JP2019141588A - 穿刺針 - Google Patents

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Abstract

【課題】穿刺時の痛みを抑えた穿刺針を提供する。【解決手段】穿刺針10は、生体の対象部位に穿刺される低侵襲又は非侵襲の穿刺針10であって、穿刺方向(Z軸方向)に長手の本体9と、本体9の先端8の形状が複数に分岐することで形成された先細り形状の刃先部4a〜4cとを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、穿刺針に関する。
従来、治療や検査に用いられる穿刺針としては、注射針、採血針、留置針などがある。穿刺針は、生体等の穿刺対象部位に対して穿刺する際に痛みが少ないことが望ましい。このため、穿刺針の直径を小さくする提案や、穿刺時の抵抗が小さくなるような刃面の形状にする提案が成されている。
例えば、非特許文献1では、先端の直径を180μmとすることにより、痛みの軽減を図った注射針が開示されている。
また、特許文献1では、円筒状の本体の尖端部を、何れか一方から斜めに切除してテーパ状の尖端部を形成した注射針であって、前記円筒状の本体の外周から接続し且つ当該本体の軸線方向に対して所定の角度で形成された第1の傾斜面と、この第1の傾斜面に接続し且つ前記円筒状の本体の軸線方向に対する角度が当該第1の傾斜面よりも大きな角度で形成された第2の傾斜面と、この第2の傾斜面に接続し且つ刃先と接続し且つ前記円筒状の本体の軸線方向に対する角度が当該第2の傾斜面よりも大きな角度で形成された第3の傾斜面を備えた注射針が提案されている。
特開2000−262615号公報
テルモ株式会社、トップ/プレスリリース/2012年、[平成29年9月8日検索]、インターネット<http://www.terumo.co.jp/pressrelease/detail/20120830/37>
上述のように穿刺針の直径(外径)を小さくすることで、穿刺時の痛みを抑えることができるが、例えば薬液の注入若しくは体液の採取のために必要な内径や、穿刺時に必要な強度、加工精度などの所要条件を満たすためは、穿刺針の小径化には限度がある。例えば、現在市販されている穿刺針では、直径180μmのものが最小であった。
一方、特許文献1の注射針は、人工透析などで使用される例えばφ1.4mm以上といった太い注射針を対象としており、穿刺時の抵抗を小さくして穿刺時に与える痛みを少なくするように設計されている。
本願の発明者は、例えば200μm以下といった非常に細い穿刺針においては、単に穿刺抵抗を下げるだけでなく、刃面が穿刺対象部位に進入する際の切れ味を増すことが痛みを抑制に有効であることを見いだした。
そこで本発明は、穿刺時の痛みを抑えた穿刺針の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の穿刺針は、生体の対象部位に穿刺される低侵襲又は非侵襲の穿刺針であって、穿刺方向に長手の本体と、前記本体の先端の形状が複数に分岐し、することで形成された先細り形状の刃先部と、を備える。
この構成により、本発明に係る穿刺針は、複数の刃先部で穿刺対象部位を的確に切り裂き、必要な外径を小さくすることで、穿刺時の痛みを抑えることができる。更に、複数の刃先部を有しているため、従来の穿刺針よりも毛細血管を切り裂き出血させる可能性が高い。
前記本体の先端は、前記本体の外周面から前記複数に分岐した刃先部の頂点にかけて形成された刃面を備えることによって、前記刃先部を先細り形状としてもよい。この構成により、本発明に係る穿刺針は、穿刺対象部位を容易に切り裂くことができる。
前記穿刺針は、前記刃面のそれぞれが、前記本体の長手方向における中心軸に対して回転対称に配置されてもよい。この構成により、本体の先端の横断面において、複数の刃面をバランス良く配置することで、刃先部のみならず、刃先と刃先の谷部にも応力が分散し、穿刺時の過剰な負荷が一部分に集中し難くなるため、過度に脆弱な部分を形成することなく、強度、剛性等を確保できる。
前記穿刺針は、前記刃面のそれぞれが、先端側の領域と基端側の領域とで、前記本体の長手方向における中心軸に対する傾きが異なっており、前記先端側の領域の前記傾きよりも前記基端側の領域の前記傾きが小さい構成としてもよい。この構成により、本発明に係る穿刺針は、先端側の領域では刃面の傾斜を抑えて刃先部の剛性を確保し、基端側の領域では刃面の傾斜を大きくして穿刺抵抗を減らし、刃先部の剛性を確保しつつ痛みを抑えることができる。
前記穿刺針は、前記刃先部が、生体の表皮を切り裂くことで前記本体の先端が前記生体に穿刺され、前記生体内に刺し込まれる部分における表面積のうち、前記生体と接触する生体接触面積が0.897mm未満であってもよい。この構成により、本発明の穿刺針は、穿刺抵抗を減らし、穿刺時の痛みを十分に抑えることができる。また、この構成により、本発明の穿刺針は、穿刺時に痛点に接触する可能性を減らし、穿刺時の痛みを抑えることができる。
前記穿刺針は、前記複数の刃先部同士の間には、前記本体の先端における外周面に開口すると共に前記本体の長手方向に沿って延設される溝が設けられ、当該溝を介して前記刃先部同士が離間した構成としてもよい。なお、前記溝の幅は、表皮細胞の幅より小さいものであってもよい。この構成により、本発明の穿刺針は、刃先部の両側部にエッジが形成されるため、刃面が増えて皮膚を切り裂き易くでき、また、溝を形成することで、生体接触面積を低減でき、皮膚の切り裂き易さと痛み低減を両立できる。また、溝の幅が表皮細胞の幅より小さい穿刺針は、穿刺によって表皮細胞を破壊する可能性を低減できるため、表皮細胞の破壊による痛みを低減できる。この他、レーザ加工によって円柱状の材料に溝を形成するため、比較的容易に複数の刃先部を有する穿刺針に加工することができる。
また、本発明に係る穿刺針において、前記穿刺方向と直交する横断面における前記本体の外径が、95μm以上100μm未満であってもよい。これにより、生体の対象部位への穿刺による痛みのストレスを殆ど受けない非侵襲針を好適に提供することができる。
また、本発明に係る穿刺針において、前記穿刺方向と直交する横断面における前記本体の外径が、100μm以上180μm未満であってもよい。これにより、生体への対象部位への穿刺による痛みのストレスを十分に小さく抑えた低侵襲針を好適に提供することが
できる。
また、本発明に係る穿刺針において、前記穿刺方向と直交する横断面における前記本体の外径が、160μm以上210μm以下であってもよい。これにより、生体への対象部位への穿刺による痛みのストレスを十分に小さく抑えた低侵襲針を好適に提供することができる。
また、本発明に係る穿刺針において、前記穿刺方向における先端から基端にかけて貫通し、体液の採取、若しくは薬剤の注入が可能な中空部を有してもよい。この構成により、本発明の穿刺針は、注射針や採血針として用いることができる。
また、前記穿刺針は、前記穿刺方向における先端から基端にかけて貫通する中空部を有し、前記穿刺方向と直交する横断面における前記本体の外径が、95μm以上180μm以下であり、肉厚が45μm以上65μm以下であってもよい。これにより、穿刺針先端の剛性を確保し、生体に穿刺しやすくなり、穿刺時の痛みを抑えつつ、生体から出血させる可能性を高めることができる。
本発明によれば、穿刺時の痛みを抑えた穿刺針を提供できる。
