JP2019147936A - 樹脂組成物、硬化物及び電池パック - Google Patents

樹脂組成物、硬化物及び電池パック Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、吸液性に優れたシートを形成し得る樹脂組成物であって、塗工時の作業性に優れた樹脂組成物を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマー、多官能モノマー、光重合開始剤、及び繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物の20℃における粘度が100mPa・s以上である樹脂組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、硬化物及び電池パックに関する。
従来、電子機器の電源として各種の電池が用いられている。例えば、携帯電話やノートパソコンの電源として、小型で大容量の密閉型電池が用いられており、このような密閉型電池としてリチウムイオン非水電解液二次電池パックが広く流通している。一般的な電池パックは、電池ケース内に、電池セルと配線回路基板が収容された構造となっている。
このような電池パックにおいては、電池セルから電解液が漏液すると、配線回路基板の配線を腐食させたり、導電不良を引き起こすという問題があった。そこで、電解液の漏液が起こった場合の解決手段として、電池パック内に電解液を吸収することのできる吸液性シートを電池セルの周辺に配置することが検討されている。例えば、特許文献1には、電池ケース内に電池セル、配線回路基板及び吸液部材が収容された電池パックであって、吸液部材が保持部材によって電池ケース内壁もしくは配線回路基板上に形成された間隙に緩嵌された電池パックが開示されている。
また、特許文献2には、非水溶媒に溶解するホモポリマーを形成可能な単官能モノマー成分と、多官能モノマー成分とを含有するモノマー組成物を光硬化させることで得られる吸液性樹脂層を有する吸液性シートが記載されている。特許文献3には、ポリエチレングリコールアクリレート系モノマーとアミド結合含有アクリル系モノマーとからなる単官能モノマー成分と、多官能モノマー成分とを含有するモノマー組成物を光硬化させることで得られる吸液性樹脂層を有する吸液性シートが記載されている。これらの文献では、支持基材上にモノマー組成物が塗布され、得られた塗布膜に紫外線を照射することで吸液性樹脂層が形成されており、吸液性シートは支持基材と吸液性樹脂層から構成されている。
特開2006−196331号公報 特開2004−311387号公報 特開2004−355997号公報
近年は、電子機器の小型化や薄型化が進められており、これに伴い、吸液性シートには薄膜化が要求される場合がある。吸液性シートを薄膜化するためには、吸液性シートを吸液性樹脂層のみから構成することが考えられるが、このような吸液性シートの加工は難しく、得られるシートが脆弱であるため十分な吸液性を発揮できない場合があった。また、従来の樹脂組成物においては塗工時に液が流出するなどして成膜が困難であったり、所望の厚みを有する吸液性樹脂層を成形できないという課題もあった。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、吸液性に優れたシートを形成し得る樹脂組成物であって、塗工時の作業性に優れた樹脂組成物を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマー、多官能モノマー及び光重合開始剤を含む樹脂組成物に、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを添加し、さらに、樹脂組成物の粘度を所定値以上とすることにより、吸液性に優れたシートを形成し得る樹脂組成物であって、塗工時の作業性に優れた樹脂組成物が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種、
オキシアルキレン基を有するアクリルモノマー、
多官能モノマー、
光重合開始剤、及び
繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物の20℃における粘度が100mPa・s以上である樹脂組成物。
[2] 繊維状セルロースは、イオン性置換基を有する[1]に記載の樹脂組成物。
[3] イオン性置換基はアニオン基であり、アニオン基の対イオンが有機オニウムイオンである[2]に記載の樹脂組成物。
[4] イオン性置換基は、リン酸基またはリン酸基に由来する置換基である[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5] 有機オニウムイオンは、有機アンモニウムイオンである[3]に記載の樹脂組成物。
[6] 繊維状セルロースの含有量は、樹脂組成物の全質量に対して0.1〜30質量%である[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 多官能モノマーの重量平均分子量が200以上3000未満である[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を光硬化させてなる硬化物。
[9] シート状である[8]に記載の硬化物。
[10] 吸液用である[8]又は[9]に記載の硬化物。
[11] 非水液吸液用である[8]〜[10]のいずれかに記載の硬化物。
[12] [1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を光硬化させてなる硬化物、電池セル、及び配線回路基板を含む電池パック。
本発明によれば、吸液性に優れたシートを形成し得る樹脂組成物を得ることができる。さらに、本発明の樹脂組成物は、塗工時の作業性にも優れている。
図1は、リン酸基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図2(a)は、実施例1で得られたシート(硬化物)の様子を示す写真であり、図2(b)は比較例4で得られたシート(硬化物)の様子を示す写真である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、“(メタ)アクリル酸”はアクリル酸及びメタクリル酸の双方、又は、いずれかを表し、“(メタ)アクリレート”はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表す。また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。
(樹脂組成物)
本発明は、窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマー、多官能モノマー、光重合開始剤、及び、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む樹脂組成物に関する。ここで、本発明の樹脂組成物の20℃における粘度は100mPa・s以上である。
本発明の樹脂組成物は、上記構成を有するものであるため、吸液性に優れたシートを形成することができる。ここで、樹脂組成物から形成されるシートの吸液性は、例えば、非水電解液を滴下した後のシートの表面状態を観察した際に、シートに欠陥が生じたり、シート表面に電解液が残留していないことをもって良好であると判断することができる。
さらに、本発明の樹脂組成物は、塗工時の作業性にも優れている。樹脂組成物の塗工時の作業性は、シートを成形する際に、所望の厚みを有するシートを容易に形成し得ることをもって良好であると判定できる。樹脂組成物からシートを成形する際には、スペーサー等の補助具を用いてもよいが、たとえ、スペーサー等の補助具がなくても本発明の樹脂組成物は意図せずに流出したりすることがなく、シート状に加工がしやすい。これは、本発明の樹脂組成物が適度な粘度を有する組成物であるため、塗工が容易であり、その結果、所望の厚みを有するシート状に加工がしやすくなっている。
本発明の樹脂組成物の20℃における粘度は、100mPa・s以上であればよく、200mPa・s以上であることが好ましく、300mPa・s以上であることがより好ましく、400mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、樹脂組成物の20℃における粘度は、13000mPa・s以下であることが好ましく、12000mPa・s以下であることがより好ましい。上記粘度は、樹脂組成物を20℃の環境下にて1時間以上静置した後、回転式レオメーターを用いて、20℃にて回転数20rpmで回転させることで測定される。レオメーターとしては、例えば、Anton Paar社製のMCR−301を用いることができる。樹脂組成物の粘度を上記範囲内とすることにより、樹脂組成物の塗工性をより効果的に高めることができ、シート加工しやすい樹脂組成物が得られる。
上述したように本発明の樹脂組成物は、吸液性に優れたシートを形成し得るものであって、さらに塗工時の作業性に優れたものである。このため、例えば、電池パックに収容される吸液性シート形成用として好ましく用いられる。すなわち、本発明の樹脂組成物は吸液性シート形成用樹脂組成物であることが好ましい。
