JP2019151630A - 多官能化合物及びその製造方法、アミック酸化合物及びその製造方法、並びにイミド化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本実施形態に係る多官能化合物は、第一の飽和炭素原子と、第一の飽和炭素原子に結合するアミノ基と、第二の飽和炭素原子と、第二の飽和炭素原子に結合し、−NHC(=O)OHで表されるカルバミン酸基と、を有している。
本実施形態に係る多官能化合物の製造方法は、飽和炭素原子に結合するアミノ基を2以上有するポリアミン化合物と二酸化炭素とを反応させて、ポリアミン化合物が有するアミノ基の一部を、カルバミン酸基に変換する工程を備えている。
本実施形態に係るアミック酸化合物は、アミック酸構造と、−NHC(=O)OHで表されるカルバミン酸基と、アミック酸構造の窒素原子に結合する第一の飽和炭素原子及びカルバミン酸基に結合する第二の飽和炭素原子を含む連結基と、を有している。このようなアミック酸化合物は、上述の多官能化合物と、酸無水物基を有する化合物との反応によって、容易に形成することができる。
本実施形態に係るアミック酸化合物の製造方法は、上述の多官能化合物と酸無水物化合物とを反応させて、多官能化合物が有するアミノ基と酸無水物化合物が有する酸無水物基との反応によりアミック酸構造を形成する工程を備える。
上述のとおり、上記アミック酸化合物を加熱して、アミック酸構造の熱イミド化をすることで、イミド構造を有するイミド化合物を製造することができる。このとき、カルバミン酸基の脱炭酸によってアミノ基が生成する。イミド化合物は、当該アミノ基を更に有していてもよい。
GPC測定法により以下の条件にて、数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを測定した。
機器:島津製作所製「RID−10A/CBM−20A/DGU−20A3,
LC−20AD/DPD−M20A/CTO−20A」
カラム:東ソー社製「TSKgel superHM−N」
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
流速:0.3mL/分
注入量:20μL
濃度:0.1重量%
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン
熱重量分析装置(株式会社リガク製の「Thermo plus Evo TG8120」)を利用して10%重量減少温度を測定した。窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら、走査温度を30℃〜500℃に設定して、昇温速度:10℃/min.の条件で加熱して、用いた試料の重量が10%減少する温度を測定することにより求めた。
5%重量減少温度は、各実施例等で得られたフィルムから、それぞれ2〜4mgの試料を準備し、これをアルミ製サンプルパンに入れ、測定装置として熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA7200」)を使用して、窒素ガス雰囲気下、走査温度を30℃から550℃に設定し、昇温速度10℃/分の条件で加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めた。
全光線透過率の値(単位:%)は、各実施例等で得られたフィルムをそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用いて求めた。全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠し、ヘイズ(濁度)は、JIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。
YIは各実施例等で得られたフィルムをそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の「分光色彩計SD6000」で測定した。黄色度(YI)はASTM E313−05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。求められた測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚み10μmあたりの値に換算した値(換算値)を算出した。
測定装置としてHEIDON 新東科学株式会社製 連続荷重式表面性測定機トライポギア TYPE−22を用いて自動測定を行った。
線膨張係数の測定方法としては、先ず、縦20mm、横5mmの大きさのフィルムを準備し、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、室温から200℃まで昇温(1回目の昇温)し、30℃以下まで放冷した後に、その温度から400℃まで昇温(2回目の昇温)し、その昇温時の前記試料の縦方向の長さの変化を測定した。次いで、このような2回目の昇温時の測定(放冷時の温度から400℃まで昇温する際の測定)で得られたTMA曲線を用いて、100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求め、得られる値をポリイミドの線膨張係数として測定した。
ガラス転移温度(Tg)は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)を使用して引張モードにより測定した。縦20mm、横5mmの大きさのフィルムを測定試料とし、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより求めた。
軟化点は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)を使用してペネトレーションモードにより測定した。縦3mm、横3mmの大きさのフィルムを測定試料とし、窒素雰囲気下、ペネトレーションモード(500mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して測定を行ってTMA曲線を求め、軟化点に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより求めた。
