JP2019132090A - 削孔用ビット - Google Patents
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Abstract
Description
特に、硬い領域の掘削、削孔は、削孔速度が低下するため工事コストの増加を招く。さらに硬い領域の掘削、削孔において、曲線施工(修正削孔)を実施するのは困難である。
係る技術は、砂層の様な軟弱地盤では有効であるが、例えば泥岩や礫混じりの地層の様な硬い地盤を削孔する場合には、従来削孔用ビット20に振動を付加しても、ビット先端に配置された板状部材22が抵抗となり、削孔するべき泥岩等に従来削孔用ビット20が進入せず、削孔方向を修正することが出来ないという問題が存在する。
そのため、掘削ズリの排泥効率を向上して、削孔速度を向上することが望まれているが、可撓性を有する細径のボーリングロッドを用いた削孔で用いられる従来技術に係る従来削孔用ビット(図6参照)では、特に硬い地盤(泥岩層や礫混じりの地盤等)を削孔することは困難であった。
回転高速振動式削孔は、例えば特許文献4に示される高速振動を回転と同時に加える削孔装置を特徴とする削孔方法である。泥岩層や礫混じりの地盤等の硬い領域の掘削、削孔が可能であるが、鉛直ボーリングを基本に開発されておりロータリー式に準ずるボーリングヘッドである削孔用ビットがあるだけで、前記の細径の可撓性ロッドを用いた自在ボーリングの曲線削孔に対応した削孔用ビットは開発されていない。
先端部(1−1)の中心(C1)と前記削孔用ビット全体の中心軸(C:或いは全断面掘削の際の回転中心)とは(オフセット量δだけ)オフセットされ、
尖った形状の前記先端部(1−1)は、斜円錐形または斜円錐台形となっており、前記斜円錐または斜円錐台形の稜線が短い領域(稜線R1を含む領域α)と稜線が長い領域(稜線R2を含む領域β)とが存在することを特徴としている。
当該稜線が短い領域は、後述する逆芯抜き効果の削孔断面のうち外周部の先行削孔を行う部分である。すなわち、回転切削の削孔トルクや高速振動を削孔地盤に伝達し、削孔するメインの部分になる。また当該稜線が長い領域は、前記のように稜線が短い領域で先行して切削した切削ズリを、後方に誘導する切削ズリの円滑排出機能ならびに後述の削孔方向修正機能を受け持つ部分となる。
すなわち、当該稜線が短い領域と稜線が長い領域とで形成された削孔用ビットでは、先端部の中心から削孔用ビット全体の中心軸までの偏心距離であるオフセット量の大小が、高速削孔性能と曲線施工性能を左右する。高速削孔重視の場合には前記オフセット量を小さく設定して削孔地盤への貫入性能を高めた先端形状とし、曲線施工重視の場合には前記オフセット量を大きく設定し、稜線が短い領域よりも稜線が長い領域の占有割合を高くすることで、傾斜曲面による掘削地盤の抵抗を増大させ、曲線施工性能を高めた先端形状とする。具体的な前記オフセット量については、どの程度硬い領域を削孔するか、どの程度の曲率の曲線施工で削孔するかに影響するが、高速削孔性と曲線施工性の両面を確保するには、オフセット量としては削孔用ビットの直径に対し、削孔用ビット全体の中心軸から直径の1/3〜1/6の偏心距離が望ましい。
ここで、平面(F)の投影面積が削孔用ビット(10)投影面積に対し0%を占めている場合、0%に近い場合の前記先端部(1−1)形状は斜円錐形に相当する。
ここで、「対象の種類」とは削孔対象となる地盤の種別(砂質土、粘性土、礫層)や地中障害物・埋設物(例えば鉄筋コンクリート、スチール製品)などの材質および硬さなどを示し、「施工条件」は削孔長、削孔角度(地層や削孔対象物への貫入角度など)や曲率半径を含む削孔経路、削孔径の違いなどを示している。