さらに、本発明の樹脂組成物から成形されたシートは、単層シートとして剥離することもできる。すなわち、本発明の樹脂組成物から得られるシートは、支持基材がなくてもシート形状を維持することができ、単層シートであっても吸液性シートとして機能し得るシートである。そして、本発明の樹脂組成物から成形されたシートは電解液を吸液した後であっても穴あき等が生じることのない強度を有している。また、本発明の樹脂組成物から成形されたシートはゴム状の弾性を有しているため、単層シートとして基材から剥離する際にもシートが破断したり、割れたりすることが抑制されている。このように、本発明の樹脂組成物から成形されたシートは、成形性に優れ、かつ剥離等に耐えうる強度を有している。
本発明の樹脂組成物から形成されるシートの吸液倍率は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、4.5以上であることがさらに好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。シートの吸液倍率は、所定の大きさに切り出したシートを電解液中に2時間浸漬し、浸漬前後のシートの質量から以下の式で算出される。なお、電解液としては、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート LiPF6 1mol/Lを用いる。
吸液倍率=(吸液後のシート質量−吸液前のシート質量)/(吸液前のシート質量)
本発明の樹脂組成物から形成されるシートの体積膨張率は、150%以上であることが好ましく、180%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。また、シートの体積膨張率は、800%以下であることが好ましく、700%以下であることがより好ましく、500%以下であることがさらに好ましい。
なお、シートの体積膨張率は、電解液(1M LiPF6/エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネート=50:50vol%(キシダ化学製))に室温下、約24時間浸漬する前後のシートの体積から、以下の式で算出した値である。
体積膨張率(%)=浸漬後のシート体積/浸漬前のシート体積×100
なお、本発明の樹脂組成物は、窒素原子を含むモノマー及び芳香族環を含むモノマーから選択される少なくとも1種を30〜94質量%、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーを5〜69質量%、多官能モノマーを0.05〜10質量%、光重合開始剤を0.1〜10質量%、及び繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを0.1〜30質量%含むものであることも好ましい。
<アクリルモノマー>
本発明の樹脂組成物は、窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種、及びオキシアルキレン基を有するアクリルモノマーを含む。
窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種の含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種の含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましい。
中でも、本発明の樹脂組成物は、窒素原子を含むアクリルモノマーを含むことが好ましく、この場合、窒素原子を含むアクリルモノマーの含有量が上記範囲内であることが好ましい。樹脂組成物が窒素原子を含むアクリルモノマーを含むことにより、樹脂組成物から形成されるシートの吸液性をより効果的に高めることができる。
オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーの含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。また、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーの含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、70質量%以下であることが好ましく、69質量%以下であることがより好ましい。オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーの含有量を上記範囲内とすることにより、樹脂組成物から形成されるシートの柔軟性を高め、シートのコシを高めることができる。
<<窒素原子を含むアクリルモノマー>>
窒素原子を含むアクリルモノマーは、1分子内に窒素原子を含有するアクリルモノマーである。窒素原子を含むアクリルモノマーとしては、例えば、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、窒素原子を含むアクリルモノマーは、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド及びアクリロイルモルホリンから選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、アクリロイルモルホリンであることが特に好ましい。
窒素原子を含むアクリルモノマーの重量平均分子量は、80〜1000であることが好ましい。なお、窒素原子を含むアクリルモノマーとして、市販品を使用できる。市販品の例としては、KJケミカルズ社製のアクリロイルモルホリン等を挙げることができる。
<<芳香族環を含むアクリルモノマー>>
芳香族環を含むアクリルモノマーは、1分子内に芳香族環を含有するアクリルモノマーである。芳香族環を含むアクリルモノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、ジシクロペンタニルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも芳香族環を含むアクリルモノマーとして、ベンジル(メタ)アクリレートは好ましく用いられる。
芳香族環を含むアクリルモノマーの重量平均分子量は、150〜1000であることが好ましい。なお、芳香族環を含むアクリルモノマーとして、市販品を使用できる。市販品の例としては、大阪有機化学工業社製のビスコート#160等を挙げることができる。
<<オキシアルキレン基を有するアクリルモノマー>>
オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーは、1分子内にオキシアルキレン基を含有するアクリルモノマーである。1つのオキシアルキレン基を構成する炭素数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、2以上4以下であることがさらに好ましい。オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、エトキシポリプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールアクリレート等を挙げることができる。
中でも、オキシアルキレン基を構成する炭素数は2であることが特に好ましい。すなわち、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーは、エチレングリコール基を有するアクリルモノマーであることが好ましい。エチレングリコール基を有するアクリルモノマーにおいてエチレングリコール基とは、−CH2CH2O−である。エチレングリコール基を有するアクリルモノマーは、1分子中にエチレングリコール基を1つ有するものであってもよく、2つ以上有するものであってもよい。中でも、エチレングリコール基を有するアクリルモノマー1分子中におけるエチレングリコール基の数は1〜50であることが好ましく、1〜40であることがより好ましく、1〜30であることがさらに好ましく、1〜25であることが一層好ましく、2〜10であることが特に好ましい。
エチレングリコール基を有するアクリルモノマーは、アルコキシポリエチレングリコールアクリレートであることが好ましい。アルコキシポリエチレングリコールアクリレートが有するアルコキシ基の炭素数は10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。中でも、アルコキシポリエチレングリコールアクリレートは、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレートであることが好ましく、メトキシポリエチレングリコール及びフェノキシポリエチレングリコールから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーの重量平均分子量は、100〜1500であることが好ましく、120〜1200であることがより好ましい。なお、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーとして、市販品を使用できる。市販品の例としては、共栄社化学社製のP−200Aや130Aを挙げることができる。
