燃料電池発電装置用の水素生成装置としては、一般に水蒸気改質反応方式のものが用いられる。この水素生成装置は、気化部で蒸発した改質水と炭化水素からなる原料ガスとを600〜800℃程度の高温で反応させることにより水素を主成分とした改質ガスを生成する改質部と、改質ガス中に含まれる一酸化炭素ガス濃度を変成シフト反応により低減する変成部と、さらに一酸化炭素ガス濃度を選択酸化反応により低減するCO除去部とを備えている。
従来、この種の水素生成装置において、その外周部に断熱性能の高い粉状ヒュームドシリカを圧縮成形したものを適用することで、熱漏洩量を抑えてエネルギー効率を高めることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図4は、特許文献1に開示された従来の水素生成装置の構成を模式的に示す縦断面図である。図4に示すように、従来の水素生成装置1は、鉛直方向に中心軸を有する多重円筒構造の水素生成化学反応容器2と、水素生成化学反応容器2の底面と外周面を覆う有底円筒形の断熱容器3とで構成される。
水素生成化学反応容器2は、燃焼器4と、蒸発器5と、改質器6と、変成器7と、CO除去器8とからなる。蒸発器5は、内筒9と、外筒10と、内筒9と外筒10との間に設けられた丸棒をスパイラル形状に成形したらせん仕切11とで蒸発流路を構成する。
このような構造を有する蒸発器5には、原料ガスおよび改質水が供給される。原料ガスは原料供給器12から供給され、水は改質水供給器13から供給される。蒸発器5に供給された水は、燃焼ガス流路14を流れる燃焼ガスによって加熱されて蒸発し、その結果、蒸発器5では原料ガスと水蒸気との混合ガスが生成される。
蒸発器5を通過した混合ガスは、改質反応によって改質する改質器6と、改質反応で生成された一酸化炭素を酸化させる変成器7と、一酸化炭素を酸化させるCO除去器8を経て、水素排出口15から排出される。
また燃焼器4で発生した燃焼ガスは、燃焼筒16と内筒9との間の燃焼ガス流路14を通過し、燃焼ガス排出口17より排出される。
水素生成化学反応容器2は、断熱容器3に内包される形で断熱されている。
断熱容器3は、ヒュームドシリカ断熱材板18を複数枚積層したものに対して、接着剤19を用いて、下部ガラスクロス20と、胴部ガラスクロス21と、上部ガラスクロス22で貼付けることで一体化固定されている。
断熱容器3の形態は、他にも低コストでより効率的な漏洩熱量を抑制するものがある(例えば、特許文献2参照)。
図5は、特許文献2に開示された従来の水素生成装置に用いた断熱容器を示す縦断面図
であり、図6は、同断熱容器の製造方法を模式的に示す縦断面図である。
図5、図6に示すように、金属製の下蓋23の上に、厚み60mmのヒュームドシリカ断熱材板18を9枚積層し、その上端部に金属製の穴付き上蓋24を配設した後、下蓋23の大径部26と上蓋24の大径部26とを覆う長さの収縮フィルム25を被せて、加熱装置27からの熱で収縮フィルム25を収縮させて、ヒュームドシリカ断熱材板18の側面と下蓋23と上蓋24とを一体化する。
特許文献1に開示された従来の水素生成装置1の断熱容器3は、ヒュームドシリカ粉末を60mm程度にプレス成形したヒュームドシリカ断熱材板18を縦方向(鉛直方向)に複数枚積層してから、積層方向全体に圧縮荷重を加えることで、各積層すきま無く積層された断熱材高さを所定の厚みに変化させ、その外周部に接着剤を塗布したガラスクロスシート(下部ガラスクロス20、胴部ガラスクロス21、上部ガラスクロス22)を貼付けて一体化構造とすることで、積層界面からの熱漏洩を防いでいる。
接着剤を塗布した下部ガラスクロス20、胴部ガラスクロス21、上部ガラスクロス22を積層されたヒュームドシリカ断熱材板18の外周部に貼付ける際、下部ガラスクロス20と上部ガラスクロス22はヒュームドシリカ断熱材板18の積層体の縁まで覆う必要がある。
そして、ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体の曲面(外周面)と平面(上面と底面)とを連続して覆うためにガラスクロスシート(下部ガラスクロス20、胴部ガラスクロス21、上部ガラスクロス22)に複数のスリットを設けて円筒形状に沿う貼付けを行っているため、作業時間が多大である。
また、その貼付けの際に接着剤付きガラスクロスシート(下部ガラスクロス20、胴部ガラスクロス21、上部ガラスクロス22)をヒュームドシリカ断熱材板18の積層体の外周面へ押付する工程が必要で、ヒュームドシリカ断熱材板18を破損させる懸念があった。
また、断熱容器3を運搬する時や、水素生成化学反応容器2を断熱容器3に挿入する作業の際に、断熱容器3の側面が接触して断熱容器3(ヒュームドシリカ断熱材板18)を破損させる懸念があった。