図1は、第一実施形態における穿刺針の先端部分の側面図である。 図2は、第一実施形態の穿刺針を先端側から見た正面図である。 図3は、穿刺針の外径の違いによるマウスのストレス変化を示す図である。 図4は、穿刺針の生体接触面積の違いによるマウスのストレス変化を示す図である。 図5は、第二実施形態における穿刺針の先端部分の斜視図である。 図6は、第二実施形態の穿刺針を先端側から見た正面図である。 図7は、第二実施形態にかかる穿刺針の先端部分を示す側面図である。 図8は、実施例1として、図5の穿刺針と従来の穿刺針(比較針1)とをマウスの手のひらに穿刺した際のストレスを比較した結果を示す図である。 図9は、実施例2として、図5の穿刺針と従来の穿刺針(比較針2)とをマウスの大腿部に穿刺した際のストレスを比較した結果を示す図である。 図10は、穿刺装置の外観斜視図である。 図11は、作動前、作動時および作動後における穿刺装置の状態を示す模式断面図である。 図12は、穿刺針の外径の違いによるマウスのストレス変化を評価した評価試験1の評価結果を示すグラフである。 図13は、評価結果から外れ値を除外して穿刺針の外径の違いによるマウスのストレス変化を評価した評価試験2の評価結果を示すグラフである。 図14は、(a)穿刺前の従来の穿刺針先端の状態、(b)穿刺前の第三実施形態の穿刺針先端の状態を示す図である。 図15は、(c)穿刺後の従来の穿刺針先端の状態(外周面よりも外側に突出した穿刺針)、(d)穿刺後の従来の穿刺針先端の状態(外周面よりも内側に突出した穿刺針)、(e)穿刺後の第三実施形態の穿刺針先端の状態を示す図である。 図16は、穿刺前の穿刺針先端の形状を示す図である。 図17は、穿刺後の穿刺針先端の形状を示す図である。
〈第一実施形態〉
以下、図面を参照して、穿刺針の実施形態について説明する。本実施形態の穿刺針は、例えば、生体の皮膚に一旦穿刺した後に抜き、この穿刺した部分から血液を滲み出させて、血液の成分を調べるといった血液検査やセルフメディケーション等に用いられる所謂ランセット針である。
図1は、第一実施形態における穿刺針の先端部分の側面図である。図2は、第一実施形態の穿刺針を先端側から見た正面図である。本実施形態の穿刺針10は、穿刺方向(Z軸方向)に長手で円柱状の本体9を有し、当該の本体9の先端部分8に、テーパ状の刃面1と、この刃面1を分割する溝3a〜3cを有している。溝3a〜3cは、穿刺針10における本体9の先端部分8の外周面に開口するように本体9の長手方向に沿って延設されている。
穿刺針10は、溝3a〜3cによって刃面1が分割されることで、先端部分8の最先部に穿刺方向へ向けて複数に分岐した先鋭な刃先部4a〜4cが形成されている。そして、穿刺針10における複数の刃先部4a〜4c同士の間には複数の溝3a〜3cが配設されている。言い換えると、複数の溝3a〜3cを介して刃先部4a〜4c同士が離間している。なお、図1、2においては図示を省略しているが、穿刺針10は、本体9の基端部に、使用者が当該穿刺針10を把持するための把持部を備えてもよい。
刃面1は、本体9の外周面から刃先部4a〜4cの先端にかけてテーパ状に形成されており、このテーパの角度(中心軸1Xに対する傾き)が、先端側と基端側とで異なって形成されている。図1,2では、刃面1のうち、テーパの角度が異なる部分と溝3a〜3cによって周方向に分割された部分に、それぞれ符号1aa〜1ac、1ba〜1bc、1ca〜1ccを付している。以下の説明において、これらを区別する場合には、この符号1aa〜1ac、1ba〜1bc、1ca〜1ccを用い、これらを総称する場合には、符号1のみを用いて説明する。
例えば、先端側の刃面1aa〜1acは、基端側の刃面1ba〜1bcと比べて、テーパの角度が大きく形成されている。また、刃面1ba〜1bcは、これより基端側の刃面1ca〜1ccと比べて、テーパの角度が大きく形成されている。なお、図1に示す例では、穿刺針10を側方(Y軸方向)から見た場合における刃面1aa〜1ac、1ba〜1bc、1ca〜1ccが成す穿刺針10の輪郭線の形状が直線状を呈しているが、特に限定されない。例えば、穿刺針10を側方(Y軸方向)から見た場合における刃面1が成す穿刺針10の輪郭線の形状が、先端側よりも基端側の傾きが小さくなる曲線状、即ち外側に膨らみを持つ曲線状を呈していてもよい。
穿刺針10における溝3a〜3cは、図1に示されるように、穿刺針10の先端から本体9の側面に設けられ、その長手方向と直交する横断面においてV字状に形成されている。また、溝3a〜3cは、図2に示されるように、穿刺針10の先端中心から放射状に三方へ形成され、刃面1を3分割している。溝3a〜3cは、それぞれ穿刺針10の中心軸1Xに対して回転対称に形成され、これら溝3a〜3cによって分割された刃面1aa〜1ac、1ba〜1bc、1ca〜1ccもそれぞれ中心軸1Xに対して回転対称に形成されている。
穿刺針10は、各溝3a〜3cによって、穿刺針10の最先部が複数の刃先部4a〜4cに分岐されている。より詳しくは、穿刺針10の刃先部4aは、溝3aにおける刃面1aa,1ba,1ca側の壁面3aaと、溝3bにおける刃面1aa,1ba,1ca側の壁面3abと、刃面1aa,1ba,1caによって外形が画定された略三角柱状となっている。同様に、穿刺針10の刃先部4bは、溝3bにおける刃面1ab,1bb,1bc側の壁面3bbと、溝3cにおける刃面1ab,1bb,1bc側の壁面3bcと、
刃面1ab,1bb,1bcによって外形が画定された略三角柱状となっている。更に、穿刺針10の刃先部4cは、溝3cにおける刃面1ac,1bc,1cc側の壁面3ccと、溝3aにおける刃面1ac,1bc,1cc側の壁面3acと、刃面1ac,1bc,1ccによって外形が画定された略三角柱状となっている。
このように、本実施形態の穿刺針10における本体9の先端は、溝3a〜3cによって複数に分岐された刃先部4a〜4cを備え、外周面から刃先部4a〜4cの頂点にかけてテーパ状に形成された刃面1aa〜1ac、1ba〜1bc、1ca〜1ccを備えることによって、刃先部4a〜4cが先細り形状となっている。
なお、本実施形態では、穿刺針10の最先部が、三つの刃先部4a〜4cに分岐した構造となっているが、これに限られず、穿刺針10の最先部が複数の刃先部に分岐した構造であればよい。なお、穿刺針10の最先部を偶数個の刃先部に分岐し、各刃先部を中心軸1Xに対して線対称に配置する場合に比べて、穿刺針10の最先部を奇数個の刃先部に分岐し、各刃先部を中心軸1Xに対して線対称に配置しない場合の方が、穿刺針10の最先部の強度や剛性等を確保しやすい。従って、穿刺針10は、最先部を奇数個の刃先部に分岐させることが、最先部の強度や剛性等を確保する観点から、より好ましい。
穿刺針10の材料は特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料や合成樹脂(プラスチック)を使用しても良い。なお、本実施形態では、穿刺針10の材料としてSUS304を用いている。
また、穿刺針10の先端部分8に刃面1や、溝3a〜3cを形成する方法としては、例えば、切削、研磨、レーザ加工、放電加工等を用いることができる。なお、本実施形態では、円柱状の材料の端部を研磨してテーパ面を形成し、レーザ加工により溝3a〜3cを形成している。本実施形態においては、溝3a〜3cで分割されたテーパ面によって、刃面1が形成されている。
