JP2019135322A - 酸洗剤及び酸洗方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去できる洗浄剤及び酸洗方法を提供すること。【解決手段】酸洗剤は、鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗剤であって、無機酸と、フッ素系界面活性剤と、水と、を含み、酸洗剤中の無機酸の含有量は、30〜45質量%であり、酸洗剤中のフッ素系界面活性剤の含有量は、200〜2000質量ppmであり、合計で0〜0.1質量%の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンを含む。【選択図】なし
Description
本発明は、鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗剤及び酸洗方法に関する。
一般に使用される鋼板には、黒皮と呼ばれる四酸化三鉄の酸化皮膜を有するものがある。SPCC鋼板、酸洗鋼板においても、鋼板を切断する際にレーザー光線を使用する場合、その切断面に酸化皮膜が形成される。また、溶接作業においても酸化皮膜が形成される。このように、黒皮材を含む酸化皮膜が存在した場合、化成皮膜の形成が阻害され、塗膜後の塗膜密着性低下、耐食性低下を引き起すので、鋼板から酸化皮膜を除去するための酸洗剤が必要となる。このような酸洗剤には、酸化皮膜を除去しつつも、鋼板に対するエッチングが過多とならない洗浄力が求められる。
そこで、硝酸、フッ酸、Fe3+、過酸化水素を主成分とし、各成分の量が所定の範囲に調製された酸洗剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術によれば、硝酸を1.0〜2.5mol/L、フッ酸を0.3〜1.5mol/L、Fe3+を10〜50g/L、過酸化水素を0.003〜0.30mol/Lの範囲にそれぞれ調製することにより、酸化皮膜を除去しつつも、鋼板に対するエッチングが過多とならない洗浄力を実現している。
しかし、従来の酸洗剤は、酸化皮膜に浸透しにくい。そのため、酸化皮膜を除去する効果を鋼板の表面に均一に及ぼすことが困難である。
本発明は、鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去できる酸洗剤及び酸洗方法を提供することを目的とする。
本発明は、鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗剤であって、無機酸と、フッ素系界面活性剤と、水と、を含み、前記酸洗剤中の前記無機酸の含有量は、30〜45質量%であり、前記酸洗剤中の前記フッ素系界面活性剤の含有量は、200〜2000質量ppmであり、合計で0〜0.1質量%の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンを含む酸洗剤に関する。
また、前記無機酸は、リン酸、塩酸、フッ酸、硫酸及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記無機酸は、リン酸のみからなることが好ましい。
また、前記フッ素系界面活性剤は、直鎖又は分岐型のフッ化アルキル鎖を有するフッ素系界面活性剤からなることが好ましい。
また、前記酸化型金属イオンは、鉄イオンであることが好ましい。
また、原子量換算でのフッ素イオンに対する鉄イオンの質量比率(Fe/F)は、0〜15.9であることが好ましい。
また、前記フッ素系界面活性剤以外の界面活性剤を3000〜5000質量ppm含むことが好ましい。
また、本発明は、鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗方法であって、上記酸洗剤で満たされた処理浴中に前記鋼板を浸漬させることにより、前記酸化皮膜を除去する洗浄工程と、前記処理浴中に前記酸洗剤を補給する補給工程と、を有する酸洗方法及び、酸化還元電位に基づいて前記処理浴中の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの価数を調製する調製工程を有する酸洗方法方法に関する。
本発明によれば鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去できる酸洗剤及び酸洗方法を提供できる。
以下、本発明の一実施形態に係る酸洗剤及び酸洗方法について具体的に説明する。
[酸洗剤]
本実施形態に係る酸洗剤は、鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗剤であって、無機酸と、フッ素系界面活性剤と、水と、を含む。また、本実施形態においては、酸洗剤は酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンと、フッ素系界面活性剤以外の界面活性剤(以下、洗浄剤ともいう)を含む。
