実施例に係る漏洩防止具につき、図1から図5を参照して説明する。先ず図1の符号10は、本発明の適用された漏洩防止具である。
図1及び図2に示されるように、漏洩防止具10は、分割構造を有する筐体5と、筐体5の排出部としての突部15に接続された排出キャップ66と、接続治具7及び導出ホース8とを主として備える。この漏洩防止具10の筐体5は、本実施例では周方向に略均等に3分割された円弧状の分割筐体11,12,13からなり、これ等の分割筐体11,12,13を流路構成部材としての流体管1の継手部2近傍に発生した損壊部(図示略)を含む外周面に外嵌し、分割筐体11,12,13同士の対向するフランジ4,4を複数のボルト・ナット3で締結することで、筐体5内部の密封性を確保し、損壊部からの流体の漏洩を防止するようにしたものである。
ここで本実施例の流体管1は、例えば、地中に略水平方向に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
流体管1の損壊部としては、地震や自動車等による地盤の振動又は土圧、地盤の不等沈下や過剰な流体圧や老朽化などにより発生した亀裂等の他、腐食による発生した孔等が含まれる。本実施例で損壊部は、流体管1の継手部2近傍に発生したものとして説明するが、漏洩部や損壊部の発生箇所は、上記したものに限られず、例えば継手部2に生じた漏洩部からの漏洩や、流体管の直管部や曲部、あるいは弁筐体のスリーブ等、様々な箇所で発生し得る損壊部に対し、本発明に係る漏洩防止具を適用できる。
円弧状に形成された各分割筐体11,12,13は、金属製等からなり、流体管1の外周に沿って湾曲するとともに、流体管1の外周面との間に一定量の漏洩流体の収容空間を備える。また各分割筐体11,12,13は、その内周部に形成された凹部にシール材5aが嵌合されており、更に特に図示しないが各フランジ4,4の接合面にも、延設されたシール材5aとは別体のパッキンが設けられている。
また第1分割筐体11は、その周方向の略中央に外径方向に円筒状に突出し、突端に排出口15aを有する突部15が設けられ、この突部15を含む後述する排出機構に着脱可能に接続される導出ホース8により、筐体5内部の漏洩流体を外部の適所に排出可能に構成されている。本実施例では、突部15が鉛直上方を向く位置に第1分割筐体11が配置され、当該位置の第1分割筐体11の周端の各フランジ4,4に、第2分割筐体12及び第3分割筐体13が接続される。
なお、本実施例では筐体5は、周方向に略等配に3分割された構造を有しているが、筐体は非等配に分割されてもよく、また、分割数は2つでもよいし、4つ以上であってもよい。同じく、流体管1の配管方向も水平に限らず、例えば垂直方向であってもよい。
次に、図2ないし図4を参照して本実施例の排出機構について説明する。ここで筐体5の内側を基端側若しくは上流側とし、導出ホース8側を先端側若しくは下流側として説明する。
本実施例の排出機構は、第1分割筐体11の周方向の略中央に外径方向に突出して設けられ、突端に排出口15aを有する突部15と、この突部15に螺合により接続された排出キャップ66と、この排出キャップ66に対し相対移動可能に内装された開閉蓋67と、この排出キャップ66に接続された接続治具7とから構成されており、この接続治具7に導出ホース8の基端側の端部が着脱可能に接続される。すなわち排出キャップ66は、導出ホース8の上流側に設けられる。ここで、突部15は本発明の排出部を構成し、排出キャップ66は本発明の操作部を構成し、また導出ホース8は本発明の導出部材を構成している。
なお本実施例では、他の分割筐体12,13にも周方向の略中央に外径方向に突出した突部が設けられるが、当該突部は排出口を有さず突端面が閉塞している。
以下、本実施例に係る漏洩流体の排出機構の各構成について詳述すると、図3及び図4に示されるように、先ず突部15は、筐体5内部に連通する略円筒形状に形成され、その内径側に連設された内壁部15bに一部開口した排出口15aを備える。排出口15aは、突部15の仮想の軸線Oから突部15の径方向にずれた位置にて、筐体5の内外を連通して開口形成されている。
内壁部15bの上面に連なる突部15の内周面15dには、その先端側に雌ネジ部15cが設けられている。また突部15の内壁部15bの上面及び内周面15dは、後述するようにシール座面として構成されている。
次に排出キャップ66は、両端が開口した略筒形状に形成され、その内周壁と該内周壁に径方向に亘り架設された架設部66bとの間に、軸方向に開口した連通口66aを備えていることで、排出キャップ16は軸方向に貫通形成されている。また排出キャップ66の架設部66bの径方向の略中央に軸方向に貫通する貫通孔66fが形成されており、後述するようにこの貫通孔66fに挿通された開閉蓋67を軸支している。