本実施形態における穿刺針10は、先端部分8が複数に分岐した先鋭な複数の刃先部4a〜4cを備えているため、穿刺針10を皮膚に穿刺した際に従来の穿刺針に比べて毛細血管をより容易に切り裂くことができる。より詳しくは、穿刺針10は、刃先部4aが一対のエッジ部5aa,5abを有し、刃先部4bが一対のエッジ部5bb,5bcを有し、刃先部4cが一対のエッジ部5ac,5ccを有している。このように、穿刺針10は、先端部分8を複数の刃先部4a〜4cに分岐する構造を採用することで、穿刺時に毛細血管を切り裂くエッジ部の数を増やすことができ、これによって穿刺時に毛細血管を切り裂く機会を増やすことができる。その結果、穿刺針10によれば、穿刺針10の外径を小さく抑えても、穿刺時に毛細血管を好適に切り裂くことができ、例えば検査等に必要な量の血液をより容易に毛細血管から滲み出させることができる。つまり、本実施形態における穿刺針10によれば、穿刺時における痛みを抑制することが可能となる。
また、本実施形態の穿刺針10においては、中心軸1Xと直交する横断面における各溝3a〜3cの幅GWが50μm以下となるように規定している。ここでいう各溝3a〜3cの幅GWは、図2に示すように、穿刺針10における先端部分8の外周部のうち、各溝3a〜3cが形成される領域の弧長として定義されてもよい。このように、各溝3a〜3cの幅GWを50μm以下とすることで、穿刺針10の穿刺時に皮膚細胞等が溝3a〜3c内に入り込み難くすることができる。このため、各溝3a〜3cの部分が皮膚に触れにくくなり、実質的に生体との接触面積(生体接触面積)を少なくすることができる。その結果、穿刺針10の穿刺時の痛みを、より好適に抑えることが可能となる。なお、各溝3a〜3cの幅GWは、50μm以下に限らず、例えば、表皮細胞の幅よりも小さい寸法と
して予め定められる所定寸法に設定されてもよい。溝の幅が表皮細胞の幅より小さい穿刺針は、穿刺によって表皮細胞を破壊する可能性を低減できるため、表皮細胞の破壊による痛みを低減できる。
ここで、図3は、穿刺針の外径の違いによるマウスのストレス変化を示す図である。図4は、穿刺針の生体接触面積の違いによるマウスのストレス変化を示す図である。以下、図3及び図4に基づく痛みの定量評価の結果に基づき、穿刺針10における各部の特に好ましいサイズについて説明する。
本願の発明者は、穿刺針による穿刺時の痛みの定量評価を行うため、外径や生体接触面積が相違する穿刺針をマウスに穿刺し、穿刺時直後におけるマウスの唾液に含まれるαアミラーゼの変化を測定することによって、マウスのストレス変化を調べた。穿刺針をマウスに穿刺する部位は、穿刺が容易であって、神経の集中した部位である大腿部外側とし、穿刺深さは毛細血管に十分到達する3mmとした。また、穿刺時間は3秒間とした。外径200μmの穿刺針としては、テルモ社製のナノパス(登録商標)33Gを用いた。他の穿刺針としては、ルス・コム株式会社製の外径35μm、70μm、95μmの中空管、および大場機工株式会社製の外径100μm,150μmの中空管の先端を斜めに研磨し、穿刺方向(軸方向)に対して12°傾斜した刃面を形成したものを用いた。なお、その他の条件については、下記の文献と同様である。
Kazuyoshi Tsuchiya: The Painless Injection Tube: From Bio-mimetic Technology to Medical Engineering, Thought-Evoking Approaches in Engineering Problems(Editors: Ito, Yoshimi (Ed.)), p71-94, Springer(2014). DOI 10.1007/978-3-319-04120-9
図3は、横軸に穿刺針の外径を示し、縦軸にαアミラーゼの濃度を示している。そして、穿刺針の外径は、35μm、70μm、95μm、100μm、150μm、200μmの6水準とし、穿刺針を刺したときのマウスのストレス状態と穿刺針の外径との関係を図示している。なお、図3におけるコントロール(Control)は、穿刺針を刺していない
ときのマウスのストレス状態(αアミラーゼの濃度)を示している。
図4は、横軸に穿刺針の生体接触面積を示し、縦軸にαアミラーゼの濃度を示している。穿刺針の生体接触面積は、0.324mm、0.639mm、0.842mm、0.900mm、1.314mm、1.703mmの6水準とし、穿刺針を刺したときのマウスのストレス状態と穿刺針の生体接触面積との関係を示している。なお、0.000mmの値は、コントロールとして、穿刺針を刺していないときのマウスのストレス状態を示している。なお、ここでいう生体接触面積は、穿刺針をマウスに穿刺した際における生体との接触面積として定義される。
図3に示されるように、穿刺針の外径が95μm以下の範囲では、コントロールとの有意差が認められず、マウスは殆どストレスを受けていないことが分かる。そして、穿刺針の外径が100μm以上になると、外径が大きくなるに従ってマウスがより大きなストレスを受けていることが分かる。また、穿刺針の外径が100μm未満の穿刺針間においても、穿刺時の痛みについて有意差が認められない。即ち、図3によれば、穿刺針を、穿刺時に皮膚細胞を破壊せずに毛細血管を切り裂き、生体へ与える痛みが無い、或いは痛みとして認識しない程度の微かな感触しか与えない状態(本実施形態では、これを「非侵襲」とも称す)とするための最大許容外径は、95μm以上100μm未満の範囲内にあるといえる。言い換えると、穿刺針を非侵襲とする場合、外径を100μm未満とすることが好ましく、95μm以下とすることがより好ましいと言える。
また、図4に示されるように、穿刺針の生体接触面積が0.842mmまでは、コントロールとの有意差が認められず、マウスは殆どストレスを受けていないことが分かる。
そして、穿刺針の生体接触面積が0.842mm〜0.897mmにおいて、マウスへの穿刺時における唾液中のαアミラーゼの濃度の上昇が確認されている。従って、穿刺針を非侵襲とする場合、穿刺針の生体接触面積を0.897mm未満とすることが好ましく、0.842mm以下とすることがより好ましいと言える。
以上より、本実施形態における穿刺針10を非侵襲針として設計する場合、穿刺時における痛みを抑制する観点からは穿刺針10の外径を100μm未満とすることが好ましく、95μm以下とすることがより好ましい。このように穿刺針10の外径を小さくすることで、穿刺時に皮膚表面の細胞核を壊さずに血管を切り裂く構成とすることができる。これにより、穿刺時に細胞核から痛みの伝達物質が放出されないようにし、非侵襲とすることができる。なお、穿刺針10の穿刺時における痛みを抑制する観点からは、外径の下限値について特に限定されないが、図3に示したように外径が95μm以下の範囲では穿刺針の外径と穿刺時における痛みについて特に有意差が認められないため、穿刺針10の剛性や強度、先端部分8を形成する加工精度、製造容易性を含めて総合的に判断すると、穿刺針10の外径を95μm以上100μm未満とすることが特に好ましい態様と言える。穿刺針10の外径を95μm以上100μm未満とすることで、先端部分8の剛性および強度、加工精度および製造容易性の優れた非侵襲針を提供することができる。
なお、本実施形態における図1及び図2に示す例では、穿刺針10における本体9の外径を95μmとしている。また、ここでいう本体9の外径は、例えば、穿刺針10の本体9に溝3a〜3cが形成されていないものとして仮定したときの横断面の仮想外周円の直径として定義してもよい。
また、本実施形態における穿刺針10を非侵襲針として設計する場合、穿刺時における痛みを抑制する観点からは生体接触面積を0.897mm未満とすることが好ましく、0.842mm以下とすることがより好ましいと言える。なお、本実施形態における穿刺針10は、外周部に溝3a〜3cが形成されている。そのため、穿刺針10の生体接触面積は、穿刺針10の先端から穿刺対象部位内に穿刺される穿刺深さまでに亘る全表面積から、生体と接触しない各溝3a〜3c内の表面積の合計を差し引いた面積として定義されてもよい。