本実施形態に係る酸洗剤は、鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗剤であって、無機酸と、フッ素系界面活性剤と、水と、を含む。また、本実施形態においては、酸洗剤は酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンと、フッ素系界面活性剤以外の界面活性剤(以下、洗浄剤ともいう)を含む。
<無機酸>
本実施形態に係る酸洗剤が無機酸を含むことにより、鋼板の表面から酸化皮膜(例えば黒皮)を除去できる。本実施形態に係る無機酸は、例えば、リン酸、塩酸、フッ酸、硫酸及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも一種である。この中で、リン酸は、硝酸や硫酸と比べてエッチング力が穏やかで、処理条件によるエッチング量の制御が容易になること、また安全性に関しても他の酸より扱いやすいため好ましい。
本実施形態に係る酸洗剤が無機酸を含むことにより、鋼板の表面から酸化皮膜(例えば黒皮)を除去できる。本実施形態に係る無機酸は、例えば、リン酸、塩酸、フッ酸、硫酸及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも一種である。この中で、リン酸は、硝酸や硫酸と比べてエッチング力が穏やかで、処理条件によるエッチング量の制御が容易になること、また安全性に関しても他の酸より扱いやすいため好ましい。
本実施形態に係る無機酸の含有量は、30〜45質量%であり、好ましくは、30〜37.5質量%である。無機酸の含有量が30質量%未満である場合には、鋼板の表面から酸化皮膜を除去することが難しい。無機酸の含有量が45質量%を超える場合には鋼板に対するエッチングが過多になる。
<フッ素系界面活性剤>
本実施形態に係る酸洗剤がフッ素系界面活性剤を含むことにより、鋼板の表面に酸洗剤を浸透させることができる。また、フッ素系界面活性剤は、鋼板の表面から酸化皮膜や、油分を除去することにも寄与する。本実施形態に係るフッ素系界面活性剤は、直鎖又は分岐型のフッ化アルキル鎖を有する。直鎖又は分岐型のフッ化アルキル鎖を有するフッ素系界面活性剤(例えば、パーフルオロ基を有する界面活性剤)は、その構造中に効率的にフッ素を取り込むことができる。
本実施形態に係る酸洗剤がフッ素系界面活性剤を含むことにより、鋼板の表面に酸洗剤を浸透させることができる。また、フッ素系界面活性剤は、鋼板の表面から酸化皮膜や、油分を除去することにも寄与する。本実施形態に係るフッ素系界面活性剤は、直鎖又は分岐型のフッ化アルキル鎖を有する。直鎖又は分岐型のフッ化アルキル鎖を有するフッ素系界面活性剤(例えば、パーフルオロ基を有する界面活性剤)は、その構造中に効率的にフッ素を取り込むことができる。
本実施形態に係るフッ素系界面活性剤の含有量は、200〜2000質量ppmである。フッ素系界面活性剤の含有量が200質量ppm未満である場合には、鋼板の表面に酸洗剤を浸透させることが難しい。フッ素系界面活性剤の含有量が4000質量ppmを超える場合には、酸化皮膜の疎水性が上昇するので、結果として鋼板の表面に酸洗剤を浸透させることが難しい。
<酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオン>
本実施形態に係る酸洗剤は、酸化型金属イオンとして、合計で0〜0.1質量%の鉄イオンを含む。なお、酸洗剤は、実質的に酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンを含まなくてもよい。ここで、実質的に酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンを含まないとは、鋼板を処理する前の酸洗剤に酸化型金属イオン(鉄イオン等)を意図的に含ませないことをいう。
本実施形態に係る酸洗剤は、酸化型金属イオンとして、合計で0〜0.1質量%の鉄イオンを含む。なお、酸洗剤は、実質的に酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンを含まなくてもよい。ここで、実質的に酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンを含まないとは、鋼板を処理する前の酸洗剤に酸化型金属イオン(鉄イオン等)を意図的に含ませないことをいう。
例えば、酸洗剤が、合計で0〜0.1質量%以下の鉄イオンを含む場合には、酸洗剤中に鉄イオンが過剰に蓄積されにくい。そのため、連続的に鋼板を処理するような場合であっても、後述するように酸洗剤を処理浴に注ぎ足すことによって、効率よく鋼板を処理できる。
また、酸洗剤が、合計で0〜0.1質量%以下の鉄イオンを含む場合には、酸洗剤中に存在する第二鉄イオン(Fe3+)が第一鉄イオン(Fe2+)に還元される反応が生じ、無機酸が酸化皮膜を除去する作用が促進される。無機酸が酸化皮膜を除去する作用を促進できる酸化型金属イオンとしては、第二鉄イオン(Fe3+)の他に、第二セリウムイオン(Ce4+)、コバルトイオン(Co5+)、スズイオン(Sn4+)等が挙げられ、酸化型金属酸イオンとしては、メタバナジン酸イオン(VO3 −)等が挙げられる。これらの中で、第二鉄イオン(Fe3+)は、鋼板を洗浄することにより生じるものであるため、特に好ましい。これらの酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの価数を調製する方法としては、酸化剤(例えば過酸化水素水)を加えること等により、酸化還元電位(ORP)を所定値以上(例えば70以上)に保つこと等が挙げられる。なお、本明細書において、ORPを測定する装置の電極には銀/塩化銀電極が用いられる。