<<他のアクリルモノマー>>
本発明の樹脂組成物は、上述したアクリルモノマーに加えて、さらに他のアクリルモノマーを含んでいてもよい。他のアクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートや、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレート、アクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート等の酸基含有アクリレートが挙げられる。なお、他のアクリルモノマーの含有量は樹脂組成物中に含まれるアクリルモノマーの全質量に対して50質量%以下であることが好ましい。
<多官能モノマー>
本発明の樹脂組成物は、さらに多官能モノマーを含有することが好ましい。ここで、多官能モノマーとは、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する単量体である。
多官能モノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9−ノナンジオール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、メタクリル酸ビニル等が挙げられる。中でも、多官能モノマーとしては、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール等を用いることが好ましい。
多官能モノマーは反応性二重結合を2つ以上有するものであり、中でも、多官能モノマーは反応性二重結合を2つ以上5つ以下有するものであることが好ましく、2つ以上4つ以下有するものであることがより好ましい。なお、多官能モノマーとしては1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
多官能モノマーとして、市販品を使用できる。市販品の例としては、新中村化学工業株式会社製のA−HD−Nや、共栄社化学社製の14EG−A等が挙げられる。
多官能モノマーの含有量は、樹脂組成物の全質量に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、多官能モノマーの含有量は、樹脂組成物の全質量に対し、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。多官能モノマーの含有量を上記範囲内とすることにより、樹脂組成物からシートを形成した際にシートの強度を高めることができ、吸液性をより効果的に高めることができる。
多官能モノマーの重量平均分子量は、200以上3000未満であることが好ましく、200以上1500未満であることがより好ましく、200以上1000未満であることがさらに好ましい。ここで、多官能モノマーの重量平均分子量は、例えば、以下のようにしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF806L、(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI−2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI−2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μl
較正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320〜2500000迄の10サンプルによる較正曲線を使用する。
<光重合開始剤>
本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤を含有する。このため、本発明の樹脂組成物は光硬化性樹脂組成物であるとも言える。光重合開始剤は、例えば、紫外線により上述したモノマー成分と反応する重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等が挙げられる。
チオキサントン系開始剤として具体的には、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4−ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
なお、光重合開始剤としては1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤として、市販品を使用できる。市販品の例としては、BASF社製、イルガキュア1173、イルガキュア184、イルガキュアTPO、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア651等が挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全質量に対し、0.05質量%以上であることが好ましく0.1質量%以上であることがより好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全質量に対し、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
<微細繊維状セルロース>
本発明の樹脂組成物は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む。本明細書においては、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを微細繊維状セルロースとも言う。なお、繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。
繊維状セルロースの平均繊維幅は、1000nm以下である。繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。なお、繊維状セルロースは、単繊維状のセルロースである。
繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
繊維状セルロースの繊維長は、とくに限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制できる。また、樹脂組成物の粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、とくに限定されないが、たとえば20以上10000以下であることが好ましく、50以上1000以下であることがより好ましい。軸比を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の硬化物(シート)を形成しやすく、樹脂組成物とした際に十分な粘度が得られやすい。また、軸比を上記上限値以下とすることにより、樹脂組成物のハンドリング性を高めることができる。
本実施形態における繊維状セルロースは、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有している。とくに、結晶領域と非結晶領域をともに有し、かつ軸比が高い微細繊維状セルロースは、後述する微細繊維状セルロースの製造方法により実現されるものである。
繊維状セルロースは、イオン性置換基を有することが好ましい。イオン性置換基としては、たとえばアニオン基およびカチオン基のいずれか一方または双方を含むことができる。中でも、イオン性置換基としてアニオン基を有することがとくに好ましい。また、イオン性置換基がアニオン基である場合、その対イオン(カチオン)は有機物からなる1価以上の陽イオンであることが好ましく、有機オニウムイオンであることがより好ましい。
イオン性置換基としてのアニオン基としては、たとえばリン酸基またはリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基またはカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、およびスルホン基またはスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基およびカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることがとくに好ましい。
リン酸基は、たとえばリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基には、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれる。なお、リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮合した基(たとえばピロリン酸基)として繊維状セルロースに含まれていてもよい。
リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、たとえば下記式(1)で表される置換基である。
Figure 2019147936