特許文献2に開示された従来の水素生成装置1の断熱容器3は、加熱装置27の熱で収縮フィルム25を収縮させることで、ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体の縁で覆うことができるため、作業時間を大幅に削減出来て、また外周面への押し付けする工程もなくなる為、作業工程上の破損リスクが軽減されるが、収縮フィルム25もガラスクロスシート(下部ガラスクロス20、胴部ガラスクロス21、上部ガラスクロス22)同様に厚みが薄い為、外部からの衝撃で、ヒュームドシリカ断熱材板18の側面を破損させる懸念は未だあった。
断熱容器3を構成するヒュームドシリカ断熱材板18が破損すると、断熱容器3の一定
の厚みを確保出来ないことや、隙間から熱漏洩が発生し、断熱性能が不安定になる課題があった。
またヒュームドシリカ断熱材板18を縦方向(鉛直方向)に複数枚積層してから、積層方向全体に圧縮荷重を加えることで、断熱材高さを所定の厚みに変化させるが、胴部ガラスクロス21も収縮フィルム25も剛性が低い為、ヒュームドシリカ断熱材板のスプリングバックの影響で断熱容器3の高さが安定しない課題があった。
また収縮フィルム25は、加熱装置27の熱を用いてヒュームドシリカ断熱材板18の側面と下蓋23と上蓋24に密着させることで一体化させるが、収縮フィルム25とヒュームドシリカ断熱材板18が密着していることにより、水素生成化学反応容器2に加熱されたヒュームドシリカ断熱材板18に含まれる水分が蒸発して、断熱容器3の内部に蒸発水が溜まり、ヒュームドシリカ断熱材板18を濡らすことにより、ヒュームドシリカ断熱材板18にひび割れが起こり、断熱性能を劣化させる新たな課題があった。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、水素生成化学反応容器を断熱する断熱容器が、従来よりも、破損し難く、断熱容器の高さ方向の寸法が変化し難く、長期にわたって断熱性能を維持できる水素生成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、鉛直方向に中心軸を有する多重円筒構造の水素生成化学反応容器を断熱する断熱容器を、無機粉体を含む材料を加圧成形して成り水素生成化学反応容器の底面と外周面を覆う有底円筒形の断熱体と、内部に断熱体を挿入可能に筒状に成型され断熱体の外周面を覆う樹脂製成型筒と、樹脂製成型筒の上端部に固定され断熱体の開口した上面を断熱体の外周面の上端部を含めて覆う金属製上蓋と、樹脂製成型筒の下端部に固定され断熱体の底面を外周面の下端部を含めて覆う金属製下蓋と、で構成したのである。
上記構成において、有底円筒形の断熱体の外周面を、内部に断熱体を挿入可能に筒状に成型された樹脂製成型筒で覆うので、外部からの水素生成装置の側面への衝撃が樹脂製成型筒で吸収、緩和され、また、外部から樹脂製成型筒に加えられた衝撃が、樹脂製成型筒の内周面と断熱体の外周面との間の隙間によって、断熱体まで伝わり難いため、ガラスクロスシートや収縮フィルムで断熱体を覆っていた従来の水素生成装置よりも、断熱容器が外部からの衝撃で破損し難い。
また、断熱体の上面を覆う金属製上蓋と、断熱体の底面を覆う金属製下蓋とは、樹脂製成型筒の上下方向の端部にそれぞれ固定されており、樹脂製成型筒はガラスクロスシートや収縮フィルムを筒状にしたものよりも高さ方向(中心軸方向)に寸法変化し難いので、断熱体が断熱材料を高さ方向に圧縮して成型されスプリングバックし易い断熱材であっても、樹脂製成型筒に固定された金属製上蓋および金属製下蓋で、断熱体のスプリングバック(断熱容器の高さ方向の寸法変化)を抑制することができる。
また、樹脂製成型筒の内周面と断熱体の外周面との間の隙間を適切に設けることによって、無機粉体を含む材料に含まれる水分の水蒸気を隙間から外部に逃がせたり、その水蒸気が樹脂製成型筒の内周面で結露した場合の結露水が、断熱体に触れ難くなるので、断熱体が濡れて断熱性能が劣化するのを、抑制することができる。
したがって、従来よりも、破損し難く、断熱容器の高さ方向の寸法が変化し難く、長期にわたって断熱性能を維持できる断熱容器を備えた水素生成装置を得ることができる。
本発明の水素生成装置は、樹脂製成型筒によって、断熱容器の外周面の剛性が従来よりも高くなり、外部からの衝撃にも強く、断熱容器及び水素生成装置のハンドリングが容易になる。
また、断熱体の外表面を繊維シートで覆う(繊維シートを貼る)工程や収縮フィルムを熱収縮させる工程を廃止できるので、従来よりも作業工数の削減が図れ、生産性を向上できる。