なお、穿刺針10の外径と同様、穿刺時における痛みを抑制する観点からは、生体接触面積の下限値について特に限定されないが、図4に示したように生体接触面積が0.842mm以下の範囲では、生体接触面積と穿刺時における痛みについての有意差が特に認められないため、穿刺針10の剛性や強度、先端部分8を形成する加工精度、製造容易性を含めて総合的に判断すると、穿刺針10の生体接触面積を0.842mm以上0.897mm未満とすることが特に好ましい態様と言える。
また、本実施形態における穿刺針10は、複数の刃先部4a〜4c同士の間には、本体9の先端における外周面に開口すると共に本体9の長手方向に沿って延設される溝3a〜3cが設けられ、当該溝3a〜3cを介して刃先部4a〜4c同士が離間した構造を採用している。この構成により、本実施形態における穿刺針10は、刃先部4a〜4cの周方向における両側部にエッジが形成されるため皮膚を切り裂き易いという利点がある。また、穿刺針10の外周部に溝3a〜3cを形成することで、生体接触面積を低減することができ、皮膚の切り裂き易さと痛み低減を両立することができる。
また、本実施形態における穿刺針10は、非侵襲針とならないまでも、穿刺時に生体へ与える痛みを十分に小さく抑えることのできる低侵襲針として適用されてもよい。この場合、穿刺時における痛みを低減する効果と、穿刺針10の生産性を考慮して、穿刺針10の外径を、例えば100μm以上180μm以下とするのが好ましい。特に、穿刺針10
の生産を自動化する観点からは、穿刺針10の外径を160μm以上180μm以下とするのが好ましい。以上のように、穿刺針10の外径を100μm以上180μm以下とすることで、穿刺針10の機械製造を実現しつつ、穿刺時における痛みを最小限に抑えた低侵襲針を提供することができる。
また、本実施形態の穿刺針10は、刃面1aa〜1acの中心軸1Xに対する傾斜角度θaが45度、刃面1ba〜1bcの中心軸1Xに対する傾斜角度θbが25度、刃面1ca〜1ccの中心軸1Xに対する傾斜角度θcが15度となっている。なお、図1では、各傾斜角度θa〜θcを中心軸1Xと平行な本体9の外周面上に引いた補助線1XAに対する角度として示している。本実施形態における穿刺針10によれば、刃面1の傾きを先端側の領域と基端側の領域とで、本体9の長手方向における中心軸1Xに対する傾きが異なっており、先端側の領域の傾きよりも基端側の領域の傾きを相対的に小さな角度に設定している。これにより、穿刺針10における先端部分8の強度、剛性を確保しつつ、穿刺抵抗を小さくすることができる。但し、刃面1aa〜1ac,刃面1ba〜1bc,刃面1ca〜1ccの中心軸1Xに対する傾斜角度は、上記の例に限定されない。
例えば、先端の刃面1aa〜1acの傾きを基端側の刃面1ca〜1ccと同じ15度で形成した場合、刃面1aa〜1acと溝3a〜3cの側面とで画定される刃先部4a〜4cの先端が細くなり過ぎて、穿刺に必要な剛性を確保するのが難しくなってしまうことが考えられる。一方、先端部の剛性を確保するために、刃面1aa〜1acの傾きを45度とし、基端側の刃面1ba〜1bc,1ca〜1ccも同じ45度で形成した場合、穿刺抵抗が大きくなり過ぎて、穿刺時の痛みが大きくなってしまうことが考えられる。そこで、本実施形態の穿刺針10においては、本体9の長手方向に沿って刃面1の傾きを、基端側の領域から先端側の領域に向かって中心軸1Xに対する傾きを段階的に大きくすることで、穿刺針10における先端部分8の強度、剛性を確保しつつ、穿刺抵抗の低減を図ることができる。これにより、本実施形態における穿刺針10は、先端部分8の強度、剛性の確保と、穿刺時における痛みの抑制を好適に両立することができる。但し、本実施形態の穿刺針10において、刃面1の傾きは特定の態様に限定されるものではない。また、本実施形態では、刃面1の傾きを先端側から基端側にかけて3段階に異ならせたが、これに限らず、先端部分8の剛性と、穿刺時における痛みの抑制とを両立できれば、4段階以上としても2段階以下としてもよい。
また、図1に示す例において、穿刺針10の先端部分8の穿刺方向(中心軸1Xに沿った方向)の長さ、即ち刃面1a〜1c,2a〜2cが形成されている部分の長さは、100μmとしているが、穿刺針10における先端部分8の穿刺方向の長さは、上記例に限定されない。
また、図1に示されるように、本実施形態の穿刺針10においては、各刃先部4a〜4cにおける先端の間隔を10μmとしているが、これには限られない。例えば、各刃先部4a〜4c同士が離間する隙間を、2μm以上40μm程度の範囲とする態様が挙げられる。各刃先部4a〜4c同士が離間する隙間(間隔)を上記の範囲に規定することで、毛細血管を切り裂く確率を確保しながら、穿刺針10の穿刺による痛みを十分に抑制することができる。
なお、図1及び図2に示す例では、穿刺針10は中空部を備えていないが、穿刺針10は、体液の採取や薬剤の注入が可能な中空部を備えていてもよい。例えば、穿刺針10における先端の分岐部7から基端にかけて貫通する中空部を備えていてもよい。この場合、穿刺針10における中空部の直径(内径)は、例えば20μm以上50μm以下とする態様が挙げられる。
なお、本実施形態における穿刺針10においては、溝3a〜3cによって先端部分8を複数の刃先部4a〜4cに分割する構造を採用したので、生体接触面積の小さな穿刺針10を容易に作製することができる。例えば、穿刺針10の外径が100μmであっても、溝3a〜3cの表面積は穿刺時に生体と接触しないため、生体接触面積を好適に0.842mm〜0.897mmの範囲に調整することも容易である。本実施形態における穿刺針10においては、生体接触面積が0.897mm未満となるように設計することで、穿刺時における痛みを好適に抑制することができる。
また、本実施形態における穿刺針10においては、刃面1aa〜1ac、1ba〜1bc、1ca〜1ccのそれぞれが、本体9の長手方向における中心軸1Xに対して回転対称に配置されている構造を採用したので、先端部分8における横断面において、複数の刃面1aa〜1ac、1ba〜1bc、1ca〜1ccがバランス良く配置され、過度に脆弱な部分を形成することなく、強度、剛性等を好適に確保することができる。
〈第二実施形態〉
本実施形態の穿刺針は、体液の採取、若しくは薬剤の注入が可能な中空部を有しており、例えば採血針や注射針として使用される。
図5は、第二実施形態における穿刺針の先端部分の斜視図である。図6は、第二実施形態の穿刺針を先端側から見た正面図である。図7は、第二実施形態にかかる穿刺針の先端部分を示す側面図である。本実施形態の穿刺針10Aは、穿刺方向(Z軸方向)に長手で円筒状の本体19を有し、当該の本体19の先端部分18に、穿刺方向へ向けて複数に分岐した先鋭な刃先部14a〜14cを備えている。なお、図5,図6には省略しているが、穿刺針10Aは、本体19の基端部に、注射筒(シリンジ)或いは注射筒の筒先と接続するためのハブ(針基)が設けられていてもよい。
穿刺針10Aの先端部分18は、円筒状の本体19の穿刺方向先端が三方から斜めに切除されてテーパ面(刃面)11a〜11cが中心軸11Xに対して回転対称に形成されている。また、穿刺針10Aの刃面11a〜11cは、それぞれ中心軸11Xに対して傾斜した平面状に切除され、基端側が本体19の側面と接続し、先端側が本体19の内壁面19aと接続している。このため刃面11a〜11cの先端と内壁面19aとが接して成る稜線17a〜17cは、放物線状に形成されている。図7では、刃面11aが、中心軸11Xと平行な本体19の外周面に対して角度(先端研削角度)θ1で切削されていることを示している。なお、先端研削角度θ1としては、例えば15度とすることが挙げられる。これに限らず、先端研削角度θ1は、必要とする穿刺抵抗や強度に応じて任意に設定できる。
