JP2019138305A - 変速機の油圧制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速制御品質向上を図ることが可能な変速機の油圧制御装置を提供すること。【解決手段】変速機(ベルト式無段変速機)CVTと、変速機CVTの油圧供給源として設けられ、エンジン1により駆動されるメカオイルポンプ77、および、エンジン1とはとは異なる駆動源である電動モータ78に駆動される電動オイルポンプ79と、変速機CVTの変速に関する制御を行う変速制御部8aと、変速制御部8aに含まれ、変速に際し、電動オイルポンプ79の駆動状態を切り替えるポンプ切替部8bと、変速制御部8aに含まれ、変速機CVTへの供給油圧を、目標圧と実圧との差分に基づいて、フィードバック制御するフィードバック補正部8cと、変速制御部8aは、電動オイルポンプ79の駆動状態を切り替えた時には、切り替えた時点から所定の間、フィードバック制御を規制するフィードバック補正規制部8dと、を備える変速機の油圧制御装置とした。【選択図】図1

Description

本開示は、変速機の油圧制御装置に関する。
従来、変速機において油圧供給源として機械式オイルポンプと電動オイルポンプとを備え、機械式オイルポンプによるオイル供給が不足する場合、電動オイルポンプによるオイル供給を行い適量のオイル供給を可能とした装置が知られている(特許文献1参照)。
また、このような変速機では、変速機に供給する供給圧が目標圧となるように、目標圧と実圧との差分に基づくフィードバック制御を行っている。
特開2013−68234号公報
しかしながら、上記従来技術では、供給圧のフィードバック制御を常に行うようにしていたため、下記の問題が生じていた。
すなわち、電動オイルポンプが停止状態(OFF状態)から駆動状態(ON状態)となった直後は、オイル供給量が急増して供給圧が目標圧を上回る場合がある。
そして、このように供給圧が目標圧を上回った場合、フィードバック制御により供給圧を目標圧に近付くように低下させる。このとき、供給圧と目標圧との差分が大きい程、フィードバック制御による供給圧の低下量が大きくなり、この場合、供給圧が逆に目標圧を下回るアンダシュートが生じるおそれがあった。そして、このように供給圧が目標圧を下回るアンダシュートが生じると、変速機において十分なトルク伝達を行えずに変速制御品質が低下するおそれがある。
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、変速制御品質向上を図ることが可能な変速機の油圧制御装置を提供することを目的とする。
本開示の一実施の形態の変速機の油圧制御装置は、第二オイルポンプの駆動状態の切替時には、切替時点から所定の間、フィードバック制御を規制する。
本開示の変速機の油圧制御装置にあっては、フィードバック制御を規制することで、フィードバック制御によるアンダシュートを抑制し変速制御品質向上を図ることが可能となる。
実施の形態1の油圧源装置が適用されたベルト式無段変速機を搭載したエンジン車の駆動系と制御系を示す全体システム図である。 実施の形態1の変速機の油圧制御装置によるDレンジにおける変速スケジュールの一例を示す変速スケジュール特性図である。 本実施の形態1の変速機の油圧制御装置によるフィードバック補正規制処理の流れを示すフローチャートである。 実施の形態1の変速機の油圧制御との比較例において電動オイルポンプを非駆動状態から駆動状態に切り替えた際のライン圧、セカンダリ圧、補正値の変化を示すタイムチャートである。 実施の形態1の変速機の油圧制御において電動オイルポンプを非駆動状態から駆動状態に切り替えた際のライン圧、セカンダリ圧、補正値の変化を示すタイムチャートである。
以下、本開示の変速機の油圧制御装置を実現する形態を、図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1の変速機の油圧制御装置の構成を説明する。
実施の形態1の変速機の油圧制御装置は、車両のベルト式無段変速機CVTの油圧供給源である後述するメカオイルポンプ77(第一オイルポンプ)と、電動オイルポンプ79(第二オイルポンプ)とによる油圧の供給を制御するものである。