ここで、地盤削孔における芯抜き効果とは、硬質地盤などで断面円形に削孔する場合、円形を全断面同時に削孔するよりも、先行して中心部を削孔してくり抜き、この部分を圧力解放し、削孔した中心部の周辺を緩ませて、この周辺部を後行で削孔すれば効率よく円形削孔できるという効果である。逆芯抜き効果は、この逆で円形削孔の周辺部を先行削孔し、後行にて中心部を緩ませて効率よく円形削孔を行うことが出来る効果である。
本発明の削孔用ビット(10)は、硬い地盤や(例えば、泥岩層や礫混じりの地盤)の削孔に利用可能である。例えばN値が30程度の地盤、例えば砂地盤、礫地盤、ガラ(鉄筋コンクリートなど)、硬い部材(スチール製品など)が混在する埋立地にも適用することが出来る。
そして本発明の削孔用ビット(10)は、削孔経路を修正する際も振動を付加するので、回転しなくとも、泥岩層や礫混じりの地盤等の硬い地盤であっても(当該地盤中に削孔用ビットが)侵入し易い(いわゆる「入りが良い」状態となる)。
さらに、後述するように前記稜線が長い領域(稜線R2を含む領域β)の傾斜曲面に作用する掘削抵抗反力により削孔方向を変化させることが出来、削孔経路の修正を容易に行うことが出来る。
しかし、前述の逆芯抜き効果により、稜線の短い領域での掘削により応力が解放され、残された内周部(芯部分)である領域(U)は緩みが生じ掘削されやすい状態となる。加えて、削孔軸方向(C)に先行する稜線の短い領域の掘削では、削孔用ビット(10)が回転高速振動装置により発生した回転トルク、スラスト力を受けて、高速振動とともに削孔用ビットが切羽側へ楔または刃のように作用し、残された内周部(芯部分)である領域(U)の根元の部分を破壊していくことにより、削孔が進むと同時に残された内周部(芯部分)である領域(U)も、後方で破砕されて細かくなり全断面が効率よく掘削、削孔される。
そのため、削孔用ビット(10)は、稜線が短い領域(α:稜線R1を含む領域)の方向(矢印AC方向:領域αの方向)に向かって削孔し易くなる(矢印AC方向或いは領域αの方向に曲がり易くなる)。
そして、修正時には稜線が短い領域(α)の方向(矢印AC方向)に曲がり易いことに基づいて、修正時の削孔経路(曲がった削孔経路)の曲率半径を小さくすることが出来る。従って、修正に必要な削孔距離を短くして、計画線に沿った精度の高い削孔を実行することが出来る。修正削孔が終われば、回転高速振動式削孔を再度行う、またはこれを繰り返すことにより3次元的な自在ボーリングが可能となる。
例えば、削孔経路の曲率半径を小さくすることが必要な場合は、削孔経路の修正効果が高まる当該削孔用ビット形状(例えば、オフセット量を大きく設定する)に仕様を変更することや、さらに削孔速度を向上させることが必要な場合は、地盤への貫入性能が高まる当該削孔用ビット形状(例えば、オフセット量を小さく設定する)に仕様変更することが可能である。なお、当該オフセット量は、当該削孔用ビットの直径に対し、当該削孔用ビット全体の中心軸から直径の1/3〜1/6の偏心距離であることが好ましい。
例えば、前記先端平面(F)の投影面積が、削孔用ビット(10)投影面積に対する比率を0%にした場合、0%に近い場合の前記先端部(1−1)形状は、斜円錐形に相当するが、この場合、削孔経路の修正効果を保持しながら高い貫入性能を発揮させることが出来る。しかし、削孔対象物の硬度・剛性が高い場合には、鋭利な先端部(1−1)が削孔により消耗し易くなるため、削孔効率の低下や削孔用ビット(10)消耗率が増加し、工事費が増大する可能性がある。その場合、前記先端平面の投影面積比率を調整(0〜10%)することで、貫入性能と削孔経路の修正機能を維持しつつ、削孔用ビット(10)の耐久性も向上させることが可能となる。なお、前記先端平面の投影面積比率を10%以上に設定した場合は、削孔経路の修正効果が低下するが、削孔経路の修正効果を多く必要としない場合は10%以上での設定も可能である。この前記先端平面の投影面積比率は、削孔するべき対象の種類及び/又は施工条件により設定することが可能である。
