JP2019143107A - 潤滑油組成物、潤滑油組成物の製造方法及び駆動系機器 - Google Patents
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Abstract
Description
自動車用緩衝器の場合、潤滑箇所としては、ロッド−ブッシュ間、ロッド−オイルシール間、インナーチューブ−ピストンバンド間等があり、これらの箇所における摩擦特性を最適化することにより、自動車の乗り心地を制御するとともに、部品の摩擦及び摩耗を防止し、耐久性が得られることとなる。例えば、特許文献1には、基油として水素化改質鉱油、合成油を使用し、高分子量のポリ(メタ)アクリレート等の粘度指数向上剤を特定量で用いたショックアブソーバー油組成物が開示されている。
(一般式(1)中、R11は炭化水素基、R12及びR13は各々独立に水素原子又は炭化水素基を示し、R12及びR13の少なくとも一方は炭化水素基である。)
2.基油と、上記一般式(1)で表されるリン化合物と、ジチオリン酸亜鉛とを配合する潤滑油組成物の製造方法。
3.基油と、上記一般式(1)で表されるリン化合物と、ジチオリン酸亜鉛とを含む潤滑油組成物を用いた駆動系機器。
本実施形態の潤滑油組成物は、下記一般式(1)で表されるリン化合物と、ジチオリン酸亜鉛とを含むものである。以下、本実施形態の潤滑油組成物が含有し得る各成分について具体的に説明する。
(一般式(1)中、R11は炭化水素基、R12及びR13は各々独立に水素原子又は炭化水素基を示し、R12及びR13の少なくとも一方は炭化水素基である。)
本実施形態の潤滑油組成物は、下記一般式(1)で表されるリン化合物(以下、単に「リン化合物」と称することがある。)を含有することを要する。本実施形態の潤滑油組成物において、前記リン化合物を含有しないと、特に耐摩耗性が低下するため、優れた耐摩耗性及び酸化安定性が同時に得られない。これまで、耐摩耗性を向上させることを目的としてリン酸エステル及び亜リン酸エステル(いずれも、分子中に含まれる全ての炭化水素基と、リン原子と、が酸素原子を介して結合する構造を有するエステル)等の耐摩耗剤が汎用されていたが、これらの耐摩耗剤とジチオリン酸亜鉛と組み合わせると、耐摩耗性は向上するものの酸化安定性が低下することがあり、耐摩耗性と酸化安定性とは二律相反の関係にあった。また、これらの耐摩耗剤とジチオリン酸亜鉛とが反応し、沈殿を生じる場合があり、混合安定性の点でも問題が生じる場合があった。本実施形態の潤滑油組成物は、特定のリン化合物とジチオリン酸亜鉛とを組み合わせることにより、沈殿が生じることがなく、また酸化安定性を維持しつつ耐摩耗性が向上するため、結果として優れた耐摩耗性と酸化安定性とを両立することを可能とした。
R12及びR13の炭化水素基としては、1価の炭化水素基であれば特に制限なく、R11の炭化水素基として上記例示したものが好ましく挙げられる。R12及びR13の両方が炭化水素基である場合、R12及びR13は同じでも異なっていてもよいが、耐摩耗性を向上させる観点から、同じであることが好ましい。
本実施形態の潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛を含むことを要する。本実施形態の潤滑油組成物において、ジチオリン酸亜鉛を含有しないと、特に酸化安定性が低下するため、優れた耐摩耗性及び酸化安定性が同時に得られない。本実施形態の潤滑油組成物に用いられるジチオリン酸亜鉛は、以下の一般式(2)で表されるものが好ましく挙げられる。
R21〜R24のシクロアルキル基、アリール基は、例えばデカリル基、ナフチル基等の多環式の基であってもよい。
また、これらの1価の炭化水素基は、上記R11〜R13が有し得る置換基として例示した置換基を有していてもよく、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子等により置換されたものであってもよい。
本実施形態の潤滑油組成物に含まれる基油としては、鉱油、合成油のいずれであってもよい。
鉱油としては、パラフィン基系、ナフテン基系、中間基系の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;該常圧残油を減圧蒸留して得られた留出油;該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1つ以上の処理を行って精製した鉱油、例えば、軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストック、またフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス)を異性化することで得られる鉱油等が挙げられる。
また、鉱油としては、API(米国石油協会)の基油カテゴリーにおいて、グループ1、2、3のいずれに分類されるものでもよいが、スラッジ生成をより抑制することができ、また粘度特性、酸化劣化等に対する安定性を得る観点から、グループ2、3に分類されるものが好ましい。
また、基油の粘度指数は、85以上が好ましく、90以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。本明細書において、動粘度、及び粘度指数は、JIS K 2283:2000に準拠し、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定した値である。基油の動粘度、粘度指数が上記範囲内であると、潤滑油組成物としてより適正な粘度を有するものとなり、また耐摩耗性及び酸化安定性が向上する。