そこで、以下に、実施の形態1の油圧源装置が適用されたベルト式無段変速機CVTを搭載したエンジン車の駆動系と制御系とについて説明する。
図1は、実施の形態1の油圧源装置が適用されたベルト式無段変速機CVT(以下、単に変速機CVTと称する)を搭載したエンジン車の駆動系と制御系を示す全体システム図である。以下、図1に基づいて、全体システム構成を説明する。
エンジン車の駆動系は、エンジン1と、変速機CVTと、終減速機構5と、駆動輪6,6と、を備えている。また、変速機CVTは、トルクコンバータ2と、前後進切換機構3と、バリエータ4とを備えている。
エンジン1は、燃料カット動作などによりエンジン1を停止するアイドルストップ制御アクチュエータ10を有する。すなわち、ドライバによるアクセル操作による出力トルクの制御以外に、アイドルストップ条件の成立により出力される外部からのアイドルストップ信号(IS信号)によりエンジン1を停止するアイドルストップ制御が可能となっている。
トルクコンバータ2は、トルク増大機能を有する発進要素であり、トルク増大機能を必要としないとき、エンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21とを直結可能なロックアップクラッチ20を有する。トルクコンバータ2は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結されたポンプインペラ23と、トルクコンバータ出力軸21に連結されたタービンランナ24と、ケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられたステータ26と、を備える。
前後進切換機構3は、バリエータ4への入力回転方向を前進走行時の正転方向と後進走行時の逆転方向に切り替える機構である。この前後進切換機構3は、ダブルピニオン式遊星歯車30と、複数枚のクラッチプレートによるフォワードクラッチ31と、複数枚のブレーキプレートによるリバースブレーキ32と、を有する。
フォワードクラッチ31は、シフト操作によりDレンジ位置が選択された時に変速機コントロールバルブ71から供給されるフォワードクラッチ圧Pfcにより締結される。
リバースブレーキ32は、シフト操作によりRレンジ位置が選択された時に変速機コントロールバルブ71から供給されるリバースブレーキ圧Prbにより締結される。なお、フォワードクラッチ31とリバースブレーキ32は、シフト操作によりNレンジ位置が選択された時には、フォワードクラッチ圧Pfc、リバースブレーキ圧Prbの供給が停止されて解放される。
バリエータ4は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、プーリベルト44と、を有し、ベルト接触径の変化により変速比(バリエータ入力回転速度とバリエータ出力回転速度の比)を無段階に変化させる無段変速機能を備える。
プライマリプーリ42は、バリエータ入力軸40の同軸上に配された固定プーリ42aとスライドプーリ42bとにより構成されている。また、スライドプーリ42bは、変速機コントロールバルブ71からプライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriによりスライド動作する。
セカンダリプーリ43は、バリエータ出力軸41の同軸上に配された固定プーリ43aとスライドプーリ43bにより構成されている。スライドプーリ43bは、変速機コントロールバルブ71からセカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecによりスライド動作する。
プーリベルト44は、プライマリプーリ42のV字形状をなすシーブ面と、セカンダリプーリ43のV字形状をなすシーブ面とに掛け渡されている。このプーリベルト44は、環状リングを内から外へ多数重ね合わせた2組の積層リングと、打ち抜き板材により形成され、2組の積層リングに沿って挟み込みにより環状に積層して取り付けられた多数のエレメントにより構成されている。なお、プーリベルト44としては、プーリ進行方向に多数配列したチェーンエレメントを、プーリ軸方向に貫通するピンにより結合したチェーンタイプのベルトであってもよい。