また、当該斜円錐台先端の平面(F)は、前記の稜線の短い領域のさらに先端部を形成している面であり、稜線の短い領域が受け持つ削孔断面のうち外周部を先行して切削する役割を担う部分である。前記平面(F)の削孔用ビット(10)投影面積に対する占有割合は、後述の平面(F)が削孔軸直交方向(VC:図7、図8)に対する角度と相俟って、切削性能を左右する。
すなわち、削孔の形態が、斜円錐形状は錐(キリ)に近く、斜円錐台形状は刃物に近くなる。錐(斜円錐形状)は、削孔対象への食いつきに優れ、刃物(斜円錐台形状)は削ることに優位となる。
削孔用ビット(10)投影面積に対する占有割合を大きくするということは、全断面削孔に近くなり、前述の稜線の短い領域と稜線の長い領域による逆芯抜き効果を発揮しにくくなる。
すなわち、前記の先端平面(F)が、削孔軸直交方向(VC)に対し角度を成すように設定することにより前記の斜円錐台形に角度を持った平面が設けられ、当該角度を持った平面は片刃または両刃の刃先に角度をつけた刃物と同様に作用して、切削性能を向上することができる。
さらに傾斜角度を設けることで切削ズリをアニュラス部(3)へ誘導する機能も高めることができる。この先端平面の傾斜角度(F)は、削孔するべき対象の種類及び/又は施工条件により設定することが可能である。
ここで、稜線が短い領域(α)は削孔用ビットの全断面に比較して遥かに小さいので、稜線が短い領域(α)の削孔用チップ(2A)に作用する面圧は、全断面に均一に面圧が作用する従来技術のビットに比較して、遥かに高くなる。そのため、硬い地盤(例えば、泥岩層等)であっても、高い面圧が作用する領域(α)の削孔用チップ(2A)により、効率的に削孔することが出来る。
そのため、掘削ズリが微細化するまで削孔用チップ(2A)で掘削する必要が無くなり、しかも、削孔された硬い地盤は排泥通路となるボーリングロッドのアニュラス部(3)を良好に流過する程度まで確実に微細化され、アニュラス部(3)へ排出されやすくなる切削ズリ円滑排出効果を有する。これにより、本発明の削孔用ビット(10)で全面削孔を行う場合には、削孔速度が向上する。また、方向修正削孔を行う場合も同様のアニュラス部(3)への切削ズリ排出は円滑に行われる。
先端部(1−1)の中心(C1)と前記削孔用ビット全体の中心軸(C:或いは全断面掘削の際の回転中心)とは(オフセット量δだけ)オフセットされ、
尖った形状の前記先端部(1−1)は、斜円錐形または斜円錐台形となっており、前記斜円錐または斜円錐台形の稜線が短い領域(稜線R1を含む領域α)と稜線が長い領域(稜線R2を含む領域β)とが存在する。
したがって、可撓性ロッドを用いた自在ボーリングにおいて、本発明の削孔用ビット(10)の上記形状である斜円錐形または斜円錐台形の特性を利用することで、当該削孔用ビット(10)の回転を抑制して当該稜線が長い領域(稜線R2を含む領域β)の傾斜曲面に作用する掘削抵抗反力により削孔方向を変化させることが出来る。
すなわち、当該稜線が長い領域(稜線R2を含む領域β)の傾斜曲面に作用する掘削抵抗反力により、削孔軸(C)方向とは直角を成す方向に力が働くため、自在ボーリングとしての曲線削孔が可能である。