式(1)中、a、b及びnは自然数である(ただし、a=b×mである)。α1,α2,・・・,αn及びα’のうちa個がO-であり、残りはR,ORのいずれかである。なお、各αn及びα’の全てがO-であっても構わない。Rは、各々、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。
飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はn−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、又はt−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、又はアリル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、又は3−ブテニル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、特に限定されない。芳香族基としては、フェニル基、又はナフチル基等が挙げられるが、特に限定されない。
また、Rにおける誘導基としては、上記各種炭化水素基の主鎖又は側鎖に対し、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加又は置換した状態の官能基が挙げられるが、特に限定されない。また、Rの主鎖を構成する炭素原子数は特に限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リン酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細セルロース繊維の収率を高めることもできる。
βb+は有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンである。βb+はリン酸基又はリン酸基由来の置換基の対イオンであり、このような対イオンは有機物からなる1価以上の陽イオンであることが好ましく、有機オニウムイオンであることがより好ましい。有機オニウムイオンは、疎水性基を有していることが好ましく、例えば、下記(a)及び(b)から選択される少なくとも一方の条件を満たすものであることが好ましい。
(a)炭素数が3以上の炭化水素基を含む。
(b)総炭素数が10以上である。
炭素数が3以上の炭化水素基は、炭素数が3以上のアルキル基又は炭素数が3以上のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が4以上のアルキル基又は炭素数が4以上のアルキレン基であることがより好ましい。また、有機オニウムイオンの総炭素数は10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、14以上であることがさらに好ましい。
有機オニウムイオンは、下記一般式(A)で表される有機オニウムイオンであることが好ましい。
Figure 2019147936
上記一般式(A)中、Mは窒素原子又はリン原子であり、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。但し、R1〜R4の少なくとも1つは、炭素数が3以上の有機基であるか、R1〜R4の炭素数の合計が10以上である。
中でも、Mは、窒素原子であることが好ましい。すなわち、有機オニウムイオンは有機アンモニウムイオンであることが好ましい。
このような有機オニウムイオンとしては、例えば、テトラブチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクチルジメチルエチルアンモニウム、ラウリルジメチルエチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウム、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、n−オクチルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、ヘキサデシルアンモニウム、ステアリルアンモニウム、N,N−ジメチルドデシルアンモニウム、N,N−ジメチルテトラデシルアンモニウム、N,N−ジメチルヘキサデシルアンモニウム、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアンモニウム、ジヘキシルアンモニウム、ジ(2−エチルヘキシル)アンモニウム、ジーn−オクチルアンモニウム、ジデシルアンモニウム、ジドデシルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、N,N−ジドデシルメチルアンモニウム、ポリオキシエチレンドデシルアンモニウム、アルキルジメチルベンジルアンモニウム、ジ−n−アルキルジメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、アセトニルトリフェニルホスホニウム、アリルトリフェニルホスホニウム、アミルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、ジフェニルプロピルホスホニウム、トリフェニルホスホニウム、トリシクロヘキシルホスホニウム、トリ−n−オクチルホスホニウム等を挙げることができる。
有機オニウムイオンの分子量は2000以下であることが好ましく、1800以下であることがより好ましい。有機オニウムイオンの分子量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースのハンドリング性を高めることができる。
繊維状セルロースに対するリン酸基の導入量は、たとえば繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、繊維状セルロースに対するリン酸基の導入量は、たとえば繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維状セルロースを含むシートなどにおいて良好な特性を発揮することができる。
ここで、単位mmol/gにおける分母は、リン酸基の対イオンが水素イオン(H+)であるときの繊維状セルロースの質量を示す。
繊維状セルロースに対するリン酸基の導入量は、たとえば伝導度滴定法により測定することができる。伝導度滴定法による測定では、得られた繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながら伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定する。
図1は、リン酸基を有する繊維状セルロースに対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。繊維状セルロースに対するリン酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を観察し、図1に示すような滴定曲線を得る。図1に示すように、最初は急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このように、滴定曲線には、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。このため、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。したがって、上記で得られた滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リン酸基導入量(mmol/g)となる。
樹脂組成物中に含まれる微細繊維状セルロースの含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、微細繊維状セルロースの含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
<<微細繊維状セルロースの製造方法>>
以下では、アニオン基を有する微細繊維状セルロースであって、対イオンとして有機オニウムイオンを有する微細繊維状セルロースのうち、特に、リン酸基またはリン酸基に由来する置換基を有する微細繊維状セルロースであって、対イオンとして有機オニウムイオンを有する微細繊維状セルロースの製造方法の一例を説明する。以下では、リン酸基導入工程でリン酸化セルロース繊維を得た後に、アルカリ処理工程、解繊処理工程、濃縮工程及び有機オニウム添加工程を順に設けた製造工程の例を示している。
<<繊維原料>>
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサンなどの直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
<<リン酸基導入工程>>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、リン酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、セルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、リン酸基導入繊維が得られることとなる。
