JP2019143725A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両のずり下がり中に発進要求が生じた際、ベルト式無段変速機構へ入力されるトルクの上昇を抑えることができる自動変速機の制御装置を提供する。【解決手段】エンジンから駆動輪への間に設けられ、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間に掛け渡されたベルトと、を有するバリエータと、エンジンとバリエータとの間に設けられ、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、ロックアップクラッチを制御するロックアップ制御部と、を備えている。そして、ロックアップ制御部は、車両のずり下がり中に発進要求が発生したと判定したとき、ロックアップクラッチを締結方向に作動させる構成とした。【選択図】図4
Description
本発明は、走行駆動源とベルト式無段変速機構との間に設けられ、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータを備えた自動変速機の制御装置に関するものである。
従来、車両が登坂路等において進行方向とは逆の方向にずり下がった際、予め設定した固定トルク比とエンジン出力トルクに基づいて、ベルト式無段変速機構への入力トルクを演算する自動変速機の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、車両がずり下がっているときには、エンジンとベルト式無段変速機構との間に設けたトルクコンバータにおけるトルク比が、進行方向に走行するときよりも大きくなる。さらに、アクセルが踏み込まれる等して発進要求が生じたときには、エンジン回転数Neが上昇してエンジントルクが増大する。これらのことから、車両がずり下がっているときに発進要求が発生すると、ベルト式無段変速機構への入力トルクであるトルクコンバータの出力トルクは急激に上昇する。そのため、従来の自動変速機の制御装置のように、固定トルク比とエンジン出力トルクに基づいてベルト式無段変速機構への入力トルクを演算しても、この入力トルクの演算値が実際よりも少なくなるおそれがある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、車両のずり下がり中に発進要求が生じた際、ベルト式無段変速機構へ入力されるトルクの上昇を抑えることができる自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機の制御装置は、車両の走行駆動源から駆動輪への動力伝達経路に設けられ、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間に掛け渡されたベルトと、を有するベルト式無段変速機構と、走行駆動源とベルト式無段変速機構との間の動力伝達経路に設けられ、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、ロックアップクラッチを制御するロックアップ制御部と、を備えている。
そして、ロックアップ制御部は、車両のずり下がり中に発進要求が発生したと判定したとき、ロックアップクラッチを締結方向に作動させる。
そして、ロックアップ制御部は、車両のずり下がり中に発進要求が発生したと判定したとき、ロックアップクラッチを締結方向に作動させる。
よって、本発明では、車両のずり下がり中に発進要求が生じた際、ベルト式無段変速機構へ入力されるトルクの上昇を抑えることができる。
以下、本発明の自動変速機の制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1における自動変速機の制御装置は、トルクコンバータと、前後進切替機構と、バリエータと、終減速機構と、を有するベルト式無段変速機(自動変速機の一例)を搭載したエンジン車(車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の自動変速機の制御装置の構成を、「全体システムの構成」、「自動変速機の制御装置の構成」、「ずり下がり発進時ロックアップ制御処理フロー」、に分けて説明する。
実施例1における自動変速機の制御装置は、トルクコンバータと、前後進切替機構と、バリエータと、終減速機構と、を有するベルト式無段変速機(自動変速機の一例)を搭載したエンジン車(車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の自動変速機の制御装置の構成を、「全体システムの構成」、「自動変速機の制御装置の構成」、「ずり下がり発進時ロックアップ制御処理フロー」、に分けて説明する。
[全体システムの構成]
実施例1のエンジン車の駆動系は、図1に示すように、エンジン1と、ベルト式無段変速機CVTと、差動ギア機構5Aと、駆動輪6,6と、を備えている。ここで、ベルト式無段変速機CVTは、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、バリエータ4(ベルト式無段変速機構)と、終減速機構5と、これらを内蔵する図示しない変速機ケースと、を備えている。
実施例1のエンジン車の駆動系は、図1に示すように、エンジン1と、ベルト式無段変速機CVTと、差動ギア機構5Aと、駆動輪6,6と、を備えている。ここで、ベルト式無段変速機CVTは、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、バリエータ4(ベルト式無段変速機構)と、終減速機構5と、これらを内蔵する図示しない変速機ケースと、を備えている。
エンジン1は、実施例1のエンジン車の走行駆動源であり、運転者のアクセル操作に基づく出力トルクの制御と、外部から入力したエンジン制御信号に基づく出力トルクの制御とが可能である。エンジン1は、スロットルバルブ開閉動作や燃料カット動作等により出力トルクの制御を行うエンジントルク制御アクチュエータ10を有する。なお、以下では、エンジン1からの出力トルクを「エンジントルク」という。
トルクコンバータ2は、入力されたトルクを増大して出力する機能(以下、「トルク増大機能」という)や入力されたトルクの変動を吸収して出力する機能(以下、「トルク変動吸収機能」という)を有する流体継手による発進要素である。このトルクコンバータ2は、ポンプインペラ23と、タービンランナ24と、ステータ26と、を有する。なお、ポンプインペラ23は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結されている。タービンランナ24は、トルクコンバータ出力軸21に連結されている。ステータ26は、コンバータケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられている。
