JP2017082071A - シート及び成形体 - Google Patents

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【課題】本発明は、透明性が高く、かつ優れた強度を有する成形体を成形し得るシート、及び該シートから成形される成形体を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂繊維と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含むシートであって、含酸素有機化合物の含有量は、前記シートの全質量に対して20質量%以下であるシートに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、シート及び成形体に関する。具体的には、本発明は、微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂繊維と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含むシート、及び該シートから成形される成形体に関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。また、このような微細繊維状セルロースから構成されるシートや、微細繊維状セルロース含有シートと樹脂を含む複合シートが開発されている(例えば、特許文献1〜5)。微細繊維状セルロースを含有するシートや複合シートにおいては、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度等が大きく向上することが知られている。また、繊維幅が可視光の波長より短くなることで、透明度が大きく向上することも知られている。
特許文献1〜5には、微細繊維状セルロースと樹脂を含む複合シートが開示されている。例えば特許文献1及び2では、微細繊維状セルロース含有シートを熱可塑性樹脂含有溶液に含浸させることで、複合シートを形成している。特許文献1及び2には、複合シートの製造方法として、微細繊維状セルロース含有シートを熱可塑性樹脂シートで挟んで複合シートとする方法も記載されている。また、特許文献3には、微細繊維状セルロース含有シートと樹脂を含む複合シートであって、微細繊維状セルロースが少なくとも一方の面に偏在している複合シートが開示されている。特許文献3では、微細繊維状セルロース含有シートに熱可塑性樹脂含有溶液を流延させることで複合シートを形成している。
特許文献4には、微細繊維状セルロースと、樹脂エマルションを含有する複合シートが開示されている。特許文献4では、熱可塑性樹脂を樹脂エマルションとした後に微細繊維状セルロースと混合することで、複合シートを形成している。さらに、特許文献5には、微細繊維状セルロースと熱可塑性樹脂繊維を混抄することで形成された複合シートが開示されている。
特開2015−89914号公報 特開2015−86266号公報 特開2015−17184号公報 特開2015−93882号公報 特開2015−25033号公報
上述したように、微細繊維状セルロースと樹脂を含む種々の複合シートが開発されている。しかしながら、特許文献1〜4では、熱可塑性樹脂を含有した溶液やエマルションを微細繊維状セルロース含有シートに含浸させることで複合シートを形成しているため、強度に優れた成形体が得られない場合があり問題となっていた。また、微細繊維状セルロース含有シートを熱可塑性樹脂シートで挟んで複合シートを形成した場合においても同様に、強度に優れた成形体が得られないという問題があった。
一方で、特許文献5では、微細繊維状セルロースと熱可塑性樹脂繊維を混抄することで複合シートが形成されているが、このような複合シートから成形された成形体は透明性に劣る傾向があり、その用途が限られてしまうという問題があった。また、特許文献5で得られた複合シートから成形された成形体においてもその強度が不十分な場合があり、さらなる改善が求められていた。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、透明性が高く、かつ優れた強度を有する成形体を成形し得る複合シート(以下、単にシートともいう)、及び該シートから成形される成形体を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、微細繊維状セルロースと熱可塑性樹脂繊維を含むシートに、さらに非繊維状の含酸素有機化合物を含有させ、かつ含酸素有機化合物の含有量を所定の範囲内とすることにより、透明性及び強度に優れた成形体を成形し得るシートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂繊維と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含むシートであって、含酸素有機化合物の含有量は、シートの全質量に対して20質量%以下であるシート。
[2] 含酸素有機化合物は、親水性の有機化合物である[1]に記載のシート。
[3] 含酸素有機化合物は、オキシアルキレン構造を含有する有機化合物である[1]又は[2]に記載のシート。
[4] 含酸素有機化合物は、分子量が5万以上800万以下の有機化合物である[1]〜[3]のいずれかに記載のシート。
[5] 含酸素有機化合物は、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキサイドから選択される少なくとも1種である[1]〜[4]のいずれかに記載のシート。
[6] 熱可塑性樹脂繊維がポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種を含む繊維である[1]〜[5]のいずれかに記載のシート。
[7] 微細繊維状セルロースはリン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものである[1]〜[6]のいずれかに記載のシート。
[8] 熱可塑性樹脂繊維の含有量は、シートの全質量に対して、15質量%以上45質量%以下である[1]〜[7]のいずれかに記載のシート。
[9] 熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形した成形体の全光線透過率が70%以上である[1]〜[8]のいずれかに記載のシート。
[10] 熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形した成形体のヘーズが20%以下ある[1]〜[9]のいずれかに記載のシート。
[11] 熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形した成形体の23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率が7GPa以上である[1]〜[10]のいずれかに記載のシート。
[12] 繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含む成形体であって、含酸素有機化合物の含有量は、成形体の全質量に対して20質量%以下である成形体。
[13] 熱可塑性樹脂は疎水性であり、含酸素有機化合物は親水性である[12]に記載の成形体。
[14] 成形体のいずれか一方の表面であって、熱可塑性樹脂が多く含まれる方の表面から厚み1μmまでの領域における熱可塑性樹脂の含有率をC1質量%とし、成形体の中心面から厚み±0.5μmの範囲内の領域における熱可塑性樹脂の含有率をC2質量%とした場合、C1/C2の値が0.25以上3以下である[12]又は[13]に記載の成形体。
[15] 全光線透過率が70%以上である[12]〜[14]のいずれかに記載の成形体。
[16] ヘーズが20%以下である[12]〜[15]のいずれかに記載の成形体。
[17] 23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率が7GPa以上である請[12]〜[16]のいずれかに記載の成形体。
[18] [1]〜[11]のいずれかに記載のシートを加熱加圧成形する工程を含み、加熱加圧成形する工程における成形温度が、熱可塑性樹脂の融点±20℃である成形体の製造方法。
[19] [12]〜[17]のいずれかに記載の成形体と、樹脂層とを有する積層体。
[20] 樹脂層はポリカーボネートを含む[19]に記載の積層体。
[21] 23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率が2.5GPa以上であり、かつ線熱膨張係数が200ppm/K以下である[19]又は[20]に記載の積層体。
本発明によれば、透明性及び強度に優れた成形体を成形し得るシートを得ることができる。本発明のシートから成形される成形体は、全光線透過率が高く、ヘーズが小さく、かつ曲げ弾性率が高い。
図1は、繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図2は、本発明の積層体の構成を説明する断面図である。 図3は、本発明の積層体の構成を説明する断面図である。 図4は、本発明の積層体の製造方法の一例を説明する断面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(シート)
本発明は、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂繊維と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含むシートに関する。ここで、含酸素有機化合物の含有量は、シートの全質量に対して20質量%以下である。
本発明のシートは、成形体を成形するために用いられる成形体用シートであることが好ましい。本発明のシートを用いることにより、透明性及び強度に優れた成形体を成形することができる。