また、排出キャップ66は、その外周面には雄ネジ部66cが突部15の雌ネジ部15cに螺合し、且つ突部15の内周面15dとの間で、排出キャップ66の基端側の外周面に沿った環状の凹部66eに配設されたOリング18を挟圧することで、突部15に対し密封状態で回動可能に接続されている。なお、排出キャップ66の先端側の雄ネジ部66cなどの外周面の適所に図示しない目印を設けることで、後述する排出口15aの開放位置、及び閉塞位置を目視できるようにしてもよい。
次に開閉蓋67は、突部15の内周面15dよりも僅かに小径の略円形状であって、排出キャップ66の先端面66gと突部15の内壁部15bの上面との間に配設される蓋板部67bと、蓋板部67bの上面の略中央から上方に立設された軸部67cとから主として構成されている。
蓋板部67bは排出キャップ66の先端面66gと略同径あるいは小径の外形であり、また軸部67c及びその上端に形成された小径の雄ネジ部67dが、排出キャップ66の架設部66bの貫通孔66fに挿入された状態で、貫通孔66fよりも大径のナット68と螺合している。なお、軸部67c及び雄ネジ部67dは、貫通孔66fよりも小径であり、すなわち開閉蓋67は貫通孔66fに対し上方向には嵌合されず下方向のみ嵌合された遊嵌状態で軸支されている。ここでナット68は緩み止めナットを適用すると好ましい。
よって開閉蓋67は、排出キャップ66の回動による上方向の移動にナット68を介し追従して、上方向に移動し、且つ排出キャップ66の回動による下方向の移動に先端面66gを介し追従して、下方向に移動するように構成されている。
図3及び図4に示されるように、蓋板部67bには、平面視で突部15の内壁部15bと重なる位置に上下に貫通した開放孔67aが形成されるとともに、蓋板部67bの下面には、排出口15aに常時挿入される延出部67eが下方に延出されている。この延出部67eによって開閉蓋67は、排出キャップ66の回動に追従して回動することが規制されている。なお本実施例では延出部67eは、底面視で略円形の柱状体からなり径方向に離間して2箇所に設けられているが、例えば底面視で略長方形の直方体からなるものでもよい。
また蓋板部67bの下面及び延出部67eの略全面に亘り、ゴム等の樹脂材からなるシール材67fが敷設されている。シール材67fは加硫、接着、嵌合などによって形成され、例えばゴム加硫の場合、蓋板部67bの全面を加硫して覆ってもよい。
本実施例に係る排出キャップ66による排出口15aの開閉操作について説明すると、この排出キャップ66を突部15に対し周方向の一方に所定位置まで回動すると、図5(a)に示されるように、排出キャップ66の螺挿に伴う上方向の移動に追従して、ナット68を介し開閉蓋67が上方向に引き上げられて移動することで、蓋板部67bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面と離間するように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部67bの開放孔67a及び連通口66aを介し、筐体5の外部に開放された開放状態となる。なお図5では連通口66aと開放孔67aとが周方向に位置ズレしているが、排出キャップ66の回動によりこれら連通口66aと開放孔67aとが周方向に同じ位置に合わせてもよい。
また、この排出キャップ66を突部15に対し周方向の他方に所定位置まで回動すると、図5(b)に示されるように、排出キャップ66の螺挿に伴う下方向の移動に追従して、排出キャップ66の先端面66gを介し開閉蓋67が下方向に押し下げられて移動することで、蓋板部67bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面に密封状に当接して排出口15aを塞ぐように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部67bによって閉塞された閉塞状態となる。
図3に示されるように、接続治具7は、略筒形状に形成された本体部7aと、この本体部7aに軸方向に移動可能に外嵌された断面視略L字状の外嵌部7bとからなる。外嵌部7bの先端と本体部7aの先端側の挿口部とにより外径側に開放する凹部9が形成されている。
また接続治具7は、本体部7aの基端側に雄ネジ部7dが設けられ、接続治具7は、この雄ネジ部7dが排出キャップ66の雌ネジ部66dに図示しないシールテープ等を介し螺合することで、排出キャップ66に対し密封状態で接続されている。