図1、図2において、図示の実施形態に係る回転高速振動式削孔に用いられる削孔用ビットは、全体が符号10で示されている。明確には図示されていないが、実施形態に係る削孔用ビット10は回転高速振動式削孔で用いられるビットであり、可撓性を有する細径のボーリングロッドを用いた削孔(いわゆる「曲がりボーリング」或いは「自在ボーリング」)について適用される。
図示の実施形態においては削孔用ビット10の削孔方向は略水平方向で示されているが、水平、鉛直、斜めといった削孔方向について限定するものではない。すなわち、三次元的な方向の直線部を含む曲線削孔に適用できる。
削孔用ビット10或いはビット本体1は先端部1−1を有しており、先端部1−1は切羽側(図1では左側)に尖った形状である。図1において、先端部1−1の尖った部分の角度(先端角度)が符号θで示されている。先端角度θは、例えば削孔する地盤が硬い時は小さい角度が選択される。換言すれば、削孔するべき対象の種類、削孔現場の状態、施工条件により、先端角度θの数値が設定される。
削孔用ビット10或いはビット本体1の先端部1−1の中心C1(中心軸)は、削孔用ビット10の中心軸C(全断面掘削の際の回転中心)に対して、距離δだけオフセットしている。すなわち、先端部1−1の中心軸C1は、削孔用ビット10の中心軸Cに対して、オフセット量δだけオフセットされている。図1、図2では、先端部1−1の中心軸C1は、削孔用ビット10の中心軸Cに対して上方に位置している。
先端部1−1は、斜円錐形または斜円錐台形となっている。斜円錐または斜円錐台の中心軸C1(の頂部)から境界Kに向かう稜線は、斜円錐または斜円錐台の側面で変化し均一の長さではない。図1において先端部1−1の上端の稜線が最も短く、下端の稜線が最も長い。図1、図2において、中心軸C1より上方の稜線を包括的に稜線R1と記載し、中心軸C1より下方の稜線を包括的に稜線R2と記載すれば、上方の稜線R1が短く、下方の稜線R2が長い。
図1、図2において、上方の短い稜線R1の領域を符号αで示し、下方の長い稜線R2の領域を符号βで示す。また、先端部1−1における斜円錐台形の先端の平面を符号Fで示す。
ここで、オフセット量δ(削孔用ビット10の先端部1−1の中心軸C1と削孔用ビット10全体の中心軸Cのオフセット量)が大き過ぎると、短い稜線R1の領域αが小さくなり、或いは存在しなくなるので、稜線が短い領域(稜線R1を含む領域α)における切削効率が著しく低下する為、不都合である。そのため、オフセット量δについては固定された数値ではなく、削孔するべき対象の種類、削孔現場の状態、施工条件により設定される。
図2において、削孔用ビット10或いはビット本体1の領域β(稜線R2の領域:図2において下方の領域)には、10個の削孔用チップ2Bが植え込まれている。削孔用チップ2Bは、領域β内においてそれぞれの稜線に沿って配置されているが、中心軸C、C1近傍の領域には配置されていない。
削孔用チップ2A、2Bは先端部1−1の稜線に対して直角方向に向かって配置されている。切羽側端面である領域α、領域βには、チップを細かく砕いた粒状物が全面に植え込まれており、以て削孔効率を向上させている。
ここで、図1、図2に示す削孔用チップの配置、設置方向、設置数、形状は、ボーリングの径や削孔対象の種別、削孔長さなどにより変わり、ここではその一例を示しているに過ぎない。
図示の実施形態に係る削孔用ビット10は振動削孔に適しているが、回転高速振動式削孔の振動源(図示せず)は地上側に配置されている。
ここで、図1に示す削孔用チップの配置、設置方向、設置数、形状は、ボーリングの径や削孔対象の種別、削孔長さなどにより変わり、ここではその一例を示しているに過ぎない。
削孔の際には、削孔された孔内に各種ツールを挿入するべき場合が多々存在し、中空部分1Aは各種ツールを挿入するために必要である。ここで各種ツールとしては、例えば、削孔用ビット10の位置と体勢(向き)を計測するための三次元ジャイロ計測装置、サンプル採取用機器等がある。