終減速機構5は、バリエータ出力軸41からのバリエータ出力回転速度を減速するとともに、差動機能を与えて左右の駆動輪6,6に伝達する機構である。この終減速機構5は、減速ギア機構として、バリエータ出力軸41に設けられた第1ギア52と、アイドラ軸50に設けられた第2ギア53および第3ギア54と、デフケースの外周位置に設けられた第4ギア55と、を有する。そして、差動ギア機構として、左右のドライブ軸51,51に介装されたディファレンシャルギア56を有する。
エンジン車の制御系は、油圧制御系である油圧制御ユニット7と、電子制御系であるCVTコントロールユニット8と、を備えている。
油圧制御ユニット7は、変速機コントロールバルブ71と、油圧供給源としてのメカオイルポンプ(第一オイルポンプ)77と、電動モータ78により回転駆動される電動オイルポンプ(第二オイルポンプ)79とを有する。
なお、メカオイルポンプ77は、エンジン1により回転駆動される。また、電動オイルポンプ79は、電動モータ78により回転駆動される。そして、変速機コントロールバルブ71は、メカオイルポンプ77の吐出オイルが電動オイルポンプ79に向かわないようにする逆止弁機能および電動オイルポンプ79の吐出オイルがメカオイルポンプ77に向かわないようにする逆止弁機能を備える。
変速機コントロールバルブ71は、油圧供給源からのオイル供給により形成するライン圧PLに基づいて各種の変速機制御圧を調圧する。調圧バルブとして、ライン圧ソレノイドバルブ72と、プライマリ圧ソレノイドバルブ73と、セカンダリ圧ソレノイドバルブ74と、クラッチ/ブレーキ圧ソレノイドバルブ75と、トルクコンバータ圧ソレノイドバルブ76と、を有する。
ライン圧ソレノイドバルブ72は、CVTコントロールユニット8から出力されるライン圧指令値に応じ、油圧供給源としてのメカオイルポンプ77および電動オイルポンプ79からの吐出圧を、指令されたライン圧PLに調圧する。このライン圧PLは、各種の変速機制御圧を調圧する際の元圧であり、駆動系の伝達トルクに対してベルト滑りやクラッチ滑りを抑える油圧とされる。
プライマリ圧ソレノイドバルブ73は、プライマリ圧室45へのプライマリ圧Ppriを調圧する。
セカンダリ圧ソレノイドバルブ74は、セカンダリ圧室46へのセカンダリ圧Psecを調圧する。
クラッチ/ブレーキ圧ソレノイドバルブ75は、フォワードクラッチ31へのフォワードクラッチ圧Pfcと、リバースブレーキ32へのリバースブレーキ圧Prbと、を調圧する。
トルクコンバータ圧ソレノイドバルブ76は、トルクコンバータ2へのトルクコンバータ圧Ptcを調圧する。なお、各ソレノイドバルブ72,73,74,75,76は、CVTコントロールユニット8から出力される指令値によって調圧される。
CVTコントロールユニット8は、ライン圧制御や変速制御や前後進切換制御などを行う変速制御部8aを備える。
ライン圧制御では、スロットル開度などに応じた目標ライン圧を得る指令値をライン圧ソレノイドバルブ72に出力する。なお、このライン圧制御では、フィードフォワード制御を実行する。
変速制御は、目標変速比(目標プライマリ回転数tNpri)を決めると、決めた目標変速比を得る油圧指令値をプライマリ圧ソレノイドバルブ73およびセカンダリ圧ソレノイドバルブ74に出力する。
図2は、不図示のシフトレバーによりDレンジが選択された時の自動変速モードでの無段変速制御をバリエータ4により実行する際に用いられるDレンジ無段変速スケジュールの一例を示す。
この変速制御では、車速VSPとアクセル開度APOにより特定される図2に示すDレンジ無段変速スケジュール上での運転点(車速VSPとアクセル開度APOとにより決定される座標上の点)により目標プライマリ回転数tNpriを決定する。そして、プライマリ回転数Npriを、目標プライマリ回転数tNpriに一致させるよう制御するフィードバック制御する。なお、プライマリ回転数Npriは、これを検出するセンサを設けてもよいし、エンジン回転速度センサ12の検出値から求めてもよい。