リン酸基導入工程では、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を行ってもよい。
化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態、湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、特に乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、とくに限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。化合物Aおよび化合物Bは、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、特に水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、とくに限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。
本実施態様で使用する化合物Aとしては、リン酸もしくはその塩、脱水縮合リン酸もしくはその塩、無水リン酸(五酸化二リン)などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸としては、種々の純度のものを使用することができ、たとえば100%リン酸(正リン酸)や85%リン酸を使用することができる。脱水縮合リン酸は、リン酸が脱水反応により2分子以上縮合したものであり、例えばピロリン酸、ポリリン酸等を挙げることができる。リン酸塩、脱水縮合リン酸塩としては、リン酸または脱水縮合リン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸二水素アンモニウムがより好ましい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は、特に限定されないが、たとえば化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合において、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。一方で、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。
本実施態様で使用する化合物Bは、上述のとおり尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、たとえば尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、および1−エチル尿素などが挙げられる。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、とくに限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応においては、化合物Bの他に、たとえばアミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、たとえばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、たとえばメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては、繊維原料に化合物A等を添加又は混合した後、当該繊維原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、たとえば攪拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いることができる。
本実施形態に係る加熱処理においては、たとえば薄いシート状の繊維原料に化合物Aを含浸等の方法により添加した後、加熱する方法や、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱する方法を採用することができる。これにより、繊維原料における化合物Aの濃度ムラを抑制して、繊維原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一にリン酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子が繊維原料表面に移動する際、溶存する化合物Aが表面張力によって水分子に引き付けられ、同様に繊維原料表面に移動してしまう(すなわち、化合物Aの濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることに起因するものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分、及び化合物Aと繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分、を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、例えば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、たとえば繊維原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上のリン酸基導入工程を行うことにより、繊維原料に対して多くのリン酸基を導入することができる。本実施形態においては、好ましい態様の一例として、リン酸基導入工程を2回行う場合が挙げられる。
<<洗浄工程>>
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてリン酸基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶剤によりリン酸基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、とくに限定されない。
<<アルカリ処理工程>>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、繊維原料に対してアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えばアルカリ溶液中に、リン酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶剤のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶剤などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程におけるリン酸基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、特に限定されないが、たとえばリン酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の使用量を減らすために、リン酸基導入工程の後であってアルカリ処理工程の前に、リン酸基導入繊維を水や有機溶剤により洗浄してもよい。アルカリ処理工程の後であって解繊処理工程の前には、取り扱い性を向上させる観点から、アルカリ処理を行ったリン酸基導入繊維を水や有機溶剤により洗浄することが好ましい。
<<酸処理工程>>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、繊維原料に対して酸処理を行ってもよい。例えば、リン酸基導入工程、酸処理、アルカリ処理及び解繊処理をこの順で行ってもよい。
酸処理の方法としては、特に限定されないが、たとえば酸を含有する酸性液中に繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は、特に限定されないが、たとえば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、使用する酸性液のpHは、特に限定されないが、たとえば0以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。酸性液に含まれる酸としては、たとえば無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、たとえば硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、たとえばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、たとえばギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸または硫酸を用いることがとくに好ましい。
