JP2019142989A - 耐黄変性に優れたポリ塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents

耐黄変性に優れたポリ塩化ビニル系樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐黄変性、透明性に優れ、可塑剤の移行によるトラブルの抑制されたポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを提供すること。【解決手段】(A)ポリ塩化ビニル系樹脂 100質量部;(C)ポリエステル系可塑剤 1〜250質量部;を含み、ここで上記成分(C)ポリエステル系可塑剤の質量平均分子量が3100以上であり;活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成するための基材用である;ポリ塩化ビニル系樹脂組成物。好ましくは更に(B)コアシェルゴムを含む。【選択図】 図1

Description

本発明は、耐黄変性に優れたポリ塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により短時間で重合・硬化して、耐擦傷性などの諸特性に優れる塗膜を形成することができるため、化粧シート、加飾フィルム、及びガラス飛散防止フィルムなどに多用されている。一方、活性エネルギー線、特に電子線はエネルギーが高いため、塗膜を形成するためのフィルム基材が黄色に変色するというという問題があった。そこで、活性エネルギー線、特に電子線によりフィルム基材が黄色に変色するという問題を解決する技術として、例えば、特許文献1〜4などの提案がなされている。しかし、本発明者がこれらを追試したところ、十分に満足のできるものではなかった。
特開2016‐068524号公報 特開2016‐069598号公報 特開2016‐182819号公報 特開2017‐177496号公報
本発明の課題は、耐黄変性に優れた(活性エネルギー線、特に電子線により黄色に変色するという問題の抑制された)ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。本発明の更なる課題は、耐黄変性、透明性に優れ、可塑剤の移行によるトラブルの抑制されたポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の樹脂組成物により、上記課題を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂 100質量部;
(C)ポリエステル系可塑剤 1〜250質量部;
を含み、ここで上記成分(C)ポリエステル系可塑剤の質量平均分子量が3100以上であり;
活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成するための基材用である;
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物である。
第2の発明は、
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂 100質量部;
(B)コアシェルゴム 1〜100質量部;及び、
(C)ポリエステル系可塑剤 1〜250質量部;
を含み、ここで上記成分(C)ポリエステル系可塑剤の質量平均分子量が3100以上であり;
活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成するための基材用である;
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物である。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む成形体である。
第4の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムである。
第5の発明は、表面側から順に活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用い形成された塗膜、第4の発明に記載のフィルムの層を有する積層フィルムである。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、耐黄変性に優れる。本発明の好ましいポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、耐黄変性、透明性に優れ、可塑剤の移行によるトラブルが抑制されている。そのため本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む成形体は、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成するための基材として好適に用いることができる。そのため本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムは、その少なくとも一方の表面の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成するためのフィルム基材として好適に用いることができる。
本明細書において「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。
数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。更に数値範囲に係る「〜」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10〜90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
1.樹脂組成物:
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、(A)ポリ塩化ビニル系樹脂;及び、(C)ポリエステル系可塑剤;を含む。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、好ましい態様の1つにおいて、(A)ポリ塩化ビニル系樹脂;(B)コアシェルゴム;及び、(C)ポリエステル系可塑剤;を含む。
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂:
上記成分(A)はポリ塩化ビニル系樹脂である。上記成分(A)として用い得るポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体);塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの塩化ビニル系共重合体;後塩素化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニルや塩化ビニル系共重合体を改質(塩素化等)したもの;などをあげることができる。更には塩素化ポリエチレン等の、化学構造がポリ塩化ビニルと類似する塩素化ポリオレフィンを用いてもよい。これらの中で、耐黄変性の観点から、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)が好ましい。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
(B)コアシェルゴム:
上記成分(B)はコアシェルゴムである。上記成分(B)はカレンダーロール圧延製膜性を良好にする働きをする。
上記成分(B)としては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・スチレン/スチレン・ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/スチレン・ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などをあげることができる。これらの中で、耐黄変性、耐候性の観点から、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などの、(メタ)アクリル酸エステルゴムに(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、スチレンなどがグラフト共重合されたアクリル系コアシェルゴムが好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(B)の配合量は、任意成分であるから特に制限されない。上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、カレンダーロール圧延製膜性の改良効果を確実に得る観点、及び耐候性の観点から、通常1質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは7質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であってよい。一方、透明性の観点から、通常100質量部以下、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下であってよい。
(C)ポリエステル系可塑剤:
上記成分(C)はポリエステル系可塑剤である。上記成分(C)としては、例えば、多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−へキサンジオール、1,6−へキサンジオール、及びネオペンチルグリコールなどの1種又は2種以上の混合物を用い、多価カルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸などの1種又は2種以上の混合物を用い、所望により一価アルコール、モノカルボン酸などをストッパーに使用したポリエステル系可塑剤をあげることができる。上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(C)のゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略すことがある。)により測定した微分分子量分布曲線(以下、「GPC曲線」と略すことがある。)から求めたポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は、可塑剤の移行によるトラブルを抑制する観点、及び耐黄変性の観点から、通常3100以上、好ましくは3500千以上、より好ましくは4000以上、更に好ましくは4500以上、最も好ましくは5000以上である。可塑剤の移行によるトラブルを抑止する観点からは、質量平均分子量は大きいほど好ましい。一方、可塑剤の可塑化効率の観点から、質量平均分子量は通常10万以下、好ましくは5万以下、より好ましくは1万以下であってよい。