本発明のシートにおいて、熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂繊維として含有されている。このため、シート及び成形体中において熱可塑性樹脂が均一に分散する。本発明者らは、シート及び成形体中において熱可塑性樹脂を均一に分散させることによって、その強度を高め得ることを見出した。また、本発明者らは、所定量の含酸素有機化合物を添加することにより、成形体の透明性を高め得ることも見出した。このように、本発明においては、熱可塑性樹が繊維状であり、かつ所定量の含酸素有機化合物を含有するため、透明性と強度を兼ね備えた成形体を成形することができる。
本発明のシートは、透明性に優れた成形体を成形することができる。具体的には、本発明のシートは、全光線透過率が70%以上の成形体を成形し得るシートであることが好ましい。シートが成形し得る成形体の全光線透過率は、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。なお、上記の全光線透過率は、シートを熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形することで得られた成形体の全光線透過率である。全光線透過率は、JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
また、本発明のシートは、ヘーズが20%以下の成形体を成形し得るシートであることが好ましい。シートが成形し得る成形体のヘーズは、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることがよりさらに好ましく、2.7%以下であることが特に好ましい。なお、上記のヘーズは、シートを熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形することで得られた成形体のヘーズである。成形体のヘーズは、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
本発明のシートは、23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率が7GPa以上の成形体を成形し得るシートであることが好ましい。シートが成形し得る成形体の曲げ弾性率は、8GPa以上であることがより好ましく、10GPa以上であることがさらに好ましく、12GPa以上であることが特に好ましい。また、シートが成形し得る成形体の曲げ弾性率の上限値は特に制限されないが、20GPa以下であることが好ましい。なお、上記の曲げ弾性率は、シートを熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形することで得られた成形体の曲げ弾性率である。成形体の23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率は、JIS K 7074に準拠して測定した値である。
本発明のシートの密度は、1.0g/cm3以上であることが好ましく、1.2g/cm3以上であることがより好ましく、1.4g/cm3以上であることがさらに好ましい。また、シート全体の密度は、2.0g/cm3以下であることが好ましい。シートの密度は、シートの坪量と厚さから、JIS P 8118に準拠して算出される。シートの坪量は、JIS P 8124に準拠し、算出することができる。なお、シートの密度は、セルロース繊維以外の任意成分を含む密度である。
本発明のシートは非多孔性のシートである点にも特徴がある。ここで、シートが非多孔性であるとは、シート全体の密度が1.0g/cm3以上であることを意味する。シート全体の密度が1.0g/cm3以上であれば、シートに含まれる空隙率が、所定値以下に抑えられていることを意味し、多孔性のシートとは区別される。
また、シートが非多孔性であることは、空隙率が15体積%以下であることからも特徴付けられる。ここでいうシートの空隙率は簡易的に下記式(a)により求めるものである。
式(a):空隙率(体積%)=[1−B/(M×A×t)]×100
ここで、Aはシートの面積(cm2)、tはシートの厚み(cm)、Bはシートの質量(g)、Mはセルロースの密度である。
シートに含まれる熱可塑性樹脂繊維の含有量は、シートの全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の含有量は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。中でも、熱可塑性樹脂繊維の含有量は、15質量%以上45質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂繊維の含有量を上記範囲内とすることにより、より優れた曲げ弾性率を有する成形体を成形することができる。
シートに含まれる微細繊維状セルロースの含有量は、シートの全質量に対して25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。また、微細繊維状セルロース繊維の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。微細繊維状セルロースの含有量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロース同士の物理的な絡み合いや、化学的な架橋が十分に形成されるため、シート自体の強度を高めることができ、さらに優れた曲げ弾性率を有する成形体を成形することができる。
シートに含まれる含酸素有機化合物の含有量は、シートの全質量に対して20質量%以下であればよい。含酸素有機化合物の含有量は、17質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。また、含酸素有機化合物の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。含酸素有機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、高い透明性を有する成形体を成形することができる。さらに、含酸素有機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、優れた曲げ弾性率を維持しつつ、シートの柔軟性を高めることができる。
<シートの用途>
本発明のシートは、強度及び透明性に優れた成形体を成形し得るシートである。このような特性を活かす観点から、各種樹脂製の基板等の補強材として好ましく用いられる。すなわち、本発明のシートは、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池等の光透過性基板の補強材や、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材の補強材として好適である。
また、本発明のシートから成形された成形体は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイ等に用いることができる。さらに成形体は、タッチパネルや太陽電池の基板や前面板、カラーフィルター基板等に用いることができる。また、本発明のシートは、シート単体で各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池等の光透過性基板や、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材としても使用可能である。
(微細繊維状セルロース)
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを含有するシートは高強度が得られる傾向がある。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。
微細繊維状セルロースが含有する結晶部分の比率は、本発明においては特に限定されないが、X線回折法によって求められる結晶化度が60%以上であるセルロースを使用することが好ましい。結晶化度は、好ましくは65%以上であり、より好ましくは70%以上であり、この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースは、置換基を有するものであることが好ましく、置換基はアニオン基であることが好ましい。アニオン基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基及びスルホン基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基で及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。
微細繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものであることが好ましい。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
Figure 2017082071
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1〜nの整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
シートに含まれる微細繊維状セルロースの含有量は、シートの全質量に対して25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。また、微細繊維状セルロース繊維の含有量80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。微細繊維状セルロースの含有量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロース同士の物理的な絡み合いや、化学的な架橋が十分に形成されるため、シート自体の強度を高めることができ、さらに優れた曲げ弾性率を有する成形体を成形することができる。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量が100質量%を超えると、収率向上の効果は頭打ちとなり、使用する化合物Aのコストが上昇する。一方、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、150℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.1mmol/g以上3.5mmol/g以下であることが好ましく、0.14mmol/g2.5mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g2.0mmol/g以下がさらに好ましく、0.2mmol/g1.8mmol/g以下よりさらに好ましく、0.4mmol/g1.8mmol/g以下が特に好ましく、最も好ましくは0.6mmol/g1.8mmol/g以下である。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースのスラリーの粘度を適切な範囲に調整することができる。
