JP2019137842A - ポリエステルフィルム及び、それを用いてなる太陽電池バックシート並びに太陽電池 - Google Patents

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規行 巽
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羽皋 デン
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Abstract

【課題】太陽電池の出力向上特性と耐久性に優れたポリエステルフィルム及びそれを用いてなる太陽電池バックシート並びに太陽電池を提供する。【解決手段】有効反射率が26%以上44%以下であるポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明はポリエステルフィルム及び、それを用いてなる太陽電池バックシート並びに太陽電池に関するものである。
半永久的で無公害のクリーンエネルギーとして、急速に普及している太陽電池の代表構成を図1に示す。太陽電池は発電セル3をEVA(エチレン−ビニルアセテート共重合体)などの透明な封止材2により封止したものに、ガラスなどの透明基板4と、太陽電池バックシート1と呼ばれる樹脂シートを張り合わせて構成される。太陽光は透明基板4を通じて太陽電池内に導入される。太陽電池内に導入された太陽光は発電素子3にて吸収され、吸収された光エネルギーは電気エネルギーに変換される。変換された電気エネルギーは発電素子3に接続したリード線(図1には示していない)にて取り出されて、各種電気機器に使用される。
ここで太陽電池バックシート1とは太陽に対して、発電素子3よりも背面側に設置され、発電素子3とは直接接していないシート部材のことである。この太陽電池のシステムや各部材について、種々の提案がなされているが、太陽電池バックシート1についてはポリエチレンフィルムやポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルム等が主に用いられている。(特許文献1〜3参照)
また近年では、太陽電池セル同士の間を通過した光を、基材表面にプリズム構造を形成した太陽電池バックシートで反射させ、セルに取り込むことにより太陽電池モジュールの出力を飛躍的に向上させる技術が開発されている。(特許文献4参照)
特開平11−261085号公報 特開平11−186575号公報 特開2006−270025号公報 国際公開2013/089132号
しかしながら、特許文献4のフィルム基材表面にプリズム構造を形成する構成は、太陽電池の出力を向上させる効果(以下、出力向上特性と称する)を十分得られる反面、高温多湿な過酷な屋外環境下で長期間置かれると出力向上特性が大幅に低下する課題がある。
そこで本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、優れた出力向上特性と長期設置時の耐久性を両立する太陽電池バックシートに用いることが可能なポリエステルフィルムを提供せんとするものである。
すなわち、本発明は以下のポリエステルフィルムである。
[I]以下の方法で測定して得られる有効反射率が26%以上44%以下であるポリエステルフィルム。
1.検出器の高さ方向の長さが2.7cm、幅方向の長さが1.7cm、検出器からサンプル台の中心軸までの水平距離が9.55cmである分光光度計を用いて、外径が90mm、内径が84mm、厚みが3mm、真円度が5.0mm以下、屈折率が1.49のポリメチルメタクリレート製円柱容器の中心軸がサンプル台の中心軸の一致するように設置し、円柱容器内部に屈折率が1.48の流動パラフィンを充填させた後、光線透過率を測定して、基準強度を求める。
2.円柱容器内に、ポリエステルフィルムを入射器(光源)からの光がフィルム面に対して垂直に入射するように固定し、角度可変測定装置を用いて、反射光の検出器を10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°の8つの測定角度に回転させ、基準強度に対する各測定角度(θ)の反射スペクトルを測定する。
3.各測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率から次式より、有効反射率(%)を算出する。
式1:θの変角光度=測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率×2π×9.55×sinθ/2.7
式2:有効反射率(%)=4.0×(10°の変角光度+20°の変角光度+30°の変角光度)+24.5×40°の変角光度+100.0×(50°の変角光度+60°の変角光度+70°の変角光度+80°の変角光度)
[II]内部に空洞を有し、フィルム比重が0.7以上、1.2以下である[I]に記載のポリエステルフィルム。
[III]厚みが35μm以上である[I]または[II]に記載のポリエステルフィルム。
[IV]厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における平均界面数が25以上である[III]に記載のポリエステルフィルム。
[V]少なくとも片側の表面から厚み方向10μmまでの領域における平均界面数が20以下である、[III]または[IV]に記載のポリエステルフィルム。
[VI]厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域に存在する円相当径が0.4μm以上の有機粒子の平均アスペクト比が3.0以上、6.0以下である[III]〜[V]いずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VII]厚み方向に中心部に位置し、内部に空洞有するP1層と、少なくとも一方の最外層に位置し、無機粒子を含有するP2層を有し、且つ、P2層の厚みT2(μm)とP2層の無機粒子含有量W2(重量%)の積が100以上、240以下である[I]〜[VI]いずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VIII]ポリエステルフィルムのIV(固有粘度)が0.65以上である[I]〜[VII]いずれかに記載のポリエステルフィルム。
[IX]太陽電池バックシートに用いられる[I]〜[VIII]いずれかに記載のポリエステルフィルム。
[X][I]〜[IX]いずれかに記載のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシート。
[XI][X]に記載の太陽電池バックシートを搭載した太陽電池。
本発明によれば従来のポリエステルフィルムに比べて、太陽電池の出力向上特性と耐久性に優れ、さらに本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートを搭載することによって、従来構成よりも高温多湿な過酷な屋外環境下で長期間、高い発電効率を維持可能な太陽電池を提供することができる。
本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池の構成の一例を模式的に示す断面図である。 ポリエステルフィルムの厚み方向断面を模式的に示したものである。 有効反射率を測定する分光光度計の装置内部と円柱容器を真上から見た図である。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様として、以下の方法で測定して得られる有効反射率が26%以上44%以下のポリエステルフィルムが挙げられる。
1.検出器の高さ方向の長さが2.7cm、幅方向の長さが1.7cm、検出器からサンプル台の中心軸までの水平距離が9.55cmである分光光度計を用いて、外径が90mm、内径が84mm、厚みが3mm、真円度が5.0mm以下、屈折率が1.49のポリメチルメタクリレート製円柱容器の中心軸がサンプル台の中心軸の一致するように設置し、円柱容器内部に屈折率が1.48の流動パラフィンを充填させた後、光線透過率を測定して、基準強度を求める。
2.円柱容器内に、ポリエステルフィルムを入射器(光源)からの光がフィルム面に対して垂直に入射するように固定し、角度可変測定装置を用いて、反射光の検出器を10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°の8つの測定角度に回転させ、基準強度に対する各測定角度(θ)の反射スペクトルを測定する。
3.各測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率から次式より、有効反射率(%)を算出する。
式1:θの変角光度=測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率×2π×9.55×sinθ/2.7
式2:有効反射率(%)=4.0×(10°の変角光度+20°の変角光度+30°の変角光度)+24.5×40°の変角光度+100.0×(50°の変角光度+60°の変角光度+70°の変角光度+80°の変角光度)