GPCの測定は、システムとして東ソー株式会社の高速液体クロマトグラフィーシステム「HLC−8320(商品名)」(デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム。)を使用し;GPCカラムとしShodex社のGPCカラム「KF−806L(商品名)」を2本、「KF−802(商品名)」及び「KF−801(商品名)」を各1本の合計4本を、上流側からKF−806L、KF−806L、KF−802、及びKF−801の順に連結して使用し;和光純薬工業株式会社の高速液体クロマトグラフ用テトラヒドロフラン(安定剤不含)を移動相として;流速1.0ミリリットル/分、カラム温度40℃、試料濃度1ミリグラム/ミリリットル、及び試料注入量100マイクロリットルの条件で行うことができる。各保持容量における溶出量は、測定試料の屈折率の分子量依存性が無いと見なしてRI検出器の検出量から求めることができる。また保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、アジレントテクノロジー(Agilent Technology)株式会社の標準ポリスチレン「EasiCal PS−1(商品名)」(Plain Aの分子量6375000、573000、117000、31500、3480;Plain Bの分子量2517000、270600、71800、10750、705)を使用して作成することができる。解析プログラムは、東ソー株式会社の「TOSOH HLC−8320GPC EcoSEC(商品名)」を使用することができる。なおGPCの理論及び測定の実際については、共立出版株式会社の「サイズ排除クロマトグラフィー 高分子の高速液体クロマトグラフィー、著者:森定雄、初版第1刷1991年12月10日」などの参考書を参照することができる。
図1に実施例で用いた下記成分(C−1)の微分分子量分布曲線を示す。分子量650、860、1100、及び1400にオリゴマー成分のピークトップ、分子量5500に主要成分のピークトップを有し、全体の質量平均分子量は5200、数平均分子量は2300である。
上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、耐ブロッキング性、及び可塑剤の移行によるトラブルを抑制する観点から、通常250質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、より更に好ましくは45質量部以下、最も好ましくは35質量部以下であってよい。一方、上記成分(C)の配合量の下限は、耐黄変性、耐候性、及びカレンダーロール圧延製膜性の観点から、通常1質量部以上、好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であってよい。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される熱安定剤を更に含ませることが好ましい。上記熱安定剤としては、例えば、有機スズ化合物系、バリウム・亜鉛系、カルシウム・亜鉛系、及び鉛系の熱安定剤などをあげることができる。これらの中で、耐黄変性の観点から、有機スズ化合物系の熱安定剤が好ましい。上記有機スズ化合物としては、例えば、ジオクチル錫メルカプト、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート、及びジオクチル錫ステアレートなどのジオクチル錫系化合物;及び、ジメチル錫メルカプトなどのジメチル錫系化合物;などをあげることができる。上記熱安定剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記熱安定剤の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、耐黄変性の観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であってよい。一方、上記熱安定剤のブリードアウトを抑制する観点から、通常10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下であってよい。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、所望により、本発明の目的に反しない限度において、上記成分(A)〜(C)以外のその他の成分を更に含ませることができる。上記その他の成分としては、例えば、上記成分(A)、(B)以外の熱可塑性樹脂;上記成分(C)以外の可塑剤;酸化防止剤、耐候性安定剤、着色剤、滑剤、加工助剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、尿素−ホルムアルデヒドワックス、及び界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。
上記成分(A)、(B)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体;及び、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体などをあげることができる。
上記成分(C)以外の可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、イタコン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤、エポキシ系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、テトラヒドロフタル酸ジエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル系可塑剤、イソソルバイドジエステル系可塑剤、ホスフェート系可塑剤系、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニルテトラカルボン酸エステル系可塑剤、及び塩素系可塑剤などをあげることができる。
上記その他の成分としては、これらの1種以上を用いることができる。
上記その他の成分の配合量は、任意成分であるから特に制限されないが、上記成分(A)100質量部に対して、通常10質量部程度以下、あるいは0.01〜10質量部程度であってよい。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、任意の溶融混練機を使用して、上記成分(A)、上記成分(C)及び所望に応じて用いる任意成分を、同時に又は任意の順に上記溶融混練機に投入し、溶融混練することにより得ることができる。