さらに、このトルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ20を有している。ロックアップクラッチ20は、トルクコンバータ2に対して並列に設けられ、締結することでエンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21とを直結する。なお、このロックアップクラッチ20は、トルク増大機能やトルク変動吸収機能を必要としないときに締結され、締結中に車速VSPがロックアップ解除車速まで低下すると解放される。
前後進切替機構3は、バリエータ4への入力回転方向を前進走行時の正回転方向と後退走行時の逆回転方向とで切り替える機構である。この前後進切替機構3は、ダブルピニオン式遊星歯車30と、前進クラッチ31と、後退ブレーキ32と、を有する。
前進クラッチ31は、複数のドリブンプレート31aと、複数のドライブプレート31bと、を有する。ここで、ドリブンプレート31aは、トルクコンバータ出力軸21と一体で回転する第1クラッチドラム31cに支持されている。また、ドライブプレート31bは、ダブルピニオン式遊星歯車30のピニオンを介してバリエータ入力軸40と一体で回転する第2クラッチドラム31dに支持されている。そして、この前進クラッチ31は、ドライブレンジ(Dレンジ)等の前進走行レンジが選択されているときに前進クラッチ圧Pfcが供給され、ドリブンプレート31aとドライブプレート31bとが締結される。
後退ブレーキ32は、変速機ケースの内周にスプライン嵌合したドリブンプレート32aと、ダブルピニオン式遊星歯車30のクラッチドラムの外周にスプライン嵌合したドライブプレート32bと、を有する。そして、この後退ブレーキ32は、リバースレンジ(Rレンジ)等の後退走行レンジが選択されているときに後退ブレーキ圧Prbが供給され、ドリブンプレート32aとドライブプレート32bとが締結される。
なお、前進クラッチ31と後退ブレーキ32は、ニュートラルレンジ(Nレンジ)が選択されているときに、前進クラッチ圧Pfcと後退ブレーキ圧Prbがドレーンされ、いずれも解放される。
バリエータ4(ベルト式無段変速機構)は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、ベルト44と、を有し、ベルト44の接触半径の変化により変速比(バリエータ入力回転とバリエータ出力回転の比)を無段階に変化させる。プライマリプーリ42は、バリエータ入力軸40の同軸上に配された固定プーリ42aとスライドプーリ42bとを有する。スライドプーリ42bは、プライマリ圧Ppriがプライマリ圧室45内に作用することで軸方向に移動する。セカンダリプーリ43は、バリエータ出力軸41の同軸上に配された固定プーリ43aとスライドプーリ43bとを有する。スライドプーリ43bは、セカンダリ圧Psecがセカンダリ圧室46内に作用することで軸方向に移動する。
ベルト44は、プライマリプーリ42の固定プーリ42aとスライドプーリ42bによって形成されたV字形状のシーブ面と、セカンダリプーリ43の固定プーリ43aとスライドプーリ43bによって形成されたV字形状のシーブ面との間に掛け渡されている。このベルト44は、環状ベルト部材を内から外へ多数重ね合わせた二組の積層リングと、打ち抜き板材により形成されて二組の積層リングに沿って挟み込まれて環状に積層した多数のエレメントと、を有している。なお、ベルト44は、プーリ進行方向に多数配列したチェーンエレメントを、プーリ軸方向に貫通するピンにより結合したチェーンタイプのベルトであってもよい。
終減速機構5は、バリエータ出力軸41からのバリエータ出力回転を減速し、差動ギア機構5Aに伝達する機構である。この終減速機構5は、バリエータ出力軸41に設けられたアウトプットギア52と、アイドラ軸50に設けられたアイドラギア53及びリダクションギア54と、デフケースの外周位置に設けられたファイナルギア55と、を有する。
また、差動ギア機構5Aは、左右の駆動輪6,6に生じる速度差を吸収しつつ、左右の駆動輪6,6に対して駆動力を等分に伝達する機構である。この差動ギア機構5Aは、左右のドライブ軸51,51に介装されたディファレンシャルギア56を有する。
エンジン車の制御系は、図1に示すように、油圧制御系を代表する油圧制御ユニット7と、電子制御系を代表するCVTコントロールユニット8と、を備えている。
油圧制御ユニット7は、プライマリ圧室45に供給されるプライマリ圧Ppri、セカンダリ圧室46に供給されるセカンダリ圧Psec、前進クラッチ31へ供給される前進クラッチ圧Pfc、後退ブレーキ32へ供給される後退ブレーキ圧Prb等を調圧するユニットである。この油圧制御ユニット7は、各種の制御圧の油圧源となるオイルポンプ70と、オイルポンプ70からの吐出圧に基づいて各種の制御圧を調圧する油圧制御回路71と、を備える。
オイルポンプ70は、エンジン出力軸11にチェーン機構及び電磁クラッチ等からなるポンプクラッチを介して接続され、エンジントルクによって駆動される。すなわち、このオイルポンプ70は、エンジン1が回転することで駆動し、オイルポンプ70の吐出圧は、エンジン出力軸11の回転数が高いほど増大する。
油圧制御回路71は、ライン圧ソレノイド弁72と、プライマリ圧ソレノイド弁73と、セカンダリ圧ソレノイド弁74と、セレクトソレノイド弁75と、ロックアップ圧ソレノイド弁76と、を有する。
ライン圧ソレノイド弁72は、CVTコントロールユニット8から出力されるライン圧指令値に応じ、オイルポンプ70からの吐出圧を指令されたライン圧PLに調圧する。ライン圧PLは、各種の制御圧を調圧する際の元圧であり、駆動系を伝達するトルクに対してベルトスリップやクラッチスリップを抑える油圧とされる。
プライマリ圧ソレノイド弁73は、元圧であるライン圧PLを減圧し、CVTコントロールユニット8から出力されたプライマリ圧指令値によって決まるプライマリ圧Ppriに調整する。セカンダリ圧ソレノイド弁74は、元圧であるライン圧PLを減圧し、CVTコントロールユニット8から出力されたセカンダリ圧指令値によって決まるセカンダリ圧Psecに調整する。プライマリ圧Ppri及びセカンダリ圧Psecを制御することで、プライマリプーリ42によってベルト44を挟み込む力(ベルトクランプ力)及びセカンダリプーリ43によってベルト44を挟み込む力(ベルトクランプ力)が変化する。