穿刺針10Aの周方向における刃面11aの一辺は、刃面11bと接して稜線16aを形成し、他辺が刃面11cと接して稜線16cを形成している。同様に、穿刺針10Aの周方向における刃面11bの稜線16aと反対側の辺は、刃面11cと接して稜線16bを形成している。
穿刺針10Aは、各刃面11a〜11cと内壁面19aによって、穿刺針10Aの最先部が複数の刃先部14a〜14cに分岐している。穿刺針10Aの刃先部14aは、刃面11a,11bと内壁面19aを側面とし、稜線16a,17a、17bを辺とする略三角柱形状を呈している。同様に、刃先部14bは、刃面11b,11cと内壁面19aを側面とし、稜線16b,17b、17cを辺とする略三角柱形状を呈している。また、刃先部14cは、刃面11a,11cと内壁面19aを側面とし、稜線16c,17a、17cを辺とする略三角柱形状を呈している。即ち、穿刺針10Aにおける刃先部14a〜14cは、刃面11a〜11cがテーパ状に切除されたことによって分岐され、その分岐
部17から穿刺方向(中心軸1Xに沿う方向)の先端にかけて先細り形状となっている。なお、本実施形態では、穿刺針10Aの最先部が三つの刃先部14a〜14cに分岐した構造となっているが、これに限られず、複数の刃先部に分岐した構造となっていればよい。
穿刺針10Aの材料は特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料や、合成樹脂(プラスチック)を使用しても良い。なお、本実施形態では、穿刺針10Aの材料としてSUS304を用いている。また、穿刺針10Aの先端部分8に刃面11a〜11cを形成する方法としては、切削、研磨、レーザ加工、放電加工等を用いることができる。なお、本実施形態では、円筒状の材料の端部を切削して刃面11a〜11cを形成している。
ここで、穿刺針10Aにおける各部のサイズ、例えば、穿刺針10Aの外径、生体接触面積等は、実施形態1に係る穿刺針10と同様のサイズを適用してもよい。即ち、第一実施形態において述べた穿刺針10における各部のサイズは、第二実施形態における穿刺針10Aにおいても好適に適用することができる。但し、本実施形態に係る穿刺針10Aは、本体19の先端から基端にかけて貫通する中空部19bを備えている。ここで、血液成分のうち、比較的サイズが大きい白血球が13μm程度である。そこで、中空部19bの直径は20μm以上とすることが好ましく、そのようにすることで中空部19bを通じて血液成分を円滑に移送することができ、採血針として好適に利用することができる。また、中空部19bの直径の上限値は、穿刺針10Aの直径および肉厚に基づいて適宜設定すればよく、例えば50μm程度であってもよい。以上のように、本実施形態における穿刺針10Aにおいては、中空部19bの直径(内径)を20μm〜50μmとする態様が挙げられる。この場合、例えば穿刺針10Aが採血針であれば、中空部19bの直径(内径)を25μm〜30μmとしても良く、この態様であれば、血中の血球を吸引できる。また、内径増加に伴って外径が増加することによる痛みを許容できる場合、中空部19bの直径(内径)を50μm程度に増加させても良く、この態様であれば、穿刺針10Aは、薬剤投与等に好適に用いられる。
また、本実施形態の穿刺針10Aにおいても、先端部分18の最先部に、穿刺方向へ向けて複数に分岐した先鋭な刃先部14a〜14cを備えたことにより、第一実施形態に係る穿刺針10と同様の効果を奏する。そして、穿刺針10Aによれば、極細の針でありながら、穿刺対象部位を容易に切り裂くことができ、採血を行ったり、薬液の注入を行うことが可能である。
〈実施例〉
以下に本実施形態の穿刺針10Aと、市販されている穿刺針を用いて、マウス実験による痛みの比較評価試験、および出血判定を行った。
《実施例1》
実施例1では、図5の穿刺針10Aとして、外径120μm、内径50μm、先端研削角度15度のものを用いた。また、比較針1として、BD社製30ゲージ針(直径:310μm)を用いた。
痛みの比較評価試験は、マウスの手のひら(前肢の足底)に針を穿刺した際に、マウス口内に分泌されるαアミラーゼの量の測定を行う。このαアミラーゼがストレスに比例して分泌されるため、αアミラーゼの量が多いほど、痛みによってストレスを感じており、αアミラーゼの量が少ないほど、ストレスを感じていないという評価となる。
出血判定は、マウスの手のひらに針を穿刺した後、穿刺針を抜き、積極的にしごく等の
作業を行わずに針の穿刺位置をカメラで撮影し、出血の有無を確認した。
図8は、実施例1として、図5の穿刺針10Aと従来の穿刺針(比較針1)とをマウスの手のひらに穿刺した際のストレスを比較した結果を示す図である。図8は、縦軸にαアミラーゼの濃度を示し、横軸に穿刺針の種別を示している。
穿刺対象の生体として、C57BL/6マウス(メス)15匹を準備し、15匹のマウスのう
ち、13匹から針の穿刺を行わずに唾液を採取し、唾液中のαアミラーゼの量を測定した。図8において、この穿刺による痛みが無い状態をコントロールとしている。
コントロールを測定してから1週間後に比較針1を上記13匹のマウスの手のひらに1.5mm穿刺して、マウスの唾液を採取し、唾液中のαアミラーゼの量を測定した。
更に、その1週間後に、上記13匹の中の11匹に新規2匹を加えた13匹のマウスの手のひらに図5の穿刺針10Aを1.5mm穿刺して、マウスの唾液を採取し、唾液中のαアミラーゼの量を測定した。なお、穿刺針10Aと比較針1とが同じ実験条件になるように、穿刺針10Aを保持するためのジグには、比較針1と同じジグを用いた。穿刺針10Aは比較針1よりも直径が小さく、そのままでは針を固定できないため、この部分はジグに樹脂で固定した。
図8の比較結果のように、穿刺針の穿刺による痛みが無いコントロールは、αアミラーゼが最も低い値となっている。穿刺針10Aの穿刺時は、コントロールよりもストレスを感じているが、比較針1の穿刺時よりも、ストレスを感じていないことがわかる。有意差検定を行った結果、コントロールと比較針1には有意差があり、比較針1の穿刺によって痛みを感じていると考えられる。また、コントロールと穿刺針10Aには、有意差が無く、穿刺針10Aの穿刺によって痛みを殆ど感じていないと考えられる。
出血判定については、穿刺針10Aで40%、比較針1で58%のマウスから出血を確認できた。実際に採血する際には、穿刺後に、積極的にしごく等の作業を行うことで出血させ血液を採取するため、穿刺針10Aは、比較針1と実用上同程度の採血性能があると考えられる。
《実施例2》
実施例2では、図5の穿刺針10Aとして、外径120μm、内径50μm、先端研削角度15度のものを用いた。また、比較針2としてBD社製21ゲージ針(直径:810μm)を用いた。痛みの比較評価試験は、神経が集中しており、特に痛みを感じやすい部位であるマウスの大腿部に穿刺針を穿刺し、このときのマウス口内に分泌されるαアミラーゼの量を測定することによって行った。
実験条件については、マウスに針を穿刺する部位が異なる事、比較針が異なる事、穿刺の深さが1.8mmであること以外は、前述の実施例1と同じであるため、重複する説明は省略する。