上記溶融混練機としては、加圧ニーダーやミキサーなどのバッチ混練機;一軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機等の押出混練機;カレンダーロール混練機;などをあげることができる。これらを任意に組み合わせて使用してもよい。
得られた組成物は、任意の方法でペレット化した後、任意の方法で任意の成形品に成形することができる。上記ペレット化はホットカット、ストランドカット、及びアンダーウォーターカットなどの方法により行うことができる。
2.成形体:
本発明の成形体は、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む成形体である。本発明の成形体は、通常は、成形体の表面の一部又は全部の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成することが予定されている成形体である。本発明の成形体の塗膜形成箇所は、通常は、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物により構成されている。このような成形体としては、例えば、表皮材として本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用い、芯材として任意の熱可塑性樹脂を用い、共押出成形して得られる複合成形体;本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムと任意の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、又は板との積層体;該積層体を、真空成形、圧空成形、及びプレス成形などの熱成形により賦形して得られる複合成形体;及び、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムを表皮材として金型内にインサートした後、任意の熱可塑性樹脂を芯材として射出する方法(フィルムインサート成形)で得られる複合成形体;などをあげることができる。
3.フィルム:
本発明のフィルムは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムである。本発明のフィルムは、フィルムの片面又は両面の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成するためのフィルム基材として好適に用いることができる。
本発明のフィルムは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用い、任意のフィルム製膜装置を使用して製膜することにより得ることができる。上記フィルム製膜装置としては、例えば、カレンダーロール圧延加工機、及び引巻取装置を備えるカレンダーロール圧延製膜装置;及び、押出機、Tダイ、及び引巻取装置を備えるTダイ製膜装置;などをあげることができる。
上記カレンダーロール圧延加工機としては、例えば、直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、及びZ型ロールなどをあげることができる。上記押出機としては、例えば、一軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機などをあげることができる。上記Tダイとしては、例えば、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及びコートハンガーダイなどをあげることができる。
本発明のフィルムは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用い、好ましくはカレンダーロール圧延製膜装置を使用して製膜することにより得ることができる。より好ましくはカレンダーロール圧延製膜装置を使用し、ロール温度160℃〜200℃の条件で製膜することにより得ることができる。
本発明のフィルムの厚みは、特に制限されないが、取扱性の観点から、通常20μm以上、好ましくは50μm以上であってよい。一方、本発明のフィルムを含む物品の薄型化の要求に応える観点から、通常1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下であってよい。
本発明の積層フィルムは、本発明のフィルム(本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルム)の層を1層以上含む積層フィルムである。本発明の積層フィルムは、通常は、表面側から順に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成された塗膜、及び本発明のフィルムの層を有する。
本発明の積層フィルムとしては、例えば、表面側から順に活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用い形成された塗膜、及び本発明のフィルムの層を有する積層フィルムをあげることができる。このような態様の積層フィルムにあっては、本発明のフィルムは透明なものであってもよく、不透明なものであってもよく、着色されたものであってもよい。本明細書において、「表面側」とは実使用状態において通常視認される面の側を意味する。「実使用状態」とは、例えば、化粧シートの場合には、化粧シートが各種物品の表面の化粧、加飾に用いられた状態をいう。