一方で、金属イオンは、エッチングの進行に伴って、酸洗剤中に蓄積していく。この量が0.1質量%を超えると、エッチングに必要な遊離酸と塩を形成するため、エッチング力が低下する傾向がある。更に、金属イオン濃度が6%を超えると、浴中の遊離酸度が低下し、その結果エッチング力が低下するため、酸化膜の除去が不均一になる傾向がある。
ここで、酸洗剤中の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンにより、無機酸が酸化皮膜を除去する作用が促進されるという効果は、酸洗剤中の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンとフッ素イオンの比率も影響する。具体的には、原子量換算で鉄イオン(Fe)とフッ素イオン(F)の質量比率(Fe/F)は、0〜15.9である場合、無機酸が酸化皮膜を除去する作用がより促進される。
<洗浄剤>
本実施形態に係る酸洗剤は、3000〜5000質量ppmの洗浄剤を更に含む。酸洗剤に含まれる洗浄成分(洗浄性界面活性剤)は、一般的な界面活性剤を使用することができるが、特にノニオン系界面活性剤であることが好ましく、具体的には、株式会社ADEKA製のアデカトールシリーズ(TN・UAシリーズ)等を挙げることができる。
本実施形態に係る酸洗剤は、3000〜5000質量ppmの洗浄剤を更に含む。酸洗剤に含まれる洗浄成分(洗浄性界面活性剤)は、一般的な界面活性剤を使用することができるが、特にノニオン系界面活性剤であることが好ましく、具体的には、株式会社ADEKA製のアデカトールシリーズ(TN・UAシリーズ)等を挙げることができる。
洗浄剤の含有量が3000質量ppm未満となる場合には、酸洗剤の脱脂性を十分に高めることが難しい。洗浄剤の含有量が5000質量ppmを超える場合には、洗浄剤の成分が濃縮しやすい。そのため、連続的に鋼板を処理するような場合に、後述するように酸洗剤を処理浴に注ぎ足して鋼板を処理することが難しい。
[酸洗方法]
本発明に係る酸洗方法は、上記酸洗剤で満たされた処理浴中に鋼板を浸漬させることにより、酸化皮膜を除去する洗浄工程を含む。上述したように、酸洗剤中の前記無機酸の含有量は、30〜45質量%であり、酸洗剤中の前記フッ素系界面活性剤の含有量は、200〜2000質量ppmであることから、酸洗剤は、鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去できる。酸洗方法により処理される鋼板としては、例えば、SPCC材・酸洗鋼板・黒皮材等が挙げられる。
本発明に係る酸洗方法は、上記酸洗剤で満たされた処理浴中に鋼板を浸漬させることにより、酸化皮膜を除去する洗浄工程を含む。上述したように、酸洗剤中の前記無機酸の含有量は、30〜45質量%であり、酸洗剤中の前記フッ素系界面活性剤の含有量は、200〜2000質量ppmであることから、酸洗剤は、鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去できる。酸洗方法により処理される鋼板としては、例えば、SPCC材・酸洗鋼板・黒皮材等が挙げられる。
本実施形態に係る洗浄工程における酸洗剤の温度は、例えば35〜50℃である。また、洗浄工程にかかる時間は、例えば、60〜600秒である。酸洗剤の温度が低すぎる又は洗浄工程にかかる時間が短すぎる場合には、鋼板の表面から酸化皮膜を除去することが難しい。反対に、酸洗剤の温度が高すぎる又は洗浄工程にかかる時間が長すぎる場合には、エッチングが過多となりやすい。
また、本実施形態に係る酸洗方法は、処理浴中に上記酸洗剤を補給する補給工程を含む。ここで、本実施形態に係る酸洗剤は、合計で0〜0.1質量%の鉄イオンを含むので、補給工程を行ったとしても、酸洗剤中に鉄イオンが過剰に蓄積しにくい。そのため、連続的に鋼板を処理するような場合であっても、例えば、補給工程により消費された酸洗剤の分だけ酸洗剤を処理浴に注ぎ足すことによって、効率よく鋼板を処理できる。
また、本実施形態においては、酸化還元電位に基づいて処理浴中の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの価数が調製される。具体的には、補給工程を繰り返すことによって処理浴中の酸化還元電位が低下した場合には、処理浴のORPが70mV以上となるように酸化剤(例えば過酸化水素水)が加えられる。このように、酸化還元電位に基づいて処理浴中の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの価数が調製されると、例えば、酸洗剤中に存在する第一鉄イオン(Fe2+)が第二鉄イオン(Fe3+)に酸化される反応が生じ、無機酸が酸化皮膜を除去する作用が促進される。