各種ツール(三次元ジャイロ計測装置、サンプル採取用機器等)を削孔用ビット10の先端(切羽側)まで挿入する際には、閉鎖用部材(図示せず)を、中空部分1Aを介して地上側に引き抜く。そして中空部分1Aを介して、必要なツールを削孔用ビット10或いはビット本体1まで挿入する。
ここで閉鎖用部材は、図示しない従来公知の構造を採用することが出来る。例えば、閉鎖用部材の半径方向外側に張り出す翼(図示せず)を設け、削孔時は前記翼が中空部分の内壁の係止部(図示せず)に係合して引き抜くことは出来ないが、削孔後に所定のツールを使用する力以上で引くことにより前記翼が半径方向内側に移動して、閉鎖用部材を地上側に引き抜き可能となる構造を採用することが出来る。
そして前記ツール、例えば三次元ジャイロ計測装置を用いて、削孔用ビット10の3次元的位置ならびに計測時点の削孔方向を把握し、所定の線形を維持しているか、または削孔方向の修正が必要か判断し、修正削孔を行う自在ボーリングが出来る。
図示の実施形態に係る削孔用ビット10では、泥岩の様な硬い地盤の削孔が対象であり、削孔水の噴射圧により削孔する訳ではないので、削孔水は低圧で吐出される。換言すれば、削孔水は主として排泥促進やビットの冷却のために吐出される。
ここで、図示の実施形態の削孔用ビット10は、硬い地盤(例えば、泥岩層や礫混じりの地盤)の削孔に利用可能である。そして、例えばN値が30程度の地盤、例えば砂地盤、礫地盤、ガラ(鉄筋コンクリートなど)、硬い部材(スチール製品など)が混在する埋立地にも適用することが出来る。
図3で示す全断面掘削においては、符号R方向に削孔用ビット10を回転しつつ、符号T方向に削孔用ビット10を移動する。
削孔用ビット10に回転Rを付与して矢印T方向に進行させて、先端部1−1の領域α及びその周辺部分に植え込まれた削孔用チップ2Aにより、削孔するべき硬い地盤(泥岩層等)を削孔する。換言すれば、削孔を行うのは主として、先端部1−1の内、短い稜線R1の領域α(図1〜図3では上方の領域)である。長い稜線R2の領域β(図1〜図3では下方の領域)は、先端部以外は削孔にはさほど関与しない。
図示の実施形態における削孔用ビット10は、短い稜線R1の領域α(稜線R1を含む領域α)が削孔断面のうち外周部を先行して切削し、残された内周部は逆芯抜き効果によって長い稜線R2の領域β(稜線R2を含む領域β)で切削される。
ここで、地盤削孔における芯抜き効果とは、硬質地盤などで断面円形に削孔する場合、円形を全断面同時に削孔するよりも、先行して中心部を削孔してくり抜き、この部分を圧力解放し、削孔した中心部の周辺を緩ませて、この周辺部を後行で削孔すれば効率よく円形削孔できるという効果である。逆芯抜き効果は、芯抜き効果とは逆で、円形削孔の周辺部を先行削孔し、後行の削孔で中心部を緩ませて効率よく円形削孔を行うことが出来るという効果である。
図2を参照すれば明らかな様に、先端部1−1において短い稜線R1の領域αは、削孔用ビット10の全断面に比較して遥かに小さい。そして符号R方向に削孔用ビット10を回転して削孔すると、主として先端部1−1が削孔するべき硬い地盤と接触するので、領域αの削孔用チップ2Aに作用する面圧は、従来技術の削孔用ビットのチップに比較して、遥かに高くなる。そのため、硬い地盤(例えば、泥岩層)であっても、高い面圧が作用する領域αの削孔用チップ2Aにより、効率的に削孔される。