図1及び図5に示されるように、導出ホース8は、樹脂材またはゴム等からなるホース本体8aと、その基端側に設けられた接続部8bとからなり、後述するように接続治具7に対し着脱可能に構成されている。更に接続部8bは、ホース本体8aにねじ込み等により接続され、その内周に亘りシール材8cを備えるとともに、シール材8cの基端側には軸方向に挟持された係止部材8dが内径方向に付勢状態で配設されている。更に係止部材8dは、その基端側から先端側に向けて漸次縮径した曲面状の内面を有している。
導出ホース8を接続治具7に対し取付ける場合、導出ホース8の接続部8bを接続治具7の本体部7aの挿口部に軸方向に嵌挿するに伴い、係止部材8dが本体部7aの外面に乗り上げて外径方向に押圧される。そして、係止部材8dが軸方向に凹部9の位置に達すると同時に内径方向に付勢力で戻されて凹部9に嵌合し、且つシール材8cが本体部7aの外面に密接することで、導出ホース8の接続治具7に密封状態で取付けられる。図5(a)に示されるように、この取付状態で係止部材8dは、凹部9を形成する本体部7aの端部に係止されるため、導出ホース8の抜け出しが防止されている。すなわち導出ホース8はその軸方向に挿入するのみで、接続治具7に対し取付けることができる。
また導出ホース8を接続治具7から取外す場合、接続治具7の外嵌部7bを本体部7aに対し軸方向の先端側に移動させるに伴い、凹部9の軸方向の幅が狭まり、係止部材8dが本体部7aの外面に乗り上げて外径方向に押圧され、凹部9への嵌合が解除される。この状態で、導出ホース8を軸方向に引き抜くことで、接続治具7から取外すことができる。
次に、上記した漏洩防止具を用いて、流体管1に発生した損壊部からの流体漏洩を防止する工程について説明する。
図1に示されるように、地中に埋設された既設流路を構成する流体管1の場合、周知の方法で漏洩箇所を特定し、当該箇所を掘削して流体管1の損壊部を含む所定区間を露出させる。なお、この漏洩防止工程は、当該工程の作業途中においても継続している漏洩を直ちに防止する必要があるため、地面を掘削して流体管1を露出させる区間は必要最小限に限られ、当該区間が作業スペースとして使用されている。
流体管1の外面を清掃等した後、流体管1の損壊部を含む周方向に沿って、分割筐体11,12,13により囲う。ここで上記した分割筐体11の突部15には、排出キャップ66の回動位置を、図5(a)に示されるように、排出口15aを開放した状態として接続し、且つ排出キャップ66に接続治具7及び導出ホース8の接続部8bを予め接続しておく。導出ホース8のホース本体8aの先端は、例えば地上に配置した図示しない排水タンクや排水溝など、筐体5の取付け現場となる損壊部から離れた適所で排水処理することが望ましい。
図2に示されるように、各分割筐体11,12,13の互いのフランジ4,4に挿通したボルト・ナット3を順次締結する。ボルト・ナット3の締結完了に伴い、各分割筐体11,12,13からなる筐体5が構築され、その内面のシール材5aにより、流体管1の損壊部を含む外面が密封される。ボルト・ナット3の締結過程及び締結完了後に、損壊部から漏洩する流体は、筐体5内部を満たし、更に開放状態の排出口15aを介し導出ホース8を経て、ホース本体8aの他端の放出口から外部の排水処理が可能な適所に放出され排水処理される。
図3(a)、図5(a)に示されるように、排出口15aの開放状態のとき、開閉蓋67は、軸部67cの雄ネジ部67dに螺合されたナット68により遊嵌状態で吊持されており、また蓋板部67bの上面と排出キャップ66の先端面66gとの間に上下方向に所定幅の隙間が形成されている。したがって開閉蓋67は、排出口15aを介し流出する流体の圧力を受けて所定幅分だけ上昇し(図3(a)の2点鎖線部参照)、また開閉蓋67の自重によって所定幅分だけ下降する、という上下動を脈動的に繰り返す。このような開閉蓋67の上下動によって、流体の乱れが促進される結果、排出される流体中に夾雑物等の異物が混在した場合でも、当該異物の流動性が高まり、筐体5内に滞留することなく流体とともに排出することができる。
また、排出口15aと蓋板部67bの開放孔67aとは、周方向に互いに異なる位置に開口しているため、これら排出口15a及び開放孔67aを曲折しながら流通する流体の乱れが促進され、流体に含まれる異物の流動性を高めることができる。
次に、図5(b)に示されるように、排出キャップ66を把持して、突部15及び導出ホース8に対し所定量回動操作することで、排出口15aを開閉蓋67の蓋板部67bにより閉塞する閉塞状態とする。
このように、流体管1から漏洩する流体を導出ホース8により筐体5から離れた適所に導出した状況で、この導出ホース8よりも上流側に設けられた排出キャップ66が突部15に対し相対移動して開閉蓋67によって排出口15aを開閉できるため、排出口15aの閉塞操作に際し排出口15aから流体が筐体5周囲に飛散することなく、良好な現場環境にて、筐体5を流体管1に容易且つシール材5aによる高い密封状態にて外嵌することができる。
