが略同じとなり、被検査物Ob1、Ob2に入射する際の入射角と屈折角との差が小さくなってより効果的に集音できる。図2および図3から分かるように、このような遅延材2の第1音速V1と被検査物Ob1、Ob2の第3音速V3との差が小さい場合、被検査物Ob1、Ob2の曲率によらずに、遅延材2における第1放射面RF1の形状を、被検査物Ob1、Ob2における検査面の形状に倣わせるだけで、略同じ集音位置で集音効果が得られる。
以上説明したように、本実施形態における超音波探傷用探触子Pは、被検査物Obにおける検査面DFが曲面でも、より集音できる。上記超音波探傷用探触子Pは、このようにより集音できるので、所望の領域を探傷できるから、特に、被検査物内の比較的微小な欠陥を探傷する場合に有利である。
上記超音波探傷用探触子Pは、第2放射面RF2を曲面形状に形成するという比較的容易な手法で、第1超音波を被検査物Ob内で集音するように放射できる。
そして、被検査物Obが例えば検査面の形状が外側に突出した凸形状である鋼である場合であって遅延材2がサファイアガラスで形成されている場合、サファイアガラスの縦波音速が約12300m/secであってその横波音速が約6463m/secであるので、前記遅延材2の第1音速V1が前記被検査物の第3音速V3以上である条件を満たすことができる。縦波音速では、金が約3240m/secであり、亜鉛が約4170m/secであり、銅が約4660m/secであり、チタンが約6100m/secであり、アルミニウムが約6320m/secであるなど、例えば組成、微細構造および温度等で縦波音速値が変動するものの、サファイアガラスの縦波音速は、金属の縦波音速以上であるため、前記遅延材2を前記サファイアガラスで形成することで、上記超音波探傷用探触子Pは、より広範囲な種類の金属(合金を含む)を被検査物Obとして探傷できる。また、サファイアガラスは、耐摩耗性に優れ、高強度である。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
P 超音波探傷用探触子
RF1 第1放射面
RF2 第2放射面
Ob、Ob1〜Ob4 被検査物
DF 検査面
1、1a 振動子
2 遅延材

Claims (4)

  1. 超音波で被検査物の欠陥を検出する超音波探傷装置に用いられる超音波探傷用探触子であって、
    前記被検査物内で集音するように前記被検査物へ第1超音波を送信する送信用振動子と、
    前記第1超音波に基づいて前記被検査物から来た第2超音波を受信する受信用振動子と、
    前記送信用振動子と前記被検査物との間に配置され、前記第1超音波を伝播する遅延材とを備え、
    前記遅延材は、前記第1超音波を放射する放射面が前記被検査物における検査面の形状に倣う形状を持ち、
    前記遅延材は、前記放射面の形状が内側に凹む凹形状である場合には前記被検査物の第3音速以上の第1音速である第1材料で形成され、前記放射面の形状が外側に突出した凸形状である場合には前記被検査物の第3音速以下の第2音速である第2材料で形成されている、
    超音波探傷用探触子。
  2. 前記送信用振動子は、前記第1超音波を放射する第2放射面が前記第1超音波を前記被検査物内で集音するように曲面形状を持つ、
    請求項1に記載の超音波探傷用探触子。
  3. 前記遅延材は、合成石英ガラスで形成されている、
    請求項1または請求項2に記載の超音波探傷用探触子。
  4. 前記遅延材は、サファイアガラスで形成されている、
    請求項1または請求項2に記載の超音波探傷用探触子。
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