図9は、実施例2として、図5の穿刺針10Aと従来の穿刺針(比較針2)とをマウスの大腿部に穿刺した際のストレスを比較した結果を示す図である。図9は、縦軸にαアミラーゼの濃度を示し、横軸に穿刺針の種別を示している。
図9の比較結果のように、針を穿刺せずに、ストレスが殆ど無いcontrolにおいて、α
アミラーゼは最も低い値を示している。図8と比べて、針を穿刺後のαアミラーゼ値は比較針2(ピンク)、穿刺針10Aともに高い数値を示している。これは、針を穿刺した大
腿部は、前述の通り、神経が集中しており、痛みを感じやすく、痛みによるストレスを感じたため、図8よりもαアミラーゼ値が高くなったと考えられる。
穿刺針10Aの穿刺後は、痛みによるストレスを感じているが、比較針2の穿刺時よりも、ストレスを感じておらず、穿刺針10Aは、痛みを低減していることが確認できた。また、有意差検定を行った結果、コントロールと比較針2には、有意差があり、比較針2の穿刺によって痛みを感じていると考えられる。コントロールと穿刺針10Aには、有意差が無く、穿刺針10Aの穿刺によって、殆ど痛みを感じていないと考えられる。また、比較針2と穿刺針10Aには、有意差があり、穿刺針10Aの穿刺よりも比較針2の穿刺の方が痛みを感じていると考えられる。
以上、2つの動物実験による痛みの比較評価試験の結果、穿刺針10Aは、既存の穿刺針よりも痛みを低減し、マウスの個体によっては、穿刺針10Aを穿刺したときのαアミラーゼの値が、穿刺針を穿刺していないときのストレス値と大差のないαアミラーゼの値を示しており、統計学的にみて、穿刺針10Aは痛みを低減していることがわかる。
〈第三実施形態〉
第三実施形態では、前述の穿刺針を備えた穿刺装置の例を示す。図10は、穿刺装置の外観斜視図、図11は、穿刺装置の模式断面図である。
穿刺装置100は、図10および図11に示すように、穿刺針10Aを筐体30内に有している。筐体30は、プラスチックで成形され、内部空間の後方に、作動前の穿刺針10Aを格納する格納部31、当該格納部31の前方に穿刺針10の通路32を有している。筐体30の先端面30Aには、通路32と連通する開口33が設けられ、当該開口が穿刺針10Aの射出口となっている。
作動前の穿刺針10Aは、後端にホルダ11が接続され、ホルダ11のフランジ部11Aで射出ばね12を押し縮めた状態で格納部31内の作動前位置に配置され、トリガ(操作部)40の係止爪(係止部)41がフランジ部11Aの先端側の面を係止し、この係止状態が保持される。即ち、射出ばね12が穿刺針10Aを先端方向へ付勢した状態で保持される。
穿刺時において、穿刺装置100は、ユーザによって、筐体30の先端面30Aが、穿刺対象の皮膚50に当接され、トリガ40の作動片42が筐体30側に押されると、支点43を軸にトリガ40が揺動し、係止爪41がホルダ11のフランジ部11Aから離れて係止状態が解除される。これにより、射出ばね12の付勢力によって、ホルダ11及び穿刺針10Aが先端方向へ射出され、フランジ部11Aの前面がリターンばね13を押し縮めながら先端側へ進み、穿刺針10Aの先端が皮膚50に穿刺される穿刺位置まで移動する。このときフランジ部11Aの外周面が通路32の内周面にガイドされて摺動移動することにより、穿刺針10Aが穿刺方向に精度よく移動できるように構成されている。即ち、筐体30の通路部分と、ホルダ11が本実施形態における穿刺機構部となっている。
そして、穿刺後、伸びきった射出ばね12が縮む動作と、押し縮められたリターンばね13の反動とによって、穿刺針10Aが皮膚50から引き抜かれ、射出ばね12とリターンばね13の力がつり合う位置まで移動して静止する。これにより作動後、穿刺針10Aの先端が筐体30内に格納した状態となる。
このように本実施形態の穿刺装置100は、微細な穿刺針10Aを筐体30内に収めて取扱いを容易にしていると共に、トリガ40を押す一動作で、穿刺針10Aを一定の力で穿刺し、穿刺後、速やかに穿刺針10Aを引き抜き、格納する一連の動作が行え、穿刺を
容易にしている。
次に、本実施形態の穿刺装置100に、外径の異なる穿刺針10Aを採用して穿刺を行った場合における痛みの評価について説明する。
《評価試験1》
図12は、穿刺針の外径の違いによるマウスのストレス変化を評価した評価試験1の評価結果を示すグラフである。本実施形態では、図5〜図7に示した穿刺針10Aを用い、その外径を120μm、160μm、180μmとしたものを用いた。このうち外径160μm、180μmの穿刺針10Aは、内径を87μmとした。その他の条件については、第一実施形態の図3、図4に示した実験と同じである。なお、図12におけるコントロール(Control)は、穿刺針を刺していないときのマウスのストレス状態(αアミラーゼ
の濃度)を示している。
図12では、横軸に穿刺針10Aの外径を示し、縦軸にαアミラーゼの濃度を示している。図12に示されるように、何れの外径でもαアミラーゼの濃度は低く、マウスの受けたストレスが少ないことが分かるが、外径が小さくなるに従ってマウスがより大きなストレスを受けている傾向がある。即ち、外径が小さいほど、痛みが大きいと考えられる。
前述の第一実施形態及び第二実施形態の知見では、外径が小さいほど、痛みが抑えられると考えられるため、図12の結果は、第一実施形態及び第二実施形態の知見と反しているように見える。このため更に、従来の穿刺針90と穿刺針10Aの外径を160μm、180μm、210μmとして評価試験2を行った。
《評価試験2》
評価試験2では、前記評価試験1と比べて、外径160μm、180μmの穿刺針10Aの内径と、新たに外径210μmの穿刺針10Aを採用したこととが異なっており、それ以外の条件は、前記評価試験1と同じである。前記評価試験1において、外径160μm、180μmの穿刺針10Aの内径は87μmであったが、評価試験2において当該穿刺針10Aの内径は50μmである。即ち、評価試験2では、外径160μm、180μmの穿刺針10Aの肉厚を前記評価試験1と比べて厚く設定した。また、評価試験2において、試験の結果に、正常ではないと思われる値が含まれていたため、外れ値検定を行い、外れ値を除外して評価を行った。なお、本例では、外れ値検定として、スミルノフ・グラブス検定を用いた。
図13は評価結果から外れ値を除外して評価した穿刺針の外径の違いによるマウスのストレス変化の評価結果を示したグラフである。
図13に示されるとおり、穿刺針10Aの外径を160〜210μmとした場合の評価結果に大きな差はなく、これらについて有意差検定を行ったが、有意差は見られなかった。即ち、穿刺針10Aの外径が小さいほど、痛みが小さくなるのではなく、外径の変化による違いがなかった。なお、従来の穿刺針90においては、後述するが、マウスに確実に穿刺できる針と、マウスへの穿刺時に従来針90の先端が変形し、皮膚表面を貫くことができない針があり、計測できないデータが複数あった。このため、従来針90を穿刺したときの外径の違いによるマウスのストレス変化の評価結果は得られなかった。
また、評価試験で穿刺を行う前と後で、従来の穿刺針90の先端の状態をレーザ顕微鏡(KEYENCE,VK-200 series)で確認し、穿刺針10Aの先端の状態は卓上走査型電子顕微鏡 (JEOL,JCM-6000Plus)で確認した。図14は、(a)穿刺前の従来の穿刺針90先端の状態、(b)穿刺前の本実施形態の穿刺針10A先端の状態を示す図、図15は、(c)穿刺
後の従来の穿刺針90先端の状態(外周面よりも外側に突出した穿刺針)、(d)穿刺後の従来の穿刺針90先端の状態(外周面よりも内側に突出した穿刺針)、(e)穿刺後の本実施形態の穿刺針10A先端の状態を示す図である。なお、図14、図15に示す従来の穿刺針90は160μmであり、穿刺針10Aの外径は180μmである。