セレクトソレノイド弁75は、元圧であるライン圧PLを減圧し、CVTコントロールユニット8から出力された前進クラッチ圧指令値によって決まる前進クラッチ圧Pfc、又は後退ブレーキ圧指令値によって決まる後退ブレーキ圧Prbに調整する。前進クラッチ圧Pfcを制御することで、前進クラッチ31のクラッチ容量が変化する。また、後退ブレーキ圧Prbを制御することで、後退ブレーキ32のクラッチ容量が変化する。
ロックアップ圧ソレノイド弁76は、CVTコントロールユニット8から出力されたロックアップ圧指令値に基づいて、ロックアップ制御圧PL/Uを制御する。「ロックアップ制御圧PL/U」は、ロックアップクラッチ20の差圧であり、このロックアップ制御圧PL/Uを制御することで、ロックアップクラッチ20は締結、スリップ締結又は解放される。
CVTコントロールユニット8は、ライン圧制御、変速制御、前後進切替制御、通常ロックアップ制御等を行う。すなわち、ライン圧制御では、CVTコントロールユニット8は、アクセル開度APO等によって決められた目標ライン圧を得る指令値をライン圧ソレノイド弁72に出力する。変速制御では、CVTコントロールユニット8は、目標変速比(目標プライマリ回転数Npri*)を得る指令値をプライマリ圧ソレノイド弁73及びセカンダリ圧ソレノイド弁74に出力する。なお、目標変速比(目標プライマリ回転数Npri*)は、アクセル開度APO及び車速VSP等によって決められる。前後進切替制御では、CVTコントロールユニット8は、選択されているレンジ位置によって決まる前進クラッチ31又は後退ブレーキ32の締結又は解放を制御する指令値をセレクトソレノイド弁75に出力する。通常ロックアップ制御では、CVTコントロールユニット8は、進行方向への走行中、車速VSP等によって設定されたロックアップ制御圧PL/Uを制御する指令値をロックアップ圧ソレノイド弁76に出力する。なお、ロックアップ制御圧PL/Uを制御することで、ロックアップクラッチ20は締結、スリップ締結、解放が行われる。
CVTコントロールユニット8には、プライマリ回転センサ80、車速センサ81、セカンダリ圧センサ82、油温センサ83、インヒビタスイッチ84、ブレーキスイッチ85、アクセル開度センサ86、プライマリ圧センサ87、タービン回転センサ89、セカンダリ回転センサ90等からのセンサ情報やスイッチ情報が入力される。また、エンジンコントロールユニット88には、エンジン回転センサ12からのセンサ情報が入力される。ここで、CVTコントロールユニット8は、エンジンコントロールユニット88からエンジントルク情報が入力され、エンジンコントロールユニット88へエンジントルクリクエストを出力する。
図2は、ベルト式無段変速機CVTにおいて、Dレンジ変速モードで用いられるDレンジ無段変速スケジュールの一例を示す。
「Dレンジ変速モード」は、Dレンジ選択時に、車両運転状態に応じてバリエータ4によって変速比を自動的に無段階に変更する自動変速モードである。「Dレンジ変速モード」での変速制御では、Dレンジ無段変速スケジュール上での運転点(VSP,APO)により、目標プライマリ回転数Npri*を決める。ここで、目標プライマリ回転数Npri*は、車速センサ81によって検出した車速VSPと、アクセル開度センサ86によって検出したアクセル開度APOにより特定される。そして、プライマリ圧Ppriやセカンダリ圧Psecを制御し、プライマリ回転センサ80によって検出されたプライマリ回転数Npriを、目標プライマリ回転数Npri*に一致させる。
すなわち、「Dレンジ変速モード」で用いられるDレンジ無段変速スケジュールは、図2に示すように、運転点(VSP,APO)に応じて最Low変速比と最High変速比による変速比幅の範囲内で変速比を無段階に変更するように設定されている。例えば、車速VSPが一定のときに運転者がアクセル踏み込み操作を行う場合には、目標プライマリ回転数Npri*が上昇して最Low変速比に向かって変速する。また、車速VSPが一定のときに運転者がアクセル戻し操作を行う場合には、目標プライマリ回転数Npri*が低下して最High変速比に向かって変速する。また、アクセル開度APOが一定のときに車速VSPが上昇する場合には、最High変速比に向かって変速する。また、アクセル開度APOが一定のときに車速VSPが低下する場合には、最Low変速比に向かって変速する。
[自動変速機の制御装置の構成]
実施例1の自動変速機の制御装置は、図3に示すように、ロックアップクラッチ20と、ロックアップ圧ソレノイド弁76と、ロックアップ制御部8aと、を備えている。そして、ロックアップ制御部8aへ入力情報を提供する主なセンサ・スイッチ類として、エンジン回転センサ12と、車速センサ81と、セカンダリ圧センサ82と、インヒビタスイッチ84と、アクセル開度センサ86と、タービン回転センサ89と、を備えている。
実施例1の自動変速機の制御装置は、図3に示すように、ロックアップクラッチ20と、ロックアップ圧ソレノイド弁76と、ロックアップ制御部8aと、を備えている。そして、ロックアップ制御部8aへ入力情報を提供する主なセンサ・スイッチ類として、エンジン回転センサ12と、車速センサ81と、セカンダリ圧センサ82と、インヒビタスイッチ84と、アクセル開度センサ86と、タービン回転センサ89と、を備えている。
エンジン回転センサ12は、エンジン回転数Neをパルスカウント数により検出するセンサである。このエンジン回転数Neは、エンジン出力軸11の回転数であり、トルクコンバータ2の入力回転数に相当する。
タービン回転センサ89は、タービン回転数Ntbをパルスカウント数により検出するセンサである。このタービン回転数Ntbは、トルクコンバータ2のタービンランナ24に連結されたトルクコンバータ出力軸21の回転数であり、トルクコンバータ2の出力回転数に相当する。
インヒビタスイッチ84は、運転者が操作したセレクトレバーやセレクトスイッチ(不図示)により選択されているレンジ位置(例えばDレンジ、Nレンジ、Rレンジ等)を検出し、レンジ位置に応じたレンジ位置信号を出力する。
車速センサ81は、エンジン車が走行するときの車両速度である車速VSPを検出する。アクセル開度センサ86は、運転者によるアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APOを検出する。セカンダリ圧センサ82は、バリエータ4のセカンダリ圧室46に供給されるセカンダリ圧Psecを検出する。バリエータ4のベルト容量は、このセカンダリ圧Psecに依存して決まる。