また、断熱体に、断熱材料を高さ方向に圧縮して成型されスプリングバックし易い断熱材を用いた場合であっても、樹脂製成型筒に固定された金属製上蓋および金属製下蓋で、断熱体のスプリングバック(断熱容器の高さ方向の寸法変化)を抑制することができる。
また、樹脂製成型筒の内周面と断熱体の外周面との間の隙間を適切に設けることによって、断熱体が濡れて断熱性能が劣化するのを、抑制することができる。
第1の発明は、鉛直方向に中心軸を有する多重円筒構造の水素生成化学反応容器を、断熱容器で断熱したものであって、断熱容器が、無機粉体を含む材料を加圧成形して成り水素生成化学反応容器の底面と外周面を覆う有底円筒形の断熱体と、内部に断熱体を挿入可能に筒状に成型され断熱体の外周面を覆う樹脂製成型筒と、樹脂製成型筒の上端部に固定され断熱体の開口した上面を断熱体の外周面の上端部を含めて覆う金属製上蓋と、樹脂製成型筒の下端部に固定され断熱体の底面を外周面の下端部を含めて覆う金属製下蓋と、を有する水素生成装置である。
上記構成において、有底円筒形の断熱体の外周面を、内部に断熱体を挿入可能に筒状に成型された樹脂製成型筒で覆うので、外部からの水素生成装置の側面への衝撃が樹脂製成型筒で吸収、緩和され、また、外部から樹脂製成型筒に加えられた衝撃が、樹脂製成型筒の内周面と断熱体の外周面との間の隙間によって、断熱体まで伝わり難いため、ガラスクロスシートや収縮フィルムで断熱体を覆っていた従来の水素生成装置よりも、断熱容器が外部からの衝撃で破損し難い。そのため、断熱容器及び水素生成装置のハンドリング(取り扱い)が容易になる。
なお、樹脂製成型筒の内径寸法は、内部に断熱体を挿入可能にするために、断熱体の外径寸法よりも大きくするのが、通常であり、その結果、樹脂製成型筒の内周面と断熱体の外周面との間に隙間ができる。
また、断熱体の外表面を繊維シートで覆う(繊維シートを貼る)工程や収縮フィルムを熱収縮させる工程を廃止できるので、従来よりも作業工数の削減が図れ、生産性を向上できる。
また、断熱体の上面を覆う金属製上蓋と、断熱体の底面を覆う金属製下蓋とは、樹脂製成型筒の上下方向の端部にそれぞれ固定されており、樹脂製成型筒はガラスクロスシートや収縮フィルムを筒状にしたものよりも高さ方向(中心軸方向)に寸法変化し難いので、断熱体が断熱材料を高さ方向に圧縮して成型されスプリングバックし易い断熱材であっても、樹脂製成型筒に固定された金属製上蓋および金属製下蓋で、断熱体のスプリングバック(断熱容器の高さ方向の寸法変化)を抑制することができる。
また、樹脂製成型筒の内周面と断熱体の外周面との間の隙間を適切に設けることによって、無機粉体を含む材料に含まれる水分の水蒸気を隙間から外部に逃がせたり、その水蒸気が樹脂製成型筒の内周面で結露した場合の結露水が、断熱体に触れ難くなるので、断熱体が濡れて断熱性能が劣化するのを、抑制することができる。
断熱体としては、無機粉体を含む材料を加圧成形して成る気相比率90%前後の多孔体を板状に加工したものの積層体を用いることができ、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を使用することができる。なお、金属製上蓋と金属製下蓋は、少なくとも有底円筒形の断熱体の縁を覆う部分が金属で構成されていれば良い。
第2の発明は、特に、第1の発明における樹脂製成型筒が、金属製上蓋と金属製下蓋のそれぞれと締結されているものである。
上記構成により、断熱体の上面を覆う金属製上蓋と、断熱体の底面を覆う金属製下蓋とが、樹脂製成型筒の上下方向の端部にそれぞれ締結によってしっかりと固定されているので、断熱体として、断熱材板を縦方向(鉛直方向)に複数枚積層してから、積層方向全体に圧縮荷重を加えて、各積層すきま無く積層されたものを用いた場合であっても、断熱体のスプリングバックの応力で、金属製上蓋と金属製下蓋とが、樹脂製成型筒から外れ難いため、断熱体のスプリングバック(復元力)の応力にも耐える安定した断熱容器を得ることができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明における金属製上蓋が、断熱体の内周面の上端部を覆うように構成されているものであり、断熱容器に水素生成化学反応容器を収納する時に、水素生成化学反応容器との衝突によって、断熱容器(断熱体)の開口部が破損し難い効果に加えて、金属製上蓋における断熱体の内周面の上端部を覆う部分によって、金属製上蓋と断熱体との半径方向の位置ズレが小さく抑えられて、樹脂製成型筒の内周面と断熱体の外周面との間の隙間寸法を、全周にわたって均一化できる。その結果、断熱体が濡れて断熱性能が劣化するのを、さらに抑制することができる。
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る水素生成装置の構成を模式的に示す縦断面図を示すものである。なお、本実施の形態において、従来と同一構成については、同一符号を付している。