また、第一鉄イオン及び第二鉄イオンが過剰に濃縮された場合には、オーバーフローにより処理浴から酸洗剤を排出してから補給工程が行われてもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る酸洗剤は、鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗剤であって、無機酸と、フッ素系界面活性剤と、水と、を含み、酸洗剤中の無機酸の含有量は、30〜45質量%であり、酸洗剤中のフッ素系界面活性剤の含有量は、200〜2000質量ppmであり、合計で0〜0.1質量%の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンを含む。フッ素系界面活性剤により、鋼板の表面に酸洗剤が浸透し、酸洗剤中の無機酸が酸化皮膜を除去する。これにより、鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去できる。
また、無機酸は、リン酸、塩酸、フッ酸、硫酸及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、リン酸のみからなることがより好ましい。また、フッ素系界面活性剤は、直鎖又は分岐型のフッ化アルキル鎖を有するフッ素系界面活性剤のみからなることが好ましい。直鎖又は分岐型のフッ化アルキル鎖を有するフッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、後述する表2に記載したものが挙げられる。これらの無機酸、フッ素系界面活性剤を用いることにより、鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去する効果が促進される。
また、酸化型金属イオンは、鉄イオンであることが好ましい。鉄イオンにより、無機酸が酸化皮膜を除去する作用が促進される。これにより、効率よく鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去できる。
また、原子量換算でのフッ素イオンに対する鉄イオンの質量比率(Fe/F)は、0〜15.9であることが好ましい。この場合、無機酸が酸化皮膜を除去する作用がより促進される。これにより、より効率よく鋼板の表面から均一に酸化皮膜を除去できる。
また、酸洗剤は、3000〜5000質量ppmのノニオン系界面活性剤を更に含む。これにより、酸洗剤の脱脂性を高められる。
また、本実施形態に係る酸洗方法は、酸洗剤で満たされた処理浴中に鋼板を浸漬させることにより、酸化皮膜を除去する洗浄工程と、処理浴中に酸洗剤を補給する補給工程と、を有する。そのため、連続的に鋼板を処理するような場合であっても、例えば、補給工程により消費された酸洗剤の分だけ酸洗剤を処理浴に注ぎ足すことによって、効率よく鋼板を処理できる。
また、酸洗方法は、酸化還元電位に基づいて前記処理浴中の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの価数を調製する調製工程を有する。酸化還元電位に基づいて処理浴中の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの価数が調製されると、例えば、酸洗剤中に存在する第一鉄イオン(Fe2+)が第二鉄イオン(Fe3+)に酸化される反応が生じ、無機酸が酸化皮膜を除去する作用が促進される。
また、処理浴中の鉄イオンの含有量が0.1質量%以下に維持される。そのため、酸洗剤中に存在する第二鉄イオン(Fe3+)が第一鉄イオン(Fe2+)に還元される反応が生じ、無機酸が酸化皮膜を除去する作用が促進される。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
表1に示した含有量の無機酸、フッ素系界面活性剤を含む酸洗剤を調製した。なお、表1に示したフッ素系界面活性剤(I)〜(VI)として、表2に記載されたフッ素系界面活性剤が用いられた。以下に代表的な調製例として、調製例1、調製例4、調製例9、調製例21、調製例24を挙げてその調製方法と分析方法を説明する。
<調製例1>
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、260.7g(165mL)の75%リン酸(比重:1.58)を跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。その後、バットに0.5gのフッ素系界面活性剤(III)を添加し、ガラス棒で更に充分に撹拌し調製例1の酸洗剤とした。
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、260.7g(165mL)の75%リン酸(比重:1.58)を跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。その後、バットに0.5gのフッ素系界面活性剤(III)を添加し、ガラス棒で更に充分に撹拌し調製例1の酸洗剤とした。
[分析]
分光光度計を用いて調製例1の酸洗剤のリン酸濃度を、モリブデンブルー発色を利用した発色分析により求め、表1に記載した。