さらに説明すると、図2に示すDレンジ無段変速スケジュールは、運転点(VSP,APO)に応じて最Low変速比と最Highとによる変速比幅の範囲内で変速比を無段階に変更するよう設定されている。例えば、車速VSPが一定のときは、アクセル踏込操作を行うと(例えば、A点からB点への変化)、目標プライマリ回転数tNpriが上昇してダウンシフト方向に変速する。逆に、アクセル戻し操作を行うと目標プライマリ回転数tNpriが低下してアップシフト方向に変速する。一方、アクセル開度APOが一定のときは、車速VSPが上昇するとアップスフと方向に変速し、車速VSPが低下するとダウンシフト方向に変速する。
前後進切換制御では、シフトレバー(不図示)によりDレンジ位置が選択されていると、フォワードクラッチ31を締結する指令値をクラッチ/ブレーキ圧ソレノイドバルブ75に出力する。また、シフトレバー(不図示)によりRレンジ位置が選択されていると、リバースブレーキ32を締結する指令値をクラッチ/ブレーキ圧ソレノイドバルブ75に出力する。
CVTコントロールユニット8には、タービン回転速度センサ80、車速センサ81、セカンダリ圧センサ82、油温センサ83、インヒビタスイッチ84、ブレーキスイッチ85、アクセル開度センサ86、プライマリ圧センサ87、前後加速度センサ89、などからのセンサ情報やスイッチ情報が入力される。また、エンジンコントロールユニット90には、エンジン回転速度センサ12からのセンサ情報が入力される。なお、インヒビタスイッチ84は、シフトレバー(不図示)により選択されているレンジ位置(Dレンジ位置,Nレンジ位置,Rレンジ位置等)を検出し、レンジ位置に応じたレンジ位置信号を出力する。
[ライン制御]
図1に戻り、変速制御部8aは、前述のスロットル開度(APO)などに応じた目標ライン圧を得るのにあたり、電動オイルポンプ79の駆動を制御するポンプ切替部8bを備える。
このポンプ切替部8bは、目標ライン圧を得るにあたり、メカオイルポンプ77によるオイル供給量が得られない場合、およびメカオイルポンプ77によるオイル供給量が不足する場合に、電動オイルポンプ79を駆動させる。
メカオイルポンプ77によるオイル供給量が得られない場合とは、前述のように、エンジン1は、エンジンコントロールユニット90からのアイドルストップ信号(IS信号)によりエンジン1を停止する場合である。この場合、メカオイルポンプ77が停止してメカオイルポンプ77からオイル供給量が得られないため、CVTコントロールユニット8は、電動オイルポンプ79を駆動させて、必要なオイル供給量を得る。
また、メカオイルポンプ77によるオイル供給量が不足する場合としては、例えば、急加速に伴うダウンシフト時がある。例えば、図2において、Aの運転点からBの運転点に移動するようなアクセルの急踏込操作が行われた場合、変速機CVTを介した伝達トルクが相対的に大きくなるため、メカオイルポンプ77からのオイル供給量では不足する場合がある。このような場合にも、CVTコントロールユニット8は、電動オイルポンプ79を駆動させて、必要なオイル供給量を得るようにしている。
[フィードバック制御部、フィードバック制御規制部]
CVTコントロールユニット8の変速制御部8aには、フィードバック補正部8cおよびフィードバック補正規制部8dが含まれる。
フィードバック補正部8cは、目標圧と実圧との偏差に基づいて実圧が目標圧に近付くようにフィードバック制御を行う。このようなフィードバック制御としては、目標圧と実圧との偏差に加え、その積分、および微分の3つの要素によってPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)が知られる。
ここで、フィードバック制御の対象として、セカンダリ圧Psecが挙げられる。
すなわち、フィードバック補正部8cは、セカンダリ圧Psecの目標圧と、セカンダリ圧センサ82が検出するセカンダリ圧Psecの実圧との差分を求め、この差分を抑えるようにセカンダリ圧Psecの指令圧に補正値FBcv(図4、図5参照)を加算する。
フィードバック補正規制部8dは、電動オイルポンプ79を停止状態から駆動状態に切り替える際に、フィードバック補正部8cによるフィードバック制御の実行を規制する。