図1に示すように、本実施の形態の水素生成装置1は、鉛直方向に中心軸を有する多重円筒構造の水素生成化学反応容器2と、水素生成化学反応容器2の底面と外周面を覆うように構成され水素生成化学反応容器2を断熱する断熱容器3と、で構成される。
断熱容器3は、ヒュームドシリカを含む材料を加圧成形したヒュームドシリカ断熱材板18を積層して成り水素生成化学反応容器2の底面と外周面を覆う有底円筒形の断熱体と
、内部に断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)を挿入可能に筒状に成型され断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外周面を覆う樹脂製成型筒30と、樹脂製成型筒30の上端部に固定され断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の開口した上面を内周面と外周面のそれぞれの上端部を含めて覆う金属製上蓋28と、樹脂製成型筒30の下端部に固定され断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の底面を外周面の下端部を含めて覆う金属製下蓋29と、を有する。
この水素生成化学反応容器2は、原料供給器12から供給される改質原料と、改質水供給器13から供給された改質水とを混合気化させる蒸発器5と、気化した改質原料を改質反応によって改質する改質器6と、改質反応で生成された一酸化炭素を変成シフト反応で酸化させる変成器7と、変成器7を未反応で通過した一酸化炭素を酸化させるCO除去器8と、バーナーを備えた燃焼器4とを備えている。
改質器6、変成器7及びCO除去器8は、化学反応部として機能する。化学反応部で生成された水素ガスは、水素排出口15から排出される。燃焼器4、蒸発器5、改質器6、変成器7、CO除去器8は、ステンレス製の円筒形に収納され、これらで水素生成化学反応容器2を構成している。
改質器6には、改質反応を促進する触媒が担持されている。改質触媒としては、白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属、あるいは、これらの合金を用いることができる。改質器6は、改質反応を行うために燃焼器4からの熱エネルギーによって700℃程度に維持されている。
変成器7には、シフト反応を促進する触媒が担持されている。シフト触媒としては、銅系触媒などの低温触媒や、鉄系触媒などの高温触媒が知られており、これらを組み合わせることによって、効果的にシフト反応を促進することができる。シフト反応は300℃程度で行われる。
CO除去器8には、一酸化炭素の選択酸化触媒が担持されている。この触媒としては、白金、ルテニウム、パラジウム、金、あるいは、これらを第1元素とした合金を用いることができる。CO除去器8によって、ガス中の一酸化炭素濃度を数ppm程度のまで低減することができる。
積層して断熱体を構成するヒュームドシリカ断熱材板18は、例えば100nm以下のマイクロポア構造を有するヒュームドシリカ(5〜30nm・球状)の加圧成形体で、固体粒子が点接触で伝熱経路が最小であるとともに、マイクロポアで気体の対流・分子衝突を阻止する構造をもつもので、改質部外周の平均温度300℃における熱伝導率は0.025W/(m・k)のものを厚み60mmで成形した。
次に、本実施の形態に係る水素生成装置1の製造方法を説明する。
まず、金属製下蓋29の開口部に樹脂製成型筒30の一方の端部を嵌め込んで、スポットカシメを外周方向から均一ピッチの8カ所で締結させる。
なお、スポットカシメによる締結は、これに限らず、スポットカシメの締結方向、ピッチ、締結箇所は上下方向、不均一ピッチ、締結箇所は最低1ヵ所以上等でも可とする。
また、締結方法はスポットカシメに限らず、接着剤、テープ等も可とする。
そして締結された状態の樹脂製成型筒30と金属製下蓋29とで構成される有底筒状容
器の中に、ヒュームドシリカ断熱材板18を複数枚積層し、その上端部に金属製上蓋28を配設する。
このとき、金属製下蓋29は、最下段の円柱状のヒュームドシリカ断熱材板18の底面を最下段のヒュームドシリカ断熱材板18の外周面の下端部を含めて覆っている。なお、最下段のヒュームドシリカ断熱材板18の外周面の下端部は、樹脂製成型筒30の下端部を間に挟む形で、金属製下蓋29によって覆われている。
また、金属製上蓋28は、最上段の円筒状のヒュームドシリカ断熱材板18の上面を最上段のヒュームドシリカ断熱材板18の内周面と外周面のそれぞれの上端部を含めて覆っている。なお、最上段のヒュームドシリカ断熱材板18の外周面の上端部は、樹脂製成型筒30の上端部を間に挟む形で、金属製上蓋28によって覆われている。