図14、図15に示される穿刺針10Aの穿刺前(図14(b))と穿刺後(図15(e))の先端の形状を比較すると、穿刺によって穿刺針10Aの刃先部が潰れ、先端側から後端側へ押し縮められるように変形している穿刺針10Aが見受けられた。全ての穿刺針10Aの刃先部でこのような変形をしているわけではなく、穿刺針10Aの外径の違いに関係なく、刃先部が変形している穿刺針10Aと、刃先部が変形していない穿刺針10Aが混在していた。また、評価試験2において、外径180μmの穿刺針10Aの方が、外径160μmの穿刺針10Aよりも、穿刺針10Aの先端が変形した数が多く見受けられた。これに対し、従来の穿刺針90では、穿刺によっては先部に変化が殆どない穿刺針90と、刃先部が潰れ、外周面よりも外側へ押し縮められるように変形している穿刺針90(図15(c))と、外周面よりも内側へ押し縮められるように変形している穿刺針90(図15(d))が見受けられた。
次に穿刺針10Aの外径の違いによる穿刺時の応力を解析する。汎用有限要素法解析ソフトANSYS Workbench(ANASYS15.0)を用いて皮膚解析モデル
と、針解析モデルを作成した。
針解析モデルは、内径50μmの中空管であって図5〜図7と同じく先端が三方から斜めに切除されて刃面が形成された設定とした。また、針解析モデルは、SUS304の物性値を参照して、全長(Z軸方向の長さ)が5mm、ヤング率200GPa、ポアソン比0.3、密度7850kg/mと設定した。
また、皮膚解析モデルにおいて、穿刺位置からX軸及びY軸方向に離れた部分の影響は少ないと思われるため、本例の皮膚解析モデルは、周期境界条件を用いてX軸及びY軸方向の長さを穿刺針10Aの外径の大きさと比べ、十分に大きな値に定義した。また、模擬皮膚としてよく使われる樹脂材料ポリジメチルシロキサン(PDMS)の物性値を参照して、全長(Z軸方向の長さ)3mm、ヤング率220kPa、ポアソン比0.49、密度970kg/mと設定した。
そして、皮膚解析モデルに対し、針解析モデルを垂直に穿刺する際の皮膚解析モデルにかかる応力について針解析モデルの外径を異ならせて解析を行った。
Figure 2019141588
表1は、皮膚解析モデルにかかる応力の解析結果を示す表である。表1において応力(最大)は、皮膚解析モデルにかかる応力のうち、最大のもの(以下、最大応力とも称す)であり、針解析モデルの針先端が皮膚モデルの表面を貫き、皮膚モデルに穿刺されていくときに皮膚モデルが受ける力(=針全体が皮膚から受ける力)に伴うものと考えられる。
また、応力(最小)は、皮膚解析モデルにかかる応力のうち、最小のもの(以下、最小応力とも称す)であり、針解析モデルの針先端が皮膚表面にあたり、皮膚表面を貫くときに針先端から受ける力(=針先端が皮膚から受ける力)の変化に伴うものと考えられる。表1に示されるように、外径160μm,180μm,210μmの場合と比べて、外径120μmとした場合に最大応力及び最小応力がどちらも、外径160μmや外径180μmとした場合と比べて、最も大きくなっている。また、最大応力は外径210μmの場合が最も小さく、最小応力は外径160μmの場合が最も小さくなっている。
針解析モデルの針先端は、肉厚が小さくなるほど剛性は小さくなるが、針先端の刃先は鋭くなる。外径120μmの針解析モデルは、針先端の刃先は鋭くなっているが、剛性が小さすぎるため、針先端が変形しやすく、最小応力の値が最も大きくなったと考えられる。外径160μmの針解析モデルと、外径180μmの針解析モデルを比べると、外径180μmの針解析モデルの方が皮膚モデルの受ける最小応力)の値が大きくなっている。これは、外径160μmの針解析モデルと比べると、外径180μmの針解析モデルは針先端の剛性は増しているが、鋭さが減少したことにより、皮膚モデルの表面を貫きにくくなり、皮膚モデルが受ける最小応力の値が大きくなり、その後にかかる皮膚モデルを貫く最大応力も大きくなったと考えられる。外径180μmの針解析モデルと比べ、外径210μmの針解析モデルは、剛性を備えつつ、針先端の面積増加により、大きな面積で力を受けることができるため、最大応力、最小応力のどちらも小さくなったと考えられる。ただし、針先端の面積が大きいほど良いという訳ではなく、最大応力は小さくなるが、実際に生体に穿刺する場合、応力の値が下がっても、針先端の生体接触面積が増加し、痛みを感じやすくなる傾向がある。そのため、痛みをなるべく抑えたい場合、痛みを抑えつつ出血確率を高めたい場合等、用途に併せて、針先端の鋭さと剛性、穿刺針を穿刺したときの生体接触面積のバランスを調整するように穿刺針10Aの外径と肉厚を設定すればよいと考えられる。
本実施形態では、穿刺針10Aが、射出ばねによって一定の付勢力で穿刺されるため、表1のように、外径の小さい穿刺針10Aの方が皮膚に係る応力が高ければ、外径の小さい穿刺針10Aの方が穿刺され易く、深く穿刺されることになる。また、穿刺針10Aの外径が小さい方が、外径が大きいものと比べて、穿刺時の抵抗が小さいので、穿刺針10Aの外径が小さい方が深く穿刺されると考えられる。このように穿刺する深さが深くなると、皮膚を切り裂く部分が増えるため、穿刺時の痛みが強くなる。
即ち、穿刺深さが同じであれば、穿刺針10Aの外径が小さいほど痛みが少なくなるが、本実施形態の穿刺装置のように、穿刺針10Aが射出ばねによって一定の力で押し出される構成であると、穿刺針10Aの外径によって穿刺深さが変化するため、穿刺針10Aの外径を小さくし過ぎると、穿刺深さが深く成り過ぎ、痛みが大きくなってしまうと考えられる。そのため、図13のデータにおいて、穿刺針10Aの外径が小さくなることによる痛みの軽減効果と、穿刺針10Aの外径が小さい方が深く成り過ぎ、痛みが大きくなる効果の2つの効果を混在することになり、その結果、痛みの軽減効果が相殺され、穿刺針10Aの外径による評価結果に大きな差が得られなかったと考えられる。
これらの考察の結果、本実施形態のように、穿刺針10Aを射出ばねで押し出す構成であると、穿刺時の痛みを十分に抑えるために許容できる外径に下限値が存在することが分かった。
そこで本実施形態では、穿刺装置100に採用する穿刺針10Aの外径を評価試験1,2に鑑み、160μm以上210μm以下とした。また、より好ましくは、穿刺装置100に採用する穿刺針10Aの外径を180μm以上210μm以下としてもよい。これにより本実施形態の穿刺装置100では、容易に穿刺を行うことができ、且つ生体へ与える
痛みを十分に小さく抑えて低侵襲で穿刺を行うことができる。
また、図17に示すように、従来の穿刺針90では、先端部91が外周面93側に形成されているのに対し、本実施形態の穿刺針10Aでは、先端部18aが内周面19c側に形成されている。このため、従来の穿刺針90は、穿刺の際、刃面92に抗力を受けると、図18に示すように先端部91に外向きの力がかかり、本来の外周面93よりも外側に突出するので、穿刺をしても皮膚表面ではじかれ、穿刺できない針や、穿刺できた後に、穿刺針90を皮膚から抜く際、この先端部91が本来の外径よりも大きく皮膚を切り裂いてしまい痛みが強くなる針があった。
これに対し、本実施形態の穿刺針10Aは、穿刺の際、刃面11cに抗力を受けると、図18に示すように先端部18aに内向きの力がかかり、先端部91が変形する場合は、図16で確認したように、内周面側へ押し縮められる。このため、穿刺針10Aを皮膚から抜く際に、先端部91が本来の外径よりも大きく皮膚を切り裂いてしまうことがなく、従来の穿刺針90と比べて、穿刺針10Aを皮膚から抜く際の痛みを低減できる。