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程と、後述する解繊処理工程の間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、リン酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、リン酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、リン酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みリン酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<解繊処理>
リン酸基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
本発明では、微細繊維状セルロースを濃縮、乾燥させた後に解繊処理を行ってもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、濃縮した微細繊維状セルロースをシート化してもよい。該シートを粉砕して解繊処理を行うこともできる。
微細繊維状セルロースを粉砕する際に粉砕に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
上述した方法で得られたリン酸基を有する微細繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロース含有スラリーであり、所望の濃度となるように、水で希釈して用いてもよい。
(熱可塑性樹脂繊維)
本発明のシートは、熱可塑性樹脂繊維を含む。熱可塑性樹脂繊維は、加熱加圧処理時にマトリクス、あるいは、繊維成分の交点に結着点を形成するため、マトリクス樹脂とも呼ばれる。
熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられるがこれらに制限されない。中でも、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂は、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。より具体的には、熱可塑性樹脂は例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、非晶質PET、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエチレンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、上述した樹脂のうちいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上の異なる樹脂を用いてもよい。
熱可塑性樹脂繊維の繊維長(数平均繊維長)は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長(数平均繊維長)は、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、シートから熱可塑性樹脂繊維が脱落することを抑制することができ、ハンドリング性に優れたシートを得ることができる。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、熱可塑性樹脂繊維の分散性を良好にすることができるため、強度に優れた成形体を形成することが可能となる。
熱可塑性樹脂繊維の繊維径(数平均繊維径)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維径(数平均繊維径)は、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂繊維は、疎水性の熱可塑性樹脂繊維であることが好ましい。疎水性の熱可塑性樹脂繊維は、たとえばSP値が13.0以下であることが好ましく、9.0未満とすることもできる。
シートに含まれる熱可塑性樹脂繊維の含有量は、シートの全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の含有量は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。中でも、熱可塑性樹脂繊維の含有量は、15質量%以上45質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂繊維の含有量を上記範囲内とすることにより、より優れた曲げ弾性率を有する成形体を成形することができる。
(含酸素有機化合物)
本発明のシートは、非繊維状の含酸素有機化合物を含む。含酸素有機化合物は非繊維状であるから、含酸素有機化合物には、上述した微細繊維状セルロースや熱可塑性樹脂繊維は含まれない。
含酸素有機化合物は、親水性の有機化合物であることが好ましい。親水性の含酸素有機化合物は、シートの強度、密度及び化学的耐性などを向上させることができる。親水性の含酸素有機化合物は、たとえばSP値が9.0以上であることが好ましい。また、親水性の含酸素有機化合物は、たとえば100mlのイオン交換水に含酸素有機化合物が1g以上溶解するものであることが好ましい。
含酸素有機化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等の親水性高分子;グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール等の親水性低分子が挙げられる。これらの中でも、各シートの強度、密度、化学的耐性などを向上させる観点から、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、グリセリン、ソルビトールが好ましく、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキサイドから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
含酸素有機化合物は、オキシアルキレン構造を含有する有機化合物であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、アルキレン鎖中に酸素原子が導入された構造を言う。オキシアルキレン構造中のアルキレン鎖は直鎖でも、分岐でも、環状でもよい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基を含むことが好ましく、オキシエチレン基を含むことがより好ましい。また、含酸素有機化合物はオキシアルキレン基を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造はポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基を含むことが好ましく、ポリオキシエチレン基を含むことがより好ましい。
含酸素有機化合物は、分子量が5万以上800万以下の有機化合物高分子であることが好ましい。含酸素有機化合物の分子量は、10万以上500万以下であることも好ましいが、例えば分子量が1000未満の低分子であってもよい。
シートに含まれる含酸素有機化合物の含有量は、シートの全質量に対して20質量%以下であればよい。含酸素有機化合物の含有量は、17質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。また、含酸素有機化合物の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。含酸素有機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、高い透明性を有する成形体を成形することができる。さらに、含酸素有機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、優れた曲げ弾性率を維持しつつ、シートの柔軟性を高めることができる。
(シートの製造方法)
シートの製造工程は、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂繊維と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含むスラリーを得る工程と、このスラリーを基材上に塗工する工程、又は、スラリーを抄紙する工程を含む。中でも、シートの製造工程は、微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂繊維と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含むスラリー(以下、単にスラリーということもある)を基材上に塗工する工程を含むことが好ましい。
スラリーを得る工程では、スラリーに含まれる固形分の全質量に対して、含酸素有機化合物の含有量が20質量%以下となるように調整される。スラリー中における含酸素有機化合物の含有量は、17質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。また、含酸素有機化合物の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
<塗工工程>