ロックアップ制御部8aは、CVTコントロールユニット8に設けられ、ずり下がり発進時ロックアップ制御処理を行う。ずり下がり発進時ロックアップ制御処理は、エンジン車のずり下がり中に発進要求が生じたと判定したときに実行され、ロックアップ制御部8aからロックアップ圧ソレノイド弁76に対して、ロックアップクラッチ20を締結方向に作動させる指令値を出力する。ロックアップ圧ソレノイド弁76は、入力された指令値に基づいてロックアップ制御圧PL/Uを制御する。これにより、ロックアップクラッチ20は締結方向へ作動し、解放状態からスリップ締結状態になる。なお、「ロックアップクラッチ20を締結方向に作動させる」とは、ロックアップクラッチ20の締結容量がない、又は締結容量が小さい状態から、ロックアップクラッチ20の締結容量がある、又は締結容量が大きい状態へと作動させることである。
なお、「エンジン車のずり下がり」とは、進行方向に対して逆の方向にエンジン車が走行することである。ロックアップ制御部8aは、エンジン出力軸11の回転方向に対してトルクコンバータ出力軸21の回転方向が逆方向になったときに、ずり下がり発生と判定する。ここで、エンジン出力軸11の回転方向は、エンジン回転センサ12によって検出する。また、トルクコンバータ出力軸21の回転方向は、タービン回転センサ89によって検出する。
「発進要求」とは、運転者による進行方向への進行意図である。ロックアップ制御部8aは、Dレンジ等の前進走行レンジを選択している状態で運転者によってアクセルペダルが踏み込み操作されたときに、発進要求ありと判定する。ここで、前進走行レンジの選択は、インヒビタスイッチ84によって検出し、アクセルペダルの踏み込み操作は、アクセル開度センサ86によって検出する。
「発進要求」とは、運転者による進行方向への進行意図である。ロックアップ制御部8aは、Dレンジ等の前進走行レンジを選択している状態で運転者によってアクセルペダルが踏み込み操作されたときに、発進要求ありと判定する。ここで、前進走行レンジの選択は、インヒビタスイッチ84によって検出し、アクセルペダルの踏み込み操作は、アクセル開度センサ86によって検出する。
また、ロックアップ制御部8aは、ロックアップクラッチ20を締結方向の作動させる際、目標速度比を設定する。そして、ロックアップクラッチ20を締結方向に作動させてスリップ締結状態にしたとき、実速度比が設定した目標速度比に一致するようにロックアップクラッチ20のスリップ量を制御する。
ここで、「速度比」とは、トルクコンバータ2の入力回転数(エンジン回転数Ne=エンジン出力軸11の回転数)と、トルクコンバータ2の出力回転数(タービン回転数Ntb=トルクコンバータ出力軸21の回転数)との比である。この速度比は、下記式(1)によって算出される。
速度比=トルクコンバータ出力回転数/トルクコンバータ入力回転数 ・・・(1)
また、「目標速度比」は、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になる最大値に設定される。
速度比=トルクコンバータ出力回転数/トルクコンバータ入力回転数 ・・・(1)
また、「目標速度比」は、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になる最大値に設定される。
ここで、「バリエータ4での必要油圧」とは、ベルト44をスリップさせないベルト容量を確保するために必要なセカンダリ圧Psecである。なお、バリエータ4のベルト容量は、セカンダリ圧室46に供給されるセカンダリ圧Psecに依存して決まる。つまり、「バリエータ4での必要油圧を確保する」とは、ベルト44をスリップさせないベルト容量となるように、セカンダリ圧室46にセカンダリ圧Psecが供給されている状態とすることである。また、セカンダリ圧Psecは、オイルポンプ70からの吐出圧に応じて変動し、オイルポンプ70からの吐出圧は、エンジン出力軸11の回転数に比例する。
また、このずり下がり発進時ロックアップ制御処理では、ロックアップクラッチ20を締結方向へ作動させた後、バリエータ4におけるベルトクランプ力が確保されたと判定したとき、ロックアップ制御部8aからロックアップ圧ソレノイド弁76に対して、ロックアップクラッチ20を解放方向に作動させる指令値を出力する。ロックアップ圧ソレノイド弁76は、入力された指令値に基づいてロックアップ制御圧PL/Uを制御する。これにより、ロックアップクラッチ20は解放方向へ作動し、スリップ量が低下していく。
なお、「バリエータ4におけるベルトクランプ力」とは、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ43によってベルト44を挟み込む力である。ここでは、ロックアップ制御部8aは、オイルポンプ70に接続されたエンジン出力軸11の回転数が、オイルポンプ70の吐出圧を必要圧(ベルトクランプ力の確保に必要な制御圧を得られる値)にする所定値に達したとき、バリエータ4におけるベルトクランプ力が確保されたと判定する。なお、「ベルトクランプ力が確保された」とは、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ43によってベルト44を挟み込む力によって、ベルト44をスリップさせない状態になっていることである。
また、ロックアップ制御部8aは、ロックアップクラッチ20を解放方向へ作動させる際にも、目標速度比を設定する。そして、ロックアップクラッチ20を解放する方向へ作動させつつ、実速度比が設定した目標速度比に一致するようにスリップ量を制御する。
ここで、「目標速度比」は、以下の三つの条件が成立する値に設定される。すなわち、第1条件は、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になることである。第2条件は、バリエータ4に入力されるトルク(=トルクコンバータ2から出力されるトルク)を、ベルト容量を上回らない値に抑えることである。第3条件は、できるだけ速やかにロックアップクラッチ20を完全解放することである。
ここで、「目標速度比」は、以下の三つの条件が成立する値に設定される。すなわち、第1条件は、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になることである。第2条件は、バリエータ4に入力されるトルク(=トルクコンバータ2から出力されるトルク)を、ベルト容量を上回らない値に抑えることである。第3条件は、できるだけ速やかにロックアップクラッチ20を完全解放することである。