それに対して、図1、図2で示す削孔用ビット10を用いて削孔した場合、先端部1−1の領域α(に植え込まれた削孔用チップ2A)で削孔された硬い地盤が比較的大きな塊となっても、当該大きな塊は先端部1−1の領域βにより破砕されて細かくなり、さらに、削孔用ビット10により削孔された削孔内壁面Hに押し付けられて(擦り付けられて)、破砕され、微細化される。その際の掘削された地盤の流れを図3の矢印S1で示す。
また、削孔用ビット10或いはビット本体1の外側面(円筒形部分1−2の側面)に植え込まれた削孔用チップ2Cは、全面削孔の際に、削孔内壁を掘削して掘削ズリの排泥通路となるアニュラス部3を形成する作用効果を奏する。
削孔用ビット10の先端部1−1の領域αに植え込まれた削孔用チップ2Aによる削孔においては、地盤が微細化するまで削孔用チップ2Aで削孔する必要が無くなり、掘削ズリが比較的大きな塊となっても良い。しかも、削孔された硬い地盤(掘削ズリ)は先端部1−1の領域βにより確実に微細化されるので、アニュラス部3を良好に流過する。その結果、図1、図2で示す削孔用ビット10で全面削孔を行う場合には、排泥が効率的に行われ、削孔速度が向上する。
なお、削孔用ビット10に付加される振動の方向については、主は削孔軸方向Cであるが、特に限定条件はなく、振動方向の図示は省略している。
一方、削孔用ビットの先端部1−1の中心を回転中心に対してオフセットさせ、当該先端部1−1が(斜円錐形状でなく)斜多角錐形状である場合が想定される。
図示の実施形態は、斜多角錐形状を想定した場合に比較して、均一の大きさの削孔用チップのみを用いて所定の内径寸法のボーリング孔を削孔することが出来るというメリットがある。係るメリットについて、図4を参照して以下に説明する。
領域αXには3個の削孔用チップG1X、G2、G3Xが示されているが、図4において削孔用チップG1X、G3Xは破線で示しており、3個の削孔用チップG1X、G2、G3Xは同一サイズである。この様に、中央の削孔用チップG2と両端の削孔用チップGX1、GX3が同一サイズである場合には、削孔の際、両端の削孔用チップGX1、GX3の先端の回転軌跡(図示しない)は中央の削孔用チップG2の先端の回転軌跡Lに比較して大きな円弧になってしまう。
そのため、中央の削孔用チップG2は削孔に寄与せず、削孔は主として両端の削孔用チップGX1、GX3が行うことになり、削孔用チップGX1、GX3のみが摩耗して、削孔用チップG2は殆ど摩耗しない状態となってしまい、削孔用チップGX1、GX3のみを頻繁に交換しなければならなくなる。
しかし、大きさの異なる複数種類の削孔用チップG1〜G3を準備することと、大きさの異なる削孔用チップG1〜G3先端の回転軌跡が同一の円弧を描くように植え込むために微妙な調整を行うことは、製造コストの増加に直結する。
そのため、図示の実施形態に係る削孔用ビット10であれば、斜多角錐形状の先端部1−1を有する削孔用ビットに比較して、単一種類の削孔用チップを用いて、且つ微妙な調整をすることなく、均一の削孔径が得られるというメリットがある。
その様な修正を行う場合には、図3で示す場合とは異なり、削孔用ビット10の回転R(図3参照)を抑制し(削孔用ビット10を回転せずに)、振動を付加しつつ、符号Tで示す様に進行させる。
振動を付加することにより、削孔用ビット10を回転しなくとも、硬い地盤Gに対して削孔用ビット10が侵入し易い(入りが良い)。
それに加えて、図示の実施形態に係る削孔用ビット10は、先端部1−1が尖った形状であるため、泥岩の様な硬い地盤であっても、回転せずに推進しても尖った先端から地盤内に進入し易い。
削孔用ビット10を回転せずに矢印T方向に推進させると、先端部1−1の領域α、領域βはそれぞれ地盤Gの壁面から抵抗(或いは反力)を受ける。図5における符号Qは、削孔用ビット10が矢印T方向に少し進行した時の領域β側の掘削面を仮想して示している。