以下、本発明のポリエステルフィルムについて説明する。
本発明はポリエステル樹脂を主成分とする。ここでポリエステル樹脂を主成分とするとは、ポリエステルフィルムを構成する全樹脂成分に対して、ポリエステル樹脂が50質量%を超えて含有されていることをいう。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、1)ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジカルボン酸成分」と総称する)とジオール成分の重縮合、2)一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体と水酸基を有する化合物の重縮合、および1)2)の組み合わせにより得ることができる。また、ポリエステル樹脂の重合は常法により行うことができる。
1)において、ジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸などの芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが代表例としてあげられる。また、これらは単独で用いても、複数種類用いても構わない。
また上述のジカルボン酸成分の少なくとも一方のカルボキシ末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類およびその誘導体や該オキシ酸類が複数個連なったもの等を縮合させたジカルボキシ化合物も用いることができる。
次にジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール、ビスフェノールA、1,3−ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香族ジオールが代表例としてあげられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。また、上述のジオール成分の少なくとも一方のヒドロキシ末端にジオール類を縮合させて形成されるジヒドロキシ化合物も用いることができる。
2)において、一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体と水酸基を有する化合物の例としては、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸、およびその誘導体、オキシ酸類のオリゴマー、ジカルボン酸の一方のカルボキシル基にオキシ酸が縮合したもの等があげられる。
前記の2成分から得られるポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレートおよびこれら混合物からなるものが好適に用いられ、製膜性が良好な点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は、末端カルボキシル基量が35当量/トン以下が好ましく、30当量/トン以下であることがより好ましく、25当量/トン以下であることが更に好ましい。末端カルボキシル基量が35当量/トンを越えると、活性な末端基量が多くなり過ぎて、ポリエステル樹脂の耐久性を低下させる場合がある。尚、末端カルボキシル基量の下限について本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定するものでは無いが、7当量/トン以上がより好ましい。末端カルボキシル基量が7当量/トン未満の場合、表面の極性末端基が不足し封止材との密着性が低下する場合がある。
また、ポリエステル樹脂のIV(固有粘度)は0.65以上が好ましく、より好ましくは0.67以上、更に好ましくは0.70以上である。IV(固有粘度)が0.65未満の場合、空洞を形成する有機粒子の分散性が低下し、出力向上特性が低下する場合がある。IV(固有粘度)が0.80を超える場合、ポリエステル樹脂の押出性が悪くなる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様としては、空洞を内部に有する形態が挙げられる。ポリエステル樹脂と空洞の界面をフィルム内部に存在させることで、出力向上特性を向上させるための光反射性を発現させることができる。尚、本発明における「空洞」とは、ミクロトームやイオンミリング加工により、フィルムを厚み方向に潰すことなく切削した断面を電子顕微鏡で観察した時に得られた、断面積が0.1μm以上の空隙を示す。
ここで、ポリエステルフィルムの比重としては0.7以上1.2以下が好ましく挙げられる。0.8以上1.2以下がより好ましく、0.9以上1.0以下が更に好ましい。比重が0.7未満の場合、光反射性能は十分な反面、フィルム内部の空洞比率が多くなり過ぎて面方向に広がりやすくなった結果、空洞の1つ1つが微細化されないため、光拡散性能が不測して出力向上特性が低下する場合がある。一方、比重が1.2を越えると樹脂と空洞の界面そのもの不足する場合がある。ポリエステルフィルムの比重を上記の範囲とすることで、光反射性能と光拡散性のいずれもを良好にすることができ、良好な出力向上性能を得ることができる。
ポリエステルフィルムの内部に空洞を形成させる方法は、特に限定されるものではないが、ポリエステルフィルム中に空洞核剤を含有させた後に延伸することによって形成されるものが好ましい。発泡剤等によって形成される空洞は構造の制御が困難であり、ポリエステルフィルムの耐久性も低下させる懸念がある。
上記の空洞核剤としてはポリエステル樹脂と非相溶であるオレフィン系樹脂などの有機粒子、フィラーやガラスビーズなどの無機粒子を用いることが一般的であり、有機粒子は延伸時にポリエステル樹脂との界面剥離力が小さいため空洞を形成しやすく、無機粒子は空洞を形成しにくい反面、有機粒子に比べて分散径を小さく制御しやすい特徴がある。
本発明において、有機粒子としてはポリエチレンやポリプロピレン、シクロオレフィンコポリマーなどのオレフィン系樹脂、脂肪族ナイロンや半芳香族ナイロンなどのナイロン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーなどのスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ、あるいは本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂と非相溶である異なる種類のポリエステル樹脂なども用いることが可能であり、界面剥離力が大きく空洞を形成しやすい特徴からオレフィン系樹脂が好ましい。
また、空洞核剤は、ポリエステルフィルムの製膜工程で空洞が潰れ難い点から、ビカット軟化点が160℃以上のオレフィン系樹脂がより好ましく、180℃以上のオレフィン系樹脂が更に好ましい。ビカット軟化点が160℃未満のオレフィン系樹脂を用いる場合、微細な空洞を形成するために口述する製造条件の熱固定温度を低下させる必要があり、その場合、ポリエステルフィルムの平面性や寸法安定性が悪化して耐久性を低下させる懸念がある。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様として、上記の有機粒子と無機粒子を併用させながら、後述するコンパウンド手法を用いる方法が挙げられる。当該方法をとると、有機粒子によって形成する空洞を微細化させることが可能となり、太陽電池の出力向上に寄与する反射光量を従来よりも高めることができる。
有機粒子と併用する無機粒子としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ニ酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミナ、マイカ、雲母、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、およびフッ化カルシウムなどを用いることが可能であり、ポリエステル樹脂と界面剥離力が強く、延伸時に空洞を形成しにくいニ酸化チタンや炭酸カルシウムなどが好ましく、粒径が小さいニ酸化チタンがより好ましく、分散性を維持できる範囲で表面処理が少ないニ酸化チタンを選定することで、空洞を微細化する効果がより得られ、耐久性も維持させる観点から、更に好ましい。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様としては、後述する測定方法により求められる厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における平均界面数が25以上であることが挙げられる。ここでの界面数とは、フィルムを厚み方向に潰すことなく切削した断面を電子顕微鏡で観察した時、前記の空洞とポリエステル樹脂の界面が領域内に存在する数である(図2には、厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における界面数が5つであるフィルム断面図が模式的に示されている)。より好ましく平均界面数が28以上、更に好ましくは30以上、特に好ましくは31以上である。厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における平均界面数を上記の範囲とすることで、有効反射率を高めることが容易となる。厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における平均界面数が25未満の場合、空洞そのものが不足しているか、前述した空洞の微細化効果が不足している場合がある。上限としては特に定められるものではないが、界面数が100を超えるようにするのは困難であるため実質的には100以下である。