[ずり下がり発進時ロックアップ制御処理フロー]
以下、図4に基づいて、実施例1のロックアップ制御部8aにおいて実行されるずり下がり発進時ロックアップ制御処理フローを説明する。なお、このずり下がり発進時ロックアップ制御処理フローは、イグニッションスイッチがONされている間は継続して実行され続ける。
以下、図4に基づいて、実施例1のロックアップ制御部8aにおいて実行されるずり下がり発進時ロックアップ制御処理フローを説明する。なお、このずり下がり発進時ロックアップ制御処理フローは、イグニッションスイッチがONされている間は継続して実行され続ける。
ステップS1では、エンジン車がずり下がり中であるか否かを判定する。YES(ずり下がり中)の場合はステップS2へ進む。NO(非ずり下がり中)の場合は、このずり下がり発進時ロックアップ制御処理フローの実行が不要であるとしてリターンへ進む。
ここで、ロックアップ制御部8aは、車速VSPの発生中にエンジン出力軸11の回転方向に対してトルクコンバータ出力軸21の回転方向が逆方向になっているときにずり下がり中と判定する。また、ロックアップ制御部8aは、車速VSPがゼロのときや、エンジン出力軸11の回転方向とトルクコンバータ出力軸21の回転方向とが一致しているときには非ずり下がり中と判定する。なお、エンジン出力軸11の回転方向はエンジン回転センサ12によって検出し、トルクコンバータ出力軸21の回転方向はタービン回転センサ89によって検出する。
ここで、ロックアップ制御部8aは、車速VSPの発生中にエンジン出力軸11の回転方向に対してトルクコンバータ出力軸21の回転方向が逆方向になっているときにずり下がり中と判定する。また、ロックアップ制御部8aは、車速VSPがゼロのときや、エンジン出力軸11の回転方向とトルクコンバータ出力軸21の回転方向とが一致しているときには非ずり下がり中と判定する。なお、エンジン出力軸11の回転方向はエンジン回転センサ12によって検出し、トルクコンバータ出力軸21の回転方向はタービン回転センサ89によって検出する。
ステップS2では、ステップS1での車両ずり下がり中との判定に続き、発進要求が生じたか否かを判定する。YES(発進要求あり)の場合はステップS3へ進む。NO(発進要求なし)の場合は、このずり下がり発進時ロックアップ制御処理フローの実行が不要であるとしてリターンへ進む。
ここで、ロックアップ制御部8aは、前進走行レンジを選択している状態で運転者がアクセルペダルを踏み込み操作したとき発進要求ありと判定し、ブレーキ操作等が行われたときには発進要求なしと判定する。なお、アクセルペダルの踏み込み操作の有無は、アクセル開度センサ86によって検出する。
ここで、ロックアップ制御部8aは、前進走行レンジを選択している状態で運転者がアクセルペダルを踏み込み操作したとき発進要求ありと判定し、ブレーキ操作等が行われたときには発進要求なしと判定する。なお、アクセルペダルの踏み込み操作の有無は、アクセル開度センサ86によって検出する。
ステップS3では、ステップS2での発進要求ありとの判定に続き、トルクコンバータ2の目標速度比を設定し、ステップS4へ進む。
ここで、ロックアップ制御部8aは、目標速度比を、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になる最大値に設定する。
ここで、ロックアップ制御部8aは、目標速度比を、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になる最大値に設定する。
ステップS4では、ステップS3での目標速度比の設定に続き、ロックアップクラッチ20を締結方向に作動させ、ロックアップクラッチ20をスリップ締結状態にし、ステップS5へ進む。
このとき、ロックアップ制御部8aは、実速度比がステップS3にて設定した目標速度比に一致するように、スリップ締結状態になったロックアップクラッチ20のスリップ量を制御する。
このとき、ロックアップ制御部8aは、実速度比がステップS3にて設定した目標速度比に一致するように、スリップ締結状態になったロックアップクラッチ20のスリップ量を制御する。
ステップS5では、ステップS4でのロックアップクラッチ20の締結方向への作動に続き、バリエータ4におけるベルトクランプ力が確保されたか否かを判定する。YES(ベルトクランプ力確保)の場合はステップS6へ進む。NO(ベルトクランプ力が確保されていない)の場合はステップS3へ戻る。
ここで、ロックアップ制御部8aは、エンジン出力軸11の回転数が予め設定した所定値に達したとき、ベルトクランプ力が確保されたと判定し、エンジン出力軸11の回転数が所定値に未満のときにはベルトクランプ力が確保されていないと判定する。なお、「所定値」は、オイルポンプ70の吐出圧を、ベルトクランプ力の確保に必要な制御圧を得られる値にする回転数である。
ここで、ロックアップ制御部8aは、エンジン出力軸11の回転数が予め設定した所定値に達したとき、ベルトクランプ力が確保されたと判定し、エンジン出力軸11の回転数が所定値に未満のときにはベルトクランプ力が確保されていないと判定する。なお、「所定値」は、オイルポンプ70の吐出圧を、ベルトクランプ力の確保に必要な制御圧を得られる値にする回転数である。
ステップS6では、ステップS5でのベルトクランプ力確保との判定に続き、トルクコンバータ2の目標速度比を再度設定し、ステップS7へ進む。
ここで、ロックアップ制御部8aは、目標速度比を、以下の三つの条件が成立する値に設定する。
・エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になること。
・バリエータ4に入力されるトルクを、ベルト容量を上回らない値に抑えること。
・できるだけ速やかにロックアップクラッチ20を完全解放すること。
ここで、ロックアップ制御部8aは、目標速度比を、以下の三つの条件が成立する値に設定する。
・エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になること。
・バリエータ4に入力されるトルクを、ベルト容量を上回らない値に抑えること。
・できるだけ速やかにロックアップクラッチ20を完全解放すること。
ステップS7では、ステップS6での目標速度比の設定に続き、ロックアップクラッチ20を解放方向に作動させ、ステップS8へ進む。
このとき、ロックアップ制御部8aは、実速度比がステップS3にて設定した目標速度比に一致するように、スリップ締結状態のロックアップクラッチ20のスリップ量を制御する。