塗工工程は、スラリーを基材上に塗工し、これを乾燥して形成されたシートを基材から剥離することにより、シートを得る工程である。塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。塗工するスラリーの濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。
塗工工程で用いる基材の質は、特に限定されないが、スラリーに対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板または金属板が好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛版、銅版、鉄板等の金属板および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を用いることができる。
塗工工程において、スラリーの粘度が低く、基材上で展開してしまう場合、所定の厚み、坪量のシートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠の質は特に限定されないが、乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板または金属板を成形したものが好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛版、銅版、鉄板等の金属板および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を成形したもの用いることができる。
スラリーを塗工する塗工機としては、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターが好ましい。
塗工温度は特に限定されないが、20℃以上45℃以下であることが好ましく、25℃以上40℃以下であることがより好ましく、27℃以上35℃以下であることがさらに好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、スラリーを容易に塗工でき、上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が10g/m2以上100g/m2以下、好ましくは20g/m2以上50g/m2以下になるようにスラリーを塗工することが好ましい。坪量が上記範囲内となるように塗工することで、強度に優れたシートが得られる。
シートの製造工程は、基材上に塗工したスラリーを乾燥させる工程を含むことが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されないが、非接触の乾燥方法でも、シートを拘束しながら乾燥する方法の何れでもよく、これらを組み合わせてもよい。
非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、熱風、赤外線、遠赤外線または近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができるが、特に限定されない。加熱乾燥法における加熱温度は特に限定されないが、20℃以上120℃以下とすることが好ましく、25℃以上105℃以下とすることがより好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制及び微細繊維状セルロースが熱によって変色することを抑制できる。
乾燥後に、得られたシートを基材から剥離するが、基材がシートの場合には、シートと基材とを積層したまま巻き取って、シートの使用直前にシートを工程基材から剥離してもよい。
<抄紙工程>
シートの製造工程は、スラリーを抄紙する工程を含んでもよい。抄紙工程で抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等公知の抄紙を行ってもよい。
抄紙工程では、スラリーをワイヤー上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、プレス、乾燥することでシートを得る。スラリーの濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。スラリーを濾過、脱水する場合、濾過時の濾布としては特に限定されないが、微細繊維状セルロースや含酸素有機化合物は通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては特に限定されないが、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。具体的には孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられるが、特に限定されない。
スラリーからシートを製造する方法としては、特に限定されないが、例えばWO2011/013567に記載の製造装置を用いる方法等が挙げられる。この製造装置は、微細繊維状セルロースを含むスラリーを無端ベルトの上面に吐出し、吐出されたスラリーから分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させて繊維シートを生成する乾燥セクションとを備えている。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
採用できる脱水方法としては特に限定されないが、紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられ、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては特に限定されないが、紙の製造で用いられている方法が挙げられ、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
(成形体)
本発明は、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含む成形体に関するものでもある。ここで、成形体に含まれる含酸素有機化合物の含有量は、成形体の全質量に対して20質量%以下である。すなわち、本発明の成形体は、上述したシートを加熱加圧成形することで得られる成形体である。
なお、熱可塑性樹脂は疎水性であり、含酸素有機化合物は親水性であることが好ましい。すなわち、成形体に含まれる非繊維状の含酸素有機化合物には、熱可塑性樹脂が含まれず、当然に微細繊維状セルロースも含まれない。
本発明のシートにおいては、熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂繊維として含有されている。このため、シートを成形することで得られる成形体中において熱可塑性樹脂はほぼ均一に分散している。具体的には、成形体のいずれか一方の表面であって、熱可塑性樹脂が多く含まれる方の表面から厚み1μmまでの領域における熱可塑性樹脂の含有率をC1質量%とし、成形体の中心面から厚み±0.5μmの範囲内の領域における熱可塑性樹脂の含有率をC2質量%とした場合、C1/C2の値が0.25以上3以下であることが好ましい。C1/C2の値は0.5以上2以下であることがより好ましく、0.7以上1.5以下であることがさらに好ましい。
C1/C2の値は下記の方法により算出する。
まず、成形体の一方の面の表層及び他方の面の表層をウルトラミクロトーム(JEOL社製、UC−7)でそれぞれ厚み1μmに切り出して薄膜を得る。さらに、成形体の厚み方向の中心面から厚み±0.5μmの範囲内の領域(厚み1μm)をウルトラミクロトーム(JEOL社製、UC−7)で切り出して薄膜を得る。各薄膜の重量を測定し、W1とする。次いで、薄膜を100℃に沸騰させたイオン交換水で30分間煮沸してポリエチレンオキサイドを溶出させる。さらに、薄膜を100℃の乾燥機で30分間乾燥させ、重量W2(微細繊維状セルロース分と熱可塑性樹脂分の重量の和)を測定する。
次いで、薄膜を高圧容器に注いだ溶剤に浸漬して密閉し、100℃で30分加熱する。この際に用いる溶剤としては、熱可塑性樹脂が溶解する溶剤を選択する。例えば、熱可塑性樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いた場合は溶剤にはジメチルスルホキシドを、ポリ乳酸を用いた場合は溶剤にはクロロホルムを、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合は溶剤にはヘキサフルオロ−2−プロパノールを、酸変性ポリプロピレンを用いた場合は溶剤にはキシレンを用いる。
その後、薄膜を100℃の乾燥機で30分間乾燥させ、重量W3(微細繊維状セルロース分の重量)を測定する。次いで、下記式(1)にしたがって熱可塑性樹脂の含有率C(%)を算出する。また、一方の面の表層及び他方の面の表層の熱可塑性樹脂の含有率のうち、値の大きいものをC1、厚み方向の中心面を含む領域の熱可塑性樹脂の含有率をC2とし、C1をC2で除して熱可塑性樹脂の含有率勾配とする。このように算出された熱可塑性樹脂の含有率勾配を熱可塑性樹脂の均一性の指標とする。
式(1):C=100×(W2−W3)/W1
本発明の成形体の全光線透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。全光線透過率は、JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
また、本発明の成形体のヘーズは20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることがよりさらに好ましく、2.7%以下であることが特に好ましい。成形体のヘーズは、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
本発明の成形体の23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率が7GPa以上であることが好ましく、8GPa以上であることがより好ましく、10GPa以上であることがさらに好ましく、12GPa以上であることが特に好ましい。また、成形体の曲げ弾性率の上限値は特に制限されないが、20GPa以下であることが好ましい。成形体の23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率は、JIS K 7074に準拠して測定した値である。