また、本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様としては、厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域に存在する、円相当径が0.4μm以上の有機粒子の平均アスペクト比が3.0以上、6.0以下であることが挙げられる。3.5以上、5.0以下がより好ましく、4.0以上、4.5以下が更に好ましい。上記の円相当径を有する有機粒子の平均アスペクト比が3.0未満の場合、界面数が減少するため有効反射率を高くすることが困難となり、出力向上特性が低下する場合がある。一方で上記の円相当径を有する有機粒子の平均アスペクト比が6.0を越えると、空洞が潰れていることで量が不足して結果的に出力向上特性が低下する場合がある。
以上から、本発明のポリエステルフィルムのより好ましい態様としては、ポリエステルフィルムの比重としては0.7以上1.2以下であり、厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における平均界面数が25以上であり、厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域に存在する有機粒子において、円相当径が0.4μm以上のものの平均アスペクト比が3.0以上、6.0以下である有機粒子を含有するポリエステルフィルムを挙げることができる。このような態様とすることで、ポリエステルフィルム内において有機粒子によって形成される空洞の一つ一つがより微細で、数多く存在させることが可能となり、光反射性能と光拡散性のいずれもを良好にすることができ、良好な出力向上性能を得ることができる。
また、本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様としては、少なくとも片面側の表層から厚み方向に10μmまでの領域における平均界面数が20以下であることが挙げられる。より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。少なくとも片面側の表層から厚み方向に10μmまでの領域における平均界面数が20を超えると、光は直線的に反射しやすくなり出力向上特性に寄与する反射光量が低下する場合がある。より好ましくは15以下である。
以上から、本発明のポリエステルフィルムのより好ましい態様としては、厚み方向の中心部に位置し内部に前記の空洞を有するP1層と、空洞を形成しにくい無機粒子を含有するP2層を最外層として有している構成が挙げられる。前述したP1層が微細な空洞構造によって反射した光をP2層で拡散させることで、50°〜80°の変角光度を高くすることが可能となり、より効率よく発電セルに再入射させて、出力向上特性を向上させることができる。
P2層を設ける形態としては、P1層の少なくとも片側の最外層にP2層を有することが好ましい。より出力向上特性を高める観点から最外の両表層にP2層を有する(一方の表層をP2層、もう一方の表層をP2’層とする)ことがより好ましい。片側にP2層を有する場合は、太陽電池セル側にP2層を位置させることで、出力向上特性を向上させることができる。
本発明のポリエステルフィルムのP1層に空洞を形成させる前記の有機粒子濃度としてはP1層の全質量に対して、4質量%以上、14質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上、10質量%以下、更に好ましくは6質量%以上、8質量%以下である。有機粒子濃度が4質量%未満の場合、空洞そのものが不足する場合がある。一方、有機粒子濃度が14質量%を超える場合、空洞の比率が多すぎて、空洞を微細化する効果が得られにくくなり、結果的に出力向上特性が低下する場合がある。
また、P1層で有機粒子と併用する無機粒子濃度としてはP1層の全質量に対して、3質量%以上、25質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上、20質量%以下、更に好ましくは7質量%以上、12質量%以下である。無機粒子濃度が3質量%未満の場合、有機粒子との併用による空洞の微細化効果が不足する場合がある。一方で無機粒子濃度が25質量%を超えると、空洞の微細化効果は向上する反面、有機粒子による空洞形成を阻害して、結果的に出力向上特性が低下する場合がある。
加えて本発明の効果を損なわない範囲で、有機粒子の分散助剤を添加することが好ましい。分散助剤としてはポリエーテル構造や屈曲骨格構造、嵩高いシクロヘキサン骨格構造などが共重合されたポリエステル系エラストマーや非晶性ポリエステル樹脂が好ましく用いられ、分散助剤を2種以上併用する形態も好ましく用いられる。
上記分散助剤の添加濃度としては、P1層の全質量に対して1質量%以上、10質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上、8質量%以下、更に好ましくは3質量%以上、6質量%以下である。分散助剤濃度が1質量%未満の場合、空洞が大きくなり過ぎる場合がある。一方で分散助剤濃度が10質量%を超えると、ポリエステルフィルムの結晶性が低下して耐久性が不足する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムのP2層に含まれる無機粒子としては、P1層で反射された光を拡散させる目的から、ポリエステル樹脂と屈折率差の大きなものを選択するのが好ましく、より好ましくは屈折率が2.0以上、更に好ましくは2.5以上である。具体的には二酸化チタン、酸化亜鉛、窒化ホウ素などが挙げられる。
P2層に含まれる無機粒子濃度としてはP2層の全質量に対して、6質量%以上、20質量%以下が好ましく、10質量%以上、15質量%以下がより好ましく、12質量%以上、14質量%以下が更に好ましい。P2層に含まれる無機粒子の含有量が6質量%未満であるとP2層による出力向上特性の効果が不足する場合がある。一方でP2層に含まれる無機粒子の含有量が20質量%を越えると、表層付近の界面数が大きくなり結果的に出力向上特性が得られない場合がある。尚、P2層に空洞を形成しやすい有機粒子が含まれる場合、表層付近の界面数を小さくするために、有機粒子の含有量は1質量%以下に抑えることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様としては、厚みは35μm以上であることが挙げられる。75μm以上がより好ましく、125μm以上が更に好ましく、150μm以上が特に好ましい。本発明のポリエステルフィルムにおいて厚みが35μm未満の場合、ポリエステルフィルムを光が透過してしまい出力向上特性が不足する場合がある。一方、厚みの上限は特に限定されるものでは無いが350μm以下が好ましく、350μmを越えると巻取りが難しくなる場合がある。
また、本発明のポリエステルフィルムがP1層とP2層を有する積層構成の場合、P1層の厚みは15μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上、特に好ましくは130μm以上である。厚みが15μm未満であると、空洞による反射性能が不足する場合がある。
P2層の厚みは6μm以上、20μm以下が好ましく、10μm以上、15μm以下がより好ましく、11μm以上、13μm以下が更に好ましい。P2層の厚みが6μm未満
であるとP2層による光拡散性能が不足する場合がある。一方でP2層の厚みが20μmを越えるとP1層が反射した反射光の光拡散機能が強くなり過ぎて結果的に出力向上特性が低下する場合がある。
ここでP2層の厚みをT2(μm)、P2層の無機粒子含有量をW2(重量%)とした時、それらの積(T2×W2)が100以上、240以下であることが好ましく、120以上、200以下がより好ましく、130以上、160以下が更に好ましい。T2×W2が100未満の場合、P2層による光拡散性能が不足して、有効反射率を向上させることが困難となる結果、出力向上特性が低下する場合がある。またT2×W2が240を越えても、P2層によってP1層の光反射性能を阻害して、結果的に出力向上特性が低下する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様として、後述する測定方法により求められる有効反射率が26%以上44%以下であるポリエステルフィルムが挙げられる。好ましくは28%以上、43%以下、より好ましくは30%以上、42%以下、更に好ましくは32%以上41%以下である。