このとき、ロックアップ制御部8aは、実速度比がステップS3にて設定した目標速度比に一致するように、スリップ締結状態のロックアップクラッチ20のスリップ量を制御する。
ステップS8では、ステップS7でのロックアップクラッチ20の解放方向への作動に続き、エンジン車のずり下がりが解消されたか否かを判定する。YES(ずり下がり解消)の場合はステップS9へ進む。NO(すり下がり中)の場合はステップS6へ戻る。
ここで、ロックアップ制御部8aは、車速VSPがゼロになったときにずり下がり解消と判定する。なお、「ずり下がり解消」とは、エンジン車の発進が可能になったことを意味する。なお、車速VSPは車速センサ81によって検出される。
ここで、ロックアップ制御部8aは、車速VSPがゼロになったときにずり下がり解消と判定する。なお、「ずり下がり解消」とは、エンジン車の発進が可能になったことを意味する。なお、車速VSPは車速センサ81によって検出される。
ステップS9では、ステップS8でのずり下がり解消との判定に続き、発進準備としてロックアップクラッチ20を完全解放し、ステップS10へ進む。
ステップS10では、ステップS9でのロックアップクラッチ20の解放に続き、通常発進制御を実行し、リターンへ進む。
ここで、「通常発進制御」とは、ロックアップクラッチ20を解放し、アクセル開度APOに応じて設定されたエンジン1からのエンジントルクを駆動輪6,6へと伝達して発進する制御である。
ここで、「通常発進制御」とは、ロックアップクラッチ20を解放し、アクセル開度APOに応じて設定されたエンジン1からのエンジントルクを駆動輪6,6へと伝達して発進する制御である。
次に、「エンジン車のずり下がり発生時における課題」を説明し、続いて、実施例1の自動変速機の制御装置における「ずり下がり発進時ロックアップ制御作用」を説明する。
[エンジン車のずり下がり発生時における課題]
走行駆動源となるエンジン1と、エンジン1から駆動輪6,6への動力伝達経路に設けられたバリエータ4と、エンジン1とバリエータ4との間の動力伝達経路に設けられたロックアップクラッチ20を有するトルクコンバータ2と、を有するエンジン車において、ずり下がりが生じた場合を考える。
走行駆動源となるエンジン1と、エンジン1から駆動輪6,6への動力伝達経路に設けられたバリエータ4と、エンジン1とバリエータ4との間の動力伝達経路に設けられたロックアップクラッチ20を有するトルクコンバータ2と、を有するエンジン車において、ずり下がりが生じた場合を考える。
エンジン車にずり下がりが生じたときには、トルクコンバータ2内のタービンランナ24は、エンジン車が進行方向に走行しているとき(以下「通常時」という)とは逆方向に回転する。そして、図5に示すように、ずり下がり中のトルクコンバータ2におけるトルク比は、通常時と比べて大きくなる。
一方、発進するために運転者によってアクセルペダルが踏み込まれた場合には、アクセル開度APOに応じたエンジントルクを出力するために、エンジン回転数Neが上昇する。そして、エンジン回転数Neが上昇することで、エンジン1から出力されるエンジントルクが増大し、トルクコンバータ2へは増大したエンジントルクが入力する。ここで、上述のように、車両ずり下がり時には、トルクコンバータ2のトルク比が通常時よりも大きく、トルク増大機能が通常時よりも強く作用する。そのため、トルクコンバータ2の出力トルクは、通常時よりも増大する。
これらのことから、エンジン車のずり下がり途中で発進要求が生じたときには、トルクコンバータ2の出力トルクは急激に上昇し、バリエータ4に入力するトルクが急上昇する。
これに対し、バリエータ4のベルトクランプ力を作り出す油圧(ベルト容量=セカンダリ圧Psecに依存して決まる)は、油圧制御回路71での応答遅れ等の影響により、運転者のアクセルペダルが踏み込まれたタイミングよりも遅れて上昇する。そのため、バリエータ4では、入力トルクの急上昇に対してベルト容量の増大が追い付かず、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ43に対してベルト44がスリップするベルトスリップが生じるという問題が発生する。
[ずり下がり発進時ロックアップ制御作用]
以下、図6に基づいて、実施例1の自動変速機の制御装置におけるずり下がり発進時ロックアップ制御作用を説明する。
以下、図6に基づいて、実施例1の自動変速機の制御装置におけるずり下がり発進時ロックアップ制御作用を説明する。
実施例1の自動変速機の制御装置のロックアップ制御部8aでは、車両が進行方向と逆方向にずり下がっているときに発進要求が入力したと判定したとき、ロックアップクラッチ20を締結方向に作動させるずり下がり発進時ロックアップ制御処理を実行する。
すなわち、図6に示す時刻t1時点において、運転者がブレーキペダルを解放してブレーキがOFFになる。これにより、エンジン車にずり下がりが発生し、エンジン出力軸11の回転方向に対して、トルクコンバータ出力軸21の回転方向が逆になる。なお、図6では、エンジン回転数Ne(エンジン出力軸11の回転数)が正回転領域の値を示し、タービン回転数Ntb(トルクコンバータ出力軸21の回転数)が逆回転領域の値を示すことで、エンジン出力軸11とトルクコンバータ出力軸21との回転方向が逆になっていることが分かる。また、このときの車速VSPはマイナスの値を示し、ずり下がり方向に加速していることが分かる。
このとき、ロックアップ制御部8aは、図4に示すフローチャートのステップS1の処理を実行し、「エンジン車がずり下がり中である」と判定する。
時刻t2時点において、運転者がアクセルペダルを踏み込み、アクセルがONになる。これにより、ロックアップ制御部8aは、ステップS2の処理を実行して「運転者の発進要求が生じた」と判定する。一方、エンジン1では、アクセル開度APOに応じたエンジントルクを出力するためにエンジン回転数Neが上昇し始める。
これに対し、ロックアップ制御部8aは、ステップS3からステップS4の処理を続けて実行する。つまり、ロックアップ制御部8aは、トルクコンバータ2における目標速度比を設定し、ロックアップクラッチ20を締結方向へ作動させて実速度比が設定した目標速度比に一致するようにスリップ量を制御する。
これにより、ロックアップ制御圧PL/Uは、ロックアップクラッチ20を解放させる値から、ロックアップクラッチ20の締結力を増大させる方向へと変化し、ロックアップクラッチ20は解放状態からスリップ締結状態となる。