成形体の全体の厚みは10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。また、成形体の全体の厚みは特に制限されないが1mm以下であることが好ましい。成形体の全体の厚みを上記範囲内とすることにより、強度をより高めることができる。
なお、成形体における微細繊維状セルロース、熱可塑性樹脂及び含酸素有機化合物の含有量は、上述したシートにおける各含有量に対応しており、好ましい範囲も同じである。
<成形体の用途>
本発明の成形体は、強度及び透明性に優れている。このような特性を活かす観点から、各種樹脂製の基板等の補強材として好ましく用いられる。すなわち、本発明の成形体は、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池等の光透過性基板の補強材や、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材の補強材として好適である。
また、本発明の成形体は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイ等に用いることができる。さらに成形体は、タッチパネルや太陽電池の基板や前面板、カラーフィルター基板等に用いることができる。また、本発明の成形体は、成形体単体で各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池等の光透過性基板や、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材としても使用可能である。
(成形体の製造方法)
成形体の製造工程は、上述したシートを加熱加圧成形する工程を含む。ここで、加熱加圧成形する工程における成形温度は、熱可塑性樹脂の融点±20℃である。
成形体は、シートを、1枚単独、或いは所望の厚さとなるように積層して熱プレスで加熱加圧成形したり、あらかじめ赤外線ヒーター等で予熱した金型によって加熱加圧成形したりすることで成形される。また、成形体は多層構造であってもよく、このような場合は他種のシートを積層して熱プレスで加熱加圧成形することもできる。成形体は、一般的な加熱加圧成形方法を用いて加工される。
プレス成形の方法としては、各種存在するプレス成形の方法の中でも、オートクレーブ法や金型プレス法が好ましく挙げられる。ボイドの少ない高品質な成形体を得るという観点からはオートクレーブ法が好ましい。一方、設備や成形工程でのエネルギー使用量、使用する成形用の治具や副資材等の簡略化、成形圧力、温度の自由度の観点からは、金属製の型を用いて成形をおこなう金型プレス法を用いることが好ましく、これらは用途に応じて選択することができる。
金型プレス法には、ヒートアンドクール法やスタンピング成形法を採用することができる。ヒートアンドクール法は、シートを型内に予め配置しておき、型締とともに加圧、加熱をおこない、次いで型締をおこなったまま、金型の冷却により該シートの冷却をおこない成形体を得る方法である。スタンピング成形法は、予めシートを遠赤外線ヒーター、加熱板、高温オーブン、誘電加熱などの加熱装置で加熱し、樹脂を溶融、軟化させた状態で、成形体型の内部に配置し、次いで型を閉じて型締を行い、その後加圧冷却する方法である。また、低密度の成形体を得る場合など、成形時の温度が比較的低い場合は、ホットプレス法を採用することもできる。
成形用の金型は大きく2種類に分類され、1つは鋳造や射出成形などに使用される密閉金型であり、もう1つはプレス成形や鍛造などに使用される開放金型である。本発明のシートを用いた場合、用途に応じていずれの金型も使用することが可能である。成形時の分解ガスや混入空気を型外に排除する観点からは開放金型が好ましいが、過度の樹脂の流出を抑制するためには、成形加工中においては開放部をできるだけ少なくし、樹脂の型外への流出を抑制するような形状を採用することも好ましい。
シートから成形体を成形する際には、具体的には、シートを150〜600℃の温度に加熱することが好ましく、160〜250℃に加熱することがより好ましい。なお、加熱温度は、シート内の熱可塑性樹脂繊維が流動する温度であって微細繊維状セルロースは溶融しない温度帯であることが好ましい。
成形体を成形する際の圧力としては、5〜20MPaが好ましい。また、所望の保持温度に到達するまでの昇温速度は3〜20℃/分が好ましく、所望の熱プレス温度での保持時間としては1〜30分、その後、成形体を取り出す温度(200℃以下)までは圧力を維持しながら、3〜20℃/分の冷却速度とすることが好ましい。
(積層体)
本発明は、上述した成形体と、樹脂層とを有する積層体に関するものであってもよい。積層体には、成形体と樹脂層が各々1層ずつ含まれてもよいし、成形体と樹脂層が各々複数層含まれていてもよい。
図2及び3には、本発明の積層体の構成を説明する図が示されている。図2に示されているように、本発明の積層体20は、成形体10と樹脂層6が、積層体であることが好ましい。また、図3に示されているように、本発明の積層体20は、成形体10の両方の面側に樹脂層6を有していてもよい。また、成形体10と樹脂層6の間には、接着剤層(図示せず)が設けられていてもよく、この場合、成形体10と樹脂層6は、接着剤層を介して積層する。さらに、積層体20は、樹脂層6、成形体10、樹脂層6、成形体10及び樹脂層6がこの順に積層された5層構成であることも好ましい。
<樹脂層>
樹脂層は、合成樹脂を主材とする層である。樹脂層の全質量に対する合成樹脂の含有量は、例えば80質量%以上100質量%以下とすることができる。合成樹脂の種類は、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、およびポリ(メタ)アクリレートのうち、少なくともいずれか1種であることが好ましい。中でも、成形性に優れ、透明性が高いポリカーボネートがより好ましい。
樹脂層を構成するポリカーボネートとしては、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。具体的なポリカーボネート系樹脂は、例えば特許第4985573号公報等に記載されたポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
樹脂層には合成樹脂以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、フィラー、顔料、染料、紫外線吸収剤等の樹脂フィルム分野で使用される公知成分が挙げられる。
樹脂層の1層の厚みとしては、例えば100μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましく、1000μm以上がさらに好ましい。100μm以上であると、積層体の機械的強度が十分に安定する。樹脂層の厚みの上限は特に限定されず、用途に応じて適宜設定され、例えば10mm以上50mm以下程度の厚みにすることもできる。
ここで、積層体を構成する樹脂層の厚みは、積層体の断面をウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって切り出し、当該断面を電子顕微鏡、拡大鏡又は目視で観察して、測定される値である。
<接着剤層>
接着剤層は、成形体と樹脂層を貼合(接合)する層である。本発明の積層体においては成形体と樹脂層を接合する接着剤層を備えていてもよい。
接着剤層を形成する際には、成形体上に接着剤含有塗布液と塗布することが好ましい。この際の乾燥塗布量は、0.5g/m2以上5.0g/m2以下が好ましく、1.0g/m2以上4.0g/m2以下がより好ましく、1.5g/m2以上3.0g/m2以下がさらに好ましい。上記下限値以上であると、成形体と樹脂層との十分な密着力が得られ、機械的強度がより向上する。上記上限値以下であると、積層体全体の全光線透過率を高め、ヘーズを低く抑えることができる。
接着剤層の1層の厚みは、例えば、0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.5μm以上10μm以下がより好ましく、1μm以上7μm以下がさらに好ましい。上記下限値以上であると、成形体と樹脂層との十分な密着力が得られ、機械的強度がより向上する。上記上限値以下であると、積層体全体の全光線透過率を高め、ヘーズを低く抑えることができる。
ここで、積層体を構成する接着剤層の厚みは、積層体の断面をウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって切り出し、当該断面を電子顕微鏡で観察して、測定される値である。
接着剤層は、主成分として、(メタ)アクリル酸エステル重合体、α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、カゼイン、天然ゴム、およびでんぷんから選択される1種または2種以上の接着剤を含むことが好ましい。ここで、「主成分」とは、接着剤層の全質量に対して50質量%以上であることを意味する。中でも、着力及び機械的強度の向上と透明性の向上のバランスの観点から(メタ)アクリル酸エステル重合体を含むことがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の(メタ)アクリル樹脂以外の合成樹脂がグラフト重合してなる重合体、及び(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとが共重合してなる共重合体を含んでもよい。ただし、当該共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーのモル分率は、50モル%以下であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全質量中、グラフト重合した(メタ)アクリル樹脂以外の合成樹脂の含有量は、50質量%以下であることが好ましい。