換言すれば、先端部1−1の中心軸C1と削孔用ビット10全体の中心軸C(或いは全断面掘削の際の回転中心)とがオフセットされており、先端部1−1の形状は斜円錐形または斜円錐台形としており、短い稜線R1で構成される領域αと長い稜線R2で構成される領域βとが存在することにより、削孔用ビット10は所望の方向(矢印AC方向)に進行し易い。
そして、削孔用ビット10が矢印AC方向(領域αの方向)に曲がり易いことに基づいて、修正時の削孔経路(曲がった削孔経路)の曲率半径を小さくすることが出来る。
削孔用ビット10の位置と体勢(向き)を変更して削孔経路を修正する際には、中空部分1A(図1参照)内に挿入されている計測機器(例えば三次元ジャイロ計測装置等、図示せず)で計測することにより、削孔用ビット10の位置と体勢(削孔用ビット10の削孔方向)、特に領域αが位置している円周方向位置を計測する。
その後、削孔用ビット10を回転せずに、振動を付加しつつ、矢印T方向に推進することにより、削孔用ビット10を矢印ACで示す方向に削孔させる。
この様な作業により、削孔経路修正時に削孔用ビット10が削孔するべき方向を正確に決定、制御することが出来る。そして、削孔用ビット10による削孔経路の修正が可能となる。
発明者の実験では、図示の実施形態に係る削孔用ビット10を用いた場合には、曲率半径17mで削孔することが出来た。
そのため、図示の実施形態によれば小さい曲率半径の部分を含む線形計画及びその削孔も可能であり、その修正削孔を行うことが出来て、削孔の修正経路を曲げ易く、当該修正が効率的に行えることが確認された。
例えば、先端平面Fの投影面積が、削孔用ビット10投影面積に対する比率を0%にした場合、0%に近い場合の前記先端部1−1の形状は斜円錐形に相当するが、この場合、削孔経路の修正効果を保持しながら高い貫入性能を発揮させることが出来る。しかし、削孔対象物の硬度・剛性が高い場合には、鋭利な先端部1−1が削孔により消耗し易くなるため、削孔効率の低下や削孔用ビット10の消耗率が増加し、工事費が増大する可能性がある。その場合、前記先端平面の投影面積比率を0〜10%の範囲で調整することで、貫入性能と削孔経路の修正機能を維持しつつ、削孔用ビット10の耐久性も向上させることが可能となる。なお、先端平面Fの投影面積比率を10%以上に設定した場合は、削孔経路の修正効果が低下するが、修正効果を多く必要としない場合は10%以上での設定も可能である。この先端平面Fの投影面積比率は、削孔するべき対象の種類及び/又は施工条件により設定することが可能である。
また、斜円錐台先端の平面Fは、前記の稜線の短い領域αのさらに先端部を形成している面であり、稜線の短い領域αが受け持つ削孔断面のうち外周部を先行して切削する役割を担う部分である。この削孔用ビット10の投影面積に対する占有割合は、平面Fが削孔軸直交方向VCに対する角度と相俟って、切削性能を左右する。
すなわち、削孔の形態が、斜円錐形状は錐(キリ)に近く、斜円錐台形状は刃物に近くなる。錐(斜円錐形状)は、削孔対象への食いつきに優れ、刃物(斜円錐台形状)は削ることに優位となる。
削孔用ビット10の投影面積に対する占有割合を大きくすると、全断面削孔に近くなり、前述の稜線の短い領域αと稜線の長い領域βによる逆芯抜き効果を発揮しにくくなる。
すなわち、先端平面Fが、削孔軸直交方向VCに対し角度を成すように設定されることで、斜円錐台形状となる角度を持った先端平面Fを設けることで、片刃または両刃の刃先に角度をつけた刃物に近くなり、切削性能を高くできる。
さらに傾斜角度を設けることで切削ズリをアニュラス部3へ誘導する機能も高めることができる。この先端平面Fの傾斜角度は、削孔するべき対象の種類及び/又は施工条件により設定することが可能である。