有効反射率とは、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池モジュールの構造を想定して、ポリエステルフィルムを反射した光が発電セルに再入光できる比率を、反射角度ごとの反射強度に乗算することで、擬似的に出力向上特性を向上させるために有効な反射率を求めた数値である。詳細な測定条件は後述する。
1.検出器の高さ方向の長さが2.7cm、幅方向の長さが1.7cm、検出器からサンプル台の中心軸までの水平距離が9.55cmである分光光度計を用いて、外径が90mm、内径が84mm、厚みが3mm、真円度が5.0mm以下、屈折率が1.49のポリメチルメタクリレート製円柱容器の中心軸がサンプル台の中心軸の一致するように設置し、円柱容器内部に屈折率が1.48の流動パラフィンを充填させた後、光線透過率を測定して、基準強度を求める。
2.円柱容器内に、ポリエステルフィルムを入射器(光源)からの光がフィルム面に対して垂直に入射するように固定し、角度可変測定装置を用いて、反射光の検出器を10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°の8つの測定角度に回転させ、基準強度に対する各測定角度(θ)の反射スペクトルを測定する。
3.各測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率から次式より、有効反射率(%)を算出する。
式1:θの変角光度=測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率×2π×9.55×sinθ/2.7
式2:有効反射率(%)=4.0×(10°の変角光度+20°の変角光度+30°の変角光度)+24.5×40°の変角光度+100.0×(50°の変角光度+60°の変角光度+70°の変角光度+80°の変角光度)
太陽電池バックシートに反射率の高いポリエステルフィルムを用いることで太陽電池の出力向上特性を向上させようとすることは従来にも行われてきたが、反射率を向上させようとすると粒子や気泡を多く含有させる必要があるところ、粒子や気泡を多く含有させると太陽電池バックシートに必要な耐久性が悪化するという問題があった。
本発明者らは、ポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池モジュールにおいては、ポリエステルフィルムが反射する光のうち50°〜80°の角度で反射される光が太陽電池の出力向上特性に大きな影響を与えること、次に40°の角度で反射する光が太陽電池の出力向上特性に影響を与えること、次に10〜30°の角度で反射する光が太陽電池の出力向上特性に影響を与えることを見出し、本発明を得るに到った。すなわち、特定の角度の反射率を高くしたポリエステルフィルムとすることで、高い出力向上特性と耐久性を兼ね備えたポリエステルフィルムを得ることができるというものである。
本発明のポリエステルフィルムは前述した構成をとることで、有効反射率を調整することが可能であり、有効反射率が26%未満では出力向上特性が不足する場合がある。また、有効反射率が44%を越えるフィルムは出力向上特性が優れていても耐久性が低下する場合がある。
つまり、有効反射率が26%以上、44%以下とすることで、太陽電池の発電セル間を通過した光を効率良く反射して再利用することが可能であり、太陽電池バックシートとして太陽電池に搭載するだけで発電出力を向上させる。更には苛酷な屋外環境下に置かれても、発電出力を長期間維持することができる。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について例を挙げて説明する。これは一例であり、本発明は、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
まず、本発明で用いるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体と、ジオールを周知の方法でエステル交換反応、もしくはエステル化反応させることによって得ることができる。従来公知の反応触媒としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることが出来る。好ましくは、通常の製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアルカリ金属化合物、マンガン化合物、アンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましく、ポリエステルフィルムの耐久性をより高める観点からナトリウム化合物、マンガン化合物を添加することがより好ましい。このような方法としては例えば、マンガン化合物を例に取るとマンガン化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
また、本発明においてポリエステル樹脂重合時の温度や、ポリエステル樹脂を重合した後、190℃〜ポリエステル樹脂の融点未満の温度で、減圧または窒素ガスのような不活性気体の流通下で加熱する、いわゆる固相重合の時間を調整することによって、前記のIV(固有粘度)や末端カルボキシル基量を好ましい範囲とすることができる。具体的には重合時の温度が高くなるとIV(固有粘度)が低下し、末端カルボキシル基量が増加する。一方で固相重合の時間を長くするとIV(固有粘度)が上昇し、末端カルボキシル基量が低くなる。
ポリエステルフィルムに有機粒子や無機粒子を含有させる方法は、予めポリエステル樹脂と有機粒子をベント式二軸混練押出機やタンデム型押出機を用いてコンパウンドしたマスターバッチを用いる方法が従来から好ましく用いられている。
ここで本発明においては、前記の有機粒子となる樹脂中に無機粒子が分散されている1段目のコンパウンド加工を行い、続いて1段目で得られたマスターバッチをポリエステル樹脂に分散させる2段階のコンパウンド加工を行う手法を用いることで、有機粒子の分散を従来以上に微細化することが可能となり、延伸時に形成する空洞も微細化できる。
具体的には押出機に有機粒子と無機粒子を混合してメインホッパーに投入し、押出口までの途中に設置したサイドホッパーにポリエステル樹脂を投入する方法や、有機粒子をメインホッパーに投入した後、メインホッパーに近い方の第1サイドホッパーに無機粒子と投入し、続いて押出口に近い方の第2サイドホッパーにポリエステル樹脂を投入する方法、2台の押出機を接続して1台目で有機粒子と無機粒子をコンパウンドした後、ポリエステル樹脂を投入した2台目の押出機と合流させてコンパウンドする方法、予め有機粒子と無機粒子をコンパウンドして1段目のマスターバッチを作製しておき、1段目のマスターバッチとポリエステル樹脂を混合して2段目のコンパウンドを行う方法等が挙げられる。中でもより有機粒子の分散を微細化させるために、1段目のコンパウンドと2段目のコンパウンドを個別に実施する方法が好ましい。
1段目にコンパウンドする無機粒子の比率は25質量%以上、75質量%以下とすることが好ましく、30質量%以上、70質量%以下がより好ましく、40質量%以上、60質量%以下が更に好ましい。1段目にコンパウンドする無機粒子の比率が25%未満であると、2段目のコンパウンド時に得られる有機粒子の分散向上効果が不足する場合がある。一方で無機粒子の比率が75質量%を越えると、2段目のコンパウンド時に有機粒子にかかるせん断力が低下し、結果的に分散性が低下する場合がある。
2段目にコンパウンドするポリエステル樹脂の比率は50質量%以上、80質量%以下が好ましく、55質量%以上、75質量%以下がより好ましく、60質量%以上、770質量%以下が更に好ましい。段目にコンパウンドするポリエステル樹脂の比率が50質量%未満の場合、せん断力が低下して分散性が低下する場合がある。一方でポリエステル樹脂の比率が80質量%を越えると、ポリエステル樹脂がせん断熱によって劣化し、ポリエステルフィルムのIV(固有粘度)が低下する場合がある。
また2段目のコンパウンド時の樹脂温度は260℃以上、275℃以下が好ましく、263℃以上、272℃以下がより好ましく、265℃以上、270℃以下が更に好ましい。ここでコンパウンド時の樹脂温度とは押出機の口金部に設置した熱伝対で測定した温度を示す。樹脂温度が260℃未満の場合、押出が不安定となり加工が困難となる場合がある。一方で押出温度が275℃を超える場合、ポリエステル樹脂の溶融粘度が低下し、せん断力が低下して分散性が低下する場合がある。尚、樹脂温度は押出機の設定温度やスクリュー回転数によって調整することができる。
本発明のポリエステルフィルムの製膜方法は、ポリエステルフィルムを構成する原料として、上記のマスターバッチをポリエステル樹脂に希釈混合した後、押出機内で加熱溶融させ、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)が好ましく用いられる。またポリエステルフィルムが積層構成の場合は、積層する各層の原料を二台の押出機に投入し溶融してから合流させて、口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)を好ましく用いることができる。