また、排出キャップ66は、開閉蓋67に対し相対移動することで該開閉蓋67を開閉操作可能に構成されることで、排出キャップ66の操作方向(本実施例では排出キャップ66の回動方向)を、開閉蓋67の開閉方向(本実施例では図3(a)の上下方向)とは別個に自由度高く設定できるため、操作性を高めることができる。
更に、開閉蓋67は、排出口15aの開口方向(本実施例では図3(a)の上下方向)に移動することで、該排出口15aを開閉するように構成されることで、開閉蓋67のシール材67fが排出口15aの周縁と摺接することを抑制できるため、開閉蓋67の損傷の虞を回避して、耐用期間を延ばすことができる。
また、開閉蓋67は、排出キャップ66と突部15の内壁部15bの上面との間で挟圧されることで、排出口15aを閉塞するように構成されることで、このように挟圧された開閉蓋67によって、排出口15aを確実に閉塞することができる。
また、排出キャップ66が導出ホース8に対し相対移動して開閉蓋67を開閉操作し排出口15aを開閉することで、流体を筐体5外に導出している導出ホース8が、排出キャップ16の開閉操作に追従して移動することがないため、排出口15aを容易に開閉することができる。
更に、排出キャップ66が突部15の外面に嵌合して設けられることで、排出キャップ66の外面を把持して開閉操作し易い。
また、上記のように排出キャップ66による閉塞操作に際しては、排出キャップ66の雄ネジ部66cが突部15の雌ネジ部15cに対し所定量回動するに伴い、排出キャップ66が突部15に向けて軸方向に僅かに螺入されるが、排出キャップ66の凹部66eに配設されたOリング18は、螺入された突部15との間で周方向に挟圧されているため、その密封性能を損なうことなく維持できる。
このように、排出キャップ66は、突部15の周方向に回動可能に設けられるため、排出キャップ66の動作に際し排出口15aの外径方向に大きく張り出すことなく、排出口15aを開閉することができる。
続いて、図5(c)に示されるように、接続治具7の外嵌部7bを本体部7aに対し軸方向に移動させることで、導出ホース8の係止部材8dを凹部9から脱嵌させ、接続治具7に対する係止状態を解除させる。そして、導出ホース8の接続部8bを把持して、接続治具7から取り外す。
このように、排出キャップ66に、導出ホース8を着脱可能に接続する接続治具7が設けられることで、筐体5を流体管1に外嵌して排出キャップ66により排出口15aを閉塞した状態にて、導出ホース8を接続治具7から取外して撤去することができる。また、筐体5の突部15と導出ホース8との間に、接続治具7が接続された排出キャップ66を介設できるため、排出口15aを開閉するための機構を単純化できる。
次に、接続治具7を排出キャップ66に対し回動操作することで、排出キャップ66から取り外す。なお上記した手順に限らず、例えば、導出ホース8を接続治具7に接続したままの状態で、接続治具7を排出キャップ66に対し回動操作して、接続治具7及び導出ホース8を排出キャップ66から取り外すようにしてもよい。
このように、排出キャップ66に、接続治具7を着脱可能に螺合する雌ネジ部66dが設けられることで、接続治具7を排出キャップ66に対し容易に着脱することができる。
最後に、図5(d)に示されるように、接続治具7を取外した排出キャップ66の雌ネジ部66dに、プラグ6の雄ネジ部6dを螺合させることで、本工程を終了する。
このように、排出キャップ66の雌ネジ部66dに、取付可能に螺合するプラグ6が設けられることで、接続治具7を取外した状態の雌ネジ部66dにプラグ6を螺合させて閉塞し、異物の進入を防止することができる。
次に、本実施例に係る排出機構の変形例1について、図6を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
図6に示されるように、変形例1に係る開閉蓋77は、突部15の内周面15dよりも僅かに小径の略円形状であって、排出キャップ76の先端面66gと突部15の内壁部15bの上面との間に配設される蓋板部67bから主として構成されている。
蓋板部67bは排出キャップ76の先端面66gと略同径あるいは小径の外形である。よって開閉蓋77は、排出キャップ76の回動による下方向の移動に先端面66gを介し追従して、下方向に移動するように構成されている。
なお、変形例1に係る排出キャップ16の架設部66bは、実施例の貫通孔66fが形成されておらず径方向に亘り延設されている。