図7は先端平面が削孔軸直交方向VCに対し0度を成す先端平面Fを示し、図8は先端平面が削孔軸直交方向VCに対し45度を成す前記先端平面形状を示している。
図7に示した削孔軸直交方向VCに対し0度の先端平面Fの例では、先端平面Fの投影面積が削孔用ビット10の投影面積に対し約1%を占めている。また、図8に示した削孔軸直交方向VCに対し45度を成す先端平面Fの例では、先端平面Fの投影面積が削孔用ビット10の投影面積に対し約5%を占めている。
ここで図7および図8は、中心軸Cからのオフセット量δ(図1、図2参照)を削孔用ビット10の直径に対して約20%に相当する長さに設定した場合の側面形状を示している。図7および図8における先端平面Fの投影面は略楕円形状となるため、先端平面Fの投影面積として、先端平面Fの側面における斜辺を削孔軸方向に投影した長さを円の直径とみなした場合における面積を概算し、削孔用ビット10の投影面積に対する上記の先端平面Fの投影面積の比率をそれぞれ求めている。
例えば、図示の実施形態では、可撓性を有する細径のボーリングロッドを用いた削孔(いわゆる「曲がりボーリング」或いは「自在ボーリング」)について、本発明の削孔用ビットを適用する場合について述べたが、その他の削孔工法についても、本発明の削孔用ビットを適用することが可能である。
1A・・・中空部分
1−1・・・先端部
1−2・・・円筒形部分
2、2A、2B、2C・・・削孔用チップ
10・・・削孔用ビット
C・・・削孔用ビットの中心軸
C1・・・先端部の中心(或いは中心軸)
R1、R2・・・稜線
α・・・稜線が短い領域
β・・・稜線が長い領域
Claims (8)
- 回転高速振動式削孔に用いられる削孔用ビットにおいて、前記削孔用ビットの先端部が尖った形状に形成され、
先端部の中心と前記削孔用ビット全体の中心軸とはオフセットされ、
尖った形状の前記先端部は斜円錐形または斜円錐台形となっており、前記斜円錐または斜円錐台の稜線が短い領域と稜線が長い領域とが存在することを特徴とする削孔用ビット。 - 前記先端部の斜円錐台形先端平面の投影面積は、削孔用ビット投影面積の0〜10%を占める請求項1記載の削孔用ビット。
- 前記先端部の斜円錐台形先端平面は、削孔軸の直交方向に対し0〜45度を成す請求項1、2の何れかに記載の削孔用ビット。
- 前記削孔用ビットの内側に削孔軸方向に延在する中空部分が形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の削孔用ビット。
- 前記オフセットの量は、削孔するべき対象の種類及び/又は施工条件により設定されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の削孔用ビット。
- 前記稜線の短い領域が削孔断面のうち外周部を先行して切削し、残された内周部は逆芯抜き効果によって当該稜線の長い領域で切削されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の削孔用ビット。
- 前記稜線が短い領域で削孔した際に発生した切削ズリは、さらに当該稜線が長い領域で微細化され、ボーリングロッドのアニュラス部へ排出されやすくなる切削ズリ円滑排出機能を有する請求項1〜6の何れか1項に記載の削孔用ビット。
- 可撓性ロッドを用いた自在ボーリングにおいて、前記削孔用ビットの回転を抑制して当該稜線が長い領域の傾斜曲面に作用する掘削抵抗反力により削孔方向を変化させる請求項1〜7の何れか1項に記載の削孔用ビット。
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