そして、ロックアップクラッチ20がスリップ締結状態になることで、トルクコンバータ2から駆動輪6,6までの動力伝達経路がエンジン1の負荷になる。これにより、一点鎖線で示す比較例のようなロックアップクラッチ20の解放状態を維持した場合よりも、エンジン回転数Neの上昇を抑制することができる。そして、エンジン回転数Neの上昇が抑制されたことで、エンジントルクの増大を抑えることができる。さらに、ロックアップクラッチ20を締結方向に作動させることで、エンジン出力軸11とトルクコンバータ出力軸21との差回転が減少し、トルクコンバータ2でのトルク増大機能が低下する。この結果、トルクコンバータ2の出力トルクが低減し、エンジン車のずり下がり中の発進時、トルクコンバータ2からバリエータ4へ入力されるトルク(以下、「ベルト入力トルク」という)の上昇を抑えることができる。
そして、ベルト入力トルクを低減させたことで、このベルト入力トルクがベルト容量を上回ることを防止できる。この結果、バリエータ4において、ベルトスリップの発生を防止することができる。
一方、一点鎖線で示す比較例のようにロックアップクラッチ20の解放状態を維持した場合では、上述のように発進要求の発生に伴うエンジン回転数Neの上昇を抑えることができない。また、エンジン出力軸11とトルクコンバータ出力軸21との差回転を減少させることも難しい。そのため、図6に一点鎖線で示すように、ベルト入力トルクがベルト容量を上回ってしまい、バリエータ4においてベルトスリップが発生する。
さらに、この実施例1では、ロックアップ制御部8aは、ロックアップクラッチ20を締結方向へ作動させるときの目標速度比を、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になる最大値に設定する。そのため、ロックアップクラッチ20を締結方向へ作動させることで、エンジン回転数Neが低下してオイルポンプ70の吐出圧が低下するものの、バリエータ4での必要油圧を確保することができる。これにより、ベルトスリップの発生をより適切に防止することができる。
時刻t3時点において、エンジン回転数Neが予め設定された所定値に達すると、ロックアップ制御部8aは、ステップS5の処理を実行して「ベルトクランプ力が確保された」と判定し、ステップS6からステップS7の処理を続けて実行する。すなわち、ロックアップ制御部8aは、トルクコンバータ2における目標速度比を設定し、ロックアップクラッチ20を解放方向へ作動させて実速度比が設定した目標速度比に一致するようにスリップ量を制御する。
これにより、ロックアップ制御圧PL/Uは、ロックアップクラッチ20の締結力を低下させる方向へと変化し、ロックアップクラッチ20はスリップ量が低下していく。
そして、ロックアップクラッチ20が解放方向へ作動してスリップ量が低下していくことで、トルクコンバータ2から駆動輪6,6までの動力伝達経路によるエンジン1の負荷が徐々に低下する。そのため、エンジン回転数Neの上昇抑制を緩和することができる。そして、エンジン回転数Neの上昇抑制が緩和されたことで、エンジン1から出力されるエンジントルクを増大させることができる。さらに、ロックアップクラッチ20を解放方向に作動させることで、エンジン出力軸11とトルクコンバータ出力軸21との差回転が増加し、トルクコンバータ2でのトルク増大機能が高くなる。この結果、トルクコンバータ2の出力トルクを増大させ、エンジン車の発進性の悪化を防止することができる。
また、ロックアップクラッチ20を解放方向へ作動させるときの目標速度比は、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になること、バリエータ4に入力されるトルクをベルト容量を上回らない値に抑えること、できるだけ速やかにロックアップクラッチ20を完全解放すること、の三つの条件が成立する値に設定される。そのため、ロックアップクラッチ20を解放方向へ作動させることで、エンジン回転数Neが上昇してエンジントルクが増大するが、ベルトスリップの発生を適切に防止することができる。また、ロックアップクラッチ20は、できるだけ速やかに完全解放されるので、発進性の悪化を抑制することができる。
そして、時刻t4時点において、車速VSPがゼロになりエンジン車のずり下がりが解消すると、ロックアップ制御部8aは、ステップS8の処理を実行して「ずり下がり解消」と判定し、ステップS9からステップS10の処理を続けて実行する。この結果、ロックアップクラッチ20は完全解放され、エンジン車はロックアップクラッチ20を解放すると共に、アクセル開度APOに応じて設定されたエンジン1からのエンジントルクを駆動輪6,6へと伝達して発進する。なお、図6では、時刻t4以前のタイミングでロックアップクラッチ20が解放する例を示している。
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
実施例1の自動変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 車両(エンジン車)の走行駆動源(エンジン1)から駆動輪6,6への動力伝達経路に設けられ、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、前記プライマリプーリ42と前記セカンダリプーリ43との間に掛け渡されたベルト44と、を有するベルト式無段変速機構(バリエータ4)と、
前記走行駆動源(エンジン1)と前記ベルト式無段変速機構(バリエータ4)との間の前記動力伝達経路に設けられ、ロックアップクラッチ20を有するトルクコンバータ2と、
前記ロックアップクラッチ20を制御するロックアップ制御部8aと、を備え、
前記ロックアップ制御部8aは、前記車両(エンジン車)のずり下がり中に発進要求が発生したと判定したとき、前記ロックアップクラッチ20を締結方向に作動させる構成とした。
これにより、車両(エンジン車)のずり下がり中に発進要求が生じた際、ベルト式無段変速機構(バリエータ4)へ入力されるトルクの上昇を抑えることができる。
前記走行駆動源(エンジン1)と前記ベルト式無段変速機構(バリエータ4)との間の前記動力伝達経路に設けられ、ロックアップクラッチ20を有するトルクコンバータ2と、
前記ロックアップクラッチ20を制御するロックアップ制御部8aと、を備え、
前記ロックアップ制御部8aは、前記車両(エンジン車)のずり下がり中に発進要求が発生したと判定したとき、前記ロックアップクラッチ20を締結方向に作動させる構成とした。
これにより、車両(エンジン車)のずり下がり中に発進要求が生じた際、ベルト式無段変速機構(バリエータ4)へ入力されるトルクの上昇を抑えることができる。