厚み方向のリタデーション(Rth)は、測定装置としてAXOMETRICS社製の商品名「AxoScan」を用い、フィルムの屈折率(589nm)の値を前記測定装置にインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を用いて、フィルムの厚み方向のリタデーションを測定し、求められた厚み方向のリタデーションの測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚み10μmあたりのリタデーション値に換算した値(換算値)を求め、その換算値から絶対値を算出して求めた。
溶液B−1を100℃で1時間撹拌した後、ポリテトラフルオロエチレン製の皿(縦×横×高さ=2cm×2cm×0.5cm)にキャストして成膜し、130℃で加熱乾燥させた。次いで、真空下で200℃で24時間加熱し、更に窒素下で380℃で1時間加熱することで、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムは、上述の方法で評価した。結果を表1に示す。
CHXN溶液及びBPDA溶液の溶媒として、DMAcに代えてDMSOを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にしてポリイミドフィルムの作製を行った。得られたポリイミドフィルムは、上述の方法で評価した。結果を表1に示す。
50mgの4,4’−ビフタル酸無水物(BPDA)を3mLのDMAcに80℃で溶解させ、室温に冷却して、BPDA溶液を得た。また、トランス−1,4−シクロヘキサンジアミン(CHXN)を、1mLのDMAcに80℃で溶解させ、室温に冷却してCHXN溶液を得た。得られたBPDA溶液及びCHXN溶液を混合したところ、速やかに塩(ポリアミック酸塩)が析出し、100℃で加熱撹拌しても溶解せず、キャスト成膜ができなかった。
50mgの4,4’−ビフタル酸無水物(BPDA)を3mLのDMSOに80℃で溶解させ、室温に冷却して、BPDA溶液を得た。また、トランス−1,4−シクロヘキサンジアミン(CHXN)を、1mLのDMSOに80℃で溶解させ、室温に冷却してCHXN溶液を得た。得られたBPDA溶液及びCHXN溶液を混合したところ、速やかに塩(ポリアミック酸塩)が析出し、キャスト成膜ができなかった。
<共重合体の合成>
ノルボルネンと無水マレイン酸との交互共重合により、共重合体P−1を得た。ノルボルネンと無水マレイン酸の仕込み比は1:1(モル比)とし、重合反応は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニル−2−プロパノール中、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をラジカル重合開始剤とし、65℃、20時間の条件で行った。AIBNの使用量は、モノマー成分の総量に対して0.32mol%とした。
共重合体P−1をTHFに溶解させて、共重合体溶液(濃度5質量%)を調製した。この共重合体溶液に対して、共重合体P−1の酸無水物基1当量に対して多官能化合物のアミノ基が0.25当量(カルバミン酸基についても0.25当量)となるように、水溶液A−2を加えた。20分撹拌した後、ポリテトラフルオロエチレン製の基板にキャストして成膜し、25℃で1時間、100℃で1時間乾燥させて自立膜を得た。得られた自立膜を、1mmHgの真空下、200℃で24時間加熱することで、ポリアミック酸をイミド化させて、イミド架橋型樹脂から構成された透明フィルムを得た。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
<イミド架橋型樹脂の製造>
共重合体P−1をシクロペンタノン(CPN)及びTHFの混合溶媒(CPN:THF=1:10)に溶解させて、共重合体溶液を調製した。この共重合体溶液に対して、共重合体P−1の酸無水物基1当量に対して多官能化合物のアミノ基が0.25当量となるように水溶液A−2を加え、更に、下記式で表されるジアミン(以下、DMS−A12と称する。なお、式中のnは3である。)を0.1当量加えた。20分撹拌した後、ポリテトラフルオロエチレン製の基板にキャストして成膜し、25℃で1時間、100℃で1時間乾燥させて自立膜を得た。得られた自立膜を、1mmHgの真空下、200℃で24時間加熱することで、ポリアミック酸をイミド化させて、イミド架橋型樹脂から構成された透明フィルムを得た。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
共重合体P−1の酸無水物基1当量に対する多官能化合物のアミノ基の当量が0.20当量となるように、水溶液A−2の添加量を変更したこと以外は、実施例2−2と同様にして透明フィルムを作製した。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
共重合体P−1の酸無水物基1当量に対する多官能化合物のアミノ基の当量が0.15当量となるように、水溶液A−2の添加量を変更したこと以外は、実施例2−2と同様にして透明フィルムを作製した。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
共重合体P−1を溶解させる溶媒をCPN/THF混合溶媒から、THFに変更したこと以外は、実施例2−2と同様にして透明フィルムを作製した。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
共重合体P−1を溶解させる溶媒をCPN/THF混合溶媒から、THFに変更したこと以外は、実施例2−3と同様にして透明フィルムを作製した。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
共重合体P−1を溶解させる溶媒をCPN/THF混合溶媒から、THFに変更したこと以外は、実施例2−4と同様にして透明フィルムを作製した。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
<多官能化合物の調製>において、BATDを溶解させる溶媒を水からDMAc(ジメチルアセトアミド)に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして透明フィルムを作製した。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