接着剤層は、微細繊維状セルロースに導入された官能基(リン酸基等)と、共有結合を形成する化合物を含んでもよい。共有結合を形成する化合物としては、例えば、シラノール基、イソシアネート基、カルボジイミド基、エポキシ基及びオキサゾリン基から選択される少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。上記化合物のうち、微細繊維状セルロースに導入された官能基との反応性に優れる、シラノール基又はイソシアネート基を含む化合物がより好ましい。このような化合物を接着剤を構成する主成分に含有することにより、シート間の密着性をより強固なものとすることができる。
接着剤層の主成分は、樹脂層との密着力を高める観点から、樹脂層との物理的相互作用を誘起する化合物であることがより好ましい。すなわち、接着剤層の主成分と樹脂層の溶解性パラメータ(SP値)が近いほど好ましい。接着剤層の主成分と樹脂層のSP値の差が10以下であることが好ましく、5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
<各層の相対的な厚み>
本発明の積層体を構成する成形体及び樹脂層のうち、互いに隣接する層の相対的な厚みの関係は、樹脂層>成形体であることが好ましい。この関係であると、成形体が樹脂層を補強する関係となり、樹脂層が有する機械的な特性を成形体がより一層向上させることができる。
成形体と、樹脂層の厚みの比(樹脂層の厚み/成形体の厚み)は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。10以上であると、積層体の機械的強度がより一層向上する。上記厚みの比の上限は特に限定されず、用途に応じて適宜設定され、例えば50以上、もしくは100以上にすることもできる。
積層体に、成形体及び樹脂層の少なくとも一方が複数備えられている場合、成形体の厚みの合計に対する樹脂層の厚みの合計の比(樹脂層の厚みの合計/成形体の厚みの合計)は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。10以上であると、積層体の機械的強度がより一層向上する。上記厚みの比の上限は特に限定されず、用途に応じて適宜設定され、例えば50以上、もしくは100以上にすることもできる。
なお、積層体に備えられた成形体が1層である場合、積層体に備えられた成形体の厚みの合計は当該1層の成形体の厚みである。
積層体の厚みは特に限定されず、例えば、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。0.5mm以上であることにより、従来はガラスが適用されていた用途に本発明の積層体を適用することが容易になる。
積層体の全光線透過率は特に限定されず、例えば、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。60%以上であることにより、従来は透明なガラスが適用されていた用途に本発明の積層体を適用することが容易になる。
積層体のヘーズは特に限定されず、例えば、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。ヘーズが低いほど、従来は透明なガラスが適用されていた用途に本発明の積層体を適用することが容易になる。
積層体の23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率は2.5GPa以上であることが好ましく、3.0GPa以上であることがより好ましい。なお、積層体の曲げ弾性率は、JIS K 7074に準拠して測定した値である。さらに、積層体の線熱膨張係数は、200ppm/K以下であることが好ましく、100ppm/K以下であることがより好ましく、50ppm/K以下であることがさらに好ましい。なお、積層体の線熱膨張係数は、熱機械分析装置(日立ハイテク社製、TMA7100)を用いて測定した値である。具体的には、積層体をレーザーカッターにより、幅3mm×長さ30mmに切り出し、これを、熱機械分析装置(日立ハイテク社製、TMA7100)にセットして、引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下の条件で、室温から180℃まで5℃/分で昇温さる。この際の100℃から150℃までの測定値から線熱膨張係数を算出する。
<積層体の用途>
本発明の積層体は、透明で機械的強度が高く、ヘーズの小さい積層体である。優れた光学特性を活かす観点から、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造工程は、上述した成形体と樹脂層を積層した後に、加熱加圧成形する工程を含むことが好ましい。積層体を加熱加圧成形する場合は、成形体と樹脂層を各々1層ずつ、もしくは所望の構成となるように複数層積層して熱プレスで加熱加圧成形したり、あらかじめ赤外線ヒーター等で予熱した金型によって加熱加圧成形したりすることで成形される。成形には一般的な加熱加圧成形方法を採用することができる。
成形方法及び金型については、成形体の製造方法の項目で述べた方法及び金型を用いることができる。
積層体を成形する際には、具体的には、成形体と樹脂層を重ね合わせたものを150〜600℃の温度に加熱することが好ましく、160〜250℃に加熱することがより好ましい。なお、加熱温度は、成形体内の熱可塑性樹脂繊維や、樹脂層内の樹脂が流動する温度であって微細繊維状セルロースは溶融しない温度帯であることが好ましい。
積層体を成形する際の圧力としては、5〜20MPaが好ましい。また、所望の保持温度に到達するまでの昇温速度は3〜20℃/分が好ましく、所望の熱プレス温度での保持時間としては1〜30分、その後、成形体を取り出す温度(200℃以下)までは圧力を維持しながら、3〜20℃/分の冷却速度とすることが好ましい。
本発明の積層体は、成形体と樹脂層とを接着剤によって接合することによっても製造することができる。接着剤を成形体又は樹脂層の積層面に塗布する方法は公知方法が適用される。具体的には、コーター等を使用して成形体の積層面となる少なくとも一方の面に接着剤を塗布して乾燥することにより、成形体と接着剤層とが積層してなる積層材を得て、該積層材の接着剤層に樹脂層を接合することにより、積層体を製造する方法が挙げられる。
なお、接着剤を塗布する量を適宜調整することにより、前述した接着剤層の乾燥塗布量を調整することができる。
積層材の接着剤層に樹脂層を接合する方法(工程)として、積層材の接着剤層の上に樹脂層を構成する樹脂シート材を載置して、熱プレスする方法が挙げられる。また、射出成形用の金型内に積層材を、射出空間側(金型内部の中心側)にその接着剤層が露出するように設置して、当該金型内に加熱されて溶融した樹脂を射出して、積層材の接着剤層に射出した樹脂からなる樹脂層を接合させる方法が挙げられる。
成形体と樹脂層との密着性を向上させる観点から、射出成形法によって積層体を製造することが好ましい。
以下に、射出成形法による積層体の製造方法の一例を説明する。
まず、成形体10と共に射出成形の金型内に設置する樹脂シート36を準備する。この樹脂シート36は、金型内において、射出される樹脂の射出圧力によって成形体10に対して熱圧着されることによって樹脂層6となる。なお、成形体と樹脂層を接着剤によって接合する場合は、成形体10を、成形体10と接着剤層を積層した積層材としてもよい。
続いて、図4に示す様に、射出成形用平板金型35の内壁面の2箇所に、各々樹脂シート37と、成形体10とを順次載置し、耐熱テープ34で固定する。次に、樹脂シート37と成形体10を載置した平板金型35の内壁面を、形成される積層体20の上面と下面の位置に対応するように配置して平板金型35を組み立てる。そして、注入口35aから加熱して溶融させた樹脂を適当な圧力で射出し、適当な温度、適当な型締力、適当な保持時間で成形することにより、積層体20が得られる。必要に応じて耐熱テープ34が含まれる両端部分を切断し、完成品の積層体20とすることができる。
樹脂を射出する圧力としては、例えば10MPa以上500MPa以下が好ましく、50MPa以上400MPa以下がより好ましく、100MPa以上300MPa以下がさらに好ましい。
成形時の樹脂溶融温度としては、例えば100℃以上400℃以下が好ましく、150℃以上400℃以下がより好ましく、200℃以上400℃以下がさらに好ましい。
成形時の型締力としては、例えば200kN以上100000kN以下が好ましく、500kN以上50000kN以下がより好ましく、1000kN以上10000kN以下がさらに好ましい。
成形時の保持時間としては、例えば0.1秒以上600秒以下が好ましく、1秒以上300秒以下がより好ましく、10秒以上60秒以下がさらに好ましい。
成形時の金型温度としては、例えば100℃以上400℃以下が好ましく、100℃以上300℃以下がより好ましく、150℃以上250℃以下がさらに好ましい。
(積層体の他の態様)
本発明の積層体は、成形体とガラスや金属などの無機層とを貼り合わせた構成であっても良い。また、成形体の上には、蒸着法、スパッタリング法、気相化学成長法、原子層堆積法等の薄膜成膜方法によって成膜される薄膜が積層されてもよい。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1>
[リン酸化試薬の調製]
リン酸二水素ナトリウム二水和物265g、及びリン酸水素二ナトリウム197gを538gの水に溶解させ、リン酸系化合物の水溶液(以下、「リン酸化試薬」という。)を得た。
[リン酸化]
針葉樹晒クラフトパルプ(王子ホールディングス株式会社製、水分50質量%、JIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を含水率80質量%になるようイオン交換水で希釈し、パルプ懸濁液を得た。このパルプ懸濁液500gに上記リン酸化試薬210gを加え、105℃の送風乾燥機(ヤマト科学株式会社、DKM400)で時折混練しながら質量が恒量となるまで乾燥させた。ついで150℃の送風乾燥機で時折混練しながら1時間加熱処理して、セルロースにリン酸基を導入した。このときのリン酸基の導入量は、0.98mmol/gであった。
なお、リン酸基の導入量は、セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024:オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