(2) 前記ロックアップ制御部8aは、前記ロックアップクラッチ20を締結方向へ作動させた後、前記ベルト式無段変速機構(バリエータ4)におけるベルトクランプ力が確保されたと判定したとき、前記ロックアップクラッチ20を解放方向に作動させる構成とした。
これにより、ベルトスリップを防止しつつ、発進性の悪化を防止することができる。
これにより、ベルトスリップを防止しつつ、発進性の悪化を防止することができる。
(3) 前記走行駆動源(エンジン1)が回転することで駆動し、前記ベルト式無段変速機構(バリエータ4)に供給される油圧の油圧源となるオイルポンプ70を備え、
前記ロックアップ制御部8aは、前記ロックアップクラッチ20を作動させる際、前記ベルト式無段変速機構(バリエータ4)での必要油圧を確保するように前記ロックアップクラッチ20のスリップ量を制御する構成とした。
これにより、エンジン回転数Neの低下に伴ってオイルポンプ70の吐出圧が低下するが、バリエータ4での必要油圧を確保して、ベルトスリップの発生をより適切に防止することができる。
前記ロックアップ制御部8aは、前記ロックアップクラッチ20を作動させる際、前記ベルト式無段変速機構(バリエータ4)での必要油圧を確保するように前記ロックアップクラッチ20のスリップ量を制御する構成とした。
これにより、エンジン回転数Neの低下に伴ってオイルポンプ70の吐出圧が低下するが、バリエータ4での必要油圧を確保して、ベルトスリップの発生をより適切に防止することができる。
以上、本発明の自動変速機の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、ずり下がり発進時ロックアップ制御処理時にロックアップクラッチ20を締結方向に作動させる際の目標速度比と、ロックアップクラッチ20を解放方向に作動させる際の目標速度比とを、いずれも、エンジン出力軸11の回転数がバリエータ4での必要油圧を確保する値になることを条件に設定する例を示した。しかしながら、これに限らない。ロックアップクラッチ20を解放するときには、エンジン回転数の上昇が生じてオイルポンプ70の吐出圧の増大が見込め。そのため、ロックアップクラッチ20を解放するときの目標速度比は、「バリエータ4に入力されるトルクを、ベルト容量を上回らない値に抑えること」と、「できるだけ速やかにロックアップクラッチ20を完全解放すること」の二つの条件に基づいて設定してもよい。
実施例1では、走行駆動源をエンジン1としたエンジン車に適用する例を示したが、これに限らない。走行駆動源にエンジンと電動モータを有するハイブリッド車両や、電動モータのみを走行駆動源とする電気自動車であっても適用することができる。
1 エンジン(走行駆動源)
6 駆動輪
CVT ベルト式無段変速機(自動変速機)
2 トルクコンバータ
20 ロックアップクラッチ
4 バリエータ(ベルト式無段変速機構)
42 プライマリプーリ
43 セカンダリプーリ
44 ベルト
8 CVTコントロールユニット
8a ロックアップ制御部
76 ロックアップ圧ソレノイド弁
6 駆動輪
CVT ベルト式無段変速機(自動変速機)
2 トルクコンバータ
20 ロックアップクラッチ
4 バリエータ(ベルト式無段変速機構)
42 プライマリプーリ
43 セカンダリプーリ
44 ベルト
8 CVTコントロールユニット
8a ロックアップ制御部
76 ロックアップ圧ソレノイド弁
Claims (3)
- 車両の走行駆動源から駆動輪への動力伝達経路に設けられ、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間に掛け渡されたベルトと、を有するベルト式無段変速機構と、
前記走行駆動源と前記ベルト式無段変速機構との間の前記動力伝達経路に設けられ、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、
前記ロックアップクラッチを制御するロックアップ制御部と、を備え、
前記ロックアップ制御部は、前記車両のずり下がり中に発進要求が発生したと判定したとき、前記ロックアップクラッチを締結方向に作動させる
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
前記ロックアップ制御部は、前記ロックアップクラッチを締結方向へ作動させた後、前記ベルト式無段変速機構におけるベルトクランプ力が確保されたと判定したとき、前記ロックアップクラッチを解放方向に作動させる
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1又は請求項2に記載された自動変速機の制御装置において、
前記走行駆動源が回転することで駆動し、前記ベルト式無段変速機構に供給される油圧の油圧源となるオイルポンプを備え、
前記ロックアップ制御部は、前記ロックアップクラッチを作動させる際、前記ベルト式無段変速機構での必要油圧を確保するように前記ロックアップクラッチのスリップ量を制御する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018028613A JP2019143725A (ja) | 2018-02-21 | 2018-02-21 | 自動変速機の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018028613A JP2019143725A (ja) | 2018-02-21 | 2018-02-21 | 自動変速機の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019143725A true JP2019143725A (ja) | 2019-08-29 |
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ID=67772056
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018028613A Pending JP2019143725A (ja) | 2018-02-21 | 2018-02-21 | 自動変速機の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019143725A (ja) |
-
2018
- 2018-02-21 JP JP2018028613A patent/JP2019143725A/ja active Pending
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