本変形例1に係る排出キャップ76による排出口15aの開閉操作について説明すると、この排出キャップ76を突部15に対し周方向の一方に所定位置まで回動すると、図6(a)に示されるように、排出キャップ76の螺挿に伴う上方向の移動に追従して、排出口15aから排出される流体の圧力を受けている開閉蓋77が上方向に押し上げられて移動することで、蓋板部67bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面と離間するように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部67bの開放孔67a、及び連通口66aを介し筐体5の外部に開放された開放状態となる。
このように排出口15aの開放状態のとき、開閉蓋77は、排出口15aを介し流出する流体の圧力を受けて所定幅分だけ上昇し、また開閉蓋77の自重によって所定幅分だけ下降する、という上下動を脈動的に繰り返す。このような開閉蓋77の上下動によって、流体の乱れが促進される結果、排出される流体中に夾雑物等の異物が混在した場合でも、当該異物の流動性が高まり、筐体5内に滞留することなく流体とともに排出することができる。
また、排出口15aと蓋板部67bの開放孔67aとは、周方向に互いに異なる位置に開口しているため、これら排出口15a及び開放孔67aを曲折しながら流通する流体の乱れが促進され、流体に含まれる異物の流動性を高めることができる。
なお、本発明の排出キャップ(操作部)による排出口の開操作とは、上記した実施例の排出キャップ66のように開閉蓋67を強制的に移動させ、排出口15aを開放させる操作に限らず、本変形例1の排出キャップ76のように、開閉蓋77との間に隙間を形成することで、流体の圧力を利用して開閉蓋77を押し上げ排出口15aを開放させる操作も包含する。
また、この排出キャップ76を突部15に対し周方向の他方に所定位置まで回動すると、図6(b)に示されるように、排出キャップ16の螺挿に伴う下方向の移動に追従して、排出キャップ76の先端面66gを介し開閉蓋77が下方向に押し下げられて移動することで、蓋板部67bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面に密封状に当接して排出口15aを塞ぐように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部67bによって閉塞された閉塞状態となる。
次に、本実施例に係る排出機構の変形例2について、図7を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
図7に示されるように、変形例2に係る開閉蓋87は、突部15の内周面15dよりも僅かに小径の略円形状であって、排出キャップ66の先端面66gと突部15の内壁部15bの上面との間に配設される蓋板部67bと、蓋板部67bの上面の略中央から上方に立設された軸部67cとから主として構成されている。
蓋板部67bは排出キャップ66の先端面66gと略同径あるいは小径の外形であり、また軸部67c及びその上端に段部87aを介して形成された小径の雄ネジ部87bが、排出キャップ66の架設部66bの貫通孔66fに挿入された状態で、貫通孔66fよりも大径のナット68と螺合している。またナット68と架設部66b上面の貫通孔66f周縁との間に、貫通孔66fよりも大径のすべり軸受としてのワッシャ81が設けられ、同様に軸部67cの段部87aと架設部66b下面の貫通孔66f周縁との間に、貫通孔66fよりも大径のすべり軸受としてのワッシャ82が設けられている。すなわち本変形例2の開閉蓋87は、これらのワッシャ81、82を介し、ナット68と段部87aとの間で架設部66bを挟持することで、貫通孔66fに対し上下方向とも移動が規制された状態で軸支されている。
よって開閉蓋87は、排出キャップ66の回動による上方向の移動にナット68及びワッシャ81を介し追従して、上方向に移動し、且つ排出キャップ66の回動による下方向の移動にワッシャ82及び段部87aを介し追従して、下方向に移動するように構成されている。
本変形例2に係る排出キャップ66による排出口15aの開閉操作について説明すると、この排出キャップ66を突部15に対し周方向の一方に所定位置まで回動すると、図7(a)に示されるように、排出キャップ66の螺挿に伴う上方向の移動に追従して、ナット68及びワッシャ81を介し開閉蓋87が上方向に引き上げられて移動することで、蓋板部67bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面と離間するように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部67bの開放孔67a、及び連通口66aを介し筐体5の外部に開放された開放状態となる。