[アルカリ処理、洗浄]
次いで、リン酸基を導入したセルロースに5000mlのイオン交換水を加え、撹拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを5000mlのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpHが12以上13以下になるまで少しずつ添加して、パルプ分散液を得た。その後、このパルプ分散液を脱水し、5000mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに1回繰り返した。
[機械処理]
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加して、固形分濃度が1.0質量%のパルプ分散液とした。このパルプ分散液を、高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社製、Panda Plus 2000)を用いて処理し、セルロース分散液を得た。高圧ホモジナイザーを用いた処理においては、操作圧力1200barにてホモジナイジングチャンバーを5回通過させた。さらに、このセルロース分散液を湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)を用いて処理し、微細繊維状セルロース分散液を得た。湿式微粒化装置を用いた処理においては、245MPaの圧力にて処理チャンバーを5回通過させた。微細繊維状セルロース分散液に含まれる微細繊維状セルロースの平均繊維幅は4nmであった。
[シート化]
微細繊維状セルロース分散液(A)の固形分濃度が0.5質量%となるよう濃度調整を行った。その後、微細繊維状セルロース分散液(A)100質量部に対して、非繊維状の含酸素有機化合物としてポリエチレンオキサイド(住友精化製、PEO−18:分子量430万〜480万)の0.5質量%水溶液を20質量部添加し、微細繊維状セルロース分散液(B)を得た。その後、熱可塑性樹脂繊維としてエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維(クラレ社製、S030:融点170℃、繊維径9μm、繊維長5mm)を、微細繊維状セルロース分散液(B)の固形分90質量部に対して、10質量部となるよう添加して攪拌した。次いで、シートの仕上がり坪量が75.0g/m2になるように分散液を計量して、市販のアクリル板に展開し、35℃、相対湿度15%の恒温恒湿器にて乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の金枠(内寸が180mm×180mmの金枠)を配置した。このようにして、シートを作製した。
[成形(熱プレス)]
上記シートを、厚さ2mm、寸法200mm×200mmのステンレス板で挟んだ。なお、ステンレス板としては、離型剤(オーデック社製、テフリリーズ)を挟持面に塗布したものを使用した。その後、常温に設定した熱プレス機(東洋精機工業社製、30tプレス機)に挿入して1MPaの加圧下で180℃まで昇温した後、10MPaまで加圧した。この状態で20分間保持した後、5分かけて30℃まで冷却した。上記の手順により成形体を得た。
<実施例2>
実施例1のシート化において、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維を、微細繊維状セルロース分散液(B)の固形分70質量部に対して、30質量部となるよう添加して攪拌した。その他の手順は実施例1と同様にして、シート及び成形体を得た。
<実施例3>
実施例1のシート化において、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維を、微細繊維状セルロース分散液(B)の固形分50質量部に対して、50質量部となるよう添加して攪拌した。その他の手順は実施例1と同様にして、シート及び成形体を得た。
<実施例4>
実施例2のシート化において、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維の代わりに、ポリ乳酸繊維(ユニチカ社製、PL01:融点170℃、繊維径40μm、繊維長3mm)を添加した。その他の手順は実施例2と同様にして、シート及び成形体を得た。
<実施例5>
実施例2のシート化において、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維の代わりに、低融点ポリエチレンテレフタレート繊維(クラレ社製、N701Y:融点130℃、繊維径23μm、繊維長5mm)を添加した。また、成形(熱プレス)時の温度を180℃から150℃に変更した。その他の手順は実施例2と同様にして、シート及び成形体を得た。
<実施例6>
実施例2のシート化において、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維の代わりに、酸変性ポリプロピレン繊維(ダイワボウポリテック社製、PZ−AD:融点160℃、繊維径15μm、繊維長5mm)を添加した。その他の手順は実施例2と同様にて、シート及び成形体を得た。
<比較例1>
実施例1のシート化において、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維の添加を行わなかった以外は実施例1と同様にして、シート及び成形体を得た。
<比較例2>
実施例2のシート化において、ポリエチレンオキサイド0.5質量%水溶液の添加量を、微細繊維状セルロース分散液(A)100質量部に対して100質量部とした。その他の手順は実施例2と同様にして、シート及び成形体を得た。
<比較例3>
[ウェットシート化]
実施例1で得た微細繊維状セルロース分散液(A)を、内径70mmのフィルターホルダー(アドバンテック社製、KG−90)上で、アドバンテック社製の孔径0.45μmの親水性ポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターを用い、減圧濾過してウェットシートを得た。この際、シートの固形分から計算される坪量が75.0g/m2となるよう微細繊維状セルロース分散液(A)を計量した。
[高沸点溶剤による多孔化処理]
上記ウェットシートの上部に、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルをウェットシートの固形分100質量部に対し9600質量部添加した。ジエチレングリコールエチルメチルエーテルを吸引ろ過した後、ウェットシートを105℃に加熱したシリンダードライヤーで0.1MPaに加圧しながら乾燥し、多孔質シートを得た。
[多孔質シートへの樹脂含浸]
上記多孔質シートを、熱可塑性樹脂組成物(荒川化学工業社製、ビームセット575CB:主成分はウレタンアクリレート)に浸漬させ、12時間の減圧処理(圧力50kPa)を行った。その後これを2枚のガラス板にはさみ、UVコンベア装置(アイグラフィックス社製、ECS−4011GX)を用いて300mJ/cm2の紫外線を照射し、ウレタンアクリレート樹脂組成物を硬化した。上記の手順により、微細繊維状セルロースシートに含浸された熱可塑性樹脂が複合化されたシートを得た。その後、実施例1と同様の手順で成形(熱プレス)を行い、成形体を得た。
<比較例4>
実施例1のシート化において、ポリエチレンオキサイドの添加を行わなかった以外は実施例1と同様にして、シート及び成形体を得た。
<測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得た成形体を、以下の方法にて測定した。
[厚み]
成形体の厚みを、触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)で測定した。
[熱可塑性樹脂の均一性]
成形体の一方の面の表層及び他方の面の表層をウルトラミクロトーム(JEOL社製、UC−7)でそれぞれ厚み1μmに切り出して薄膜を得た。さらに、成形体の厚み方向の中心面から厚み±0.5μmの範囲内の領域(厚み1μm)をウルトラミクロトーム(JEOL社製、UC−7)で切り出して薄膜を得た。各薄膜の重量を測定し、W1とした。次いで、薄膜を100℃に沸騰させたイオン交換水で30分間煮沸してポリエチレンオキサイドを溶出させた。さらに、薄膜を100℃の乾燥機で30分間乾燥させ、重量W2(微細繊維状セルロース分と熱可塑性樹脂分の重量の和)を測定した。次いで、薄膜を高圧容器に注いだ表1に記載の溶剤に浸漬して密閉し、100℃で30分加熱した。その後、薄膜を100℃の乾燥機で30分間乾燥させ、重量W3(微細繊維状セルロース分の重量)を測定した。次いで、下記式(1)にしたがって熱可塑性樹脂の含有率C(%)を算出した。また、一方の面の表層及び他方の面の表層の熱可塑性樹脂の含有率のうち、値の大きいものをC1、厚み方向の中心面を含む領域の熱可塑性樹脂の含有率をC2とし、C1をC2で除して熱可塑性樹脂の含有率勾配とした。算出された熱可塑性樹脂の含有率勾配を熱可塑性樹脂の均一性の指標とした。
式(1):C=100×(W2−W3)/W1
<評価>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得た成形体を、以下の方法にて評価した。
[全光線透過率]
JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて、全光線透過率を測定した。
[ヘーズ]
JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いてヘーズを測定した。
[曲げ弾性率]
JIS K 7074に準拠し、万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製、テンシロンRTC−1250A)を用いて、23℃、相対湿度50%における成形体の曲げ弾性率を測定した。
Figure 2017082071