分光光度計を用いて調製例1の酸洗剤のリン酸濃度を、モリブデンブルー発色を利用した発色分析により求め、表1に記載した。
調製例1の酸洗剤を100倍に希釈し、ブロムフェノールブルーを2滴加え、0.1N苛性ソーダにより滴定し、中和してpHが変わり青色を呈するまでに要した0.1N苛性ソーダの体積(mL)を遊離酸度とした。同様に発色試薬をブロムフェノールブルーからフェノールフタレインに変えて滴定を行った場合の0.1N苛性ソーダの体積(mL)を全酸度とした。全酸度÷遊離酸度から酸比を求め、表1に示した。
セシボール滴定法を用いて調製例1の酸洗剤のフッ素系界面活性剤、洗浄剤の量を定量し、表1に示した。
調製例1の酸洗剤の各金属イオン(Fe、Co、V)の濃度をICP(誘導結合プラズマ)発光分析又は原子吸光分析により求め、表1に示した。なお、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析及び原子吸光分析では第一鉄イオン(Fe2+)と、第二鉄イオン(Fe3+)の区別は出来ないので、表中には鉄イオンの合計値を示した。
調製例1の酸洗剤にIM−32p(東亜DKK社製)の電極を浸し、酸化還元電位(ORP)を測定し表1に示した。なお、電極は銀/塩化銀電極を用いた。
<調製例4>
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、331.8g(210mL)の75%リン酸(比重:1.58)を跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。その後、バットに0.2gのフッ素系界面活性剤(III)を添加し、ガラス棒で更に充分に撹拌し調製例4の酸洗剤とした。調製例1と同様の分析を行い、結果を表1に示した。
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、331.8g(210mL)の75%リン酸(比重:1.58)を跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。その後、バットに0.2gのフッ素系界面活性剤(III)を添加し、ガラス棒で更に充分に撹拌し調製例4の酸洗剤とした。調製例1と同様の分析を行い、結果を表1に示した。
<調製例9>
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、436.08g(276mL)の75%リン酸(比重:1.58)を跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。調製例1と同様に酸比を求め、結果を表1に示した。
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、436.08g(276mL)の75%リン酸(比重:1.58)を跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。調製例1と同様に酸比を求め、結果を表1に示した。
続いて、浴中に黒皮材を浸漬して、鉄イオンを蓄積させた。また、第一鉄イオン(Fe2+)が第二鉄イオン(Fe3+)となるように過酸化水素水を添加した。浸漬した黒皮材を引き上げ、調製例9の酸洗剤とした。酸比を除いて調製例1と同様の分析を行い、結果を表1に示した。
<調製例20>
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、786.6g(570mL)の60%硝酸(比重:1.38)を跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。その後、バットに0.5gのフッ素系界面活性剤(I)を添加し、ガラス棒で更に充分に撹拌し調製例21の酸洗剤とした。調製例1と同様の分析を行い、結果を表1に示した。
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、786.6g(570mL)の60%硝酸(比重:1.38)を跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。その後、バットに0.5gのフッ素系界面活性剤(I)を添加し、ガラス棒で更に充分に撹拌し調製例21の酸洗剤とした。調製例1と同様の分析を行い、結果を表1に示した。
<調製例23>
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、436.08g(276mL)の75%リン酸(比重:1.58)と5gの洗浄剤(株式会社ADEKA製のアデカトールシリーズを跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。その後、バットに2.0gのフッ素系界面活性剤(I)を添加し、ガラス棒で更に充分に撹拌し調製例4の酸洗剤とした。調製例1と同様の分析を行い、結果を表1に示した。