<多官能化合物の調製>において、BATDを溶解させる溶媒を水からDMSO(ジメチルスルホキシド)に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして透明フィルムを作製した。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
<多官能化合物の調製>において、BATDを溶解させる溶媒を水からDMAc(ジメチルアセトアミド)に変更したこと以外は、実施例2−2と同様にして透明フィルムを作製した。得られた透明フィルムを上述の方法で評価した。結果を表2に示す。
共重合体P−1をTHFに溶解させて、共重合体溶液(濃度5質量%)を調製した。この共重合体溶液に対して、ジアミン(BATD)のTHF溶液を徐々に添加したところ、塩形成により不溶化し、キャスト成膜ができなかった。
<共重合体の合成>
反応時間を24時間に変更したこと以外は、実施例2−1の<共重合体の合成>と同様にして、数平均分子量が28000の共重合体P−2を得た。
200mgの共重合体を6mLのTHFに溶解させて、共重合体溶液を得た。次いで、上述のDMS−A12(19.76mg、0.04当量)及びBATD(6.06mg、0.06当量)をTHF2mLに溶解させて、ジアミン溶液を得た。共重合体溶液にジアミン溶液を徐々に添加したところ、ジアミン量が0.1当量を超えた時点でポリアミック酸塩が析出し、キャスト成膜が困難になった。
溶液B−2を100℃で1時間撹拌した後、ポリテトラフルオロエチレン製の皿(縦×横×高さ=2cm×2cm×0.5cm)にキャストして成膜し、90℃で加熱乾燥させたところ黄色透明なポリアミック酸フィルムが得られた。次いで、真空下で200℃で24時間加熱し、更に窒素下で300℃で1時間加熱することで、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムは、上述の方法で評価した。結果を表3に示す。
TAEA付加体に代えて、CO2付加をしていないTAEAを用いてアミック酸化合物の合成を試みたが、アミック酸化合物を含有する溶液中に塩の生成が見られた。また、キャスト製膜を試みたが、形成されたフィルムは脆く、クラックが入っていた。この結果から、塩の生成によりアミック酸化合物の分子量が低く止まったことが示唆された。
Claims (16)
- 第一の飽和炭素原子と、
前記第一の飽和炭素原子に結合するアミノ基と、
第二の飽和炭素原子と、
前記第二の飽和炭素原子に結合し、−NHC(=O)OHで表されるカルバミン酸基と、
を有する、多官能化合物。 - 前記第一の飽和炭素原子及び前記第二の飽和炭素原子を含み、前記アミノ基と前記カルバミン酸基とを連結する連結基を更に有する、請求項1に記載の多官能化合物。
- 前記連結基が、脂環式基、脂肪族基、ポリエーテル基、ポリアミン基及びシロキサン基からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項2に記載の多官能化合物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の多官能化合物を製造する方法であって、
飽和炭素原子に結合するアミノ基を2以上有するポリアミン化合物と二酸化炭素とを反応させて、前記ポリアミン化合物が有する前記アミノ基の一部を、前記カルバミン酸基に変換する工程を備える、多官能化合物の製造方法。 - 前記工程が、前記ポリアミン化合物を含有する水溶液中に、当該水溶液のpHが6〜9になるまで二酸化炭素を吹き込む工程である、請求項4に記載の製造方法。
- 前記工程が、前記ポリアミン化合物を含有する反応溶液中に、前記ポリアミン化合物が有するアミノ基に対して0.25〜0.75当量の二酸化炭素を吹き込む工程である、請求項4に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の多官能化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記多官能化合物が有する前記アミノ基と前記テトラカルボン酸二無水物が有する酸無水物基との反応によりアミック酸構造を形成し、当該アミック酸構造及び前記カルバミン酸基を有するアミック酸化合物を得る工程を備える、アミック酸化合物の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の多官能化合物と不飽和ジカルボン酸無水物単位を有するポリマーとを反応させて、前記多官能化合物が有する前記アミノ基と前記不飽和ジカルボン酸無水物単位中の酸無水物基との反応によりアミック酸構造を形成し、当該アミック酸構造及び前記カルバミン酸基を有するアミック酸化合物を得る工程を備える、アミック酸化合物の製造方法。
- アミック酸構造と、
−NHC(=O)OHで表されるカルバミン酸基と、
前記アミック酸構造の窒素原子に結合する第一の飽和炭素原子及び前記カルバミン酸基に結合する第二の飽和炭素原子を含む連結基と、
を有する、アミック酸化合物。 - 前記連結基が、脂環式基、脂肪族基及びシロキサン基からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項9に記載のアミック酸化合物。
- 酸無水物基を更に有する、請求項9又は10に記載のアミック酸化合物。
- 請求項9〜11のいずれか一項に記載のアミック酸化合物を加熱して、前記アミック酸構造の熱イミド化及び前記カルバミン酸基の脱炭酸によりイミド構造及びアミノ基を形成する工程を備える、イミド化合物の製造方法。
- 酸無水物基の存在下、請求項9〜11のいずれか一項に記載のアミック酸化合物を加熱して、前記アミック酸構造の熱イミド化により形成された第一のイミド構造と、前記カルバミン酸基の脱炭酸により生じたアミノ基と前記酸無水物基との反応により形成された第二のイミド構造と、を有するイミド化合物を得る工程を備える、イミド化合物の製造方法。
- 請求項11に記載のアミック酸化合物を加熱して、前記アミック酸構造の熱イミド化により形成された第一のイミド構造と、前記カルバミン酸基の脱炭酸により生じたアミノ基と前記酸無水物基との分子内又は分子間反応により形成された第二のイミド構造と、を有するイミド化合物を得る工程を備える、イミド化合物の製造方法。
- 請求項9〜11のいずれか一項に記載のアミック酸化合物を含有する、溶液。
- 請求項15に記載の溶液から形成される塗膜の加熱硬化物である、樹脂フィルム。
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