表1から明らかなように、熱可塑性樹脂繊維を添加した実施例1〜6では、全光線透過率が高く、ヘーズの低い成形体を成形できた。熱可塑性樹脂繊維を添加していない比較例1に対して、曲げ弾性率を向上させることが可能であった。また、熱可塑性樹脂繊維としてエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維を添加した実施例1〜3のうち、実施例2で最も高い曲げ弾性率が得られた。熱可塑性樹脂繊維の添加量には最適点があることが示唆された。
一方で、ポリエチレンオキサイドの添加量が大きい比較例2では、ヘーズが悪化したうえ、曲げ弾性率も低下する結果となった。ポリエチレンオキサイドを添加していない比較例4では、ヘーズが悪化したうえ、全光線透過率が悪化する結果となった。また、多孔質シートに熱可塑性樹脂を含浸した比較例3では、熱可塑性樹脂の均一性が低く、ヘーズに加え曲げ弾性率も低下する結果となった。
<実施例101>
[シートと樹脂との成形]
実施例1で得られた成形体を、2枚のポリカーボネート樹脂シート(帝人社製、パンライトPC−1151:厚み1.0mm、寸法150mm×150mm)の間に配置し、厚さ2mm、寸法200mm×200mmのステンレス板で挟んだ。なお、ステンレス板としては、離型剤(オーデック社製、テフリリーズ)を挟持面に塗布したものを使用した。その後、常温に設定したミニテストプレス(東洋精機工業社製、MP−WCH)に挿入して1MPaの加圧下で180℃まで昇温した後、10MPaまで加圧した。この状態で5分間保持した後、5分かけて30℃まで冷却した。上記の手順により、成形体とポリカーボネート樹脂層が積層された積層体を得た。
<実施例102>
実施例101において、実施例2で得られた成形体を使用した。その他の手順は実施例101と同様にし、積層体を得た。
<実施例103>
実施例101において、実施例3で得られた成形体を使用した。その他の手順は実施例101と同様にし、積層体を得た。
<実施例104>
実施例101において、実施例4で得られた成形体を使用した。その他の手順は実施例101と同様にし、積層体を得た。
<実施例105>
実施例101において、実施例5で得られた成形体を使用した。その他の手順は実施例101と同様にし、積層体を得た。
<実施例106>
実施例101において、実施例6で得られた成形体を使用した。その他の手順は実施例101と同様にし、積層体を得た。
<比較例101>
実施例101において、比較例1で得られた成形体を使用した。その他の手順は実施例101と同様にし、積層体を得た。
<比較例102>
実施例101の樹脂の成形において、成形体を配置しなかった。その他の手順は実施例101と同様にし、2層構成のポリカーボネート樹脂シートを得た。
<測定>
実施例101〜106及び比較例101で得た積層体、及び比較例102で得たポリカーボネート樹脂シートを、以下の方法にて測定した。
[厚み]
積層体及びポリカーボネート樹脂シートの厚みを触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)で測定した。
<評価>
実施例101〜106及び比較例101で得た積層体、及び比較例102で得たポリカーボネート樹脂シートを、以下の方法にて評価した。
[密着性]
JIS K 5400に準拠し、100マスの切り込みを入れ、テープ剥離後のはく離マス数を計数して成形体と樹脂層の密着性を評価した。
[曲げ弾性率]
JIS K 7074に準拠し、万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製、テンシロンRTC−1250A)を用いて、23℃、相対湿度50%において積層体及びポリカーボネート樹脂シートの曲げ弾性率を測定した。
[線熱膨張係数]
積層体及びポリカーボネート樹脂シートをレーザーカッターにより、幅3mm×長さ30mmに切り出した。これを、熱機械分析装置(日立ハイテク社製、TMA7100)にセットして、引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下の条件で、室温から180℃まで5℃/分で昇温させた。この際の100℃から150℃までの測定値から線熱膨張係数を算出した。
[全光線透過率]
JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて、積層体及びポリカーボネート樹脂シートの全光線透過率を測定した。
[ヘーズ]
JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて、積層体及びポリカーボネート樹脂シートのヘーズを測定した。
Figure 2017082071
表2から明らかなように、熱可塑性樹脂繊維を含有する成形体を使用した実施例101〜106では、熱可塑性樹脂繊維を含有しない比較例101に対し、成形体と樹脂層の密着性が優れていた。また、熱可塑性樹脂繊維を含有する成形体を使用した実施例101〜106では、比較例102のポリカーボネート樹脂シートと比較して、優れた曲げ弾性率が得られた。また、線熱膨張係数を顕著に低減できた。さらに実施例101〜106では全光線透過率が高く、ヘーズが小さい積層体が得られた。
このように、成形体は樹脂補強用シートとしても使用でき、特に透明性の高い樹脂の補強用シートとして好適であることが確認された。
6 樹脂層
10 成形体
20 積層体
34 耐熱テープ
35 平板金型
35a 注入口
36 樹脂シート

Claims (21)

  1. 繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂繊維と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含むシートであって、
    前記含酸素有機化合物の含有量は、前記シートの全質量に対して20質量%以下であるシート。
  2. 前記含酸素有機化合物は、親水性の有機化合物である請求項1に記載のシート。
  3. 前記含酸素有機化合物は、オキシアルキレン構造を含有する有機化合物である請求項1又は2に記載のシート。
  4. 前記含酸素有機化合物は、分子量が5万以上800万以下の有機化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート。
  5. 前記含酸素有機化合物は、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキサイドから選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
  6. 前記熱可塑性樹脂繊維がポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種を含む繊維である請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート。
  7. 前記微細繊維状セルロースはリン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート。
  8. 前記熱可塑性樹脂繊維の含有量は、前記シートの全質量に対して、15質量%以上45質量%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート。
  9. 前記熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形した成形体の全光線透過率が70%以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載のシート。
  10. 前記熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形した成形体のヘーズが20%以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載のシート。
  11. 前記熱可塑性樹脂繊維の融点+50℃、かつ10MPaの条件で加熱加圧成形した成形体の23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率が7GPa以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載のシート。
  12. 繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、熱可塑性樹脂と、非繊維状の含酸素有機化合物とを含む成形体であって、
    前記含酸素有機化合物の含有量は、前記成形体の全質量に対して20質量%以下である成形体。
  13. 前記熱可塑性樹脂は疎水性であり、前記含酸素有機化合物は親水性である請求項12に記載の成形体。
  14. 前記成形体のいずれか一方の表面であって、熱可塑性樹脂が多く含まれる方の表面から厚み1μmまでの領域における熱可塑性樹脂の含有率をC1質量%とし、
    前記成形体の中心面から厚み±0.5μmの範囲内の領域における熱可塑性樹脂の含有率をC2質量%とした場合、
    C1/C2の値が0.25以上3以下である請求項12又は13に記載の成形体。
  15. 全光線透過率が70%以上である請求項12〜14のいずれか1項に記載の成形体。
  16. ヘーズが20%以下である請求項12〜15のいずれか1項に記載の成形体。
  17. 23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率が7GPa以上である請求項12〜16のいずれか1項に記載の成形体。
  18. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のシートを加熱加圧成形する工程を含み、
    前記加熱加圧成形する工程における成形温度が、前記熱可塑性樹脂の融点±20℃である成形体の製造方法。
  19. 請求項12〜17のいずれか1項に記載の成形体と、樹脂層とを有する積層体。
  20. 前記樹脂層はポリカーボネートを含む請求項19に記載の積層体。
  21. 23℃、相対湿度50%における曲げ弾性率が2.5GPa以上であり、かつ線熱膨張係数が200ppm/K以下である請求項19又は20に記載の積層体。
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