最終的な酸洗剤の容量が1Lとなるように、バットに水道水を入れ、436.08g(276mL)の75%リン酸(比重:1.58)と5gの洗浄剤(株式会社ADEKA製のアデカトールシリーズを跳ねないように注ぎ、ガラス棒で充分に撹拌した。その後、バットに2.0gのフッ素系界面活性剤(I)を添加し、ガラス棒で更に充分に撹拌し調製例4の酸洗剤とした。調製例1と同様の分析を行い、結果を表1に示した。
<実施例、比較例>
表1に示した分析結果に基づいて、表3に示したように調製例1〜調製例24を各実施例、比較例に対応させた。
表1に示した分析結果に基づいて、表3に示したように調製例1〜調製例24を各実施例、比較例に対応させた。
[浸漬試験]
各実施例、比較例の酸洗剤が入った処理浴の温度を45℃まで加温した。加温後、アルカリ脱脂済みの試験体(レーザーカット面を含む鋼板)を5分間浸漬し、引き上げ、水洗した。
各実施例、比較例の酸洗剤が入った処理浴の温度を45℃まで加温した。加温後、アルカリ脱脂済みの試験体(レーザーカット面を含む鋼板)を5分間浸漬し、引き上げ、水洗した。
目視により、試験体の黒皮除去性を、不均一除去、均一除去、エッチング過多のいずれかに分類し、均一除去であれば1、不均一除去又はエッチング過多であれば0と評価し、結果を表3に示した。
また、水洗して20秒後の試験体の濡れ面積を目視し、濡れ面積が0%であれば1、それ以外を0と評価し、結果を表3に示した。
表3に示した、各実施例と、比較例1、比較例5、比較例11、比較例12との黒皮除去性の評価結果を比較することで、酸洗剤中の無機酸の含有量が、30〜45質量%であることにより、酸洗剤は、黒皮を均一に除去できることが確認された。
また、表3に示した、各実施例と、比較例2、比較例4、比較例6、比較例9、比較例10との黒皮除去性の評価結果を比較することで、酸洗剤中のフッ素系界面活性剤の含有量が、200〜2000質量ppmであることにより、酸洗剤は、黒皮を均一に除去できることが確認された。
また、表3に示した、各実施例と、比較例8との黒皮除去性の評価結果を比較することで、酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの含有量が、0.1質量%以下であることにより、酸洗剤は、黒皮を均一に除去できることが確認された。
なお、表3に示した、比較例2、比較例3、比較例6、比較例7、比較例10の黒皮除去性の評価結果から、無機酸の含有量、酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの含有量にかかわらず、フッ素系界面活性剤を含有しない酸洗剤は、黒皮を均一に除去できないことが確認された。
また、表3に示した、実施例1〜実施例10と、実施例11、実施例12との脱脂性の評価結果を比較することで、ノニオン系界面活性剤の含有量が、3000〜5000質量ppmであることにより、酸洗剤の脱脂性が高められることが確認された。
Claims (9)
- 鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗剤であって、
無機酸と、フッ素系界面活性剤と、水と、を含み、
前記酸洗剤中の前記無機酸の含有量は、30〜45質量%であり、
前記酸洗剤中の前記フッ素系界面活性剤の含有量は、200〜2000質量ppmであり、
合計で0〜0.1質量%の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンを含む酸洗剤。 - 前記無機酸は、リン酸、塩酸、フッ酸、硫酸及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の酸洗剤。
- 前記無機酸は、リン酸のみからなる請求項1又は2に記載の酸洗剤。
- 前記フッ素系界面活性剤は、直鎖又は分岐型のフッ化アルキル鎖を有するフッ素系界面活性剤からなる請求項1から3のいずれかに記載の酸洗剤。
- 前記酸化型金属イオンは、鉄イオンである請求項1から4のいずれかに記載の酸洗剤。
- 原子量換算でのフッ素イオンに対する鉄イオンの質量比率(Fe/F)は、0〜15.9である請求項1から5のいずれかに記載の酸洗剤。
- 前記フッ素系界面活性剤以外の界面活性剤を3000〜5000質量ppm含む請求項1から6のいずれかに記載の酸洗剤。
- 鋼板に形成された酸化皮膜を除去するための酸洗方法であって、
請求項1から7のいずれかに記載の酸洗剤で満たされた処理浴中に前記鋼板を浸漬させることにより、前記酸化皮膜を除去する洗浄工程と、
前記処理浴中に前記酸洗剤を補給する補給工程と、を有する酸洗方法。 - 酸化還元電位に基づいて前記処理浴中の酸化型金属イオン及び酸化型金属酸イオンの価数を調製する調製工程を有する請求項8に記載の酸洗方法。
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2018
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CN114635141B (zh) * | 2022-02-28 | 2023-10-27 | 武汉材保表面新材料有限公司 | 一种钢铁表面无磷转化膜的化学退膜液、制备方法及用途 |
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