酸処理における酸溶液の温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。酸処理における酸溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、たとえば5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。酸処理における酸溶液の使用量は、特に限定されないが、たとえば繊維原料の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
<<解繊処理>>
上述した工程を得て得られたリン酸基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、特に限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
解繊処理工程においては、たとえばリン酸基導入繊維を、分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶剤などの有機溶剤から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶剤としては、とくに限定されないが、たとえばアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
解繊処理時の微細繊維状セルロースの固形分濃度は適宜設定できる。また、リン酸基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、例えば水素結合性のある尿素などのリン酸基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
<<濃縮工程>>
濃縮工程は、微細繊維状セルロースを含む分散液に、多価金属の塩を含む凝集剤を添加して微細繊維状セルロースの濃縮物を得る工程である。
多価金属の塩としては、たとえば硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、および硫酸マグネシウム等を挙げることができる。中でも、凝集剤としては硫酸アルミニウムを用いることが好ましい。
濃縮工程では、凝集剤を含む微細繊維状セルロース濃縮物が得られる。微細繊維状セルロース濃縮物中における凝集剤の含有量は、微細繊維状セルロース100質量部に対して0.5〜300質量部であることが好ましく、1.0〜50質量部であることがより好ましい。
<<回収工程>>
回収工程は、上記濃縮物を、例えばろ過、洗浄及び乾燥して回収する工程である。回収方法に特に制限はなく、公知の方法により行えばよい。例えば、ろ過はろ紙、不織布、メンブランフィルター等のフィルターを用いてもよく、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心分離等によりろ過してもよい。また、洗浄は、水や有機溶剤等の洗浄液を用いて行われ、洗浄液を常温又は30〜70℃程度に加熱して行ってもよい。乾燥は、減圧乾燥、加熱乾燥等により行えばよい。上記洗浄及び乾燥は行っても行わなくてもよく、またそれぞれ繰り返し行ってもよく、順番についても制限はない。
このような工程を経て得られる微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。微細繊維状セルロース濃縮物の固形分濃度の上限値は特に限定されるものではなく、100質量%であってもよい。
<<有機オニウム添加工程>>
有機オニウム添加工程では、有機オニウムイオンまたは、中和により有機オニウムイオンを形成する化合物が添加される。この際、有機オニウムイオンは、有機オニウムイオンを含有した溶液として添加することが好ましく、有機オニウムイオンを含有した水溶液として添加することがより好ましい。
有機オニウムイオンを含有した水溶液は、通常、有機オニウムイオンと、対イオン(アニオン)を含んでいる。有機オニウムイオンの水溶液を調製する際、有機オニウムイオンと、対応する対イオンが既に塩を形成している場合は、そのまま水に溶解させればよい。また、有機オニウムイオンは、例えば、ドデシルアミンなどのように、酸によって中和されて始めて生成する場合もある。すなわち、有機オニウムイオンは、中和により有機オニウムイオンを形成する化合物と酸との反応で得ても良い。この場合、中和に使用する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。
なお、有機オニウム添加工程は、樹脂組成物の製造工程において、他のモノマー成分と混合する際に設けられるものであってもよい。すなわち、樹脂組成物の製造工程において、微細繊維状セルロースと有機オニウムを混合してもよい。
<任意成分>
本発明の樹脂組成物は、上述したモノマー成分や、微細繊維状セルロース、有機オニウムイオン以外の任意成分を含んでいてもよく、任意成分としては、例えば、難燃化剤、界面活性剤、有機イオン、カップリング剤、無機層状化合物、無機化合物、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線防御剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、分散剤、及び架橋剤等を挙げることができる。
なお、樹脂組成物中の水の含有量は10質量%未満であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であってもよい。また、樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は10質量%未満であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であってもよい。
(樹脂組成物の製造方法)
樹脂組成物の製造方法は、窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種と、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーと、多官能モノマーと、光重合開始剤と、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(微細繊維状セルロース)と、を混合する工程を含む。ここで、微細繊維状セルロースは、リン酸基またはリン酸基に由来する置換基を有し、リン酸基又はリン酸基由来の置換基の対イオンが有機オニウムイオンを有するものであることが好ましい。この場合、樹脂組成物の製造工程において、さらに、有機オニウムを混合してもよい。
上記成分を混合する方法は特に限定されるものではないが、例えば、ガラスビーズを樹脂組成物に混合し、ペイントシェーカー等を用いて混合することができる。ガラスビーズは、例えば、東新理興社製のガラスビーズ No.6を用いることができ、ペイントシェーカーとしては、東洋精機製作所社製のものを用いることができる。
(硬化物)
本発明は、上述した樹脂組成物を光硬化させてなる硬化物に関するものでもある。硬化物の形状は特に限定されるものではないが、シート状であることが好ましい。すなわち、本発明は、窒素原子を含むアクリルモノマーに由来する単位及び芳香族環を含むアクリルモノマーに由来する単位から選択される少なくとも1種、オキシアルキレン基を有するアクリルモノマーに由来する単位、多官能モノマーに由来する単位、及び繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含むシートに関するものであることが好ましい。なお、シート中には、樹脂組成物中に含まれる光重合開始剤が残留していてもよい。
硬化物中における微細繊維状セルロースの含有量は、硬化物の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、微細繊維状セルロースの含有量は、硬化物の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
シート状硬化物(以下、単にシートともいう)の全光線透過率は、たとえば70%以上であることが好ましい。一方で、シートの全光線透過率の上限値は、とくに限定されず、たとえば100%であってもよい。ここで、シートの全光線透過率は、JIS K 7361に準拠し、たとえばヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
シートのヘーズは、たとえば20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。ここで、シートのヘーズは、JIS K 7136に準拠し、たとえばヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
シートの厚みは、特に限定されないが、たとえば15μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。またシートの厚みの上限値は、特に限定されないが、たとえば1000μmとすることができる。シートの厚みは、たとえば触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)やニコン社製、MF−501で測定することができる。