続いて得られたシートを70〜110℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)2.5〜4.0倍の倍率で延伸し、20〜50℃の温度のロール群で冷却する。続いて、シートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80〜130℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3〜6倍の倍率で延伸する。
この時、延伸時の面倍率(長手方向延伸倍率×幅方向延伸倍率)は8.0倍以上、20.0倍以下が好ましく、10.0倍以上、16.0倍以下がより好ましく、11.0倍以上、13.0倍以下が特に好ましい。
延伸時の面倍率が8.0倍未満であると、延伸後のポリエスフィルムの比重やポリエステルフィルム内部の界面数も少なくなるため出力向上特性が低下する場合があり、ポリエステルフィルムの結晶性が低下して耐久性が低下する場合がある。一方で面倍率が20.0倍を超えると、ポリエステルフィルム内部の界面数は多くなるが空洞の1つ1つの大きさが大きくなり、比重が過剰に小さくなった結果、かえって出力向上特性が低下する場合がある。
続いて上記延伸後にテンター内で熱固定を行う。この時の設定温度は200℃以上、2230℃以下が好ましく、より好ましくは210℃以上225℃以下、更に好ましくは215℃以上220℃以下である。熱固定を200℃未満で行った場合、ポリエステルフィルム内部に分散している有機粒子の平均アスペクト比が過剰に小さくなり、230℃を超えた温度で実施すると、平均アスペクト比が過剰に大きくなるため、いずれの場合でも出力向上特性が低下する場合があり、高温の熱処理によってポリエステルフィルムの結晶緩和が進行して耐久性が低下する場合がある。
上記の製造方法によって得られたポリエステルフィルムは出力向上特性と耐久性に優れるものであり、太陽電池バックシートとして好適に用いることができる。
(太陽電池バックシート)
次に、本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートについて説明する。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートは、前記のポリエステルフィルムを単独で用いるかポリエステルフィルムの片面もしくは両面に、P2層としての機能を有する層や、ガスバリア性や封止材樹脂との密着性などの他の機能を持つ層を設けることを特徴とする。
前記の機能層を設ける方法としては、ポリエステルフィルムと機能層をそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、その他、積層する材料の形成用材料を溶媒に溶解させフィルム上に塗布する方法(コーティング法)、硬化性材料をフィルム上に塗布した後に電磁波照射、加熱処理などで硬化させる方法、積層する材料をフィルム上に蒸着/スパッタする方法、およびこれらを組み合わせた方法を使用することができる。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートは従来の太陽電池バックシートに比べて、優れた出力向上特性と耐久性を両立できる。
(太陽電池)
次に、本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池について説明する。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池は、前記のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして搭載する。もしくは前記の太陽電池バックシートを搭載することを特徴とする。
本発明の太陽電池の構成例を図1に示す。電気を取り出すリード線(図1には示していない)を接続した発電素子をEVA樹脂などの透明な封止材2で封止したものに、ガラスなどの透明基板4と太陽電池バックシート1として貼り合わせて構成されるが、これに限定されず任意の構成に用いることができる。
ここで、本発明の太陽電池において、太陽電池バックシート1は発電素子を封止した封止材2の背面に設置される発電セルを保護する役目を担う。ここで太陽電池バックシートはP2層が封止材2と接するように配置することが太陽電池の発電効率を高める点で好ましい。この構成とすることによって、本発明のポリエステルフィルムの優れた密着性と発電効率を両立した太陽電池とすることができる。
発電素子3は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、結晶シリコン系、多結晶シリコン系、微結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、銅インジウムセレナイド系、化合物半導体系、色素増感系など、目的に応じて任意の素子を、所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続して使用することができる。透光性を有する透明基板4は太陽電池の最表層に位置するため、高透過率のほかに、高耐候性、高耐汚染性、高機械強度特性を有する透明材料が使用される。本発明の太陽電池において、透光性を有する透明基板4は上記特性と満たせばいずれの材質を用いることができ、その例としてはガラス、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂などのフッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく挙げられる。ガラスの場合、強化されているものを用いるのがより好ましい。また樹脂製の透光基材を用いる場合は、機械的強度の観点から、上記樹脂を一軸または二軸に延伸したものも好ましく用いられる。また、これら基材には発電素子の封止材料であるEVA樹脂などとの接着性を付与するために、表面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、易接着処理を施すことも好ましく行われる。
発電素子を封止するための封止材2は、発電素子の表面の凹凸を樹脂で被覆し固定し、外部環境から発電素子保護し、電気絶縁の目的の他、透光性を有する基材やバックシートと発電素子に接着するため、高透明性、高耐候性、高接着性、高耐熱性を有する材料が使用される。その例としては、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく用いられる。
以上のように、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして太陽電池に搭載することにより、太陽電池の出力を向上させながら、高温多湿の苛酷な屋外環境下で、長期間その効果を保持することができる。
〔特性の測定方法および評価方法〕
(1)ポリマー特性
(1−1)末端カルボキシル基量
末端カルボキシル基量については、Mauliceの方法に準じて、以下の方法にて測定した。(文献:M.J. Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
測定試料2gをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mLに温度80℃にて溶解し、0.05NのKOH/メタノール溶液によって滴定し、末端カルボキシル基濃度を測定し、当量/ポリエステル1tの値で示した。なお、滴定時の指示薬はフェノールレッドを用いて、黄緑色から淡紅色に変化したところを滴定の終点とした。なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、溶液を濾過して不溶物の重量測定を行い、不溶物の重量を測定試料重量から差し引いた値を測定試料重量とする補正を実施した。
(1−2)IV(固有粘度)
オルトクロロフェノール100mlに、測定試料を溶解させ(溶液濃度C(測定試料重量/溶液体積)=1.2g/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(α)により、[η]を算出し、得られた値をもってIV(固有粘度)とした。
ηsp/C=[η]+K[η]・C ・・・(α)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)
尚、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、以下の方法を用いて測定を行った。
(i)オルトクロロフェノール100mLに測定試料を溶解させ、溶液濃度が1.2g/mLよりも濃い溶液を作成する。ここで、オルトクロロフェノールに供した測定試料の重量を測定試料重量とする。
(ii)次に、不溶物を含む溶液を濾過し、不溶物の重量測定と、濾過後の濾液の体積測定を行う。
(iii)濾過後の濾液にオルトクロロフェノールを追加して、(測定試料重量(g)−不溶物の重量(g))/(濾過後の濾液の体積(mL)+追加したオルトクロロフェノールの体積(mL))が、1.2g/100mLとなるように調整する。