以下に、このフィードバック制御規制部が実行する処理の流れを図3のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS1では、電動オイルポンプ79が非駆動状態(OFF)から駆動状態(ON)に切り替えられたか否か判定する。そして、電動オイルポンプ79が非駆動状態(OFF)から駆動状態(ON)に切り替えられた場合には、ステップS2に進みフィードバック制御を禁止し、それ以外は、ステップS5に進んで、フィードバック制御の実行を許可する。
ステップS2においてフィードバック制御を禁止した後に進むステップS3では、ステップS2によりフィードバック制御を禁止してからの経過時間が、予め設定された設定時間Tlimを越えたか否か判定する。そして、経過時間が設定時間未満の場合は、ステップS4に進み、経過時間が設定時間Tlimを越えた場合はステップS5に進む。
ここで、設定時間Tlimは、後述するように電動オイルポンプ79の駆動開始直後のオイル供給量の急増によるセカンダリ圧Psecの増加が、フィードバック制御を行うことなく目標圧に収束するのに要する時間に設定している。この設定時間Tlimは、実験による実測値や、シミュレーションに基づいて設定する。
フィードバック制御を禁止してからの経過時間が、設定時間Tlimを越えない場合に進むステップS4では、セカンダリ圧センサ82が検出するセカンダリ圧Psecの実圧の変化率が、予め設定された変化率閾値Prlim未満であるか否か判定する。そして、セカンダリ圧Psecの実圧の変化率が変化率閾値Prlim未満の場合は、ステップS5に進み、セカンダリ圧Psecの実圧の変化率が変化率閾値Prlim以上の場合はステップS2に戻る。
ここで、変化率閾値Prlimは、通常の目標圧の変化では生じない値に設定されており、これは、実圧が後述の比較例にて説明するアンダシュートの発生時に生じる変化率相当の値に設定されている。したがって、ステップS4において実圧の変化率が変化率閾値Prlim未満の場合は、実圧の変化が、通常の制御の範囲内の変化とする。つまり、後述のアンダシュートの発生ではないとして、経過時間が設定時間Tlimを越えない場合でもフィードバック制御を許可する。
(比較例)
次に、本実施の形態1の作用の説明に先立ち、本実施の形態1の変速機の油圧制御装置の解決課題を、比較例に基づいて説明する。
比較例は、本実施の形態1におけるフィードバック補正規制部8dを備えていない変速機の油圧制御装置である。そこで、比較例の動作を説明にあたり、本実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1の構成で与えた符号を()書きで用いて説明する。
油圧供給源としてメカオイルポンプ(77)と電動オイルポンプ(79)とを備えた変速機(CVT)では、メカオイルポンプ(77)のオイル供給量が不足する場合には、電動オイルポンプ(79)を駆動させ、オイル供給量の不足分を補う。
図4は、比較例において電動オイルポンプ(79)を非駆動状態から駆動状態に切り替えた際のライン圧PL、セカンダリ圧Psec、フィードバック制御によるセカンダリ圧Psecに加算する補正値FBcvの変化を示すタイムチャートである。なお、ライン圧PLおよびセカンダリ圧Psecにおいて、実線が目標圧(ライン圧では指示圧、セカンダリ圧ではフィードバック前指示圧)を示し、一点鎖線が実圧を示す。また、点線が目標圧に補正値FBcvを加算したフィードバック後指示圧を示す。
なお、このように電動オイルポンプ(79)を非駆動状態から駆動状態に切り替える走行状態としては、前述したように、図2においてAの動作点からBの動作点に移動するようなアクセルペダル(不図示)の急踏込操作を行った場合が挙げられる。
このような場合、比較例では、t00の時点で、ライン圧PLおよびセカンダリ圧Psecの上昇要求が発生し、ライン圧PLおよびセカンダリ圧Psecの上昇を開始している。
そして、t01の時点で、メカポンプ(77)による供給圧が不足し、電動オイルポンプ(79)の駆動を開始している。このとき、電動オイルポンプ(79)の駆動開始直後に、電動オイルポンプ(79)によるオイル供給量が急増するため、過渡的にライン圧過多となる。これにより、セカンダリ圧Psecの実圧も目標圧(フィードバック前指示圧)を上回る。