本実施形態の潤滑油組成物は、上記基油、リン化合物、及びジチオリン酸亜鉛を含むものであり、基油、リン化合物、及びジチオリン酸亜鉛からなるものであってもよいし、また、基油、リン化合物、及びジチオリン酸亜鉛以外に、例えば、粘度指数向上剤、分散剤、酸化防止剤、極圧剤、金属不活性化剤、消泡剤、摩擦低減剤、油性剤等のその他添加剤を含むものであってもよい。これらのその他添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
これらのその他添加剤の合計含有量は、所望に応じて適宜決定すればよく、特に制限はないが、その他添加剤を添加する効果を考慮すると、組成物全量基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上であり、上限として好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
本実施形態の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、高温時の焼付き防止、及び低温流動性の確保の観点から、好ましくは5mm2/s以上35mm2/s以下、より好ましくは7mm2/s以上25mm2/s以下、更に好ましくは9mm2/s以上15mm2/s以下である。これと同様の観点から、本実施形態の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは0.5mm2/s以上15mm2/s以下、より好ましくは1mm2/s以上10mm2/s以下、更に好ましくは1.5mm2/s以上5mm2/s以下である。また、本実施形態の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは85以上、より好ましくは90以上、更に好ましくは100以上である。
本実施形態の潤滑油組成物は、耐摩耗性及び酸化安定性に優れるものであるため、例えば、緩衝器、変速機、パワーステアリング等の駆動系機器用、エンジン用、油圧作動用、タービン用、圧縮機用、工作機械用、切削用、ギヤ用、流体軸受け用、転がり軸受け用等の様々な用途に好適に用いられる。中でも、耐摩耗性及び酸化安定性に優れるという特徴を考慮すると、駆動系機器に用いられることが好ましく、緩衝器、とりわけ四輪車、二輪車等の自動車用緩衝器、特に四輪車用緩衝器に用いられることがより好ましい。
また、特に優れた耐摩耗性を有効に活用する観点から、上記機器で、強化材としてガラス繊維が配合されている部材を有する機器に好適に用いることができ、例えば強化材としてガラス繊維が配合されているピストンバンドを部材として有し、インナーチューブ−ピストンバンド間の潤滑が必要となる緩衝器、とりわけ四輪車、二輪車等の自動車用緩衝器、特に四輪車用緩衝器に好適に用いられる。
本実施形態の潤滑油組成物の製造方法は、基油と、下記一般式(1)で表されるリン化合物と、ジチオリン酸亜鉛とを配合することを特徴とするものである。
(一般式(1)中、R11は炭化水素基、R12及びR13は各々独立に水素原子又は炭化水素基を示し、R12及びR13の少なくとも一方は炭化水素基である。)
本実施形態の駆動系機器は、基油と、下記一般式(1)で表されるリン化合物と、ジチオリン酸亜鉛とを含む潤滑油組成物を用いることを特徴とするものである。
(一般式(1)中、R11は炭化水素基、R12及びR13は各々独立に水素原子又は炭化水素基を示し、R12及びR13の少なくとも一方は炭化水素基である。)
(1)動粘度
JIS K 2283:2000に準拠し、40℃、100℃における動粘度を測定した。
(2)粘度指数(VI)
JIS K 2283:2000に準拠して測定した。
(3)外観の評価
表1に記載の各成分を60℃にて混合した後、室温下(20℃)にて1日間貯蔵した各実施例及び比較例の潤滑油組成物の外観を目視で確認し、沈殿の発生の有無を評価した。沈殿が発生するものは、混合安定性が低いものであり、潤滑油組成物としての使用に耐えられないものである。
(4)耐摩耗性の評価
表1に記載の各成分を混合して得られた各実施例及び比較例の潤滑油組成物について、ボール・オン・ディスク型の往復動摩擦試験機(バウデン・レーベン式)使い、荷重29.4N、温度100℃、すべり速度50mm/s、ストローク10mm、時間30分で摩擦試験を行い、ディスク上の摩耗痕幅を測定した。ボールは、ガラス球(直径12mm)であり、ディスクは材質SPCC−SBである。摩耗痕幅が小さいほど、耐摩耗性に優れているといえる。
(5)酸化安定性の評価
表1に記載の各成分を混合して得られた各実施例及び比較例の潤滑油組成物について、JIS K2514−1:2013に準拠するISOT試験にて、該潤滑油組成物に銅板と鉄板を触媒として入れて、試験温度120℃、試験時間24時間、撹拌速度1300rpmとして試料を劣化させた後、銅の溶出量を測定した。銅の溶出量が少ないほど、酸化安定性に優れているといえる。
下記表1に示す配合処方に従い配合して、潤滑油組成物を作製した。得られた各潤滑油組成物について、上記方法により測定した各性状及び性能の評価結果を表1に示す。
・基油1:60N水素化精製油(40℃動粘度:7.83mm2/s、100℃動粘度:2.22mm2/s、粘度指数:83)
・基油2:70N水素化精製油(40℃動粘度:9.92mm2/s、100℃動粘度:2.71mm2/s、粘度指数:114)
・リン化合物1:ジエチルステアリルホスホネート(一般式(1)において、R11がステアリル基であり、R12及びR13がエチル基であるリン化合物)