このように排出口15aの開放状態のとき、排出口15aと蓋板部67bの開放孔67aとは、周方向に互いに異なる位置に開口しているため、これら排出口15a及び開放孔67aを曲折しながら流通する流体の乱れが促進され、流体に含まれる異物の流動性を高めることができる。
また、この排出キャップ66を突部15に対し周方向の他方に所定位置まで回動すると、図7(b)に示されるように、排出キャップ66の螺挿に伴う下方向の移動に追従して、ワッシャ82及び段部87aを介し開閉蓋87が下方向に押し下げられて移動することで、蓋板部67bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面に密封状に当接して排出口15aを塞ぐように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部15bによって閉塞された閉塞状態となる。
なお、上記した開放状態及び閉塞状態にいずれにあっても、キャップ16の先端面66gと蓋板部67bの上面との間には常に隙間が形成されており、また排出キャップ66と開閉蓋87とはすべり軸受けとしてのワッシャ81,82を介し接続されているため、排出キャップ66の回動によっても開閉蓋87に供回りの回転力を伝達することが抑制され、軸方向の押圧力のみが伝達されるように構成されている。
次に、本実施例に係る排出機構の変形例3について、図8を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
図8に示されるように、変形例3に係る開閉蓋91は、突部15の内周面15dよりも僅かに小径の略円形状であって、排出キャップ76の先端面66gと突部15の内壁部15bの上面との間に配設される蓋板部91bから主として構成されている。
図8(b)に示されるように、蓋板部91bには、平面視で突部15の内壁部15bと重なる位置に上下に貫通した開放孔91aが略小判状に形成され、また蓋板部91bは、排出キャップ76の先端面66gと略同径あるいは小径で周方向の一部が切り欠かれた外形である。よって開閉蓋91は、排出キャップ16の回動による下方向の移動に先端面66gを介し追従して、下方向に移動するように構成されている。
また蓋板部91bの周方向の一部が切り欠かれた周側端部には内径方向に凹設された凹設部91cが設けられており、この凹設部91cは、筐体5に水平方向に設けられた回動軸92に嵌合している。すなわち開閉蓋91は、凹設部91cが嵌合した回動軸92回りに所定角度回動可能に構成されている。
なお、変形例3に係る開閉蓋91の蓋板部91bは、実施例の延出部67eが形成されておらず平坦状に形成されているが、上記したように凹設部91cが回動軸92に嵌合されているため、開閉蓋91は、排出キャップ76の回動に追従して回動することが規制されている。
本変形例3に係る排出キャップ76による排出口15aの開閉操作について説明すると、この排出キャップ76を突部15に対し周方向の一方に所定位置まで回動すると、図8(a)に示されるように、排出キャップ76の螺挿に伴う上方向の移動に追従して、排出口15aを介し流出する流体の圧力を受けている開閉蓋91が上方向に押し上げられることで、蓋板部91bが回動軸92回りに回動し下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面と離間するように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部91bの開放孔91a、及び連通口66aを介し筐体5の外部に開放された開放状態となる。
このように排出口15aの開放状態のとき、開閉蓋91は、排出口15aを介し流出する流体の圧力を受けて所定幅分だけ上昇方向に回動し、また開閉蓋91の自重によって所定幅分だけ下降方向に回動する、という上下回動を脈動的に繰り返す。このような開閉蓋91の上下回動によって、流体の乱れが促進される結果、排出される流体中に夾雑物等の異物が混在した場合でも、当該異物の流動性が高まり、筐体5内に滞留することなく流体とともに排出することができる。
また、排出口15aと蓋板部91bの開放孔91aとは、周方向に互いに異なる位置に開口しているため、これら排出口15a及び開放孔91aを曲折しながら流通する流体の乱れが促進され、流体に含まれる異物の流動性を高めることができる。
また、この排出キャップ76を突部15に対し周方向の他方に所定位置まで回動すると、図8(c)に示されるように、排出キャップ76の螺挿に伴う下方向の移動に追従して、排出キャップ76の先端面66gを介し開閉蓋91が下方向に押し下げられて回動することで、蓋板部91bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面に密封状に当接して排出口15aを塞ぐように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部91bによって閉塞された閉塞状態となる。