そこで、セカンダリ圧Psecのフィードバック制御によりt01の時点から、セカンダリ圧Psecを低下させる補正値FBcvを出力する。すなわち、図において点線により示すフィードバック後指示圧は、目標圧よりも低い値とする。
このフィードバック後指示圧を出力した結果、セカンダリ圧Psecにアンダシュートが生じ、実圧が目標圧を下回る。そこで、補正値FBcvとしてはt02の時点から、徐々に減少側の指示値を減らし、t03の時点で、フィードバック制御による減少分の指示量を0とし、概略このt03の時点で、実圧が目標圧(フィードバック前指示圧)に収束する。特に、PID制御を行う場合、残留偏差の時間積分値に基づいて補正を行うため、収束に時間を要する分だけ、アンダシュート量が大きくなり易く、収束に時間を要する。
このように、比較例では、電動オイルポンプ79の駆動開始直後のオイル供給量の急増によるセカンダリ圧Psecに対するフィードバック制御により、実圧が目標圧を下回る現象(アンダシュート)が生じる。そして、このようにセカンダリ圧Psecの実圧が目標圧を下回ると、変速機CVTのバリエータ4においてベルト滑りが生じるおそれがあった。この場合、所望の変速比を得るのに時間を要し、制御品質の悪化を招く。
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1の変速機の油圧制御装置の作用を説明する。
図5は、比較例と同様に電動オイルポンプ79を非駆動状態から駆動状態に切り替えた場合の実施の形態1の動作を示すタイムチャートである。
このタイムチャートでは、t0の時点で、ライン圧PLの上昇要求が発生し、ライン圧PLの上昇を開始する。
そして、t1の時点で、メカオイルポンプ77によるオイル供給量が不足し、電動オイルポンプ79を非駆動状態から駆動状態に切り替える。
そして、比較例と同様に電動オイルポンプ79のオイル供給量が加わることで、t1の時点からライン圧PLが急上昇し、その実圧が目標圧を上回るとともに、セカンダリ圧Psecも実圧が目標圧(フィードバック前指示圧)を上回る。
このとき、フィードバック補正規制部8dでは、図3のステップS1とS2の処理とに基づいて、フィードバック制御を禁止する。
したがって、セカンダリ圧Psecのフィードバック前指示圧にフィードバック制御による補正値FBcvを加算すること無くフィードバック後指示圧を出力する。この場合、フィードバック後指示圧は、目標圧(フィードバック前指示圧)と同圧となる。
このような電動オイルポンプ79の駆動開始直後のオイル供給量の急増は、過渡的なものであるから、その後、ライン圧PLは目標圧(指示圧)に収束する。これに伴い、セカンダリ圧Psecも、その実圧が徐々に目標圧(フィードバック前指示圧)に収束する(t2の時点)。
このように、電動オイルポンプ79の駆動開始直後は、フィードバック制御を禁止するため、フィードバック制御による補正値FBcvを原因として、実圧が目標圧を下回るアンダシュートが生じることが無い。よって、このアンダシュートを原因とするセカンダリ圧Psecの不足の発生を防止でき、変速機CVTのバリエータ4におけるベルト滑りの発生を防止できる。
その後、電動オイルポンプ79の駆動を開始してから、設定時間Tlimが経過する(ステップS3においてYES判定)か、実圧の変化率が変化率閾値Prlim未満となるか(ステップS4においてYES判定)すると、フィードバック制御を許可する。
このタイムチャートでは、t3の時点で、フィードバック制御の禁止指令をOFFとする実線が設定時間Tlimの経過によるフィードバック制御の許可を示す。また、図において二点鎖線により示すように、t3の時点よりも前の時点で、フィードバック制御の禁止指令をOFFとしている例が、実圧の変化率が変化率閾値Prlim未満となってフィードバック制御を許可した例を示している。
したがって、フィードバック制御の許可後は、フィードバック制御により高精度で実圧を目標圧に向けて制御する。