(例えば、測定試料重量2.0g/溶液体積100mLの濃厚溶液を作成したときに、該溶液を濾過したときの不溶物の重量が0.2g、濾過後の濾液の体積が99mLであった場合は、オルトクロロフェノールを51mL追加する調整を実施する。((2.0g−0.2g)/(99mL+51mL)=1.2g/100mL))
(iv)(iii)で得られた溶液を用いて、25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定し、得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、上記式(C)により、[η]を算出し、得られた値をもってIV(固有粘度)とする。
(2)フィルム断面解析
(2−1)フィルム断面の観察
本発明のポリエステルフィルムを、イオンミリングを用いて厚み方向に潰すことなく、フィルム面方向に対して断面出しを行い、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)電界放射走査型電子顕微鏡“JSM−6700F”)を用いてサンプルの断面を観察した画像を得る。
(2−2)空洞面積の測定
(2−1)の手法で得られた画像から、フィルム断面中の空洞部分をトレースして、イメージアナライザー(ニレコ株式会社製:ルーゼックスIID)で面積を算出した。
(2−3)厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における平均界面数の測定
(2−1)の手法を、フィルムの長手方向、及び幅方向に平行な方向に、任意で異なる5箇所を選択してフィルムの断面出しを行い、フィルムの厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域を観察できる最大の倍率で観察した画像を10枚準備する。
次いで、図2に示す通り、それぞれの画像の面方向の中心から厚み方向に線を引き、その線上にある中心部から厚み方向±5μmの領域における界面数を数えた。1枚の画像あたり無作為に選んだ3箇所において界面数を算出し、上記10枚の画像で得られた平均値(30箇所の平均値)を平均界面数とした。
(2−4)フィルム表層から厚み方向に10μmまでの領域における平均界面数
(2−3)と同様の手順を、表層から厚み方向に10μmの領域を観察できる最大の倍率で観察した画像を10枚準備して行った。
(2−5)平均アスペクト比
(2−3)で得られた厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域の観察画像について、分散している粒子形状をトレースし、円相径、長径、短径をイメージアナライザーで画像解析し、円相径が0.4μm以上の粒子のアスペクト比(長径/短径)を求め、画像10枚の平均値を平均アスペクト比とした。
(3)有効反射率
(3−1)円柱容器の作製
外径が90mm、内径が84mm、厚みが3mm、屈折率が1.49の、PMMA製円柱パイプを高さ136mmでカットしたのち、該円柱パイプの片方の端に、外径84mm、厚み8mmの黒色に塗装したPMMA製の円板をはめ込み、接着剤で接着して容器の底部とした。次に、容器の底部とは反対の端に、外径120mm、内径90mm、厚み8mmの黒色に塗装したPMMA製のドーナツ状の円板を被せて、円柱パイプの端面と該ドーナツ状の円板を同じ高さの位置で接着剤を用いて接着し、内部に純水を入れて漏れないことを確認した。続いて、黒色で塗装したアルミ素材を直径120mmの円板状に切り出し、その一方の面と垂直になるように、黒色に塗装した高さ128mm、横幅80mm、厚み6mmのアルミ板を円の中心に接合し、アルミ板が容器の内部に入るような蓋を作製した。尚、該アルミ板には、測定光があたる光軸を中心に30mm角の穴を空け、測定光側と反対面のアルミ板の面にサンプルが取り付けられるようにすることで、円柱容器を作製した。なお本発明における円柱とは、JIS B 0621(1984)により定義された真円度が5.0mm以下の断面形状のものを採用した。
(3−2)測定装置の作製
島津製作所製分光光度計(UV−3600Plus UV−VIS−NIR Spectrophotometer)に接続されたマルチパーパス大型試料室(MPC−603)のサンプル台に、デジタル角度計(東栄工業株式会社製デジタル角度計ミニ DPM−1)を設置し、測定した角度を0°に設定する。次いで、(3−1)で作製した円柱容器内に、屈折率が1.48の和光純薬工業(株)製「流動パラフィン(和光一級)」を気泡が残らないように充填させて、円柱容器の中心をサンプル台の中心に合わして垂直に設置した。その後、デジタル角度計を円柱容器の上面に設置し、光軸と容器中心軸との角度が90°になるように固定した。
(3−3)基準強度(ベースライン)の測定
(3−2)で作製した測定装置に角度可変測定装置を取り付け、円柱容器内に測定試料を設置していない状態で、以下の条件にて光線透過率を測定し、得られた光の強度を基準強度とした。
スリット :12nm
測定波長範囲 :400〜1,200nm(サンプリングピッチ1nm)
スキャンスピード :高速
検出器の高さ方向の長さ:2.7cm
検出器の幅方向の長さ:1.7cm
検出器を回転させた角度(θ):入射光側を0°とし、180°
(3−4)有効反射率の測定
円柱容器の蓋にあるアルミ板に測定試料を取り付け、以下の条件で(3−3)で得られた基準強度に対する反射率の測定を行った。
スリット :12nm
測定波長範囲 :400〜1,200nm(サンプリングピッチ1nm)
スキャンスピード :高速
試料サイズ :5cm×5cm
測定角度範囲 :入射光側を0°とし、10°〜80°(10°刻みで8点)
検出器を回転させた角度(θ):10°〜80°を10°刻み
円柱容器の中心軸(サンプル台の中心軸)から検出器までの水平距離:9.55cm
検出器の高さ方向の長さ:2.7cm
検出器の幅方向の長さ:1.7cm
検出器を回転させた角度(θ)1点につき、400〜1,200nmの1nm毎の反射率の平均値を、測定角度(θ)の反射率とし、下記式1より得られた10°〜80°における反射率の分布(変角光度)を算出する。
式1:θの変角光度=測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率×2π×9.55×sinθ/2.7
尚、各測定角度(θ)における発電セルへの再入光比率は、θ=10°〜30°で4.0%、θ=40°で24.5%、θ=50°〜80°で100.0%とした。つまり、本発明の有効反射率(%)は下記式2から算出される。
式2:有効反射率(%)=4.0×(10°の変角光度+20°の変角光度+30°の変角光度)+24.5×40°の変角光度+100.0×(50°の変角光度+60°の変角光度+70°の変角光度+80°の変角光度)
(4)比重
本発明のポリエステルフィルムを5cm×5cmにサンプリングして、電子比重計(アルファーミラージュ(株)社製SD−120L)を用いて比重を測定し、N=10の平均値を求めた。
(5)出力向上特性
(5−1)擬似モジュールの作製
多結晶シリコン型太陽電池素子T1M17203L(Tainergy社製)の表面と裏面の銀電極部分に、フラックスH−722(HOZAN社製)をディスペンサーで塗布し、表面と裏面の銀電極の上に、155mmの長さに切断した配線材銅箔SSA−SPS0.2×1.5(20)(日立電線社製)を、表面側の太陽電池素子の片端から10mm離れたところが配線材の端に、そして裏面側は表面側と対称になるように乗せ、太陽電池素子裏面側から半田ごてを接触させて表面と裏面を同時に半田溶着し、1セルストリングスを作製した。次に、作製した1セルストリングスのセルから飛び出している前記の配線材の長手方向と、180mmに切断した取り出し電極「日立電線社製銅箔A−SPS0.23×6.0」の長手方向が垂直になるよう置き、前記の配線材と取り出し電極が重なる部分に前記のフラックスを塗布して半田溶着を行い、取り出し電極付きストリングスを作製した。次に、カバー材として190mm×190mmのガラス(旭硝子社製太陽電池用3.2mm厚白板熱処理ガラス)と、表側封止材として190mm×190mmのエチレンビニルアセテート(サンビック社製封止材0.5mm厚)と、発電素子単体の発電性能評価を実施した取り出し電極付きストリングスと、裏側封止材として190mm×190mmのエチレンビニルアセテート(サンビック社製封止材0.5mm厚)と、190mm×190mmに裁断した本発明のポリエステルフィルムの順に積層し、該ガラスを真空ラミネータの熱板と接触するようにセットし、熱板温度145℃、真空引き4分、プレス時間1分、及び保持時間10分の条件で真空ラミネートを行い、太陽電池モジュールを得た。このとき、取り出し電極付き1セルストリングスはガラス面が太陽電池素子の表面側になるようにセットした。
(5−2)出力向上特性評価
(5−1)で得られたモジュールを用い、JIS C 8914(2005)の基準状態に準じて短絡電流(以下、Iscと記す)測定をした。次いで、太陽電池バックシートして広く用いられているTaiflex製の“Solmate”(登録商標)を基準サンプルとし、次式にて算出した値をIsc増加率とした。