次に、この状態で積層方向全体に圧縮荷重を加えることで、各積層すきま無く積層されたヒュームドシリカ断熱材板18からなる断熱体の高さを所定の厚みに変化させた(所定の厚みに調節した)状態で、樹脂製成型筒30と金属製上蓋28をスポットカシメで締結して、積層されたヒュームドシリカ断熱材板18と金属製下蓋29と金属製上蓋28と樹脂製成型筒30とを一体化して、断熱容器3を構成する。
樹脂製成型筒30と金属製上蓋28の締結方法も、樹脂製成型筒30と金属製下蓋29との締結と同様に、本実施の形態のやり方に限定するものではない。
そして、断熱容器3の上面の開口部から水素生成化学反応容器2を断熱容器3の内部に挿入することで、水素生成装置1を完成させることができる。
以上、説明したように本実施の形態の水素生成装置1は、鉛直方向に中心軸を有する多重円筒構造の水素生成化学反応容器2を、断熱容器3で断熱したものであって、断熱容器3が、無機粉体(ヒュームドシリカ)を含む材料を加圧成形して成り水素生成化学反応容器2の底面と外周面を覆う有底円筒形の断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)と、内部に断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)を挿入可能に筒状に成型され断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外周面を覆う樹脂製成型筒30と、樹脂製成型筒30の上端部に固定され断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の開口した上面を断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の内周面と外周面のそれぞれの上端部を含めて覆う金属製上蓋28と、樹脂製成型筒30の下端部に固定され断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の底面を外周面の下端部を含めて覆う金属製下蓋29と、を有している。
上記構成において、有底円筒形の断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外周面を、内部に断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)を挿入可能に筒状に成型された樹脂製成型筒30で覆うので、外部からの水素生成装置1の側面への衝撃が樹脂製成型筒30で吸収、緩和される。
また、外部から樹脂製成型筒30に加えられた衝撃が、樹脂製成型筒30の内周面と断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外周面との間の隙間によって、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)まで伝わり難いため、ガラスクロスシートや収縮フィルムで断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)を覆っていた従来の水素生成装置1よりも、断熱容器3が外部からの衝撃で破損し難い。そのため、断熱容器3及び水素生成装置1のハンドリング(取り扱い)が容易になる。
なお、樹脂製成型筒30の内径寸法は、筒の内部に断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板
18)を挿入可能にするために、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18)の外径寸法よりも大きくするので、樹脂製成型筒30の内周面と断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外周面との間に隙間ができる。
また、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外表面を繊維シートで覆う(繊維シートを貼る)工程や収縮フィルムを熱収縮させる工程を廃止できるので、従来よりも作業工数の削減が図れ、生産性を向上できる。