シートの坪量は、とくに限定されないが、たとえば10g/m2以上であることが好ましく、20g/m2以上であることがより好ましく、30g/m2以上であることがさらに好ましい。また、シートの坪量は、とくに限定されないが、たとえば200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましい。ここで、シートの坪量は、たとえばJIS P 8124に準拠し、算出することができる。
本発明の硬化物は吸液用であることが好ましい。吸液の対象物は非水液であることが好ましく、硬化物は非水液吸液用であることが特に好ましい。すなわち、本発明の硬化物は、吸液性硬化物(シート)であることが好ましく、非水液吸液性硬化物(シート)であることがより好ましい。非水液としては、例えば、非水電解液等を挙げることができ、このような電解液は、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を含有する。
本発明の硬化物(シート)の吸液倍率は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、4.5以上であることがさらに好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。硬化物の吸液倍率は、所定の大きさに切り出した硬化物を電解液中に2時間浸漬し、浸漬前後の硬化物の質量から以下の式で算出される。なお、電解液としては、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート LiPF6 1mol/Lを用いる。
吸液倍率=(吸液後の硬化物の質量−吸液前の硬化物の質量)/(吸液前の硬化物の質量)
本発明の硬化物(シート)の体積膨張率は、150%以上であることが好ましく、180%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。また、シートの体積膨張率は、800%以下であることが好ましく、600%以下であることがより好ましく、500%以下であることがさらに好ましい。
なお、シートの体積膨張率は、電解液(1M LiPF6/エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネート=50:50vol%(キシダ化学製))に室温下、約24時間浸漬する前後のシートの体積から、以下の式で算出した値である。
体積膨張率(%)=浸漬後のシート体積/浸漬前のシート体積×100
本発明の硬化物(シート)は成形性が良好であり、かつ優れた強度を有している。このため、本発明の硬化物(シート)は支持基材なしの光学粘着テープとして用いることもできる。吸液性シートを光学粘着テープとすることにより、シートの両面から吸液をすることが可能となり、吸液性が向上する。また、光学粘着テープとすることで、吸液性シートの全体の厚みを薄くすることも可能となり、電池パックの小型化や薄型化の要求にも十分に応えられる。
さらに本発明の硬化物(シート)は、ゴム状の弾性を有するものである。すなわち、本発明の硬化物(シート)にはコシがあり、強度面においても優れている。このため、シートの切断が容易にでき、かつ切断時に端面に割れが発生しづらいという利点も有している。例えば、シートを矩形や円形といった所望の形状に容易に切断でき、さらに必要に応じてシートの中央に間欠部を形成することなどもできる。また、本発明の硬化物(シート)は、シート形状を維持しやすい性質も有しているため、切断時や剥離時にシートに皺が寄ったり、収縮してしまうこともなく、扱いやすいシートである。
(硬化物の製造方法)
本発明の樹脂組成物からシート状の硬化物を形成する際には、樹脂組成物をセパレートフィルム上に塗布する工程と、活性エネルギー線を照射する工程とを設けることが好ましい。樹脂組成物をセパレートフィルム上に塗布する工程では、1枚のセパレートフィルム上に樹脂組成物を塗工してもよい。この場合、樹脂組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。また、樹脂組成物をセパレートフィルム上に塗布する工程では、2枚のセパレートフィルムの間にスペーサーを設置し、このスペーサー枠内に樹脂組成物を流し入れてもよい。
セパレートフィルムとしては、セパレートフィルム用基材とこのセパレートフィルム用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離性積層シートにおけるセパレートフィルム用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。セパレートフィルムとして、市販品を用いてもよい。例えば、帝人フィルムソリューション社製のA71#100やA38ST#50等を用いることができる。
活性エネルギー線を照射する工程では、積算光量が100〜10000mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射することが好ましく、500〜5000mJ/cm2となるように照射することがより好ましい。なお、活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種類の電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
(電池パック)
本発明は、上述した樹脂組成物を光硬化させてなる硬化物、電池セル、及び配線回路基板を含む電池パックに関するものでもある。樹脂組成物を光硬化させてなる硬化物はシート状であることが好ましく、このようなシート状硬化物は、電池ケース内において、例えば、電池セル(非水電解液電池セル)と、配線回路基板との間に配置される。なお、本発明で得られるシート状硬化物はそれ自体が粘着性を有するため、シート状硬化物を電池セルと配線回路基板との間に配置する際に、室温下で簡便に貼着することができる。
上述した樹脂組成物から形成されるシートは、吸液性に優れ、かつ吸液後であっても初期形状を維持することができる。このため、電池ケース内において、電池セル(非水電解液電池セル)と、配線回路基板との間にシートを配置した場合、電池セルからの液漏れを電池パック内に留めることができ、電池パック内の電気回路の損傷を抑えることができる。このように、本発明の樹脂組成物から形成されるシートは、電池パックの吸液性シート(吸液部材)として好ましく用いられる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1〜3)
<微細繊維状セルロースの作製>
原料パルプとして、王子製紙製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。この原料パルプに対してリン酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を添加して、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
次いで、得られたリン酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、リン酸化パルプ100g(絶乾質量)に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。洗浄後のリン酸化パルプに対して、さらに上記リン酸化処理、上記洗浄処理をこの順に1回ずつ行った。このようにして、リン酸化パルプの脱水シートを得た。
次いで、洗浄後のリン酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後のリン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該リン酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施されたリン酸化パルプを得た。次いで、中和処理後のリン酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。
得られたリン酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、スターバースト)で200MPaの圧力にて6回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液Aを得た。
X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を、透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。また、リン酸基量(強酸性基量)は、2.00mmol/gだった。
上記で得られた微細繊維状セルロース分散液A100gを分取し、撹拌しながら0.39gの硫酸アルミニウムを添加した。さらに5時間撹拌を続けたところ、微細繊維状セルロースの凝集が認められた。
次いで、微細繊維状セルロース分散液をろ過した後、ろ紙で圧搾し、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。得られた微細繊維状セルロース濃縮物を、イオン交換水で微細繊維状セルロースの含有量が2.0質量%となるよう再懸濁した。その後、再びろ過と圧搾を行う操作を繰り返すことで洗浄し、微細繊維状セルロース濃縮物Aを得た。