Isc増加率(%)=〔測定対象のIsc/基準サンプルのIsc−1〕×100
同様の測定をN=10で行い、得られたIsc増加率の平均値から、出力向上特性を以下のように判定した。
Isc増加率が1.70%以上の場合:A
Isc増加率が1.60%以上、1.70%未満の場合:B
Isc増加率が1.50%以上、1.60%未満の場合:C
Isc増加率が1.45%以上、1.50%未満の場合:D
Isc増加率が1.45%未満の場合:E
出力向上特性はA〜Dが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(5−3)耐久性評価
(5−1)項で作製した擬似モジュールを10個準備し、85℃85%RHに調整した恒温恒湿槽(エスペック(株)製)で2000hr湿熱処理した後、(5−2)と同様の手順でIsc増加率を測定し、得られた加速処理後のIsc増加率から、出力向上特性の保持率を次の(β)式から求め、以下のように判定した。
出力向上特性の保持率(%)=(湿熱処理後の測定対象のIsc増加率)/(湿熱処理前の測定対象のIsc増加率)×100 (β)
出力向上特性の保持率が80%以上の場合:A
出力向上特性の保持率が70%以上、80%未満の場合:B
出力向上特性の保持率が60%以上、70%未満の場合:C
出力向上特性の保持率が50%以上、60%未満の場合:D
出力向上特性の保持率が50%未満の場合:E
耐久性はA〜Dが良好であり、その中でもAが最も優れている。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
(1)ポリエステル樹脂原料
(1−1)PET−a
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール57.5質量部、酢酸マンガン4水和物0.03質量部、三酸化アンチモン0 .03質量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融した。この溶融物を撹拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。エステル交換反応終了後、リン酸0.005質量部とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.021質量部をエチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。このときのポリエステル組成物の固有粘度は0.2未満であった。この後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.52、末端カルボキシル基量が15当量/トンのポリエチレンテレフタレートを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させた。その後、220℃、真空度0.3Torr、8時間の固相重合を行い、IV(固有粘度)0.82、末端カルボキシル基量が11当量/トンのポリエチレンテレフタレート(PET−a)を得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物のガラス転移温度は82℃、融点は255℃であった。
(1−2)PET−b
重合反応の最終到達温度を290℃に変更した以外はPET原料aと同様の手順で行い、IV(固有粘度)0.71、末端カルボキシル基量が23当量/トンのポリエチレンテレフタレート(PET−b)を得た。
(1−3)PET−c
重合反応の最終到達温度を280に変更した以外はPET原料aと同様の手順で行い、固相重合を行わずに、IV(固有粘度)0.64、末端カルボキシル基量が34当量/トンのポリエチレンテレフタレート(PET−c)を得た。
(2)有機粒子
(2−1)COC−a
ポリプラスチックス株式会社製シクロオレフィンコポリマー(COC)“TOPAS”(登録商標)6018(ビカット軟化点=188℃)
(2−2)COC−b
ポリプラスチックス株式会社製シクロオレフィンコポリマー(COC)“TOPAS”(登録商標)6013(ビカット軟化点=137℃)
(2−3)PMP
三井化学株式会社製ポリメチルペンテン(PMP)“TPX”(登録商標)DX820(ビカット軟化点=172℃)
(2−4)PP
住友化学株式会社製ポリプロピレン(PP)“ノーブレン”(登録商標)FL6412(ビカット軟化点=100℃)
(3)無機粒子
(3−1)TiO−a
アルミナ系表面処理と有機系表面処理を行った、平均粒子径220nmのルチル型ニ酸化チタン粒子
(3−2)TiO−b
アルミナ系表面処理とシリカ系表面処理、有機表面処理を行った、平均粒子径210nmのルチル型ニ酸化チタン粒子
(3−3)CaCO
比表面積20000cm/g、DOP吸油量19ml/100g、平均粒子径1.2μmの炭酸カルシウム粒子
(3−4)硫酸バリウム
平均粒子径1.5μmの硫酸バリウム粒子(BaSO
(4)マスターバッチの製造方法
(4−1)2段コンパウンドマスターバッチ
(2)項に記載のCOC−a 50質量部と、(3)項に記載のTiO−a 50質量部を、ベントした230℃の押出機内で溶融混練し、1段目のマスターバッチを作製した。
次いで、(1)項で得られたPET樹脂(PET−a)52質量部、分散助剤として東レデュポン株式会社製ポリエステル系エラストマー(TPE)“ハイトレル”(登録商標)7247 18質量部、上記で得られた1段目のマスターバッチ 30質量部をベントした230℃の押出機内で樹脂温度が265℃になるように、スクリューの回転数を調整して溶融混練し、2段コンパウンドマスターバッチを得た。
(4−2)有機粒子マスターバッチ
(1)項に記載のPET−a 52質量部、分散助剤として東レデュポン株式会社製ポリエステル系エラストマー(TPE)“ハイトレル”(登録商標)7247 18質量部、(2)項に記載のCOC−a 30質量部をベントした230℃の押出機内で樹脂温度が265℃になるように、スクリューの回転数を調整して溶融混練し、有機粒子マスターバッチを得た。
(4−3)無機粒子マスターバッチ
(1)項に記載のPET−a 50質量部、(3)項に記載のTiO−a 50質量部をベントした230℃の押出機内で樹脂温度が270℃になるように、スクリューの回転数を調整して溶融混練し、無機粒子マスターバッチを得た。
(5)ウレタンコート塗剤
ウレタンコート塗剤の調合として、表9の主剤の欄に示される配合によって、(株)日本触媒製のアクリル系コーティング剤である“ハルスハイブリット”(登録商標)ポリマー UV−G301(固形分濃度:40質量%)に、着色顔料のテイカ(株)製酸化チタン粒子JR−709、および溶剤を一括混合し、ビーズミル機を用いてこれらの混合物を分散させた。その後、可塑剤としてDIC(株)製ポリエステル系可塑剤“ポリサイザー”(登録商標)W−220ELを添加して、固形分濃度が51質量%である樹脂層形成用の塗剤の主剤を得た。
続いて上記で得られた主剤に、表9に示されるヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂である住化バイエルウレタン(株)製“デスモジュール”(登録商標)N3300(固形分濃度:100質量%)を、前記の樹脂層形成用主剤との質量比が100/4の比になるように予め計算した量を配合し、さらに固形分濃度20質量%となるように予め算出した表9に示される希釈剤:酢酸n−プロピルを量りとり、15分間攪拌することにより固形分濃度20質量%の塗剤を得た。
(実施例1)
表1に示す組成となるように、P1層を構成する原料として180℃で2時間真空乾燥した(1)項に記載のPET−aを53.3質量部と、(4)項に記載の2段コンパウンドマスターバッチを46.7質量部とを混合し、併行してP2層を構成する原料として180℃で2時間真空乾燥した(1)項に記載のPET−aを76質量部と、(4)項に記載の無機粒子マスターバッチを24質量部とを混合し、それぞれを異なる2台の280℃に昇温した押出機内で溶融させて吐出し、フィードブロックにてP2/P1/P2と積層するように合流させた後、Tダイから共押出した。
続いて、共押出した溶融シートを表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて、未延伸シートを得た。続いて、該未延伸シートを80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、88℃の温度に加熱したロールと25℃の温度に調整したロール間で3.4倍の速度差をつけることで長手方向(縦方向)に3倍に延伸した後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸シートを得た。次いで、得られた一軸延伸シートの両端をクリップで把持しながらテンター内の80℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃に保たれた加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍に延伸した後、テンター内の熱処理ゾーンにて220℃で20秒間の熱処理を施し、さらに4%幅方向に弛緩処理を行いながら均一に徐冷し、ポリエステルフィルムを製膜した。