評価試験1は、穿刺針10Aの内径を87μmに統一し、外径を変化させた評価試験であり、評価試験2は穿刺針10Aの内径を50μmに統一して、外径を変化させた評価試験である。このように、評価試験2では、評価試験1と比べて穿刺針10Aの内径を小さくすることで、穿刺針10Aの肉厚を増加して穿刺針10A先端の剛性を高めている。評価試験1と評価試験2の結果を用いて、穿刺針10Aの外径が同一で、内径が異なる場合における血液の出血数の確認と、痛みの評価を行った。表2は、内径の違いによる出血数とαアミラーゼの値(平均値)を示している。なお、表2において、「出血が確認できた」とは、穿刺後、穿刺部をしごく等の処置をせずに血液が視認できた状態である。
Figure 2019141588
表2に示すように、穿刺針10Aの肉厚を増加すると、外径160μm、180μmの穿刺針10Aのどちらについても、αアミラーゼ値が増加し、マウスがストレスを感じていることがわかる。これは、穿刺針10Aの肉厚が増加したことによって、穿刺針10A先端の生体接触面積が増加して、痛みを感じやすくなったことが原因であると考えられる。
血液の出血数については、外径160μmの穿刺針10Aで内径87μmでは2本であったが、内径50μmでは9本に増加している。外径160μmの穿刺針10Aでは、穿刺針10Aの内径を小さくして肉厚を大きくすることによって、出血数が増えていることがわかる。なお、外径180μmの穿刺針10Aにおいては内径の変化による出血数の大きな変化は見られなかった。
外径160μmの穿刺針10Aにおいて、内径が大きく穿刺針10Aの肉厚が薄い場合
は、針先端が鋭いが、剛性が小さいため、針先端が曲がり、上手く穿刺できない可能性があると考えられる。この場合、穿刺針10Aの内径を小さくして肉厚を増加することによって、穿刺針10A先端の剛性が増し、より生体に穿刺されやすくなり、外径180μmと比べて深く穿刺されたことによって、血管を傷つける確率が上がり、出血数が増加したと考えられる。外径180μmの穿刺針10Aの場合、内径50μmは、内径87μmと比べると、穿刺針10A先端の剛性は増すが、針先端の鋭さが減ったため、生体表面を貫きにくくなり、同時に生体接触面積が増加することから、出血数に大きな変化が見られないにも関わらず、αアミラーゼ値が上昇したと考えられる。このため、例えば、外径が95μm以上180μm以下の穿刺針10Aにおいては、肉厚を45μm以上65μm以下と設定することが考えられる。
このように、図10、図11のように均一の力が穿刺針10Aにかかる場合、外径が細く、生体に上手く穿刺できないことから出血数が低くなる可能性がある穿刺針10Aであっても、穿刺針10Aの内径を小さくして肉厚を増加することによって、穿刺針10A先端の剛性が増し、生体により穿刺しやすくなり、穿刺時の痛みを抑えつつ、生体から出血させる可能性を高めることができる。
このように、評価試験1、評価試験2で得られた結果と、皮膚解析モデルと、針解析モデルを作成し、解析した結果との傾向は合致することがわかった。
なお、本実施形態では、中空の穿刺針10Aを採用したが、これに限らず、第一実施形態で示した中実の穿刺針10を採用してもよい。
《その他》
上述した本発明の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。また、上述した実施形態において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然にその組み合わせが可能である。例えば、上述した実施形態において(SUS304の材料を用いた)穿刺針の設計を示したが、穿刺針を製造可能な材料であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に穿刺針の材料に合わせた設計が可能であり、穿刺針の材料に応じて適切な外径や肉厚を採用することができる。
1X :中心軸
1a〜1c:刃面
2a〜2c:刃面
3a〜3c:溝
4a〜4c:刃先部
8 :先端部分
9 :本体
10,10A:穿刺針
11X :中心軸
11a〜11c:刃面
14a〜14c:刃先部
18 :先端部分
19 :本体
19a :内壁面
19b :中空
100 :穿刺装置

Claims (12)

  1. 生体の対象部位に穿刺される低侵襲又は非侵襲の穿刺針であって、
    穿刺方向に長手の本体と、
    前記本体の先端の形状が複数に分岐することで形成された先細り形状の刃先部と、
    を備えることを特徴とする穿刺針。
  2. 前記本体の先端は、前記本体の外周面から前記複数に分岐した刃先部の頂点にかけて形成された刃面を備えることによって、前記刃先部を先細り形状としたことを特徴とする請求項1に記載の穿刺針。
  3. 前記刃面のそれぞれが、前記本体の長手方向における中心軸に対して回転対称に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の穿刺針。
  4. 前記刃面のそれぞれが、先端側の領域と基端側の領域とで、前記本体の長手方向における中心軸に対する傾きが異なっており、前記先端側の領域の前記傾きよりも前記基端側の領域の前記傾きが小さいことを特徴とする請求項2又は3に記載の穿刺針。
  5. 前記刃先部が、生体の表皮を切り裂くことで前記本体の先端が前記生体に穿刺され、前記生体内に刺し込まれる部分における表面積のうち、前記生体と接触する生体接触面積が0.897mm未満であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の穿刺針。
  6. 前記複数の刃先部同士の間には、前記本体の先端における外周面に開口すると共に前記本体の長手方向に沿って延設される溝が設けられており、当該溝を介して前記刃先部同士が離間していることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の穿刺針。
  7. 前記溝の幅が、表皮細胞の幅より小さいことを特徴とする請求項6に記載の穿刺針。
  8. 前記穿刺方向と直交する横断面における前記本体の外径が、95μm以上100μm未満であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の穿刺針。
  9. 前記穿刺方向と直交する横断面における前記本体の外径が、100μm以上180μm以下であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の穿刺針。
  10. 前記穿刺方向と直交する横断面における前記本体の外径が、160μm以上210μm以下であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の穿刺針。
  11. 前記穿刺方向における先端から基端にかけて貫通し、体液の採取、若しくは薬剤の注入が可能な中空部を有していることを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の穿刺針。
  12. 前記穿刺方向における先端から基端にかけて貫通する中空部を有し、
    前記穿刺方向と直交する横断面における前記本体の外径が95μm以上180μm以下であり、肉厚が45μm以上65μm以下であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の穿刺針。
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