また、金属製上蓋28と金属製下蓋29は、樹脂製成型筒30の上下方向の端部にそれぞれ固定されており、樹脂製成型筒30は、ガラスクロスシートや収縮フィルムを筒状にしたものよりも高さ方向(中心軸方向)に寸法変化し難いので、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)が高さ方向に圧縮して所定高さ寸法に調整されスプリングバック(復元)し易い断熱材であっても(ヒュームドシリカ断熱材板18を縦方向(鉛直方向)に複数枚積層してから、積層方向全体に圧縮荷重を加え、各積層すきま無く積層された断熱材高さを所定の厚みに変化させた後でも)、樹脂製成型筒30に固定された金属製上蓋28および金属製下蓋29で、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)のスプリングバック(断熱容器3の高さ方向の寸法変化)を抑制することができる。
また、樹脂製成型筒30の内周面と断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外周面との間の隙間を適切に設けることによって、ヒュームドシリカ(無機粉体)を含む材料に含まれる水分の水蒸気を隙間から外部に逃がせたり、その水蒸気が樹脂製成型筒30の内周面で結露した場合の結露水が、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)に触れ難くなるので、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)が濡れて断熱性能が劣化するのを、抑制することができる。
断熱体としては、ヒュームドシリカ等の無機粉体を含む材料を加圧成形して成る気相比率90%前後の多孔体を板状に加工したものの積層体を用いることができ、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を使用することができる。
なお、金属製上蓋28と金属製下蓋29は、少なくとも有底円筒形の断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の縁を覆う部分が金属で構成されていれば良い。
また、金属製上蓋28と金属製下蓋29とが、樹脂製成型筒30の上下方向の端部にそれぞれ締結によってしっかりと固定されているので、断熱体として、ヒュームドシリカ断熱材板18を縦方向(鉛直方向)に複数枚積層してから、積層方向全体に圧縮荷重を加えて、各積層すきま無く積層されたものを用いた場合であっても、断熱体のスプリングバック(復元力)の応力で、金属製上蓋28と金属製下蓋29とが、樹脂製成型筒30から外れ難いため、断熱体のスプリングバック(復元力)の応力にも耐える安定した断熱容器3を得ることができる。
金属製上蓋28が、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の内周面の上端部を覆うように構成されているものであり、断熱容器に水素生成化学反応容器を収納する時に、水素生成化学反応容器との衝突によって、断熱容器3(断熱体)の開口部が破損し難い効果に加えて、金属製上蓋28における断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の内周面の上端部を覆う部分によって、金属製上蓋28と断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)との半径方向の位置ズレが小さく抑えられて、樹脂製成型筒30の内周面と断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外周面との間の隙間寸法を、全周にわたって均一化できる。その結果、断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)が濡れて断熱性能が劣化するのを、さらに抑制することができる。
なお、金属製上蓋28と金属製下蓋29は、全体を金属で構成させる必要はなく、少なくとも有底円筒形の断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の縁を覆う部分が金属で構成されていれば良く、有底円筒形の断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の縁を覆う部分が金属で、その他の部分が樹脂で、それらが一体成形成されたものでも構わない。
例えば、金属製上蓋28は、有底円筒形の断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の外縁を覆う金属製大リングと、有底円筒形の断熱体(ヒュームドシリカ断熱材板18の積層体)の内縁を覆う金属製小リングと、それらと一体成形される樹脂製円板で構成されても構わず、その場合は、比較的高温になる金属製小リングから比較的低温の金属製大リングに熱が伝わるのを樹脂製円板によって抑制することができる。
以上のように本実施の形態においては、低コストでより強度に優れた断熱容器3を構成でき、熱漏洩しにくい安定した断熱性能を維持する水素生成装置1の断熱容器3が提供できる。