上記の方法で製膜後のポリエステルフィルムの積層厚みが表1に示す構成となるように押出機の吐出量を調整して、実施例1のポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性は表2に示す通り、非常に優れた出力向上特性と耐久性を両立しており、太陽電池バックシートとして太陽電池に搭載することによって、従来構成よりも高温多湿な過酷な屋外環境下で長期間、高い発電効率を維持可能な太陽電池を提供できることが分かった。
(実施例2〜22)
表1に示す通り、P1層とP2層の組成と製膜条件を変更した以外は実施例1と同様にポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性は表2に示す通り、実施例1には劣るがいずれも問題無い範囲で出力向上特性と耐久性を両立していた。
(実施例23〜35)
表3に示す通り、製膜時の熱処理温度と厚み構成、ポリエステル樹脂の種類を変更した以外は、実施例1と同様にポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性は表4に示す通り、実施例1には劣るがいずれも問題無い範囲で出力向上特性と耐久性を両立していた。
(実施例36)
P1層の両側にPET−aのみを構成する原料として用いたP3層を製膜後の層厚みが1層あたり12μmになるように積層した以外は、実施例1と同様にポリエステルフィルムを製膜し、その後、P2層として、(5)項に記載のウレタンコート塗剤を、乾燥後の厚みが4μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、100℃の温度で60秒間乾燥させた。
得られたポリエステルフィルムの特性は表4に示す通り、優れた出力向上特性と非常に優れた耐久性を有していた。
(実施例37〜40)
表5に示す通り、製膜時の延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様にポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性は表6に示す通り、いずれも実施例1に比べて出力向上特性と耐久性に劣り、特に実施例38は出力向上特性には劣るが問題無い範囲であった。
(比較例1)
表7に示す通り、P1層に用いる(4)項に記載のマスターバッチについて、有機粒子マスターバッチと無機粒子マスターバッチを個別に用いた以外は、実施例1と同様にポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性は表8に示す通り、耐久性には非常に優れる一方で、出力向上特性に劣っていた。
(比較例2〜5)
表7に示す通り、P1層とP2層の組成、構成を変更した以外は実施例1と同様にポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性は表8に示す通り、耐久性には良好な一方で出力向上特性に劣っていた。
(比較例6)
比較例1で得られたポリエステルフィルムの一方の面に、厚み20μmとなるようにアプリケーターを用いて活性エネルギー線照射硬化樹脂である日立化成社製“ヒタロイド”(登録商標)4864の塗布膜を形成し、次いで前記塗布膜にテクスチャー形状が刻設された金型平版を押圧しながら、前記塗布膜が形成された面の反対面から紫外線を照射してテクスチャー層を形成した。さらに、前記テクスチャー層の全面に誘導加熱方式の蒸着装置を用いてアルミニウムを蒸着することで、厚み800オングストロームの金属層を形成させた。
得られたポリエステルフィルムの特性は表8に示す通り、出力向上特性には非常に優れる一方で、耐久性に劣っていた。
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なお、表中、「中心界面数」とは「厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における平均界面数」、「表層界面数」とは「表面から厚み方向に10μmまでの領域における平均界面数」、「アスペクト比」とは「厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域に存在する円相当径が0.4μm以上の粒子の平均アスペクト比」を表す。
本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池の出力向上特性と耐久性に優れ、さらに本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートを搭載することによって、従来構成よりも高温多湿な過酷な屋外環境下で長期間、高い発電効率を維持可能な太陽電池を提供することができる。
1:太陽電池バックシート
2:封止材
3:発電素子
4:透明基板
5:フィルムの厚み方向
6:フィルムの面方向
7:面方向の中心から厚み方向に引いた線
8:フィルム厚み方向の中心線
9:フィルムの厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域
10:気泡
11:界面
12:サンプル台
13:円柱容器の中心軸(サンプル台の中心軸)
14:円柱容器
15:円柱容器の内部
16:入射器(光源)
17:検出器
θ:入射器と検出器のなす角度

Claims (11)

  1. 以下の方法で測定して得られる有効反射率が26%以上44%以下であるポリエステルフィルム。
    [有効反射率の測定方法]
    1.検出器の高さ方向の長さが2.7cm、幅方向の長さが1.7cm、検出器からサンプル台の中心軸までの水平距離が9.55cmである分光光度計を用いて、外径が90mm、内径が84mm、厚みが3mm、真円度が5.0mm以下、屈折率が1.49のポリメチルメタクリレート製円柱容器の中心軸がサンプル台の中心軸の一致するように設置し、円柱容器内部に屈折率が1.48の流動パラフィンを充填させた後、光線透過率を測定して、基準強度を求める。
    2.円柱容器内に、ポリエステルフィルムを入射器(光源)からの光がフィルム面に対して垂直に入射するように固定し、角度可変測定装置を用いて、反射光の検出器を10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°の8つの測定角度に回転させ、基準強度に対する各測定角度(θ)の反射スペクトルを測定する。
    3.各測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率から次式より、有効反射率(%)を算出する。
    式1:θの変角光度=測定角度(θ)の400〜1,200nmにおける平均反射率×2π×9.55×sinθ/2.7
    式2:有効反射率(%)=4.0×(10°の変角光度+20°の変角光度+30°の変角光度)+24.5×40°の変角光度+100.0×(50°の変角光度+60°の変角光度+70°の変角光度+80°の変角光度)
  2. 内部に空洞を有し、フィルム比重が0.7以上、1.2以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 厚みが35μm以上である請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
  4. 厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域における平均界面数が25以上である請求項3に記載のポリエステルフィルム。
  5. 少なくとも片側の表面から厚み方向10μmまでの領域における平均界面数が20以下である、請求項3または4に記載のポリエステルフィルム。
  6. 厚み方向の中心部から厚み方向±5μmの領域に存在する円相当径が0.4μm以上の有機粒子の平均アスペクト比が3.0以上、6.0以下である請求項3〜5いずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. 厚み方向に中心部に位置し、内部に空洞有するP1層と、
    少なくとも一方の最外層に位置し、無機粒子を含有するP2層を有し、
    且つ、P2層の厚みT2(μm)とP2層の無機粒子含有量W2(重量%)の積が100以上、240以下である請求項1〜6いずれかに記載のポリエステルフィルム。
  8. ポリエステルフィルムのIV(固有粘度)が0.65以上である請求項1〜7いずれかに記載のポリエステルフィルム。
  9. 太陽電池バックシートに用いられる請求項1〜8いずれかに記載のポリエステルフィルム。
  10. 請求項1〜9いずれかに記載のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシート。
  11. 請求項10に記載の太陽電池バックシートを搭載した太陽電池。
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