次に、本実施例に係る排出機構の変形例4について、図9を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
図9に示されるように、変形例4に係る開閉蓋97は、突部15の内周面15dよりも僅かに小径の略円形状であって、排出キャップ66の先端面66gと突部15の内壁部15bの上面との間に配設される蓋板部67bと、蓋板部67bの上面の略中央から上方に立設された軸部67cとから主として構成されている。
蓋板部67bは排出キャップ66の先端面66gと略同径あるいは小径の外形であり、また軸部67c及びその上端に形成された小径の雄ネジ部67dが、排出キャップ66の架設部66bの貫通孔66fに挿入された状態で、貫通孔66fよりも大径のナット68と螺合している。なお、軸部67c及び雄ネジ部67dは、貫通孔66fよりも小径であり、すなわち開閉蓋97は貫通孔66fに対し上方向には嵌合されず下方向のみ嵌合された遊嵌状態で軸支されている。
よって開閉蓋97は、排出キャップ66の回動による上方向の移動にナット68を介し追従して、上方向に移動し、且つ排出キャップ66の回動による下方向の移動に先端面66gを介し追従して、下方向に移動するように構成されている。
また蓋板部67bの下面には、径方向の中心を外した位置に、突部15の内壁部15bの上面に凹設された挿入口15gに常時挿入される延出部97aが下方に延出されている。この延出部97aによって開閉蓋97は、排出キャップ66の回動に追従して回動することが規制されている。なお延出部97aは、複数であっても単数であってもよく、下方から見たときの断面形状が角形もしくは円形であっても構わない。
本変形例4に係る排出キャップ66による排出口15aの開閉操作について説明すると、この排出キャップ66を突部14に対し周方向の一方に所定位置まで回動すると、図9(a)に示されるように、排出キャップ66の螺挿に伴う上方向の移動に追従して、ナット68を介し開閉蓋97が上方向に引き上げられて移動することで、蓋板部67bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面と離間するように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部67bの開放孔67a及び連通口66aを介し、筐体5の外部に開放された開放状態となる。
このように排出口15aの開放状態のとき、開閉蓋97は、軸部67cの雄ネジ部67dに螺合されたナット68により遊嵌状態で吊持されており、また蓋板部67bの上面と排出キャップ66の先端面66gとの間に上下方向に所定幅の隙間が形成されている。したがって開閉蓋97は、排出口15aを介し流出する流体の圧力を受けて所定幅分だけ上昇し、また開閉蓋97の自重によって所定幅分だけ下降する、という上下動を脈動的に繰り返す。このような開閉蓋97の上下動によって、流体の乱れが促進される結果、排出される流体中に夾雑物等の異物が混在した場合でも、当該異物の流動性が高まり、筐体5内に滞留することなく流体とともに排出することができる。
また、排出口15aと蓋板部67bの開放孔67aとは、周方向に互いに異なる位置に開口しているため、これら排出口15a及び開放孔67aを曲折しながら流通する流体の乱れが促進され、流体に含まれる異物の流動性を高めることができる。
また、この排出キャップ66を突部15に対し周方向の他方に所定位置まで回動すると、図9(b)に示されるように、排出キャップ66の螺挿に伴う下方向の移動に追従して、排出キャップ66の先端面66gを介し開閉蓋97が下方向に押し下げられて移動することで、蓋板部67bの下面に設けられたシール材67fが突部15の内壁部15bの上面に密封状に当接して排出口15aを塞ぐように位置する。すなわち排出口15aは、蓋板部67bによって閉塞された閉塞状態となる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、流体管1の損壊部を密封状に外嵌する複数の分割筐体からなる漏洩防止具を例に取り説明しているが、これに限らず本発明の漏洩防止具は、特に図示しないが例えば、流路構成部材の端部を閉塞する一体の筐体としての管帽や管栓に、あるいは割T字管や継手、異形管などに内部流体を排出するために一部開口した排出口を設け、それらの筐体に設けた排出口を上記した排出機構で開閉するように構成してもよい。