・リン化合物2:モノオレイルアシッドホスフェート
・リン化合物3:トリクレジルホスファイト
・ジチオリン酸亜鉛1:第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛(分子中に炭素数3、4及び6の第一級アルキル基の少なくとも一種のアルキル基を有するものの混合物)
・ジチオリン酸亜鉛2:第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛(分子中に炭素数8及び10の第一級アルキル基の少なくとも一種のアルキル基を有するものの混合物)
・脂肪酸アミド:イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンの反応物である。
・粘度指数向上剤1:ポリメタクリレート(Mw:140,000)
・粘度指数向上剤2:ポリメタクリレート(Mw:550,000)
・その他添加剤:フェノール系酸化防止剤、金属不活性化剤(チアジアゾール等)、シリコーン系消泡剤
一方、一般式(1)で表されるリン化合物を含まない比較例1及び2の潤滑油組成物は、摩耗痕幅が0.64mm、0.61mmであり、優れた耐摩耗性を有するものとはいえないものであった。比較例3の潤滑油組成物は、一般式(1)で表されるリン化合物のかわりにオレイルアシッドホスフェート及びトリクレジルホスファイトを配合し、ジチオリン酸亜鉛を配合しなかったものであり、摩耗痕幅は0.52mmと優れた耐摩耗性を有するものであったが、銅の溶出量が105質量ppmと酸化安定性に極めて劣るものであった。比較例4の潤滑油組成物は、一般式(1)で表されるリン化合物のかわりにオレイルアシッドホスフェートを配合したものであるが、オレイルアシッドホスフェートとジチオリン酸亜鉛との反応により沈殿が生じており、潤滑油組成物として使用できるものではなかった(そのため、耐摩耗性及び酸化安定性の評価は行わなかった。)。また、比較例5の潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛を配合しなかったものであり、銅の溶出量は2質量ppm以下と優れた酸化安定性を有するものであったが、摩耗痕幅が0.57mmであり、耐摩耗性に優れているとはいえないものであった。
Claims (14)
- 基油と、下記一般式(1)で表されるリン化合物と、ジチオリン酸亜鉛とを含む潤滑油組成物。
(一般式(1)中、R11は炭化水素基、R12及びR13は各々独立に水素原子又は炭化水素基を示し、R12及びR13の少なくとも一方は炭化水素基である。) - 前記一般式(1)において、R11が炭素数1以上24以下のアルキル基又は炭素数2以上24以下のアルケニル基であり、R12及びR13が各々独立に炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数2以上12以下のアルケニル基である請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 前記リン化合物の組成物全量基準の含有量が、0.01質量%以上3質量%以下である請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 前記ジチオリン酸亜鉛が、ジアルキルジチオリン酸亜鉛である請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛が、第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛である請求項4に記載の潤滑油組成物。
- 前記第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛が、炭素数が1以上24以下の第一級アルキル基を有する請求項4又は5に記載の潤滑油組成物。
- 前記ジチオリン酸亜鉛の組成物全量基準の含有量が、0.01質量%以上3質量%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 全リン原子含有量P0(質量%)に対する、前記リン化合物に由来のリン原子含有量P1(質量%)の割合P1/P0が50%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 40℃動粘度が5mm2/s以上35mm2/s以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 駆動系機器に用いられる請求項1〜9のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 緩衝器に用いられる請求項1〜10のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 基油と、下記一般式(1)で表されるリン化合物と、ジチオリン酸亜鉛とを配合する潤滑油組成物の製造方法。
(一般式(1)中、R11は炭化水素基、R12及びR13は各々独立に水素原子又は炭化水素基を示し、R12及びR13の少なくとも一方は炭化水素基である。) - 基油と、下記一般式(1)で表されるリン化合物と、ジチオリン酸亜鉛とを含む潤滑油組成物を用いた駆動系機器。
(一般式(1)中、R11は炭化水素基、R12及びR13は各々独立に水素原子又は炭化水素基を示し、R12及びR13の少なくとも一方は炭化水素基である。) - 緩衝器である請求項13に記載の駆動系機器。
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