本発明の積層フィルムとしては、例えば、表面側から順に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用い形成された塗膜、本発明のフィルムの層、印刷層、及び着色樹脂フィルムの層を有する積層フィルムをあげることができる。このような態様の積層フィルムは化粧シート、加飾フィルムとして、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、モバイルフォン、及びパソコンなどの家電製品;飾り棚、収納箪笥、食器戸棚、及び机などの家具;あるいは床、壁、及び浴室などの建築部材;の加飾化粧に好適に用いることができる。このような態様の積層フィルムにあっては、本発明のフィルムは透明なものが好ましい。本発明のフィルムの全光線透過率(JIS K7105:2011の5.5.2測定法Aに従い測定。)は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上であってよい。全光線透過率は高いほど好ましい。全光線透過率は、JIS K7105:2011の5.5.2測定法Aに従い、例えば、日本分光株式会社の分光光度計「V−570(商品名)」を使用して測定することができる。
図2は本発明のフィルムを用いた化粧シートの一例を示す断面の概念図である。表面側から順に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成された塗膜1、透明な本発明のフィルムの層2、印刷層3、着色された熱可塑性樹脂フィルムの層4を有している。着色された熱可塑性樹脂フィルムの層4の印刷層3との貼合面とは反対側の面の上に、直接又はアンカーコートを介して粘着剤層又は接着剤層を形成してもよい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
測定方法
(イ)全光線透過率:
JIS K7105:2011の5.5.2測定法Aに従い、日本分光株式会社の分光光度計「V−570(商品名)」を使用して測定した。
(ロ)耐黄変性:
JIS Z8722:2009に従い、コニタミノルタジャパン株式会社の分光測色計「CM600d」を使用し、幾何条件c、鏡面反射となる成分含む条件で、XYZ座標を測定し、これを換算することにより、処理前のL*a*b*座標を求めた。続いて、コバルト60を線源とするγ線の50KGyの照射を行った。照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(温度23℃、相対湿度50%)で3日間静置した。これはサンプルの着色黄変は、照射後もしばらくは徐々に進行するので、色を安定化させるためである。上述の方法に従い、処理後のL*a*b*座標を求めた。処理前のL*a*b*座標と処理後のL*a*b*座標から、上記分光測色計内蔵の計算方法(ΔE*ab(CIE1976))を使用して色差(ΔE)を算出した。なおL*a*b*座標については、コニタミノルタジャパン株式会社のホームページ(下記アドレス)などを参照することができる。
http://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/part1/07.html
(ハ)耐熱性:
コバルト60を線源とするγ線の50KGyの照射を行い、照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(温度23℃、相対湿度50%)で3日間静置した後、JIS Z8722:2009に従い、コニタミノルタジャパン株式会社の分光測色計「CM600d」を使用し、幾何条件c、鏡面反射となる成分含む条件で、XYZ座標を測定し、これを換算することにより、耐熱処理前のL*a*b*座標を求めた。続いて、温度70℃(湿度制御は行わなかった。)のギヤオーブン内で7日間処理し、更に恒温恒湿の条件下(温度23℃、相対湿度50%)で3日間静置した後、上述の方法に従い、耐熱処理後のL*a*b*座標を求めた。耐熱処理前のL*a*b*座標と耐熱処理後のL*a*b*座標から、上記分光測色計内蔵の計算方法(ΔE*ab(CIE1976))を使用して色差(ΔE)を算出した。
(ニ)冷熱サイクル:
コバルト60を線源とするγ線の50KGyの照射を行い、照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(温度23℃、相対湿度50%)で3日間静置した後、JIS Z8722:2009に従い、コニタミノルタジャパン株式会社の分光測色計「CM600d」を使用し、幾何条件c、鏡面反射となる成分含む条件で、XYZ座標を測定し、これを換算することにより、冷熱サイクル処理前のL*a*b*座標を求めた。続いて、温度50℃、相対湿度80%で2日間、温度10℃(湿度制御は行わなかった。)で1日間、温度50℃、相対湿度80%で1日間処理するプログラムで冷熱サイクル処理を行い、更に恒温恒湿の条件下(温度23℃、50%相対湿度)で3日間静置した後、上述の方法に従い、冷熱サイクル後のL*a*b*座標を求めた。冷熱サイクル前のL*a*b*座標と冷熱サイクル後のL*a*b*座標から、上記分光測色計内蔵の計算方法(ΔE*ab(CIE1976))を使用して色差(ΔE)を算出した。
(ホ)耐候性:
コバルト60を線源とするγ線の50KGyの照射を行い、照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(23℃、50%相対湿度)で3日間静置した後、JIS Z8722:2009に従い、コニタミノルタジャパン株式会社の分光測色計「CM600d」を使用し、幾何条件c、鏡面反射となる成分含む条件で、XYZ座標を測定し、これを換算することにより、耐候処理前のL*a*b*座標を求めた。続いて、JIS B7753:2007に規定されるスガ試験機株式会社のサンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(SWOM)「サンシャインウェザーメーターS300(商品名)」を使用し、放射照度225W/m(ガラス製フィルタの仕様は上記規格表2の種類A、放射照度の区分は上記規格表3の通常形)、120分毎に18分間の水噴霧、雰囲気温度43℃、ブラックパネル温度63℃、及び相対湿度50±5%の条件で2000時間処理し、更に恒温恒湿の条件下(温度23℃、50%相対湿度)で3日間静置した後、上述の方法に従い、耐候処理後のL*a*b*座標を求めた。耐候処理前のL*a*b*座標と耐候処理後のL*a*b*座標から、上記分光測色計内蔵の計算方法(ΔE*ab(CIE1976))を使用して色差(ΔE)を算出した。