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1の変速機の油圧制御装置の効果を列挙する。
1)実施の形態1の変速機の油圧制御装置は、
変速機(ベルト式無段変速機)CVTと、
変速機CVTの油圧供給源として設けられ、エンジン(走行用駆動源)1により駆動されるメカオイルポンプ(第一オイルポンプ)77、および、エンジン1とはとは異なる駆動源である電動モータ78に駆動される電動オイルポンプ(第二オイルポンプ)79と、
変速機CVTの変速に関する制御を行う変速制御部8aと、
変速制御部8aに含まれ、変速に際し、電動オイルポンプ79の駆動状態を切り替えるポンプ切替部8bと、
変速制御部8aに含まれ、変速機CVTへの供給油圧を、目標圧と実圧との差分に基づいて、フィードバック制御するフィードバック補正部8cと、
変速制御部8aは、電動オイルポンプ79の駆動状態を切り替えた時には、切り替えた時点から所定の間(設定時間Tlim)、フィードバック制御を規制するフィードバック補正規制部8dと、を備える。
したがって、電動オイルポンプ79の駆動切換直後のオイル供給量の変化に対応してフィードバック制御を実行することにより生じる不具合を抑制し、制御品質を向上できる。
2)実施の形態1の変速機の油圧制御装置は、
変速制御部8aのフィードバック補正規制部8dは、フィードバック制御の規制時にフィードバック制御を禁止する。
したがって、電動オイルポンプ79の駆動切換直後のオイル供給量の変化に対応するフィードバック制御による補正量を0とすることにより、過剰な補正を無くし、制御品質を確実に向上できる。
3)実施の形態1の変速機の油圧制御装置は、
変速制御部8aのフィードバック補正規制部8dは、フィードバック制御の規制は、電動オイルポンプ79の駆動状態(ON)から非駆動状態(OFF)へ切り替えた時には行うことなく、電動オイルポンプ79の非駆動状態(OFF)から駆動状態(ON)へ切り替えた時に行う。
したがって、電動オイルポンプ79の非駆動状態(OFF)から駆動状態(ON)に切り替えた直後の、供給圧の目標圧に対して実圧が低下するアンダシュートの発生を抑制できる。これにより、供給圧不足による変速機CVTの滑りの発生を抑制し、制御品質の向上を図ることができる。
また、電動オイルポンプ79の駆動状態(ON)から非駆動状態(OFF)へ切替時には、メカオイルポンプ77のオイル供給量が足りている状況であるため、フィードバック補正の規制を行わなくても、オイル供給量不足を原因とした制御品質の低下は生じない。
4)実施の形態1の変速機の油圧制御装置は、
変速制御部8aのフィードバック補正規制部8dは、実圧の変化率が所定値(変化率閾値Prlim)未満になると、規制を解除する。
したがって、制御品質の低下を招くような実圧の変化が生じる場合にフィードバック制御の規制を行い、不要なフィードバック制御の規制を行い、逆に、フィードバック制御の規制による実圧の目標圧に対する追従性を悪化させるのを抑制できる。
5)実施の形態1の変速機の油圧制御装置は、
フィードバック補正部8cによるフィードバック制御の対象として、ベルト式無段変速機CVTのセカンダリ圧Psecが含まれる。
したがって、電動オイルポンプ79の駆動状態の切り替え時におけるセカンダリ圧Psecのフィードバック制御に基づくベルト滑りなどの不具合の発生を抑制できる。
以上、本開示の変速機の油圧制御装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
例えば、実施の形態では、走行用駆動源は、エンジンを例示したが、これに限定されることは無く、走行用駆動源としては、モータや、エンジンとモータとを組み合わせたパワーユニットであってもよい。同様に、第二オイルポンプの駆動源としても、実施の形態では、モータを示したが、これに限定されるものではなく、走行用駆動源とは別の駆動源であれば、発電用のエンジンなど、モータ以外の駆動源も含まれる。
また、実施の形態では、フィードバック制御を規制する条件としての第二オイルポンプの駆動状態の切り替え時として、非駆動状態(OFF)から駆動状態(ON)への切り替え時を示したが、これに限定されない。例えば、駆動状態(ON)から非駆動状態(OFF)への切り替え時にもフィードバック制御の規制を行うようにしてもよい。この場合は、第二オイルポンプの停止により、オイル供給量が急減するおそれがあり、フィードバック制御により実圧が目標圧をオーバシュートして、やはり制御品質が悪化するおそれがある。