洗浄終点は、ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった点とした。得られた微細繊維状セルロース濃縮物Aの固形分濃度は17質量%であった。
<樹脂組成物の作製>
表1に記載したアクリルモノマー、多官能モノマー及び光重合開始剤と、上記のようにして得られた微細繊維状セルロース濃縮物Aを表1に記載した固形分濃度となるように配合し、さらに55質量%のテトラブチルアンモニウム水溶液を混合し、樹脂組成物を得た。樹脂組成物を混合する際には、容器中にガラスビーズ(東新理興社製、No.6)を入れペイントシェーカー(東洋精機社製)にて室温下で2時間混合した。
<シートの作製>
セパレートフィルム(帝人フィルムソリューション社製、A71#100及びA38ST#50)の間に設置した厚み100μmのスペーサー枠内に樹脂組成物を入れ、積算光量が1850mJ/cm2となるように紫外線を照射し、シート(硬化物)を得た。
(比較例1〜6)
表1に記載したアクリルモノマー、多官能モノマー及び光重合開始剤を配合した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物及びシート(硬化物)を得た。
(評価)
<電解液滴下試験>
実施例及び比較例で得られたシート(硬化物)を3cm角に切り出し、セパレーターを剥離したあと3cm角のシートの中央部に電解液(キシダ化学製、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート LiPF6 1mol/L)を25mg滴下し、2時間後の吸液状態を以下の基準で評価した。
○:シートが電解液を吸収し、シートの表面に流動するものがない。
×:電解液がシート表面上に残っており、シートを触ると電解液が移動する。若しくはシートに穴が開いている。
<粘度>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の粘度(mPa・s/20℃)を測定した。測定はAnton Paar社製のレオメーター(MCR−301)を用いて行い20℃、回転数20rpmの条件で行った。
<シートの成形性及び性状>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の成形性及び性状について、以下の基準で評価した。
○:シート状に成形及び剥離可能であり、かつシートがゴム状でありシート切断時に端面に割れが発生しない。
△:シート状に成形可能であるが、シート切断時に端面に割れが発生する部分がある。
×:シート状に成形できない、もしくは剥離の際、変形が起こり元に戻らない。
<吸液倍率>
実施例及び比較例で得られたシート(硬化物)を2.5cm角に切り出し、質量を測定した(吸液前の質量)。その後、切り出したシートを電解液中に2時間浸漬し、その後、シートを電解液から取り出した。次いで、シート表面の電解液をふき取ってから吸液後のシート質量を測定した。以下の式を用いて吸液倍率を算出した。
吸液倍率=(吸液後のシート質量−吸液前のシート質量)/(吸液前のシート質量)
<吸液後のシート性状>
上述した吸液倍率を測定する際のサンプル(吸液後のシート)の外観評価を行った。
○:吸液後も試験前の外観、形状を保っている。
×:吸液後は、液中で小片に分かれている、若しくは取り出し時に裂けたりして試験前の形状を保っていない。
<塗工時の作業性>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物からシート(硬化物)を加工する際の作業性について、以下の基準で評価した。
○:スペーサーがなくても所望の厚みを有するシートを容易に形成することができる。
×:樹脂組成物が流出するなどして、スペーサーなしでは所望の厚みを有するシートを形成することができない。
<体積膨張率測定>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物からシート(硬化物)を2x7mmにカットし、浸漬用サンプルとした。その後、電解液浸漬前のシートについてマイクロスコープにより平面、断面の測長を行った。
次いで、電解液(1M LiPF6/エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネート=50:50vol%(キシダ化学製))に室温下、約24時間浸漬した。電解液からサンプルを取り出し、ジエチレンカーボネートにて洗浄した後、ふき取り乾燥した。その後、電解液浸漬後のシートについてマイクロスコープにより平面、断面の測長を行った。そして、以下の式にて体積膨張率を算出した。
体積膨張率(%)=浸漬後のシート体積/浸漬前のシート体積×100
なお、シートの成形性の評価ができなかったサンプルや、シートの取り出し時に液中で小片に砕けていたもの、もしくは取り出し時に砕けたものは評価ができなかったため表中では「―」の表記とした。
Figure 2019147936
BZA:ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業社製、ビスコート#160)
ACMO:アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ社製)
P−200A:フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製)
130A:メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製)
14EG−A:PEG600#ジアクリレート(共栄社化学社製、分子量742)
A−HD−N:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、分子量226)
Irg.1173:イルガキュア1173(BASF社製)
比較例に比べて実施例で得られた樹脂組成物は塗工時の作業性に優れていた。
一方、比較例1〜3で得られたシート(硬化物)は吸液状態が劣っており、比較例1〜3で得られた樹脂組成物は塗工時の作業性にも劣っていた。なお、比較例1〜3では滴下試験にシート(硬化物)に穴があいた。比較例4〜6で得られた樹脂組成物は塗工時の作業性が劣るものであった。
また、実施例で得られた樹脂組成物は、シート状に成形する際に割れ等が生じず成形性に優れており、吸液倍率も従来品と同等以上であった。さらに、吸液後のシート形状の変化が少なく、形状安定性に優れていた。図2には、実施例及び比較例で得られたシートの一例の写真を掲載している。図2(a)は実施例1で得られたシートであり、吸液試験後のシートである。図2(a)に示されているように、吸液試験後もシート形状を維持していることがわかる。一方、図2(b)は比較例4で得られたシートであり、吸液試験後のシートである。図2(b)に示されているように、比較例で得られたシートにおいては、吸液試験後ではシートが崩れており、シート形状が維持されていない。

Claims (12)

  1. 窒素原子を含むアクリルモノマー及び芳香族環を含むアクリルモノマーから選択される少なくとも1種、
    オキシアルキレン基を有するアクリルモノマー、
    多官能モノマー、
    光重合開始剤、及び
    繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む樹脂組成物であって、
    前記樹脂組成物の20℃における粘度が100mPa・s以上である樹脂組成物。
  2. 前記繊維状セルロースは、イオン性置換基を有する請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記イオン性置換基はアニオン基であり、前記アニオン基の対イオンが有機オニウムイオンである請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記イオン性置換基は、リン酸基またはリン酸基に由来する置換基である請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
  5. 前記有機オニウムイオンは、有機アンモニウムイオンである請求項3に記載の樹脂組成物。
  6. 前記繊維状セルロースの含有量は、前記樹脂組成物の全質量に対して0.1〜30質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記多官能モノマーの分子量が200以上3000未満である請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を光硬化させてなる硬化物。
  9. シート状である請求項8に記載の硬化物。
  10. 吸液用である請求項8又は9に記載の硬化物。
  11. 非水液吸液用である請求項8〜10のいずれか1項に記載の硬化物。
  12. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を光硬化させてなる硬化物、
    電池セル、及び配線回路基板を含む電池パック。
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