(へ)移行性1:
デンカ株式会社のABS樹脂「デンカABS GR‐2000(商品名)」100質量部とカーボンブラックのマスターバッチ(ABS樹脂ベース。カーボン50質量%)2質量部との混合物を用い、射出成型法により、1辺15cmの正方形、厚み2mmの樹脂板を得た。次に該樹脂板の面の中央にサンプル(フィルムをマシン方向8cm、横方向6cmの長方形に裁断したもの)を、更にサンプルの面の上にステンレス板(縦8cm、横6cmの長方形、厚み2mm)を、上から見たときサンプルとステンレス板とが略一致するように重ねた。続いて、ステンレス板の面の中央に1Kgの錘を載せ、温度70℃(湿度制御は行わなかった。)のギヤオーブン内で7日間処理を行った。処理後の上記樹脂板のサンプルとの接触箇所等を目視観察し、以下の基準で評価した。図3に例5の処理後樹脂板(D評価)の写真を示す。
A:接触箇所に変化は全く認められない。
B:接触箇所と非接触箇所を比較すると僅かな変色が認められる。しかし光沢感を失った部分はない。
C:接触箇所は変色し、かつ光沢感を失った部分を生じた。
D:接触箇所は著しく変色し、かつ広範囲に光沢感を失った。霜降り状になった。
(ト)移行性2:
ABS樹脂の代わりに東洋スチレン株式会社のポリスチレン「トーヨースチロールHI H450(商品名)」を用いたこと以外は、上記(へ)移行性1と同様に行った。
使用した原材料
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂:
(A−1)重合度800のポリ塩化ビニル単独重合体。
(B)コアシェルゴム:
(B−1)三菱ケミカル株式会社のコアシェルゴム(メタクリル酸メチル・スチレン/アクリル酸エチルゴムグラフト共重合体)「メタブレンW−300A(商品名)」
(C)ポリエステル系可塑剤:
(C−1)株式会社ADEKAのポリエステル系可塑剤「アデカサイザーPN−280(商品名)」。質量平均分子量(Mw)5200。
(C−2)株式会社ADEKAのポリエステル系可塑剤「アデカサイザーPN−446(商品名)」。質量平均分子量(Mw)5300。
(C−3)DIC株式会社のポリエステル系可塑剤「ポリサイザーW−4010(商品名)」。質量平均分子量(Mw)10000。
(C’−1)株式会社ADEKAのポリエステル系可塑剤「アデカサイザーPN−7160(商品名)」。質量平均分子量(Mw)1200。
(C’−2)フタル酸ビス(2‐エチルヘキシル)。
(D)任意成分:
(D−1)株式会社ADEKAのジオクチル錫メルカプト系安定剤「アデカスタブ465(商品名)」。
(D−2)株式会社ADEKAの滑剤「アデカスタブLS−16(商品名)」。
例1〜7
表1に示す配合(質量部)の樹脂組成物を、ミキサー混練機を使用し、排出時樹脂温度140℃の条件で溶融混練し、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得た。次に日本ロール製造株式会社の逆L型4本カレンダーロール圧延加工機と引巻取装置を備える製膜装置を使用し、第1ロール温度180℃、第2ロール温度180℃、第3ロール185℃、第4ロール180℃、及び引巻取速度60m/分の条件で、厚み80μmのフィルムを製膜した。上記試験(イ)〜(ト)を行った。結果を表1に示す。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、耐黄変性、透明性に優れ、可塑剤の移行によるトラブルが抑制されている。またγ線照射後に行った耐熱性、冷熱サイクル、及び耐候性の試験結果も良好である。
実施例で用いた上記成分(C−1)の微分分子量分布曲線である。 本発明のフィルムを用いた化粧シートの一例を示す断面の概念図である。 例5の上記(へ)移行性1試験結果(処理後樹脂板(D評価))の写真である。
1:活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成された塗膜
2:透明な本発明のフィルムの層
3:印刷層
4:着色された熱可塑性樹脂フィルムの層

Claims (5)

  1. (A)ポリ塩化ビニル系樹脂 100質量部;
    (C)ポリエステル系可塑剤 1〜250質量部;
    を含み、ここで
    上記成分(C)ポリエステル系可塑剤の質量平均分子量が3100以上であり;
    活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成するための基材用である;
    ポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
  2. (A)ポリ塩化ビニル系樹脂 100質量部;
    (B)コアシェルゴム 1〜100質量部;及び、
    (C)ポリエステル系可塑剤 1〜250質量部;
    を含み、ここで
    上記成分(C)ポリエステル系可塑剤の質量平均分子量が3100以上であり;
    活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて塗膜を形成するための基材用である;
    ポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む成形体。
  4. 請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルム。
  5. 表面側から順に活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用い形成された塗膜、
    請求項4に記載のフィルムの層を有する積層フィルム。
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