さらに、実施の形態では、フィードバック制御の対象およびフィードバック制御の規制の対象となる油圧供給源から変速機への供給圧としてベルト式無段変速機のセカンダリ圧を示したが、これに限定されるものではない。変速機がベルト式無段変速機である場合も、セカンダリ圧以外のプライマリ圧やライン圧を制御対象の供給圧としてもよい。
また、変速機としてもベルト式無段変速機に限定されるものではなく、ギア機構を用いた有段の変速機であってもよい。そして、この変速機に対する供給圧であれば、フィードバック制御およびその規制の対象とすることができる。
また、実施の形態では、フィードバック制御の規制としてフィードバック制御を禁止する例を示したが、規制としては禁止に限定されない。例えば、フィードバック制御による補正量を演算するのに使用する係数を、補正量が小さくなるように変えたり、あるいは、補正量に1未満の係数を乗じたりして、非規制時よりも規制時の補正量が小さくなるようにしてもよい。
また、実施の形態では、第二オイルポンプの駆動状態を切り替えた時点から所定の間として、設定時間Tlimの間、フィードバック制御の規制を行う第1の処理と、実圧の変化率が変化率閾値を下回るまでの間、フィードバック制御の規制を実行する第2の処理とを併用する例を示したが、これに限定されない。例えば、前記第1の処理と第2の処理とのいずれか一方のみを行うようにしてもよい。
1 エンジン(走行用駆動源)
8a 変速制御部
8b ポンプ切替部
8c フィードバック補正部
8d フィードバック制御規制部
77 メカオイルポンプ(第一オイルポンプ)
78 電動モータ(走行用駆動源とは異なる駆動源)
79 電動オイルポンプ(第二オイルポンプ)
CVT ベルト式無段変速機(変速機)
FBcv 補正値
Prlim 変化率閾値
Psec セカンダリ圧(供給圧)
Tlim 設定時間

Claims (5)

  1. 変速機と、
    前記変速機の油圧供給源として設けられ、走行用駆動源により駆動される第一オイルポンプ、および、前記走行用駆動源とは異なる駆動源に駆動される第二オイルポンプと、
    前記変速機の変速に関する制御を行う変速制御部と、
    前記変速制御部に含まれ、変速に際し、前記第二オイルポンプの駆動状態を切り替えるポンプ切替部と、
    前記変速制御部に含まれ、前記変速機への供給油圧を、目標圧と実圧との差分に基づいて、フィードバック制御するフィードバック制御部と、
    を備え、
    前記変速制御部は、前記第二オイルポンプの駆動状態を切り替えた時には、切り替えた時点から所定の間、前記フィードバック制御を規制する変速機の油圧制御装置。
  2. 請求項1に記載の変速機の油圧制御装置において、
    前記変速制御部は、前記フィードバック制御の規制時に前記フィードバック制御を禁止する変速機の油圧制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の変速機の油圧制御装置において、
    前記変速制御部は、前記フィードバック制御の規制は、前記第二オイルポンプの駆動状態から非駆動状態へ切り替えた時には行うことなく、前記第二オイルポンプの非駆動状態から駆動状態へ切り替えた時に行う変速機の油圧制御装置。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、
    前記変速制御部は、前記実圧の変化率が所定値未満になると、前記規制を解除する変速機の油圧制御装置。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、
    前記フィードバック制御部による前記フィードバック制御の対象として、前記変速機としての無段変速機のセカンダリ圧が含まれる変速機の油圧制御装置。
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